【解決手段】樹脂ガイドユニット20は、厚さ方向において互いに重なり合うプレート21,22を備える。プレート22には、溶融樹脂が流通可能なランナ溝22cが設けられている。プレート21には、ランナ溝22cの一端部と連通し且つ厚さ方向に貫通する貫通孔21bが設けられている。プレート21の硬さとプレート22の硬さとが異なる。
前記ゲート孔と連通する前記ランナ溝の一端部の断面積は前記第2のガイド部材側に向かうにつれて小さくなっている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂ガイドユニット。
前記第2のガイド部材のうち前記ゲート孔を構成する部分の硬さは、前記第2のガイド部材のうち他の部分及び前記第1のガイド部材の硬さよりも硬い、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂ガイドユニット。
溶融樹脂の注入により樹脂が形成される対象の領域である樹脂形成領域を有する鉄心本体と、請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂ガイドユニットとを、前記ゲート孔の開口が前記樹脂形成領域と連通するように一対の金型で挟持することと、
溶融樹脂を前記ランナ溝及び前記ゲート孔を通じて前記樹脂形成領域に注入することと、
前記樹脂形成領域に注入された溶融樹脂を硬化させることとを含む、鉄心製品の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に説明される本開示に係る実施形態は本発明を説明するための例示であるので、本発明は以下の内容に限定されるべきではない。
【0015】
≪実施形態の概要≫
[1]本実施形態の一つの例に係る樹脂ガイドユニットは、厚さ方向において互いに重なり合う第1のガイド部材及び第2のガイド部材を備える。第1のガイド部材には、溶融樹脂が流通可能なランナ溝が設けられている。第2のガイド部材には、ランナ溝の一端部と連通し且つ厚さ方向に貫通するゲート孔が設けられている。第1のガイド部材の硬さと第2のガイド部材の硬さとが異なる。
【0016】
第2のガイド部材が第1のガイド部材よりも硬い場合には、ゲート孔における摩耗が抑制される。そのため、樹脂ガイドユニットにおける溶融樹脂の流動性が変化し難くなる。従って、鉄心本体の樹脂形成領域に注入される溶融樹脂の均一性を高めることが可能となる。しかも、摩耗が進行しやすいゲート孔が設けられている第2のガイド部材がより硬い材料で構成されているので、第1及び第2のガイド部材の双方がより硬い材料で構成される場合と比較して、より安価な樹脂ガイドユニットを実現することが可能となる。
【0017】
一方、第2のガイド部材が第1のガイド部材よりも柔らかい場合には、第2のガイド部材の材料を安価に入手できると共に、第2のガイド部材に対して安価にゲート孔を形成できる。そのため、第2のガイド部材が劣化したときに直ちに新たな第2のガイド部材に交換することで、メンテナンス費用を抑制しつつ、鉄心本体の樹脂形成領域に注入される溶融樹脂の均一性を高めることが可能となる。
【0018】
[2]上記第1項の樹脂ガイドユニットにおいて、第2のガイド部材の厚さは第1のガイド部材の厚さよりも薄くてもよい。この場合、ゲート孔が短くなるので、溶融樹脂がゲート孔を流通することによってゲート孔に作用する圧力が小さくなる。そのため、ゲート孔の摩耗が抑制される。特に、第2のガイド部材が第1のガイド部材よりも柔らかい場合には、ゲート孔の摩耗が顕著に抑制される。従って、鉄心本体の樹脂形成領域に注入される溶融樹脂の均一性をより高めることが可能となる。
【0019】
[3]本実施形態の他の例に係る樹脂ガイドユニットは、厚さ方向において互いに重なり合う第1のガイド部材及び第2のガイド部材を備える。第1のガイド部材には、溶融樹脂が流通可能なランナ溝が設けられている。第2のガイド部材には、ランナ溝の一端部と連通し且つ厚さ方向に貫通するゲート孔が設けられている。第2のガイド部材の厚さは第1のガイド部材の厚さよりも薄い。この場合、ゲート孔が短くなるので、溶融樹脂がゲート孔を流通することによってゲート孔に作用する圧力が小さくなる。そのため、ゲート孔の摩耗が抑制される。従って、鉄心本体の樹脂形成領域に注入される溶融樹脂の均一性をより高めることが可能となる。
【0020】
[4]上記第1項〜第3項のいずれか一項に記載の樹脂ガイドユニットにおいて、ゲート孔の断面積はゲート孔の延在方向において略一定であってもよい。この場合、溶融樹脂からゲート孔に対して垂直応力が作用し難い。そのため、ゲート孔の摩耗が抑制される。従って、鉄心本体の樹脂形成領域に注入される溶融樹脂の均一性をさらに高めることが可能となる。
【0021】
[5]上記第1項〜第4項のいずれか一項に記載の樹脂ガイドユニットにおいて、ゲート孔と連通するランナ溝の一端部の断面積は第2のガイド部材側に向かうにつれて小さくなっていてもよい。ところで、樹脂ガイドユニットを用いて溶融樹脂が樹脂形成領域(例えば、磁石挿入孔など)に注入された後、ランナ溝及びゲート孔内には不要な硬化樹脂(「カル」ともいう。)が残る。このとき、第5項に記載の樹脂ガイドユニットのように、ゲート孔と連通するランナ溝の一端部の断面積が第2のガイド部材側に向かうにつれて小さくなっていると、第2のガイド部材側から第1のガイド部材側に向けてカルを押し出すことで、カルを樹脂ガイドユニットから容易に除去することが可能となる。
【0022】
[6]上記第1項〜第5項のいずれか一項に記載の樹脂ガイドユニットにおいて、第2のガイド部材のうちゲート孔を構成する部分の硬さは、第2のガイド部材のうち他の部分及び第1のガイド部材の硬さよりも硬くてもよい。この場合、コストが嵩みやすい材料の使用が、摩耗が生じやすいゲート孔の近傍部分に限定される。そのため、樹脂ガイドユニットの製造コストを抑制しつつ、鉄心本体の樹脂形成領域に注入される溶融樹脂の均一性を高めることが可能となる。
【0023】
[7]本実施形態の他の例に係る樹脂ガイドユニットは、環状を呈する第1のガイド部材と、第1のガイド部材の内側に取り付け可能な第2のガイド部材とを備える。溶融樹脂が流通可能なランナ溝が、第1のガイド部材及び第2のガイド部材の一方に設けられている。ランナ溝の一方の端部と連通し且つ厚さ方向に貫通するゲート孔が、第1のガイド部材及び第2のガイド部材の境界部に設けられている。第1のガイド部材及び第2のガイド部材のうちランナ溝が設けられている一方の硬さと他方の硬さとが異なる。
【0024】
ところで、ゲート孔による流路はランナ溝による流路よりも狭い傾向にある。そのため、溶融樹脂がランナ溝からゲート孔に流れ込む際に、ゲート孔のうちランナ溝から離れた側の壁面に対して溶融樹脂が押しつけられ、溶融樹脂からの比較的大きな応力が当該壁面に作用することがある。そのため、当該壁面において特に摩耗が進行しやすい。
【0025】
第1の部材及び第2の部材のうち摩耗が進行しやすいゲート孔の当該壁面をなす一方がより硬い場合には、ゲート孔の当該壁面における摩耗が抑制される。そのため、樹脂ガイドユニットにおける溶融樹脂の流動性が変化し難くなる。従って、鉄心本体の樹脂形成領域に注入される溶融樹脂の均一性を高めることが可能となる。しかも、第1の部材及び第2の部材のうち一方がより硬い材料で構成されているので、第1及び第2のガイド部材の双方がより硬い材料で構成される場合と比較して、より安価な樹脂ガイドユニットを実現することが可能となる。
【0026】
一方、第1の部材及び第2の部材のうち摩耗が進行しやすいゲート孔の当該壁面をなす一方がより柔らかい場合には、当該一方の部材の材料を安価に入手できると共に、当該一方の部材に対して安価にゲート孔の当該壁面を形成できる。そのため、当該一方の部材が劣化したときに直ちに新たな部材に交換することで、メンテナンス費用を抑制しつつ、鉄心本体の樹脂形成領域に注入される溶融樹脂の均一性を高めることが可能となる。
【0027】
[8]本実施形態の他の例に係る樹脂ガイドユニットは、環状を呈する第1のガイド部材と、第1のガイド部材の内側に取り付け可能な第2のガイド部材とを備える。溶融樹脂が流通可能なランナ溝が、第1のガイド部材及び第2のガイド部材にわたって延びるように設けられている。ランナ溝の一方の端部と連通し且つ厚さ方向に貫通するゲート孔が、第1のガイド部材及び第2のガイド部材の一方に設けられている。第1のガイド部材及び第2のガイド部材のうちゲート孔が設けられている一方の硬さと他方の硬さとが異なる。この場合、第1項に記載の樹脂ガイドユニットと同様の作用効果が得られる。
【0028】
[9]本開示の他の例に係る鉄心製品の製造方法は、溶融樹脂の注入により樹脂が形成される対象の領域である樹脂形成領域を有する鉄心本体と、上記第1項〜第8項のいずれか一項に記載の樹脂ガイドユニットとを、ゲート孔の開口が樹脂形成領域と連通するように一対の金型で挟持することと、溶融樹脂をランナ溝及びゲート孔を通じて樹脂形成領域に注入することと、樹脂形成領域に注入された溶融樹脂を硬化させることとを含む。この場合、第1項に記載の樹脂ガイドユニットと同様の作用効果が得られる。
【0029】
≪実施形態の例示≫
以下に、本開示に係る実施形態の一例について、図面を参照しつつより詳細に説明する。以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0030】
[回転子積層鉄心及び樹脂注入装置の構成]
樹脂注入装置1は、鉄心本体における所定の樹脂形成領域に溶融樹脂を注入する機能を有する。本実施形態では、樹脂注入装置1が、回転子積層鉄心2(
図2参照)の製造に用いられる。
【0031】
まず、
図1及び
図2を参照して、回転子積層鉄心2について説明する。回転子積層鉄心2は、回転子(ロータ)の一部である。回転子積層鉄心2に端面板及びシャフトが取り付けられることにより、回転子が構成される。回転子が固定子(ステータ)と組み合わせられることにより、電動機(モータ)が構成される。本実施形態における回転子積層鉄心2は、埋込磁石型(IPM)モータに用いられる。回転子積層鉄心2は、積層体3(鉄心本体)と、複数の永久磁石4と、複数の固化樹脂5とを備える。
【0032】
積層体3は、円筒状を呈している。すなわち、積層体3の中央部には、中心軸に沿って延びるように積層体3を貫通する軸孔3aが設けられている。軸孔3a内には、シャフトが挿通される。
【0033】
積層体3には、複数の磁石挿入孔6(樹脂形成領域)が形成されている。磁石挿入孔6は、
図1に示されるように、積層体3の外周縁に沿って所定間隔で並んでいる。磁石挿入孔6は、軸孔3aに沿って延びるように積層体3を貫通している。
【0034】
積層体3は、複数の打抜部材Wが積み重ねられて構成されている。打抜部材Wは、電磁鋼板が所定形状に打ち抜かれた板状体であり、積層体3に対応する形状を呈している。積層体3は、いわゆる転積によって構成されていてもよい。「転積」とは、打抜部材W同士の角度を相対的にずらしつつ、複数の打抜部材Wを積層することをいう。転積は、主に積層体3の板厚偏差を相殺することを目的に実施される。転積の角度は、任意の大きさに設定してもよい。
【0035】
積層方向において隣り合う打抜部材W同士は、カシメによって締結されていてもよいし、接着剤又は樹脂材料を用いて互いに接合されてもよい。あるいは、打抜部材Wに仮カシメを設け、仮カシメを介して複数の打抜部材Wを締結して積層体3を得た後、仮カシメを当該積層体から除去してもよい。なお、「仮カシメ」とは、複数の打抜部材Wを一時的に一体化させるのに使用され且つ製品(回転子積層鉄心2)を製造する過程において取り除かれるカシメを意味する。
【0036】
永久磁石4は、
図1及び
図2に示されるように、各磁石挿入孔6内に一つずつ挿入されている。永久磁石4の形状は、特に限定されないが、本実施形態では直方体形状を呈している。永久磁石4の種類は、モータの用途、要求される性能などに応じて決定すればよく、例えば、焼結磁石であってもよいし、ボンド磁石であってもよい。
【0037】
固化樹脂5は、
図2に示されるように、永久磁石4が挿入された後の磁石挿入孔6内に溶融状態の樹脂材料(溶融樹脂)が充填された後に当該溶融樹脂が固化したものである。固化樹脂5は、永久磁石4を磁石挿入孔6内に固定する機能と、積層方向(上下方向)で隣り合う打抜部材W同士を接合する機能とを有する。固化樹脂5を構成する樹脂材料としては、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、エポキシ樹脂と、硬化開始剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、フィラー、難燃剤、応力低下剤などが挙げられる。
【0038】
続いて、
図1〜
図3を参照して、樹脂注入装置1の構成について説明する。樹脂注入装置1は、下型10と、樹脂ガイドユニット20と、上型30と、複数のプランジャ40とを含む。
【0039】
下型10は、
図1及び
図2に示されるように、ベース部材11と、ベース部材11に設けられた挿通ポスト12とを含む。ベース部材11は、矩形状を呈する板状体である。ベース部材11は、積層体3を載置可能に構成されている。挿通ポスト12は、ベース部材11の略中央部に位置しており、ベース部材11の上面から上方に向けて突出している。挿通ポスト12は、円柱形状を呈しており、積層体3の軸孔3aに対応する外形を有する。
【0040】
樹脂ガイドユニット20は、溶融樹脂を所定の磁石挿入孔6に導く機能を有する。樹脂ガイドユニット20は、
図1〜
図3に示されるように、2つのプレート21,22を含む。プレート21(第2のガイド部材)及びプレート22(第1のガイド部材)は共に、矩形状を呈する板状体であり、同程度の大きさを有している。プレート21,22は、上下に積み重ねられた状態で用いられる。具体的には、プレート21は、プレート22よりも積層体3及びベース部材11側に位置している。プレート22は、プレート21よりも上型30側に位置している。
【0041】
プレート21には、
図2及び
図3に示されるように、一つの貫通孔21aと、複数の貫通孔21b(ゲート孔)とが設けられている。貫通孔21aは、挿通ポスト12の外径と同程度の大きさの円形状を呈しており、プレート21の略中央部に配置されている。複数の貫通孔21bは、貫通孔21aの周りを取り囲んで環状をなすように配置されている。
図2に示されるように、複数の貫通孔21bはそれぞれ、プレート21が積層体3に載置された状態で、対応する磁石挿入孔6と少なくとも部分的に重なり合うと共に連通する。そのため、貫通孔21bは、溶融樹脂を磁石挿入孔6に注入するゲート孔として機能する。
【0042】
プレート22には、一つの貫通孔22aと、複数の貫通孔22bと、複数のランナ溝22cとが設けられている。貫通孔22aは、貫通孔21aと同様の形状及び大きさを有しており、プレート22の略中央部に配置されている。貫通孔22aは、プレート21,22が重なり合った状態で、貫通孔21aと重なり合うと共に連通する。
【0043】
複数の貫通孔22bは、貫通孔22aの周りを取り囲んで環状をなすように配置されている。
図2に示されるように、複数の貫通孔22bはそれぞれ、プレート21,22が重なり合った状態で、対応する貫通孔21bと重なり合うと共に連通する。複数のランナ溝22cはそれぞれ、プレート22の表面に沿って延びている。本実施形態では、複数のランナ溝22cはそれぞれ、貫通孔22aの径方向に沿って放射状に延びている。各ランナ溝22cの一端部は、対応する貫通孔22bと連通している。そのため、プレート21,22が重なり合った状態で、貫通孔21b,22b及びランナ溝22cは、溶融樹脂の磁石挿入孔6内への樹脂注入流路として機能する。各ランナ溝22cの他端部22dは円形状を呈している。
【0044】
本実施形態において例示されるように、プレート21の厚さはプレート22の厚さよりも薄くてもよい。例えば、プレート21の厚さは、プレート22の厚さの1/3以下であってもよい。具体的には、プレート21の厚さが1mm程度で且つプレート22の厚さが3mm〜5mm程度であってもよい。
【0045】
本実施形態において例示されるように、プレート21の硬さはプレート22の硬さよりも硬くてもよい。例えば、プレート21のロックウェル硬さがHRC70程度で且つプレート22のロックウェル硬さがHRC60程度であってもよい。プレート21が高速度鋼で構成され且つプレート22が合金工具鋼(例えば、JIS G 4404:2006で規定されるSKD11鋼材)で構成されていてもよい。
【0046】
本実施形態において例示されるように、貫通孔21b,22bの大きさは同程度であってもよい。具体的には、貫通孔21b,22bの直径は1.0mm〜5.0mm程度であってもよい。貫通孔21b,22bの断面積は、これらの延在方向(プレート21,22の厚さ方向)において略一定であってもよい。
【0047】
上型30は、下型10及び樹脂ガイドユニット20と共に積層体3をその厚さ方向(積層方向)において挟持可能に構成されている。上型30は、矩形状を呈する板状体である。上型30には、一つの貫通孔30aと、複数の貫通孔30bと、図示しない内蔵熱源(例えばヒータ等)とが設けられている。
【0048】
貫通孔30aは、貫通孔21a,22aと同様の形状及び大きさを有しており、上型30の略中央部に配置されている。複数の貫通孔30bは、貫通孔30aの周りを取り囲んで環状をなすように配置されている。
図2に示されるように、複数の貫通孔30aはそれぞれ、上型30が樹脂ガイドユニット20に載置された状態で、ランナ溝22cの他端部22dと少なくとも部分的に重なり合う。貫通孔30bはそれぞれ、円柱形状を呈する樹脂ペレットPを少なくとも一つ収容する機能を有する。上型30の内蔵熱源によって樹脂ペレットPが加熱されると、貫通孔30b内において樹脂ペレットPが溶融して溶融樹脂に変化する。
【0049】
複数のプランジャ40は、上型30の上方に位置している。各プランジャ40は、図示しない駆動源によって、対応する貫通孔30bに対して挿抜可能となるように構成されている。
【0050】
[回転子積層鉄心の製造方法]
続いて、
図1及び
図2を参照して、回転子積層鉄心2の製造方法について説明する。ここでは、積層体3を形成する工程の説明は省略する。以下で説明される各工程は、図示しないコントローラ(制御手段)が樹脂注入装置1又はその周辺の装置を制御して、自動的に行われてもよいし、人手で行われてもよい。
【0051】
まず、挿通ポスト12が積層体3の軸孔3a内に挿通されるように、積層体3を下型10上に載置する。次に、磁石挿入孔6内に永久磁石4をそれぞれ一つずつ挿入する。次に、貫通孔21a内に挿通ポスト12が挿通され、且つ、各貫通孔21bが、対応する磁石挿入孔6と連通するように、プレート21を積層体3の上面に載置する。
【0052】
次に、貫通孔22a内に挿通ポスト12が挿通され、且つ、各貫通孔22bが、対応する貫通孔21bと連通するように、プレート22をプレート21の上面に載置する。次に、貫通孔30a内に挿通ポスト12が挿通され、且つ、各貫通孔30bが、対応するランナ溝22cの他端部22dと連通するように、上型30をプレート22の上面に載置する。これにより、積層体3及び樹脂ガイドユニット20の組が一対の下型10及び上型30によって挟持され、磁石挿入孔6、貫通孔21a,22a、ランナ溝22c及び貫通孔30bがいずれも連通した状態となる。
【0053】
次に、各貫通孔30b内に樹脂ペレットPを投入する。上型30の内蔵熱源によって樹脂ペレットPが溶融状態となると、溶融樹脂をプランジャ40によって貫通孔30bから押し出し、各磁石挿入孔6内に注入する(
図2参照)。その後、溶融樹脂が冷却固化すると、磁石挿入孔6内に固化樹脂5が形成される。下型10、樹脂ガイドユニット20及び上型30が積層体3から取り外されると、回転子積層鉄心2が完成する。
【0054】
[作用]
以上のような本実施形態では、プレート21がプレート22よりも硬い材料で構成されている。そのため、貫通孔21bにおける摩耗が抑制される。従って、樹脂ガイドユニット20における溶融樹脂の流動性が変化し難くなる。従って、積層体3の磁石挿入孔6に注入される溶融樹脂の均一性を高めることが可能となる。しかも、摩耗が進行しやすい貫通孔21bが設けられているプレート21がより硬い材料で構成されているので、プレート21,22の双方がより硬い材料で構成される場合と比較して、より安価な樹脂ガイドユニット20を実現することが可能となる。
【0055】
本実施形態では、プレート21の厚さがプレート22の厚さよりも薄い。そのため、貫通孔21bの長さが短くなるので、溶融樹脂が貫通孔21bを流通することによって貫通孔21bに作用する圧力が小さくなる。従って、貫通孔21bの摩耗が抑制される。その結果、積層体3の磁石挿入孔6に注入される溶融樹脂の均一性をより高めることが可能となる。
【0056】
本実施形態では、貫通孔21bの断面積がその延在方向において略一定である。そのため、溶融樹脂から貫通孔21bに対して垂直応力が作用し難い。従って、貫通孔21bの摩耗が抑制される。その結果、積層体3の磁石挿入孔6に注入される溶融樹脂の均一性をさらに高めることが可能となる。
【0057】
[変形例]
以上、本開示に係る実施形態について詳細に説明したが、本発明の要旨の範囲内で種々の変形を上記の実施形態に加えてもよい。
【0058】
(1)例えば、上記の実施形態では、樹脂ガイドユニット20が2枚のプレート21,22で構成されていたが、樹脂ガイドユニット20が3枚以上のプレートで構成されていてもよい。
【0059】
(2)プレート21の厚さは、プレート22の厚さと同程度であってもよいし、プレート22の厚さよりも厚くてもよい。
【0060】
(3)樹脂ガイドユニット20は、溶融樹脂を磁石挿入孔6(樹脂形成領域)にガイドする機能を有していれば、板状以外の他の形状を呈する部材で構成されていてもよい。
【0061】
(4)ランナ溝22cは、プレート22の厚さ方向においてプレート22を貫通していてもよいし、プレート22の表面側において窪む凹溝であってもよい。後者の場合には、ランナ溝22cとプレート21との間に隙間が生じないので、溶融樹脂の隙間からの滲出を抑制することが可能となる。
【0062】
(5)プレート21の硬さは、プレート22の硬さと同程度であってもよいし、プレート22の硬さよりも柔らかくてもよい。プレート21がプレート22よりも柔らかい場合には、プレート21の材料を安価に入手できると共に、プレート21に対して安価に貫通孔21bを形成できる。そのため、プレート21が劣化したときに直ちに新たなプレート21に交換することで、メンテナンス費用を抑制しつつ、積層体3の磁石挿入孔6に注入される溶融樹脂の均一性を高めることが可能となる。このとき、プレート21の厚さがプレート22の厚さよりも薄いと、貫通孔21bの摩耗が顕著に抑制される。従って、積層体3の磁石挿入孔6に注入される溶融樹脂の均一性をより高めることが可能となる。
【0063】
(6)
図4(a)及び
図4(b)に示されるように、貫通孔22bの断面積はプレート21側に向かうにつれて小さくなっていてもよい。この場合、樹脂ガイドユニット20を用いて溶融樹脂が磁石挿入孔6に注入された後に、貫通孔21b,22b及びランナ溝22c内に残ったカルを、プレート21側からプレート22側に向けて押し出して、樹脂ガイドユニット20から容易に除去することが可能となる。
【0064】
ここで、
図4(a)に示されるように、貫通孔21bの断面積もプレート22から離れる側に向かうにつれて小さくなっていてもよい。
図4(b)に示されるように、貫通孔21bの断面積がその延在方向において略一定であってもよい。
【0065】
(7)樹脂ガイドユニット20のうちゲート孔に相当する部分の硬さが、他の部分の硬さよりも硬くてもよい。この場合、コストが嵩みやすい材料の使用が、摩耗が生じやすいゲート孔の近傍部分に限定される。そのため、樹脂ガイドユニット20の製造コストを抑制しつつ、積層体3の磁石挿入孔6に注入される溶融樹脂の均一性を高めることが可能となる。
【0066】
具体的には、
図5(a)に示されるように、プレート21の貫通孔21bの周囲の部分23の硬さが、プレート21の他の部分及びプレート22の硬さよりも硬くてもよい。部分23は環状を呈している。部分23がプレート21の他の部分と別体である場合、部分23はプレート21に対して嵌合されていてもよい。
【0067】
図5(b)に示されるように、樹脂ガイドユニット20が一枚のプレートで構成されており、ゲート孔に相当する部分23の硬さが、樹脂ガイドユニット20の他の部分よりも硬くてもよい。部分23は環状を呈している。部分23が樹脂ガイドユニット20の他の部分と別体である場合、部分23は樹脂ガイドユニット20に対して嵌合されていてもよい。
【0068】
このとき、樹脂ガイドユニット20は、一つの貫通孔20aと、複数の貫通孔20b(ゲート孔)と、複数のランナ溝20cとが設けられている。貫通孔20aは、挿通ポスト12の外径と同程度の大きさの円形状を呈しており、樹脂ガイドユニット20の略中央部に配置されている。複数の貫通孔20bは、貫通孔20aの周りを取り囲んで環状をなすように配置されている。複数の貫通孔20bはそれぞれ、樹脂ガイドユニット20が積層体3に載置された状態で、対応する磁石挿入孔6と少なくとも部分的に重なり合うと共に連通する。
【0069】
複数のランナ溝20cはそれぞれ、樹脂ガイドユニット20の表面に沿って延びている。複数のランナ溝20cはそれぞれ、貫通孔20aの径方向に沿って放射状に延びていてもよい。各ランナ溝20cの一端部は、対応する貫通孔20bと連通している。そのため、貫通孔20b及びランナ溝20cは、溶融樹脂の磁石挿入孔6内への樹脂注入流路として機能する。各ランナ溝20cの他端部20dは、上記の実施形態と同様に円形状を呈していてもよい。
【0070】
(8)
図6に示されるように、樹脂ガイドユニット20は、環状を呈するプレート22と、プレート22の内側に取り付け可能なプレート21とを備えていてもよい。プレート22には、一つの貫通孔22aと、複数のランナ溝22cと、複数の凹溝22e(ゲート孔)とが設けられている。複数の凹溝22eは、断面が半円形状を呈しており、貫通孔22aの内周面においてプレート22の厚さ方向に延在している。凹溝22eはそれぞれ、対応するランナ溝22cの一端と連通している。
【0071】
プレート21には、一つの貫通孔21aと、複数の凹溝21e(ゲート孔)とが設けられている。すなわち、プレート21も環状を呈している。プレート21の厚さは、プレート22の厚さと同程度である。複数の凹溝21eは、断面が半円形状を呈しており、プレート21の外周面においてプレート21の厚さ方向に延在している。
【0072】
プレート21は、プレート22の貫通孔22aに嵌合可能である。プレート21がプレート22の貫通孔22aに嵌合した状態において、凹溝21eと、対応する凹溝22eとが組み合わされ、ゲート孔として機能する一つの貫通孔が構成される。換言すれば、変形例(8)においては、ゲート孔が、プレート21,22の境界部BDによって2つに分割されている。
【0073】
ところで、ゲート孔による流路は、ランナ溝22cによる流路よりも狭い傾向にある。そのため、溶融樹脂がランナ溝22cからゲート孔に流れ込む際に、ゲート孔のうちランナ溝22cから離れた側の壁面(凹溝21eの壁面)に対して溶融樹脂が押しつけられ、溶融樹脂からの比較的大きな応力が当該壁面に作用することがある。そのため、当該壁面において特に摩耗が進行しやすい。
【0074】
そこで、変形例(8)において、プレート21の硬さは、プレート22の硬さよりも硬くてもよいし、プレート22の硬さよりも柔らかくてもよい。前者の場合、当該壁面における摩耗が抑制されるので、溶融樹脂の流動性が変化し難くなる。そのため、積層体3の磁石挿入孔6に注入される溶融樹脂の均一性を高めることが可能となる。しかも、プレート21,22の一方がより硬い材料で構成されているので、プレート21,22の双方がより硬い材料で構成される場合と比較して、より安価な樹脂ガイドユニット20を実現することが可能となる。後者の場合、プレート21の材料を安価に入手できると共に、プレート21に対して安価に凹溝21eを形成できる。そのため、プレート21が劣化したときに直ちに新たなプレート21に交換することで、メンテナンス費用を抑制しつつ、積層体3の磁石挿入孔6に注入される溶融樹脂の均一性を高めることが可能となる。
【0075】
(9)
図7に示されるように、樹脂ガイドユニット20は、環状を呈するプレート22と、プレート22の内側に取り付け可能なプレート21とを備えていてもよい。プレート22には、一つの貫通孔22aと、複数のランナ溝22cとが設けられている。
【0076】
プレート21には、一つの貫通孔21aと、複数の貫通孔21bと、複数のランナ溝21cとが設けられている。すなわち、プレート21も環状を呈している。プレート21の厚さは、プレート22の厚さと同程度である。複数のランナ溝21cはそれぞれ、プレート21の表面に沿って延びている。本実施形態では、複数のランナ溝21cはそれぞれ、貫通孔21aの径方向に沿って放射状に延びている。各ランナ溝21cの一端部は、対応する貫通孔21bと連通している。
【0077】
プレート21は、プレート22の貫通孔22aに嵌合可能である。プレート21がプレート22の貫通孔22aに嵌合した状態において、ランナ溝21cの他端と、対応するランナ溝22cの一端とが連通し、一つのゲート溝が構成される。換言すれば、変形例(9)においては、ランナ溝が、プレート21,22の境界部BDによって2つに分割されている。変形例(9)に係る樹脂ガイドユニット20においても、上記の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0078】
(10)図示はしていないが、樹脂ガイドユニット20は、上記の実施形態と変形例(8)とが組み合わされて構成されていてもよい。すなわち、上記の実施形態におけるプレート21が、貫通孔21bを2つに分割するように、2つの部材で構成されていてもよい。
【0079】
(11)上記の実施形態では、下型10に積層体3を取り付けた後に、各磁石挿入孔6内に永久磁石4を挿入していたが、各磁石挿入孔6内に永久磁石4が挿入された状態の積層体3を下型10に取り付けてもよい。
【0080】
(12)2つ以上の永久磁石4が組み合わされた一組の磁石組が、一つの磁石挿入孔6内にそれぞれ挿入されていてもよい。この場合、一つの磁石挿入孔6内において、複数の永久磁石4が磁石挿入孔6の長手方向において並んでいてもよい。一つの磁石挿入孔6内において、複数の永久磁石4が磁石挿入孔6の延在方向において並んでいてもよい。一つの磁石挿入孔6内において、複数の永久磁石4が当該長手方向に並ぶと共に複数の永久磁石4が当該延在方向において並んでいてもよい。
【0081】
(13)上記の実施形態では、複数の打抜部材Wが積層されてなる積層体3が、永久磁石4が取り付けられる鉄心本体として機能していたが、鉄心本体が積層体3以外で構成されていてもよい。具体的には、鉄心本体は、例えば、強磁性体粉末が圧縮成形されたものであってもよいし、強磁性体粉末を含有する樹脂材料が射出成形されたものであってもよい。
【0082】
(14)上記の実施形態では、磁石挿入孔6に対して上型30側から溶融樹脂が注入されていたが、磁石挿入孔6に対して下型10側から溶融樹脂が注入されてもよい。あるいは、下型10側及び上型30側の双方から溶融樹脂が磁石挿入孔6に注入されてもよい。
【0083】
(15)下型10と積層体3との間に樹脂ガイドユニット20が配置されていてもよい。上型30と積層体3との間に樹脂ガイドユニット20が配置されていてもよい。下型10と積層体3との間、及び、上型30と積層体3との間の双方に、樹脂ガイドユニット20が配置されていてもよい。なお、下型10と積層体3との間に配置される樹脂ガイドユニット20においては、ゲート孔の上部(下流側部分)が摩耗しやすい。一方、上型30と積層体3との間に配置される樹脂ガイドユニット20においては、ゲート孔の下部(下流側部分)が摩耗しやすい。
【0084】
(16)回転子積層鉄心2のみならず、固定子積層鉄心に本発明を適用してもよい。