(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-71841(P2019-71841A)
(43)【公開日】2019年5月16日
(54)【発明の名称】チーズ風凍結乾燥食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A23C 19/086 20060101AFI20190419BHJP
【FI】
A23C19/086
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-201292(P2017-201292)
(22)【出願日】2017年10月17日
(11)【特許番号】特許第6478355号(P6478355)
(45)【特許公報発行日】2019年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】390000664
【氏名又は名称】日本ジフィー食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】保日部 真吾
【テーマコード(参考)】
4B001
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC03
4B001AC07
4B001AC15
4B001AC40
4B001AC45
4B001BC02
4B001BC04
4B001DC50
4B001EC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】主原料としてナチュナルチーズなどのチーズ類を用いることなく、熱湯で復元した場合、チーズの風味を有するチーズ風凍結乾燥食品及びその製造方法の提供。
【解決手段】油脂を46〜80質量%、カゼインカルシウムを2.8〜23質量%含むチーズ風凍結乾燥食品。油脂が植物油脂であり、燐酸塩を0.65〜5.43質量%とクエン酸を0.32〜13.46質量%と、加工澱粉を2.99〜15.45質量%とを更に含むチーズ風凍結乾燥食品。水、乳化剤及び油脂を混合してエマルジョンを得る工程と、前記エマルジョンにカゼインカルシウム、溶融塩及びその他の添加剤を混合して得られた食品組成物を加熱溶融する工程と、前記加熱溶融した食品組成物を凍結乾燥する工程を含み、前記食品組成物は、油脂を12〜36質量%、カゼインカルシウムを0.9〜8.35質量%含むチーズ風凍結乾燥食品の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂を46〜80質量%、カゼインカルシウムを2.8〜23質量%含むことを特徴とするチーズ風凍結乾燥食品。
【請求項2】
前記油脂は、植物油脂である請求項1に記載のチーズ風凍結乾燥食品。
【請求項3】
リン酸塩を0.65〜5.43質量%含む請求項1又は2に記載のチーズ風凍結乾燥食品。
【請求項4】
クエン酸塩を0.32〜13.46質量%含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のチーズ風凍結乾燥食品。
【請求項5】
加工澱粉を2.99〜15.45質量%含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のチーズ風凍結乾燥食品。
【請求項6】
チーズ風凍結乾燥食品の製造方法であって、
水、乳化剤及び油脂を混合してエマルジョンを得る工程と、
前記エマルジョンにカゼインカルシウム、溶融塩及びその他の添加剤を混合して得られた食品組成物を加熱溶融する工程と、
前記加熱溶融した食品組成物を凍結乾燥する工程を含み、
前記食品組成物は、油脂を12〜36質量%、カゼインカルシウムを0.9〜8.35質量%含むことを特徴とするチーズ風凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項7】
前記油脂は、植物油脂である請求項6に記載のチーズ風凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項8】
リン酸塩を0.25〜1.91質量%含む請求項6又は7に記載のチーズ風凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項9】
クエン酸塩を0.11〜5質量%含む請求項6〜8のいずれか1項に記載のチーズ風凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項10】
加工澱粉を1〜5.64質量%含む請求項6〜9のいずれか1項に記載のチーズ風凍結乾燥食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱湯で復元した場合、チーズの風味を有するチーズ風凍結乾燥食品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
即席麺、即席スープなどの即席食品の具材として、乾燥チーズがよく用いられている。例えば、特許文献1には、80℃の熱湯を加えると60秒以内に復元し、かつ、糸引き性が、40℃で20cm以上である乾燥ナチュナルチーズが提案されている。また、特許文献2には、原料であるナチュナルチーズに溶融塩および水を添加して、加熱、撹拌し、水分が50〜60重量%で、なおかつFIDMが30%以下に調整したチーズ類を冷却後、任意の形状にカットし、凍結乾燥した乾燥チーズ類が提案されている。特許文献3には、チーズ塊の全部または一部が水性媒体または水性媒体含浸材料中に包埋されてなるチーズ塊の水性媒体浸漬物を凍結乾燥した乾燥チーズが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−276865号公報
【特許文献2】特開2010−154810号公報
【特許文献3】WO2015/050231号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1〜3では、主にナチュナルチーズなどのチーズ類を主原料として用いていることから、乾燥チーズの品質が原料チーズの産地や時期などに影響されやすいおそれがあった。
【0005】
本発明は、主原料としてナチュナルチーズなどのチーズ類を用いることなく、熱湯で復元した場合、チーズの風味を有するチーズ風凍結乾燥食品及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、油脂を46〜80質量%、カゼインカルシウムを2.8〜23質量%含むことを特徴とするチーズ風凍結乾燥食品に関する。
【0007】
前記油脂は、植物油脂であることが好ましい。前記チーズ風凍結乾燥食品は、リン酸塩を0.65〜5.43質量%含むことが好ましい。前記チーズ風凍結乾燥食品は、クエン酸塩を0.32〜13.46質量%含むことが好ましい。前記チーズ風凍結乾燥食品は、加工澱粉を2.99〜15.45質量%含むことが好ましい。
【0008】
本発明は、また、チーズ風凍結乾燥食品の製造方法であって、水、乳化剤及び油脂を混合してエマルジョンを得る工程と、前記エマルジョンにカゼインカルシウム、溶融塩及びその他の添加剤を混合して得られた食品組成物を加熱溶融する工程と、前記加熱溶融した食品組成物を凍結乾燥する工程を含み、前記食品組成物は、油脂を12〜36質量%、カゼインカルシウムを0.9〜8.35質量%含むことを特徴とするチーズ風凍結乾燥食品の製造方法に関する。
【0009】
前記油脂は、植物油脂であることが好ましい。前記食品組成物は、リン酸塩を0.25〜1.91質量%含むことが好ましい。前記食品組成物は、クエン酸塩を0.11〜5質量%含むことが好ましい。前記食品組成物は、加工澱粉を1〜5.64質量%含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のチーズ風凍結乾燥食品によれば、主成分としてナチュナルチーズなどのチーズ類を含むことなく、熱湯で復元した場合、チーズの風味を有するチーズ風凍結乾燥食品を提供することができる。また、本発明のチーズ風凍結乾燥食品の製造方法によれば、主原料としてナチュナルチーズなどのチーズ類を用いることなく、熱湯で復元した場合、チーズの風味を有するチーズ風凍結乾燥食品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、熱湯で復元した後のチーズ風凍結乾燥食品のとろけ角を測定する方法を説明する模式図である。
【
図2】
図2は、熱湯で復元した後のチーズ風凍結乾燥食品の糸ひきを測定する方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、主原料としてナチュナルチーズなどのチーズ類を用いることなく、熱湯で復元した場合、チーズの風味を有するチーズ風凍結乾燥食品を得ることについて鋭意検討した。その結果、油脂を主原料として用い、油脂とカゼインカルシウムを特定量含ませることで、熱湯で復元した場合、チーズの風味を有するチーズ風凍結乾燥食品が得られることを見出した。
【0013】
前記チーズ風凍結乾燥食品は、油脂を46〜80質量%含む。油脂の含有量が46質量%未満であると、とろけ角が小さく、チーズらしいとろけ感がなくなる。油脂の含有量が80質量%を超えると、糸ひきが短く、チーズらしい糸ひき性がなくなる。チーズらしいとろけ感を向上する観点から、前記チーズ風凍結乾燥食品は、油脂を50質量%以上含むことが好ましく、55質量%以上含むことがより好ましい。チーズらしい糸ひき性を向上させる観点から、前記チーズ風凍結乾燥食品は、油脂を70質量%以下含むことが好ましく、65質量%以下含むことがより好ましい。
【0014】
前記油脂としては、特に限定されず、例えば、植物油脂や動物油脂などを用いることができる。植物油脂としては、特に限定されず、例えば、大豆油、菜種油、綿実油、パーム油、米油等が挙げられる。動物油脂としては、特に限定されず、例えば、牛脂、豚脂、鶏脂等が挙げられる。風味や香りなどを良好にする観点から、植物油脂であることが好ましく、パーム油等がより好ましい。前記油脂は、一種を単独で用いても良く、二種以上を組合わせて用いても良い。
【0015】
前記チーズ風凍結乾燥食品は、カゼインカルシウムを2.8〜23質量%含む。カゼインカルシウムの含有量が2.8質量%未満であると、とろけ角が小さく、チーズらしいとろけ感がなくなる。カゼインカルシウムの含有量が23質量%を超えると、熱湯による復元性が悪く、チーズらしい糸ひき性がなくなる。チーズらしいとろけ感を向上する観点から、前記チーズ風凍結乾燥食品は、カゼインカルシウムを6質量%以上含むことが好ましく、8質量%以上含むことがより好ましい。チーズらしい糸ひき性を向上させる観点から、前記チーズ風凍結乾燥食品は、カゼインカルシウムを20質量%以下含むことが好ましく、15質量%以下含むことがより好ましい。なお、チーズらしさに加えて、油脂分が多くなると乳化工程の手間が増加する等の生産性やコスト面を考慮すると、油脂が50〜70重量%及びガゼインカルシウムが8〜20重量%の組合せ又は油脂が55〜70重量%及びガゼインカルシウムが6〜20重量%の組合せが好ましく、特に、油脂が55〜65重量%及びガゼインカルシウムが8〜15重量%の組合せが好ましい。
【0016】
前記チーズ風凍結乾燥食品は、さらに、乳化剤を含んでもよい。油脂が乳化しやすい。乳化性、及び風味の観点から、前記チーズ風凍結乾燥食品は、乳化剤を0.32〜7.36質量%含むことが好ましい。前記乳化剤としては、特に限定されず、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン等を用いることができる。前記乳化剤のHLB(親水性親油性バランスとも称される。)も特に限定されないが、例えば7〜15であることが好ましい。これらの乳化剤は、一種を単独で用いても良く、二種以上を組合わせて用いても良い。
【0017】
前記チーズ風凍結乾燥食品は、さらに、溶融塩を含んでもよい。カゼインが柔らかくなる。前記溶融塩としては、特に限定されないが、例えば、クエン酸塩、リン酸塩、酒石酸塩等が挙げられる。前記クエン酸塩としては、例えば、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。前記リン酸塩は、ポリリン酸塩、ピロリン酸塩、オルソリン酸塩のいずれであってもよい。これらの一種を単独で用いても良く、二種以上を組合わせて用いても良い。とろけ感及び糸ひき性を向上する観点から、前記チーズ風凍結乾燥食品は、リン酸塩を0.65〜5.43質量%含むことが好ましい。また、とろけ感及び糸ひき性を向上する観点から、クエン酸塩を0.32〜13.46質量%含むことが好ましい。
【0018】
前記チーズ風凍結乾燥食品は、さらに、加工澱粉を含んでもよい。とろけ感がより向上する観点から、前記チーズ風凍結乾燥食品は、加工澱粉を2.99〜15.45質量%含むことが好ましい。前記加工澱粉としては、特に限定されないが、例えば、各種架橋澱粉、酢酸澱粉、ヒドロキシプロピル澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、リン酸化澱粉等を用いることができる。なお、加工澱粉の原料となる澱粉の由来は、特に制限されず、例えば、とうもろこし(コーン)、馬鈴薯、タピオカ、甘藷、及びサゴヤシ等が挙げられる。前記加工澱粉は、一種を単独で用いても良く、二種以上を組合わせて用いても良い。
【0019】
前記チーズ風凍結乾燥食品は、保型性を高める観点から、増粘剤を含んでもよい。前記増粘剤としては、カルシウム反応性のないものを用いればよく、特に限定されない。例えば、λカラギーナン、タマリンドガム、アラビアガム、キサンタンガム、グアーガム、HMペクチン、ローカストビーンガム、ネイティブジェランガム等を用いることができる。前記増粘剤は、一種を単独で用いても良く、互いに反応しない二種以上を組合わせて用いてもよい。前記チーズ風凍結乾燥食品における増粘剤の含有量は、例えば、0.10〜1.0質量%にすることができる。
【0020】
前記チーズ風凍結乾燥食品は、チーズ特有の風味を高める観点から、プロセスチーズやチーズパウダーを含んでもよい。前記チーズ風凍結乾燥食品におけるプロセスチーズやチーズパウダーの含有量は、例えば、0.10〜30質量%にすることができる。
【0021】
前記チーズ風凍結乾燥食品は、さらに、調味料等の他の添加剤を含んでもよい。調味料としては、特に限定されないが、例えば、酸味を付与するクエン酸等の酸味料、うまみを付与するグルタミン酸ナトリウム等のアミノ酸調味料、酵母エキス、食塩等が挙げられる。他の添加剤としては、特に限定されないが、例えば、ビタミンE等の酸化防止剤が挙げられる。また、チーズ風を醸し出すためには色も重要であり、着色料を用いるのが好ましい。好ましい着色料としてはパプリカ色素、クチナシ黄色素等が挙げられる。
【0022】
前記チーズ風凍結乾燥食品は、特に限定されないが、水、乳化剤及び油脂を混合して得られたエマルジョンにカゼインカルシウム、溶融塩及びその他の添加剤を混合して得られた食品組成物を加熱溶融し、加熱溶融した食品組成物を凍結乾燥することで作製することができる。前記エマルジョンは、特に限定されないが、例えば、水に乳化剤を添加して撹拌しながら、油脂を少しずつ混合して乳化させることで得ることができる。
【0023】
前記食品組成物は、油脂を12〜36質量%、カゼインカルシウムを0.9〜8.35質量%含む。これにより、油脂を46〜80質量%、カゼインカルシウムを2.8〜23質量%含むチーズ風凍結乾燥食品を得ることができる。
【0024】
チーズ風凍結乾燥食品を復元した際のチーズらしいとろけ感を向上する観点から、前記食品組成物は、油脂を13.5質量%以上含むことが好ましく、15質量%以上含むことがより好ましい。チーズらしい糸ひき性を向上させる観点から、前記チーズ風凍結乾燥食品は、油脂を30質量%以下含むことが好ましく、25質量%以下含むことがより好ましい。
【0025】
チーズ風凍結乾燥食品を復元した際のチーズらしいとろけ感を向上する観点から、前記食品組成物は、カゼインカルシウムを1.5質量%以上含むことが好ましく、2質量%以上含むことがより好ましい。チーズらしい糸ひき性を向上させる観点から、前記チーズ風凍結乾燥食品は、カゼインカルシウムを6.5質量%以下含むことが好ましく、4.5質量%以下含むことがより好ましい。
【0026】
前記食品組成物は、チーズ風凍結乾燥食品を復元した際のとろけ感及び糸ひき性を向上する観点から、例えば、乳化剤を0.11〜2.62質量%含むことが好ましい。前記乳化剤はHLBが7〜15であることが好ましい。
【0027】
前記食品組成物は、チーズ風凍結乾燥食品を復元した際のとろけ感及び糸ひき性を向上する観点から、リン酸塩を0.25〜1.91質量%含むことが好ましい。また、前記チーズ風凍結乾燥食品は、チーズ風凍結乾燥食品を復元した際のとろけ感及び糸ひき性を向上する観点から、クエン酸塩を0.11〜5質量%含むことが好ましい。
【0028】
前記食品組成物は、チーズ風凍結乾燥食品を復元した際のとろけ感を向上する観点から、加工澱粉を1〜5.64質量%含むことが好ましい。
【0029】
前記食品組成物は、チーズ風凍結乾燥食品の保型性を高める観点から、例えば、増粘剤を0.03〜0.3質量%含んでもよい。また、チーズ風凍結乾燥食品を復元した際のチーズ特有の風味を高める観点から、例えば、プロセスチーズやチーズパウダーを0.03〜10質量%含んでもよい。
【0030】
前記食品組成物は、さらに、上述した調味料等の他の添加剤を含んでもよい。
【0031】
前記食品組成物は、特に限定されないが、50〜95℃で1〜15分間処理することで加熱溶融することができる。本発明において、「食品組成物」とは、特に指定がない場合、加熱溶融する前の食品組成物をいう。
【0032】
次に、前記加熱溶融した食品組成物を成型した後、凍結乾燥する。特に限定されないが、前記加熱溶融した食品組成物を成型した後、庫内温度が−20〜−30℃程度の冷凍庫で凍結し、凍結した状態で所定のサイズにカットし、その後、真空凍結乾燥機で、凍結乾燥して、凍結乾燥食品を作製してもよい。凍結乾燥時の真空度は133Pa以下にすることができる。なお、前記加熱溶融した食品組成物を成型する前に、加熱溶融した食品組成物に加熱溶融により減少分の水を補充してもよい。
【実施例】
【0033】
以下実施例を用いて本発明を具体的に説明する。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
水に乳化剤であるショ糖脂肪酸エステル(第一工業製薬株式会社製「DKエステルF−110」、HLB11)を添加して撹拌しながら、植物油脂である精製パーム油(不二製油株式会社製)を少しずつ混合して乳化させてエマルジョンを得た。乳化が終了した後、そこへカゼインカルシウム(日本新薬株式会社製「カゼインカルシウムEM9N」)、リン酸塩(オルガノフードテック株式会社製「ポリリン酸2−D」、溶融塩)、クエン酸ナトリウム(扶桑化学株式会社製、溶融塩)、加工澱粉(松谷化学工業株式会社製「スタビローズS」)、及びプロセスチーズ(株式会社宝幸製「チーズコンクC4」)、並びに、その他の添加剤として、チーズパウダー、デキストリン、精製食塩、酵母エキス、クエン酸、グルタミン酸ナトリウム、キサンタンガム、グァーガム、ビタミンE製剤及び着色料を添加して混合した。各原材料の配合割合は、下記表1に示したとおりにした。なお、キサンタンガム及びグァーガムからなる増粘剤の配合割合はいずれの実施例も2.27重量部であり、着色料(パプリカ色素)の配合割合はいずれの実施例も1.33重量部である。得られた食品組成物を約75℃で1分間加熱溶融した。加熱溶融した後、加熱溶融した食品組成物に加熱溶融により減少分の水を補充した食品組成物をたて10mm×よこ10mm×高さ7mmの凹部が連続して配置してあるプラスチックトレーに充填し、庫内温度が−25℃の冷凍庫で凍結後、真空度80Pa、最高品温65℃の条件で、15時間真空凍結乾燥した。
【0035】
(実施例2〜14)
各原材料の配合割合を下記表1及び2に示したとおりにした以外は、実施例1と同様にして、凍結乾燥食品を作製した。
【0036】
(比較例1〜4)
各原材料の配合割合を下記表2に示したとおりにした以外は、実施例1と同様にして、凍結乾燥食品を作製した。
【0037】
(参考例1)
水690質量部、リン酸塩(オルガノフードテック株式会社製「ポリリン酸2−D」、溶融塩)3.00質量部、プロセスチーズ(株式会社宝幸製「チーズコンクC4」)3.06質量部、プロセスチーズ(チェダーチーズブロック)1000.00質量部を混合した食品組成物を用いた以外は、実施例1と同様にして、凍結乾燥食品を作製した。
【0038】
実施例1〜14、比較例1〜4及び参考例1で得られた凍結乾燥食品の熱湯で復元した際のチーズらしいテクスチャを下記のようにとろけ感及び糸ひき性を測定評価することで確認した。結果を下記表1〜2に示した。
【0039】
(とろけ感)
凍結乾燥食品の試料(10mm×10mm×7mm)を熱湯で3分間復元した後、ガラス板に載置した。
図1に示すように半球形に広がった試料10の上面側から写真撮影を行い、直径dを計測した。また、レオメーター(サン科学社製「CR−3000EX」)を用いて、高さHfを測定した。次に、下記数式(1)の三角関数から、とろけ角(θ)を算出し、とろけ角(θ)が26.54°以上54.46°未満の場合を合格、すなわちとろけたチーズらしいテクスチャを有すると判断した。
【数1】
tanθ=h/(d/2)
θ(rad)=arctanθ
θ(°)= 180×θ(rad)/π (1)
【0040】
(糸ひき性)
図2(a)〜(d)に示すように、凍結乾燥食品の試料(10mm×10mm×7mm)を熱湯で3分間復元した後、ガラス板に載置した。半球形に広がった試料10を、レオメーター(サン科学社製「CR−3000EX」)20のプランジャー(円柱状:先端面の面積=1cm
2)に付着させた後引き離し、その過程における荷重と距離の変化を(e)にグラフで示した。なお、プランジャーの移動速度は1mm/secとした。そして、糸状に延びた試料10が切れるまでの距離Hpを測定し、Hpが0.44mm以上を合格、すなわちチーズらしいテクスチャを有すると判断した。Hpは、糸状に延びた試料10が切れた時のプランジャーの高さから半球形に広がった試料10の高さHfを引いた値である。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表1〜表2の結果から分かるように、油脂を46〜80質量%、カゼインカルシウムを2.8〜23質量%含む実施例1〜14の凍結乾燥食品は、ほぼ100質量%がプロセスチーズからなる参考例1の凍結乾燥食品と、同等以上のとろけ感及び糸ひき性を有し、チーズらしいテクスチャを示した。
【0044】
油脂の含有量が46重量%未満の比較例1の凍結乾燥食品は、とろけ角が小さく、チーズらしいとろけ感を有していなかった。一方、油脂の含有量が80重量%を超える比較例2の凍結乾燥食品は、糸ひき性が悪かった。カゼインカルシウムの含有量が2.8質量%未満の比較例3の凍結乾燥食品は、とろけ角が小さく、チーズらしいとろけ感を有していなかった。一方、カゼインカルシウムの含有量が23重量%を超える比較例4の凍結乾燥食品は、熱湯による復元性が不良であり、糸ひき性が悪かった。
【手続補正書】
【提出日】2018年12月21日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂を46〜80質量%、カゼインカルシウムを2.8〜23質量%、リン酸塩を0.65〜5.43質量%、クエン酸塩を0.32〜13.46質量%、加工澱粉を2.99〜15.45質量%、並びにプロセスチーズ及び/又はチーズパウダーを0.10〜30質量%含む凍結乾燥食品であり、
前記凍結乾燥食品を復元した後のとろけ角が26.54°以上54.46°未満であり、かつ前記凍結乾燥食品を復元した後に糸状に伸ばした際の切れるまでの距離が0.44mm以上であることを特徴とするチーズ風凍結乾燥食品。
【請求項2】
前記油脂は、植物油脂である請求項1に記載のチーズ風凍結乾燥食品。
【請求項3】
さらに、乳化剤を0.32〜7.36質量%含む請求項1又は2に記載のチーズ風凍結乾燥食品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のチーズ風凍結乾燥食品の製造方法であって、
水、乳化剤及び油脂を混合してエマルジョンを得る工程と、
前記エマルジョンにカゼインカルシウム、リン酸塩、クエン酸塩、加工澱粉、並びにプロセスチーズ及び/又はチーズパウダーを混合して得られた食品組成物を加熱溶融する工程と、
前記加熱溶融した食品組成物を凍結乾燥する工程を含み、
前記食品組成物は、油脂を12〜36質量%、カゼインカルシウムを0.9〜8.35質量%、リン酸塩を0.25〜1.91質量%、クエン酸塩を0.11〜5質量%、加工澱粉を1〜5.64質量%、プロセスチーズ及び/又はチーズパウダーを0.03〜10質量%含むことを特徴とするチーズ風凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項5】
前記油脂は、植物油脂である請求項4に記載のチーズ風凍結乾燥食品の製造方法。
【請求項6】
前記食品組成物は、乳化剤を0.11〜2.62質量%含む請求項4又は5に記載のチーズ風凍結乾燥食品の製造方法。