特開2019-71852(P2019-71852A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-71852(P2019-71852A)
(43)【公開日】2019年5月16日
(54)【発明の名称】フィリング用油中水型油脂組成物
(51)【国際特許分類】
   A23D 7/00 20060101AFI20190419BHJP
   A23L 9/20 20160101ALI20190419BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20190419BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20190419BHJP
【FI】
   A23D7/00 504
   A23D7/00 508
   A23L9/20
   A23G3/34 102
   A21D13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-201847(P2017-201847)
(22)【出願日】2017年10月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(71)【出願人】
【識別番号】591040144
【氏名又は名称】太陽油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】緑川 真理
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 敬宏
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 美緒
【テーマコード(参考)】
4B014
4B025
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B014GG14
4B014GK12
4B025LB20
4B025LG14
4B025LG15
4B026DC05
4B026DC06
4B026DG02
4B026DG03
4B026DH01
4B026DH02
4B026DH05
4B026DH10
4B026DK01
4B026DK03
4B026DK10
4B026DX05
4B032DB01
4B032DB06
4B032DE06
4B032DK09
4B032DK10
4B032DK18
4B032DL20
4B032DP66
(57)【要約】
【課題】低トランス脂肪酸量であるにも関わらず、良好な口溶けと耐熱保型性を有し、さらにクリーミング性及びスプレッド性が良好であるフィリングを作製するために用いる油中水型油脂組成物を提供すること。
【解決手段】油脂組成物全体中に油脂を60〜90重量%含み、水分を10〜40重量%含むフィリング用油中水型油脂組成物であって、前記油脂の構成脂肪酸全体中、トランス脂肪酸含量が5重量%以下であり、前記油脂全体中SSSを3.5〜6.5重量%、S2Uを13.0〜34.0重量%、SU2を8.0〜17.0重量%、C121212及びC121214を合計で7.0〜20.5重量%含有し、SSU/SUS(重量比)が1.0〜3.0であり、前記油脂の20℃のSFC(固体脂含量)が9.0〜26.0%である、フィリング用油中水型油脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂組成物全体中に油脂を60〜90重量%含み、水分を10〜40重量%含むフィリング用油中水型油脂組成物であって、
前記油脂の構成脂肪酸全体中、トランス脂肪酸含量が5重量%以下であり、前記油脂全体中SSSを3.5〜6.5重量%、S2Uを13.0〜34.0重量%、SU2を8.0〜17.0重量%、C121212及びC121214を合計で7.0〜20.5重量%含有し、SSU/SUS(重量比)が1.0〜3.0であり、
前記油脂の20℃のSFC(固体脂含量)が9.0〜26.0%である、フィリング用油中水型油脂組成物。
S:炭素数16以上の飽和脂肪酸
U:炭素数16以上の不飽和脂肪酸
SSS:Sが3分子結合しているトリグリセリド
S2U:Sが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
SU2:Sが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
SSU:1位及び2位、又は2位及び3位にSが、1位又3位にUが結合しているトリグリセリド
SUS:1位及び3位にSが、2位にUが結合しているトリグリセリド
121212:1位、2位及び3位にラウリン酸が結合しているトリグリセリド
121214:1位及び2位、又は2位及び3位にラウリン酸が、1位又は3位にミリスチン酸が結合しているトリグリセリド
【請求項2】
フィリング用油中水型油脂組成物に含まれる油脂の20℃のSFCと前記油脂の30℃のSFCの差が3.5〜18.0%である、請求項1記載のフィリング用油中水型油脂組成物。
【請求項3】
前記油脂全体中のS2U/SSS(重量比)が3.5〜7.0である、請求項1又は2に記載のフィリング用油中水型油脂組成物。
【請求項4】
前記油脂全体中、パーム系油脂のエステル交換油30〜70重量%、及び、ラウリン系油脂10〜50重量%を含有する、請求項1〜3の何れかに記載のフィリング用油中水型油脂組成物。
【請求項5】
前記パーム系油脂のエステル交換油が、パーム系油脂のエステル交換油の分別液状部であり、且つヨウ素価が35〜62の油脂である、請求項4に記載のフィリング用油中水型油脂組成物。
【請求項6】
フィリング用油中水型油脂組成物全体中、ポリグリセリンミリスチン酸エステル0.05〜1.0重量%、ポリグリセリンミリスチン酸エステル以外のポリグリセリン飽和脂肪酸エステル及び/又はグリセリンモノ飽和脂肪酸エステル0.01〜0.5重量%、ジグリセリンモノオレート0.01〜0.5重量%及びショ糖エルカ酸エステル0.01〜0.5重量%を含有する、請求項1〜5何れかに記載のフィリング用油中水型油脂組成物。
【請求項7】
請求項1〜6何れかに記載のフィリング用油中水型油脂組成物を含有するフィリング。
【請求項8】
フィリング用油中水型油脂組成物の含有量が、フィリング全体中40〜80重量%である、請求項7に記載のフィリング。
【請求項9】
請求項7又は8に記載のフィリングを含む食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィリング用油中水型油脂組成物、及び該フィリング用油中水型油脂組成物を含むフィリングに関する。
【背景技術】
【0002】
フィリング用油中水型油脂組成物には、良好な口溶け、耐熱保型性、クリーミング性及びスプレッド性が求められる。従来はそれらを満足させるため、主に硬化魚油が使用されてきたが、価格の高騰やトランス脂肪酸が多いという問題がある。トランス脂肪酸は、多量に摂取すると動脈硬化等のリスクを高めることから、昨今その使用が難しくなっている。
【0003】
そこで、特許文献1では、ラウリン系油脂とパーム系油脂とのエステル交換油脂を含有し、特定のトリグリセリド組成を有する、保型性、長期保存性、口溶け、クリーミング性に優れた低トランス脂肪酸量のバタークリーム用油脂組成物が開示されている。しかし、エステル交換によりラウリン系油脂に含まれていたラウリン酸(C12)やミリスチン酸(C14)を2個以上含むトリグリセリドが減少し、C16以上の長鎖飽和脂肪酸を2個以上含むトリグリセリドが増加することで、油脂組成物の融点が高くなるため、バタークリームの口溶けが十分ではない。スプレッド性に関しては記載されていない。
【0004】
また特許文献2では、特定のトリグリセリド組成を有し、リノール酸とリノレン酸との合計含量が特定量である低トランス脂肪酸量の油脂組成物と、それを用いた保形性、保存性、口溶け、クリーミング性に優れるサンドクリームが開示されている。しかし、PPO/POPの値が0.20超〜0.65未満と低いため、粗大結晶が生じやすく、クリーミング性やスプレッド性が十分でない。また、高融点の極度硬化油を配合しているため、口溶けも十分ではない。スプレッド性に関しては記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−142568号公報
【特許文献2】特開2013−150625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、低トランス脂肪酸量であるにも関わらず、良好な口溶けと耐熱保型性を有し、さらにクリーミング性及びスプレッド性が良好であるフィリングを作製するために用いる油中水型油脂組成物、及び該油中水型油脂組成物を含むフィリングを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、フィリングを作製するために用いる油中水型油脂組成物において、健康面からトランス脂肪酸含量が少量であるにも関わらず、前記油中水型油脂組成物に含まれる油脂全体中、SSS含量、S2U含量、SU2含量、SSU/SUS(重量比)を特定の範囲内とすることで、口溶けの良いトリグリセリドであるC121212及びC121214を多く入れても、口溶けだけでなく、耐熱保型性も良好で、さらにクリーミング性及びスプレッド性も良好になること、また前記油脂の20℃のSFCを特定の範囲内とすることで口溶けがさらに良くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、油脂組成物全体中に油脂を60〜90重量%含み、水分を10〜40重量%含むフィリング用油中水型油脂組成物であって、前記油脂の構成脂肪酸全体中、トランス脂肪酸含量が5重量%以下であり、前記油脂全体中SSSを3.5〜6.5重量%、S2Uを13.0〜34.0重量%、SU2を8.0〜17.0重量%、C121212及びC121214を合計で7.0〜20.5重量%含有し、SSU/SUS(重量比)が1.0〜3.0であり、前記油脂の20℃のSFC(固体脂含量)が9.0〜26.0%である、フィリング用油中水型油脂組成物に関する。
S:炭素数16以上の飽和脂肪酸
U:炭素数16以上の不飽和脂肪酸
SSS:Sが3分子結合しているトリグリセリド
S2U:Sが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
SU2:Sが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
SSU:1位及び2位、又は2位及び3位にSが、1位又3位にUが結合しているトリグリセリド
SUS:1位及び3位にSが、2位にUが結合しているトリグリセリド
121212:1位、2位及び3位にラウリン酸が結合しているトリグリセリド
121214:1位及び2位、又は2位及び3位にラウリン酸が、1位又は3位にミリスチン酸が結合しているトリグリセリド
【0009】
好ましくは、フィリング用油中水型油脂組成物に含まれる油脂の20℃のSFCと前記油脂の30℃のSFCの差が3.5〜18.0%である。
好ましくは、前記油脂全体中のS2U/SSS(重量比)が3.5〜7.0である。
【0010】
好ましくは、前記油脂全体中、パーム系油脂のエステル交換油30〜70重量%、及び、ラウリン系油脂10〜50重量%を含有する。好ましくは、前記パーム系油脂のエステル交換油が、パーム系油脂のエステル交換油の分別液状部であり、且つヨウ素価が35〜62の油脂である。
【0011】
好ましくは、フィリング用油中水型油脂組成物全体中、ポリグリセリンミリスチン酸エステル0.05〜1.0重量%、ポリグリセリンミリスチン酸エステル以外のポリグリセリン飽和脂肪酸エステル及び/又はグリセリンモノ飽和脂肪酸エステル0.01〜0.5重量%、ジグリセリンモノオレート0.01〜0.5重量%及びショ糖エルカ酸エステル0.01〜0.5重量%を含有する。
【0012】
また本発明は、前記フィリング用油中水型油脂組成物を含有するフィリングにも関する。好ましくは、フィリング用油中水型油脂組成物の含有量が、フィリング全体中40〜80重量%である。
さらに本発明は、前記フィリングを含む食品にも関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明に従えば、低トランス脂肪酸量であるにも関わらず、良好な口溶けと耐熱保型性を有し、さらにクリーミング性及びスプレッド性が良好であるフィリングを作製するために用いる油中水型油脂組成物、及び該油中水型油脂組成物を含むフィリングを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
本発明のフィリング用油中水型油脂組成物は、油脂と必要に応じて油脂以外の油溶性原料とを含む油相、及び、水と必要に応じて水溶性原料とを含む水相を含む、油中水型の乳化物である。当該乳化物は、常温(約20℃)で固形のものであり、可塑性を示すものである。
【0015】
油脂は、1分子のグリセリンに対し3分子の脂肪酸がエステル結合してなるトリグリセリドである。トリグリセリドを構成している前記脂肪酸を、油脂中の構成脂肪酸という。
【0016】
本発明のフィリング用油中水型油脂組成物において、油脂は合計で、前記油脂組成物の全体に対し、好ましくは60〜90重量%、より好ましくは78〜87重量%を占めるように配合され、水分は合計で、前記油脂組成物の全体に対し、好ましくは10〜40重量%、より好ましくは13〜22重量%を占めるように配合される。油脂の含有割合が60重量%より少ないと、乳化が不安定になり、離水が起きる場合がある。また90重量%より多いと、水相成分が相対的に少なくなるため、風味が感じられにくくなる場合がある。
【0017】
本発明に係るフィリング用油中水型油脂組成物は、フィリング用油中水型油脂組成物に含まれる油脂の構成脂肪酸全体においてトランス脂肪酸含量が特定量以下であり、前記油脂全体中SSS含量、S2U含量、SU2含量、SSU/SUS(重量比)、及び、C121212及びC121214の合計量が特定の範囲内で、前記油脂の20℃のSFCが特定範囲内であることを特徴とする。なお、本発明におけるS、U、SSS、S2U、SU2、SSU、SUS、C121212、C121214の表記は、以下の通りである。
S:炭素数16以上の飽和脂肪酸
U:炭素数16以上の不飽和脂肪酸
SSS:Sが3分子結合しているトリグリセリド
S2U:Sが2分子、Uが1分子結合しているトリグリセリド
SU2:Sが1分子、Uが2分子結合しているトリグリセリド
SSU:1位及び2位、又は2位及び3位にSが、1位又3位にUが結合しているトリグリセリド
SUS:1位及び3位にSが、2位にUが結合しているトリグリセリド
121212:1位、2位及び3位にラウリン酸が結合しているトリグリセリド
121214:1位及び2位、又は2位及び3位にラウリン酸が、1位又は3位にミリスチン酸が結合しているトリグリセリド
【0018】
本発明のフィリング用油中水型油脂組成物において、トランス脂肪酸含量は、健康面から少ないほど良く、該組成物に含まれる油脂の構成脂肪酸全体中、5重量%以下であることが好ましく、より好ましくは3重量%以下、更に好ましくは1重量%以下、最も好ましくは、トランス脂肪酸を実質的に含有しないことである。トランス脂肪酸を実質的に含有しないフィリング用油中水型油脂組成物は、水素添加した油脂原料を使用しないことで製造できる。前記トランス脂肪酸含有量は、AOCS Ce 1f−96に準じて測定できる。
【0019】
本発明において、SSSは耐熱保型性の向上に大きく寄与し得るが、多すぎると口溶けに影響し得る。そこで、SSS含量は、フィリング用油中水型油脂組成物に含まれる油脂全体中、3.5〜6.5重量%であることが好ましく、より好ましくは4.0〜6.0重量%であり、更に好ましくは4.7〜5.5重量%である。3.5重量%より少ないと耐熱保型性が悪くなる場合があり、6.5重量%より多いと、口溶けが悪くなる場合がある。
【0020】
S2Uも耐熱保型性の向上に大きく寄与し得るが、多すぎると口溶けに影響し得る。そこで、S2U含量は、フィリング用油中水型油脂組成物に含まれる油脂全体中、13.0〜34.0重量%であることが好ましく、より好ましくは18.0〜31.0重量%であり、更に好ましくは22.0〜29.0重量%である。13.0重量%より少ないと耐熱保型性が悪くなる場合があり、34.0重量%より多いと、口溶けが悪くなる場合がある。
【0021】
本発明の好適な態様によると、本発明のフィリング用油中水型油脂組成物に含まれる油脂全体中におけるS2U含量とSSS含量の割合:S2U/SSS(重量比)を3.5〜7.0にすることで、本発明の効果をより享受できる。より好ましくは4.2〜6.0であり、更に好ましくは4.7〜5.5である。前記割合が3.5以上であると耐熱保型性がより良好になり、7.0以下であると口溶けがより良好になる。
【0022】
SU2含量は、フィリング用油中水型油脂組成物に含まれる油脂全体中、8.0〜17.0重量%であることが好ましく、より好ましくは10.0〜17.0重量%であり、更に好ましくは12.0〜17.0重量%である。8.0重量%より少ないと口溶けが悪くなる場合があり、17.0重量%より多いと、耐熱保型性が悪くなる場合がある。
【0023】
なお、前記SSS含量、S2U含量、SU2含量は、基準油脂分析試験法2.4.6.2−2013に準拠して測定できる。
【0024】
本発明のフィリング用油中水型油脂組成物に含まれる油脂全体中におけるSSU含量とSUS含量の割合:SSU/SUS(重量比)は、1.0〜3.0であることが好ましく、より好ましくは1.5〜2.5であり、更に好ましくは1.8〜2.2である。前記割合が1.0より小さいと、SUSの割合が比較的大きくなり粗大結晶を生じやすく、β型結晶を形成しやすいので、そうするとクリーミング性やスプレッド性が悪くなる場合がある。一方、前記割合が3.0より大きいと、口溶けが悪くなる場合がある。
【0025】
なお、前記SSU/SUS(重量比)は、HPLCを用いて硝酸銀カラムにより分析できる。分析条件は、「Journal of the American Oil Chemists Society,68,289−293,1991」記載の条件に準じて測定できる。
【0026】
さらに、C121212及びC121214は、融点が33〜40℃なので、良好な口溶けに寄与し、さらに結晶化速度も速いので、捏和中に微細結晶が生成され、良好なクリーミング性にも寄与するという観点から多めに含まれることが好ましい。しかし多すぎると、特に低温でのスプレッド性を損ねてしまう。この観点から、C121212及びC121214の合計量は、フィリング用油中水型油脂組成物に含まれる油脂全体中、7.0〜20.5重量%であることが好ましく、より好ましくは8.0〜18.0重量%であり、更に好ましくは9.0〜15.0重量%である。7.0重量%より少ないと口溶けやクリーミング性が悪くなる場合があり、また20.5重量%より多いと、特に低温でのスプレッド性が悪くなる場合がある。
【0027】
前記C121212及びC121214の合計量は、前記SSS含量と同様、基準油脂分析試験法2.4.6.1−2013に準拠して測定できる。
【0028】
本発明のフィリング用油中水型油脂組成物に含まれる油脂の20℃のSFC(固体脂含量)は、9.0〜26.0%であることが好ましく、より好ましくは11.0〜20.0%であり、更に好ましくは11.0〜15.0%である。9.0%より少ないと耐熱保型性が悪くなる場合があり、また26.0%より多いと、口溶けやスプレッド性が悪くなる場合がある。
【0029】
前記油脂の20℃のSFCと前記油脂の30℃のSFCの差は、3.5〜18.0%であることが好ましく、より好ましくは6.0〜13.0%であり、更に好ましくは6.0〜10.0%である。3.5%より小さいと口溶けが悪くなる場合があり、また18.0%より大きいと、スプレッド性が悪くなる場合がある。
【0030】
前記SFCは、基準油脂分析試験法2.2.9−2013に定められた方法に従い、20℃又は30℃で、NMR法により測定できる。
【0031】
本発明のフィリング用油中水型油脂組成物は、これに含まれる油脂が、以上のようなトリグリセリド組成及び固体脂含量を満足する限り、その原料油脂は特に限定されない。しかし、以下に述べる原料油脂を配合すれば、原料油脂の入手も容易であり、前記トリグリセリド組成及び固体脂含量を比較的容易に実現することができるので好ましい。本発明の一実施形態によると、例えば、本発明のフィリング用油中水型油脂組成物における油脂は、当該油脂全体中、パーム系油脂のエステル交換油を30〜70重量%と、ラウリン系油脂を10〜50重量%を原料油脂として配合することにより製造できる。パーム系油脂のエステル交換油はSSUを比較的多く含有し、これを配合することで耐熱保型性、クリーミング性及びスプレッド性の向上に大きく寄与し得る。また、パーム核油及び/又はヤシ油等のラウリン系油脂はシャープな融解特性を有するため、これを配合することで口溶けの向上に大きく寄与し得る。
【0032】
前記パーム系油脂としては、パーム油に由来する油脂であれば特に限定されず、例えばパーム油;パームステアリン、パーム中融点部、パームオレイン、パームダブルオレイン、パームスーパーオレイン、パームトップオレイン、パームハードステアリン等のパーム分別油;パーム極度硬化油等が挙げられる。これらのうち、パームステアリンが好ましい。
【0033】
前記パーム系油脂のエステル交換油は、当該エステル交換油の分別油であってもよい。特に、前記トリグリセリド組成に調整しやすいため、パーム系油脂のエステル交換油の分別液状部が好ましく、中でも、パームステアリンのエステル交換油の分別液状部がより好ましい。
【0034】
パーム系油脂のエステル交換油の分別液状部とは、パーム系油脂をランダムエステル交換した後に、固体部を除去して得られる液状部のことである。得られた液状部全体中、SSSを2〜13重量%含有し、SSUとSUSを合計で34〜54重量%含有し、(SSUとSUSの合計含有量)/(SSS含有量)の重量比率が4〜20且つ(SSU含有量)/(SUS含有量)の重量比率が1以上であることが好ましい。パーム系油脂のエステル交換油の分別液状部のトリグリセリド組成が上記範囲にあると、ラウリン系油脂と混合して使用することで、容易に本発明のフィリング用油中水型油脂組成物を得ることができる。
【0035】
パーム系油脂のエステル交換油の分別液状部のトリグリセリド組成を上記範囲にするためには、まずエステル交換に供するパーム系油脂のヨウ素価を30〜58とすることが好ましい。前記エステル交換に供するパーム系油脂がパーム油、パームステアリン、パーム中融点部、パームオレインなどの場合には、パーム系油脂をそのままエステル交換に供することができる。一方、前記エステル交換に供するパーム系油脂がパームダブルオレイン、パームスーパーオレイン、パームトップオレイン、パームハードステアリンなど、ヨウ素価が30未満であるか又は58を超えるパーム系油脂である場合には、これらパーム系油脂同士を混合してヨウ素価を30〜58の範囲に調整した後、エステル交換に供することができる。また、これらパーム系油脂の硬化油及びエステル交換油を混合してヨウ素価を30〜58に調整してからエステル交換に供してもよい。
【0036】
前記ヨウ素価30〜58のパーム系油脂は、常法に従ってエステル交換すれば良い。該エステル交換に用いる触媒としては、食品用途で使用可能な触媒であれば特に種類を問わず使用でき、例えばナトリウムメチラートや、リパーゼ等が挙げられる。リパーゼとしては、通常トリグリセリドのエステル交換に用いられるリパーゼを特に限定なく使用することができるが、パーム油をエステル交換する時には、対称型トリグリセリドのSUSを減少させるために、1位及び3位に加えて2位に対してもエステル交換活性を持つリパーゼが好ましい。具体的には、Thermomyces属由来のリパーゼや、Alcaligenes属由来のリパーゼなどが挙げられる。
【0037】
前記ヨウ素価30〜58のパーム系油脂をエステル交換した後、一般的に食用油脂に適用される分別方法を用いて、分別すれば良い。即ち、パーム系油脂のエステル交換油を温調しながら攪拌して結晶を析出させた後、その油脂を加圧圧搾装置に導入して圧搾して液状部を得ることができる。特に、パーム系油脂のランダムエステル交換油を5〜48時間、当該エステル交換油の融点よりも2〜14℃低い温度で温調しながら攪拌して結晶を析出させ、その油脂を加圧圧搾装置に導入し、前記温度を維持しながら0.5〜5MPaで圧搾して、ヨウ素価が35〜62の液状部を得ることが好ましい。該液状部のヨウ素価は、37〜58がより好ましく、40〜55が更に好ましい。ヨウ素価が上記範囲にあると、パーム系油脂のエステル交換油の分別液状部のトリグリセリド組成を前記範囲に調整することが容易である。前記ヨウ素価は、基準油脂分析試験法2.3.4.1−2013に準拠して測定できる。
【0038】
前記ラウリン系油脂としては、パーム核油、ヤシ油、それらの分別油、及び、それらの硬化油から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
【0039】
本発明のフィリング用油中水型油脂組成物は、本発明の効果を阻害しない限り、上記油脂に加えて、例えば、菜種油、大豆油、サフラワー油、コーン油、米油、綿実油、魚油、シア脂、牛脂、ラード、乳脂等や、それらの分別油、エステル交換油、極度硬化油等を1種又は2種以上の油脂を含むことができ、また、前記パーム系油脂のエステル交換油以外のパーム系油脂を含むこともできる。
【0040】
本発明のフィリング用油中水型油脂組成物は、乳化剤を含有することができる。具体的な乳化剤の構成は特に限定されないが、本発明の効果をより良好に達成する観点から、ポリグリセリンミリスチン酸エステル、ポリグリセリンミリスチン酸エステル以外のポリグリセリン飽和脂肪酸エステル及び/又はグリセリンモノ飽和脂肪酸エステル、ジグリセリンモノオレート及びショ糖エルカ酸エステルを含有することが好ましい。
【0041】
前記ポリグリセリンミリスチン酸エステルの含有量は、0.05〜1.0重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜0.5重量%であり、更に好ましくは0.15〜0.3重量%である。0.05重量%以上であると口溶けがより良好となり、1.0重量%以下であると、耐熱保型性がより良好となる。
【0042】
前記ポリグリセリンミリスチン酸エステル以外のポリグリセリン飽和脂肪酸エステル及び/又はグリセリンモノ飽和脂肪酸エステルの含有量は、0.01〜0.5重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜0.35重量%であり、更に好ましくは0.08〜0.3重量%である。0.01重量%以上であると耐熱保型性がより良好となり、0.5重量%以下であると、口溶けがより良好となる。
【0043】
前記ジグリセリンモノオレートの含有量は、0.01〜0.5重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜0.4重量%であり、更に好ましくは0.08〜0.3重量%である。0.01重量%以上であるとクリーミング性がより良好となり、0.5重量%以下であると、これによる異味を回避できる。
【0044】
前記ショ糖エルカ酸エステルの含有量は、0.01〜0.5重量%が好ましく、より好ましくは0.05〜0.4重量%であり、更に好ましくは0.08〜0.2重量%である。0.01重量%以上であるとクリーミング性がより良好となり、0.5重量%以下であると、これによる異味を回避できる。
【0045】
また、本発明のフィリング用油中水型油脂組成物は、必要に応じて、前記以外の乳化剤を、本発明の効果を損なわない範囲でさらに含有することができる。そのような乳化剤としては、例えば、レシチン、ソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができる。
【0046】
本発明のフィリング用油中水型油脂組成物は、上記以外のその他の成分として、本発明の効果を阻害しない範囲内において、必要に応じ、一般的にフィリング用油中水型油脂組成物に用いられる成分を含有することができる。そのような成分としては、例えば、呈味素材、香料、着色料及び酸化防止剤等を挙げることができる。
【0047】
前記呈味素材としては、乳製品、糖類、風味エキス類、その他呈味を有する原料等を挙げることができる。前記乳製品としては、全粉乳、脱脂粉乳、練乳粉、乳脂の加熱処理物または酵素処理物、牛乳、加糖練乳、発酵乳、生クリーム、チーズ等を挙げることができる。前記風味エキス類としては、昆布エキス、発酵調味料等を挙げることができる。前記その他呈味を有する原料としては、卵黄、全卵、コーヒー、カカオ原料、抹茶、緑茶、餡類、果汁、果肉、野菜ペースト、粉末野菜等を挙げることができる。
【0048】
前記香料としては、ミルクフレーバー、バターフレーバー等を挙げることができる。
【0049】
前記着色料としては、β−カロチン、アナトー色素等を挙げることができる。
【0050】
前記酸化防止剤としては、トコフェロール、トコトリエノール、ローズマリー抽出物、茶抽出物、甘草抽出物等を挙げることができる。
【0051】
本発明のフィリング用油中水型油脂組成物の製造例を以下に例示する。油脂に対して、必要に応じて乳化剤、着色料、酸化防止剤等の油溶性原料を混合し、撹拌しながら60〜75℃になるまで加熱し油相を調製する。また、水に対して、必要に応じて呈味素材等の水溶性原料を添加し、撹拌しながら60〜75℃になるまで加熱して殺菌し、水相を調製する。そして油相を撹拌しながらそこへ水相を添加していき、乳化させた後、急冷捏和して、本発明のフィリング用油中水型油脂組成物を得ることができる。
【0052】
本発明のフィリング用油中水型油脂組成物は、そのままフィリングとして用いることができる。また、風味や色味を強化するため、前記フィリング用油中水型油脂組成物に呈味素材、香料、着色料及び乳脂を追加で後合わせたものを、フィリングとして用いることができる。後合せする呈味素材、香料及び着色料としては、上述した呈味素材、香料及び着色料を使用することができる。また、この場合、フィリング全体に対する本発明のフィリング用油中水型油脂組成物の含有量は、目的に応じて適宜決定することができるが、一例として、40〜80重量%であることが好ましい。呈味素材、香料、着色料及び乳脂を後合わせする場合は、呈味素材、香料、着色料及び乳脂を水又は油脂に溶解もしくは分散させて後合わせすることができる。
【0053】
本発明のフィリングは、バタークリーム、サンドクリーム、マーガリン等の加工油脂製品として広く使用できる。例えば、甘味を持つバタークリーム、塩味を持つ生食用マーガリン、果物などの呈味原料を加えたクリーム等として用いることができる。また、これらの加工油脂製品は、菓子パン、食パン、デニッシュ、シュー、ドーナツ、ケーキ、クッキー、ハードビスケット、ワッフル、スコーン等のパン、菓子類をはじめとする食品のフィリングとして広く使用できる。
【0054】
本発明のフィリング用油中水型油脂組成物は良好な耐熱保型性を有するので、例えば夏場などの気温が高くなる時期においても、形状の崩れがなく優れた保型性を保つことができる。
【0055】
また、本発明のフィリング用油脂組成物は良好なクリーミング性を有するので、当該組成物から低比重のクリームを容易に作製することができる。
【0056】
さらに、本発明のフィリング用油脂組成物は良好なスプレッド性を有するので、パン生地等に容易に塗布することができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0058】
<トランス脂肪酸含量の測定>
実施例及び比較例におけるフィリング用油中水型油脂組成物に含まれる油脂の構成脂肪酸全体に対するトランス脂肪酸含量の測定は、AOCS Ce 1f−96に準じて行った。
【0059】
<SSS含量、S2U含量、SU2含量の測定>
実施例及び比較例におけるフィリング用油中水型油脂組成物の油脂全体に対するSSS含量、S2U含量、SU2含量の測定は、基準油脂分析試験法2.4.6.2−2013に準拠して高速液体クロマトグラフ法により行った。
【0060】
<SSU/SUS(重量比)の測定>
実施例及び比較例におけるフィリング用油中水型油脂組成物の油脂全体中におけるSSU/SUS(重量比)の測定は、HPLCを用いて硝酸銀カラムにより行った。分析条件は、「Journal of the American Oil Chemists Society, 68, 289−293, 1991」記載の方法に準拠した。
【0061】
<C121212及びC121214の合計量の測定>
121212及びC121214の合計量の測定は、基準油脂分析試験法2.4.6.1−2013に準拠してガスクロマトグラフ法により行った。
【0062】
<SFC(固体脂含量)の測定>
実施例及び比較例におけるフィリング用油中水型油脂組成物の油脂のSFCの測定は、基準油脂分析試験法2.2.9−2013に定められた方法に従い、20℃又は30℃で、NMR法により行った。
【0063】
<ヨウ素価の測定>
実施例及び比較例におけるヨウ素価の測定は、日本油化学会制定、基準油脂分析試験法2.3.4.1−2013に準拠して行った。
【0064】
<口溶けの評価>
実施例及び比較例で得られたフィリング用油中水型油脂組成物を、20gずつポリカップに小分けして20℃の恒温槽で3時間温調した後、熟練した10名のパネラーにそのまま食べてもらい、以下の基準により官能評価を実施し、それらの平均点を評価値とした。
5点:口溶けが極めて良好である
4点:口溶けが非常に良好である
3点:口溶けが良好である
2点:口溶けが悪い
1点:口溶けが非常に悪い
【0065】
<耐熱保型性の評価>
実施例及び比較例で得られたフィリング用油中水型油脂組成物を、10gずつポリカップに小分けして35℃の恒温槽で6時間温調した後の状態を目視で観察し、以下の基準で評価した。
5点:極めて耐熱保型性がある
4点:非常に耐熱保型性があり、ダレがない
3点:耐熱保型性があり、殆どダレがない
2点:耐熱保型性が劣り、ややダレが生じる
1点:耐熱保型性がなく、ダレが生じる
【0066】
<クリーミング性の評価>
実施例及び比較例で得られたフィリング用油中水型油脂組成物を300gずつ20℃に調温し、卓上ミキサーでホイッパーを使用し、中速(回転速度120rpm)でクリーミングし、以下の基準で評価した。
5点:比重0.65に達するまでに要する時間が4分未満で極めて良好
4点:4分以上7分未満で比重0.65とすることができ非常に良好
3点:7分以上10分未満で比重0.65とすることができ良好
2点:比重0.65に達するまでに10分以上かかり、やや不良
1点:比重0.65に達せず不良
【0067】
<スプレッド性の評価>
クリーミング性評価により、比重が0.65になったフィリング用油中水型油脂組成物を100gずつ20℃に調温し、スポンジ生地に塗布し、その時のスプレッド性(塗布しやすさ)を以下の基準で評価した。
5点:極めてスプレッド性がある
4点:非常にスプレッド性があり、塗布しやすい
3点:スプレッド性がある
2点:スプレッド性が劣り、塗布しにくい
1点:スプレッド性がない
【0068】
(製造例1) パーム系油脂のエステル交換油脂の分別液状部の作製
脱酸処理されたパームステアリン(ヨウ素価35)100重量部を500Paの減圧下で90℃に加熱し、0.2重量部のナトリウムメチラートを加えて30分攪拌してランダムエステル交換した。水洗した後、500Paの減圧下、90℃において2重量部の白土を加えて脱色した。脱色後の油脂を、70℃に加熱して完全に溶解し、46℃で攪拌しながら24時間晶析した。晶析後、3MPaでフィルタープレスして液状部を得た。得られた液状部を240℃、200Paの条件で1時間脱臭して、ヨウ素価43のパーム系油脂のエステル交換油脂の分別液状部を得た。
【0069】
(実施例1)
製造例1で作製したパーム系油脂のエステル交換油脂の分別液状部を調合油中に55重量%、パーム核油を25重量%、菜種油を20重量%混合し調合油を作製した。この調合油82重量%に対し、ポリグリセリンミリスチン酸エステル0.15重量%、グリセリンモノ飽和脂肪酸エステル0.15重量%、ジグリセリンモノオレート0.15重量%、ショ糖エルカ酸エステル0.15重量%、レシチン0.15重量%を溶解させ、油相とした。水相に粉乳1.5重量%、ミルクエキスパウダー0.13重量%を添加し、全体が100%となるように水の量を調整した。油相に水相を添加し、攪拌機で攪拌して油中水型に乳化し、83℃のプレート殺菌後、急冷捏和装置で急冷して捏和し、フィリング用油中水型油脂組成物を得た。得られたフィリング用油中水型油脂組成物について、各評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0070】
【表1】
【0071】
(実施例2)
表1に示す配合に従って、パーム系油脂のエステル交換油脂の分別液状部と、パーム核油と、菜種油の配合量を変更し、ポリグリセリンミリスチン酸エステル、グリセリンモノ飽和脂肪酸エステル、ジグリセリンモノオレート、及びショ糖エルカ酸エステルを添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてフィリング用油中水型油脂組成物を得た。得られたフィリング用油中水型油脂組成物について、各評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0072】
(実施例3及び5)
表1に示す配合に従って、パーム系油脂のエステル交換油脂の分別液状部と、パーム核油の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にしてフィリング用油中水型油脂組成物を得た。得られたフィリング用油中水型油脂組成物について、各評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0073】
(実施例4、及び比較例1〜3)
表1に示す配合に従って、パーム系油脂のエステル交換油脂の分別液状部と、パーム核油と、菜種油の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にしてフィリング用油中水型油脂組成物を得た。得られたフィリング用油中水型油脂組成物について、各評価を行い、その結果を表1に記載した。
【0074】
実施例1のフィリング用油中水型油脂組成物は、口溶け、耐熱保型性、クリーミング性、スプレッド性のいずれも極めて良好であった。実施例2のフィリング用油中水型油脂組成物は、口溶け、耐熱保型性、スプレッド性は非常に良好であり、クリーミング性も良好であった。実施例3のフィリング用油中水型油脂組成物は、口溶けは極めて良好で、クリーミング性、スプレッド性は非常に良好であり、耐熱保型性も良好であった。実施例4及び5のフィリング用油中水型油脂組成物は、耐熱保型性、スプレッド性は極めて良好であり、口溶け、クリーミング性は非常に良好であった。
【0075】
一方、比較例1のフィリング用油中水型油脂組成物は、口溶けは極めて良好、スプレッド性は非常に良好であり、クリーミング性も良好であったが、耐熱保型性が悪かった。比較例2のフィリング用油中水型油脂組成物は、耐熱保型性は極めて良好、スプレッド性は良好であったが、口溶け、クリーミング性が悪かった。比較例3のフィリング用油中水型油脂組成物は、口溶けは極めて良好、クリーミング性は非常に良好であり、スプレッド性も良好であったが、耐熱保型性が悪かった。
【0076】
(実施例6)
表2に示す配合に従って、パーム系油脂のエステル交換油脂の分別液状部と、パーム核油と、菜種油の配合量を変更すると共に、油相にパーム油を添加した以外は、実施例1と同様にしてフィリング用油中水型油脂組成物を得た。得られたフィリング用油中水型油脂組成物について、各評価を行い、その結果を表2に記載した。
【0077】
【表2】
【0078】
(実施例7及び8)
表2に示す配合に従って、パーム系油脂のエステル交換油脂の分別液状部と、パーム核油と、菜種油の配合量を変更した以外は、実施例1と同様にしてフィリング用油中水型油脂組成物を得た。得られたフィリング用油中水型油脂組成物について、各評価を行い、その結果を表2に記載した。
【0079】
(実施例9)
表2に示す配合に従って、パーム系油脂のエステル交換油脂の分別液状部と、パーム核油と、菜種油の配合量を変更すると共に、油相にパーム極度硬化油を添加した以外は、実施例1と同様にしてフィリング用油中水型油脂組成物を得た。得られたフィリング用油中水型油脂組成物について、各評価を行い、その結果を表2に記載した。
【0080】
(比較例4)
表2に示す配合に従って、パーム系油脂のエステル交換油脂の分別液状部を添加せず、パーム核油と、菜種油の配合量を変更すると共に、油相にパーム油を添加した以外は、実施例1と同様にしてフィリング用油中水型油脂組成物を得た。得られたフィリング用油中水型油脂組成物について、各評価を行い、その結果を表2に記載した。
【0081】
(比較例5)
表2に示す配合に従って、パーム系油脂のエステル交換油脂の分別液状部と、パーム核油の配合量を変更し、菜種油を添加しなかった以外は、実施例1と同様にしてフィリング用油中水型油脂組成物を得た。得られたフィリング用油中水型油脂組成物について、各評価を行い、その結果を表2に記載した。
【0082】
実施例6のフィリング用油中水型油脂組成物は、耐熱保型性は極めて良好で、口溶けも非常に良好で、クリーミング性、スプレッド性は良好であった。実施例7のフィリング用油中水型油脂組成物は、口溶け、スプレッド性は極めて良好で、耐熱保型性、クリーミング性も非常に良好であった。実施例8のフィリング用油中水型油脂組成物は、耐熱保型性は極めて良好で、口溶け、クリーミング性も非常に良好で、スプレッド性は良好であった。実施例9のフィリング用油中水型油脂組成物は、耐熱保型性、クリーミング性、スプレッド性は非常に良好で、口溶けは良好であった。
【0083】
一方、比較例4のフィリング用油中水型油脂組成物は、口溶けは非常に良好で、耐熱保型性は良好であったが、クリーミング性とスプレッド性が悪かった。比較例5のフィリング用油中水型油脂組成物は、耐熱保型性は極めて良好であったが、口溶け、クリーミング性、スプレッド性は悪かった。