【実施例1】
【0014】
<概要>
本実施例にかかる誘導灯は、電波により時刻の校正が可能であり、校正された時刻による計時と、誘導灯自身が点滅するタイミングを定めたタイミング情報とに基づいて点滅制御が可能である。
図1は本実施例にかかる誘導灯の動作の概要を示した図である。この図に示すように、複数の誘導灯の灯具が並べて設置されている。
図1では6個の誘導灯が3個ずつの2つのグループ(0101)(0102)に分けられている。これらの誘導灯は所定の点灯タイミングが到来するとそれぞれが点灯する。点灯タイミングは標準電波などにより校正された時刻に基づく。時刻校正は校正周期が到来すると実行される。ここで、時刻T1において校正周期が到来し、各誘導灯は電波を受信し、受信した時刻情報によりすべての誘導灯の時刻がT1として同期される。時刻T1では灯具1の点灯タイミングであるとのタイミング情報より灯具1が点灯している。次にT1からδ秒後である時刻T1+δでは灯具2の点灯タイミングであるとのタイミング情報より灯具2が点灯している。さらにそのδ秒後の時刻T1+2δでは灯具3の点灯タイミングであるとのタイミング情報より灯具3が点灯している。次の時刻T2=T1+3δでは再び灯具1の点灯タイミングであるから灯具1が点灯する。すなわち、点灯タイミングは各グループ内で、基準となる時刻T1、T2、…から0秒、δ秒、2δ秒だけ遅延して点灯させるように各誘導灯で設定されている。こうして複数並べられた誘導灯が点灯し、光が流れるようにみえる。
【0015】
各誘導灯はタイミング情報として点灯周期Tでもたらされる時刻T1、T2、…とグループ内の点灯時差0、δ、2δ、…を保持しており、これに基づいて点灯を行う。一方、TはGの約数であることから、校正周期Gが到来する時刻には必ずT1、T2…のいずれかで示される点灯周期が到来する。これにより、校正のタイミングには必ず灯具1の点灯タイミングとなるため、時刻校正により点灯がリセットされても光の流れが乱れて見えることはない。かりに、TがGの約数でなかった場合には、校正タイミングにおいて灯具1の点灯タイミングにならない。すると、校正タイミングの到来によりリセットが実行され灯具1が初めから点灯することとなるため、光の流れに乱れが生ずることになる。
【0016】
以下では、本実施例の誘導灯の機能及びハードウェアの内容、並びに、処理の流れについて、詳細に説明する。
【0017】
<機能的構成>
図2は、本実施例にかかる誘導灯の機能的構成を示す図である。本実施例にかかる誘導灯(0200)は、「時刻校正部」(0201)と、「タイミング情報保持部」(0202)と、「制御部」(0203)と、「灯具」(0204)と、を有する。
【0018】
「時刻校正部」(0201)は、電波によって校正周期で時刻校正をする機能を有する。「電波」とは時刻情報が含まれるものを指す。具体的には、標準電波(日本においては情報通信研究機構が長波により発信しているもの)やGPS衛星が発信している情報が該当する。標準電波においては1秒毎に発信される1ビットのタイミング情報や、1秒毎に発信される1ビットの情報に畳み込まれており60秒毎に取得可能な時刻情報(年、月、日、曜日、時、分)などがこれに含まれる。GPSでは取得時刻の情報(時、分、秒)などが含まれる。これら以外にも、NTPサーバ等の時刻情報を送信機で送信したものを受信した情報をも含まれる。「校正周期(Gで示す。)」は時刻の校正を行う周期であって、上記「電波」を取得して後述する「制御部」(0203)内に保持されている時刻情報を修正する周期である。時刻校正は、電波を受信して校正周期が到来すると制御部(0203)に対して割り込みを発生させる等の処理により行われる。本部の機能は、無線通信モジュールと、タイマモジュールと、CPUと、RAMと、RAM上に保持された校正周期Gと、RAM上に保持されCPUにて実行される時刻校正プログラムとにより実現される。
【0019】
「タイミング情報保持部」(0202)は、時刻に基づく計時に応じて自身が点滅するタイミングを定めたタイミング情報を保持する機能を有する。「タイミング情報」は上記で示した通り、点灯周期Tがもたらす基準時刻T1、T2、…と、点灯周期からの遅延時間0、δ、2δ、…からなる。ここで1グループに属する誘導灯が3台であった場合には、遅延時間はそれぞれ0、T/3、2T/3となる。δは0、δ、2δのように設定されていてもよいし、基準となる時刻を途中にして−δ、0、+δのように設定されていてもよい。これら遅延時間は誘導灯に設けられたスイッチ等にて設定される。ここで、点灯周期Tは校正周期Gの約数である必要がある。例えば、校正周期Gが60秒の場合、点灯周期は0.6秒などに設定するとよい。そうすると、毎回の校正周期到来時に点灯周期が到来することになり、60秒毎に基準となるタイミング(すなわちTの到来)を複数の誘導灯間で共有することができる。かりに、点灯周期を0.7秒などとすると、校正周期が到来する60秒後の直前の59.5秒後に点灯周期が来て点灯し、さらにその0.5秒後に校正周期が訪れてリセットによる点灯が実行されるので、光が流れるように見えず留まっているように見えてしまう。本部の機能は、誘導灯に設けられたスイッチ等のU/I(User Interface)と、CPUと、RAMと、RAM上に保持された点灯周期Tと、Tにより求められる基準時刻T1、T2、…と、遅延時間0、δ、2δ、…等により実現される。
【0020】
上記のとおりタイミング情報は点灯タイミングを定めるものであるが、さらに消灯のタイミングをも定めるものでもよい。例えば、点灯時間を値mとして保持しておき、制御部が読み込み可能としていてよい。
【0021】
図3は校正周期の間に内部時計の計時誤差に起因して点灯タイミングがずれることによって生ずる現象を説明するためのタイミングチャートである。
図3(A)に示すように誘導灯は点灯周期Tnが到来すると点灯時間m秒だけ点灯を実行する。ここで、内部時計のズレにより、
図3(B)のようにΔt秒早く点灯を実行したとする。その点灯時間中に校正周期Gが訪れると、誘導灯のタイマがリセットされて点灯周期の最初から点灯を実行することとなる。このとき、点灯したままの状態で、誘導灯のタイマのリセットを実行し、Δt+m秒間の点灯を実行する。ここで
図3(C)に示すようにΔtは最大で点灯時間のm秒である。このように本実施例の誘導灯は、点灯タイミングがずれることにより本来の点灯タイミングより早く点灯が実行された場合に、点灯中に校正周期Gが到来すると点灯したままでリセット動作を実行し点灯周期の初めから点灯を実行する事が可能である。これにより、点灯タイミングがずれたとしても光の流れの見え方に最小限の影響に留めることが可能である。
【0022】
ところで、Δtの最大値m秒は、大きくなるほど点灯タイミングのズレを許容する事ができるので、校正周期Gをより長く取ることが可能となる。校正周期Gをより長くとれることによって校正回数を減らすことができ、校正処理で生ずる消費電力を低減することが可能となるため誘導灯の動作時間の延長に寄与する事ができる。また、内部時計の精度によって点灯タイミングのズレの許容量を最適化するといったことも可能である。すなわち、計時誤差がより小さい内部時計である場合には校正周期Gの到来までに生ずる誤差が小さいため許容量mは小さくて済む。反対に、計時誤差が大きい内部時計である場合には許容量mを大きくすることによって、時刻校正時の光の流れの乱れの発生を少なくすることができる。
【0023】
「制御部」(0203)は、タイミング情報に基づいて灯具を点滅制御するための機能を有する。タイミング情報保持部(0202)に保持されている基準時刻T1、T2、…を読み込み、自身が点灯(消灯)すべきタイミングで点灯(消灯)させる。点灯のタイミングは時刻校正部(0201)により校正される。具体的には、タイマのカウントにより周期Tで灯具を点灯させる制御を行う。校正周期Gが到来すると、時刻校正部(0201)より割り込みなどのシグナルを受信し、タイマをリセットする処理を実行する。そしてリセットから、各誘導灯に設定され上記δで示した遅延時間(0、δ、2δ、…等)分だけ経過後に灯具を点灯させるといった具合である。当部の機能はタイマと、CPUと、RAMと、RAMに格納されCPUにて実行される制御プログラムとにより実現される。
【0024】
「灯具」(0204)は、制御部(0203)の制御に応じて点滅する機能を有する。具体的には、制御部(0203)よりON信号あるいはOFF信号を受け取り、点灯あるいは消灯する。灯具は太陽電池を有しており、太陽光により充電池を充電が可能であるものでもよい。発光部分においては、省電力の観点からLEDを採用したものが望ましい。灯具の機能は基本的にはLED、電源である電池等により実現される。
【0025】
<処理の流れ>
【0026】
図4は、本実施例にかかる誘導灯を用いた場合の処理の流れを示すフローチャートである。本発明の誘導灯の処理は、まず校正周期が到来している否かを判断する(ステップS0401)。校正周期が到来した場合には時刻の校正を実行する(ステップS0402)。校正された時刻において、点灯タイミングか否かの判断を行う(ステップS0403)。点灯タイミングであった場合には、制御に応じて点滅を実行する(ステップS0404)。最後に終了か否かの判断を行い(ステップS0405)、終了でなければ最初の処理である校正周期の到来の成否の判断(ステップS0401)に戻る。
【0027】
<ハードウェア構成>
図5は、本実施例にかかる誘導灯のハードウェア構成を示す図である。以下、この図を用いて説明する。この図にあるように、本実施例にかかる誘導灯は、各種演算処理を行う「CPU(中央演算装置)」(0501)と、「ROM」(0502)と、「RAM」(0503)を備えている。また、他の誘導灯と通信するための「無線通信モジュール」(0504)や、点灯モード(δ、2δ、…)の切り替えを行うボタンやスイッチなどの「U/I(ユーザインターフェース)」(0505)や、計時を行う「タイマモジュール」(0506)や、「I/Oポート」(0507)を介して「灯具」(0508)等が接続されている。そして、それらが「システムバス」(0509)等のデータ通信経路によって相互に接続され、情報の送受信や処理を行う。
【0028】
「RAM」(0503)は、各種処理を行うプログラムを「CPU」(0501)に実行させるために読み出すと同時にそのプログラムの作業領域でもあるワーク領域を提供する。また、この「RAM」(0503)にはそれぞれ複数のアドレスが割り当てられており、「CPU」(0501)で実行されるプログラムは、そのアドレスを特定しアクセスすることで相互にデータのやりとりを行い、処理を行うことが可能になっている。
【0029】
ここで、「タイマモジュール」(0506)はソフトウエアで実装されたタイマでもよいが、基板上に水晶発振子などを備えたRTCモジュール等を使用すればより正確な計時が可能となり望ましい。
【0030】
まず、ROM(0502)に格納されていた1.時刻校正プログラムがRAM(0503)上に展開され、CPU(0501)にて実行される。このときRAM(0503)に保持されている校正周期Gの値を同プログラムが読み込む。同プログラムはタイマモジュール(0506)より時刻を取得し、校正周期Gの到来を待つ。校正周期が近づくと、無線通信モジュール(0504)により電波を受信し、時刻情報を取得し、時刻校正処理を実行する。時刻校正処理は受信された時刻情報により校正周期の到来時刻になると割り込みを発生させ、これによりタイマモジュール(0506)のカウンタをリセットする等の方法で実行される。
【0031】
1.時刻校正プログラムの実行と同時に、ROM(0502)に格納されていた2.制御プログラムもRAM(0503)上に展開され、CPU(0501)にて実行される。同プログラムは、RAM(0503)に格納されているT1、T2、…やδ、2δ、…の値を読み込み、タイマモジュール(0506)の計時に基づいて周期Tにて灯具(0508)を点滅させる。なお、ディップスイッチ等のU/I(0505)により、グループ内での点灯順序が設定されている。例えばグループ内で3つの誘導灯を点灯させる場合、それぞれの点灯順序は基準となる時刻、T1、T2、…からの遅延時間を0、δ、2δとすることができる。これらの情報についても2.制御プログラムが読み込む。具体的にはタイマモジュールで周期Tをカウントし、基準時刻T1、T2、…が到来すると、グループ内での点灯順序に応じてδ、2δ…分だけさらにカウントして点灯タイミングが到来すると灯具(0508)を点灯させる。ここで校正周期Gが到来することで1.時刻校正プログラムからの割り込みが生じると、タイマモジュールのカウンタをリセットし、点灯順序の初めから点滅動作を開始する。本実施例の誘導灯はTがGの約数であることにより、校正周期Gが到来したタイミングでは必ず基準時刻T1、T2、…が到来し点灯順序の初めから点滅動作を開始するので、リレー点灯の光の流れが乱れることがない。
【実施例2】
【0032】
<概要>
本実施例の誘導灯は、実施例1の誘導灯を基本として、リレー点灯する場合に灯具設置間隔(Lとする)や1グループに属する誘導灯の数(nとする)を変化させることによってその光の流れの速度Vを制御可能である。
【0033】
図1のように複数並べられた誘導灯がリレー点灯する場合の誘導速度Vは、上記δ(=T/n)と、誘導灯の設置間隔である灯具設置間隔Lと関連がある。なぜなら、同じ時間で光が推移していったとしても、誘導灯の設置間隔により光の流れが速く見えたり、遅く見えたりするからである。ここで、光の流れる速さV[Km/h]は灯具設置間隔L[m]を光が推移する時間(δ=T/n)[100ミリ秒]で割ったもので求められる。すなわち
V[Km/h]=L[m]/(T/n[100msec])×36000÷1000
の関係が成立する。
【0034】
Vの値の範囲であるが、設置場所の交通の流れに合わせ、いかなる値をとっても良いが、交通の流れに対してVが極端に速すぎる、又は遅すぎると、光が流れるように見えないといった問題が生ずる。高速道路での使用を考慮に入れた場合には60≦V≦100の範囲に収まるようにL、T、nを定めると望ましい効果が得られる。
図6は灯具の間隔が4mの場合(L=4)にTとnを変化させた場合のVの値の一例を示した図である。この図にあるようにnが3であって、Tが600ミリ秒のときにVは72km/hとなり、例えば約80km/hで走行している車両等に対して、速度を抑制するように誘導する効果がある。また、同様にLが4、nが4であってTが600ミリ秒のときにはVが96km/hとなり、約80km/hで走行している車両に対しては、速度の上昇を促す効果が生じ、渋滞の原因である速度低下を防止することが可能である。なお灯具の間隔(L)の4mは工事現場等で誘導灯を設置することの多い単管バリケードの幅である。