【解決手段】複数の咬合子11を紐状体12で連結した咬合子連結体13を有するスライドファスナー10の咬合子連結体を被縫製物2の端縁部2aに縫着するミシン100であって、被縫製物を送る布送り機構と、咬合子連結体を搬送するファスナー搬送機構40とを備え、当該ファスナー搬送機構は、咬合子連結体の咬合子に咬み合う歯を備えた搬送ギア41と、搬送ギアに回転動作を付与する搬送モーター42と、咬合子連結体を被縫製物の送り方向と同方向に案内するファスナーガイド24とを備えている。
針落ち位置の前記被縫製物の送り方向の上流側で前記咬合子に咬み合う前記搬送ギアと前記針落ち位置の前記被縫製物の送り方向の下流側で前記咬合子に咬み合う前記搬送ギアとを有することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
前記ファスナーガイドは、針板に形成された、前記咬合子連結体の前記複数の咬合子を前記被縫製物の送り方向と同方向に沿って案内する送り溝を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のミシン。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第一の実施形態]
以下、本発明の第一の実施形態としてスライドファスナー製品1及びその縫製に適した千鳥縫いミシン100について詳細に説明する。
図1はスライドファスナー製品1の平面図である。
なお、スライドファスナー製品1としては、衣服、靴類、鞄類などの日用品、その他、非日用品も対象となる。即ち、シート状の被縫製物同士の結合、被縫製物の切り欠き部分や開口の開閉等の用途にスライドファスナー10を使用することができるあらゆる製品を対象とする。
【0022】
スライドファスナー製品1は、スライドファスナー10と、スライドファスナー10が縫着縫製された被縫製物2からなる。
スライドファスナー製品1の被縫製物2は、縫製を行うことが可能なシート状材料全てを対象とする。例えば、被縫製物2は、布、織物、皮、合成樹脂等が挙げられる。
この被縫製物2は、互いに対向する二つの端縁部2aを備えており、当該端縁部2aには、被縫製物2の素材を裏面側に折り返した重ね合わせ部分2bが形成されている。
そして、各端縁部2aには、当該端縁部2aに沿ってスライドファスナー10の一対の咬合子連結体13が個別に縫着されている。
【0023】
本実施形態では、スライドファスナー製品1の被縫製物2の各端縁部2aが直線状である場合を例示する。なお、各端縁部2aの形状は一例に過ぎず、湾曲形状その他の曲線形状であってもスライドファスナー10を適用可能であることは言うまでもない。
そして、以下のスライドファスナー製品1及びスライドファスナー10に関する説明では、被縫製物2の端縁部2aに沿った方向をY軸方向、被縫製物の平面に平行であってY軸方向に直交する方向をX軸方向、被縫製物の平面に垂直な方向をZ軸方向とする。
さらに、スライドファスナー10の一対の咬合子連結体13は、いずれもY軸方向に沿って被縫製物2の端縁部2aに縫着され、スライダー14がこれらの咬合子連結体13を結合させる動作方向(
図1の紙面における上方)を「前」、分離させる動作方向(
図1の紙面における下方)を「後」とし、前方を向いて左手側を「左」とし、右手側を「右」とする。また、
図1の紙面に垂直であって紙面の手前側を「上」、紙面裏側を「下」とする。
この定義に従うとするならば、
図1において、被縫製物2は、当該被縫製物2の表面を上側、裏面を下側に向けた状態で図示されている。
【0024】
[スライドファスナー]
図2はスライドファスナー10の拡大平面図である。
図1及び
図2に示すように、スライドファスナー10は、複数の咬合子11を紐状体12で連結した一対の咬合子連結体13と、一対の咬合子連結体13の結合と分離を行うスライダー14とを有している。
咬合子11は、紐状体12が貫通する脚部111と、脚部111から突出した頭部112とを備え、複数の咬合子11が頭部112を同じ方向に向けた状態で等間隔で紐状体12に固定されて咬合子連結体13を構成している。
【0025】
各咬合子11を連結する紐状体12は、紐状であって強度があり、伸縮性の低いものであれば良く、モノフィラメント、マルチフィラメント、撚糸、撚り紐等、又は、これらの複合材料を使用することができ、紐の構造や種類については特に限定はしない。
また、紐状体12は、撓みやすい軟質のものでもよいが、可撓性を持ちながら外力を受けない状態では真っ直ぐな形状を維持する程度の剛性を有するものであっても良い。
【0026】
一対の咬合子連結体13は、各咬合子11の頭部112が互いに対向するように被縫製物2の各端縁部2aに縫着されている。
スライダー14は、その前端部に各咬合子連結体13が個別に通過するガイド経路が形成され、内部で二つのガイド経路が合流して、後端部では一つのガイド経路となっている。
つまり、スライダー14の前端部側の各ガイド経路に分離した一対の咬合子連結体13が進入すると、各咬合子連結体13のそれぞれの咬合子11の頭部112が咬み合い、スライダー14の後端部を通過するまでに、一対の咬合子連結体13が連結される。
また、逆に、スライダー14の後端部側のガイド経路に結合された一対の咬合子連結体13が進入すると、各咬合子連結体13のそれぞれの咬合子11の頭部112の咬み合い状態が解かれて、スライダー14の前端部を通過するまでに、一対の咬合子連結体13が分離される。
【0027】
図3は咬合子11の斜視図である。
図3は
図1及び
図2における左側の咬合子連結体13の咬合子11を示している。この
図3に従って、以下の咬合子11の説明では、左側の咬合子連結体13の咬合子11の向きで各部の説明を行う。
なお、右側の咬合子連結体13の咬合子11の場合には頭部112の向きが左右逆となるだけであって構造そのものについては同一である。
【0028】
咬合子11は、例えば、ポリアミド、ボリアセタール、ポリブロピレン、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂からなり、紐状体12に対して射出成形することにより、当該紐状体12と一体的に形成されている。
また、咬合子11は、熱可塑性樹脂に限らず、金属、例えば、アルミ合金、亜鉛合金又はマグネシウム合金等を用いてダイカスト成形を行って形成しても良い。
【0029】
各咬合子11は、
図2及び
図3に示すように、脚部111が略直方体形状であり、その幅方向における一方の側面116から他方の側面117にかけて紐状体12が貫通した状態で脚部111に対して固定されている。
なお、「脚部111の幅方向」とは紐状体12の長手方向に沿った方向を示す。
また、脚部111の左端部は被縫製物2の端縁部2aに対向し、右端部は右方に突出した頭部112を有している。そして、頭部112と脚部111の境界部分における前後両側には、Y軸方向に沿って凹んだ凹部113がZ軸方向の全長に渡って形成されている。
これにより、頭部112は、右方に突出しつつもその根元部分が両側の凹部113によってくびれた形状となっており、当該頭部112の前端部及び後端部はいずれも平面視で円弧状に膨出した形状となっている。
一方、各凹部113の平面視の形状は、頭部112の前端部及び後端部の平面視の形状に合致して、円弧状に凹んだ形状となっている。
従って、一対の咬合子連結体13の連結状態では、一方の咬合子連結体13の咬合子11の頭部112の両側の凹部113に対して、他方の咬合子連結体13の隣り合う二つの咬合子11の頭部112の前端部又は後端部が嵌合した状態となる。
これにより、一対の咬合子連結体13の連結状態では、各咬合子11の頭部112同士が互いに前後方向について拘束され、一対の咬合子連結体13が分離しないように保持される。
なお、
図2に示すように、各咬合子連結体13の複数の咬合子11は一定間隔で間を空けて紐状体12に連結されているが、各咬合子11の間隔は、一対の咬合子連結体13同士を連結したときに、各咬合子連結体13の咬合子11の頭部112が他方の咬合子連結体13の凹部113に対して隙間なく嵌合する大きさに設定されている。
【0030】
図4は咬合子11同士の咬み合い状態を一部切り欠いて示した拡大平面図である。
図3及び
図4に示すように、咬合子11の頭部112の突出端部(右端部)には、Y軸方向に沿った凹溝114が形成されている。
さらに、咬合子11の前後両側の凹部113の内側には、凹溝114と同じ高さで右方に突出した板状の突起115が形成されている。
これら凹溝114及び突起115は、一対の咬合子連結体13が連結されると、各咬合子連結体13の咬合子11の前後両側の突起115が、他方の咬合子連結体13の咬合子11の凹溝114内に嵌合する構造となっている。
これにより、一方の咬合子連結体13の各咬合子11の頭部112と他方の咬合子連結体13の各咬合子11の頭部112とが、互いにZ軸方向について拘束し合った状態となり、Z軸方向の外力を受けても連結状態を効果的に維持することができる。
【0031】
[スライドファスナーの縫着における好適な針落ち点の実施例(1)]
スライドファスナー10の縫着方法及び形成される縫い目の針落ち点の実施例(1)について
図2及び
図5に基づいて説明する。
図5は左側の咬合子連結体13における縫い目の針落ち点を後方から見た図である。
スライドファスナー10の各咬合子連結体13は、被縫製物2の端縁部2aに対して、後述する千鳥縫いミシン100により形成される本縫いの縫い目によって縫着縫製が行われる。従って、被縫製物2の表面側では上糸Uによって縫い目が形成され、裏面側では下糸Dによって縫い目が形成される。
【0032】
咬合子連結体13の縫着の際には、
図2に示すように、千鳥縫いミシン100による三点千鳥縫いの縫製によって、一つの咬合子11につき、紐状体12に対する咬合子11の頭部112側への頭部針落ち点a1と、紐状体12に対する被縫製物2の端縁部2a側への端縁部針落ち点a2〜a6とを形成する。これらの針落ち点は、a1からa6まで順番に形成される。
そして、上記咬合子11は、以下の上糸Uと下糸Dによって形成される縫い目t1〜t6によって被縫製物2に対して固定される。
t1:針落ち点a1−a2間で形成される縫い目
t2:針落ち点a2−a3間で形成される縫い目
t3:針落ち点a3−a4間で形成される縫い目
t4:針落ち点a4−a5間で形成される縫い目
t5:針落ち点a5−a6間で形成される縫い目
t6:針落ち点a6−a11(後方隣側の咬合子11の頭部針落ち点a1、但し、便宜上区別するためにここでの説明及び
図2では「a11」と記載する。後述する
図6〜
図10も同様とする)間で形成される縫い目
なお、縫製は三点千鳥縫いに限らず、二点以上の千鳥縫いでもよい。
【0033】
頭部針落ち点a1は、Y軸方向について、固定対象となる咬合子11の脚部111の前側の側面116に近接し、X軸方向について、紐状体12に対する右側であって当該紐状体12に近接する位置である。
この頭部針落ち点a1において、千鳥縫いミシン100は何もない場所に針落ちを行うことになるが、ミシン100の縫い針は上昇する際に紐状体12や咬合子11に摺接して上糸Uのループができ、釜に捕捉されて下糸Dに絡めることができるので、当該頭部針落ち点a1に上糸Uと下糸Dからなる結節を形成することが可能である。
【0034】
端縁部針落ち点a2〜a6は、いずれも、被縫製物2の重ね合わせ部分2bであって、Y軸方向について、固定対象の咬合子11の脚部111のY軸方向の幅の範囲内となる領域R1内に位置している。
さらに、端縁部針落ち点a2〜a6の内の端縁部針落ち点a2,a6の二点だけは、上記領域R1内における、被縫製物2の重ね合わせ部分2bの重ね幅wの半分となる幅w/2を中心として、端縁部2aの先端2aa側の領域R2内に位置することが望ましい。なお、
図2では、領域R1,R2について網掛け表示を行っているが、これは各領域の範囲を明確に示すためである。
また、これら端縁部針落ち点a2,a6の二点は、上記領域R2内において、Y軸方向における一端部(前端部)と他端部(後端部)とに個別に配置されている。
【0035】
なお、上記端縁部針落ち点a2,a6は、上記領域R2内において、極力、前側寄りと後側寄りに配置することが望ましい。
また、上記端縁部針落ち点a2,a6は、上記領域R2内において、X軸方向について、極力、端縁部2aの先端2aa寄りとすることが望ましい。
例えば、
図5に示すように、被縫製物2を折り返して重ね合わせ部分2bを形成すると、被縫製物2の端縁部2aには、X−Y平面に沿った平坦部分と、折り返しにより湾曲した部分とが形成される。
上記端縁部針落ち点a2,a6は、X軸方向について、折り返しにより湾曲した部分の幅vの範囲内に配置することがより望ましい。
【0036】
端縁部針落ち点a3〜a5の三点は、上記領域R1内であって領域R2よりも端縁部2aの先端2aaから離れた領域内であって、Y軸方向について端縁部針落ち点a2と端縁部針落ち点a6の間となる範囲内において、Y軸方向に沿って一列に並んで配置されている。
【0037】
千鳥縫いミシン100は、縫製の際には、被縫製物2の端縁部2aと一方の咬合子連結体13の紐状体12とがそれぞれY軸方向に沿って並び、これらを近接させた状態で前方に送りながら、縫い針をX軸方向に沿って針振りさせて、前側の咬合子11から順番に、咬合子11ごとに各針落ち点a1〜a6に順番に針落ちを行い、本縫いの縫い目t1〜t6を形成して縫着縫製を実行する。
【0038】
上記縫製によって形成された針落ち点a1−a2間の上糸U及び下糸Dからなる縫い目t1と針落ち点a6−a11の上糸U及び下糸Dからなる縫い目t6は、それぞれ固定対象の咬合子11の脚部111のY軸方向の両側の側面116,117を渡るように形成される。
これは、端縁部針落ち点a2,a6の二点が、領域R2内において、前端部と後端部とに配置されたことに起因する。
例えば、
図6の比較例(1)に示すように、端縁部針落ち点a2,a6の二点が領域R2内において、前端部と後端部から離れて中央部に寄っていると、縫い目t1と縫い目t6は、それぞれ側面116,117を渡らずに、脚部111の上面を渡る(下糸Dは下面を渡る)。なお、
図6では、端縁部針落ち点a3,a5の図示を省略している。
しかし、
図2に示すように、端縁部針落ち点a2,a6が、領域R2内における前端部と後端部に位置すると、上糸U及び下糸Dの縫い目t1と縫い目t6は、それぞれ側面116,117を渡るようにすることができる。
【0039】
上記縫い目t1と縫い目t6は、それぞれ側面116,117を渡った状態となることにより、当該縫い目t1,t6を形成する上糸U及び下糸Dは、咬合子11の脚部111における被縫製物2側の角部に当接した状態となる。
これにより、上糸U及び下糸Dが側面116,117から咬合子11を包み込むように保持するため、当該咬合子11がY軸方向に沿って移動することが抑制され、咬合子11の頭部112がY軸方向に沿って揺動することが抑制され、咬合子11の頭部112がY軸回りに揺動することが抑制される。従って、スライドファスナー製品1では、スライダー14による円滑な連結又は分離動作が可能となる。
これに対して、縫い目t1と縫い目t6が
図6のように渡っている場合には、当該縫い目t1,t6を形成する上糸U及び下糸Dが脚部111の角部に当接しないので、上記各方向の移動や揺動を抑えることができない。また、スライダー14による円滑な連結又は分離動作は困難となる。
【0040】
また、比較のために、咬合子11に対して、針落ち点a2及びa6を除いた針落ち点a1,a3,a4,a5で縫い目を形成する縫着縫製を行った場合の比較例(2)を
図7に示す。
この比較例(2)の場合、針落ち点a1−a3間で形成される縫い目の上糸U及び下糸Dと、針落ち点a5−a11間で形成される縫い目の上糸U及び下糸Dが、それぞれ側面116,117を渡り、脚部111における被縫製物2側の角部に当接した状態となった場合でも、縫い目t1,t6と同様の効果を得ることはできない。
この比較例(2)では、針落ち点a2及びa6がなく、針落ち点a3及びa5は、咬合子11の脚部111の角部から離れているので、当該角部を通じて咬合子11を拘束する効果が薄く、また縫い目が角部を乗り上げて脚部111の上面を渡る可能性も高くなるため、前述した咬合子11の移動や揺動を十分に抑えることができない。
【0041】
また、好適な針落ち点の実施例(1)では、被縫製物2の重ね合わせ部分2bにおける、端縁部針落ち点a2,a6よりも頭部針落ち点a1から遠方となる位置に端縁部針落ち点a3〜a5を形成している。これにより、重ね合わせ部分2bにおける被縫製物2の撓みを効果的に抑えることができるので、咬合子11の移動及び揺動をより効果的に抑えることができる。
また、端縁部針落ち点a3〜a5の三点は、領域R1よりも端縁部先端2aaから離れた領域内に配置されてもよい。その場合、針落ち点a2−a3間で形成される縫い目t2と、針落ち点a5−a6間で形成される縫い目t5の上糸U及び下糸Dによって、重ね合わせ部分2bを保持するため、重ね合わせ部分2bにおける被縫製物2の撓みを抑えることができる。
【0042】
また、上述したそれぞれの縫い目t1〜t6は、いずれも本縫いの縫い目なので、糸張力の調節により各咬合子11の拘束力を容易に高めることができ、咬合子11の移動及び揺動をさらに効果的に抑えることができる。
【0043】
[スライドファスナーの縫着における好適な針落ち点の実施例(2)]
スライドファスナー10の縫着方法及び形成される縫い目の針落ち点の実施例(2)について
図8に基づいて説明する。
図8はスライドファスナー10を好適な針落ち点で被縫製物2に縫着したスライドファスナー製品1Aの平面図である。
このスライドファスナー製品1Aは、スライドファスナー10の各咬合子連結体13の各咬合子11を縫着するために、前述した頭部針落ち点a1と前述した端縁部針落ち点a2,a6を形成して縫着を行う。また、前述した端縁部針落ち点a3〜a5は形成しない。
頭部針落ち点a1と端縁部針落ち点a2,a6の形成位置については、前述したスライドファスナー製品1と同じである。従って、端縁部針落ち点a2,a6は、被縫製物2の重ね合わせ部分2bの領域R2の前端部と後端部に設けられ、より望ましくは、折り返しにより湾曲した部分の幅vの範囲内とする(
図2,
図5参照)。
【0044】
上記針落ち点a1,a2,a6により、針落ち点a1−a2間で前述した縫い目t1が形成され、針落ち点a2−a6間で縫い目t7が形成され、針落ち点a6−a11間で前述した縫い目t6が形成される。
【0045】
千鳥縫いミシン100は、縫製の際には、被縫製物2の端縁部2aと一方の咬合子連結体13の紐状体12とがそれぞれY軸方向に沿って並び、これらを近接させた状態で前方に送りながら、縫い針をX軸方向に沿って針振りさせて、前側の咬合子11から順番に、咬合子11ごとに各針落ち点a1,a2,a6に順番に針落ちを行い、本縫いの縫い目t1,t7,t6を順番に形成して縫着縫製を実行する。
【0046】
この場合も、縫い目t1と縫い目t6は、それぞれ固定対象の咬合子11の脚部111のY軸方向の両側の側面116,117を渡るように形成される。
これにより、上糸U及び下糸Dが側面116,117から咬合子11を包み込むように保持するため、当該咬合子11がY軸方向に沿った移動、頭部112のY軸方向に沿った揺動及び頭部112のY軸回りの揺動が抑制される。従って、スライドファスナー製品1Aでは、スライダー14による円滑な連結又は分離動作が可能となる。
【0047】
[スライドファスナーの縫着における好適な針落ち点の実施例(3)]
スライドファスナー10の縫着方法及び形成される縫い目の針落ち点の実施例(3)について
図9に基づいて説明する。
図9はスライドファスナー10を好適な針落ち点で被縫製物2に縫着したスライドファスナー製品1Cの平面図である。
このスライドファスナー製品1Cは、スライドファスナー10の各咬合子連結体13の各咬合子11を縫着するために、前述した頭部針落ち点a1と前述した端縁部針落ち点a2〜a6を形成して縫着を行う。なお、端縁部針落ち点a3〜a5は形成することが望ましいが必須ではない。
頭部針落ち点a1の形成位置については、前述したスライドファスナー製品1と同じである。
端縁部針落ち点a2,a6の形成位置は、前述したスライダー14が被縫製物2上を通過する範囲と関連がある。
図9における直線Sは、スライダー14のX軸方向における最も外側となる端部が一対の咬合子連結体13の連結又は分離動作のために移動する際に通過する軌跡を示している。つまり、この直線Sよりも咬合子連結体13側がスライダー14が被縫製物2上を通過する範囲である。そして、端縁部針落ち点a2,a6は、スライダー14が被縫製物2上を通過する範囲内であって、咬合子11の脚部111のY軸方向の幅の内側となる領域R3における前端部と後端部とに設けられている。
一方、端縁部針落ち点a3〜a5は、前述したように、領域R1内とすることが望ましいが、被縫製物2の重ね合わせ部分2bよりも咬合子連結体13に対して遠方に設けてもよい。
【0048】
[スライドファスナーの縫着における針落ち点の他の例]
スライドファスナー10の縫着方法及び形成される縫い目の針落ち点の他の例について
図10に基づいて説明する。
図10はスライドファスナー10を針落ち点の他の例に基づいて被縫製物2に縫着したスライドファスナー製品1Bの平面図である。
このスライドファスナー製品1Bは、スライドファスナー10の各咬合子連結体13の各咬合子11を縫着するために、前述した頭部針落ち点a1と前述した端縁部針落ち点a3〜a5を二重に形成して縫着を行う。また、前述した端縁部針落ち点a2,a6は形成しない。
頭部針落ち点a1と端縁部針落ち点a3〜a5の形成位置については、前述したスライドファスナー製品1と同じである。
【0049】
上記針落ち点a1,a3〜a5により、前述した
図7の比較例(2)と同じ縫い目が二重で形成される。
千鳥縫いミシン100は、縫製の際には、被縫製物2の端縁部2aと一方の咬合子連結体13の紐状体12とがそれぞれY軸方向に沿って並び、これらを近接させた状態で前方に送りながら、縫い針をX軸方向に沿って針振りさせて、前側の咬合子11から順番に、咬合子11ごとに各針落ち点a1,a3〜a5に順番に針落ちを行い、本縫いの縫い目を順番に形成する。
そして、咬合子連結体13の全長に渡って縫い目の形成が終わると、もう一度繰り返し、咬合子連結体13の全長に渡って縫い目の形成を行い、二重の縫い目を形成する。
【0050】
端縁部針落ち点a2,a6による縫い目が形成されないので、一重で縫製した場合には、
図7の比較例(2)のように、咬合子11の拘束力が低くなり、移動や揺動を十分に抑えることができないが、この
図10の例では、二重で縫製を行うので、咬合子11の拘束力を補うことができ、咬合子11の移動や揺動を十分に抑えることが可能となる。
なお、端縁部針落ち点a2,a6による縫い目を形成しつつ二重で縫製を行って、咬合子11をより強固に拘束してもよい。
また、縫目の形成をさらに繰り返すことにより、三重以上の縫目を形成するようにしてもよい。
【0051】
[千鳥縫いミシン]
上記スライドファスナー製品1における一対の咬合子連結体13の被縫製物2に対する縫着縫製に好適なミシンとしての千鳥縫いミシン100について図面に基づいて説明する。
図11は千鳥縫いミシン100の斜視図である。
【0052】
この千鳥縫いミシン100は、ミシンベッド部21を有するミシンフレーム20と、ミシンベッド部21に設けられた針板24の上面の被縫製物2を上から押さえる布押さえ25と、針板24上の被縫製物2に対して縫い針26を上下させるとともに左右に揺動させながら針落ちを行う針上下動機構と、針板24の下側から被縫製物2を送り歯によって所定の布送り方向に送る布送り機構と、縫い針26の上糸Uに対して下糸Dを絡める釜機構と、スライドファスナー10の咬合子連結体13を搬送するファスナー搬送機構40とを備えている。
なお、ファスナー搬送機構40を除く他の構成については、一般的な千鳥縫いミシンが備える周知の構成と同一なので、図示を省略し、簡略的に説明する。
【0053】
[ミシンフレーム]
上記ミシンフレーム20は、千鳥縫いミシン100の全体において下部に位置するミシンベッド部21と、ミシンベッド部21の一端部において上方に立設された立胴部22と、立胴部22の上端部から所定方向に延出されたミシンアーム部23とを備えている。
なお、以下の説明では、千鳥縫いミシン100のミシンベッド部21及びミシンアーム部23における長手方向をX軸方向とし、ミシンベッド部21の針板24側を「左」、立胴部22側を「右」とする。
また、千鳥縫いミシン100は、針板24上でX軸方向に直交する方向に被縫製物2及び咬合子連結体13の搬送を行い、この搬送方向をY軸方向とし、搬送方向下流側を「前」、搬送方向上流側を「後」とする。
また、上記X軸方向及びY軸方向に直交する方向をZ軸方向とし、その一方を「上」、他方を「下」とする。
なお、前述したスライドファスナー製品1について定義されたX〜Z軸方向は、縫着縫製において、上記千鳥縫いミシン100にスライドファスナー製品1の被縫製物2及び咬合子連結体13がセットされた状態において一致する。
【0054】
[針上下動機構]
針上下動機構は、縫い針26を保持する針棒27と、縫製の駆動源となるミシンモーターと、ミシンモーターにより回転駆動を行う上軸と、上軸の回転動作を上下方向の往復動作に変換して針棒27に付与するクランク機構と、針棒を上下動可能に支持する針棒支持台と、針棒支持台をX軸方向に沿って任意に移動させる針振りモーターとを備えている。
この針上下動機構は、ミシンモーターの回転数に応じた縫製速度で縫い針26を上下動させると共に、縫い針26の針落ち位置を咬合子連結体13の搬送方向に直交するX軸方向に沿って任意に移動調節することができる。
【0055】
[釜機構]
釜機構は、針板24の下側に設けられた釜と、ミシンモーターから釜に回転力を付与する伝達機構とを備えている。
釜は、下糸Dを巻いたボビンを格納すると共に外周に剣先を備えている。そして、剣先によって縫い針26に通された上糸のループを捕捉し、当該上糸のループにボビンをくぐらせることで上糸Uに下糸Dを絡め、結節を形成する。
なお、釜は、垂直釜、水平釜等を使用することができ、半回転、全回転のいずれの釜を使用することも可能である。
【0056】
[布送り機構]
布送り機構は、針板24の開口部241(
図12参照)から出没する送り歯と、送り歯に対してZ軸方向の往復動作とY軸方向の往復動作とを合成して伝達する送り伝達機構とを備えている。
送り歯は、針板24に形成された開口部241から出没する鋸歯状の歯を備えており、送り伝達機構は、ミシンモーターから動力を得て、Z軸方向に沿った往復動作とY軸方向に沿った往復動作に変換して送り歯に伝達することで、送り歯は前後上下の往復動作を合成してなる長円運動をY−Z平面内で行い、長円における上部を移動する際に開口部241から歯先が上方に突出しながら前方に移動して、被縫製物2を前方に送ることを可能とする。
また、この布送り機構は、一針ごとのY軸方向の被縫製物2の送り量を任意に調節することが可能である。
また、布送り機構に布送り量を任意に調節する送り調節モーターを設け、送り調節モーターによって送り量を調節する構成にしてもよい。
【0057】
[針板]
図12は針板24の斜視図である。針板24は、ミシンベッド部21の上面における縫い針26の針落ち位置に設けられ、当該針板24の上面は平坦であってミシンベッド部21の上面と面一となるように装備されている。
針板24は、矩形の平板であり、その上面の左半分で当該上面に沿って被縫製物2がY軸方向に沿って搬送される。
【0058】
針板24の中央部には、X軸方向に沿ったスリット状の針穴242が貫通形成されており、針穴242の前後及び左側には前述した送り歯が出没する三つの開口部241が貫通形成されている。針穴242は、X軸方向に沿ったスリット状とすることで、X軸方向に沿った針振りによる針落ちに対応することができる。
【0059】
また、針板24の上面におけるX軸方向の中央部には、Y軸方向に沿った咬合子連結体13の送り溝243が形成されている。この送り溝243は、X軸方向の幅が咬合子11のX軸方向長さにほぼ等しいか僅かに広くなっており、送り溝243内に咬合子連結体13を容れて、当該咬合子連結体13を被縫製物2の搬送方向と同じY軸方向に沿って案内することができる。
なお、送り溝243は、その深さが咬合子11のZ軸方向幅の半分よりも浅く、針板24上の被縫製物2が咬合子11に対して当該咬合子11のZ軸方向の中央に配置されるようになっている。また、送り溝243の前端部及び後端部は溝の内底面がスロープ状に形成されている。
また、前述した針穴242は、送り溝243のY軸方向中央部を横断するように形成されている。
針板24は、送り溝243により、咬合子連結体13を被縫製物2の送り方向と同じY軸方向に案内するファスナーガイドとして機能する。
【0060】
[布押さえ]
図13は針落ち位置周辺の斜視図である。布押さえ25は、ミシンベッド部21に設けられた支持ブラケット251によって針板24上で下方に押圧支持されている。
この布押さえ25は、Y軸方向に沿った矩形板状をなし、その右側の端縁部には下降する縫い針26を避ける半長円状の切り欠き252が形成されている。この切り欠き252は、上方から見て針板24の針穴242の左半分と重合している。
布押さえ25は、支持ブラケット251からの押圧力により、針板24上で搬送される被縫製物2に対して押さえ圧を付与する。
また、この布押さえ25は、上下昇降させる布押さえ昇降モーター253(
図31参照)によって高さ又は押圧力が調節可能となっている。これにより、被縫製物の厚さ等に応じて押さえ圧を替えることができる。
【0061】
[ファスナー搬送機構]
図14はファスナー搬送機構40の平面図、
図15は背面図である。
図示のように、ファスナー搬送機構40は、咬合子連結体13の咬合子11に咬み合う歯を備えた搬送ギア41と、搬送ギア41に回転動作を付与する搬送モーター42と、搬送ギア41を支持する支持機構43と、搬送モーター42から搬送ギア41に回転力を伝達する伝達機構48と、搬送ギア41によって搬送される咬合子連結体13の上方への脱離を抑えるファスナー押さえ49とを備えている。
【0062】
図16は針落ち位置周辺の背面図である。
搬送ギア41は、
図13及び
図16に示すように、Y軸方向に沿った咬合子連結体13の一又は複数の咬合子11の頭部112に咬み合うことが可能な歯を外周に備えた平歯車であり、支持機構43によりZ軸回りに回転可能に支持されている。
搬送ギア41は、そのピッチ幅が、咬合子連結体13の各咬合子11のピッチに一致しており、その歯幅は、咬合子11のZ軸方向幅から針板24上の送り溝243の深さを減じた幅とほぼ等しくなっている。従って、針板24の送り溝243内を搬送される咬合子連結体13の咬合子11の上面と搬送ギア41の上面とが同じ高さとなっている。
また、搬送ギア41は、針落ち位置の右方に配置され、各咬合子11の頭部112を右方に向けた咬合子連結体13に対して右側から咬み合うように配置されている。
従って、搬送ギア41に回転が付与されると、咬合子連結体13をY軸方向に沿って搬送することができる。
【0063】
ファスナー押さえ49は、
図13及び
図16に示すように、針落ち位置の前方において支持機構43のベース板45に支持されており、後方に向かって針落ち位置まで延出されている。
そして、ファスナー押さえ49の延出端部の下面は、針落ち位置において、針板24の送り溝243内の咬合子連結体13の咬合子11の上面に当接又は接近する高さとなっている。
これにより、送り溝243において、搬送ギア41に噛み合う咬合子連結体13が搬送ギア41に対して上方に脱離することを抑止している。
【0064】
また、このファスナー押さえ49は、その延出端部の左側の端縁部には下降する縫い針26を避ける半長円状の切り欠き491が形成されている。この切り欠き491は、上方から見て針板24の針穴242の右半分と重合している。
【0065】
図17は支持機構43のベース板45の上カバー451及び支持アーム44の上カバー441を外した状態の平面図である。
図14及び
図17に示すように、支持機構43は、搬送ギア41を支持する支持アーム44と、支持アーム44を支持するベース板45と、ベース板45をX軸方向に沿って滑動可能に支持するスライドガイド46とを備えている。
【0066】
ベース板45は、X−Y平面に沿った平板であり、針落ち位置と立胴部22の間となる配置で、ミシンベッド部21上にスライドガイド46を介して配置されている。
このベース板45は、支持アーム44を介して搬送ギア41を支持すると共に、搬送モーター42と伝達機構48も支持している。
なお、ベース板45は、その上部に上カバー451が装備されており、ベース板45に支持されている伝達機構48の一部が覆われている。
【0067】
スライドガイド46は、ベース板45に固定連結された可動ブロック461と、X軸方向に沿ってミシンベッド部21上に取り付けられたスライドレール462とからなり、可動ブロック461を通じてベース板45をX軸方向に沿って滑動させることができる。
【0068】
一方、ベース板45の右端部には、当該ベース板45のX軸方向に沿った滑動動作を規制する規制ブラケット452が装備されている。
この規制ブラケット452は、右方に延出され、その延出端部に連結ネジ454を回転操作可能に支持しており、ミシンベッド部21には、連結ネジ454が螺入可能なネジ穴が形成された固定板453が装備されている。
そして、規制ブラケット452の延出端部の左面を固定板453の右面に当接させた状態で連結ネジ454により相互間を連結することにより、ベース板45を縫製時の規定位置に固定することができる。また、連結ネジ454を緩めて規制ブラケット452を固定板453から右方に分離させると、ベース板45を規定位置から右方に移動させることができる。ベース板45を右方に移動させるとベース板45の右端部が固定板453の左面に当接する。この当接位置がベース板45の右側の可動限界である。
【0069】
前述したように、ベース板45は、支持アーム44を介して搬送ギア41を支持しており、搬送ギア41は、搬送される咬合子連結体13の咬合子11に対して右方から接して搬送を行う。
前述したベース板45の縫製時の規定位置は、咬合子連結体13を搬送する場合に、咬合子11の頭部112に搬送ギア41の歯先が適切に噛み合って、回転により搬送することに好適な位置である。
そして、連結ネジ454を緩めて規制ブラケット452を固定板453から分離させたときには、ベース板45の右方への移動により、咬合子連結体13の咬合子11の頭部112に対する噛み合い状態を解除して搬送ギア41の歯先を右方に離隔させることができる。
これにより、例えば、ファスナー搬送機構40のメンテナンスや、針板24から咬合子連結体13を取り外す作業を容易に行うことができる。
【0070】
支持アーム44は、
図14及び
図17に示すように、ベース板45の左端部において、Z軸方向に沿った支軸442を中心に回動可能に支持されており、その回動端部は右斜め後方に向けられている。
そして、支持アーム44は、その回動端部において、支軸411を介して搬送ギア41を回転可能に支持している。
また、支持アーム44の回動端部には、搬送ギア41の外周の歯溝に嵌まる板バネ状のラッチ板412が装備されている。このラッチ板412は、搬送ギア41に向かって一定のバネ圧で押圧接触する突起を有し、搬送ギア41のバックラッシュを防止している。
【0071】
支持アーム44の上部には上カバー441が固定装備されており、当該上カバー441の前端部には引っ張りバネ443の一端部が連結されている。この引っ張りバネ443の他端部はベース板45に連結されており、支持アーム44に支持された搬送ギア41を咬合子連結体13側に接近させる方向に張力を付与している。
【0072】
また、上カバー441の回動端部側には、ベース板45に固定支持された回動角度規制板444の延出端部が遊挿される規制用開口部445が形成されている。
これにより、ベース板45上における支持アーム44は、搬送ギア41がその左限位置から右限位置までの間のみで移動を行うように、回動可能角度範囲が制限されている。
この回動可能角度範囲は、搬送ギア41を、送り溝243に位置する咬合子連結体13の咬合子11の頭部112に対して一定の押圧力で搬送ギア41の歯が適正に噛み合う位置から、咬合子11の頭部112に対して搬送ギア41が噛み合い状態から完全に離れる位置までの間で移動可能とする。
このように、支持アーム44が所定の角度範囲内で回動可能となっていることにより、ベース板45を縫製時の規定位置に保持したままの状態で、例えば手作業で支持アーム44を右方に回動させることができ、縫製終了時に、搬送ギア41と咬合子連結体13の咬合子11との噛み合い状態を解除して、咬合子連結体13を針板24上から取り外すことができる。
【0073】
また、支持アーム44の上カバー441の上面には、搬送ギア41の原点センサー413とその検出板414が装備されている。
検出板414は、搬送ギア41の支軸411の上端部に固定装備され、当該支軸411を中心とする半径方向に延出されている。
原点センサー413は、磁気近接センサーである。この原点センサー413は、上カバー441の上面において、支軸411回りに検出板414が回動する範囲内に設けられ、検出板414が原点センサー413に近接したことにより搬送ギア41の原点位置を検出する。
【0074】
搬送モーター42は、ステッピングモーターであり、伝達機構48を介して、搬送ギア41による咬合子連結体13の送り量を任意に制御することができる。
この搬送モーター42は、
図14及び
図15に示すように、出力軸を下方に向けた状態でベース板45上に取り付けられている。
【0075】
伝達機構48は、
図14〜
図17に示すように、搬送モーター42の出力軸に固定装備された主動プーリ481と、支持アーム44の支軸442に対して回転可能に支持された中間プーリ482と、搬送ギア41の支軸411に固定装備された従動プーリ483と、主動プーリ481から中間プーリ482を経て従動プーリ483に掛け渡されたタイミングベルト484と、タイミングベルト484にテンションを付与するテンションローラー485とを備えている。
【0076】
上記中間プーリ482は、支持アーム44の支軸442に対して回転可能であり、中間プーリ482は支持アーム44の回動動作とは独立して回転することができる。
これに対して、従動プーリ483は、搬送ギア41の支軸411に対して固定装備されており、搬送ギア41も支軸411に対して固定されている。従って、従動プーリ483と搬送ギア41は同時に連動回転を行う。
【0077】
テンションローラー485は、ベース板45の上カバー451に設けられたベルクランク486に支持されており、当該ベルクランク486は、テンションローラー485がタイミングベルト484の外側から内側に向かって圧接する方向に張力を付与する引っ張りバネ487に連結されている。
【0078】
また、このテンションローラー485は、
図17に示すように、タイミングベルト484が、主動プーリ481−中間プーリ482−従動プーリ483の各位置を順番に繋いだ略L字状の形状となるように、タイミングベルト484に圧接している。
タイミングベルト484をこのような形状に維持することにより、支持アーム44の回動操作が行われた場合でも、タイミングベルト484の弛みの発生が低減され、搬送モーター42の出力軸角度と搬送ギア41の回転角度との角度ズレの発生を低減することができる。
【0079】
なお、
図18に示すように、伝達機構48の主動プーリ481、中間プーリ482、従動プーリ483を全て歯付きのプーリとし、タイミングベルト484を歯付きベルトとしてもよい。
【0080】
[千鳥縫いミシンによるスライドファスナー製品の縫製動作]
前述した
図2のスライドファスナー製品1におけるスライドファスナー10の左側の咬合子連結体13を被縫製物2の端縁部2aに縫着する場合を例にして千鳥縫いミシン100の縫製動作について説明する。
【0081】
まず、ファスナー搬送機構40の搬送ギア41の原点検索を実行する。即ち、千鳥縫いミシン100が備える制御装置は、搬送モーター42を駆動して搬送ギア41を回転させ、原点センサー413による検出板414の検出を行う。そして、検出板414が検出されると、搬送モーター42を搬送ギア41の原点位置で停止させる。
そして、ミシンの使用者は、連結ネジ454を回して規制ブラケット452と固定板453との連結状態を解除し、ベース板45を右方に移動させて、搬送ギア41を針落ち位置の右方に退避させる。
【0082】
次に、ミシンの使用者は、針板24の送り溝243に対して、先頭の咬合子11が針落ち位置となるように咬合子連結体13をセットし、咬合子連結体13の左側に端縁部2aが沿うように布押さえ25の下に被縫製物2をセットする。
そして、ベース板45を左方の縫製時の規定位置に移動させて、連結ネジ454を回して、再び、規制ブラケット452と固定板453とを連結する。
【0083】
その後、ミシンモーターの駆動を開始する。縫製中は、
図2における針落ち点a1〜a6への針落ちが繰り返されるように、毎回の針落ちごとに針振りモーター及び搬送モーター42が制御される。ミシンモーターには、エンコーダーが併設され、毎針の針振りモーター、搬送モーター42の制御タイミングが検出される。
【0084】
具体的には、針落ち点a1での針落ちにより縫製が開始されると、ミシンモーターのエンコーダーによって検出される適正なタイミングで、次の針落ちまでに、針落ち点a2までの左方への針振りを針振りモーターが実行し、針落ち点a2までの前方への移動量となるように搬送モーター42が咬合子連結体13の前進送りを実行する。
針落ち点a2から針落ち点a3への位置決め、針落ち点a3から針落ち点a4への位置決め、針落ち点a4から針落ち点a5への位置決め、針落ち点a5から針落ち点a6への位置決め、針落ち点a6から次の咬合子11の針落ち点a1への位置決めも全て上記と同様に行われる。
なお、落ち点a1〜a6への針落ちを行うための針振りモーターの針振り量、搬送モーター42による前進移動量の具体的な数値データは、千鳥縫いミシン100の制御装置が具備するデータメモリ内に予め記憶されているので、毎回の針落ちごとに数値データの読み取りが実行される。
【0085】
上記落ち点a1〜a6への針落ちの繰り返しにより咬合子連結体13の全ての咬合子11の被縫製物2への縫着縫製が完了すると、ミシンモーター、針振りモーター、搬送モーター42が動作を停止する。
そして、ミシンの使用者は、連結ネジ454を回して規制ブラケット452と固定板453との連結状態を解除し、ベース板45を右方に移動させて、搬送ギア41を針落ち位置の右方に退避させる。これにより、被縫製物2及び咬合子連結体13を針板24上から取り外すことができる。
なお、スライドファスナー製品1のスライドファスナー10の一方の咬合子連結体13のみの縫着しか行われていない場合には、他方の咬合子連結体13の縫着も実行する。その場合には、他方の咬合子連結体13を針板24の送り溝243にセットし、一方の咬合子連結体13を縫着する場合に対して被縫製物2の向きは前後入れ替えた状態でセットされ、上記と同様に咬合子連結体13の縫着縫製を実行する。
【0086】
なお、上述したように、各針落ち点a1〜a6への針落ちを行うための針振りモーターの針振り量、搬送モーター42による前進移動量の具体的な数値データはデータメモリ内に予め記憶されている。
そして、
図6〜
図10の各針落ち点に針落ちを行う縫着縫製についても、各針落ち点への針落ちを行うための針振りモーターの針振り量、搬送モーター42による前進移動量の具体的な数値データをデータメモリ内に予め用意することにより、千鳥縫いミシン100により縫着縫製を実行することができる。
【0087】
また、
図19に示すように、ベース板45をX軸方向に沿って移動させることにより、搬送ギア41の針落ち位置に対して離隔する方向に沿った移動動作を実行させるアクチュエーターとしてのエアシリンダー47をミシンベッド部21に設けてもよい。このエアシリンダー47は、ピストンロッドの動作方向がX軸方向に平行になるようにミシンベッド部21上に設けられ、ピストンロッドがベース板45に連結される。
これにより、ベース板45を縫製時の規定位置と搬送ギア41が咬合子連結体13から十分に離間する退避位置との間で移動させることができる。
上記エアシリンダー47は、ピストンロッドの進退動作を実行する電磁弁が千鳥縫いミシン100の制御装置によって制御される。具体的には、被縫製物2及び咬合子連結体13がセットされ、搬送モーター42の原点検索完了後、縫製の開始時又はその前にベース板45を縫製時の規定位置に移動させ、縫製完了後にベース板45を退避位置に移動させる制御が行われる。
【0088】
[第一の実施形態の技術的効果]
上述したスライドファスナー製品1において、
図2の例では、縫製によって、紐状体12に対する咬合子11の頭部112側への頭部針落ち点a1と、紐状体12に対する被縫製物2の端縁部2a側への端縁部針落ち点a2〜a6とを形成している。
さらに、端縁部針落ち点a2,a6については、被縫製物2の重ね合わせ部分2b内であって、X軸方向について、重ね合わせ部分2bの重ね幅wの二分の一であるw/2よりも端縁部先端2aa側の範囲内であって、Y軸方向について、咬合子11の脚部111の幅の内側の範囲となる領域R2の一端部と他端部の二箇所に設けられている。
そして、頭部針落ち点a1から端縁部針落ち点a2に渡る縫い目t1の上糸U及び下糸Dと、端縁部針落ち点a6から隣の咬合子11の頭部針落ち点a1(
図2における頭部針落ち点a11)に渡る縫い目t6の上糸U及び下糸Dとが、それぞれ咬合子11の脚部111のY軸方向の両側の側面116,117を渡るように縫製が行われている。
【0089】
これらにより、咬合子11の脚部111の被縫製物2側の角部に縫い目t1,t6の上糸U及び下糸Dが当接し、強固に咬合子11を包み込むように保持するので、咬合子11のY軸方向に沿った移動、咬合子11の頭部112のY軸方向に沿った揺動及びY軸回りの揺動等が低減、抑制される。従って、スライドファスナー10の良好な縫着が実現すると共に、スライドファスナー製品1は、スライダー14による円滑な連結又は分離動作が可能となる。
【0090】
なお、
図8及び
図9の例に示すスライドファスナー製品1A,1Cの場合も、上述した端縁部針落ち点a2,a6を含む端縁部針落ち点により咬合子連結体13が被縫製物2に縫着されているので、
図2の例と同様に、咬合子11のY軸方向に沿った移動、咬合子11の頭部112のY軸方向に沿った揺動及びY軸回りの揺動等を低減、抑制して、スライドファスナー10の良好な縫着が実現すると共に、スライドファスナー製品1は、スライダー14による円滑な連結又は分離動作が可能となる。
【0091】
また、端縁部針落ち点a3〜a5については、被縫製物2の重ね合わせ部分2bの領域R1内であって、端縁部針落ち点a2,a6よりも咬合子11から遠方となる位置に設けられている。
これら端縁部針落ち点a3〜a5によって形成される縫い目t2〜t5の縫い糸である上糸U及び下糸Dにより、重ね合わせ部分2bで重なる被縫製物2の生地同士が密着状態を維持するので、重ね合わせ部分2bにおける撓み、変形の発生が抑制される。
その結果、咬合子11のY軸方向に沿った移動、咬合子11の頭部112のY軸方向に沿った揺動及びY軸回りの揺動等を低減、抑制することができる。また、これに伴い、スライドファスナー製品1は、スライダー14によるさらなる円滑な連結又は分離動作が可能となる。
また、端縁部針落ち点a3〜a5については、被縫製物2の重ね合わせ部分2bの領域R1よりも咬合子11から遠方となる位置に設けることも可能である。その場合、上糸U及び下糸Dの結節が直接的に重ね合わせ部分2bで重なる被縫製物2の生地同士を密着状態に維持することはできないが、縫い目t2,t5が重ね合わせ部分2bで重なる被縫製物2の生地同士を押さえるので、重ね合わせ部分2bにおける撓み、変形の発生が抑制することができる。
【0092】
特に、各縫い目t1〜t7は、本縫いの縫い目により形成されているので、糸張力の調節により、強固な結節を容易に形成することができ、咬合子11のY軸方向に沿った移動、咬合子11の頭部112のY軸方向に沿った揺動及びY軸回りの揺動等を低減、抑制することが可能となる。さらに、スライドファスナー製品1は、スライダー14によるさらなる円滑な連結又は分離動作が可能となる。
【0093】
また、上述した千鳥縫いミシン100は、ファスナー搬送機構40が、咬合子連結体13の咬合子11に咬み合う歯を備えた搬送ギア41と、搬送ギア41に回転動作を付与する搬送モーター42と、咬合子連結体13を被縫製物2の送り方向と同方向に案内する針板24とを備えている。
これにより、前述した各針落ち点a1〜a6に対する位置決めのために縫い針26の針振り、被縫製物2の搬送、咬合子連結体13の送りを好適に実行することが可能である。
特に、咬合子連結体13のように、複数の咬合子11が搬送方向に沿って連結され、凹凸が連続するようなものを従来のミシンは搬送することが困難だったが、千鳥縫いミシン100は、搬送ギア41の歯を、咬合子連結体13の連続する咬合子11の頭部112にかみ合わせて搬送するので、咬合子連結体13を任意に精度良く目標位置に搬送することが可能である。
従って、針落ち点a1〜a6に対して精度良く針落ちを行うことが可能となり、被縫製物2に対する良好な咬合子連結体13の縫着縫製を実現することが可能となる。
【0094】
また、ファスナーガイドとしての針板24は、咬合子連結体13の複数の咬合子11を被縫製物2の送り方向と同方向に沿って案内する送り溝243を有するので、咬合子11の頭部112が搬送ギア41の歯に噛み合う際にも、咬合子連結体13を安定的に送り方向から外れないように維持することができ、針落ち点a1〜a6に対してより精度良く針落ちを行うことが可能となる。
【0095】
また、千鳥縫いミシン100は、搬送ギア41によって搬送される咬合子連結体13の上方への脱離を抑えるファスナー押さえ49を備えているので、咬合子11の頭部112が搬送ギア41の歯に噛み合う際に、咬合子連結体13を安定的に上方に外れないように維持することができ、針落ち点a1〜a6に対してより精度良く針落ちを行うことが可能となる。
【0096】
また、搬送ギア41は、支持アーム44によって針落ち位置に対して離隔する方向に沿って移動可能に支持されているので、針板24からの咬合子連結体13の取り外しを容易に行うことができ、作業性の向上を図ることが可能となる。
【0097】
また、搬送ギア41は、搬送モーター42及び伝達機構48と共にベース板45に支持され、スライドガイド46によって、搬送ギア41が針落ち位置に対して離隔する方向に沿って移動可能に支持されているので、針板24からの咬合子連結体13の取り外しを容易に行うことができ、作業性の向上を図ることが可能となる。
さらに、搬送ギア41が搬送モーター42及び伝達機構48と共に移動するので、移動時において、搬送ギア41の原点位置ズレの発生を抑制することができ、針落ち位置に対して離隔してから縫製作業に復帰する際に、原点検索等を省略し、迅速に次の縫着縫製を行うことができ、作業効率を向上させることが可能となる。
【0098】
また、搬送ギア41のベース板45による移動動作をアクチュエーターとしてのエアシリンダー47で行う場合、手作業が不要となり、作業負担軽減、作業の高速化などを図ることが可能となる。
【0099】
また、千鳥縫いミシン100は、毎回の針落ちごとに、ミシンモーターのエンコーダーの検出に基づく規定のタイミングで搬送モーター42を駆動させて、咬合子連結体13を次の針落ち点までの送り方向への移動量となるように移動させる制御を行う制御装置を備えている。これにより、咬合子連結体13の搬送方向について、被縫製物2に対する縫着縫製における目標となる針落ち点に咬合子連結体13を搬送することができ、容易に適正な縫着縫製を実現することが可能となる。
【0100】
また、千鳥縫いミシン100は、毎回の針落ちごとに、ミシンモーターのエンコーダーの検出に基づく規定のタイミングで針振りモーターを駆動させて、縫い針を次の針落ち点までの針振り量となるように針振りさせる制御を行う制御装置を備えている。これにより、咬合子連結体13の搬送方向に直交する方向について、被縫製物2に対する縫着縫製における目標となる針落ち点に縫い針を移動させることができ、さらに容易に適正な縫着縫製を実現することが可能となる。
【0101】
[ファスナー搬送機構の他の例(1)]
前述したファスナー搬送機構40では、搬送ギア41を支持する支軸411がZ軸方向に平行に配設されている場合を例示したが、支軸411の向きはこれに限定されない。
例えば、
図20及び
図21に示すファスナー搬送機構40Aのように、咬合子11に咬み合う歯を外周に備え、ピッチ幅が咬合子連結体13の各咬合子11のピッチに一致している搬送ギア41Aの回転中心を水平方向、例えば、X軸方向に向けても良い。なお、
図21では縫い針26の図示を省略している。
【0102】
このファスナー搬送機構40Aは、搬送ギア41Aを支持するX軸方向に平行な支軸411Aと、出力軸をX軸方向に向けて配設された搬送モーター42Aと、搬送モーター42Aにより回転を行う主動プーリ481Aと、支軸411Aに固定装備された従動プーリ483Aと、主動プーリ481Aから従動プーリ483Aに掛け渡されたタイミングベルト484A等を備えている。
この場合、搬送ギア41Aは、針板24の下側において、搬送ギア41Aの上側の歯先が針板24に形成された開口部を通じて、送り溝243内の咬合子連結体13の咬合子11の頭部112に下側から噛合するように配置される。
【0103】
このように、搬送ギア41AをX軸方向に平行な水平軸回りに回転させる構成としたファスナー搬送機構40Aの場合も、ファスナー搬送機構40と同様に咬合子連結体13を良好に搬送することが可能である。
【0104】
なお、このようにX軸回り(水平軸回り)に搬送ギア41Aを回転させるファスナー搬送機構40Aの場合には、
図22及び
図23に示すように、搬送ギア41Aを針板24の上側に配置し、搬送ギア41Aの下側の歯先が送り溝243内の咬合子連結体13の咬合子11の頭部112に上側から噛合するように配置しても良い。
また、その場合、支軸411A、搬送モーター42A、主動プーリ481A、従動プーリ483A、タイミングベルト484A等の動力伝達を行う構成についても、針板24の上側に配置することが望ましい。
【0105】
[ファスナー搬送機構の他の例(2)]
また、前述したファスナー搬送機構40では、搬送ギア41を支持する支軸411がZ軸方向に平行に配設されている場合を例示したが、支軸411の向きは傾斜させてもよい。
例えば、
図24に示すファスナー搬送機構40Bのように、咬合子11に咬み合う歯を外周に備え、ピッチ幅が咬合子連結体13の各咬合子11のピッチに一致している搬送ギア41Bの回転中心及び支軸411BをZ軸方向に対して、左斜め上側に傾斜させても良い。なお、
図24も縫い針26の図示を省略している。
【0106】
このファスナー搬送機構40Bは、支軸411Bと、出力軸を支軸411Bに平行に向けて配設された搬送モーター42Bと、搬送モーター42Bにより回転を行う主動プーリ481Bと、支軸411Bに固定装備された従動プーリ483Bと、主動プーリ481Bから従動プーリ483Bに掛け渡されたタイミングベルト484B等を備えている。
この場合、搬送ギア41Bは、針板24の上側において、搬送ギア41Bの左側の歯先が針板24の送り溝243内の咬合子連結体13の咬合子11の頭部112に右斜め上側から噛合するように配置される。
【0107】
このように、搬送ギア41BをZ軸方向に対して傾斜した軸回りに回転させる構成としたファスナー搬送機構40Bの場合も、ファスナー搬送機構40と同様に咬合子連結体13を良好に搬送することが可能である。
【0108】
なお、ファスナー搬送機構40A,40Bは、いずれも、ファスナー搬送機構40と同様に、搬送ギア41A,41Bを咬合子連結体13から離隔する方向(例えば右方)に向かって移動可能として、搬送ギア41A,41Bの規定位置(咬合子11に噛み合う位置)と退避位置(搬送ギア41が咬合子連結体13から十分に離間した位置)との間で移動可能に支持しても良い。その場合、搬送モーター42A,42Bとこれらから搬送ギア41A,41Bに回転動作を伝達する各構成についても、搬送ギア41A,41Bと共に同方向に移動可能に支持することが望ましい。
また、ファスナー搬送機構40A,40Bの場合も
図19の例のように、エアシリンダー47のようなアクチュエーターにより、搬送ギア41A,41Bの規定位置と退避位置との間で移動させる構成とすることがより望ましい。
【0109】
[第二の実施形態]
本発明の第二の実施形態について説明する。
前述したファスナー搬送機構40では、一つの搬送ギア41により咬合子連結体13を搬送していたが、二つ以上の搬送ギアで咬合子連結体13を搬送しても良い。
以下、針穴242を挟んで前側と後側とにそれぞれ搬送ギア415C,416Cを配置したファスナー搬送機構40Cを備える千鳥縫いミシン100を本発明の第二の実施形態として説明する。
【0110】
なお、ファスナー搬送機構40Cについて前述したファスナー搬送機構40と同一の構成については同符号を付して重複する説明は省略する。ミシン100については既に説明した構成と異なる点のみについて説明し、同一の構成については同符号を付して重複する説明は省略する。
図25はファスナー搬送機構40Cの平面図、
図26は背面図、
図27はその要部の斜視図、
図28は平面図を示す。
【0111】
図示のように、ファスナー搬送機構40Cは、咬合子連結体13の咬合子11に咬み合う歯を備えた二つの搬送ギア415C,416Cと、各搬送ギア415C,416Cに回転動作を付与する搬送モーター42Cと、各搬送ギア415C,416Cを支持する支持機構43Cと、搬送モーター42Cから各搬送ギア415C,416Cに回転力を伝達する伝達機構48Cとを備えている。
なお、このファスナー搬送機構40Cも、前述したファスナー押さえ49と同一構造のファスナー押さえを備えているが図示を省略する。
【0112】
[スライドファスナーの補足説明]
ここで、スライドファスナー10Cについて
図29及び
図30により説明する。
このスライドファスナー10Cは、連結と分離が可能な一対の咬合子連結体131,132を備えている。このスライドファスナー10Cを構成する一対の咬合子連結体131,132は、咬合子11を紐状体12で連結している点は咬合子連結体13と同一だが、その端部構造に違いがある。
一方の咬合子連結体131は、
図29に示すように、複数の咬合子11を連結した紐状体12の一端部と他端部とにそれぞれ設けられた蝶棒15、上止め17を備えている。
また、他方の咬合子連結体132は、
図30に示すように、複数の咬合子11を連結した紐状体12の一端部に設けられた箱棒16と他端部に設けられた上止め17とを備えている。
なお、
図29及び
図30では、各咬合子連結体131,132の咬合子11の数を実際よりも少なく図示している。
【0113】
咬合子連結体131において、蝶棒15と上止め17は、スライダー14が紐状体12の端部から抜け落ちないようにストッパーとして機能する。
また、咬合子連結体132の箱棒16は、咬合子連結体131の蝶棒15側の端部にスライダー14が位置する状態で、当該スライダー14に挿入することで、蝶棒15と箱棒16とが互いに合致する形状である。この合致状態でスライダー14を上止め17側に向かって移動させることで、咬合子連結体131と咬合子連結体132のそれぞれの咬合子11を互いに連結することができる。
【0114】
蝶棒15と箱棒16(これらを総称して「開き具」という場合がある)は、いずれも、被縫製物2の端縁部2aの裏側に重ねて縫着するための薄板状の縫着部151,161を備えており、これら縫着部151,161には、紐状体12の長手方向に沿って複数の糸通し孔152,162が形成されている。
そして、咬合子連結体131を被縫製物2に縫着する際には、蝶棒15の複数の糸通し孔152に針落ちが行われる。また、咬合子連結体132を被縫製物2に縫着する際には、箱棒16の複数の糸通し孔162に針落ちが行われる。
【0115】
また、上止め17は、咬合子11と前後左右がほぼ同サイズだが、咬合子11のようなくびれた頭部112を持っていない。そして、上止め17は、咬合子11よりも全体的に厚みがあり、これによって、スライダー14が抜けないように保持する構造となっている。
【0116】
[搬送ギアの配置]
上記咬合子連結体131,132は、当該一対の咬合子連結体131,132が連結される際に、スライダー14が通過するように、蝶棒15と箱棒16とが咬合子11よりも左右の幅が小さく、また、前後に長い形状となっている。
一端部に蝶棒15や箱棒16が存在する咬合子連結体131,132を、前述した搬送ギア41が一つのみのファスナー搬送機構40により搬送する場合、搬送ギア41を蝶棒15や箱棒16が通過する際に噛合状態が形成されず、精度の良い良好な搬送が難しくなるおそれがあった。
【0117】
これに対して、ファスナー搬送機構40Cは、針落ち位置(針穴242)の前側で咬合子連結体131,132の一又は複数の咬合子11の頭部112に咬み合う前側の搬送ギア415Cと、針落ち位置(針穴242)の後側で咬合子連結体131,132の一又は複数の咬合子11の頭部112に咬み合う後側の搬送ギア416Cとを備えている。このように、針落ち位置を挟んで少なくとも二つの搬送ギア415C,416Cを備える構成とした場合には、搬送ギア415C又は416Cの一方を蝶棒15や箱棒16が通過する場合でも、他方の搬送ギア416C又は415Cが咬合子11と噛合しているので、咬合子連結体131,132を精度良く良好に搬送することができる。
また、返し縫いのような逆送りも良好に行うことができる。
【0118】
また、搬送ギア415C,416Cは、咬合子連結体131,132の各咬合子11のピッチに一致する平歯車であり、互いのピッチ径が同一であり、これら搬送ギア415C,416Cはその中心が前後方向に並ぶように配置されている。さらに、搬送ギア415C,416Cは、その中心間距離が、蝶棒15と箱棒16の前後方向の長さがよりも狭くなるように配置されている。なお、蝶棒15と箱棒16のいずれか一方の前後方向の長さが他方よりも短い場合には、より短い方の長さよりも前後方向の中心間距離が狭くなるように搬送ギア415C,416Cは配置されている。
【0119】
[支持機構]
図25及び
図26に示すように、支持機構43Cは、搬送ギア415C,416Cと伝達機構48Cと搬送モーター42Cとを支持する上下のベース板451C,452Cと、ベース板451C,452CをX軸方向に沿って滑動可能に支持するスライドガイド46Cとを備えている。
【0120】
上下のベース板451C,452Cは、いずれもX−Y平面に沿った平板であり、針落ち位置と立胴部22の間となる配置で、ミシンベッド部21上にスライドガイド46Cを介して配置されている。
これらのベース板451C,452Cは、近接対向した状態で連結され、これらの間で、伝達機構48Cの主動プーリ481C、従動プーリ488C,489C及びテンションローラー485CをZ軸回りに回転可能に支持している。
また、上側のベース板451Cは、その右端部上面で搬送モーター42Cを固定支持しており、下側のベース板452Cは、その左端部下面で前後の搬送ギア415C,416CをZ軸回りに回転可能に支持している。
【0121】
スライドガイド46Cは、下側のベース板452Cに固定連結された可動ブロック461Cと、X軸方向に沿ってミシンベッド部21上に取り付けられたスライドレール462Cとからなり、可動ブロック461Cを通じて上下のベース板451C,452CをX軸方向に沿って滑動させることができる。
【0122】
また、上側のベース板451Cの右端部には、上下のベース板451C,452CのX軸方向に沿った滑動動作を規制する前述した規制ブラケット452(
図14参照)と同様の規制ブラケットが装備されているが図示を省略する。そして、この規制ブラケットにより、搬送ギア415C,416Cの歯先を、搬送される咬合子連結体131又は132の咬合子11の頭部112に適切に噛み合わせられる位置に調節することができるようになっている。
なお、下側のベース板452Cには、上下のベース板451C,452Cを左方に引っ張る引っ張りバネ443Cの一端部が連結されており、搬送ギア415C,416Cの歯先が咬合子11に適切に噛み合うことができる位置に保持されている。
そして、ファスナー搬送機構40Cのメンテナンスや、針板24から咬合子連結体131又は132を取り外す作業は、この引っ張りバネ443Cに抗して上下のベース板451C,452Cを右方に移動させることで容易に行うことができる。
【0123】
なお、搬送ギア415C,416Cのいずれか一方には、その回転における原点位置を検出する原点センサー413C(
図31参照)が併設されており、搬送ギア415C,416Cの原点位置を検出することができる。
【0124】
[伝達機構]
搬送モーター42Cは、ステッピングモーターであり、伝達機構48Cを介して、搬送ギア415C,416Cによる咬合子連結体131又は132の送り量を任意に制御することができる。
この搬送モーター42Cは、
図26に示すように、出力軸を下方に向けた状態で上側のベース板451C上に取り付けられている。
【0125】
伝達機構48Cは、
図25〜
図28に示すように、搬送モーター42Cの出力軸に固定装備された主動プーリ481Cと、搬送ギア415C,416Cに個別に噛合する伝達ギア482C,483Cと、伝達ギア482C,483Cの支軸486C,487Cと同軸で連結された従動プーリ488C,489Cと、主動プーリ481Cと従動プーリ488C,489Cに掛け渡されたタイミングベルト484Cと、タイミングベルト484Cにテンションを付与するテンションローラー485Cとを備えている。
【0126】
上記主動プーリ481C、従動プーリ488C,489C及びテンションローラー485Cは、上下のベース板451C,452Cの間に配置され、伝達ギア482C,483C及び搬送ギア415C,416Cは、下側のベース板452Cの下側に配置されている。
【0127】
伝達機構48Cは、上記のように、従動プーリ488C,489Cから伝達ギア482C,483Cを介して、搬送ギア415C,416Cに回転力を付与している。
これにより、搬送ギア415C,416Cの上方には従動プーリ488C,489C等が配置されず、上方を空けることができ、前述した搬送ギア41よりも外径の小さな搬送ギア415C,416Cを針落ち位置周辺の狭いスペースに配置することができる。
【0128】
[他のミシンへの適用]
上記ファスナー搬送機構40CではZ軸回りの搬送ギア415C,416Cを二つ設ける例を示したが、前述したファスナー搬送機構40A(
図20参照)のように針板の上側又は下側に、X軸回りに回転する搬送ギアを、針落ち位置の前後に一つずつ設けても良い。この場合、それぞれの搬送ギアに伝達機構を介して搬送モーターから同時回転を付与する構成とすることが望ましい。
また、ファスナー搬送機構40B(
図24参照)のように、回転中心をZ軸方向に対して左斜め上側に傾斜させた搬送ギアを、針落ち位置の前後に一つずつ設けても良い。この場合も、それぞれの搬送ギアに伝達機構を介して搬送モーターから同時回転を付与する構成とすることが望ましい。
【0129】
[ミシンの制御系]
前述したファスナー搬送機構40Cを搭載したミシン100の制御系を
図31に示す。ファスナー搬送機構40Cを搭載したミシン100は、前述したように、
図29,
図30に示した咬合子連結体131,132を有するスライドファスナー10Cの縫着に適している。従って、ここで、ファスナー搬送機構40Cを搭載したミシン100の制御系について説明した上で、当該ミシン100によるスライドファスナー10Cの縫着制御について後述する。
なお、ファスナー搬送機構40,40A,40Bでもスライドファスナー10Cの縫着を行うことは可能である。
【0130】
図31のように、ミシン100の制御装置90には、ミシンモーター105、針振りモーター106、送り調節モーター107、搬送モーター42C、布押さえ昇降モーター253が、ぞれぞれの駆動回路105a,106a,107a,42Ca,253aを介して接続されている。
さらに、制御装置90には、搬送モーター42Cの原点センサー413C、設定入力部93が、それぞれのインターフェイス413Ca,93aを介して接続されている。
また、制御装置90には、上軸の回転角度を検出するエンコーダー108がインターフェイス108aを介して接続されている。
設定入力部93は、
図32に示すように、中央に表示画面931を備え、その周囲に複数の入力スイッチ932〜941を備えている。この設定入力部93からは、スライドファスナー10Cの縫着制御を行うための各種のパラメータ等の入力が行われる。これらについては後述する。
【0131】
そして、制御装置90は、ミシンモーター105、針振りモーター106、送り調節モーター107、搬送モーター42C、布押さえ昇降モーター253に対して所定の制御を行うCPU91と、当該制御を実行させる制御プログラム及び設定データが書き込まれているメモリ92とを備えている。
【0132】
[ミシンによるスライドファスナーの縫着制御の設定パラメータ]
図33は、スライドファスナー10Cの咬合子連結体131を縫着する場合の設定パラメータを示す説明図である。この設定パラメータは、針落ち位置に関する設定パラメータ(針振りモーター106と送り調節モーター107を制御する設定パラメータ)と、スライドファスナー10Cの咬合子連結体131の送りに関する設定パラメータ(搬送モーター42Cを制御する設定パラメータ)とからなる。
まず、針落ち位置に関する設定パラメータについて説明する。
【0133】
図34は、被縫製物2及び咬合子連結体131に対する針落ち位置を示した説明図である。なお、この
図34では、説明のために咬合子連結体131の咬合子11の数を実際より少なく図示している。
図33及び
図34に示すように、咬合子連結体131の縫着には、咬合子連結体131の各部ごとに決まった縫製パターンによる運針針落ちが行われる。つまり、咬合子連結体131は、予め選択された複数種類の縫製パターンを順番に実行することで縫着が行われる。
【0134】
[各種の縫製パターンの例]
ここで、縫製パターンの一部について
図35(A)〜
図36(D)に例示する。各図における正方形の一マスが針落ち位置に相当し、それぞれのマスの中の数字は針落ちが行われる順番を示している。また、図中の符号Hは左右方向の基準位置であり、これを0としてこれより右側を正の数値で示し、これより左側を負の数値で示す。
【0135】
図35(A)に示すパターンNo.1は、いわゆる千鳥縫いにおけるブラインドステッチと呼ばれる縫製パターンであり、上から見て台形状の縫い目を形成し、咬合子11の周囲に針落ちを行う場合に適している。咬合子連結体131のように複数の咬合子11が並んでいる場合であって、当該各咬合子11をブラインドステッチで縫着する場合には、咬合子11の数だけ、パターンNo.1に基づく動作制御が繰り返し実行される。
【0136】
各ナンバーの縫製パターンは、いくつの針落ち位置から構成されるか、各針落ち位置の順番、各針落ち位置の左右の位置座標(各図におけるα、β、γ、δ)、各針落ち位置に対する被縫製物2の送り量が定められている。縫製パターンを定めるこれらの針落ちパラメータについては、前述した設定入力部93を用いて任意に設定することができる。
縫製の際には、縫製パターンに定められた針落ち位置の順番で、各針落ち位置に対する左右の位置座標となるように針振りモーター106が制御され、各針落ち位置に対する送り量となるように送り調節モーター107が制御される。
【0137】
図35(B)に示すパターンNo.2は、いわゆる千鳥縫いにおける3点千鳥と呼ばれる縫製パターンであり、三点ごとに左右方向に振れてジグザグの縫い目を形成し、この縫製パターンも咬合子11の周囲に針落ちを行う場合に適している。複数の咬合子11が並んでいる場合であって、当該各咬合子11を3点千鳥で縫着する場合には、咬合子11の数だけ、パターンNo.2に基づく動作制御が繰り返し実行される。
【0138】
図35(C)に示すパターンNo.3は、いわゆる閂止めと呼ばれる縫製パターンであり、左右方向に直線状に往復する縫い目を形成する。この縫製パターンは、複数回繰り返すことで縫い目のほつれを防止したり、縫着物を締結固定するのに適している。
【0139】
図35(D)に示すパターンNo.4は、いわゆる本縫いと呼ばれる縫製パターンであり、左右方向に一定の位置を維持して後方に向かって一定の間隔で直線状の縫い目を形成する。
図36(A)に示すパターンNo.5は、いわゆる本縫い(返し縫い)と呼ばれる縫製パターンであり、左右方向に一定の位置を維持して前方に向かって一定の間隔で直線状の縫い目を形成する。
【0140】
図36(B)に示すパターンNo.6は、いわゆる2点千鳥と呼ばれる縫製パターンであり、二点ごとに左右方向に振れてジグザグの縫い目を後方に向かって形成する。
図36(C)に示すパターンNo.7は、いわゆる2点千鳥(返し縫い)と呼ばれる縫製パターンであり、二点ごとに左右方向に振れてジグザグの縫い目を前方に向かって形成する。
【0141】
図36(D)に示すパターンNo.8は、本縫いの縫製パターンであり、パターンNo.4と同じ形状だが、より短い間隔で直線状の縫い目を形成する。
【0142】
上記縫製パターンのパラメータは、
図32に示す設定入力部93から設定することができる。この設定入力部93は、切り替え操作を行うことにより、表示画面931に表示される入力内容を示す表示画像を切り替え、周囲の入力スイッチ932〜941による機能の割り当てを変更することができる。
そして、
図32では、縫製パターンの針落ちパラメータを入力する表示画像の表示状態を示している。
【0143】
図32の設定入力部93における入力スイッチ932,933は、縫製パターンの針落ち位置の増減を入力する。
入力スイッチ934,935は、選択された針落ち位置における左右の位置座標の増減を入力する。
入力スイッチ936,937は、選択された針落ち位置における被縫製物2の送り量の増減を入力する。
入力スイッチ938,939は、針落ち位置の追加と削除を入力する。
入力スイッチ940は、縫製パターンの最終針であることを入力する。
入力スイッチ941は、入力スイッチ932〜940の入力操作により設定された内容を縫製パターンの針落ちパラメータとして確定する。
【0144】
針落ちパラメータが確定された縫製パターンのデータは、メモリ92内に登録される。
前述した各ナンバーの縫製パターンは、上記
図32の設定入力部93により予め設定され、登録されたものの一例である。
例えば、前述した
図2に示す縫い目のa1〜a6までの針落ち点について上記パラメータを定めた縫製パターンのデータもメモリ92内に登録し、スライドファスナー10Cの各咬合子11の縫着縫製に適用しても良い。
同様に、
図7に示す縫い目のa1,a3〜a5までの針落ち点、
図8に示す縫い目のa1,a2,a6の針落ち点について上記パラメータを定めた縫製パターンのデータもメモリ92内に登録し、スライドファスナー10Cの各咬合子11の縫着縫製に適用しても良い。
【0145】
[針落ち位置に関する設定パラメータの具体例]
図34の咬合子連結体131の縫着縫製を行うための針落ち位置に関する設定パラメータの内容を
図33の左半分に基づいて説明する。
図34においてPsは縫い開始位置となる針落ち位置を示し、Peは縫い終了位置となる針落ち位置を示す。
図33において、「ミシンステップ」は、実行される縫製パターンの順番を示す。
「パターンNo.」は各「ミシンステップ」において実行される縫製パターンのパターンナンバーを示す。
「ミシン針数」は選択された縫製パターンの何針目までを実行するかを示す。例えば、ミシン針数が選択された縫製パターンに定められた針数を超える数、例えば、整数倍である場合には、縫製パターンの縫いが整数回繰り返し行われる。
【0146】
図33のミシンステップ0においてパターンNo.7が選択され、ミシン針数は0が設定されている。
このミシンステップ0は、
図34の縫い開始位置Psへの縫い針の位置決め動作が設定されている。つまり、ミシンステップ0の設定内容に応じて、パターンNo.7の第1針目の針落ち位置に縫い針が位置決めされるように針振りが行われるが、ミシン針数は0なので針落ちは行われない。
【0147】
図33のミシンステップ1においてパターンNo.7が選択され、ミシン針数は5が設定されている。
このミシンステップ1は、
図34の矢印P1に対応しており、咬合子連結体131の前端部から突出した紐状体12の端部に対して、パターンNo.7の針落ちパラメータに従って、2点千鳥の5針分の返し縫いが実行される。
【0148】
図33のミシンステップ2においてパターンNo.6が選択され、ミシン針数は6が設定されている。
このミシンステップ2は、
図34の矢印P2に対応しており、咬合子連結体131の前端部から突出した紐状体12の端部に対して、パターンNo.6の針落ちパラメータに従って、2点千鳥の6針分の縫いが実行される。
【0149】
図33のミシンステップ3においてパターンNo.8が選択され、ミシン針数は3が設定されている。
このミシンステップ3は、
図34の矢印P3に対応しており、上止め17の端部に沿ってその左側に、パターンNo.8の針落ちパラメータに従って、3針分の本縫いが実行される。
【0150】
図33のミシンステップ4においてパターンNo.3が選択され、ミシン針数は3が設定されている。
このミシンステップ4は、
図34の矢印P4に対応しており、上止め17とその隣の咬合子11の間で紐状体12の左右に渡って、パターンNo.3の針落ちパラメータに従って、3針分の閂止めが実行される。
【0151】
図33のミシンステップ5においてパターンNo.1が選択され、ミシン針数はn×4が設定されている(nは咬合子連結体131の咬合子11の個数、例えば、
図34の例ではn=3となる)。
このミシンステップ5は、
図34の矢印P5に対応しており、咬合子11の上側から左側にかけて、パターンNo.1の針落ちパラメータに従って、4針からなるブラインドステッチによる千鳥縫いが実行される。そして、全ての咬合子11に対して、同様のブラインドステッチによる千鳥縫いが繰り返し実行される。
【0152】
図33のミシンステップ6においてパターンNo.3が選択され、ミシン針数は4が設定されている。
このミシンステップ6は、
図34の矢印P6に対応しており、蝶棒15の隣の咬合子11と蝶棒15の間で紐状体12の左右に渡って、パターンNo.3の針落ちパラメータに従って、4針分の閂止めが実行される。
【0153】
図33のミシンステップ7においてパターンNo.4が選択され、ミシン針数は7が設定されている。
このミシンステップ7は、
図34の矢印P7に対応しており、蝶棒15の縫着部151の前端部から後端部にかけて各糸通し孔152を介して、パターンNo.4の針落ちパラメータに従って、7針分の本縫いが実行される。
【0154】
図33のミシンステップ8においてパターンNo.5が選択され、ミシン針数は6が設定されている。
このミシンステップ8は、
図34の矢印P8に対応しており、蝶棒15の縫着部151の後端部から前端部にかけて各糸通し孔152を介して、パターンNo.5の針落ちパラメータに従って、6針分の本縫いの返し縫いが実行される。
【0155】
なお、上記の
図33に示した咬合子連結体131の縫着縫製を行うための針落ち位置に関する設定パラメータである「ミシンステップ」、「パターンNo.」、「ミシン針数」の設定内容も、設定入力部93により任意に設定することができる。
即ち、設定入力部93は、切り替え操作により、表示画面931の表示画像を、針落ち位置に関する設定パラメータの入力画像に切り替え、周囲の入力スイッチ932〜941を用いて、「ミシンステップ」、「パターンNo.」、「ミシン針数」を設定することができる。
そして、針落ち位置に関する設定パラメータの設定内容もメモリ92内に登録される。
【0156】
なお、上記針落ち位置に関する設定パラメータの具体例では、咬合子連結体131の縫着縫製について例示したが、咬合子連結体132の縫着縫製の場合についても同様にして設定パラメータを定めることができる。
即ち、咬合子連結体132の縫着の場合には、箱棒16が前端部に位置し、上止め17が後端部に位置するので、縫製の序盤で、箱棒16の縫着部161に対して本縫いの返し縫い及び本縫いが実行され、縫製の終盤で、上止め17に対する閂止め、咬合子連結体132の後端部から突出した紐状体12の端部に対して2点千鳥の千鳥縫い及びその返し縫いが実行されるように設定パラメータが設定されるが、これらを考慮すれば、咬合子連結体131の縫着縫製と同様の設定が行われる。
【0157】
[咬合子連結体の送りに関する設定パラメータ]
次に、スライドファスナー10Cの咬合子連結体131の送りに関する設定パラメータの内容について説明する。
図33の右半分は、
図34の咬合子連結体131の縫着縫製を行うための咬合子連結体131の送りに関する設定パラメータの内容を示している。
即ち、咬合子連結体131の縫着には、前述したように咬合子連結体131の各部ごとに決まった縫製パターンによる針落ちが行われるが、これらの各縫製パターンに対応した装置パターンでファスナー搬送機構40Cによる咬合子連結体131の送りが行われる。
【0158】
[各種の装置パターンの例]
図37は、咬合子連結体131の送りに関する設定パラメータを設定する場合に、設定入力部93の表示画面931に表示される装置パターンの選択画像である。
これらの装置パターンについて順番に説明する。
【0159】
「ファスナーかがり」の装置パターンは、前述した縫製パターンのパターンNo.1やパターンNo.2のように、咬合子11の周囲のかがり縫いを行う際に適した送り量及び布押さえ25の高さが設定されている。つまり、縫製パターンのパターンNo.1やパターンNo.2の一針ごとの被縫製物の送り量と一致するように送り量が設定されている。
具体的には、咬合子連結体131における各咬合子11のピッチ(Y軸方向における隣り合う咬合子11の中心から咬合子11の中心までの距離)の四分の一の長さを一単位の基準送り量として、当該基準送り量に対する倍率が装置パターンに設定される。
パターンNo.1やパターンNo.2の縫製パターンでは、四針で一つの咬合子11にかがり縫いを行うので、「ファスナーかがり」の装置パターンでは、咬合子11のピッチの四分の一である基準送り量×1が設定される。
また、布押さえ25の高さは押さえ圧が通常となる通常高さが設定されている。
【0160】
「ひも千鳥」の装置パターンは、前述した縫製パターンのパターンNo.6やパターンNo.7のように、紐状体12の端部に対して2点千鳥の千鳥縫いを行う際に適した送り量が設定されている。つまり、縫製パターンのパターンNo.6やパターンNo.7の一針ごとの被縫製物の送り量と一致する送り量が設定されている。
また、布押さえ25の高さは押さえ圧が通常よりも低くなる微量押さえ上げ高さが設定されている。
例えば、紐状体12に対する2点千鳥の送り量が基準送り量と等しい幅に設定されている場合には、「ひも千鳥」の装置パターンでは、基準送り量×1が設定される。
【0161】
「上止め本縫い」の装置パターンは、前述した縫製パターンのパターンNo.8のように、上止め17の端部に沿って本縫いを行う際に適した送り量が設定されている。つまり、縫製パターンのパターンNo.8の一針ごとの被縫製物の送り量と一致する送り量が設定されている。
また、布押さえ25の高さは押さえ圧が通常となる通常高さが設定されている。
例えば、上止め17の端部に沿って行われる本縫いの送り量が基準送り量と等しい幅に設定されている場合には、「上止め本縫い」の装置パターンでは、基準送り量×1が設定される。
【0162】
「上止め閂止め」の装置パターンは、前述した縫製パターンのパターンNo.3のように、上止め17と咬合子11の間に閂止めを行う際に適した送り量が設定されている。
また、布押さえ25の高さは押さえ圧が通常となる通常高さが設定されている。
例えば、閂止めの送り量が0に設定されている場合には、「上止め閂止め」の装置パターンでは、0が設定される。
【0163】
「開き具本縫い」の装置パターンは、前述した縫製パターンのパターンNo.4やパターンNo.5のように、蝶棒15や箱棒16の縫着部151,161の糸通し孔152,162の間隔に応じて本縫いを行う際に適した送り量が設定されている。つまり、縫製パターンのパターンNo.4やパターンNo.5の一針ごとの被縫製物の送り量と一致する送り量が設定されている。
また、布押さえ25の高さは押さえ圧が通常よりも低くなる微量押さえ上げ高さが設定されている。
例えば、蝶棒15や箱棒16の糸通し孔152,162の間隔が基準送り量の二倍の幅に設定されている場合には、「開き具本縫い」の装置パターンでは、基準送り量×2が設定される。
【0164】
「開き具千鳥」の装置パターンは、蝶棒15や箱棒16に千鳥縫いを行う際に適した送り量が設定されている。
また、布押さえ25の高さは押さえ圧が通常よりも低くなる微量押さえ上げ高さが設定されている。
例えば、蝶棒15や箱棒16に千鳥縫いを行う場合の間隔が基準送り量と同じ幅に設定されている場合には、「開き具千鳥」の装置パターンでは、基準送り量×1が設定される。
【0165】
「開き具閂止め」の装置パターンは、前述した縫製パターンのパターンNo.3のように、蝶棒15と咬合子11又は箱棒16と咬合子11の間に閂止めを行う際に適した送り量が設定されている。
また、布押さえ25の高さは押さえ圧が通常よりも低くなる微量押さえ上げ高さが設定されている。
例えば、閂止めの送り量が0に設定されている場合には、「開き具閂止め」の装置パターンでは、0が設定される。
【0166】
「縫製完了」は縫製の終了を示し、送り量は0が設定されている。
【0167】
上記各装置パターンにおける送り量は、設定入力部93により任意に設定することができる。
即ち、設定入力部93は、切り替え操作により、表示画面931の表示画像を、装置パターンの入力画像に切り替え、周囲の入力スイッチ932〜941を用いて「送り量」、「布押さえ(押さえ圧)」を設定することができる。
また、基準送り量の大きさも具体的な数値を入力して任意に設定することができる。
これら、装置パターンにおける送り量、布押さえ高さの設定内容や基準送り量の設定値もメモリ92内に登録される。
【0168】
[咬合子連結体の送りに関する設定パラメータの具体例]
図33の咬合子連結体の送りに関する設定パラメータの内容を、
図34を参照して説明する。
図33において、針落ち位置に関する設定パラメータにおけるミシンステップ0〜8は咬合子連結体の送りに関する設定パラメータにおける装置ステップ1〜9に個別に対応している。
図33において、「装置ステップ」は、実行される装置ステップの順番を示す。
「装置パターン」は前述した装置パターンの種別と送り方向を示す。
「継続針数」は選択された装置パターンが継続する針数を示す。
【0169】
図33の装置ステップ1において「ファスナーかがり」の装置パターンが選択され、送り方向は正送り方向(咬合子連結体131を前方に送る方向)、ミシン針数は1が設定されている。
この装置ステップ1は、
図34の縫い開始位置Psへの縫い針の位置決め動作の際の咬合子連結体131の送り動作量が設定されている。
【0170】
図33の装置ステップ2において「ひも千鳥」の装置パターンが選択され、送り方向は逆送り方向(咬合子連結体131を後方に送る方向)、ミシン針数は5が設定されている。
この装置ステップ2は、
図34の矢印P1に対応しており、咬合子連結体131の前端部から突出した紐状体12の端部に対して行われる、2点千鳥の5針分の返し縫いに対応して咬合子連結体131の逆送りが実行される。
【0171】
図33の装置ステップ3において「ひも千鳥」の装置パターンが選択され、送り方向は正送り方向、ミシン針数は6が設定されている。
この装置ステップ3は、
図34の矢印P2に対応しており、咬合子連結体131の前端部から突出した紐状体12の端部に対して行われる、2点千鳥の6針分の千鳥縫いに対応して咬合子連結体131の正送りが実行される。
【0172】
図33の装置ステップ4において「ファスナーかがり」の装置パターンが選択され、送り方向は正送り方向、ミシン針数は3が設定されている。
この装置ステップ4は、
図34の矢印P3に対応しており、上止め17の端部に沿って行われる、3針分の本縫いに対応して咬合子連結体131の正送りが実行される。
【0173】
図33の装置ステップ5において「上止め閂止め」の装置パターンが選択され、送り方向は正送り方向、ミシン針数は4が設定されている。
この装置ステップ5は、
図34の矢印P4に対応しており、上止め17とその隣の咬合子11の間に行われる、4針分に対応して咬合子連結体131の送りが停止される。
【0174】
図33の装置ステップ6において「ファスナーかがり」の装置パターンが選択され、送り方向は正送り方向、ミシン針数はn×4(nは咬合子連結体131の咬合子11の個数)が設定されている。
この装置ステップ6は、
図34の矢印P5に対応しており、各咬合子11に対して行われる、4針からなるブラインドステッチによる千鳥縫いに対応して咬合子連結体131の正送りが実行される。そして、全ての咬合子11に対して行われるブラインドステッチによる千鳥縫いに対応した咬合子連結体131の正送りが繰り返し実行される。
【0175】
図33の装置ステップ7において「開き具閂止め」の装置パターンが選択され、送り方向は正送り方向、ミシン針数は4が設定されている。
この装置ステップ7は、
図34の矢印P6に対応しており、咬合子11と蝶棒15の間で、4針からなる閂止めに対応して咬合子連結体131の送りが停止される。
【0176】
図33の装置ステップ8において「開き具本縫い」の装置パターンが選択され、送り方向は正送り方向、ミシン針数は7が設定されている。
この装置ステップ8は、
図34の矢印P7に対応しており、蝶棒15の縫着部151の前端部から後端部にかけて行われる、7針分の本縫いに対応して咬合子連結体131の正送りが実行される。
【0177】
図33の装置ステップ9において「開き具本縫い」の装置パターンが選択され、送り方向は逆送り方向、ミシン針数は6が設定されている。
この装置ステップ9は、
図34の矢印P8に対応しており、蝶棒15の縫着部151の後端部から前端部にかけて行われる、6針分の本縫いの返し縫いに対応して咬合子連結体131の逆送りが実行される。
【0178】
図33の装置ステップ10において「縫製完了」の装置パターンが設定されている。
この装置ステップ10により、咬合子連結体131の送り動作だけでなく、縫製動作全体が終了となる。
【0179】
なお、上記の
図33に示した咬合子連結体の送りに関する設定パラメータである「装置ステップ」、「装置パターン」、「継続針数」の設定内容も、設定入力部93により任意に設定することができる。
図38は咬合子連結体の送りに関する設定パラメータの設定を行う際の設定入力部93の表示画面931の表示画像を示す。
設定入力部93は、切り替え操作により、表示画面931の表示画像を、
図38の咬合子連結体の送りに関する設定パラメータの入力画像に切り替え、周囲の入力スイッチ932〜941を用いて「装置ステップ」、「装置パターン」、「継続針数」を設定することができる。
そして、設定された咬合子連結体の送りに関する設定パラメータは、前述した針落ち位置に関する設定パラメータと関連して一体となって、スライドファスナーの縫着制御の設定パラメータとなってメモリ92内に登録される。縫製の際には、登録されたスライドファスナーの縫着制御の設定パラメータを読み出して縫着縫製の動作制御が実行される。
【0180】
なお、上記咬合子連結体の送りに関する設定パラメータの具体例では、咬合子連結体131の縫着縫製について例示したが、咬合子連結体132の縫着縫製の場合についても同様にして設定パラメータを定めることができる。
即ち、咬合子連結体132の縫着の場合には、箱棒16が前端部に位置し、上止め17が後端部に位置するので、縫製の序盤で、箱棒16の縫着部161に対して本縫いの返し縫い及び本縫いが実行され、縫製の終盤で、上止め17に対する閂止め、咬合子連結体132の後端部から突出した紐状体12の端部に対して2点千鳥の千鳥縫い及びその返し縫いが実行されるので、これらに対応するように咬合子連結体の送りに関する設定パラメータが設定されるが、これらを考慮すれば、咬合子連結体131の縫着縫製と同様の設定が行われる。
【0181】
[千鳥縫いミシンによるスライドファスナー製品の縫製動作]
前述したスライドファスナー10Cの左側の咬合子連結体131を被縫製物2の端縁部2aに縫着する場合を例にして、ファスナー搬送機構40Cを搭載した千鳥縫いミシン100の縫製動作について
図33及び
図34に基づいて説明する。
【0182】
まず、スライドファスナーの縫着制御の設定パラメータがメモリ92から読み出され、
図33の針落ち位置に関する設定パラメータのミシンステップ0に従って、針振りモーター106及び送り調節モーター107が制御され、
図34の縫い開始位置Psへ縫い針が位置決めされる。
また、装置ステップ1に従って、搬送モーター42C及び布押さえ昇降モーター253が制御され、布押さえ25が通常押さえ圧とされ、基準送り量×1で咬合子連結体131が1針分正送りされる。
【0183】
次に、
図33の針落ち位置に関する設定パラメータのミシンステップ1に従って、ミシンモーター105が起動し、針振りモーター106及び送り調節モーター107が制御され、
図34の矢印P1に従って、紐状体12の前端部に対して5針分の千鳥縫いの返し縫いが行われる。
また、これと同期して、装置ステップ2に従って、搬送モーター42C及び布押さえ昇降モーター253が制御され、布押さえ25が低押さえ圧とされ、基準送り量×1で咬合子連結体131が5針分逆送りされる。
【0184】
次に、
図33の針落ち位置に関する設定パラメータのミシンステップ2に従って、針振りモーター106及び送り調節モーター107が制御され、
図34の矢印P2に従って、紐状体12の前端部に対して6針分の千鳥縫いが行われる。
また、これと同期して、装置ステップ3に従って、搬送モーター42C及び布押さえ昇降モーター253が制御され、布押さえ25が低押さえ圧とされ、基準送り量×1で咬合子連結体131が6針分正送りされる。
【0185】
次に、
図33の針落ち位置に関する設定パラメータのミシンステップ3に従って、針振りモーター106及び送り調節モーター107が制御され、
図34の矢印P3に従って、上止め17の左側に対して3針分の本縫いが行われる。
また、これと同期して、装置ステップ4に従って、搬送モーター42C及び布押さえ昇降モーター253が制御され、布押さえ25が通常押さえ圧とされ、基準送り量×1で咬合子連結体131が3針分正送りされる。
【0186】
次に、
図33の針落ち位置に関する設定パラメータのミシンステップ4に従って、針振りモーター106及び送り調節モーター107が制御され、
図34の矢印P4に従って、上止め17と咬合子11の間に対して4針分の閂止めが行われる。
また、これと同期して、装置ステップ5に従って、搬送モーター42C及び布押さえ昇降モーター253が制御され、布押さえ25が通常押さえ圧とされ、咬合子連結体131の送りが停止される。
【0187】
次に、
図33の針落ち位置に関する設定パラメータのミシンステップ5に従って、針振りモーター106及び送り調節モーター107が制御され、
図34の矢印P5に従って、各咬合子11に対してブラインドステッチによる千鳥縫いが4針ずつ行われる。
また、これと同期して、装置ステップ6に従って、搬送モーター42C及び布押さえ昇降モーター253が制御され、布押さえ25が通常押さえ圧とされ、基準送り量×1で咬合子連結体131がn×4針で正送りされる。
【0188】
次に、
図33の針落ち位置に関する設定パラメータのミシンステップ6に従って、針振りモーター106及び送り調節モーター107が制御され、
図34の矢印P6に従って、咬合子11と蝶棒15との間で4針分の閂止めが行われる。
また、これと同期して、装置ステップ7に従って、搬送モーター42C及び布押さえ昇降モーター253が制御され、布押さえ25が低押さえ圧とされ、咬合子連結体131の送りが停止される。
【0189】
次に、
図33の針落ち位置に関する設定パラメータのミシンステップ7に従って、針振りモーター106及び送り調節モーター107が制御され、
図34の矢印P7に従って、蝶棒15の縫着部151の前端部から後端部にかけて各糸通し孔152に対して7針分の本縫いが行われる。
また、これと同期して、装置ステップ8に従って、搬送モーター42C及び布押さえ昇降モーター253が制御され、布押さえ25が低押さえ圧とされ、基準送り量×2で咬合子連結体131が7針分正送りされる。
【0190】
次に、
図33の針落ち位置に関する設定パラメータのミシンステップ8に従って、針振りモーター106及び送り調節モーター107が制御され、
図34の矢印P8に従って、蝶棒15の縫着部151の後端部から前端部にかけて各糸通し孔152に対して6針分の本縫いの返し縫いが行われる。
また、これと同期して、装置ステップ9に従って、搬送モーター42C及び布押さえ昇降モーター253が制御され、布押さえ25が低押さえ圧とされ、基準送り量×2で咬合子連結体131が6針分逆送りされる。
【0191】
これにより、縫い針は、縫い終了位置Peに到達する。そして、装置ステップ10に従って、搬送モーター42C及び布押さえ昇降モーター253が制御され、布押さえ25が布解放位置まで上昇し、搬送ギア415C,416Cの送り動作が停止され、さらに、ミシンモーター105の駆動も停止される。
そして、咬合子連結体131の縫着縫製が終了となる。
【0192】
[第二の実施形態の技術的効果]
上記ファスナー搬送機構40Cを備える千鳥縫いミシン100では、針落ち位置の前側で咬合子11に咬み合う搬送ギア415Cと針落ち位置の後側で咬合子11に咬み合う搬送ギア416Cとを有している。
このため、蝶棒15を有する咬合子連結体131や箱棒16を有する咬合子連結体132を被縫製物2に縫着する場合でも、蝶棒15や箱棒16は針落ち位置の近傍を通過する場合に、少なくとも、搬送ギア415C,416Cのいずれか一方を咬合子11に噛合させることができ、より正確に咬合子連結体131,132を搬送することができ、縫い品質の高い縫着縫製を行うことが可能となる。
【0193】
また、ファスナー搬送機構40Cを備える千鳥縫いミシン100では、縫いの種類(縫製パターン)、順番、針数、動作量を含むパラメータが入力される設定入力部93を備え、制御装置90は、設定入力部93から入力されたこれらのパラメータを含む咬合子連結体縫着の設定パラメータに従って縫製が行われるように、布送り機構の送り調節モーター107、針振りモーター106、ミシンモーター105、ファスナー搬送機構40Cを制御する。
このため、咬合子連結体131,132の縫着縫製の際に、例えば、本縫いから千鳥縫いや閂止め等、縫いの種類が途中で変わる場合に、タイミング良く、縫いを停止して、縫いの種類を切り替える操作等を不要とすることができ、咬合子連結体131,132の縫着縫製を開始させると、最後まで操作を行うことなく縫着縫製を完了させることが可能となる。このため、ミシンのオペレーターの作業負担が飛躍的に低減することが可能となる。
また、縫いの種類が途中の切り替え操作が不要となるので、ミシンのオペレーターの操作の技量の影響が低減され、熟練の有無に拘わらず、高品質の縫いを安定的に行うことが可能となる。
【0194】
[その他]
スライドファスナー10,10Cの咬合子連結体13,131,132の咬合子11の頭部112の構造は、
図4に示すものに限定されない。例えば、一般的なスライドファスナーに利用されている多種多様な咬合子の頭部構造を適用することが可能である。
また、同様に、スライドファスナー10Cの蝶棒15や箱棒16の形状も多種多様な形状のものを適用することが可能である。
【0195】
また、布送り機構に送り調節モーターを設け、ミシンモーターのエンコーダーの検出に基づく規定のタイミングで送り調節モーターによって送り量を調節する構成にした場合、各針落ち点への針落ちを行うための針振りモーターの針振り量、搬送モーター42による前進移動量に加えて、送り調節モーターによる被縫製物の送り量の具体的な数値データをデータメモリ内に予め用意することにより、千鳥縫いミシン100による咬合子連結体13,131,132の縫着をより良好に実行することができる。