【課題】測定に基づいて型ずれの発生要因を推定し、適切な対策を講じることにより、抜枠造型機で造型され、型合せされた上下鋳型の型ずれの発生を低減する方法およびその方法を用いるための抜枠造型ラインを提供する。
【解決手段】上下鋳型1、2の製造及び搬出過程において型ずれの発生要因となりうる箇所の固有データを測定する工程と、測定した固有データが、所定の許容範囲内であるかを判定する工程とを備える、抜枠造型機200で造型され、型合せされた上下鋳型1、2の型ずれの発生を低減する方法。
前記調整工程から前記予防工程への切り替えは、前記調整工程を実施した回数または型ずれが発生しなかった回数または前記調整工程を実施した回数に対する型ずれが発生した回数の比である不良率を基準に行われる;
請求項5に記載の方法。
前記予防工程から前記調整工程への切り替えは、前記予防工程において、前記型ずれの発生要因がないと判定したのに、前記型ずれの有無を判定する工程で型ずれが発生したと判定された回数または前記予防工程を実施した回数に対する前記型ずれの発生要因がないと判定したのに、前記型ずれの有無を判定する工程で型ずれが発生したと判定された回数の比である不適切率を基準に行われる;
請求項5に記載の方法。
前記製造及び搬出過程は、上枠と下枠に鋳物砂を充填する工程と、上枠と下枠に充填された鋳物砂を上スクイーズボードと下スクイーズボードでスクイーズする工程と、スクイーズされた上鋳型と下鋳型を上枠と下枠からモールド抜枠シリンダでモールド受け板上に押し出す工程と、前記モールド受け板上の上下鋳型をモールド押出シリンダで上下鋳型の搬送手段に押し出す工程とを備え;
前記固有データは、前記下スクイーズボードの付着物の大きさ、充填される前記鋳物砂と前記下スクイーズボードとの温度差、前記モールド受け板の付着物の大きさ、前記搬送手段上の付着物の有無、前記モールド押出シリンダを駆動する圧力または電流値の波形、前記上下鋳型を押す前記モールド押出シリンダの押出板に作用する衝撃、前記モールド受け板に作用する衝撃、前記モールド受け板と前記搬送手段とのレベル差、注湯完了から鋳型バラシまでの経過時間、前記モールド押出シリンダの上下鋳型の押し出し方向の加速度のうちの少なくとも1つである;
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の方法。
前記モールド受け板上の上下鋳型をモールド押出シリンダで上下鋳型の搬送手段に押し出す工程に代えて、前記モールド受け板上の上下鋳型をモールド押出シリンダでモールド受渡板上に押し出し、さらに上下鋳型の搬送手段に押し出す工程を備え;
前記固有データは、前記下スクイーズボードの付着物の大きさ、充填される前記鋳物砂と前記下スクイーズボードとの温度差、前記モールド受け板の付着物の大きさ、前記モールド受渡板の付着物の大きさ、前記搬送手段上の付着物の有無、前記モールド押出シリンダを駆動する圧力または電流値の波形、前記上下鋳型を押す前記モールド押出シリンダの押出板に作用する衝撃、前記モールド受け板に作用する衝撃、前記モールド受け板と前記モールド受渡板とのレベル差、前記モールド受渡板と前記搬送手段とのレベル差、注湯完了から鋳型バラシまでの経過時間、前記モールド押出シリンダの上下鋳型の押し出し方向の加速度のうちの少なくとも1つである;
請求項9に記載の方法。
上枠と下枠に鋳物砂を充填し上スクイーズボードおよび下スクイーズボードにてスクイーズして上下鋳型を造型し、該造型後に型合せした上下鋳型を前記上枠と下枠からモールド受け板上に押し出す、抜枠造型機と;
前記上下鋳型を前記抜枠造型機から注湯機から注湯される場所を経て鋳型バラシ装置まで搬送する上下鋳型の搬送手段と;
前記モールド受け板上の前記上下鋳型を前記上下鋳型の搬送手段上に押し出す、モールド押出シリンダと;
前記上下鋳型の製造及び搬出過程において型ずれの発生要因となりうる箇所の固有データを測定する測定手段と;
前記測定した固有データの所定の許容範囲を記憶し、前記測定した固有データが所定の許容範囲内であるかを判定する制御装置とを備える;
抜枠造型ライン。
前記モールド受け板と前記上下鋳型の搬送手段との間で前記上下鋳型を搬送する搬送路となるモールド受渡板を備え、さらに、モールド受渡板の付着物の大きさを測定するモールド受渡板付着物測定手段またはモールド受け板とモールド受渡板とのレベル差を測定するモールド受け板・モールド受渡板レベル差測定手段またはモールド受渡板と搬送手段とのレベル差を測定するモールド受渡板・搬送手段レベル差測定手段を測定手段として備える;
請求項15に記載の抜枠造型ライン。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような抜枠造型機を備えた抜枠造型ラインにおいては、該ラインの稼動中に上下鋳型の型ずれが発生することがある。現状は、型ずれが発生した要因を、型ずれが発生する度に作業者が検証している。そのために、要因究明に多くの時間を要することがあり、また、要因が不明なために適切な対策が取れないことがある、という問題がある。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みて成されたもので、抜枠造型ラインにおいて、測定に基づいて型ずれの発生要因を推定し、適切な対策を講じることにより、上下鋳型の型ずれの発生を低減する方法およびその方法を用いるための抜枠造型ラインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る方法は、例えば
図1、
図3、
図14および
図15に示すように、抜枠造型機200で造型され、型合せされた上下鋳型1、2の型ずれの発生を低減する方法であって、上下鋳型1、2の製造及び搬出過程において型ずれの発生要因となりうる箇所の固有データを測定する工程と、測定した固有データが、所定の許容範囲内であるかを判定する工程とを備える。
【0007】
このように構成すると、型ずれの発生要因となりうる箇所の測定した固有データが許容範囲内であるかどうかにより定量的に型ずれの要因を推定するので、適切な対策を講じることができ、上下鋳型の型ずれの発生を低減することができる。ここで、「型ずれの発生要因となりうる箇所」とは、抜枠造型機を含む抜枠造型ラインにおいて、上下鋳型の製造及び搬出過程において、例えば、上下鋳型を造型したり、型合せされた上下鋳型を搬送したり、上下鋳型に何らかの作業をする箇所であり、上下鋳型を移動するルートや、作業をする手段等を指す。「型ずれの発生要因となりうる箇所の測定した固有データ」とは、それらのルートや手段において型ずれの発生要因となりうるデータ、例えば汚れの付着、移動させる手段の加速度等、を測定したデータを指す。
【0008】
本発明の第2の態様に係る方法は、例えば
図14および
図15に示すように、上下鋳型1、2の型ずれの有無を判定する工程をさらに備える。このように構成すると、測定した固有データと許容範囲の比較と、型ずれの有無の判定との相関関係が分かる。
【0009】
本発明の第3の態様に係る方法は、例えば
図14に示すように、判定された型ずれの有無に応じて、固有データの所定の許容範囲を調整する調整工程をさらに備える。このように構成すると、判定された型ずれの有無に応じて固有データの許容範囲を調整するので、許容範囲を最適化することができる。
【0010】
本発明の第4の態様に係る方法は、例えば
図15に示すように、測定した固有データと調整工程にて調整された許容範囲とを用いて型ずれの発生を予防する予防工程をさらに備える。このように構成すると、最適化された許容範囲を用いて予防工程を実行するので、型ずれの発生を予防することができる。
【0011】
本発明の第5の態様に係る方法は、例えば
図16に示すように、調整工程と予防工程を選択的に実施する。このように構成すると、調整工程で許容範囲を最適化し、予防工程で型ずれの発生を予防することができる。
【0012】
本発明の第6の態様に係る方法は、例えば
図16に示すように、調整工程から予防工程への切り替えは、調整工程を実施した回数または型ずれが発生しなかった回数または前記調整工程を実施した回数に対する型ずれが発生した回数の比である不良率を基準に行われる。このように構成すると、調整工程を実施した回数または型ずれが発生しなかった回数または不良率に基づき調整工程から予防工程への切り替えを行うので、許容範囲が最適化された状態で予防工程へ切り替えることができる。
【0013】
本発明の第7の態様に係る方法は、例えば
図16に示すように、予防工程から調整工程への切り替えは、予防工程において、型ずれの発生要因がないと判定したのに、型ずれの有無を判定する工程で型ずれが発生したと判定された回数または前記予防工程を実施した回数に対する前記型ずれの発生要因がないと判定したのに、前記型ずれの有無を判定する工程で型ずれが発生したと判定された回数の比である不適切率を基準に行われる。このように構成すると、調整工程で最適化された許容範囲を用いて、予防工程において、型ずれの発生要因がないと判定したのに、型ずれが発生した回数または不適切率に基づき予防工程から調整工程への切り替えを行うので、許容範囲の最適化が不十分である場合に調整工程へ切り替えることができる。
【0014】
本発明の第8の態様に係る方法は、例えば
図14および
図15に示すように、測定した固有データが所定の許容範囲外であると判定された場合、型ずれの発生要因を解消するための操作を行う。このように構成すると、型ずれの発生要因を事前に解消することができるので、型ずれの発生を防止することができる。
【0015】
本発明の第9の態様に係る方法は、例えば
図1〜
図8に示すように、製造及び搬出過程は、上枠250と下枠240に鋳物砂290を充填する工程と、上枠250と下枠240に充填された鋳物砂290を上スクイーズボード(図示せず)と下スクイーズボード220でスクイーズする工程と、スクイーズされた上鋳型1と下鋳型2を上枠250と下枠240からモールド抜枠シリンダ230でモールド受け板210上に押し出す工程と、モールド受け板210上の上下鋳型1、2をモールド押出シリンダ120で上下鋳型1、2の搬送手段300に押し出す工程とを備え;固有データは、下スクイーズボード220の付着物の大きさ、充填される鋳物砂290と下スクイーズボード220との温度差、モールド受け板210の付着物の大きさ、搬送手段300上の付着物の有無、モールド押出シリンダ120を駆動する圧力または電流値の波形、上下鋳型1、2を押すモールド押出シリンダ120の押出板122に作用する衝撃、モールド受け板210に作用する衝撃、モールド受け板210と搬送手段300とのレベル差、注湯完了から鋳型バラシまでの経過時間、モールド押出シリンダ120の上下鋳型の押し出し方向の加速度のうちの少なくとも1つである。このように構成すると、型ずれの発生要因の特定や、型ずれを未然に防止するための対処を効率よく行うことができる。
【0016】
本発明の第10の態様に係る方法は、例えば
図1〜
図8に示すように、モールド受け板210上の上下鋳型1、2をモールド押出シリンダ120で上下鋳型の搬送手段300に押し出す工程に代えて、モールド受け板210上の上下鋳型1、2をモールド押出シリンダ120でモールド受渡板110上に押し出し、さらに上下鋳型1、2の搬送手段300に押し出す工程を備え;固有データは、下スクイーズボード220の付着物の大きさ、充填される鋳物砂290と下スクイーズボード220との温度差、モールド受け板210の付着物の大きさ、モールド受渡板110の付着物の大きさ、搬送手段300上の付着物の有無、モールド押出シリンダ120を駆動する圧力または電流値の波形、上下鋳型1、2を押すモールド押出シリンダ120の押出板122に作用する衝撃、モールド受け板210に作用する衝撃、モールド受け板210とモールド受渡板110とのレベル差、モールド受渡板110と搬送手段300とのレベル差、注湯完了から鋳型バラシまでの経過時間、モールド押出シリンダ120の上下鋳型の押し出し方向の加速度のうちの少なくとも1つである。このように構成すると、型ずれの発生要因の特定や、型ずれを未然に防止するための対処を効率よく行うことができる。
【0017】
本発明の第11の態様に係る抜枠造型ラインは、例えば
図1〜
図7に示すように、上枠250と下枠240に鋳物砂290を充填し上スクイーズボードおよび下スクイーズボード220にてスクイーズして上下鋳型1、2を造型し、該造型後に型合せした上下鋳型1、2を上枠250と下枠240からモールド受け板210上に押し出す、抜枠造型機200と;上下鋳型1、2を抜枠造型機200から注湯機800から注湯される場所を経て鋳型バラシ装置500まで搬送する上下鋳型1、2の搬送手段300と;モールド受け板210上の上下鋳型1、2を上下鋳型1、2の搬送手段300上に押し出す、モールド押出シリンダ120と;上下鋳型1、2の製造及び搬出過程において型ずれの発生要因となりうる箇所の固有データを測定する測定手段124、126、128、140、212、224、226、270、338と;測定した固有データの所定の許容範囲を記憶し、前記測定した固有データが所定の許容範囲内であるかを判定する制御装置700とを備える。
【0018】
このように構成すると、抜枠造型機で造型され、型合せされた上下鋳型の製造及び搬出過程において型ずれの発生要因となりうる箇所でリアルタイムに測定した固有データが許容範囲内であるかどうかにより、型ずれが今のサイクルで発生するかどうかをリアルタイムに判定することができるので、判定結果に基づいて迅速な対応をすることができ、型ずれの発生をサイクル途中においても防止することができる抜枠造型ラインとなる。
【0019】
本発明の第12の態様に係る抜枠造型ラインは、例えば
図2および
図13に示すように、上下鋳型1、2の型ずれを検知する型ずれ検知装置3をさらに備え;制御装置700は、型ずれの有無を判定する。このように構成すると、測定した固有データと許容範囲の比較と、型ずれの有無の判定との相関関係が分かる。
【0020】
本発明の第13の態様に係る抜枠造型ラインは、例えば
図2および
図14に示すように、制御装置700は、判定された型ずれの有無に応じて、固有データの所定の許容範囲を調整するように構成される。このように構成すると、判定された型ずれの有無に応じて固有データの許容範囲を調整するので、許容範囲を最適化することができる。
【0021】
本発明の第14の態様に係る抜枠造型ラインは、例えば
図2および
図15に示すように、制御装置700は、測定した固有データと調整された所定の許容範囲とを用いて、型ずれの発生を予防するための工程を実行させるように構成される。このように構成すると、最適化された許容範囲を用いて型ずれの発生を予防するための工程を実行するので、型ずれの発生を予防することができる。
【0022】
本発明の第15の態様に係る抜枠造型ラインでは、例えば
図1〜7および
図10に示すように、測定手段は、下スクイーズボード220の付着物の大きさを測定する下スクイーズボード付着物測定手段226;充填される鋳物砂290の温度を測定する砂温度測定手段270及び下スクイーズボード220の温度を測定する下スクイーズボード温度測定手段224;モールド受け板210の付着物の大きさを測定するモールド受け板付着物測定手段124;搬送手段300上の付着物の有無を測定する搬送手段付着物測定手段338;モールド押出シリンダ120を駆動する圧力または電流値の波形を測定するモールド押出シリンダ波形測定手段126;上下鋳型1、2を押すモールド押出シリンダ120の押出板122に作用する衝撃を測定する押出板衝撃測定手段128;モールド受け板210に作用する衝撃を測定するモールド受け板衝撃測定手段212のうちの少なくとも1つである。このように構成すると、型ずれが発生した要因の特定や、型ずれを未然に防止するための対処を効率よく行うことができる。
【0023】
本発明の第16の態様に係る抜枠造型ラインは、例えば
図1および
図2に示すように、モールド受け板210と上下鋳型1、2の搬送手段300との間で上下鋳型1、2を搬送する搬送路となるモールド受渡板110を備え、さらに、モールド受渡板110の付着物の大きさを測定するモールド受渡板付着物測定手段124またはモールド受け板210とモールド受渡板110とのレベル差を測定するモールド受け板・モールド受渡板レベル差測定手段124またはモールド受渡板110と搬送手段300とのレベル差を測定するモールド受渡板・搬送手段レベル差測定手段140を測定手段として備える。このように構成すると、抜枠造型機から上下鋳型の搬送手段へ上下鋳型をスムースに搬送できると共に、型ずれが発生した要因の特定や、型ずれを未然に防止するための対処を効率よく行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明による抜枠造型機で造型され、型合せされた上下鋳型の型ずれの発生を低減する方法または抜枠造型ラインによれば、型ずれの発生要因となりうる箇所の測定した固有データが許容範囲内であるかどうかにより、定量的に型ずれの要因を推定するので、適切な対策を講じることができ、上下鋳型の型ずれの発生を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一または相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。先ず、
図1、
図2および
図3を参照して、抜枠造型ライン100について説明する。
【0027】
図1は、抜枠造型ライン100の部分正面図、
図2は部分平面図である。また、
図3は、抜枠造型ライン100の全体を示す平面図であり、矢印は上下鋳型1、2の移動方向を示す。抜枠造型ライン100は、鋳物砂290を用いて造型した上下鋳型1、2を型合せして送り出す抜枠造型機200と、上下鋳型1、2の搬送手段300と、搬送時の型ずれを防止するために上下鋳型1、2にジャケットを被せ、さらに重錘を載せるジャケットおよび重錘移載装置400と、冷却され固化した鋳物を上下鋳型1、2から分離する鋳型バラシ装置500とを含む。
【0028】
搬送手段300は、抜枠造型機200から送り出された上下鋳型1、2を定盤台車310(
図9、
図10参照)に載置して注湯機800から注湯される場所まで、さらに注湯された上下鋳型1、2を冷却しつつ鋳型バラシ装置500まで搬送し、定盤台車310の溝および上面をスクレーパ330および清掃手段360で清掃して抜枠造型機200の位置に戻す搬送ルートを有する。搬送ルートには、直線状のルートが平行して敷設される。
図3では一往復する搬送ルートが示されるが、二往復以上の搬送ルートを有することもある。直線状のルートにおいては、両端に設置されたプッシャ390及びクッション391で1ピッチ(1鋳型分)ずつ定盤台車310を間欠搬送する。直線状のルートの末端においては、トラバーサ392により隣接する直線状のルート上に定盤台車310を移送する。
【0029】
抜枠造型ライン100は、
図1および
図2に示すように、抜枠造型機200で造型され、型合せされた上下鋳型1、2を、抜枠造型機200のモールド受け板210から上下鋳型の搬送手段300に搬送するための搬送路を提供するモールド受渡板110と、上下鋳型1、2をモールド受け板210からモールド受渡板110を経て搬送手段300へと押し出すモールド押出シリンダ120とを備える。
【0030】
モールド受渡板110は、その上面の高さが、モールド受け板210および搬送手段300の上面(本実施の形態では、後述のように定盤台車310{
図9、10参照}の上面)とほぼ同一となるようにモールド受け板210と搬送手段300の間に設置された平板である。上面は、上下鋳型1、2が押し出され易いように滑らかである。なお、モールド受渡板110を備えずに、モールド受け板210から定盤台車310上に上下鋳型1、2を直接押し出すように構成してもよい。抜枠造型ライン100では、モールド受渡板110を備えるものとして説明するので、モールド受渡板110を備えない場合は、モールド受け板210とモールド受渡板110の間およびモールド受渡板110と定盤台車310の間についての説明は、適宜、モールド受け板210と定盤台車310の間の説明として読み替えるものとする。
【0031】
モールド押出シリンダ120は、
図1では縮んだ状態で、
図2では伸びた状態で示される。モールド押出シリンダ120の伸縮は、流体圧式(空圧、液体圧)でも、機械式でも、電気式でもよい。本実施の形態では、流体圧(油圧)式としている。モールド押出シリンダ120には、シリンダを駆動する流体圧の波形を測定するモールド押出シリンダ波形測定手段126が設けられる。モールド押出シリンダ波形測定手段126は、公知の圧力計でよい。なお、モールド押出シリンダ120の伸縮が電気式の場合には、モールド押出シリンダ波形測定手段126は電流波形を測定する電流計とする。モールド押出シリンダ120の近傍には、シリンダを伸ばした長さを測定するエンコーダ130が設置される。エンコーダ130によりモールド押出シリンダ120で上下鋳型1、2をどこまで押しているのか、すなわち、上下鋳型1、2の位置を算定できる。
【0032】
モールド押出シリンダ120の先端には、上下鋳型1、2を押すための押出板122が設けられる。押出板122は、上下鋳型1、2の幅とほぼ同じ幅(
図2のY方向)を有し、モールド押出シリンダ120から上下鋳型1、2へ局所的な力が作用しないようにすると共に、上下鋳型1、2との接触性を高める。押出板122には、その幅方向に複数の2次元レーザ変位計124が設けられる。
図2では、4個の2次元レーザ変位計124が示されるが、個数は4には限らず、モールド受け板210とモールド受渡板110との全幅方向の測定ができるように配置される。2次元レーザ変位計124は、モールド受け板210およびモールド受渡板110上の付着物の大きさ(面積、高さ)を測定し、また、モールド受け板210とモールド受渡板110とのレベル差を測定する。モールド受け板210およびモールド受渡板110上の付着物の大きさの測定は、モールド押出シリンダ120が伸長して上下鋳型1、2を定盤台車310上に押し出すときと、上下鋳型1、2を定盤台車310上に押し出した後にモールド押出シリンダ120が収縮するときの2回で測定するのがよい。すなわち、2次元レーザ変位計124は、モールド受け板付着物測定手段あるいはモールド受渡板付着物測定手段あるいはモールド受け板・モールド受渡板レベル差測定手段として機能する。なお、モールド受け板付着物測定手段、モールド受渡板付着物測定手段、モールド受け板・モールド受渡板レベル差測定手段は、それぞれ別の測定装置、例えばレーザ変位計が用いられてもよい。2次元レーザ変位計124としては、キーエンス社(日本)のLJ-V7300などが好的に用いられる。また、押出板122の裏面(上下鋳型1、2を押し出す面の反対の面)あるいはその近傍に、3次元加速度センサ128が設けられる。押出板122は上下鋳型1、2との接触性が高いので、例えばモールド受け板210またはモールド受渡板110に付着物があると、その上を押し出される上下鋳型1、2は移動時に衝撃を受ける。その時の衝撃は、押出板122に伝達されるので、3次元加速度センサ128によりその衝撃を測定できる。すなわち、3次元加速度センサ128は、押出板衝撃測定手段として機能する。ここで、衝撃を測定するとは、衝撃を受けた3次元加速度センサ128が衝撃の方向、すなわち、移動方向(X方向)および上下方向(Z方向)の加速度を測定することを意味する。加えて、横方向(Y方向)の加速度を衝撃として測定してもよい。なお、本発明において「衝撃」という場合には、振動も含んでいる。振動についても、加速度を測定することにより測定することができる。
【0033】
また、モールド受渡板110と搬送手段300との段差を測定するために、その両者の上方にレーザ変位計140が設置される。
図1では2台のレーザ変位計140が設置され、モールド受渡板110の上面の高さと、搬送手段300の上面の高さを測定し、それぞれの高さからそのレベル差を測定するようにしている。しかし、1台のレーザ変位計140でレベル差を測定してもよい。
【0034】
モールド受け板210とモールド受渡板110に沿って、ブロー装置160が設置される。ブロー装置160は、モールド受け板210およびモールド受渡板110の上面に付着した付着物をエアブローで除去するように、エアノズル162を複数備える。
図1および
図2では3本のエアノズル162が示されるが、モールド受け板210およびモールド受渡板110の上面全面にエアを吹き付けて付着物を除去できるように、複数本のエアノズル162が設けられる。ブロー装置160は、加圧空気を供給するコンプレッサなどの加圧空気源(不図示)を有するが、公知の構造でよいので、説明は省略する。また、1本のエアノズル162を備えていてもよい。
【0035】
図4を参照して、抜枠造型機200に供給される鋳物砂(「造型砂」ともいう)290の温度測定ついて説明する。鋳物砂290は、砂貯蔵装置(不図示)等からコンベヤ280で運搬され、抜枠造型機200に供給される。コンベヤ280で運搬される鋳物砂290の一部を砂切り出し装置272で採取する。砂切り出し装置272は、筒体の内部にスクリューを有し、回転するスクリューにてコンベヤ上の鋳物砂290を切り出し、砂特性自動計測装置270に供給する。砂特性自動計測装置270は、供給された鋳物砂290の温度および他の特性を測定する。なお、鋳物砂290の温度は、例えば抜枠造型機200内の鋳物砂290の温度を直接測定してもよいし、他の方法で測定してもよい。
【0036】
抜枠造型機200は、上枠250(
図8参照)、マッチプレート(不図示)および上スクイーズボード(不図示)、並びに、下枠240(
図8参照)、マッチプレート(不図示)および下スクイーズボード220(
図5、
図6参照)で囲まれた上鋳型用空間および下鋳型用空間に鋳物砂290を導入し、上下スクイーズボードでスクイーズして上下鋳型1、2を造型する。
【0037】
図5および
図6に示すように、抜枠造型機200は、下スクイーズボード220の表面の付着物を測定するため、下スクイーズボード付着物測定手段としての2次元レーザ変位計226(例えば、キーエンス社のLJ-V7300)を備える。2次元レーザ変位計226は、抜枠造型機200以外の機器、例えば、抜枠造型機200の傍の架台に、設けられてもよい。なお、下スクイーズボード付着物測定手段としては、画像認識装置であってもよい。また、
図7に詳細を示すように、下スクイーズボード220の裏面または内部には、ヒータ222が設けられ、下スクイーズボード220を加温できる構造となっている。ヒータ222は、下スクイーズボード220の全面を加温できるように、つづら折り状に配置されるのが好ましい。そして、下スクイーズボード220の温度を測定する下スクイーズボード温度測定手段としての温度計224が設置される。温度計224は、下スクイーズボード220に埋め込まれてもよい。
【0038】
図8に示すように、造型された上下鋳型1、2は、マッチプレートを除去した後に型合せされ、モールド抜枠シリンダ230により鋳型押出板232を介して、上方から下方に押し出され、上枠250、下枠240から抜枠される。なお、抜枠造型機200によっては、モールド抜枠シリンダを鋳型押出板232と兼用してもよい。
【0039】
上枠250、下枠240から抜枠された上下鋳型1、2は、モールド受け板210で受けられる。モールド受け板210は、モールド受け板シリンダ218により昇降可能である。
図8(a)に示すように、モールド受け板210が上下鋳型1、2に接触する前にモールド抜枠シリンダ230で鋳型押出板232を介して上下鋳型1、2を押し出してしまうと、上下鋳型1、2はモールド受け板210に落下することになり、上下鋳型1、2に衝撃が作用し、型ずれを生じやすい。そこで、(b)に示すように、モールド受け板210が上下鋳型1、2に接触してから鋳型押出板232が上下鋳型1、2に接触して押し出すようにすることが好ましい。
図1および
図2に示すように、モールド受け板210には3次元加速度センサ212が設置され、モールド受け板衝撃測定手段としてモールド受け板210が受ける衝撃、すなわち上下鋳型1、2の落下等による衝撃を測定する。3次元加速度センサ212は、公知の加速度センサでよい。また、モールド受け板210が下降したときのレベル、すなわち上下鋳型1、2を押し出すときのレベルは、ストッパボルト214(
図1参照)で調整される。
【0040】
図9および
図10を参照して、上下鋳型の搬送手段300について説明する。搬送手段300は、上下鋳型1、2を抜枠造型機200から、上下鋳型1、2に溶湯を注湯する注湯機800、および溶湯が冷却固化され鋳物になった後に鋳型を破砕して鋳物と鋳物砂とを分離する鋳型バラシ装置500へと搬送し、または、一時保管するエリア(不図示)へ上下鋳型1、2を搬送する。ここでは、ローラ312によりレール320上を走行する定盤台車310である。定盤台車310上に上下鋳型1、2を載置し、レール320上を走行することで、上下鋳型1、2を搬送する。
【0041】
搬送手段300には、定盤台車310の溝および上面を清掃するスクレーパ330が設置される。スクレーパ330は、定盤台車310の上面の溝の付着砂等を除去するための鋼板をゴムで保持する構成の溝用スクレーパ332、定盤台車310の上面の付着砂等を除去するための鋼板をゴムで保持する構成の上面用スクレーパ334および定盤台車310の溝および上面に接触して仕上げ清掃をする仕上げ用スクレーパ336とを備える。さらに、定盤台車310の溝および上面上の付着物を検知する搬送手段付着物測定手段としてのタッチスイッチ338を備える。タッチスイッチ338は、定盤台車310の溝および上面に付着した突起物(付着物)があると、突起物に接触した検知用板が傾斜し、傾斜した検知用板が針状の接触子に接触して付着物を検知するスイッチである。搬送手段付着物測定手段は、定盤台車310の溝および上面に付着された突起物を測定できれば、他の公知の構成でもよい。また、モールド受け板付着物測定手段、モールド受渡板付着物測定手段、モールド受け板・モールド受渡板レベル差測定手段等の2次元レーザ変位計124と同様のレーザ変位計を備えて、定盤台車310の溝および上面の付着物を測定してもよい。
【0042】
溝用スクレーパ332、上面用スクレーパ334、仕上げ用スクレーパ336およびタッチスイッチ338は、スクレーパ吊下げ棒344に装着される。スクレーパ吊下げ棒344は、フレーム梁352に装着されたレール351上を横行シリンダ340によりスライドする台車342から垂下される。フレーム梁352は、両側に設置された一対のフレーム柱350間に渡される。よって、横行シリンダ340を伸縮することにより、溝用スクレーパ332、上面用スクレーパ334、仕上げ用スクレーパ336およびタッチスイッチ338は、定盤台車310の幅方向に往復する。
【0043】
図11および
図12を参照して、スクレーパ330とは異なる清掃手段360について説明する。清掃手段360は、回転軸372回りに回転して定盤台車310の溝および上面を清掃する複数のブラシを有する回転ブラシ370と、定盤台車310の溝および上面を柔軟なゴムでこすって清掃するゴムスクレーパ362とを有する。回転ブラシ370は、縦フレーム380に固着した受台386に支持される。回転ブラシ370は、回転駆動装置としてのモータ374により回転軸372を介して回転し、モータ374も縦フレーム380に支持される。縦フレーム380の下端には定盤台車310の進行方向Y1に延在する横フレーム382が固定される。横フレーム382には、縦フレーム380より定盤台車310の進行方向Y1下流にゴムスクレーパ用フレーム384が上方に向け固定される。ゴムスクレーパ用フレーム384にゴムスクレーパ362が固定される。回転ブラシ370とゴムスクレーパ362は、定盤台車310の幅ほぼ全体を清掃できる長さを有する。ゴムスクレーパ用フレーム384のゴムスクレーパ362より定盤台車310の進行方向Y1下流に定盤台車310の溝および上面上の付着物を検知する搬送手段付着物測定手段(不図示)が設けられてもよい。搬送手段付着物測定手段は、タッチスイッチ338と同様の構造である。
【0044】
なお、抜枠造型ライン100の搬送手段300には、スクレーパ330と清掃手段360の両方が設置されるのが好ましい。両方が設置される場合には、下流側に配置されたスクレーパ330または清掃手段360が搬送手段付着物測定手段を有するのが好ましいが、これには限定されない。また、搬送手段300は、スクレーパ330または清掃手段360の一方だけが設置されてもよい。一方だけが設置される場合、そのスクレーパ330または清掃手段360は、搬送手段付着物測定手段を有する。抜枠造型ライン100では、
図3に示すように、清掃手段360が下流側に、スクレーパ330が上流側に設置されるが、スクレーパ330が搬送手段付着物測定手段、すなわちタッチスイッチ338を有する。
【0045】
図13に示す型ずれ検知装置3が、抜枠造型ライン100の所定位置に設置される。なお、型ずれ検知装置3は、位置的には、上下鋳型の搬送手段300に沿って設置されるのが一般的である。型ずれ検知装置3は、上下鋳型1、2の搬送方向(
図13におけるY方向)に延在する昇降フレーム7上に、3個の距離計測手段4、5、6を備える。距離計測手段4、5、6は、レーザ変位センサ、超音波変位センサ、接触式変位センサなどの公知の変位センサでよい。昇降フレーム7は、3個の変位センサ4、5、6が測定する距離について、上鋳型1までの距離と、下鋳型2までの距離を測定できるように昇降する。よって、3個の変位センサ4、5、6により、上鋳型1の3点1a、1b、1cまでの距離S1、S2、S3と、下鋳型2の3点2a、2b、2cまでの距離S4、S5、S6が測定できる。ここで、3個の変位センサ4、5、6の座標は既知であるので、上鋳型1の3点の座標と下鋳型2の3点の座標が得られる。上下鋳型1、2の形状はそれぞれ既知であるので、3点の座標が得られると、それぞれの中心位置と水平方向の回転角を算定できる。算定された中心位置と水平方向の回転角のずれ、あるいは、中心位置と水平方向の回転角から算定した上鋳型1と下鋳型2の隅点の座標のずれから、上下鋳型1、2の型ずれを判定することができる。型ずれ検知装置3は、上鋳型用の3個の変位センサと下鋳型用の3個の変位センサを備えてもよいし、任意の個数の変位センサを備えて上下鋳型1、2の型ずれを判定してもよい。また、上記には限定されず、他の構成を有していてもよい。
【0046】
図2に示すように、抜枠造型ライン100は制御装置700を備える。制御装置700は、抜枠造型ライン100の運転を制御する。制御装置700は抜枠造型機200あるいは搬送手段300の運転を制御する制御装置と兼用されてもよいし、専用の制御装置であってもよいし、あるいは、パーソナルコンピュータであってもよい。制御装置は不図示の配線又は無線通信により、昇降フレーム7、モールド押出シリンダ120、ブロー装置160、抜枠造型機200(上スクイーズボード、下スクイーズボード220、ヒータ222、砂特性自動計測装置270等を含む)、上下鋳型の搬送手段300、スクレーパ330、清掃手段360などの運転を制御する。さらに距離計測手段4、5、6、2次元レーザ変位センサ(モールド受け板付着物測定手段、モールド受渡板付着物測定手段、モールド受け板・モールド受渡板レベル差測定手段)124、モールド押出シリンダ波形測定手段126、押出板衝撃測定手段128、モールド受渡板・搬送手段レベル差測定手段140、モールド受け板衝撃測定手段212、下スクイーズボード温度測定手段224、下スクイーズボード付着物測定手段226、砂温度測定手段270、搬送手段付着物測定手段338などからの測定データを受信し、必要に応じて許容範囲との比較を行い、後述する調整工程あるいは予防工程を行う。なお、測定した固有データの判定に「許容範囲」を用いて説明するが、許容範囲の境界値である閾値を用いてもよい。
【0047】
続いて
図14〜16をも参照して、抜枠造型ライン100の作用について説明する。
図3に示すように、抜枠造型ライン100では、抜枠造型機200で造型し型合せした上下鋳型1、2を搬送手段300で搬送する。上下鋳型1、2は、モールド押しシリンダ120で押されて、抜枠造型機200のモールド受け板210上からモールド受渡板110上を経て搬送手段300の定盤台車310上に載置される。上下鋳鋳型1、2を載置した定盤台車は、プッシャ390、クッション391およびトラバーサ392により1ピッチずつ間欠的に搬送され、上下鋳型1、2を順次搬送する。搬送手段300で搬送される上下鋳型1、2は、先ず型ずれ検知装置3で上下鋳型1、2の型ずれが検知される。次に、ジャケットおよび重錘移載装置400で、上下鋳型1、2にジャケットが被せられ、また、重錘が載せられる。次に、注湯機800から溶湯が注湯される。注湯された上下鋳型1、2は搬送手段300上の長い距離を時間を掛けて搬送され、溶湯が冷却固化される。溶湯が冷却固化して鋳物となった上下鋳型1、2は、ジャケットおよび重錘移載装置400により重錘およびジャケットが外され、その後、鋳型バラシ装置500で鋳型バラシされる。すなわち、上下鋳型1、2は破砕され、鋳物が取り出される。上下鋳型1、2が破砕されて生じた鋳物砂は、砂回収装置(不図示)、混練機(不図示)等を経て抜枠造型機200に供給される。鋳型バラシ装置500で上下鋳型1、2が取り除かれた定盤台車310は、その溝および上面に付着した付着砂等がスクレーパ330および清掃手段360で除去され、再び、抜枠造型機200から上下鋳型1、2を受け取る。
【0048】
図14は、調整工程として、型ずれの要因を取り除きつつ、固有データの許容範囲を最適化する操作のフロー図である。なお、一のフロー図を(a)〜(i)の9枚に分割し、接続する点を丸で囲んだA〜Oで示す。
図14(a)〜(c)に示される部分は、型ずれ検知装置3での判定結果が型ずれなしの場合のフローである。先ず、Step1にて、上下鋳型1、2の型ずれの寸法(隅点のずれ)の許容範囲を例えば0.5mm以下と設定し、隅点のずれが許容範囲以下であるかを判定する。
【0049】
型ずれの判定は次のように行うことができる。上鋳型1において、第1距離測定手段4で点1aまでの距離S1を、第2距離測定手段5で点1bまでの距離S2を、第3距離測定手段6で点1cまでの距離S3を測定する。測定した距離S1、S2、S3より上鋳型1の水平方向の中心位置と回転角が算出される。
【0050】
次に、型ずれ検知装置3が図示されない昇降シリンダにより下降される。その後、下鋳型2において、第1距離測定手段4で点2aまでの距離S4を、第2距離測定手段5で点2bまでの距離S5を、第3距離測定手段6で点2cまでの距離S6を測定する。この測定までを間欠搬送で上下鋳型1、2が停止している間に行う。測定した距離S4、S5、S6より、下鋳型2の水平方向の中心位置と回転角が算出される。
【0051】
次に、上鋳型1及び下鋳型2の中心位置と回転角から、矩形の4隅の位置座標を算出する。そして、上鋳型1と下鋳型2の相対する4隅の水平座標間距離を算出する。本実施形態では、該水平座標間距離の許容範囲を0.5mm以下としており、この場合、許容される範囲は0〜0.5mmとなる。4隅のずれがこの許容範囲内に入っているかを調べて、型ずれを判定する。本実施形態では、4隅のうちいずれか一つのずれが許容範囲を超えていれば型ずれと判定する。しかし、例えば、二つ、三つ、あるいは四つ全てのずれが許容範囲を超えたときに型ずれと判定してもよい。あるいは、4隅のずれの平均値、二乗和平均値などが許容範囲を超えたときに型ずれと判定してもよい。あるいは、上鋳型1及び下鋳型2の中心位置のずれと回転角のずれを用いて型ずれを判定してもよい。
【0052】
型ずれがないと判定された上下鋳型1、2につき、Step11にて、当該鋳型1、2が通過したモールド受け板210の付着物の大きさを押出板122に取り付けられたモールド受け板付着物測定手段である2次元レーザ変位計124で測定した結果、すなわち固有データとしての付着物の大きさ(面積、高さ)を許容範囲と比較する。例えば、最初は、許容範囲を面積で25mm
2以下、高さで5mm以下とする。測定した結果が許容範囲内である場合は、そのまま次のStep12(フロー図の下方)に進む。本実施形態では、付着物の大きさの判定においては、面積と高さの両方が許容範囲内であるときに、付着物の大きさが許容範囲内であると判定するが、これには限定されない。測定した結果が許容範囲外である場合は、ブロー装置160からエアを吹き出し、モールド受け板210上の付着物を除去する。そして、モールド押出シリンダ120の戻り(カエリ。シリンダの収縮)の際にもモールド受け板210の付着物を測定する。戻りでも付着物が残っていた場合(測定結果が許容範囲外である場合)には、パネル、表示灯などを用いて、作業者に告知する。すなわち、エアブローだけでは、付着物が清掃できないので、作業者によるモールド受け板210の清掃を要求する。そして、Step12に進む。
【0053】
次のStep12で、当該鋳型1、2が通過したモールド受渡板110の付着物の大きさを押出板122に取り付けられたモールド受渡板付着物測定手段である2次元レーザ変位計124で測定した結果、すなわち固有データとしての付着物の大きさ(面積、高さ)を許容範囲と比較する。例えば、最初は、許容範囲を面積で25mm
2以下、高さで5mm以下とする。測定した結果が許容範囲内である場合は、そのまま次のStep13(フロー図の下方)に進む。測定した結果が許容範囲外である場合は、ブロー装置160からエアを吹き出し、モールド受渡板110上の付着物を除去する。そして、モールド押出シリンダ120の戻り(カエリ。シリンダの収縮)の際にもモールド受渡板110の付着物を測定する。戻りでも付着物が残っていた場合(測定結果が許容範囲外である場合)には、パネル、表示灯などを用いて、作業者に告知する。すなわち、エアブローだけでは、付着物が清掃できないので、作業者によるモールド受渡板110の清掃を要求する。そして、Step13に進む。
【0054】
次のStep13で、定盤台車310の付着物をスクレーパ330の搬送手段付着物測定手段であるタッチスイッチ338で測定した結果、すなわち固有データとしての付着物の有無を判定する。付着物がない場合(タッチスイッチ338がオフの場合)は、そのまま次のStep14(フロー図の下方)に進む。付着物がある場合(タッチスイッチ338がオンの場合)は、スクレーパ330や清掃手段360で清掃しても付着物が除去されずに残っていたのであるからパネル、表示灯などを用いて、作業者に告知し、作業者による定盤台車310の清掃を要求する。なお、付着物の有無は、清掃後の定盤台車310の上面を画像認識することにより判定してもよい。
【0055】
付着物がある場合は、さらに、注湯完了から鋳型バラシまでの経過時間が通常の冷却時間の範囲内であるかを判定する。付着物、すなわち鋳物砂は、時間の経過と共に硬く固まる。しかし、通常の冷却時間の範囲内であれば、スクレーパ330および清掃手段360で除去できるはずである。そこで、この通常の冷却時間の範囲内であるのに付着物が除去できないときには、スクレーパ330や清掃手段360の劣化が想定される。例えば通常の冷却時間の範囲内であるのに付着物を除去できないことが累計または連続で5回を超えたときには、スクレーパ330や清掃手段360の摩耗状態を確認するようにパネル、表示灯で作業者へ告知する。注湯完了から鋳型バラシまでの経過時間が通常の冷却時間の範囲内ではない場合、例えば終業時間から始業時間まで放置された場合には、付着物も固まっている可能性が高いので、スクレーパ330の動作設定を変更する。なお、ここでは、スクレーパ330について説明したが、清掃手段360にて、回転ブラシ370の回転速度を速めたり、定盤台車310が清掃手段360を通過する速度を遅くしたりしてもよい。そして、Step14に進む。
【0056】
次のStep14で、下スクイーズボード220の付着物の大きさを下スクイーズボード付着物測定手段226で測定した結果、すなわち固有データとしての付着物の大きさ(面積、高さ)を許容範囲と比較する。例えば、最初は、許容範囲を面積で25mm
2以下、高さで5mm以下とする。測定した結果が許容範囲内である場合は、そのまま次のStep15(フロー図の下方)に進む。測定した結果が許容範囲外である場合は、パネル、表示灯などを用いて、作業者に告知し、作業者による下スクイーズボード220の清掃を要求する。
【0057】
測定した結果が許容範囲外である場合は、下スクイーズボード220の温度計224により測定した温度と、砂特性自動計測装置270で測定した鋳物砂(造型砂)290の温度との温度差である固有データが、許容範囲内であるかを判定する。例えば、許容範囲として15℃以下とする。鋳物砂290と下スクイーズボード220との温度差が大きくなり、そのために下スクイーズボード220表面で結露を生じ、付着し易くなることがある。そこで、下スクイーズボード220と鋳物砂290との温度差が許容範囲内であるかを判定する。温度差が許容範囲内である場合には、結露がなくても鋳物砂290が下スクイーズボード220に付着しているので、鋳物砂290の成分、例えば活性粘土分と微粉分の調整を行うように、パネル、表示灯などを用いて、作業者に告知する。
【0058】
温度差が許容範囲外である場合には、温度差が許容範囲内になるまで、造型を中断するか否かを判定する。造型を中断する場合は、ヒータ222で下スクイーズボード220を加温して、温度差が許容範囲内になるようにする。温度差が許容範囲内となったならば、次のStep15に進む。造型を中断せず、ヒータ222で下スクイーズボード220を加温しない場合には、例えば鋳物砂290に冷却空気を吹き付けて、鋳物砂290の温度が例えば30℃の所定温度以下となるように冷却する。鋳物砂290の温度が所定温度以下となれば、温度差が許容範囲内であるかを判定するステップに戻る。ヒータ222で下スクイーズボード220を加温せず、鋳物砂290の冷却もしない場合には、1サイクル毎に作業者が下スクイーズボード220を清掃するように、パネル、表示灯などを用いて作業者に告知する。そして、Step15に進む。
【0059】
次のStep15では、型ずれの判定で許容範囲内であったのに、Step11〜Step14で付着物が許容範囲外である、または付着物があると判定された項目に付き、許容範囲を広げる。すなわち、許容範囲外の付着物であっても型ずれを生じなかったということは、許容範囲が適切ではない可能性があると考えられる。許容範囲を例えば10%大きくする。このように、型ずれの判定結果を許容範囲にフィードバックすることで、許容範囲の最適化が図れる。
【0060】
Step15では、付着物が全て許容範囲内であった場合には、何もしない。Step15が終了すると、次の上下鋳型1、2の判定のため、Step1に戻る。
【0061】
Step1で、型ずれがあると判定された場合は、
図14(d)に示すStep2に進む。Step2では、型ずれをしているが、その上下鋳型1、2に注湯するかを判断する。通常、この判断は作業者が行い、制御装置700に入力する。なお、制御装置700によって自動的に判断するようにしてもよい。注湯する場合には、製品を検査ラインで精密に検査するように指示を出す。注湯しない場合には、造型する上下鋳型1、2の数量を1つ増やす必要があるので、造型計画変更指令を出す。そして、型ずれの要因を判定して取り除く工程に進む。
【0062】
続いて、
図14(d)〜(f)に示す、型ずれの要因を判定するStep31〜36を実行する。Step31では、押出板衝撃測定手段128で測定したモールド押出シリンダ120の押し出し方向の加速度が許容範囲内であるかを判定する。ここで測定する加速度は、モールド押出シリンダ120を伸縮するX方向の加速度である。許容範囲は、例えば2G以下(Gは重力加速度)とする。ここで、モールド押出シリンダ120の加速度が許容範囲内であれば、次のStep32(フロー図の下方)に進む。モールド押出シリンダ120の加速度が許容範囲外であれば、モールド押出シリンダ120を駆動する初速設定を修正する。そして、Step32に進む。
【0063】
Step32では、押出板衝撃測定手段128で測定した押出板122の衝撃が許容範囲内であるかを判定する。ここで測定する衝撃は、モールド押出シリンダ120の伸縮方向(X方向)および上下方向(Z方向)での衝撃である。Step31で用いた押出板衝撃測定手段128が3次元加速度センサであるので、X・Z方向の衝撃の測定にも使用できる。上下鋳型1、2が押し出されるモールド受け板210若しくはモールド受渡板110上に付着物があると、または、モールド受け板210とモールド受渡板110若しくはモールド受渡板110と定盤台車310とのレベル差があると、その付着物またはレベル差を越える際に上下鋳型1、2は衝撃を受け、その衝撃が押出板122に伝わる。衝撃は、押し出し方向(X方向)と上下方向(Z方向)に顕著に表れる。そこで、押出板122の衝撃は、モールド受け板210またはモールド受渡板110上に付着物がある可能性があることまたは上述したレベル差がある可能性があることを示す。ここで衝撃の許容範囲は、例えば2G以下とする。押出板122のX・Zの2方向の衝撃が両方共に許容範囲内であれば、次のStep33(フロー図の下方)に進む。押出板122の衝撃の少なくとも1つが許容範囲外であれば、
図14(g)〜(i)に示すStep41〜48に進む。Step41〜48については、後述する。なお、さらにY方向の衝撃を測定して、許容範囲と比較してもよい。
【0064】
Step33では、下スクイーズボード220の付着物の大きさが許容範囲内であるかを判定し、許容範囲内であれば、次のStep34(フロー図の下方)に進む。Step33の判定は、Step14で説明した判定と同様に行う。付着物が許容範囲外であると、Step14に関して説明したのと同様の処理を行った上で、Step34に進む。
【0065】
Step34では、モールド押出シリンダ波形測定手段126で測定したモールド押出シリンダ120を駆動する流体圧の波形が、許容範囲内にあるかを判定する。例えば、上下鋳型1、2を搬送中の流体圧の波形の変動が正常時の±10%以内であれば許容範囲内とする。許容範囲内であれば、次のStep35(フロー図の下方)に進む。モールド受け板210若しくはモールド受渡板110上に付着物があると、または、モールド受け板210とモールド受渡板110若しくはモールド受渡板110と定盤台車310とのレベル差があると、上下鋳型1、2を押し出すのに正常時とは異なる抵抗が掛かるため、駆動する流体圧が変動する。そこで、流体圧の波形が、許容範囲外である場合には、エンコーダ130により算定した位置に付着物やレベル差があるものと推定して、清掃やメンテナンスを作業者に告知する。そして、次のStep35に進む。なお、モールド押出シリンダ120の伸縮が電気式の場合には、流体圧の波形の代わりに電流値の波形を、空圧式の場合には、流体圧の波形の代わりにモールド押出シリンダ120内の空気圧の波形を用いる。
【0066】
Step35では、モールド受け板衝撃測定手段212で測定したモールド受け板210の衝撃値が許容範囲内にあるかを判定する。ここで測定する衝撃は、上下方向(Z方向)での衝撃である。例えば、衝撃値2G以下を許容範囲とする。許容範囲内であれば、次のStep36(フロー図の下方)に進む。
図8(a)で説明したように、モールド受け板210が上下鋳型1、2に接触する前にモールド抜枠シリンダ230で鋳型押出板232を介して上下鋳型1、2を押し出してしまうと、上下鋳型1、2はモールド受け板210上に落下することになり、上下鋳型1、2に衝撃が作用し、型ずれを生じやすい。そこで、モールド受け板210の衝撃値が、許容範囲外である場合には、抜枠動作を調整する。具体的には、モールド受け板210が確実に下鋳型2に接触してから、鋳型押出板232が上鋳型1に接触して上下鋳型1、2を押し出すように、モールド受け板シリンダ218とモールド抜枠シリンダ230の作動タイミングを自動または手動で修正する。そして、次のStep36に進む。
【0067】
Step36では、Step31、Step32またはStep34で衝撃を検知した箇所または流体圧の波形が許容範囲内ながら大きくなった箇所をエンコーダ130で算定し、その箇所における許容範囲を狭める。すなわち、その箇所がモールド受け板210であれば、モールド受け板210の付着物の大きさの許容範囲、モールド受け板210とモールド受渡板110との段差であれば、それらのレベル差の許容範囲、モールド受渡板110であれば、モールド受渡板110の付着物の大きさの許容範囲、モールド受渡板110と定盤台車310との段差であれば、それらのレベル差の許容範囲を狭める。例えば、Step31であれば2G以下を1.9G以下に狭める。ここで衝撃または波形が大きいとは、例えば、許容範囲に対して8割以上、または9割以上の場合を指す。あるいは、許容範囲に対する測定された固有データの割合が一番大きい箇所を指してもよい。Step36が終わると、次の上下鋳型1、2の判定のため、Step1に戻る。
【0068】
続いて
図14(g)〜(i)を参照して、Step32においてモールド押出シリンダ120のX・Z方向の衝撃が許容範囲外であった場合の処理であるStep41〜48について説明する。Step41で、下スクイーズボード220の付着物の大きさが許容範囲内であると、Step42(フロー図の下方)に進む。下スクイーズボード220の付着物の大きさが許容範囲外であるとStep14に関して説明したのと同様の処理を行った上で、Step42に進む。
【0069】
Step42では、モールド受け板210の衝撃値が許容範囲内にあるかを判定し、許容範囲内であれば、次のStep43(フロー図の下方)に進む。許容範囲外である場合には、抜枠動作を調整して、次のStep43に進む。Step42では、Step35と同様の処理を実行するので、重複する説明は省略する。
【0070】
Step43では、Step11と同様に、モールド受け板210の付着物の大きさが許容範囲内にあるかを判定し、許容範囲内であれば、次のStep44(フロー図の下方)に進む。許容範囲外である場合には、Step11に関して説明したのと同様の処理を行った上で、次のStep44に進む。
【0071】
Step44では、Step12と同様に、モールド受渡板110の付着物の大きさが許容範囲内にあるかを判定し、許容範囲内であれば、次のStep45(フロー図の下方)に進む。許容範囲外である場合には、Step12に関して説明したのと同様の処理を行った上で、次のStep45に進む。
【0072】
Step45では、Step13と同様に、定盤台車310の付着物の有無を判定し、付着物がない場合は、次のStep46(フロー図の下方)に進む。付着物がある場合には、Step13に関して説明したのと同様の処理を行った上で、次のStep46に進む。なお、付着物の有無は、清掃後の定盤台車310の上面を画像認識することにより判定してもよいことも、Step13と同様である。
【0073】
Step46では、モールド受け板・モールド受渡板レベル差測定手段124で測定したモールド受け板210とモールド受渡板110とのレベル差が許容範囲内にあるかを判定する。許容範囲は、例えば±0.3mm以下とする。レベル差が許容範囲内であれば、次のStep47(フロー図の下方)に進む。レベル差が許容範囲外である場合には、モールド受け板210のストッパボルト214を調節し、モールド受け板210の下降時のレベルを調整するようにパネル、表示灯などを用いて作業者に告知する。あるいは、モールド受け板210を昇降するアクチュエータ218の動作等を調整してもよい。なお、モールド受渡板110は、通常、固定されて、レベルを調節できない。そして、次のStep47に進む。なお、モールド受け板・モールド受渡板レベル差測定手段124でモールド受け板210とモールド受渡板110とのレベル差を測定する代わりに、上下鋳型1、2がモールド受け板210からモールド受渡板110へと押し出される際に、削られて落ちた鋳物砂の重量を測定して、レベル差が許容範囲内であるかを判定してもよい。すなわち、レベル差分の段差を越えて押し出されると、下鋳型2が段差により削られて鋳物砂の一部がモールド受け板210とモールド受渡板110との隙間から落下する。その鋳物砂を容器に収集してロードセル等で測定した重量から、レベル差が分かる。
【0074】
Step47では、モールド受渡板・搬送手段レベル差測定手段140で測定したモールド受渡板110と定盤台車310とのレベル差が許容範囲内にあるかを判定する。許容範囲は、例えば±0.3mm以下とする。レベル差が許容範囲内であれば、次のStep48(フロー図の下方)に進む。レベル差が許容範囲外である場合には、レール320の高さを調整するようにパネル、表示灯などを用いて作業者に告知する。なお、モールド受渡板110と定盤台車310とのレベル差が大きくなるのは、定盤台車310の使用により、定盤台車310のローラ312やレール320の摩耗が主たる要因である。そこで、例えば、レール320の下にスペーサ(不図示)を挿入して、レール320のレベルを調整する。そして、次のStep48に進む。なお、Step46で説明したのと同様に、モールド受渡板・搬送手段レベル差測定手段140でモールド受渡板110と定盤台車310とのレベル差を測定する代わりに、上下鋳型1、2がモールド受渡板110から定盤台車310へと押し出される際に、削られて落ちた鋳物砂の重量を測定して、レベル差が許容範囲内であるかを判定してもよい。
【0075】
Step48では、Step41〜44、46〜47において、いずれかの固有データが許容範囲外であったかどうかを判定する。すべてが許容範囲内であったならば、それにも関わらず型ずれが発生した(Step1で判定)ということなので、モールド押出し中に衝撃を検知した箇所に関する許容範囲を狭める。例えば、Step31であれば2Gを1.9Gに狭める。なお、「モールド押出し中に衝撃を検知した箇所」とは、例えば、モールド受け板210上、モールド受渡板110上、定盤台車310上であったり、それらの段差であったりする。エンコーダ130でモールド押出し中に衝撃を検知した箇所を特定することができる。このように、型ずれの要因となり得る箇所を特定して、当該箇所の許容範囲を狭めることにより、許容範囲を最適な範囲へ収束させることができる。Step41〜44、46〜47において、固有データが1つでも許容範囲外であった場合は、次の上下鋳型1、2の判定のため、Step1に戻る。
【0076】
続いて
図15のフロー図を参照して、測定した固有データと調整工程で最適化した固有データの許容範囲を用いて、抜枠造型ライン100において型ずれの発生を予防するための予防工程の操作を説明する。なお、一のフロー図を(a)〜(e)の5枚に分割し、接続する点を丸で囲んだP〜Tで示す。
【0077】
先ず、Step51で、下スクイーズボード付着物測定手段226で測定した下スクイーズボード220の付着物の大きさが許容範囲内で有るかを判定する。下スクイーズボード220は、前サイクルのスクイーズ完了後、抜枠するために枠250、240(
図8参照)が90°回転することにより前が空くので、2次元レーザ変位計226または画像認識装置(不図示)にて付着物の大きさを測定する。測定した固有データである付着物の大きさを用いて現サイクルにて清掃すべきかを判定する。許容範囲としては、例えば面積で25mm
2以下、高さで5mm以下であるが、許容範囲は、調整工程で調整されて別の値になっていてもよい。面積と高さが共に許容範囲内であれば、次のStep52(フロー図の下方)に進む。許容範囲外である場合には、付着物の清掃等をするようパネル、表示灯などを用いて作業者に告知して、次のStep52に進む。
【0078】
続いて、Step52で、下スクイーズボード温度測定手段224で測定した下スクイーズボード220と、砂温度測定手段270で測定したコンベヤ280で搬送されている、すなわち造型されようとしている鋳物砂290との温度差が許容範囲内であるかを判定する。許容範囲としては、例えば15℃以下であるが、許容範囲は、調整工程で調整されて別の値になっていてもよい。許容範囲内であれば、次のStep53(フロー図の下方)に進む。許容範囲外である場合には、温度差が許容範囲内になるまで造型を中断するか否かを判定する。造型を中断する場合は、ヒータ222で下スクイーズボード220を加温する。そして、下スクイーズボード220と鋳物砂290との温度差が許容範囲内になったならば、次のStep53に進む。造型を中断せず、ヒータ222で下スクイーズボード220を加温しない場合には、例えば鋳物砂290に冷却空気を吹き付けて、鋳物砂290の温度が例えば30℃の所定温度以下となるように冷却する。鋳物砂290の温度が所定温度以下となれば、温度差が許容範囲内であるかを判定するステップに戻る。ヒータ222で下スクイーズボード220を加温せず、鋳物砂290の冷却もしない場合には、Step53に進む。なお、下スクイーズボード220と鋳物砂290との温度差が許容範囲外であっても、作業計画上、何もせずに次のステップに進めることがあってもよい。時間的制約から造型を止められない場合には、次のサイクルの上下鋳型1、2の造型において、下スクイーズボード220に付着物がある可能性があるものの、次のステップに進めることもある。その場合には、次のサイクルにおいて、Step51で下スクイーズボード220の付着物の大きさが許容範囲外となって、付着物の清掃等をするようパネル、表示灯などを用いて作業者に告知することになる可能性がある。
【0079】
続いて、Step53で、抜枠造型機200で上下鋳型1、2を造型し、マッチプレートを除去して上下鋳型1、2を型合せする。
【0080】
また、Step54で、モールド受け板付着物測定手段124で測定したモールド受け板210の付着物の大きさが許容範囲内であるかを判定する。なお、Step54は、前サイクル(Step53で造型した上下鋳型1、2より1回前のサイクルで造型した上下鋳型1、2に対する処理)において、モールド押出シリンダ120を収縮させるとき(戻り)に測定したデータに基づく。許容範囲としては、例えば面積で25mm
2以下、高さで5mm以下であるが、許容範囲は、調整工程で調整されて別の値になっていてもよい。許容範囲内であれば、次のStep55(フロー図の下方)に進む。許容範囲外である場合には、ブロー装置160によるエアブローで付着物を除去し、あるいは、付着物の清掃等をするようパネル、表示灯などを用いて作業者に告知して、次のStep55に進む。
【0081】
Step55では、上下鋳型1、2の底面に接触させるように、モールド受け板210を上昇させる。続いてStep56で、モールド抜枠シリンダ230で鋳型押出板232を介して上枠250、下枠240内の上下鋳型1、2を下方に押して抜枠する。Step57で抜枠した際のモールド受け板210に作用する衝撃をモールド受け板衝撃測定手段212で測定する。上下鋳型1、2を載置したモールド受け板210が下降端まで下降されると、抜枠が完了する(Step58)。抜枠が完了すると次のStep59(フロー図の下方)に進む。
【0082】
Step59では、前サイクル(Step53で造型した上下鋳型1、2より1回前のサイクルで造型した上下鋳型1、2に対する処理)において、モールド押出シリンダ120を収縮させるときにモールド受渡板付着物測定手段124で測定したモールド受渡板110の付着物の大きさが許容範囲内であるかを判定する。ここで、許容範囲としては、例えば面積で25mm
2以下、高さで5mm以下であるが、許容範囲は、調整工程で調整されて別の値になっていてもよい。許容範囲内であれば、次のStep60(フロー図の下方)に進む。許容範囲外である場合には、ブロー装置160によるエアブローで付着物を除去し、あるいは、付着物の清掃等をするようパネル、表示灯などを用いて作業者に告知して、次のStep60に進む。
【0083】
Step60では、例えば
図9および
図10に示すように、定盤台車310の溝および上面の清掃を行うが、その時に付着物の検知を行う。定盤台車310がスクレーパ330の下に搬送されると、定盤台車310の溝および上面の清掃に伴って付着物の有無が検知される(Step60)。付着物が検知されなければ、次のStep61(フロー図の下方)に進む。付着物が検知された場合には、付着物の清掃等をするようパネル、表示灯などを用いて作業者に告知して、次のStep61に進む。なお、定盤台車310の清掃に伴って付着物の検知が行われるが、その結果を、例えば制御装置700の記憶装置に保存しておき、その定盤台車310がモールド押出工程に入ったタイミングで、付着物の検知の結果のデータを取り込み、作業者への告知の要否を判断してもよい。また、スクレーパ330で定盤台車310の溝および上面の付着物を検知するものとして説明したが、清掃手段360で検知してもよい。
【0084】
Step61では、前サイクル(Step53で造型した上下鋳型1、2より1回前のサイクルで造型した上下鋳型1、2に対する処理)において、モールド押出シリンダ120を収縮させるとき(戻り)にモールド受け板・モールド受渡板レベル差測定手段124で測定したモールド受け板210とモールド受渡板110とのレベル差が許容範囲内であるかを判定する。ここで、許容範囲としては、例えば±0.3mm以下であるが、許容範囲は、調整工程で調整されて別の値になっていてもよい。許容範囲内であれば、次のStep62(フロー図の下方)に進む。許容範囲外である場合には、モールド受け板210のストッパボルト214の調整やモールド受け板210のアクチュエータ、すなわちモールド受け板シリンダ218(
図8参照)の動作調整を行うようにパネル、表示灯などを用いて作業者に告知して、次のStep62に進む。
【0085】
Step62では、モールド受渡板・搬送手段レベル差測定手段140で測定したモールド受渡板110と定盤台車310の上面とのレベル差が許容範囲内であるかを判定する。ここで、許容範囲としては、例えば±0.3mm以下であるが、許容範囲は、調整工程で調整されて別の値になっていてもよい。許容範囲内であれば、次のStep63(フロー図の下方)に進む。許容範囲外である場合には、Step47に関して説明したのと同様に、定盤台車310のレール320の高さ調整を行うように表示灯などを用いて作業者に告知して、次のStep63に進む。
【0086】
Step63では、上下鋳型1、2をモールド押出シリンダ120でモールド受け板210からモールド受渡板110を経て定盤台車310上に押し出す。その際に、Step54、59での付着物またはStep61、62のレベル差が許容範囲内ではあるが閾値に近いような場合には、通常の速度より速度を遅くして押し出すのがよい。上下鋳型1、2で型ずれを起こす危険が少なくなるためである。例えば、許容範囲を10として、測定値が8〜9の場合を注意範囲として、いずれかの判定が注意範囲にある場合には、モールド押出シリンダ120の速さを遅くする。
【0087】
続いてStep64で、モールド押出シリンダ120先端の押出板122に取り付けた押出板衝撃測定手段128で、上下鋳型1、2を押出中の衝撃(X・Z方向)を計測する。ここでは、計測値をエンコーダ130に基づいて算出した位置情報と共に、鋳型1、2に紐付け(関連付け)して制御装置700で記録する。
【0088】
続いてStep65で、型ずれ検知装置3を用いて型ずれを検知し、型ずれの有無を判定する。例えば、4隅のうちいずれか一つのずれが許容範囲を超えていれば型ずれと判定するが、これには限定されず、Step1で説明した他の方法で判定してもよい。許容範囲は、例えば0.5mm以下とする。許容範囲内であれば、異常なしとして上下鋳型1、2を注湯のために搬送し(Step66)、次のサイクルに進む(Step67)。
【0089】
許容範囲外であると、型ずれがあったものとして、固有データの許容範囲を狭める処理を行う。予防工程においては、Step51、Step52、Step54、Step59、Step60、Step61およびStep62において付着物があれば除去し、段差があれば作業員に告知して型ずれの要因を取り除いている。それにも関わらず型ずれが発生したということは、許容範囲が適切でなかったものと考えられる。そこで、Step64で衝撃を記録した場所(モールド受け板210、モールド受け板210とモールド受渡板110との段差、モールド受渡板110、モールド受渡板110と定盤台車310との段差)を特定する。エンコーダ130でモールド押出し中に衝撃を検知した場所を特定することができる。あるいは、Step57で測定したモールド受け板210の衝撃値であれば、その衝撃に対する許容範囲を狭める。また、鋳物砂290と下スクイーズボード220との温度差が許容範囲内であるにも関わらず、下スクイーズボード220に付着物がある場合には、鋳物砂290の活性粘土分と微粉分を調整するように表示灯などを用いて作業者に告知する。そして、型ずれしている上下鋳型1、2に注湯する場合には、製品を検査ラインで精密に検査するように指示を出す。注湯しない場合には、造型する上下鋳型1、2の数量を1つ増やす必要があるので、造型計画変更指令を出す。そして、次のサイクルに進む。
【0090】
次に、
図16を参照して、
図14を用いて説明した調整工程と、
図15を用いて説明した予防工程との切り替えについて説明する。先ず調整工程を実行する。初期には、調整工程のカウント数mをゼロ(0)に、型ずれなしのカウント数nをゼロ(0)とする。調整工程を行うと調整工程のカウント数mに1を加える。調整工程で型ずれが発生しないと型ずれなしのカウント数nに1を加える。次に、調整工程のカウント数mが所定回数m
0を超えたか、または型ずれなしのカウント数nが所定回数n
0を超えたかを判定する。調整工程のカウント数の所定回数m
0は、例えばデータの蓄積により調整が行われたと統計的に考えられる7,000回とする。型ずれなしのカウント数の所定回数n
0は、例えば100回とする。型ずれなしのカウント数は、連続的な回数としてもよい。そのときには型ずれなしの判定がNoだった場合に、型ずれなしのカウント数nをゼロ(0)とする。調整工程のカウント数mが所定回数m
0を超えたとき、若しくは、型ずれなしのカウント数nが所定回数n
0を超えたときに、あるいは、この両者が超えたときに、予防工程に切り替える。あるいは、{(調整工程のカウント数m−型ずれなしのカウント数n)/調整工程のカウント数m}で算定される不良率が所定の値未満であるときに、予防工程に切り替えてもよい。不良率は、全サイクル数に対する、型ずれが発生したサイクル数の割合であり、例えば1%未満のときに予防工程に切り替える。不良率だけではなく、調整工程のカウント数mが所定回数m
0を超えたことと組み合わせて、予防工程に切り替えるのがよい。
【0091】
予防工程に切り替えるときには、予防工程のカウント数qをゼロ(0)に、測定されたデータ(固有データ)は許容範囲であるが、型ずれを生じたサイクルのカウント数pをゼロ(0)とする。予防工程を実行すると、カウント数qに1を加える。予防工程で、測定データは許容範囲内であるが型ずれを生じた場合に、カウント数pに1を加える。測定されたデータは許容範囲であるが、型ずれを生じたサイクルのカウント数pが所定回数p
0を超えた場合、あるいは、{測定されたデータは許容範囲であるが、型ずれを生じたサイクルのカウント数p/予防工程のカウント数q}で算定される不適切率が所定の値q
0を超えた場合に、調整工程に切り替える。所定回数p
0は、例えば5回とする。また、不適切率に対する所定の値(閾値)q
0は、例えば1%とする。
【0092】
本実施形態では、抜枠造型ライン100の作動中に型ずれの発生要因を推定する工程を有している。本構成によれば、適切な対策を講じることにより、型ずれの発生を低減することができる。さらに、型ずれの発生の要因となりうる箇所の固有データを測定し、該固有データから型ずれの発生要因となるかを判定するための許容範囲を最適化する工程を有している。そのために、型ずれの発生要因を数値データに基づき確実に判定することができる。さらに、許容範囲を最適化した後は、該許容範囲を用いた判定の結果で型ずれの要因が見出されたときには、要因を取り除く処理をする。そのために、型ずれを確実に予防することができる。また、許容範囲が最適化されたものと判断した後も許容範囲の適切さをチェックしながら作業を進め、許容範囲が不適切であると判断されると、再度、許容範囲を調整する。よって、許容範囲を最適な状態で保つことができる。
【0093】
上記の説明における各Stepを処理する順序は、適宜、変更可能である。上記の説明で言及した許容範囲も例示であって、抜枠造型ラインにより変更可能である。