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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-72763(P2019-72763A)
(43)【公開日】2019年5月16日
(54)【発明の名称】レーザー加工方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/384 20140101AFI20190419BHJP
   B23K 26/082 20140101ALI20190419BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20190419BHJP
【FI】
   B23K26/384
   B23K26/082
   B23K26/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-178212(P2018-178212)
(22)【出願日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0131659
(32)【優先日】2017年10月11日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】510223380
【氏名又は名称】エーピー システムズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソン トンヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク ジョンカプ
(72)【発明者】
【氏名】キム チウ
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD12
4E168CA13
4E168CA15
4E168CB04
4E168CB07
4E168DA32
4E168DA43
4E168EA15
4E168JA02
4E168JB01
4E168KA04
4E168KA08
(57)【要約】
【課題】 被加工対象物の加工誤りを低減することのできるレーザー加工方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るレーザー加工方法は、被加工対象物の上に加工領域を設定する過程と、前記被加工対象物の加工領域のうち、1次加工領域にレーザービームを1次的に照射する過程と、前記被加工対象物の加工領域のうち、2次加工領域に、1次照射とは異なる照射条件で、前記レーザービームを2次照射する過程と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工対象物の上に加工領域を設定する過程と、
前記被加工対象物の加工領域のうち、1次加工領域にレーザービームを1次照射する過程と、
前記被加工対象物の加工領域のうち、2次加工領域に、1次照射とは異なる照射条件で、前記レーザービームを2次照射する過程と、
を含むレーザー加工方法。
【請求項2】
前記2次加工領域は、前記1次加工領域内に含まれる請求項1に記載のレーザー加工方法。
【請求項3】
前記レーザービームを1次照射する過程と、前記レーザービームを2次照射する過程とにおいては、同じ座標系を用いて、前記1次加工領域及び前記2次加工領域にそれぞれ前記レーザービームを照射する請求項1に記載のレーザー加工方法。
【請求項4】
前記レーザービームを1次照射する過程及び前記レーザービームを2次照射する過程においては、前記被加工対象物の長軸と平行なスキャンラインと、前記被加工対象物の短軸と平行なステップラインとを有するスキャン経路に沿って前記レーザービームの照射位置を移動させながら前記加工領域をスキャンする請求項1に記載のレーザー加工方法。
【請求項5】
前記レーザービームを1次照射する過程と、前記レーザービームを2次照射する過程とにおいては、同じスキャン経路に沿って前記加工領域をスキャンし、前記1次加工領域と前記2次加工領域とにおいてそれぞれ前記レーザービームを活性化させる請求項4に記載のレーザー加工方法。
【請求項6】
前記レーザービームを1次照射する過程においては、複数本の前記スキャンラインをスキャンして前記1次加工領域を加工し、
前記レーザービームを2次照射する過程においては、複数本の前記スキャンラインのうち、前記1次加工領域の中央部を通過する前記スキャンラインのみをスキャンして前記2次加工領域を加工する請求項4に記載のレーザー加工方法。
【請求項7】
前記レーザービームを2次照射する過程においては、
前記レーザービームの強さが、前記レーザービームを1次照射する過程よりも大きいか、あるいは、
前記レーザービームの移動速度と、前記スキャンラインでの前記レーザービームのスキャンピッチとが、前記レーザービームを1次照射する過程よりも小さい請求項4に記載のレーザー加工方法。
【請求項8】
前記レーザービームを1次照射する過程において、
前記1次加工領域の中央部は、前記レーザービームによる領域別のエネルギー累積が一定しており、
前記1次加工領域の周縁部は、前記レーザービームによる領域別のエネルギー累積が、前記1次加工領域の中央部に近いほど大きい請求項1に記載のレーザー加工方法。
【請求項9】
前記2次加工領域は、前記1次加工領域の中央部と重なり合い、
前記レーザービームを2次照射する過程においては、前記2次加工領域の前記レーザービームによる領域別のエネルギー累積が一定している請求項1に記載のレーザー加工方法。
【請求項10】
前記レーザービームを1次照射する過程においては、加工深さが一定になるように前記1次加工領域の中央部を加工し、前記1次加工領域の中央部に近づくにつれて加工深さが深くなるように前記1次加工領域の周縁部を加工し、
前記レーザービームを2次照射する過程においては、前記被加工対象物が貫通されるように前記2次加工領域を加工する請求項1に記載のレーザー加工方法。
【請求項11】
前記加工領域のうち、加工孔の形成有無を確認する過程を更に含み、
前記レーザービームを2次照射する過程においては、前記加工孔の形成有無を確認する過程において前記加工孔が形成されていない前記加工領域に前記レーザービームを照射する請求項1に記載のレーザー加工方法。
【請求項12】
前記加工孔の形成有無を確認する過程においては、高さセンサー、イメージセンサー、光センサー、及びレーザーセンサーのうちの少なくともいずれか一つを用いて、前記加工孔の形成有無を確認する請求項11に記載のレーザー加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工方法に係り、更に詳しくは、被加工対象物の加工誤りを低減することのできるレーザー加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
能動型有機発光ダイオード(Active Matrix Organic Light−Emitting Diode;AMOLED)の製作に際して、真空蒸着工程を行って複数の有機物を蒸着する。また、RGB(Red、Green、Blue)のピクセル(pixel)別に異なる有機物を蒸着しなければならないが、このとき、所望のピクセルにのみ所望の有機物を蒸着し、その他の領域には有機物が蒸着されないようにスクリーンマスクの役割を担うのが微細金属マスク(Fine Metal Mask;FMM)である。
【0003】
一般に、微細金属マスクの製作に際しては、ウェットエッチング(Wet etching)方式を用いて微細金属マスクに有機物を蒸着するための開口部(hole)を形成していた。ところが、有機発光ダイオードのサイズ(size)が大きくなるにつれて、かつ、解像度が高くなるにつれて、ウェットエッチング方式で微細金属マスクを製作する場合、微細金属マスクの大きさ及び微細金属マスクに形成された開口部の精密度に対する限界が生じる。
【0004】
また、微細金属マスクは、熱膨張係数が非常に低いため、インバー(INVAR)素材を主として用いる。しかしながら、500PPI以上の高解像度のパネルを作製するためには、20μm以下の厚さを有する微細金属マスクを用いることを余儀なくされるため、圧延方式でインバー素材を作らなければならず、インバー素材は、圧延方式で作るとき、±5%の厚さのバラツキが生じてしまう。このような厚さのバラツキは、他の部分よりも相対的に厚い部分に開口部が形成されないなど、微細金属マスクに形成された開口部の精密度に影響を及ぼすため、インバー素材の厚さのバラツキによる加工誤りを低減する方法が求められている。
【0005】
従来には、インバー素材の厚さのバラツキによる加工誤りを低減するために、1次エッチングが行われた面の反対の面(又は、対向面)にウェットエッチング方式で2次エッチングを行って、相対的に厚い厚さにより開口部が形成されていない部分に開口部を形成していた。しかしながら、このような方法は、2次エッチングが行われる面に傾斜した盛り上がりができてしまい、盛り上がりにより有機物の蒸着に際してシャドウ(Shadow)の発生を引き起こす虞があり、両面エッチングによる位置ずれ(misalign)に起因して開口部の形状にばらつきが生じる虞もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】大韓民国特許公開第10−2011−0013244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、互いに異なる照射条件の2段階にわたってレーザービームを照射して、被加工対象物の領域別の厚さの偏差による加工誤りを低減することのできるレーザー加工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態に係るレーザー加工方法は、被加工対象物の上に加工領域を設定する過程と、前記被加工対象物の加工領域のうち、1次加工領域にレーザービームを1次照射する過程と、前記被加工対象物の加工領域のうち、2次加工領域に、1次照射とは異なる照射条件で、前記レーザービームを2次照射する過程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
前記2次加工領域は、前記1次加工領域内に含まれてもよい。
【0010】
前記レーザービームを1次照射する過程と、前記レーザービームを2次照射する過程とにおいては、同じ座標系を用いて、前記1次加工領域及び前記2次加工領域にそれぞれ前記レーザービームを照射してもよい。
【0011】
前記レーザービームを1次照射する過程及び前記レーザービームを2次照射する過程においては、前記被加工対象物の長軸と平行なスキャンラインと、前記被加工対象物の短軸と平行なステップラインとを有するスキャン経路に沿って前記レーザービームの照射位置を移動させながら前記加工領域をスキャンしてもよい。
【0012】
前記レーザービームを1次照射する過程と、前記レーザービームを2次照射する過程とにおいては、同じスキャン経路に沿って前記加工領域をスキャンし、前記1次加工領域と前記2次加工領域とにおいてそれぞれ前記レーザービームを活性化させてもよい。
【0013】
前記レーザービームを1次照射する過程においては、複数本の前記スキャンラインをスキャンして前記1次加工領域を加工し、前記レーザービームを2次照射する過程においては、複数本の前記スキャンラインのうち、前記1次加工領域の中央部を通過する前記スキャンラインのみをスキャンして前記2次加工領域を加工してもよい。
【0014】
前記レーザービームを2次照射する過程においては、前記レーザービームの強さが、前記レーザービームを1次照射する過程よりも大きいか、あるいは、前記レーザービームの移動速度と、前記スキャンラインでの前記レーザービームのスキャンピッチとが、前記レーザービームを1次照射する過程よりも小さくてもよい。
【0015】
前記レーザービームを1次照射する過程において、前記1次加工領域の中央部は、前記レーザービームによる領域別のエネルギー累積が一定しており、前記1次加工領域の周縁部は、前記レーザービームによる領域別のエネルギー累積が、前記1次加工領域の中央部に近いほど大きくてもよい。
【0016】
前記2次加工領域は、前記1次加工領域の中央部と重なり合い、前記レーザービームを2次照射する過程においては、前記2次加工領域の前記レーザービームによる領域別のエネルギー累積が一定していてもよい。
【0017】
前記レーザービームを1次照射する過程においては、加工深さが一定になるように前記1次加工領域の中央部を加工し、前記1次加工領域の中央部に近づくにつれて加工深さが深くなるように前記1次加工領域の周縁部を加工し、前記レーザービームを2次照射する過程においては、前記被加工対象物が貫通されるように前記2次加工領域を加工してもよい。
【0018】
前記レーザー加工方法は、前記加工領域のうち、加工孔の形成有無を確認する過程を更に含み、前記レーザービームを2次照射する過程においては、前記加工孔の形成有無を確認する過程において前記加工孔が形成されていない前記加工領域に前記レーザービームを照射してもよい。
【0019】
前記加工孔の形成有無を確認する過程においては、高さセンサー、イメージセンサー、光センサー、レーザーセンサーのうちの少なくともいずれか一つを用いて、前記加工孔の形成有無を確認してもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の実施形態に係るレーザー加工方法は、互いに異なる照射条件の2段階にわたってレーザービームを加工領域に照射して被加工対象物を加工することで、被加工対象物の領域別の厚さの偏差による影響(又は、加工誤り)により被加工対象物に対する加工が不完全に行われる部分(すなわち、加工孔が形成されていない部分)ができてしまうという問題を解消することができる。
【0021】
また、2次加工領域の面積を1次加工領域の面積よりも小さくすることで、2段階にわたっての加工にも拘わらず、加工孔の周りへの影響を無くすことができ、レーザービームを2次照射するとき、レーザービームの強さ、レーザービームの移動速度、レーザービームのスキャンピッチなどをレーザービームを1次照射するときと異ならせて設定して、加工孔のうち相対的に厚い厚さによる盛り上がり部の内側面を垂直にできて、内側面が傾斜した盛り上がり部よりもシャドウ(Shadow)の発生を低減することができる。
【0022】
更に、本発明においては、被加工対象物の片面に対して2段階にわたっての加工が行われるので、両面加工による位置ずれ(misalign)を防ぐことができる。
【0023】
したがって、本発明のレーザー加工方法は、被加工対象物の領域別の厚さの偏差による加工誤りを低減することができ、被加工対象物に対する加工精密度を従来よりも向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態に係るレーザー加工方法を示す手順図。
図2】本発明の一実施形態に係るレーザー加工方法により加工された被加工対象物を示す斜視図。
図3】本発明の一実施形態に係るレーザー加工方法により加工された被加工対象物の断面図。
図4】本発明の一実施形態に係る2段階にわたってのレーザービームの照射を説明するための概略断面図。
図5】本発明の一実施形態に係るレーザービームのスキャンを説明するための概念図。
図6】本発明の一実施形態に係る加工領域の領域別のエネルギー累積を説明するための概念図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面に基づき、本発明の実施形態について更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下に開示される実施の形態に何ら限定されるものではなく、異なる様々な形態として実現され、単にこれらの実施の形態は本発明の開示を完全たるものにし、通常の知識を有する者に発明の範囲を完全に知らせるために提供されるものである。本発明を説明するに当たって、同じ構成要素には同じ参照符号を付し、図面は、本発明の実施形態を正確に説明するために大きさが部分的に誇張されてもよく、図中、同じ符号は、同じ構成要素を指し示す。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係るレーザー加工方法を示す手順図であり、図2は、本発明の一実施形態に係るレーザー加工方法により加工された被加工対象物を示す斜視図である。
【0027】
図1及び図2を参照すると、本発明の一実施形態に係るレーザー加工方法は、被加工対象物100の上に加工領域110を設定する過程(S100)と、前記被加工対象物100の加工領域110のうち、1次加工領域に対してレーザービーム10を1次照射する過程(S200)と、前記被加工対象物100の加工領域110のうち、2次加工領域に、1次照射とは異なる条件で、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)と、を含んでいてもよい。
【0028】
本発明における被加工対象物100は、一般的に、有機EL(Electro Luminescence)や有機半導体素子などの製造に際して真空蒸着工程において用いられる微細金属マスク(Fine Metal Mask;FMM)であってもよいが、レーザーで加工可能である限り、いかなる対象物であっても構わない。特に、半導体素子のパッケージングに当たって、プリント回路基板(Printed Circuit Board;PCB)に形成されるビア孔(via hole)や半導体基板上の特定の領域に加工パターン(pattern)を形成しようとする場合などに種々に活用可能である。
【0029】
先ず、被加工対象物100の上に加工領域110を設定する(S100)。加工領域110は、単一であっても複数であってもよく、被加工対象物100上における仮想の領域として設定されてもよい。このとき、加工領域110は、1次加工領域及び2次加工領域を有していてもよい。
【0030】
次いで、前記被加工対象物100の加工領域110のうち、1次加工領域に対してレーザービーム10を1次照射する(S200)。ここで、被加工対象物100の一方の面にレーザービーム10を照射してもよい。被加工対象物100の加工領域110のうち、1次加工領域にレーザービーム10を照射して被加工対象物100を加工してもよい。例えば、被加工対象物100に加工孔11を形成してもよく、加工孔11は、加工領域110と同じであってもよく、加工領域110よりも小さくてもよい。このとき、レーザービーム10による加工深さを被加工対象物100の基準厚さとして設定してもよく、被加工対象物100の加工領域110のうち、1次加工領域に1次的にレーザービーム10を照射して被加工対象物100の基準厚さ(例えば、20μm)に相当する(又は、対応する)深さまで1次的に加工してもよい。ここで、前記1次加工領域の面積は、加工領域110の面積と同じであってもよい。
【0031】
次いで、前記被加工対象物100の加工領域110のうち、2次加工領域に、1次照射とは異なる条件で、前記レーザービーム10を2次照射する(S300)。レーザービーム10を、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)とは異なる条件で、加工領域110のうち、2次加工領域に照射してもよい。ここで、前記2次加工領域の面積は、加工領域110の面積と同じであってもよく、加工領域110の面積よりも小さくてもよく。1次的に加工された加工領域110にレーザービーム10を再び照射して、被加工対象物100に厚さのばらつがある場合に相対的に厚い厚さにより加工孔11が形成されていない(すなわち、前記被加工対象物の基準厚さよりも厚い)加工領域110を2次的に加工することにより、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)で、加工孔11が形成されていない加工領域110にも加工孔11が形成されるようにしてもよく、加工孔11が形成されない加工領域110なしに全ての加工領域110に加工孔11を形成してもよい。
【0032】
一方、被加工対象物100は、インバー(INVAR)と呼ばれる金属材質により形成されてもよく、インバーは、鉄(Fe)64%にニッケル(Ni)36%を添加して作る、熱膨張係数が非常に小さい合金であって、精密機械又は光学器械の部品、時計の部品のように温度の変化により寸法が変わると、誤差の原因となる機械に用いられる。インバー材質の被加工対象物100は、約50ピコ秒(ps)の熱拡散時間を有してもよく、圧延加工に際して±5%の領域別の厚さの偏差(又は、厚さのバラツキ)が生じることがある。すなわち、被加工対象物100は、状況に応じて、領域別の厚さの偏差を有してもよい。
【0033】
前記2次加工領域は、前記1次加工領域内に含まれてもよく、前記1次加工領域の全体と重なり合ってもよく、前記1次加工領域の一部と重なり合ってもよい。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態に係るレーザー加工方法により加工された被加工対象物の断面図であり、図4は、本発明の一実施形態に係る2段階にわたってのレーザービーム照射を説明するための概略断面図であり、図4の(a)は、基準厚さ以下の厚さを有する加工領域を示す図であり、図4の(b)は、基準厚さよりも厚い加工領域を示す図である。
【0035】
図3及び図4を参照すると、前記2次加工領域の面積は、前記1次加工領域の面積よりも小さくてもよい。このとき、前記1次加工領域の面積は、加工領域110の面積と同じであってもよく、前記2次加工領域は、加工領域110の中央部111に位置してもよい。すなわち、加工領域110は、中央部111及び周縁部112を有していてもよく、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)においては、中央部111及び周縁部112を有する前記1次加工領域にレーザービーム10を照射してもよく、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、中央部111にのみ(すなわち、前記2次加工領域にのみ)レーザービーム10を照射してもよい。換言すれば、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては(又は、2回目のレーザービームを照射するときには)、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)よりも(又は、1回目のレーザービームを照射するときよりも)被加工対象物100の加工領域110においてレーザービーム10が照射される面積を小さくできる。この場合、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、周縁部112にレーザービーム10を照射しないため、2段階にわたってのレーザー加工にもかかわらず、加工孔11の周りへの影響を無くすことができ、加工孔11の大きさ(size)が基準大きさよりも相対的に大きくなるオーバーエッチング(over etching)を防ぐことができる。すなわち、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)において、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)を用いた加工領域110の1次加工に影響を及ぼさないことができる。
【0036】
前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)においては、加工深さが一定になるように前記1次加工領域の中央部111を加工してもよく、前記1次加工領域の中央部111に近づくにつれて加工深さが深くなるように前記1次加工領域の周縁部112を加工してもよい。前記1次加工領域の中央部111は、加工深さを一定に加工してもよく、前記1次加工領域の中央部111においては、レーザービーム10の照射条件(例えば、レーザービームの強さ、移動速度など)を同じくして加工してもよい。
【0037】
前記1次加工領域の周縁部112は、前記1次加工領域の中央部111に近付くにつれて加工深さが深くなるように(又は、大きくなるように)加工してもよく、被加工対象物100の一方の面から遠ざかるにつれて(又は、深くなるにつれて)加工領域110の端縁から中央部111に向かって先細まりとなる形状(すなわち、テーパー状)に傾斜してもよい。このようなテーパー状によれば、加工孔11の寸法(size)及び形状安定性を確保することができ、蒸着工程において有機物などの蒸着粒子が容易に加工孔11を通過することができ、これにより、蒸着工程におけるマスク(mask)によるシャドウ(Shadow)の発生を低減することができる。すなわち、前記テーパー状により前記蒸着粒子が加工孔11を中心に集まることができて、前記蒸着粒子が加工孔11の周りに伝搬する(又は、広がる)というシャドウの発生を低減することができる。
【0038】
また、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)と、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)とにおいては、両方とも被加工対象物100の一方の面にレーザービーム10を照射してもよい。この場合、被加工対象物100の片面(すなわち、一方の面)に対して2段階(又は、2次)のレーザー加工が行われるので、両面加工による位置ずれ(misalign)を防ぐことができる。
【0039】
前記2次加工領域は、前記1次加工領域110の中央部111と重なり合ってもよい。ここで、加工領域110の中央部111に加工孔11が形成されてもよく、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)及び/又は前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)において、被加工対象物100に加工孔11を形成してもよい。すなわち、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)で、加工孔11が形成されていない加工領域110に加工孔11を形成してもよい。
【0040】
例えば、基準厚さ以下の厚さを有する加工領域110には、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)において、図4の(a)に示すように、加工孔11が形成されてもよく、前記基準厚さよりも厚い加工領域110には、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)において、図4の(b)に示すように、加工孔11が形成されてもよい。すなわち、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)において、被加工対象物100の加工領域110のうち、前記1次加工領域に1次的にレーザービーム10を照射して、被加工対象物100の基準厚さの深さまで1次的に加工することにより、基準厚さ以下の厚さを有する加工領域110に加工孔11を形成してもよい。また、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)において、1次的に前記1次加工領域が加工された加工領域110にレーザービーム10を再び(又は、2次的に)照射して、前記1次的に前記1次加工領域が加工された加工領域110のうち、前記2次加工領域(例えば、前記基準厚さよりも厚い部分又は加工領域)を被加工対象物100の最大の厚さの偏差の深さに見合う分だけ2次的に加工することにより、前記基準厚さよりも厚い加工領域110に加工孔11を形成してもよい。これにより、加工孔11が形成されない加工領域110なしに全ての加工領域110に加工孔11を形成することができる。
【0041】
前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、被加工対象物100が貫通するように前記2次加工領域を加工してもよい。このとき、加工領域110の中央部111のように、加工深さが一定になるように前記2次加工領域を加工してもよい。すなわち、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、垂直方向に(又は、垂直に)加工孔11を形成してもよい。
【0042】
換言すれば、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、前記基準厚さよりも厚い加工領域110に形成される加工孔11のうち、相対的に厚い厚さによる盛り上がり部の内側面が略垂直になるように加工孔11を形成してもよい。この場合、前記基準厚さよりも厚い加工領域110に形成される加工孔11の大きさが、前記基準厚さ以下の厚さを有する加工領域110に形成される加工孔11の大きさと略同じである可能性があるため、正確な寸法の領域に蒸着物質(例えば、有機物)を蒸着(又は、正確な寸法の膜)を形成することができ、蒸着物質が加工孔11を通過しながら広がることを防いで、内側面が傾斜した盛り上がり部よりもシャドウの発生を低減することができる。
【0043】
一方、被加工対象物100の領域別の厚さの偏差が±5%である場合、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)において、被加工対象物100の加工領域110に1次的にレーザービーム10を照射して、前記1次加工領域を被加工対象物100の基準厚さの−5%の深さ(すなわち、前記被加工対象物の最小の厚さの深さ)まで1次的に加工し、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)において、2次的に被加工対象物100の基準厚さの−5%〜被加工対象物100の基準厚さの+5%の深さ(すなわち、前記被加工対象物の最小の厚さの深さから前記被加工対象物の最大の厚さの深さまで)まで前記2次加工領域を垂直方向に加工して加工孔11を形成してもよい。被加工対象物100の基準厚さの深さまで1次的に加工すれば、被加工対象物100の基準厚さよりも薄い加工領域110の加工孔11と、被加工対象物100の基準厚さ以上の加工領域110の加工孔11との間に大きさ差が生じる虞があるため、最も薄い厚さ(例えば、前記被加工対象物の基準厚さの−5%)において加工孔11が所望の大きさになるようにした後、2次的に残りの厚さ(例えば、前記被加工対象物の基準厚さの−5%〜前記被加工対象物の基準厚さの+5%)に(又は、残りの厚さに見合う分だけ)垂直方向に加工孔11を形成して、全ての加工孔11の大きさが略同じくなるようにしてもよい。
【0044】
また、被加工対象物100の領域別の厚さの偏差が±5%である場合、加工孔11のうち、相対的に厚い厚さによる盛り上がり部の垂直方向の長さHは、被加工対象物100の基準厚さの5%〜被加工対象物100の基準厚さの10%であってもよい。
【0045】
更に、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)及び前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、同じ座標系を用いて、前記1次加工領域及び前記2次加工領域にそれぞれレーザービーム10を照射してもよい。
【0046】
前記加工領域を設定する過程(S100)においては、被加工対象物100の上に設定された座標系において、前記1次加工領域及び前記2次加工領域を設定してもよい。前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)においては、前記座標系において、前記1次加工領域に対応する座標にレーザービーム10を照射してもよく、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、前記座標系において、前記2次加工領域に対応する座標にレーザービーム10を照射してもよい。この場合、前記1次加工領域に対応する座標(又は、座標区間)及び/又は前記2次加工領域に対応する座標(又は、座標区間)においてレーザービーム10を活性化させてもよく、前記1次加工領域及び/又は前記2次加工領域に(のみ)レーザービーム10を照射して加工する上で容易になる。なお、レーザービーム10の照射位置を前記1次加工領域(すなわち、前記1次加工領域に対応する座標)及び/又は前記2次加工領域(すなわち、前記2次加工領域に対応する座標)に移動させる上で容易になる。
【0047】
図5は、本発明の一実施形態に係るレーザービームのスキャンを説明するための概念図である。
【0048】
図5を参照すると、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)及び前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、被加工対象物100の長軸と平行なスキャンライン21(scan line)と、被加工対象物100の短軸と平行なステップライン22(step line)とを有するスキャン経路20(scan path)に沿ってレーザービーム10の照射位置を移動させながら、加工領域110をスキャンしてもよい。スキャン経路20は、被加工対象物100の長軸と平行なスキャンライン21(scan line)と、被加工対象物100の短軸と平行なステップライン22(step line)とを有していてもよく、いずれか一本のスキャンライン21をスキャンした後に、ステップライン22を均一に分割したステップピッチ(step pitch)だけステップライン22に沿ってレーザービーム10の照射位置が移動して他のスキャンライン21をスキャンしてもよい。スキャンライン21は、被加工対象物100の長軸と平行であってもよく、スキャンライン21の一方の側から他方の側に向かって(又は、他方の側から一方の側に向かって)スキャンしてもよい。ステップライン22は、被加工対象物100の短軸と平行であってもよく、いずれか一本のスキャンライン21をスキャンした後に、ステップライン22の一方の側から他方の側までを均一に分割したステップピッチだけステップライン22に沿ってステップライン22の他方の側(又は、一方の側)の向きにレーザービーム10の照射位置を移動させて他のスキャンライン21をスキャンしてもよい。
【0049】
ここで、1番目のスキャンライン21及び2番目のスキャンライン22を同じ方向にスキャンしてもよく、反対の方向にスキャンしてもよい。すなわち、レーザービーム10の照射位置の移動方向が反対に設定されてもよく、n−1番目(又は、奇数番目)のスキャンライン10及びn番目(又は、偶数番目)のスキャンライン10は、同じ方向又は反対方向にレーザービーム10の照射位置が移動するように設定してもよく、これに何ら限定されるわけではなく、複数本のスキャンライン10は、特定の方向に、又はその反対方向に設定されてもよく、これらの組み合わせの方向に設定されてもよい。一方、いずれか一本のスキャンライン21から他のスキャンライン21への方向の切り換えに際して、ステップピッチは、いずれか一本のスキャンライン21のレーザービーム10の大きさに等しいかまたはそれよりも小さく形成されてもよく、均一なパターンの加工が行われるようにしてもよい。すなわち、いずれか一本のスキャンライン21から他のスキャンライン21への方向の切り換えに際して、ステップピッチは、いずれか一本のスキャンライン21のレーザービーム10の大きさに等しいかまたはそれよりも小さいことを特徴としてもよい。
【0050】
前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)と、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)とにおいては、同じスキャン経路20に沿って加工領域110をスキャンしてもよく、前記1次加工領域と前記2次加工領域とにおいて、それぞれレーザービーム10を照射してもよい。例えば、レーザービーム10が出射されるレーザーヘッド(図示せず)の照射方向をスキャン経路20に沿って移動させて加工領域110をスキャンしてもよい。スキャン領域内に全ての(又は、全体の)加工領域110が含まれるようにスキャン経路20を設定することにより、加工領域110を多数回にわたってスキャンしなくても、スキャン経路20に沿った単一回のスキャンだけで全体の加工領域110の加工が終わるようにしてもよい。これにより、従来より問題視されていた、スキャン装置を用いて全体の加工領域を複数の分割領域に分けて加工することにより生じるスティッチング(stitching)の発生の問題を払拭することができる。一方、場合によっては、同じスキャン経路20のn回にわたってのスキャンにより全体の加工領域110の加工が終わるようにしてもよい。また、駆動部(図示せず)を用いて、レーザービーム10の照射位置を移動させてもよく、加工孔11の形成のために被加工対象物100の表面上において、レーザービーム10の照射位置を被加工対象物100の表面の特定の位置に相対移動させてもよく、被加工対象物100又はレーザービーム10の照射位置(例えば、前記レーザーヘッドの位置)を移動させてもよい。例えば、前記駆動部(図示せず)は、一つ以上のガルバノミラーを有するスキャナーを備えて、停止された被加工対象物100の上にレーザービーム10の絶対位置を変更させるようにしてもよく、1軸以上の直線運動をする被加工対象物ステージ搬送装置(図示せず)又はロールツーロール(Roll−to−Roll)搬送装置(図示せず)により形成されて、停止されたレーザービーム10に対して被加工対象物100の絶対位置を変更させてもよく、レーザービーム10の絶対位置の変更及び被加工対象物100の位置の変更の両方ともを連動させてもよい。すなわち、前記ガルバノミラーと、前記被加工対象物ステージ搬送装置及び/又は前記ロールツーロール搬送装置は、必要に応じて、組み合わせて用いてもよい。
【0051】
ここで、同じスキャン経路20とは、加工領域110をスキャンする開始点と終点とが同じであり、開始点から終点までに進む経路が同じであることを意味する。この場合、レーザー加工の全ての過程(すなわち、前記レーザービームを1次照射する過程と、前記レーザービームを2次照射する過程)において、一本のスキャン経路20でレーザービーム10の照射位置を移動させるので、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)と前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)との間、又はいずれか一つの被加工対象物100のレーザー加工と他の被加工対象物100のレーザー加工との間に生じるレーザービーム10の照射位置の誤差を低減することができ、レーザー加工(例えば、加工孔の形成)の精密度を向上させることができる。
【0052】
このとき、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)と、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)とは、レーザービーム10を活性化させる区間が異なってもよい。前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)におけるレーザービーム10の活性化区間のうちの一部の区間においてレーザービーム10を活性化させてもよい。すなわち、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)においては、加工領域110のいずれか一つの境界(すなわち、前記1次加工領域の一つの境界)から、加工領域110の他の境界(すなわち、前記1次加工領域の他の境界)へと達するまでレーザービーム10を活性化させてもよく、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、加工領域110の中央部111のいずれか一つの境界(すなわち、前記2次加工領域の一つの境界)から、加工領域110の中央部111の他の境界(すなわち、前記2次加工領域の他の境界)へと達するまでレーザービーム10を活性化させてもよい。換言すれば、スキャン経路20に沿って全ての加工領域110が含まれるスキャン領域(例えば、前記被加工対象物の一方の面の全体)をスキャンしながら、レーザービーム10による加工が必要な加工領域110又は加工領域110のうちの一部の領域(例えば、中央部)にのみレーザービーム10をオン(on)にしてもよく、レーザービーム10による加工が不要であるその他の領域には、レーザービーム10をオフ(off)にしてもよい。これにより、被加工対象物100のうち、にレーザー加工が求められる部分にのみレーザービーム10を照射することができるので、レーザービーム10を照射する作業時間が短縮されて、レーザー加工にかかる時間及び費用を削減することができ、正確な位置に加工孔11を形成することができるというメリットがある。
【0053】
例えば、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)において、加工領域110のいずれか一つの境界に達すると、加工領域110の他の境界に達するまでレーザービーム10をオン(on)にしてもよく、加工領域110の他の境界に達すると、レーザービーム10をオフ(off)にしてもよい。また、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)において、加工領域110の中央部111のいずれか一つの境界に達すると、加工領域110の中央部111の他の境界に達するまでレーザービーム10をオン(on)にしてもよく、加工領域110の中央部111の他の境界に達すると、レーザービーム10をオフ(off)にしてもよい。これにより、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)において、加工領域110のいずれか一つの境界から、加工領域110の他の境界へと達するまでレーザービーム10を活性化させ易くなり、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)において、加工領域110の中央部111のいずれか一つの境界から、加工領域110の中央部111の他の境界へと達するまでレーザービーム10を活性化させ易くなる。
【0054】
前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)においては、複数本のスキャンライン21をスキャンして前記1次加工領域を加工してもよく、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、複数本のスキャンライン21のうち、前記1次加工領域の中央部111を通過するスキャンライン21のみをスキャンして前記2次加工領域を加工してもよい。前記1次加工領域は、加工領域110と略同じであるため、複数本のスキャンライン21をスキャンして被加工対象物100の一方の面の全体をスキャンしてもよく、前記2次加工領域は、加工領域110のうちの一部に相当するため、一部のスキャンライン21のみをスキャンしてもよい。この場合、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)において、加工が必要な部分のみをスキャンすることができて、スキャン時間が短縮され、これにより、レーザー加工にかかる全体的な時間を削減することができるだけではなく、スキャンのために用いられる前記駆動部(図示せず)などの駆動費用を削減することができる。
【0055】
スキャンライン21は、単位時間当たりのレーザービーム10の移動距離であるスキャンピッチ(scan pitch)を有してもよく、ステップライン22は、スキャンライン21同士の間隔であるステップピッチを有してもよい。ここで、前記スキャンピッチ及び前記ステップピッチは、レーザービーム10の大きさ(size)以下であってもよく、前記スキャンピッチ及び前記ステップピッチがレーザービーム10の大きさよりも大きくなると、加工領域110のうち、未加工の部分が生じてしまう。例えば、レーザービーム10の大きさ(size)が1μmである場合、前記スキャンピッチ及び前記ステップピッチは、0〜1μmの範囲において調節されてもよく、好ましくは、前記スキャンピッチ及び前記ステップピッチは、0.1〜1μmの範囲において調節される。ここで、前記スキャンピッチ及び/又は前記ステップピッチを調節して加工される面(又は、加工溝又は加工孔の内側面)の傾斜度(又は、勾配)を調節してもよく、前記スキャンピッチ及び/又は前記ステップピッチが小さくなるにつれて、前記加工される面の傾斜度は上がってもよい。このとき、前記スキャンピッチは、レーザービーム10の移動速度及びレーザーソースのパルス振動数(例えば、パルス同士の間隔)を用いて調節してもよく、前記ステップピッチは、スキャンライン21同士の間隔で調節してもよい。
【0056】
一方、前記スキャンピッチは、全てのスキャンライン21において同じであってもよく、スキャンライン21の位置に応じて異なってもよい。このとき、前記ステップピッチは一定していてもよく、スキャンライン21同士の間隔に応じて決定されてもよい。例えば、レーザービーム10の大きさ(size)が1μmである場合、前記ステップピッチが1μmに固定されてもよく、前記ステップピッチが1μmに固定されて一定になると、前記スキャンピッチは、スキャンライン21の位置に応じて異なってもよく、これにより、ステップ方向に重なり合わなくても前記ステップ方向に傾斜するようできる。なお、前記スキャンピッチは、前記ステップピッチよりも小さくてもよく、前記スキャンピッチを小さくして、スキャン方向に加工される面にステップ方向に加工される面よりも平面に近い傾斜面を形成してもよい。
【0057】
そして、被加工対象物100は、蒸着工程に用いられるマスクであってもよく、スキャンライン21に沿うスキャン方向は、線形蒸着源(図示せず)のスキャン方向であってよよく、前記加工される面を、前記スキャン方向及び前記ステップ方向のうち、少なくとも前記スキャン方向に傾斜するように加工してもよい。線形蒸着源(図示せず)は、前記ステップ方向に延設されてもよく、前記スキャン方向に被加工対象物100又は基板(図示せず)をスキャンしてもよい。このとき、前記線形蒸着源(図示せず)又は前記基板(図示せず)を移動させてスキャンしてもよく、被加工対象物100は、前記線形蒸着源(図示せず)又は前記基板(図示せず)とともに移動してもよく、前記線形蒸着源(図示せず)又は前記基板(図示せず)とともに固定されてもよい。前記線形蒸着源(図示せず)又は前記基板(図示せず)は、前記スキャン方向に移動して前記基板(図示せず)の全面に蒸着物質(又は、蒸着粒子)が蒸着されるようにするため、前記ステップ方向よりは、前記スキャン方向にシャドウが生じ、これにより、前記スキャン方向を中心に傾斜するように(又は、テーパー状になるように)加工することができる。
【0058】
前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、レーザービーム10の強さが前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)よりも大きくてもよく、レーザービーム10の移動速度及びスキャンライン21におけるレーザービーム10のスキャンピッチが前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)よりも小さくてもよい。
【0059】
前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、レーザービーム10の強さが前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)よりも大きくてもよい。レーザービーム10による加工深さの設定は、レーザービーム10の強さを調節して行ってもよい。このとき、スキャンライン21別にエネルギー強さを設定してもよく、一本のスキャンライン21内においてもレーザーソースのパルス別にエネルギー強さを設定してもよく、これらの両方の組み合わせによりレーザービーム10の強さが決定されてもよい。すなわち、同じスキャンライン21の上においてレーザービーム10のエネルギー強さを調節して、エネルギー累積分布を制御することにより、加工深さを設定してもよい。具体的には、各スキャンライン21に対してレーザービーム10の移動速度及びパルス振動数の値を両方とも固定したままで(すなわち、スキャンピッチは一定している)、各スキャンライン21に沿ってレーザービーム10の照射位置が相対的に移動する最中にレーザーソースのパルス別にエネルギー強さを異ならせて設定してもよく、各スキャンライン21別にエネルギー強さを異ならせて設定してもよい。
【0060】
前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、加工される面(又は、内側面)が略垂直になるように(すなわち、前記基準厚さよりも厚い加工領域に形成される加工孔のうち、相対的に厚い厚さによる盛り上がり部の内側面が略垂直になるように)加工するために、加工される面が傾斜するように加工する前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)よりもレーザービーム10の強さが大きくてもよい。すなわち、前記加工される面が略垂直になるように形成するためには、レーザービーム10がオン(on)になり始めてから、加工可能な深さが深くてレーザービーム10の照射された位置が一気に開放(open)されなければならないため、レーザービーム10の強さを大きくしてレーザービーム10の照射された位置が一気に開放されるようにしてもよく、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)よりもレーザービーム10の強さが大きくてもよい。
【0061】
前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、レーザービーム10の移動速度及びスキャンライン21におけるレーザービーム10のスキャンピッチが前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)よりも小さくてもよい。レーザービーム10による加工深さを設定する別の方法としては、スキャンライン21を移動するレーザービーム10のオーバーラップ率(overlap rate)[オーバーラップ率={レーザービームの大きさ−スキャンピッチ/レーザービームの大きさ}×100、スキャンピッチ=v/f、v:レーザービームの移動速度、f:レーザーソースのパルス振動数]を制御して設定する方法が挙げられる。レーザービーム10のオーバーラップ率に応じて加工深さを設定する方法としては、レーザーソースのパルス振動数(pulse frequency)の値を固定したままで、レーザービーム10の移動速度(又は、前記被加工対象物及び前記レーザービームの相対速度)をスキャンライン21別に異ならせて設定する方法と、レーザービーム10の相対速度値を固定したままで、パルス振動数値をスキャンライン21別に異ならせて設定する方法と、が挙げられる。すなわち、レーザービーム10のオーバーラップ率は、レーザービーム10の大きさに応じたスキャンピッチの制御により設定され得る。このとき、スキャンピッチ=v/fにおいて、レーザービーム10の移動速度及びパルス振動数の値を調節して、各スキャンライン21別にレーザービーム10のオーバーラップされる度合いを制御することにより、加工深さを設定してもよく、レーザービーム10のオーバーラップ率が大きくなるにつれてレーザービーム10による加工深さが深くなる。
【0062】
前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、前記加工される面が略垂直になるように加工するために、前記加工される面が傾斜するように加工する前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)よりもレーザービーム10の移動速度及びスキャンライン21におけるレーザービーム10のスキャンピッチが小さくてもよい。すなわち、前記加工される面が略垂直になるように形成するためには、レーザービーム10がオン(on)になり始めてから、加工可能な深さが深くてレーザービーム10の照射された位置が全て開放されなければならない。このため、レーザービーム10の移動速度及びスキャンライン21におけるレーザービーム10のスキャンピッチを小さくして、レーザービーム10のオーバーラップ率を上げることにより、レーザービーム10の照射された位置が全て開放されるようにしてもよく、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)よりもレーザービーム10の移動速度及びスキャンライン21におけるレーザービーム10のスキャンピッチが小さくてもよい。
【0063】
一方、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)よりもレーザービーム10又はスキャン経路20の重なり合い回数が多くてもよい。レーザービーム10による加工深さを設定する更に別の方法としては、レーザービーム10又はスキャン経路20の重なり合い回数を制御して設定する方法が挙げられる。すなわち、同じスキャン経路20上においてレーザービーム10を何回移動させるかに応じたエネルギー累積分布を制御して、レーザービーム10による加工深さを設定してもよい。具体的には、各スキャン経路20に対して(すなわち、各スキャンライン及び/又は各ステップラインに対して)レーザービーム10の移動速度及びパルス振動数の値を両方とも固定したままで(すなわち、スキャンピッチは一定している)、加工領域110内のスキャン経路20に選択的にスキャン経路20の重なり合い回数を制御してもよい。
【0064】
図6は、本発明の一実施形態に係る加工領域の領域別のエネルギー累積を説明するための概念図である。
【0065】
図6を参照すると、前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)において、前記1次加工領域の中央部111は、レーザービーム10による領域別のエネルギー累積が一定していてもよく、前記1次加工領域の周縁部112は、レーザービーム10による領域別のエネルギー累積が前記1次加工領域の中央部111に近づくにつれて大きくなってもよい。この場合、前記1次加工領域の周縁部112には前記1次加工領域の中央部111に近付くにつれて加工深さが深くなって前記1次加工領域の周縁部112が加工領域110の端縁から中央部111に向かって先細まりとなる形状に傾斜してもよく、前記1次加工領域の中央部111には、加工深さが一定していて加工孔11又は平らな底面を形成してもよい。すなわち、前記1次加工領域の中央部111においては、加工孔11を形成したり平らな底面を形成したりするために、レーザービーム10による領域別のエネルギー累積が一定していてもよく、前記1次加工領域の周縁部112においては、テーパー状に傾斜するようにレーザービーム10による領域別のエネルギー累積が前記1次加工領域の中央部111に近づくにつれて大きくなってもよい。
【0066】
前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、前記2次加工領域のレーザービーム10による領域別のエネルギー累積が一定していてもよい。すなわち、加工領域110の中央部111に前記加工される面が略垂直になるように加工孔11を形成してもよい。換言すれば、加工領域110の中央部111に前記加工される面が略垂直である加工孔11を形成するために、前記2次加工領域のレーザービーム10による領域別のエネルギー累積が一定していてもよい。
【0067】
そして、レーザーエネルギー制御部(図示せず)を用いて、レーザービーム10及び被加工対象物100の(すなわち、前記被加工対象物の表面の)相対的な位置を制御してもよく、特定の加工領域110において、レーザービーム10のパルスエネルギーの強さ、パルスのオン/オフの可否、レーザービーム10のオーバーラップを制御して、合計のエネルギー累積分布を決定してもよい。
【0068】
一方、レーザー分岐手段(図示せず)を用いてレーザービーム10を複数に分岐して、分岐された複数のレーザービーム10による複数の加工領域110の同時加工を行ってもよい。すなわち、同時に複数のスキャン経路20における加工工程が行えるようにして生産性を向上させることができる。ここで、前記レーザー分岐手段(図示せず)としては、回折光学系(Diffractive Optical Element;DOE)又はビームスプリット(beam split)光学系を用いることができる。なお、前記レーザーヘッド(図示せず)をマルチヘッダー(multi header)により構成してもよく、複数の加工領域110を当該ヘッダーの数に見合う分だけ分割させて、同時に複数の加工領域110の加工が行われるようにして、生産性を更に高めることもできる。
【0069】
本発明に係るレーザー加工方法は、加工領域110のうち、加工孔11の形成有無を確認する過程(S250)を更に含んでいてもよい。
【0070】
前記レーザービーム10を1次照射する過程(S200)後に、加工領域110のうち、加工孔11の形成有無を確認してもよい(S250)。加工領域110のうち、加工孔11の形成有無が確認されれば、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)においては、前記加工孔11の形成有無を確認する過程(S250)において、加工孔11が形成されていない加工領域110にレーザービーム10を照射してもよい。これにより、前記レーザービーム10を2次照射する過程(S300)において、加工領域110のうち、レーザー加工が必ず求められる部分にのみレーザービーム10を照射することができる。これにより、レーザービーム10を照射する作業時間が短縮されてレーザー加工にかかる時間及び費用を削減することができ、既に形成された加工孔11を通過するレーザービーム10による被加工対象物支持部(図示せず)など、レーザー加工装置のうち他の構成要素の損傷を更に低減させることができる。
【0071】
前記加工孔11の形成有無を確認する過程(S250)においては、高さセンサー、イメージセンサー、光センサー、レーザーセンサーのうちの少なくともいずれか一つを用いて、加工孔11の形成有無を確認してもよい。前記高さセンサー(又は、z軸測定センサー)は、被加工対象物100に形成された溝又は孔の深さを測定してもよく、レーザー加工が行われる被加工対象物100の一方の面の上に位置してもよく、光を照射した後に反射される光を受光して被加工対象物100に形成された溝又は孔の深さを測定してもよい。
【0072】
前記イメージセンサーは、被加工対象物100の上部又は下部において加工領域110のイメージを取得した後に解析して加工孔11の形成有無を確認してもよく、加工孔11が形成された加工領域110と、加工孔11が形成されていない加工領域110のイメージの違いを区別して加工孔11の形成有無を確認してもよい。
【0073】
前記光センサーは、受発光センサーであってもよく、加工領域110に光を照射した後に反射される光を受光して加工孔11の形成有無を確認してもよい。ここで、光が受光される加工領域110は、加工孔11が形成されていない加工領域110で判断してもよく、光が受光されない加工領域110は、加工孔11が形成された加工領域110で判断してもよい。このとき、被加工対象物100は、金属(metal)など光が反射される素材により形成されてもよく、前記光センサーは、レーザービーム10が照射される面と対向する被加工対象物100の他方の面の上に位置してもよい。
【0074】
前記レーザーセンサーは、入射するレーザービーム10を感知してもよく、加工孔11が形成されて、加工孔11を通過したレーザービーム10を感知して、加工孔11の形成有無を確認してもよい。ここで、レーザービーム10が感知された加工領域110は、加工孔11が形成された加工領域110で判断してもよく、レーザービーム10が感知されなかった加工領域110は、加工孔11が形成されていない加工領域110で判断してもよい。このとき、前記レーザーセンサーは、被加工対象物100が支持される被加工対象物支持部(図示せず)の上に配設されてもよい。
【0075】
このように、本発明においては、互いに異なる照射条件の2段階にわたってレーザービームを加工領域に照射して被加工対象物を加工することで、被加工対象物の領域別の厚さの偏差による影響(又は、加工誤り)により被加工対象物に対する加工が不完全に行われる部分(すなわち、加工孔が形成されていない部分)ができてしまうという問題を解消することができる。また、2次加工領域の面積を1次加工領域の面積よりも小さく(すなわち、2回目のレーザービームを照射するときに、1回目のレーザービームを照射するときよりも被加工対象物の加工領域においてレーザービームが照射される面積を小さく)することで、2段階にわたっての加工にも拘わらず、加工孔の周りへの影響を無くすことができ、レーザービームを2次照射するとき(すなわち、レーザービームの2次照射時)、レーザービームの強さ、レーザービームの移動速度、レーザービームのスキャンピッチなどをレーザービームを1次照射するとき(すなわち、レーザービームの1次照射時)と異ならせて設定して、加工孔のうち相対的に厚い厚さによる盛り上がり部の内側面を垂直にできて、内側面が傾斜した盛り上がり部よりもシャドウ(Shadow)の発生を低減することができる。なお、被加工対象物の片面に対して2段階にわたっての加工が行われるので、両面加工による位置ずれ(misalign)を防ぐことができる。したがって、本発明においては、被加工対象物の領域別の厚さの偏差による加工誤りを低減することができ、被加工対象物に対する加工精密度を従来よりも向上させることができる。
【0076】
上記の説明において用いた「〜の上に」という文句は、直接的に接触する場合と、直接的に接触しないものの、上部又は下部に対向して位置する場合と、を含み、上部面又は下部面の全体に対向して位置することもできれば、部分的に対向して位置することもでき、位置上、離れて対向するか、あるいは、上部面又は下部面に直接的に接触するという意味として用いた。したがって、「被加工対象物の上に」は、被加工対象物の表面(上部面又は下部面)であってもよく、被加工対象物の表面に蒸着された膜の表面であってもよい。
【0077】
以上、本発明の好適な実施形態について図示しかつ説明したが、本発明は、上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、特許請求の範囲において請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、これより様々な変形及び均等な他の実施形態が可能であるということが理解できる筈である。よって、本発明の技術的な保護範囲は、下記の特許請求の範囲によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0078】
10:レーザービーム
11:加工孔
20:スキャン経路
21:スキャンライン
22:ステップライン
100:被加工対象物
110:加工領域
111:中央部
112:周縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6