【解決手段】円筒部材10に形成された加工穴1の周方向の側部において加工穴1の深さ方向に凹む凹部2が形成されており、凹部2は、開口縁の一部が円弧形状の円弧部2aに形成され、底部が円弧部2aに沿う部分から円弧形状が開放される開放部2bに向けて傾斜面2cにより漸次浅く形成され、円弧部2aが加工穴1に向けて配置される。
円筒部材に形成された加工穴の周方向の側部において前記加工穴の深さ方向に凹む凹部が形成されており、前記凹部は、開口縁の一部が円弧形状に形成され、底部が前記円弧形状に沿う部分から前記円弧形状の開放側に向けて傾斜面により漸次浅く形成され、前記円弧形状の部分が前記加工穴に向けて配置されている、応力低減構造。
前記凹部は、周方向の差し渡し寸法d2が前記加工穴の周方向の差し渡し寸法Dの100%以上300%以下の範囲である、請求項1から3のいずれか1つに記載の応力低減構造。
前記凹部は、軸方向の差し渡し寸法wが前記加工穴の軸方向の差し渡し寸法Wの100%以上300%以下の範囲であり、前記寸法wの範囲の周方向の位置に前記加工穴の前記寸法Wが含まれる、請求項1から4のいずれか1つに記載の応力低減構造。
前記凹部は、前記加工穴の周方向の両側部に配置されて、前記加工穴の中心を基準とする対称形状に形成されている、請求項1から5のいずれか1つに記載の応力低減構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガスタービンなどの回転構造物のケーシングは円筒形状に形成されており、起動時や停止時に生じる温度差により高い熱応力が発生する。また、運転に伴いケーシング内部の圧力は上昇し、円筒形状に対して周方向の引っ張り応力であるフープ応力が発生する。このようなケーシングには、外部部品などを取り付けるための加工穴が形成されている。そして、加工穴は、上述した高い熱応力やフープ応力が起動や停止で繰り返し掛かることから、低サイクル疲労寿命が大幅に低下することとなる。加工穴周りのフープ応力の低減策としては、加工穴近傍の肉厚化が一般的であるが、航空用のガスタービンとしては重量増加を極力抑える観点から好ましくない。
【0006】
特許文献2には、上述したようにガスタービンエンジンのケースに設けられた穴に生じるフープ応力を低減する工夫が施されることは示されているが、当該特許文献2に示されるような平坦な底部、湾曲した底部、または球形の形状のポケットは、加工性が悪く高コストとなる問題がある。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、加工を容易に行うことができ円筒部材に形成された加工穴に対する応力集中を低減することのできる応力低減構造、ガスタービンケーシングおよびガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様に係る応力低減構造は、円筒部材に形成された加工穴の周方向の側部において前記加工穴の深さ方向に凹む凹部が形成されており、前記凹部は、開口縁の一部が円弧形状に形成され、底部が前記円弧形状に沿う部分から前記円弧形状の開放側に向けて傾斜面により漸次浅く形成され、前記円弧形状の部分が前記加工穴に向けて配置されている。
【0009】
この応力低減構造によれば、円筒部材に形成された加工穴の周方向の側部において加工穴の深さ方向に凹む凹部が形成されている。このため、加工穴の周方向に生じる引っ張り荷重が凹部により緩和されて、引っ張り荷重の掛かる位置が加工穴の開口部から深さ方向に変位し、開口部において荷重が抑制されることで、加工穴の開口部の軸方向の両端での応力集中を低減することができる。そして、このように作用する凹部は、開口縁の一部が円弧形状に形成され、底部が円弧形状に沿う部分から円弧形状の開放側に向けて傾斜面により漸次浅く形成されていることから、例えばエンドミルのような工具で円筒部材の表面に対して先端の一部が接触するように回転軸を斜めにして加工を行うことで多くの加工手数を伴わず容易に形成することができる。そして、このような形状に形成された凹部は、底部が比較的深い円弧形状の部分が加工穴に向けて配置されているため、加工穴の周方向に生じる引っ張り荷重を緩和する効果を顕著に得ることができる。この結果、重量増加を抑えつつ、円筒部材に形成された加工穴に対する応力集中を低減することができる。
【0010】
また、本発明の一態様に係る応力低減構造では、前記凹部は、最も深い深さhが前記加工穴が形成された前記円筒部材の板厚Hの50%以下の範囲であることが好ましい。
【0011】
この応力低減構造によれば、凹部の最も深い深さhが加工穴が形成された円筒部材の板厚Hの50%以下であれば、引っ張り荷重の掛かる位置を加工穴の開口部から深さ方向に変位させて開口部における荷重を抑制する効果を顕著に得ることができ、かつ凹部自体に引っ張り荷重が掛かる事態を抑制することができる。
【0012】
また、本発明の一態様に係る応力低減構造では、前記凹部は、前記加工穴の開口縁との最短距離d1が前記加工穴の周方向の差し渡し寸法Dの50%以下の範囲であることが好ましい。
【0013】
この応力低減構造によれば、凹部の最短距離d1が加工穴の周方向の差し渡し寸法Dの50%以下であれば、加工穴の開口部における荷重を抑制する効果を顕著に得ることができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る応力低減構造では、前記凹部は、周方向の差し渡し寸法d2が前記加工穴の周方向の差し渡し寸法Dの100%以上300%以下の範囲であることが好ましい。
【0015】
この応力低減構造によれば、凹部の周方向の差し渡し寸法d2が加工穴の周方向の差し渡し寸法Dの100%以上であれば、加工穴の開口部における荷重を抑制する効果を顕著に得ることができる。一方、凹部の周方向の差し渡し寸法d2が加工穴の周方向の差し渡し寸法Dの300%以下であれば、加工穴の開口部における荷重を抑制する効果を顕著に得つつ、凹部を設けることによる円筒部材の強度低下を抑えることができる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る応力低減構造では、前記凹部は、軸方向の差し渡し寸法wが前記加工穴の軸方向の差し渡し寸法Wの100%以上300%以下の範囲であり、前記寸法wの範囲の周方向の位置に前記加工穴の前記寸法Wが含まれることが好ましい。
【0017】
この応力低減構造によれば、凹部の軸方向の差し渡し寸法wが加工穴の軸方向の差し渡し寸法Wの100%以上で寸法wの範囲の周方向の位置に加工穴の寸法Wが含まれていれば、加工穴の開口部における荷重を抑制する効果を顕著に得ることができる。一方、凹部の軸方向の差し渡し寸法wが加工穴の軸方向の差し渡し寸法Wの300%以下で寸法wの範囲の周方向の位置に加工穴の寸法Wが含まれていれば、加工穴の開口部における荷重を抑制する効果を顕著に得つつ、凹部を設けることによる円筒部材の強度低下を抑えることができる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る応力低減構造では、前記凹部は、前記加工穴の周方向の両側部に配置されていることが好ましい。
【0019】
この応力低減構造によれば、凹部が加工穴の周方向の両側部に配置されていることで、加工穴の周方向両側に生じる引っ張り荷重を緩和する作用を顕著に得ることができる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る応力低減構造では、前記凹部は、前記加工穴の周方向の両側部に配置されて、前記加工穴の中心を基準とする対称形状に形成されていることが好ましい。
【0021】
この応力低減構造によれば、凹部が加工穴の周方向の両側部に配置され、かつ加工穴の中心を基準とする対称形状に形成されていることで、加工穴の周方向両側に生じる引っ張り荷重を緩和する作用を顕著に得ることができ、かつ周方向両側で均等に得ることができる。
【0022】
また、本発明の一態様に係る応力低減構造では、前記加工穴は、周方向が長尺の楕円形状に形成されていることが好ましい。
【0023】
この応力低減構造によれば、加工穴が周方向が長尺の楕円形状に形成されていることで、応力の集中する軸方向の両端における曲率が円形状に比較して大きくなるため、応力が両端の周方向に分散しやすくなる。この結果、凹部による効果と相乗して加工穴の開口部の軸方向の両端での応力集中を低減することができる。
【0024】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様に係るガスタービンケーシングは、上述した加工穴および凹部を有する円筒部材をなす。
【0025】
このガスタービンケーシングによれば、高い熱応力やフープ応力が発生した場合の加工穴を基にした低サイクル疲労寿命の低下を抑制することができる。
【0026】
上述の目的を達成するために、本発明の一態様に係るガスタービンは、上述したガスタービンケーシングを外郭として備える。
【0027】
このガスタービンによれば、ガスタービンケーシングにおいて低サイクル疲労寿命の低下が抑制されるため、長寿命化を図り信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、加工を容易に行うことができ円筒部材に形成された加工穴に対する応力集中を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0031】
図1は、本実施形態に係るガスタービンの概略構成図である。
【0032】
図1に示すガスタービンは、航空用ガスタービンである。この航空用ガスタービンは、ファンケーシング11とガスタービンケーシング12とを有している。ファンケーシング11は、その内部にファン13が収容されている。ガスタービンケーシング12は、圧縮機ケーシング12Aと燃焼器ケーシング12Bとタービンケーシング12Cとが連続して配置されて円筒形状に形成されたもので、圧縮機ケーシング12A内に圧縮機14、燃焼器ケーシング12B内に燃焼器15、タービンケーシング12C内にタービン16がそれぞれ収容されている。
【0033】
ファン13は、回転軸21の外周部に複数のファンブレード22が装着されて構成されている。圧縮機14は、低圧コンプレッサ23と高圧コンプレッサ24とを有している。燃焼器15は、圧縮機14より下流側に位置し、周方向に複数配置されている。タービン16は、燃焼器15より下流側に位置し、高圧タービン25および低圧タービン26を有している。そして、ファン13の回転軸21と低圧コンプレッサ23とが連結され、低圧コンプレッサ23と低圧タービン26とが第一ロータ軸27により連結されている。また、高圧コンプレッサ24と高圧タービン25とが、第一ロータ軸27の外周側に位置する円筒形状をなす第二ロータ軸28により連結されている。
【0034】
従って、圧縮機14にて、空気取入口から取り込まれた空気が、低圧コンプレッサ23と高圧コンプレッサ24における図示しない複数の静翼と動翼を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となる。燃焼器15にて、この圧縮空気に対して所定の燃料が供給され、燃焼する。この燃焼器15で生成された作動流体である高温・高圧の燃焼ガスが、タービン16を構成する高圧タービン25および低圧タービン26における図示しない複数の静翼と動翼を通過することで第一ロータ軸27および第二ロータ軸28が駆動回転する。この場合、低圧タービン26の回転力が第一ロータ軸27により低圧コンプレッサ23に伝達されて駆動する。また、高圧タービン25の回転力が第二ロータ軸28により高圧コンプレッサ24に伝達されて駆動する。その結果、ファン13を駆動することができると共に、タービン16から排出される排気ガスにより推力を得ることができる。
【0035】
なお、本実施形態に係るガスタービンは、上述した航空用ガスタービンに限定されるものではなく、例えば、発電用ガスタービンなどを含む。
【0036】
本実施形態に係る応力低減構造は、上述したようなガスタービンにおけるガスタービンケーシング12に適用される。上述したようにガスタービンケーシング12は円筒形状に形成されたもので、ガスタービンの起動時や停止時に生じる温度差により高い熱応力が発生する。また、運転に伴いガスタービンケーシング12の内部の圧力は上昇し、円筒形状に対して周方向の引っ張り応力であるフープ応力が発生する。このような高い熱応力やフープ応力は、特に、燃焼ガスを生成する燃焼器ケーシング12Bにおいて発生する。ここで、周方向とは、
図1において第一ロータ軸27および第二ロータ軸28の回転中心となる軸心Rを中心とした周り方向をいう。また、以下の説明において軸方向とは、軸心Rに平行な方向をいう。
【0037】
図2は、本実施形態に係る応力低減構造の平面図である。
図3は、
図2におけるA−A断面図である。
図4は、本実施形態に係る応力低減構造の製造方法を示す平面図である。
図5は、
図4におけるB−B断面図である。
図6は、
図2におけるC−C断面図である。
【0038】
図2から
図6は、円筒形状の円筒部材10の一部として、上述したガスタービンケーシング12(特に、燃焼器ケーシング12B)の一部を示している。円筒部材10は、外部部品などを取り付けるための加工穴1が形成されている。
【0039】
加工穴1は、上述した高い熱応力やフープ応力が起動や停止で繰り返し掛かることから、
図2において周方向の引っ張り荷重により開口部の軸方向の両端1aに応力が集中し、これにより円筒部材10の低サイクル疲労寿命が大幅に低下することとなる。従って、本実施形態の応力低減構造は、円筒部材10に形成された加工穴1に対して周方向の引っ張り荷重を抑制し応力集中を低減するためにある。
【0040】
本実施形態の応力低減構造は、加工穴1の周方向の側部において加工穴1の深さ方向に凹む凹部2が形成されている。この凹部2は、
図2に示すように、開口縁が、その一部を円弧形状(馬蹄形状またはC字形状)に形成された円弧部2aと、円弧形状が開放されて円弧形状の両端が直線状に繋がれた開放部2bとで形成されている。また、凹部2は、
図3に示すように、底部が、円弧部2aに沿う部分から開放部2b側に向けて傾斜面2cにより漸次浅く形成されている。すなわち、凹部2の底部は、円弧部2aに沿う部分が深く、特に円弧部2aの中央部が最も深く形成され、開放部2bに近づくにつれて傾斜面2cにより浅くなるように形成されている。この凹部2は、円弧形状の円弧部2aを加工穴1に向けて配置されている。
【0041】
この凹部2は、
図4および
図5に示すように、切削に用いられる円柱形状のエンドミル100を用い、円筒部材10の表面に対して先端の一部が接触するように回転軸Ceを斜めにして加工を行うことで形成する。従って、凹部2は、エンドミル100の先端の一部が円筒部材10の表面に対して斜めに接触することで、上述した円弧部2a、開放部2b、および傾斜面2cが形成される。また、凹部2は、
図3および
図5に示すように、円弧部2aに沿う内面が湾曲して滑らかに形成されており、この内面はエンドミル100の切削刃(図示せず)の形状により滑らかに形成される。このように、凹部2は、多くの工具を用いたり工具を移動させたりして加工手数を伴わず、1つのエンドミル100により容易に形成することができる。
【0042】
この本実施形態の応力低減構造によれば、円筒部材10に形成された加工穴1の周方向の側部において加工穴1の深さ方向に凹む凹部2が形成されている。このため、加工穴1の周方向に生じる引っ張り荷重が凹部2により緩和されて、引っ張り荷重の掛かる位置が加工穴1の開口部から深さ方向に変位し、開口部において荷重が抑制されることで、加工穴1の開口部の軸方向の両端1aでの応力集中を低減することができる。そして、このように作用する凹部2は、開口縁の一部が円弧形状に形成された円弧部2aを有し、底部が円弧部2aに沿う部分から円弧形状が開放される開放部2bに向けて傾斜面2cにより漸次浅く形成され、上述したようにエンドミル100で円筒部材10の表面に対して先端の一部が接触するように回転軸Ceを斜めにして加工を行うことで多くの加工手数を伴わず容易に形成することができる。そして、このような形状に形成された凹部2は、底部が比較的深い円弧部2aが加工穴1に向けて配置されているため、加工穴1の周方向に生じる引っ張り荷重を緩和する効果を顕著に得ることができる。この結果、重量増加を抑えつつ、円筒部材10に形成された加工穴1に対する応力集中を低減することができる。
【0043】
なお、凹部2は、底部が比較的深い円弧部2aが加工穴1に向けて配置されていれば、加工穴1の周方向に生じる引っ張り荷重を緩和する効果を顕著に得ることができるため、
図2に示すように開放部2bが軸方向に向けて配置されていなくてもよく、例えば、開放部2bが周方向で加工穴1の反対方向に向けて配置されている構成であってもよい。
【0044】
また、凹部2は、円弧部2aに沿う内面が湾曲して滑らかに形成されて傾斜面2cに連続していることで、内面に角部を有する形状と比較して凹部2自体に引っ張り荷重が掛かる事態を抑制することができる。
【0045】
なお、凹部2は、加工穴1が貫通している場合、円筒部材10の筒内側または筒外側で開口する加工穴1の周方向の側部に設けられる。また、加工穴1が貫通していない場合、凹部2は、加工穴1が開口する側で加工穴1の周方向の側部に設けられる。
【0046】
また、本実施形態の応力低減構造では、
図5および
図6に示すように、凹部2は、最も深い深さhが加工穴1が形成された円筒部材10の板厚Hの50%以下の範囲であることが好ましい。
【0047】
凹部2の最も深い深さhが加工穴1が形成された円筒部材10の板厚Hの50%以下であれば、引っ張り荷重の掛かる位置を加工穴1の開口部から深さ方向に変位させて開口部における荷重を抑制する効果を顕著に得ることができ、かつ凹部2自体に引っ張り荷重が掛かる事態を抑制することができる。
【0048】
また、本実施形態の応力低減構造では、
図2および
図6に示すように、凹部2は、加工穴1の開口縁との最短距離d1が加工穴1の周方向の差し渡し寸法Dの50%以下の範囲であることが好ましい。
【0049】
凹部2の最短距離d1が加工穴1の周方向の差し渡し寸法Dの50%以下であれば、加工穴1の開口部における荷重を抑制する効果を顕著に得ることができる。
【0050】
また、本実施形態の応力低減構造では、
図2に示すように、凹部2は、周方向の差し渡し寸法d2が加工穴1の周方向の差し渡し寸法Dの100%以上300%以下の範囲であることが好ましい。
【0051】
凹部2の周方向の差し渡し寸法d2が加工穴1の周方向の差し渡し寸法Dの100%以上であれば、加工穴1の開口部における荷重を抑制する効果を顕著に得ることができる。一方、凹部2の周方向の差し渡し寸法d2が加工穴1の周方向の差し渡し寸法Dの300%以下であれば、加工穴1の開口部における荷重を抑制する効果を顕著に得つつ、凹部2を設けることによる円筒部材10の強度低下を抑えることができる。
【0052】
また、本実施形態の応力低減構造では、
図2に示すように、凹部2は、軸方向の差し渡し寸法wが加工穴1の軸方向の差し渡し寸法Wの100%以上300%以下の範囲であり、寸法wの範囲の周方向の位置に加工穴1の寸法Wが含まれることが好ましい。
【0053】
凹部2の軸方向の差し渡し寸法wが加工穴1の軸方向の差し渡し寸法Wの100%以上で寸法wの範囲の周方向の位置に加工穴1の寸法Wが含まれていれば、加工穴1の開口部における荷重を抑制する効果を顕著に得ることができる。一方、凹部2の軸方向の差し渡し寸法wが加工穴1の軸方向の差し渡し寸法Wの300%以下で寸法wの範囲の周方向の位置に加工穴1の寸法Wが含まれていれば、加工穴1の開口部における荷重を抑制する効果を顕著に得つつ、凹部2を設けることによる円筒部材10の強度低下を抑えることができる。
【0054】
また、本実施形態の応力低減構造では、
図2に示すように、凹部2は、加工穴1の周方向の両側部に配置されていることが好ましい。
【0055】
凹部2は、加工穴1の周方向の一方の側部に配置されていても上記の効果を得ることができるが、凹部2が加工穴1の周方向の両側部に配置されていることで、加工穴1の周方向両側に生じる引っ張り荷重を緩和する作用を顕著に得ることができる。
【0056】
また、本実施形態の応力低減構造では、
図2に示すように、凹部2は、加工穴1の周方向の両側部に配置されて、加工穴1の中心を基準とする対称形状に形成されていることが好ましい。
【0057】
凹部2は、加工穴1の周方向の一方の側部に配置されて加工穴1の中心を基準として非対称に形成されていても上記の効果を得ることができるが、凹部2が加工穴1の周方向の両側部に配置され、かつ加工穴1の中心を基準とする対称形状に形成されていることで、加工穴1の周方向両側に生じる引っ張り荷重を緩和する作用を顕著に得ることができ、かつ周方向両側で均等に得ることができる。
【0058】
図7は、本発明の実施形態に係る応力低減構造の他の例を示す平面図である。
【0059】
本実施形態の応力低減構造では、
図7に示すように、加工穴1は、周方向が長尺の楕円形状に形成されていることが好ましい。
【0060】
加工穴1が
図2に示すような真円形状に形成されていても上述の効果を得ることができるが、加工穴1が周方向が長尺の楕円形状に形成されていることで、応力の集中する軸方向の両端1aにおける曲率が円形状に比較して大きくなるため、応力が両端1aの周方向に分散しやすくなる。この結果、凹部2による効果と相乗して加工穴1の開口部の軸方向の両端1aでの応力集中を低減することができる。
【0061】
また、本実施形態のガスタービンケーシング12は、上述した加工穴1および凹部2を有する円筒部材10をなすことが好ましい。
【0062】
このガスタービンケーシング12によれば、高い熱応力やフープ応力が発生した場合の加工穴1を基にした低サイクル疲労寿命の低下を抑制することができる。
【0063】
また、本実施形態のガスタービンは、上記ガスタービンケーシング12を外郭に備えることが好ましい。
【0064】
このガスタービンによれば、ガスタービンケーシング12において低サイクル疲労寿命の低下が抑制されるため、長寿命化を図り信頼性を向上することができる。
【0065】
以下、実施例について説明する。
図8は、本実施例に係る図表である。
図9および
図10は、本実施例に係るグラフである。
【0066】
本実施例では、ベース、テスト1〜6について3次元での静的構造解析を行った。ベース、テスト1〜6は、
図8に示すように、凹部の加工穴の開口縁との最短距離d1、凹部の軸方向の差し渡し寸法w、加工穴の中心から軸方向への凹部の円弧部側の寸法w1(
図2参照)、加工穴の中心から軸方向への凹部の開放部側の寸法w2(
図2参照)、凹部の最も深い深さhについて規定している。加工穴は、
図2を参照するように、真円形状であり差し渡し寸法Dはベース、テスト1〜6において同一(0.26)である。凹部は、
図2および
図3を参照するように、円弧部、開放部、および傾斜面を有し、加工穴の軸方向の両側部に配置されている。そして、テスト1〜3は、凹部の軸方向の差し渡し寸法wを変化させた。また、テスト4〜6は、凹部の加工穴の開口縁との最短距離d1を変化させた。なお、
図8における数値の単位はインチである。
【0067】
図9および
図10において、各◇は加工穴の外側後方の節点(
図2における加工穴1の開口部の軸方向の上側の端1a)であり、これら節点におけるKtを示している。Ktは、(応力集中係数であって解析結果と無限遠での理論応力の比である。
【0068】
テスト1〜3において、
図9に示すように、Ktは、w=Dに対してw=2Dの場合に2割近く減少し、w=3Dの場合に5割近く減少することが分かる。なお、
図9には明示しないが、
図2における加工穴1の開口部の軸方向の下側の端1aでも同様の傾向となる。従って、w=Dに対してDを大きくすると応力低減効果が得られることが分かる。
【0069】
テスト4〜6において、
図10に示すように、Ktは、d1=Dに対してd1=D/2、d1=D/3の場合に1割近く減少することが分かる。なお、
図10には明示しないが、
図2における加工穴1の開口部の軸方向の下側の端1aでも同様の傾向となる。従って、d1=Dに対してDを大きくすると応力低減効果が得られることが分かる。