【実施例】
【0021】
[実施例1]
明度(L値:70)、目付210g/m
2ポリエステル織物にコロイダルシリカ(アデライトAT−30A:不揮発分30%、平均粒子径0.0125μm)7.0%およびポリエステルバインダー(プラスコートZ880:不揮発分25%)3.0%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布にフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E082:不揮発分20%)2.5%およびフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E904:不揮発分20%)2.5%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0022】
[実施例2]
明度(L値:70)、目付210g/m
2ポリエステル織物にコロイダルシリカ(アデライトAT−30A:不揮発分30%)3.4%およびポリエステルバインダー(プラスコートZ880:不揮発分25%)1.4%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布にフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E082:不揮発分20%)0.5%およびフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E904:不揮発分20%)0.5%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0023】
[実施例3]
明度(L値:70)、目付210g/m
2ポリエステル織物にコロイダルシリカ(アデライトAT−30A:不揮発分30%)4.5%およびポリエステルバインダー(プラスコートZ880:不揮発分25%)2.4%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布にフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E082:不揮発分20%)0.9%およびフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E904:不揮発分20%)0.9%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0024】
[実施例4]
明度(L値:70)、目付210g/m
2ポリエステル織物にコロイダルシリカ(アデライトAT−30A:不揮発分30%)9.1%およびポリエステルバインダー(プラスコートZ880:不揮発分25%)3.8%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布にフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E082:不揮発分20%)3.2%およびフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E904:不揮発分20%)3.2%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0025】
[実施例5]
明度(L値:70)、目付210g/m
2ポリエステル織物にコロイダルシリカ(アデライトAT−30A:不揮発分30%)11.3%およびポリエステルバインダー(プラスコートZ880:不揮発分25%)5.2%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布にフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E082:不揮発分20%)4.1%およびフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E904:不揮発分20%)4.1%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0026】
[比較例1]
明度(L値:70)、目付210g/m
2ポリエステル織物にアルキルシリケート(バイガードAS:不揮発分15%)2.3%およびフッ素系撥水撥油剤(NKガードS−0671:不揮発分20%)6.7%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0027】
[比較例2]
明度(L値:70)、目付210g/m
2ポリエステル織物にアルキルシリケート(バイガードAS:不揮発分15%)23.0%およびフッ素系撥水撥油剤(NKガードS−0671:不揮発分20%)6.7%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0028】
[比較例3]
明度(L値:70)、目付210g/m
2ポリエステル織物にアルキルシリケート(バイガードAS:不揮発分15%)23.0%をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布にフッ素系撥水撥油剤(NKガードS−0671:不揮発分20%)6.7%をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0029】
[比較例4]
明度(L値:70)、目付210g/m
2ポリエステル織物の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性の各評価試験項目についての試験方法は、以下のとおりである。
【0030】
[試験方法]
1.撥水性評価試験(AATCC TM−193を参考に行った。)
エチルアルコールから構成される標準試験液を布表面に滴下し、30秒以内に濡れがないかを観察した。布に濡れが認められない最高位の級数を撥水性とした。
【0031】
【表1】
【0032】
2.撥油性評価試験(AATCC TM−118を参考に行った。)
異なる表面張力を持つ、一連の選ばれた炭化水素から構成される標準試験液を布表面に滴下し、30秒以内に濡れがないかを観察した。布に濡れが認められない最高位の級数を撥油性とした。
【0033】
【表2】
【0034】
3.土汚れ防止性試験
汚粉として、関東ローム層(JIS Z8901 7種)20gと、コンクリート粉末(JIS Z8901 5種)80gと、カーボンブラック(JIS K5107)0.1gとを混合したものを調製した。この汚粉0.5gと、幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)10枚とを、1リットルの金属缶に入れ、ふたをしてよく振とうさせて、汚染布を調製した。こうして、汚染布を必要な枚数調製した。
幅50mm、長さ150mmの大きさの試験片をヨコ方向から1枚採取し、500gのおもりに取り付け、手でおもりを持ち、20回往復摩擦した後、摩擦子の汚染布を新しい汚染布と交換して、再び摩擦を行った。以上の摩擦工程を15回(計300回往復)繰り返した後、試験片から汚粉を掃除機で5往復吸引した。試験片を取り外し、分光光度計(コニカミノルタ製)でΔEを測定した。ΔE10以下を合格とした。
【0035】
4.汚れこすり付け試験
(付着性試験)
汚粉として、関東ローム層(JIS Z8901 7種)20gと、コンクリート粉末(JIS Z8901 5種)80gと、カーボンブラック(JIS K5107)0.1gとを混合したものを調製した。この汚粉0.5gと、幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)10枚とを、1リットルの金属缶に入れ、ふたをしてよく振とうさせて、汚染布を調製した。こうして、汚染布を必要な枚数調製した。
幅30mm、長さ220mmの大きさの試験片をヨコ方向から1枚採取し、学振型摩擦試験機に取り付け、前記汚染布をかぶせた摩擦子に荷重2Nを掛けて摩擦した。摩擦子が試験片の表面上100mmの間を30回往復/分の速さで20回往復摩擦した後、摩擦子の汚染布を新しい汚染布と交換して、再び摩擦を行った。以上の摩擦工程を5回(計100回往復)繰り返した後、試験片から汚粉を掃除機で除去した。
さらに、以上の工程(100回往復摩擦後、汚粉除去まで)を6回(計600回往復)繰り返した。
試験片を取り外し、分光光度計でΔEを測定し、変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。3.5級以上を合格とした。
(除去性試験)
幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)に、付着性試験で得た試験片の汚れ付着部を指先で20往復擦った。分光光度計でΔEを測定し、変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。4.0級以上を合格とした。
【0036】
5.手垢汚れ防汚性試験
(付着性試験)
関東ローム層(JIS Z8901 7種)20gと、コンクリート粉末(JIS Z8901 5種)80gと、カーボンブラック(JIS K5107)0.1gの割合で調製した汚粉とオレイン酸を1:2で混合した溶液に幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)を10分間浸して汚染布を作成した。幅30mm、長さ220mmの大きさの試験片をヨコ方向から1枚採取し、学振型摩擦試験機に取り付け、ウエスで軽く水分を除いた前記汚染布をかぶせた摩擦子に荷重2Nを掛けて摩擦した。摩擦子が試験片の表面上100mmの間を30回往復/分の速さで10回往復摩擦した。試験片を取り外し、24時間後変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。3.5級以上を合格とした。
(除去性試験)
幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)に、付着性試験で得た試験片の汚れ付着部を指先で20往復擦った。変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。4.0級以上を合格とした。
【0037】
6.食用油汚れ防汚性試験
(付着性試験)
スポイトで食用油(日清サラダオイル)0.1mlを吸い、幅100mm、長さ100mmの大きさの試験片に滴下し、30秒間放置した。滴下部上に幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布と500gのおもりをのせ、30秒間保持後、白綿布およびおもりを取り除いた。24時間後変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。2.0級以上を合格とした。
(除去性試験)
幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)に、付着性試験で得た試験片の汚れ付着部を指先で20往復擦った。変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。3.5級以上を合格とした。
【0038】
7.コーヒー汚れ防汚性試験
(付着性試験)
コーヒー粉0.75gと沸騰水50mlの割合で調整したコーヒーをスポイトで0.1mlを吸い、幅100mm、長さ100mmの大きさの試験片に滴下し、30秒間放置した。滴下部上に幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布と500gのおもりをのせ、30秒間保持後、白綿布およびおもりを取り除いた。24時間後変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。4.5級以上を合格とした。
(除去性試験)
幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)に、着性試験で得た試験片の汚れ付着部を指先で20往復擦った。変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。4.5級以上を合格とした。
【0039】
以下の表1には、前記実施例1〜5及び比較例1〜4のポリエステル織物についての試験評価結果がまとめられている。
【0040】
【表3】
【0041】
上記表3の試験結果から、実施例1〜5で得られたポリエステル織物(本発明の防汚性繊維布帛)と、比較例1のポリエステル織物が共に、撥水性10級、撥油性6級であったのに対し、比較例2〜4のポリエステル織物はいずれも、撥水性9級以下で、撥油性5級以下であった。また、土汚れ防止性に関しては、実施例1〜5のポリエステル織物と、比較例2、3のポリエステル織物がいずれもΔE10以下で、優れた土汚れ防止性を示したのに対して、比較例1および4のポリエステル織物の土汚れ防止性ΔEは10を超えていた。
さらに、上記表3の試験結果から、実施例1〜5のポリエステル織物は、比較例1〜3のポリエステル織物よりも食用油防汚性が優れていることも確認され、手垢汚れが付着した場合でも除去し易いことが確認された。
【0042】
さらに、上記実施例1と比較例2のポリエステル織物について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、繊維布帛の表面に存在するケイ素及びフッ素の付着状態を調査した。
図2(a)には、1回の加工でアルキルシリケートとフッ素系撥水撥油剤の混合溶液をディッピング、乾燥を行った場合のポリエステル織物(比較例2)の表面のSEM画像が示されており、
図2(b)には、1回目にコロイダルシリカとポリエステルバインダーの混合溶液をディッピング、乾燥を行い、2回目に2種類のフッ素系撥水撥油剤の混合溶液をディッピング、乾燥を行った場合のポリエステル織物(実施例1)の表面のSEM画像が示されている。
図2(a)、(b)共に、左から順に重ね合わせマップ画像(ケイ素+フッ素)、ケイ素単独マップ画像、フッ素単独マップ画像である。
図2(a)と
図2(b)のSEM画像の比較から、比較例2のポリエステル織物を構成している繊維表面にはフッ素の付着が認められないが、実施例1のポリエステル織物を構成している繊維の表面には、比較例2のポリエステル織物よりも多くのフッ素が付着していることが確認された。