特開2019-73825(P2019-73825A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ TBカワシマ株式会社の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2019073825-防汚性繊維布帛およびその製造方法 図000006
  • 特開2019073825-防汚性繊維布帛およびその製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-73825(P2019-73825A)
(43)【公開日】2019年5月16日
(54)【発明の名称】防汚性繊維布帛およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/277 20060101AFI20190419BHJP
   D06M 15/256 20060101ALI20190419BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20190419BHJP
   D06M 15/564 20060101ALI20190419BHJP
   D06M 15/507 20060101ALI20190419BHJP
   D06M 11/79 20060101ALI20190419BHJP
   D06M 23/08 20060101ALI20190419BHJP
【FI】
   D06M15/277
   D06M15/256
   D06M15/263
   D06M15/564
   D06M15/507
   D06M11/79
   D06M23/08
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-200770(P2017-200770)
(22)【出願日】2017年10月17日
(71)【出願人】
【識別番号】510045438
【氏名又は名称】TBカワシマ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大原 弘平
(72)【発明者】
【氏名】大石 貴之
(72)【発明者】
【氏名】福井 竜也
(72)【発明者】
【氏名】八田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】村田 美子
(72)【発明者】
【氏名】堤 徳恵
(72)【発明者】
【氏名】三宅 裕一
【テーマコード(参考)】
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4L031AB31
4L031BA20
4L031DA19
4L033AA07
4L033AB04
4L033AB05
4L033AC03
4L033AC04
4L033AC15
4L033CA17
4L033CA18
4L033CA22
4L033CA45
4L033CA50
(57)【要約】
【課題】優れた撥水・撥油性および土汚れ防止性を有する繊維布帛を提供する。
【解決手段】繊維布帛にコロイダルシリカを固着した後、撥水・撥油性フッ素化合物を処理して繊維布帛の表面に付着させることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂を介して、繊維布帛にコロイダルシリカを1〜6g/mの固着量にて固着させた後、撥水・撥油性フッ素化合物を処理して前記繊維布帛の表面に当該撥水・撥油性フッ素化合物を0.1〜3g/mの付着量にて付着させることを特徴とする防汚性繊維布帛の製造方法。
【請求項2】
前記コロイダルシリカの平均粒子径が0.01〜1μmであることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記撥水・撥油性フッ素化合物がフルオロカーボン樹脂組成物であることを特徴とする請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記バインダー樹脂が、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂からなるグループより選ばれた1種類以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
繊維布帛を構成する繊維の表面に、バインダー樹脂を介してコロイダルシリカが1〜6g/mの固着量にて固着されており、前記コロイダルシリカにはさらに撥水・撥油性フッ素化合物が付着し、当該撥水・撥油性フッ素化合物のフッ素系撥水撥油基が前記繊維布帛の最表側に位置していることを特徴とする防汚性繊維布帛。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚性繊維布帛および、当該布帛を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
以前から繊維製品の汚れ付着防止方法や付着した汚れを除去しやすくするための加工方法がいくつか開示されている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1には、繊維内部まで入り込んでしまう土汚れに対して、洗濯することにより簡単に汚れを落すことができ、かつ再汚染性が少ない繊維布帛及びその製造方法が例示されている。
しかしながら、この特許文献1には、撥水・撥油性能に関しては記載がなく、水性汚れや油汚れに対しては不向きである。
【0004】
また、下記の特許文献2には、親水性フッ素系化合物と撥水性フッ素系化合物とシリカ微粒子とを含む組成物を、同時に処理して繊維布帛の表面に付着させることで土汚れは簡単に落とすことができ、皮脂汚れ等は、水を含んだ布帛で擦るだけで簡単に落とすことが可能な表皮材の製造方法が例示されている。
しかしながら、この特許文献2に記載の製造方法の場合には、表面にシリカ微粒子が固着しているため撥油性に欠点があり、表面張力の低い油に対しては不向きである。
【0005】
上述のとおり、従来、様々な汚れに対して効果的な防汚性能を付与する方法は知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−168905号公報
【特許文献2】特開2013−053378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、上述の従来技術における問題点を解決し、優れた撥水・撥油性および土汚れ防止性を有する防汚性繊維布帛を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、繊維布帛にコロイダルシリカを所定量固着させた後、撥水・撥油性フッ素化合物を処理して繊維布帛の表面に付着させることで、優れた撥水・撥油性および土汚れ防止性が付与された防汚性繊維布帛が製造できることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明の防汚性繊維布帛の製造方法は、バインダー樹脂を介して、繊維布帛にコロイダルシリカを1〜6g/mの固着量にて固着させた後、撥水・撥油性フッ素化合物を処理して前記繊維布帛の表面に当該撥水・撥油性フッ素化合物を0.1〜3g/mの付着量にて付着させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、上記の特徴を有した製造方法において、前記コロイダルシリカの平均粒子径が0.01〜1μmであることを特徴とするものである。尚、上記の平均粒子径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置にて測定された粒度分布より算出された平均値である。
【0011】
また、本発明は、上記の特徴を有した製造方法において、前記撥水・撥油性フッ素化合物がフルオロカーボン樹脂組成物であることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明は、上記の特徴を有した製造方法において、前記バインダー樹脂が、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂からなるグループより選ばれた1種類以上であることを特徴とするものである。
【0013】
さらに本発明の防汚性繊維布帛は、繊維布帛を構成する繊維の表面に、バインダー樹脂を介してコロイダルシリカが1〜6g/mの固着量にて固着されており、前記コロイダルシリカにはさらに撥水・撥油性フッ素化合物が付着し、当該撥水・撥油性フッ素化合物のフッ素系撥水撥油基が前記繊維布帛の最表側に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた撥水・撥油性および土汚れ防止性が付与された防汚性繊維布帛を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の製造方法を用いて得られる防汚性繊維布帛の表面状態を示す模式図である。
図2】(a)は、1回の加工でシリカ系土汚れ防止剤とフッ素系撥水撥油剤を塗布した場合の繊維布帛(比較例2)の表面の走査型電子顕微鏡画像(SEM画像)であり、左から順に重ね合わせマップ(ケイ素+フッ素)、エネルギー分散型X線分析(EDS)でのケイ素単独マッピング画像、フッ素単独マッピング画像である。 一方、(b)は、1回目にシリカ系土汚れ防止剤+バインダーを塗布し、2回目にフッ素系撥水撥油剤を塗布した場合の繊維布帛(実施例1)の表面のSEM画像であり、左から順に重ね合わせマップ(ケイ素+フッ素)、EDSでのケイ素単独マッピング画像、フッ素単独マッピング画像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の防汚性繊維布帛の製造方法では、最初の工程にて、バインダー樹脂を介して、繊維布帛にコロイダルシリカを1〜6g/m、より好ましくは1.5〜5.0g/mの固着量にて固着させるが、この際、コロイダルシリカの固着量が1g/m未満では繊維布帛の防汚性が不十分であり、逆に6g/mを超えると繊維布帛の風合いが硬くなるので好ましくない。
本発明におけるコロイダルシリカには、繊維布帛を構成する繊維表面に固着した際に、砂や泥等の粉体汚れを簡単に落とす働き(土汚れ防止機能)があり、このようなコロイダルシリカの平均粒子径は0.01〜1μmであることが好ましい。尚、本発明では、このようなコロイダルシリカとして、水を分散媒とし、SiO又はその水和物の微粒子を水中に分散させたコロイド溶液を用いることができる。
【0017】
上記の繊維布帛にコロイダルシリカを固着するためのバインダー樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂からなるグループより選ばれた1種類以上であることが好ましく、当該バインダー樹脂の繊維布帛への塗布量は0.1〜3g/m、より好ましくは0.5〜2g/m(乾燥重量)の範囲内であることが好ましい。本発明における上記混合溶液中のバインダー樹脂濃度としては、1〜5.5重量%が好ましい。
本発明では、上記コロイダルシリカと上記バインダー樹脂を含む混合溶液を繊維布帛に塗付する際の方法が限定されるものではないが、ディッピング法が一般的であり、ディッピングを行った後に加熱乾燥を行う。
なお、本発明の製造方法において使用される繊維布帛の素材については特に限定されないが、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維等からなるものが使用できる。
【0018】
そして本発明では、次の工程において、上記のコロイダルシリカを固着した繊維布帛の表面に、0.1〜3g/m、より好ましくは0.2〜2.5g/mの付着量にて撥水・撥油性フッ素化合物を付着させる。
この際、撥水・撥油性フッ素化合物としては、少なくとも1種の公知のフッ素系撥水撥油剤が使用できるが、2種以上を含むフルオロカーボン樹脂組成物が好ましく、撥水性能及び、環境や人体への安全性の点から特に、炭素数が6以下のパーフルオロアルキル基を側鎖に有する樹脂が好ましい。撥水・撥油性フッ素化合物の構成単位であるモノマーが有するパーフルオロアルキル基の炭素数を6以下とするのは、パーフルオロオクタン酸やパーフルオロオクタンスルホン酸の生成を防ぐためである。
本発明では、上記の撥水・撥油性フッ素化合物を塗布する際のコーティング方法についても限定されないが、ディッピング法が一般的であり、ディッピングを行った後に加熱燥を行う。
【0019】
上記の工程によって製造される本発明の防汚性繊維布帛は、当該布帛を構成する繊維の表面に、バインダー樹脂を介してコロイダルシリカが固着し、更にその外側に、フッ素系撥水撥油剤が付着した構成を有しており、当該フッ素系撥水撥油剤のフッ素系撥水撥油基が繊維布帛の最表側に位置している。図1には、本発明の製造方法を用いて得られる防汚性繊維布帛の表面状態が模式図にて示されている。
本発明の防汚性繊維布帛においては、充分な防汚機能(土汚れ防止性能)が発揮されるために、繊維の表面1m当たりコロイダルシリカが1〜6g固着されている必要があり、バインダー樹脂によって、コロイダルシリカの脱落が防止される。そして、本発明では、繊維表面に固着されたコロイダルシリカにさらに、撥水・撥油性フッ素化合物が付着し、この際、撥水・撥油性フッ素化合物のフッ素系撥水撥油基が布帛の最表側を向くようにして位置することにより、撥水・撥油性が付与される。
【0020】
図1に示されるような表面状態を有した本発明の防汚性繊維布帛の防汚性(土汚れに対する防汚性)は、JIS L 1919「繊維製品の防汚性試験方法」のA−1法に準じた判定において3.5級以上であり、撥油性に関しては、AATCC Test Method−118に準じた判定において6級以上であり、撥水性に関しては、エタノール水溶液を用いた撥水試験において10級である。
以下、本発明の実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0021】
[実施例1]
明度(L値:70)、目付210g/mポリエステル織物にコロイダルシリカ(アデライトAT−30A:不揮発分30%、平均粒子径0.0125μm)7.0%およびポリエステルバインダー(プラスコートZ880:不揮発分25%)3.0%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布にフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E082:不揮発分20%)2.5%およびフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E904:不揮発分20%)2.5%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0022】
[実施例2]
明度(L値:70)、目付210g/mポリエステル織物にコロイダルシリカ(アデライトAT−30A:不揮発分30%)3.4%およびポリエステルバインダー(プラスコートZ880:不揮発分25%)1.4%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布にフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E082:不揮発分20%)0.5%およびフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E904:不揮発分20%)0.5%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0023】
[実施例3]
明度(L値:70)、目付210g/mポリエステル織物にコロイダルシリカ(アデライトAT−30A:不揮発分30%)4.5%およびポリエステルバインダー(プラスコートZ880:不揮発分25%)2.4%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布にフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E082:不揮発分20%)0.9%およびフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E904:不揮発分20%)0.9%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0024】
[実施例4]
明度(L値:70)、目付210g/mポリエステル織物にコロイダルシリカ(アデライトAT−30A:不揮発分30%)9.1%およびポリエステルバインダー(プラスコートZ880:不揮発分25%)3.8%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布にフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E082:不揮発分20%)3.2%およびフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E904:不揮発分20%)3.2%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0025】
[実施例5]
明度(L値:70)、目付210g/mポリエステル織物にコロイダルシリカ(アデライトAT−30A:不揮発分30%)11.3%およびポリエステルバインダー(プラスコートZ880:不揮発分25%)5.2%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布にフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E082:不揮発分20%)4.1%およびフッ素系撥水撥油剤(アサヒガードAG−E904:不揮発分20%)4.1%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0026】
[比較例1]
明度(L値:70)、目付210g/mポリエステル織物にアルキルシリケート(バイガードAS:不揮発分15%)2.3%およびフッ素系撥水撥油剤(NKガードS−0671:不揮発分20%)6.7%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0027】
[比較例2]
明度(L値:70)、目付210g/mポリエステル織物にアルキルシリケート(バイガードAS:不揮発分15%)23.0%およびフッ素系撥水撥油剤(NKガードS−0671:不揮発分20%)6.7%の混合溶液をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0028】
[比較例3]
明度(L値:70)、目付210g/mポリエステル織物にアルキルシリケート(バイガードAS:不揮発分15%)23.0%をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布にフッ素系撥水撥油剤(NKガードS−0671:不揮発分20%)6.7%をディッピング後、150℃で2分30秒乾燥した。得られた加工布の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
【0029】
[比較例4]
明度(L値:70)、目付210g/mポリエステル織物の撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性を確認した。
撥水性、撥油性、土汚れ防止性、汚れこすり付け試験、手垢汚れ試験、食用油防汚性、コーヒー汚れ防汚性の各評価試験項目についての試験方法は、以下のとおりである。
【0030】
[試験方法]
1.撥水性評価試験(AATCC TM−193を参考に行った。)
エチルアルコールから構成される標準試験液を布表面に滴下し、30秒以内に濡れがないかを観察した。布に濡れが認められない最高位の級数を撥水性とした。
【0031】
【表1】
【0032】
2.撥油性評価試験(AATCC TM−118を参考に行った。)
異なる表面張力を持つ、一連の選ばれた炭化水素から構成される標準試験液を布表面に滴下し、30秒以内に濡れがないかを観察した。布に濡れが認められない最高位の級数を撥油性とした。
【0033】
【表2】
【0034】
3.土汚れ防止性試験
汚粉として、関東ローム層(JIS Z8901 7種)20gと、コンクリート粉末(JIS Z8901 5種)80gと、カーボンブラック(JIS K5107)0.1gとを混合したものを調製した。この汚粉0.5gと、幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)10枚とを、1リットルの金属缶に入れ、ふたをしてよく振とうさせて、汚染布を調製した。こうして、汚染布を必要な枚数調製した。
幅50mm、長さ150mmの大きさの試験片をヨコ方向から1枚採取し、500gのおもりに取り付け、手でおもりを持ち、20回往復摩擦した後、摩擦子の汚染布を新しい汚染布と交換して、再び摩擦を行った。以上の摩擦工程を15回(計300回往復)繰り返した後、試験片から汚粉を掃除機で5往復吸引した。試験片を取り外し、分光光度計(コニカミノルタ製)でΔEを測定した。ΔE10以下を合格とした。
【0035】
4.汚れこすり付け試験
(付着性試験)
汚粉として、関東ローム層(JIS Z8901 7種)20gと、コンクリート粉末(JIS Z8901 5種)80gと、カーボンブラック(JIS K5107)0.1gとを混合したものを調製した。この汚粉0.5gと、幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)10枚とを、1リットルの金属缶に入れ、ふたをしてよく振とうさせて、汚染布を調製した。こうして、汚染布を必要な枚数調製した。
幅30mm、長さ220mmの大きさの試験片をヨコ方向から1枚採取し、学振型摩擦試験機に取り付け、前記汚染布をかぶせた摩擦子に荷重2Nを掛けて摩擦した。摩擦子が試験片の表面上100mmの間を30回往復/分の速さで20回往復摩擦した後、摩擦子の汚染布を新しい汚染布と交換して、再び摩擦を行った。以上の摩擦工程を5回(計100回往復)繰り返した後、試験片から汚粉を掃除機で除去した。
さらに、以上の工程(100回往復摩擦後、汚粉除去まで)を6回(計600回往復)繰り返した。
試験片を取り外し、分光光度計でΔEを測定し、変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。3.5級以上を合格とした。
(除去性試験)
幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)に、付着性試験で得た試験片の汚れ付着部を指先で20往復擦った。分光光度計でΔEを測定し、変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。4.0級以上を合格とした。
【0036】
5.手垢汚れ防汚性試験
(付着性試験)
関東ローム層(JIS Z8901 7種)20gと、コンクリート粉末(JIS Z8901 5種)80gと、カーボンブラック(JIS K5107)0.1gの割合で調製した汚粉とオレイン酸を1:2で混合した溶液に幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)を10分間浸して汚染布を作成した。幅30mm、長さ220mmの大きさの試験片をヨコ方向から1枚採取し、学振型摩擦試験機に取り付け、ウエスで軽く水分を除いた前記汚染布をかぶせた摩擦子に荷重2Nを掛けて摩擦した。摩擦子が試験片の表面上100mmの間を30回往復/分の速さで10回往復摩擦した。試験片を取り外し、24時間後変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。3.5級以上を合格とした。
(除去性試験)
幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)に、付着性試験で得た試験片の汚れ付着部を指先で20往復擦った。変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。4.0級以上を合格とした。
【0037】
6.食用油汚れ防汚性試験
(付着性試験)
スポイトで食用油(日清サラダオイル)0.1mlを吸い、幅100mm、長さ100mmの大きさの試験片に滴下し、30秒間放置した。滴下部上に幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布と500gのおもりをのせ、30秒間保持後、白綿布およびおもりを取り除いた。24時間後変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。2.0級以上を合格とした。
(除去性試験)
幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)に、付着性試験で得た試験片の汚れ付着部を指先で20往復擦った。変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。3.5級以上を合格とした。
【0038】
7.コーヒー汚れ防汚性試験
(付着性試験)
コーヒー粉0.75gと沸騰水50mlの割合で調整したコーヒーをスポイトで0.1mlを吸い、幅100mm、長さ100mmの大きさの試験片に滴下し、30秒間放置した。滴下部上に幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布と500gのおもりをのせ、30秒間保持後、白綿布およびおもりを取り除いた。24時間後変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。4.5級以上を合格とした。
(除去性試験)
幅50mm、長さ50mmの大きさに採取した白綿布(カナキン3号)に、着性試験で得た試験片の汚れ付着部を指先で20往復擦った。変退色用グレースケール(JIS L0804)を用いて判定した。4.5級以上を合格とした。
【0039】
以下の表1には、前記実施例1〜5及び比較例1〜4のポリエステル織物についての試験評価結果がまとめられている。
【0040】
【表3】
【0041】
上記表3の試験結果から、実施例1〜5で得られたポリエステル織物(本発明の防汚性繊維布帛)と、比較例1のポリエステル織物が共に、撥水性10級、撥油性6級であったのに対し、比較例2〜4のポリエステル織物はいずれも、撥水性9級以下で、撥油性5級以下であった。また、土汚れ防止性に関しては、実施例1〜5のポリエステル織物と、比較例2、3のポリエステル織物がいずれもΔE10以下で、優れた土汚れ防止性を示したのに対して、比較例1および4のポリエステル織物の土汚れ防止性ΔEは10を超えていた。
さらに、上記表3の試験結果から、実施例1〜5のポリエステル織物は、比較例1〜3のポリエステル織物よりも食用油防汚性が優れていることも確認され、手垢汚れが付着した場合でも除去し易いことが確認された。
【0042】
さらに、上記実施例1と比較例2のポリエステル織物について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、繊維布帛の表面に存在するケイ素及びフッ素の付着状態を調査した。
図2(a)には、1回の加工でアルキルシリケートとフッ素系撥水撥油剤の混合溶液をディッピング、乾燥を行った場合のポリエステル織物(比較例2)の表面のSEM画像が示されており、図2(b)には、1回目にコロイダルシリカとポリエステルバインダーの混合溶液をディッピング、乾燥を行い、2回目に2種類のフッ素系撥水撥油剤の混合溶液をディッピング、乾燥を行った場合のポリエステル織物(実施例1)の表面のSEM画像が示されている。図2(a)、(b)共に、左から順に重ね合わせマップ画像(ケイ素+フッ素)、ケイ素単独マップ画像、フッ素単独マップ画像である。
図2(a)と図2(b)のSEM画像の比較から、比較例2のポリエステル織物を構成している繊維表面にはフッ素の付着が認められないが、実施例1のポリエステル織物を構成している繊維の表面には、比較例2のポリエステル織物よりも多くのフッ素が付着していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の製造方法を用いた場合には、比較的簡単な工程によって、優れた防汚性を有した繊維布帛を製造することができる。
この方法を用いて製造された本発明の防汚性繊維布帛は、その優れた土汚れ防止性及び撥水・撥油機能により、車両、船舶、航空機等の内装用布帛として特に適したものであるが、用途はこれに限定されるものではなく、幅広い用途に利用可能である。
図1
図2