特開2019-74426(P2019-74426A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-74426(P2019-74426A)
(43)【公開日】2019年5月16日
(54)【発明の名称】投影装置及び三次元計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20190419BHJP
【FI】
   G01B11/25 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-201220(P2017-201220)
(22)【出願日】2017年10月17日
(71)【出願人】
【識別番号】000106760
【氏名又は名称】CKD株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111095
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 光男
(72)【発明者】
【氏名】二村 伊久雄
(72)【発明者】
【氏名】大山 剛
(72)【発明者】
【氏名】坂井田 憲彦
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA53
2F065AA58
2F065AA59
2F065CC01
2F065CC26
2F065CC28
2F065DD03
2F065DD04
2F065DD10
2F065EE08
2F065FF01
2F065FF04
2F065FF09
2F065GG02
2F065GG07
2F065GG24
2F065HH03
2F065HH06
2F065HH12
2F065JJ03
2F065JJ09
2F065JJ26
2F065LL28
2F065LL30
2F065LL41
2F065LL59
2F065MM03
2F065PP15
2F065QQ01
2F065QQ14
2F065QQ24
2F065QQ25
2F065QQ27
2F065QQ31
2F065SS04
(57)【要約】
【課題】パターン投影法を利用した三次元計測を行うにあたり計測精度の向上等を図ることのできる投影装置及び三次元計測装置を提供する。
【解決手段】基板検査装置は、プリント基板に対し縞パターンを投影する投影装置14と、該プリント基板を撮像するカメラとを備えている。投影装置14は、光源17からの光を縞パターンに変換するパターン生成部18と、生成された縞パターンをプリント基板に結像する投影レンズユニット19とを有している。パターン生成部18は、入射する光を縞パターンに変換する格子板21と、入射する光の入射角が0°となるように、格子板21の入射面側に配設された入射角調整板22と、出射する光の屈折角が0°となるように、格子板21の出射面側に配設された屈折角調整板23とからなり、これらが同一屈折率を有する同一の光学素材により構成されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の被計測物に係る三次元計測を行うにあたり、前記被計測物に対し所定のパターン光を投影する投影装置であって、
所定の光を発する光源と、
前記光源から入射する光を前記パターン光に変換して出射するパターン生成部と、
前記パターン生成部から出射された前記パターン光を前記被計測物に対し結像させる投影光学系とを備え、
前記パターン生成部は、
所定の屈折率を有する光学素材からなり、入射する光を前記パターン光に変換する所定の格子が設けられてなる第1透光部材と、
前記第1透光部材と同一屈折率を有する素材からなり、該パターン生成部へ入射する光の入射角が0°となるように、前記第1透光部材の入射面側に配設された第2透光部材と、
前記第1透光部材と同一屈折率を有する素材からなり、該パターン生成部から出射する光の屈折角が0°となるように、前記第1透光部材の出射面側に配設された第3透光部材とにより構成され、
前記被計測物に対して、前記第1透光部材の格子及び前記投影光学系の主面がシャインプルーフの条件を満たすように配置されることを特徴とする投影装置。
【請求項2】
前記シャインプルーフの条件は、前記パターン生成部を透過する光の進行方向における前記第1透光部材の格子から前記第3透光部材の出射面までの光路長の違いを加味したものであることを特徴とする請求項1に記載の投影装置。
【請求項3】
前記パターン光として、縞状の光強度分布を有するパターン光を生成可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の投影装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の投影装置と、
前記パターン光の投影された前記被計測物の所定範囲を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により撮像され取得された画像データを基に前記被計測物に係る三次元計測を実行可能な画像処理手段とを備えたことを特徴とする三次元計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフト法などのパターン投影法を利用した三次元計測を行うにあたり、所定のパターン光を投影する投影装置及びこれを備えた三次元計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリント基板上に電子部品を実装する場合、まずプリント基板上に配設された所定の電極パターン上にクリーム半田が印刷される。次に、該クリーム半田の粘性に基づいてプリント基板上に電子部品が仮止めされる。その後、前記プリント基板がリフロー炉へ導かれ、所定のリフロー工程を経ることで半田付けが行われる。昨今では、リフロー炉に導かれる前段階においてクリーム半田の印刷状態を検査する必要があり、かかる検査に際して三次元計測装置が用いられることがある。
【0003】
従来、所定のパターン光を投影して三次元計測を行う三次元計測装置が種々提案されている。中でも、位相シフト法を利用した三次元計測装置がよく知られている。
【0004】
位相シフト法を利用した三次元計測装置は、プリント基板等の被計測物に対し、縞状の光強度分布を有するパターン光(以下、「縞パターン」という)を斜め上方より投影する投影装置と、該縞パターンの投影された被計測物を撮像する撮像装置とを備えている。
【0005】
投影装置は、所定の光を発する光源と、該光源からの光を縞パターンに変換するパターン生成部とを備え、ここで生成された縞パターンが投影レンズ等からなる投影光学系を介して被計測物に対し投影される。
【0006】
かかる構成の下、被計測物に投影される縞パターンの位相を複数通り(例えば4通り)にシフトさせると共に、位相の異なる各縞パターンの下で撮像を行い、被計測物に係る複数通りの画像データを取得する。そして、これらの画像データを基に被計測物の三次元計測を行う。
【0007】
近年では、シャインプルーフの原理に従い、パターン生成部を投影光学系の光軸に対し傾くように配置し、投影範囲全域において縞パターンが合焦するように構成された三次元計測装置も見受けられる(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2003−527582号公報
【特許文献2】特開2014−106094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のように、パターン生成部として格子板を用いると共に、該格子板を投影光学系の光軸に対し傾くように配置した構成においては、図11に示すように、所定の光源から出射された光Kaが投影光学系の光軸方向に沿って格子板100の入射面100aに対し斜めに入射することとなる。この際、入射した光Kbは、単波長の光でない限り、複数の波長成分の屈折率の違いにより分光してしまう。
【0010】
さらに、格子板100内を透過した光Kbは、出射面(格子面)100bにて縞パターンに変換され、該出射面100bから斜めに出射されることとなる。この際、入射時と同様、出射された光Kcは、複数の波長成分の屈折率の違いにより分光してしまう。
【0011】
その結果、被計測物に投影される縞パターンがぼやける等して、想定した縞パターンとならず、三次元計測の計測精度が低下するおそれがある。
【0012】
一方、特許文献2では、デジタル・マイクロミラー・デバイス(DMD)をはじめ、反射型液晶パネルや透過型液晶パネルなど、複数の画素がマトリクス状に二次元配列されてなる光学制御素子をパターン生成部として用いる構成が記載されている。
【0013】
しかしながら、DMD等の光学制御素子は画素と画素の間が暗部となることから、生成される縞パターンが微視的には不連続なものとなる。結果として、被計測物に投影される縞パターンが、想定した縞パターンとならず、三次元計測の計測精度が低下するおそれがある。
【0014】
また、DMD等の光学制御素子は、投影装置の制御を複雑化すると共に、高価であるため、投影装置の製造コストを増大させるおそれがある。
【0015】
尚、上記課題は、必ずしもプリント基板上に印刷されたクリーム半田等の三次元計測に限らず、他の三次元計測の分野においても内在するものである。勿論、位相シフト法に限られる問題ではない。
【0016】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、パターン投影法を利用した三次元計測を行うにあたり計測精度の向上等を図ることのできる投影装置及び三次元計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下、上記課題を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果を付記する。
【0018】
手段1.所定の被計測物(例えばプリント基板)に係る三次元計測を行うにあたり、前記被計測物に対し所定のパターン光を投影する投影装置であって、
所定の光を発する光源と、
前記光源から入射する光を前記パターン光に変換して出射するパターン生成部と、
前記パターン生成部から出射された前記パターン光を前記被計測物に対し結像させる投影光学系とを備え、
前記パターン生成部は、
所定の屈折率を有する光学素材(例えばガラスやアクリル樹脂等)からなり、入射する光を前記パターン光に変換する所定の格子(格子面)が設けられてなる第1透光部材(格子板)と、
前記第1透光部材と同一屈折率を有する素材からなり、該パターン生成部へ入射する光の入射角が0°となるように、前記第1透光部材の入射面側に配設された第2透光部材(入射角調整板)と、
前記第1透光部材と同一屈折率を有する素材からなり、該パターン生成部から出射する光の屈折角が0°となるように、前記第1透光部材の出射面側に配設された第3透光部材(屈折角調整板)とにより構成され、
前記被計測物に対して、前記第1透光部材の格子及び前記投影光学系の主面がシャインプルーフの条件を満たすように配置されることを特徴とする投影装置。
【0019】
上記手段1によれば、パターン投影法を利用した三次元計測を行うにあたり、計測精度の良いパターン光を投影することができる。
【0020】
本手段に係る投影装置は、被計測物に対して、第1透光部材の格子及び投影光学系の主面がシャインプルーフの条件を満たすように設定されている。つまり、第1透光部材の格子を含む平面と、投影光学系の主面を含む平面と、被計測物(パターン投影面)を含む平面とがシャインプルーフの条件を満たすように、同一直線上で互いに交わるように設定されている。これにより、被計測物上の投影範囲全域に対しパターン光を合焦状態で投影することができる。結果として、三次元計測の計測精度の向上を図ることができる。
【0021】
さらに、本手段に係るパターン生成部は、入射する光をパターン光に変換する所定の格子が設けられてなる第1透光部材と、入射する光の入射角が0°となるように、第1透光部材の入射面側に配設された第2透光部材と、出射する光の屈折角が0°となるように、第1透光部材の出射面側に配設された第3透光部材とによって構成されると共に、各透光部材が同一の屈折率を有する光学素材(例えばガラスやアクリル樹脂等)により形成されている。
【0022】
これにより、パターン生成部を透過する光の分散等を抑制し、投影されるパターン光のぼけ等を抑制することができる。結果として、パターン投影法を利用した三次元計測の計測精度の向上等を図ることができる。
【0023】
加えて、本手段によれば、例えばガラス板に格子が印刷(蒸着)された既存の格子板など、安価な透光部材を用いてパターン生成部を製造することができる。このため、高価なDMD等の光学制御素子をパターン生成部として用いた場合に比べ、投影装置の製造コストを抑制することができる。
【0024】
また、DMD等の光学制御素子を用いた場合のように、画素の制御を行う必要もなく、制御の簡素化を図ることができると共に、生成されるパターン光が微視的に不連続となることもないため、より理想的なパターン光を被計測物に対し投影することが可能となる。
【0025】
尚、DMD等の光学制御素子をパターン生成部として利用する場合には、通常、市販のものを用いることとなる。このため、生成されるパターン光が光学制御素子の画素ピッチに依存することとなり、自由度が低下し、被計測物に適したパターン光を投影することが困難となる場合もある。この点、本手段によれば、被計測物により適したパターン光を投影することができる。
【0026】
また、第2透光部材及び第3透光部材により第1透光部材(格子板)を挟持した構造となるため、第1透光部材の撓みを抑制し投影精度の向上を図ると共に、格子面を保護することができる。
【0027】
手段2.前記シャインプルーフの条件は、前記パターン生成部を透過する光の進行方向における前記第1透光部材の格子から前記第3透光部材の出射面までの光路長の違いを加味したものであることを特徴とする手段1に記載の投影装置。
【0028】
パターン生成部を透過する光の進行方向における第1透光部材の格子から第3透光部材の出射面までの光路長は、第3透光部材の出射面に対する第1透光部材の格子(格子面)の傾斜方向における格子上のどの位置を光が通過するかによって異なる。
【0029】
上記各透光部材を構成するガラス等の光学素材は、通常、空気の屈折率よりも高い所定の屈折率を有する。このため、透光部材内を進む光の光路長は、空気中を進む光の光路長よりも光学的に長くなる。従って、第1透光部材の格子から第3透光部材の出射面までの物理的な長さ(光路長)が異なる場合には、第1透光部材の格子から被計測物までの光学的な光路長が異なることとなる。これを考慮することなく、第1透光部材の格子及び投影光学系の主面がシャインプルーフの条件を満たすように配置された場合には、僅かながらも誤差が生じ得る。
【0030】
これに対し、本手段によれば、このような誤差を補正した状態で、第1透光部材の格子及び投影光学系の主面がシャインプルーフの条件を満たすように配置されるため、より精度よくパターン光を合焦させることができる。
【0031】
手段3.前記パターン光として、縞状(例えば正弦波状)の光強度分布を有するパターン光を生成可能に構成されていることを特徴とする手段1又は2に記載の投影装置。
【0032】
上記手段3によれば、縞状の光強度分布を有するパターン光を投影することにより、位相シフト法による三次元計測を行うことができる。結果として、三次元計測の計測精度の向上等を図ることができる。
【0033】
位相シフト法のように、位相の異なるパターン光の下で撮像し取得した複数の画像データの輝度値の違いを基に三次元計測を行う構成においては、輝度値の誤差が僅かであっても、計測精度に多大な影響を与えるおそれがある。従って、本手段に係る構成の下において上記各手段の作用効果がより奏功することとなる。特に正弦波状の光強度分布を有するパターン光は、光強度分布(波形)が崩れやすいため、高い投影精度が要求される。
【0034】
手段4.手段1乃至3のいずれかに記載の投影装置と、
前記パターン光の投影された前記被計測物の所定範囲を撮像可能な撮像手段と、
前記撮像手段により撮像され取得された画像データを基に前記被計測物に係る三次元計測を実行可能な画像処理手段とを備えたことを特徴とする三次元計測装置。
【0035】
上記手段4によれば、手段1乃至3のいずれかに記載の投影装置から投影されるパターン光を利用して三次元計測を行うことができる。通常、パターン投影法を利用した三次元計測を行う際には、所定の光源から出射された光をパターン生成部において所定のパターン光に変換し、投影光学系を介して被計測物に対し投影する。そして、パターン光の投影された被計測物を撮像手段により撮像し、取得した画像データを基に被計測物の三次元計測を行う。
【0036】
より具体的に、上記手段3に記載の投影装置から投影されるパターン光を利用して位相シフト法による三次元計測を行う三次元計測装置としては、
「手段3に記載の投影装置と、
前記パターン光の投影された前記被計測物の所定範囲を撮像可能な撮像手段と、
前記投影装置によって投影されるパターン光と、前記被計測物との相対位置関係(位相)を変位させる変位手段と、
前記パターン光と前記被計測物との相対位置関係が異なる状態で、前記撮像手段により撮像され取得された前記被計測物に係る複数の画像データを基に位相シフト法により前記被計測物に係る三次元計測を実行可能な画像処理手段とを備えたことを特徴とする三次元計測装置。」が一例に挙げられる。
【0037】
尚、上記「被計測物」としては、例えばクリーム半田が印刷されたプリント基板や、半田バンプが形成されたウエハ基板などが挙げられる。つまり、上記各手段に記載の投影装置を用いることにより、プリント基板に印刷されたクリーム半田や、ウエハ基板に形成された半田バンプの三次元計測を行うことができる。ひいては、クリーム半田や半田バンプの検査において、その計測値に基づいてクリーム半田や半田バンプの良否判定を行うことができる。従って、かかる検査において、上記各手段の作用効果が奏されることとなり、精度よく良否判定を行うことができる。結果として、半田印刷検査装置や半田バンプ検査装置における検査精度の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】基板検査装置の概略構成を示す模式図である。
図2】プリント基板の断面模式図である。
図3】投影装置の概略構成を示す模式図である。
図4】パターン生成部の概略構成を示す模式図である。
図5】基板検査装置の電気的構成を示すブロック図である。
図6】プリント基板上に投影された縞パターンの態様を示す模式図である。
図7】時間経過と共に変化するプリント基板上の座標位置と、カメラの撮像範囲との関係を説明するための模式図である。
図8】時間経過と共に変化するプリント基板上の座標位置と、縞パターンの位相との関係を説明するための表である。
図9】複数の画像データの座標位置を位置合せした状態を模式的に示した表である。
図10】プリント基板の各座標位置に係るデータを整理した状態を模式的に示した表である。
図11】従来の格子板の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、一実施形態について図面を参照しつつ説明する。まず本実施形態において被計測物となるプリント基板1の構成について詳しく説明する(図2参照)。図2は、プリント基板1の断面模式図である。
【0040】
図2に示すように、プリント基板1は、平板状をなし、ガラスエポキシ樹脂等からなるベース基板2に、銅箔からなる電極パターン3が設けられている。さらに、所定の電極パターン3上には、クリーム半田4が印刷形成されている。このクリーム半田4が印刷された領域を「半田印刷領域」ということにする。半田印刷領域以外の部分を「背景領域」と総称するが、この背景領域には、電極パターン3が露出した領域(記号E1)、ベース基板2が露出した領域(記号E2)、ベース基板2上にレジスト膜5がコーティングされた領域(記号E3)、及び、電極パターン3上にレジスト膜5がコーティングされた領域(記号E4)が含まれる。尚、レジスト膜5は、所定配線部分以外にクリーム半田4がのらないように、プリント基板1の表面にコーティングされるものである。
【0041】
次に、本実施形態における三次元計測装置を構成する基板検査装置10について詳しく説明する(図1参照)。図1は、基板検査装置10の概略構成を示す模式図である。以下、図1の紙面左右方向を「X方向」とし、紙面前後方向を「Y方向」とし、紙面上下方向(鉛直方向)を「Z方向」として説明する。
【0042】
基板検査装置10は、プリント基板1に印刷されたクリーム半田4の印刷状態を検査する半田印刷検査装置である。基板検査装置10は、プリント基板1を搬送する搬送手段(変位手段)としてのコンベア13と、プリント基板1の表面に対し斜め上方から縞パターンを投影する投影装置14と、該縞パターンの投影されたプリント基板1を真上から撮像する撮像手段としてのカメラ15と、コンベア13や投影装置14、カメラ15の駆動制御など基板検査装置10内における各種制御や画像処理、演算処理を実施するための制御装置16(図5参照)とを備えている。
【0043】
コンベア13には、図示しないモータ等の駆動手段が設けられており、該モータが制御装置16により駆動制御されることによって、コンベア13の上面(載置面)に載置されたプリント基板1が所定方向(図1右方向)へ定速で連続搬送される。これにより、カメラ15の撮像範囲(撮像エリア)Wは、プリント基板1に対し逆方向(図1左方向)へ相対移動していくこととなる。
【0044】
投影装置14は、図3に示すように、所定の光を発する光源17と、該光源17からの光を縞パターンに変換するパターン生成部18と、該パターン生成部18により生成された縞パターンをプリント基板1上に結像する投影光学系としての投影レンズユニット19とを有している。
【0045】
投影装置14は、その光軸J1がX−Z平面に平行し、かつ、Z方向に対し所定角度α(例えば30°)傾斜するように配置されている。
【0046】
光源17は、白色光を出射するハロゲンランプにより構成されている。光源17から出射された光は、図示しない前処理レンズ群等を介して平行光化された状態で光軸J1に沿ってパターン生成部18に入射する。
【0047】
パターン生成部18は、3つの透光部材を貼り合せて一体とした1つの光学部材として構成されている(図4参照)。図4は、パターン生成部18の概略構成を示す模式図である。
【0048】
図4に示すように、パターン生成部18は、入射した光を縞パターンに変換して出射する第1透光部材としての格子板21と、該格子板21の入射側に配設された第2透光部材としての入射角調整板22と、格子板21の出射側に配設された第3透光部材としての屈折角調整板23とからなる。
【0049】
格子板21、入射角調整板22及び屈折角調整板23の三者は、同一の屈折率を有する同一の光学素材(例えばガラスやアクリル樹脂等)により形成されている。
【0050】
格子板21は、X−Z平面における断面が長方形状をなし、Y方向に沿った4つの矩形平面を有する平板状の透光部材である。格子板21を構成する4つの矩形平面のうち、光軸J1と交差するように配置された互いに平行な2つの矩形平面により入射面21a及び出射面21bが構成される。
【0051】
格子板21は、入射面21a及び出射面21bの垂線が光軸J1に対し所定角度β(例えば約20°)傾斜するように配置されている。
【0052】
格子板21の出射面21bには格子25が印刷(蒸着)形成されている。つまり、格子板21の出射面21bにより、本実施形態における格子面が構成される。格子25は、Y方向に沿って直線状に形成された透光部25a及び遮光部25bがX−Z平面において交互に並ぶように構成されている。
【0053】
入射角調整板22は、X−Z平面における断面が三角形状をなし、Y方向に沿った3つの矩形平面を有する透光部材である。入射角調整板22を構成する3つの矩形平面のうち、光軸J1と交差するように配置された2つの矩形平面により入射面22a及び出射面22bが構成される。
【0054】
入射角調整板22の入射面22aは、光軸J1と直交するように配置されている。一方、出射面22bは、格子板21の入射面21aに接合され、その垂線が光軸J1に対し前記角度β傾斜するように配置されている。つまり、入射角調整板22は、入射面22aと出射面22bとの内角が前記角度βとなっている。
【0055】
これにより、光源17からパターン生成部18(入射角調整板22の入射面22a)に入射する光の入射角は0°となる。一方、入射角調整板22の出射面22bから出射され、格子板21の入射面21aに入射する光は、すべての波長成分が屈折することなく、光軸J1に沿って直進することとなる。
【0056】
屈折角調整板23は、X−Z平面における断面が三角形状をなし、Y方向に沿った3つの矩形平面を有する透光部材である。屈折角調整板23を構成する3つの矩形平面のうち、光軸J1と交差するように配置された2つの矩形平面により入射面23a及び出射面23bが構成される。
【0057】
屈折角調整板23の入射面23aは、格子板21の出射面21bに接合され、その垂線が光軸J1に対し前記角度β傾斜するように配置されている。一方、出射面23bは、光軸J1と直交するように配置されている。つまり、屈折角調整板23は、入射面23aと出射面23bとの内角が前記角度βとなっている。
【0058】
これにより、格子板21の出射面21bから出射され、屈折角調整板23の入射面23aに入射する光(縞パターン)は、すべての波長成分が屈折することなく、光軸J1に沿って直進することとなる。また、パターン生成部18(屈折角調整板23の出射面23b)から外部へ出射する光の屈折角は0°となる。従って、パターン生成部18から外部へ出射される光は、すべての波長成分が屈折することなく、光軸J1に沿って投影レンズユニット19に向け直進することとなる。
【0059】
投影レンズユニット19は、入射側レンズ31、開口絞り32、出射側レンズ33等を一体に備えた両側テレセントリックレンズ(両側テレセントリック光学系)により構成されている。
【0060】
入射側レンズ31は、パターン生成部18(屈折角調整板23の出射面23b)から出射された光(縞パターン)を集光するものであり、入射側で光軸J1と主光線とが平行となるテレセントリック構造を有する。
【0061】
出射側レンズ33は、入射側レンズ31から開口絞り32を透過した光(縞パターン)の像をプリント基板1上に結像させるためのものであり、出射側で光軸J1と主光線とが平行となるテレセントリック構造を有する。
【0062】
開口絞り32は、入射側レンズ31の後側焦点の位置かつ出射側レンズ33の前側焦点の位置に配置されている。
【0063】
かかる構成の下、投影装置14においては、プリント基板1上に投影される縞パターンが投影範囲(本実施形態では撮像範囲Wと同一範囲)全域において合焦するように、パターン生成部18及び投影レンズユニット19の傾きが調整されている。
【0064】
具体的には、コンベア13上のプリント基板1に対して、格子板21の出射面(格子面)21b及び投影レンズユニット19の主面がシャインプルーフの条件を満たすように設定されている。
【0065】
ここで、シャインプルーフの原理について図3を参照して説明する。シャインプルーフの原理とは、格子板21の出射面21bを含む平面S1と、投影レンズユニット19の主面を含む平面S2とが同一直線C(図3上の点Cにおける紙面に垂直な直線)上で交わる場合、縞パターンが合焦状態で投影される物体面S3も同一直線C上で交わるというものである。従って、このようなシャインプルーフの原理に基づく条件は、格子板21の出射面21bを含む平面S1と、投影レンズユニット19の主面を含む平面S2と、プリント基板1の表面(投影面)を含む平面S3が同一直線C上で互いに交わることである。
【0066】
上記構成の下、光源17から出射された光は、パターン生成部18(入射角調整板22の入射面22a)に対し入射角0°で垂直に入射する。そして、入射角調整板22内を光軸J1に沿って直進する。入射角調整板22内を透過した光は、入射角調整板22の出射面22bから出射されると共に、入射角βで格子板21の入射面21aに対し斜めに入射する。そして、格子板21内を光軸J1に沿って直進する。
【0067】
格子板21内を透過した光は、格子板21の出射面(格子面)21bから縞パターンとして出射されると共に、入射角βで屈折角調整板23の入射面23aに対し斜めに入射する。そして、屈折角調整板23内を光軸J1に沿って直進する。
【0068】
屈折角調整板23内を透過した光(縞パターン)は、屈折角調整板23の出射面23bから屈折角0°で垂直に出射する。そして、投影レンズユニット19を介してプリント基板1上に投影される。
【0069】
これにより、本実施形態では、図6に示すように、搬送されるプリント基板1上に、搬送方向(X方向)と直交するY方向に平行な縞パターンが投影されることとなる。
【0070】
尚、通常、格子25を通過する光は完全な平行光でなく、透光部25a及び遮光部25bの境界部における回折作用等に起因して、縞パターンの「明部」及び「暗部」の境界部に中間階調域が生じることとなる。そのため、プリント基板1に対し投影される縞パターンは、プリント基板1の搬送方向(X方向)に沿って正弦波状の光強度分布を有するパターン光となる。但し、図6では、簡略化のため、中間階調域を省略し、明暗2値の縞模様で縞パターンを図示している。
【0071】
カメラ15は、複数の受光素子が二次元配列された受光面を有する撮像素子15aと、該撮像素子15aに対し、縞パターンが投影されたプリント基板1の撮像範囲Wの像を結像させる撮像光学系としての撮像レンズユニット15bとを有し、その光軸J2がコンベア13の上面に垂直な鉛直方向(Z方向)に沿って設定されている。本実施形態では、撮像素子15aとしてCCDエリアセンサを採用している。
【0072】
撮像レンズユニット15bは、物体側レンズ、開口絞り、像側レンズ等を一体に備えた両側テレセントリックレンズ(両側テレセントリック光学系)により構成されている。但し、図1においては、簡素化のため、撮像レンズユニット15bを1つのレンズとして図示している。
【0073】
ここで、物体側レンズは、プリント基板1からの反射光を集光するものであり、物体側で光軸J2と主光線とが平行となるテレセントリック構造を有する。また、像側レンズは、物体側レンズから開口絞りを透過した光を撮像素子15aの受光面に結像させるためのものであり、像側で光軸J2と主光線とが平行となるテレセントリック構造を有する。
【0074】
カメラ15によって撮像され取得された画像データは、該カメラ15内部においてデジタル信号に変換された上で、デジタル信号の形で制御装置16に入力され、後述する画像データ記憶装置44に記憶される。そして、制御装置16は、該画像データを基に、後述するような画像処理や演算処理等を実施する。制御装置16が本実施形態における画像処理手段を構成する。
【0075】
次に制御装置16の電気的構成について図5を参照して説明する。図5は、基板検査装置10の電気的構成を示すブロック図である。
【0076】
図5に示すように、制御装置16は、基板検査装置10全体の制御を司るCPU及び入出力インターフェース41、キーボードやマウス、タッチパネル等で構成される「入力手段」としての入力装置42、CRTや液晶などの表示画面を有する「表示手段」としての表示装置43、カメラ15により撮像され取得された画像データなどを記憶するための画像データ記憶装置44、該画像データに基づいて得られた三次元計測結果など、各種演算結果を記憶するための演算結果記憶装置45、設計データなどの各種情報を予め記憶しておくための設定データ記憶装置46などを備えている。尚、これら各装置42〜46は、CPU及び入出力インターフェース41に対し電気的に接続されている。
【0077】
次に、基板検査装置10にて実行される三次元計測処理等の各種処理について詳しく説明する。
【0078】
制御装置16は、コンベア13を駆動制御してプリント基板1を定速で連続搬送する。そして、制御装置16は、コンベア13に設けられた図示しないエンコーダからの信号に基づいて、投影装置14及びカメラ15を駆動制御する。
【0079】
より詳しくは、プリント基板1が所定量Δx搬送される毎、つまり所定時間Δtが経過する毎に、縞パターンの投影されたプリント基板1をカメラ15により撮像する。所定時間Δtが経過する毎に、カメラ15により撮像され取得された画像データは、随時、制御装置16へ転送され、画像データ記憶装置44に記憶される。
【0080】
本実施形態では、所定量Δxが、投影装置14から投影される縞パターンの位相90°分に相当する距離に設定されている。また、プリント基板1の搬送方向(X方向)におけるカメラ15の撮像範囲Wが縞パターンの1周期(位相360°)分に相当する長さに設定されている。勿論、所定量Δxやカメラ15の撮像範囲Wは、これに限定されるものではなく、これより長くてもよいし、短くてもよい。
【0081】
ここで、投影装置14から投影される縞パターンと、カメラ15により撮像されるプリント基板1との関係について具体例を挙げ詳しく説明する。図7は、時間経過と共に相対移動するプリント基板1上の座標位置とカメラ15の撮像範囲Wとの関係を説明するための模式図である。図8は、時間経過と共に相対移動するプリント基板1上の座標位置と縞パターンの位相との関係を説明するための表である。
【0082】
尚、本実施形態においては、プリント基板1上における搬送方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に関して、プリント基板1のY方向全範囲がカメラ15の撮像範囲W内に含まれる。従って、X方向の同一座標位置におけるY方向の各座標位置については縞パターンの位相に違いはない。また、カメラ15と投影装置14の位置関係は固定されているため、投影装置14から投影される縞パターンの位相は、撮像素子15aの受光面における各座標位置に対し固定されている。
【0083】
図7,8に示すように、所定の撮像タイミングt1において、カメラ15の撮像範囲W内には、プリント基板1のうち、その搬送方向(X方向)における座標P2〜P17に相当する範囲が位置する。つまり、撮像タイミングt1においては、縞パターンが投影されたプリント基板1上の座標P2〜P17の範囲の画像データが取得される。
【0084】
具体的に、撮像タイミングt1においては、プリント基板1に投影された縞パターンの位相が座標P17で「0°」、座標P16で「22.5°」、座標P15で「45°」、・・・、座標P1で「360°(0°)」といったように、縞パターンの位相が各座標P2〜P17ごとに「22.5°」ずつずれた画像データが取得される。但し、図7,8で示される縞パターンの位相は、高さ位置「0」かつ平面をなす基準面(例えばプリント基板1の背景領域)に投影された場合を想定したものである。
【0085】
撮像タイミングt1より所定時間Δtが経過した撮像タイミングt2において、カメラ15の撮像範囲W内には、プリント基板1上の座標P6〜P21に相当する範囲が位置し、該範囲の画像データが取得される。
【0086】
撮像タイミングt2より所定時間Δtが経過した撮像タイミングt3において、カメラ15の撮像範囲W内には、プリント基板1上の座標P10〜P25に相当する範囲が位置し、該範囲の画像データが取得される。
【0087】
撮像タイミングt3より所定時間Δtが経過した撮像タイミングt4において、カメラ15の撮像範囲W内には、プリント基板1上の座標P14〜P29に相当する範囲が位置し、該範囲の画像データが取得される。
【0088】
以後、所定時間Δtが経過する毎に、上記撮像タイミングt1〜t4の処理と同様の処理が繰り返し行われる。
【0089】
このようにして、プリント基板1上の所定の座標位置(例えば座標P17)に係る全てのデータが取得されると、上記各画像データの座標位置を位置合せする(各画像データの相互間の座標系を合せる)位置合せ処理を実行する(図9参照)。図9は、撮像タイミングt1〜t4において取得した複数の画像データの座標位置を位置合せした状態を模式的に示した表である。
【0090】
続いて、複数の画像データの同一座標位置に係るデータを各座標位置ごとにまとめた上で演算結果記憶装置45に記憶する(図10参照)。図10は、プリント基板1上の各座標位置に係るデータを整理した状態を模式的に示した表である。但し、図10では、プリント基板1上の座標P17に係る部分のみを例示している。
【0091】
これにより、本実施形態では、プリント基板1上の各座標位置につき、縞パターンの位相が90°ずつずれた4通り(θ+0、θ+90°、θ+180°、θ+270°)の輝度値が取得されることとなる。
【0092】
次に、制御装置16は、上記のように取得した4通りの画像データ(各座標の4通りの輝度値)を基に位相シフト法により各座標毎の高さ計測を行う。制御装置16は、該処理を各座標毎に繰り返すことで、プリント基板1全体の各座標における高さデータを算出し、これをプリント基板1の三次元計測結果として演算結果記憶装置45に記憶する。
【0093】
ここで、公知の位相シフト法について説明する。上記4通りの画像データにおけるプリント基板1上の所定座標位置の光強度(輝度)I0,I1,I2,I3は、それぞれ下記式(1)、(2)、(3)、(4)により表すことができる。
【0094】
I0=αsinθ+β ・・・(1)
I1=αsin(θ+90°)+β =αcosθ+β ・・・(2)
I2=αsin(θ+180°)+β=−αsinθ+β ・・・(3)
I3=αsin(θ+270°)+β=−αcosθ+β ・・・(4)
但し、α:ゲイン、β:オフセット、θ:縞パターンの位相。
【0095】
そして、上記式(1)、(2)、(3)、(4)を位相θについて解くと、下記式(5)を導き出すことができる。
【0096】
θ=tan-1{(I0−I2)/(I1−I3)} ・・(5)
このように算出された位相θを用いることにより、三角測量の原理に基づき、プリント基板1上の各座標(X,Y)における高さ(Z)を求めることができる。
【0097】
制御装置16は、上記のようにして得られた三次元計測結果(各座標における高さデータ)を基にクリーム半田4の印刷状態の良否判定を行う。具体的に、制御装置16は、高さ基準面より所定長以上、高くなった半田印刷領域を検出し、この領域内での各部位の高さを積分することにより、印刷されたクリーム半田4の量を算出する。
【0098】
続いて、制御装置16は、このようにして求めたクリーム半田4の位置、面積、高さ又は量等のデータを、予め設定データ記憶装置46に記憶されている基準データ(ガーバデータなど)と比較判定し、この比較結果が許容範囲内にあるか否かによって、クリーム半田4の印刷状態の良否を判定する。
【0099】
以上詳述したように、本実施形態によれば、連続搬送されるプリント基板1に対し縞パターンが投影され、該縞パターンの投影されたプリント基板1が所定量(縞パターンの位相90°分に相当する距離)搬送される毎にカメラ15により撮像される。これにより、投影された縞パターンの位相が所定量ずつ(位相90°ずつ)異なる4通りの画像データが取得される。そして、これらの画像データを基に位相シフト法によるプリント基板1の三次元計測が行われる。結果として、プリント基板1を停止させることなく連続移動させつつ三次元計測を行うことができるため、計測効率の向上、ひいては生産効率の向上等を図ることができる。
【0100】
また、本実施形態に係る投影装置14は、プリント基板1に対して、格子板21の出射面(格子面)21b及び投影レンズユニット19の主面がシャインプルーフの条件を満たすように設定されている。つまり、格子板21の出射面21bを含む平面S1と、投影レンズユニット19の主面を含む平面S2と、プリント基板1の表面(投影面)を含む平面S3が同一直線C上で互いに交わるように設定されている。これにより、プリント基板1上の投影範囲全域に対し縞パターンを合焦状態で投影することができる。結果として、三次元計測の計測精度の向上を図ることができる。
【0101】
さらに、本実施形態に係るパターン生成部18は、所定の屈折率を有する光学素材からなり、入射する光を縞パターンに変換する格子25が設けられてなる格子板21と、該格子板21と同一屈折率を有する同一素材からなり、入射する光の入射角が0°となるように、格子板21の入射面21a側に配設された入射角調整板22と、格子板21と同一屈折率を有する同一素材からなり、出射する光の屈折角が0°となるように、格子板21の出射面21b側に配設された屈折角調整板23とにより構成されている。
【0102】
これにより、パターン生成部18を透過する光の分散等を抑制し、縞パターンのぼけ等を抑制することができる。結果として、位相シフト法を利用した三次元計測の計測精度の向上等を図ることができる。
【0103】
加えて、本実施形態によれば、例えばガラス板に格子25が印刷された既存の格子板21など、安価な透光部材を用いてパターン生成部18を製造することができる。このため、高価なDMD等の光学制御素子をパターン生成部として用いた場合に比べ、投影装置14の製造コストを抑制することができる。
【0104】
また、DMD等の光学制御素子を用いた場合のように、画素の制御を行う必要もなく、制御の簡素化を図ることができると共に、生成されるパターン光が微視的に不連続となることもないため、より理想的な縞パターンをプリント基板1に対し投影することが可能となる。
【0105】
さらに、DMD等の光学制御素子を用いた場合のように、生成される縞パターンが光学制御素子の画素ピッチに依存することもなく、プリント基板1により適した縞パターンを投影することができる。
【0106】
尚、プリント基板1は、コンベア13により搬送される際に高さ位置が微妙に変化してしまうおそれがある。これに対し、本実施形態では、投影レンズユニット19が両側テレセントリックレンズ(両側テレセントリック光学系)により構成されているため、プリント基板1の高さ変化に影響を受けることなく、縞パターンを精度良く投影することができる。
【0107】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0108】
(a)上記実施形態では、本願発明である投影装置及び三次元計測装置を、プリント基板1に印刷されたクリーム半田4の印刷状態を検査する基板検査装置10に具体化したが、これに限らず、例えばウエハ基板に形成された半田バンプや、プリント基板上に塗布された接着剤、プリント基板上に実装された電子部品など、他の対象を検査する装置に具体化してもよい。勿論、基板とは異なる対象物を被計測物として三次元計測を行う構成としてもよい。
【0109】
(b)上記実施形態では、位相シフト法による三次元計測を行う上で、縞パターンの位相が90°ずつ異なる4通りの画像データを取得する構成となっているが、位相シフト回数及び位相シフト量は、これらに限定されるものではない。位相シフト法により三次元計測可能な他の位相シフト回数及び位相シフト量を採用してもよい。例えば位相が120°又は90°ずつ異なる3通りの画像データを取得して三次元計測を行う構成としてもよい。
【0110】
(c)上記実施形態では、位相シフト法による三次元計測を行う上で、縞パターンとして、正弦波状の光強度分布を有するパターン光を投影する構成となっているが、これに限らず、縞パターンとして、例えば矩形波状や三角波状など非正弦波状の光強度分布を有するパターン光を投影する構成としてもよい。
【0111】
但し、非正弦波状の光強度分布を有するパターン光を投影し三次元計測を行うよりも、正弦波状の光強度分布を有するパターン光を投影し三次元計測を行う方が計測精度が良い。そのため、計測精度の向上を図る点においては、正弦波状の光強度分布を有するパターン光を投影し三次元計測を行う構成とすることが好ましい。
【0112】
(d)上記実施形態では、プリント基板1に対し縞パターンを投影し、位相シフト法により三次元計測を行う構成となっているが、これに限らず、例えば空間コード法やモアレ法など、他のパターン投影法を利用して三次元計測を行う構成としてもよい。但し、クリーム半田4など小さな計測対象を計測する場合には、位相シフト法など、計測精度の高い計測方法を採用することがより好ましい。
【0113】
(e)上記実施形態では、コンベア13によりプリント基板1を連続移動することにより、投影される縞パターンとプリント基板1との位置関係を相対移動させる構成となっているが、縞パターンとプリント基板1とを相対移動させる構成(変位手段)は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0114】
例えば投影装置14及びカメラ15からなる計測ヘッドを移動可能に構成することにより、所定位置に固定されたプリント基板1と、投影される縞パターンとの位置関係を相対移動させる構成としてもよい。
【0115】
また、投影装置14内においてパターン生成部18を変位可能に設けることにより、投影装置14及びカメラ15からなる計測ヘッドとプリント基板1とを相対移動させることなく停止させた状態で、所定位置に固定されたプリント基板1と、投影される縞パターンとの位置関係を相対移動させる構成としてもよい。
【0116】
(f)上記実施形態では、光源17が白色光を出射するハロゲンランプにより構成されている。これに限らず、白色LEDなど他の光源を用いる構成としてもよい。
【0117】
(g)パターン生成部18の構成は上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態に係る格子板21は、その出射面21bに格子25が設けられた構成となっているが、これに限らず、例えば入射面21aに格子25が設けられた構成としてもよい。
【0118】
また、上記実施形態では、格子25が印刷(蒸着)により設けられた構成となっているが、これに限らず、例えばレーザー加工など他の方法により設けられた構成としてもよい。
【0119】
また、上記実施形態に係る格子25は、透光部25aと遮光部25bとが交互に並ぶ2値的な構成となっているが、これに限らず、例えば3段階以上に透過率が異なる多値的な格子パターンが設けられた構成としてもよい。
【0120】
また、上記実施形態では、格子板21、入射角調整板22及び屈折角調整板23の三者が同一の屈折率を有する同一の光学素材により形成されているが、これに限らず、格子板21、入射角調整板22及び屈折角調整板23のうちの少なくとも1つが、同一の屈折率を有する異なる光学素材により形成された構成としてもよい。
【0121】
例えば所定の格子が設けられてなる第1透光部材を薄肉のフィルム部材等により形成した構成としてもよい。かかる第1透光部材は入射角調整板22と屈折角調整板23とにより挟持された構造となるため、第1透光部材の撓みを抑制することができる。
【0122】
(h)投影光学系は、上記実施形態の投影レンズユニット19に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、投影レンズユニット19が両側テレセントリックレンズ(両側テレセントリック光学系)により構成されている。これに限らず、投影レンズユニット19として、物体側テレセントリックレンズ(物体側テレセントリック光学系)を採用してもよい。また、テレセントリック構造を有しない構成としてもよい。
【0123】
(i)撮像手段は、上記実施形態のカメラ15に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、撮像素子15aとしてCCDエリアセンサを採用しているが、これに限らず、例えばCMOSエリアセンサ等を採用してもよい。
【0124】
また、撮像レンズユニット15bが両側テレセントリックレンズ(両側テレセントリック光学系)により構成されている。これに限らず、撮像レンズユニット15bとして、物体側テレセントリックレンズ(物体側テレセントリック光学系)を採用してもよい。また、テレセントリック構造を有しない構成としてもよい。
【0125】
(j)上記実施形態では、特に言及していないが、上記シャインプルーフの条件は、パターン生成部18を透過する光の進行方向(光軸J1方向)における格子板21の出射面21b(格子25)から屈折角調整板23の出射面23bまでの光路長の違いを加味したものであることが好ましい。
【0126】
パターン生成部18を透過する光の進行方向における格子板21の出射面21bから屈折角調整板23の出射面23bまでの光路長は、屈折角調整板23の出射面23bに対する格子板21の出射面21bの傾斜方向における出射面21b上のどの位置を光が通過するかによって異なる。
【0127】
パターン生成部18を構成するガラス等の光学素材は、通常、空気の屈折率よりも高い所定の屈折率を有する。このため、パターン生成部18内を進む光の光路長は、空気中を進む光の光路長よりも光学的に長くなる。従って、格子板21の出射面21bから屈折角調整板23の出射面23bまでの物理的な長さ(光路長)が異なる場合には、格子板21の出射面21bからプリント基板1までの光学的な光路長が異なることとなる。これを考慮することなく、格子板21の出射面21b及び投影レンズユニット19の主面がシャインプルーフの条件を満たすように配置された場合には、僅かながらも誤差が生じ得る。
【0128】
これに対し、上記のような誤差を補正した状態で、格子板21の出射面21b及び投影レンズユニット19の主面がシャインプルーフの条件を満たすように配置すれば、より精度よく縞パターンを合焦させることができる。
【符号の説明】
【0129】
1…プリント基板、4…クリーム半田、10…基板検査装置、13…コンベア、14…投影装置、15…カメラ、16…制御装置、17…光源、18…パターン生成部、19…投影レンズユニット、21…格子板、22…入射角調整板、23…屈折角調整板、25…格子、25a…透光部、25b…遮光部、31…入射側レンズ、32…開口絞り、33…出射側レンズ、J1…光軸。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11