【解決手段】超音波流量計1Aは、血液浄化装置100Aに用いられ、血液導管120の外側に接触して取り付けられる超音波送受波器10A、10Bと、液体の流量を測定する流量測定回路20Aと、を備え、流量測定回路20Aは、送信部21と、受信部22と、血液導管120を流れる液体の実流量の基準流量を取得するタイミングを判定する判定部24と、送受信された超音波信号に基づいて流量を算出する流量算出部25と、判定部24により判定されたタイミングにおいて流量算出部25により算出された基準流量Q
前記血液浄化装置は、前記血液ポンプを制御して前記血液導管を流れる液体の送液方向が異なる複数の工程を切り替える制御部を備え、工程が切り替わる際に前記血液ポンプが停止又は送液方向が変化するタイミングが発生し、
前記判定部は、前記制御部から前記血液ポンプが停止又は送液方向が変化するタイミング情報を受信することにより判定を行う請求項1に記載の超音波流量計。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の超音波流量計及び血液浄化装置の好ましい各実施形態について、図面を参照しながら説明する。本発明では一例として、腎不全患者や薬物中毒患者の血液を浄化すると共に、血液中の余分な水分を除去する血液透析を行う血液浄化装置を用いて説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る血液浄化装置100A及び該装置に用いられる超音波流量計1Aの構成を示す説明図であり、
図2は、血液浄化装置100Aの概略構成を示す図である。
まず、血液浄化装置100Aの構成について
図2を参照しながら説明する。
【0018】
血液浄化装置100Aは、血液浄化手段としてのダイアライザ110と、血液導管120と、この血液導管120に配置される超音波流量計1Aと、透析液導管140と、透析液送液部150と、制御部160と、を備える。
【0019】
ダイアライザ110は、筒状に形成された容器本体111と、この容器本体111の内部に収容された透析膜(図示せず)と、を備え、容器本体111の内部は、透析膜により血液側流路と透析液側流路とに区画される(いずれも図示せず)。容器本体111には、血液導管120に連通する血液導入口112a及び血液導出口112bと、透析液導管140に連通する透析液導入口113a及び透析液導出口113bと、が形成される。
【0020】
血液導管120は、動脈側ライン121と、静脈側ライン122と、薬剤ライン123と、排液ライン124と、を有する。動脈側ライン121、静脈側ライン122、薬剤ライン123及び排液ライン124は、いずれも液体が流通可能な可撓性を有する軟質のチューブを主体として構成される。
【0021】
動脈側ライン121は、一端側がダイアライザ110の血液導入口112aに接続される。動脈側ライン121には、動脈側接続部121a、動脈側気泡検知器121b、血液ポンプ130及び後述の超音波流量計1Aが配置される。
動脈側接続部121aは、動脈側ライン121の他端側に配置される。動脈側接続部121aには、患者の血管に穿刺される針が接続される。
動脈側気泡検知器121bは、チューブ内の気泡の有無を検出する。
血液ポンプ130は、動脈側ライン121における動脈側気泡検知器121bよりも下流側に配置される。血液ポンプ130は、動脈側ライン121を構成するチューブをローラーでしごくことにより、動脈側ライン121の内部の液体を送出する。
【0022】
超音波流量計1Aは、動脈側ライン121における血液ポンプ130よりも上流側に配置される。超音波流量計1Aは、超音波信号を送受する超音波送受波器10A,10Bと、超音波送受波器で送受される超音波信号に基づいて液体の流量を測定する流量測定回路20Aと、を含んで構成され、動脈側ライン121を流れる液体の流量を測定する(
図1参照)。
超音波流量計1Aは血液導管120におけるいずれの位置に取り付けてもよいが、本実施形態では、動脈側ライン121の血液ポンプ130より上流側に超音波流量計1Aが取り付けられる。この位置に取り付けることで、ダイアライザ110による除水や注水の影響を受けにくいので、測定誤差を小さくできる。さらに言えば、超音波流量計1Aの取付部位は、動脈側気泡検知器121bよりも上流側の、動脈側接続部121aに近い位置とするのが望ましい。血管の接続部に近い部位に測定機器を装着することで、より生体の血流に近い測定値を得ることができる。
【0023】
なお、血液導管120(動脈側ライン121)は、超音波流量計1Aが取り付けられる部位において、流量の測定に影響を与える血液導管120内の気泡が滞留しないように液体の流れ方向が略鉛直となるように保持される。また、気泡が速やかに上昇できるように、液体の流れ方向における上流側を下部に、下流側を上部に配置することが望ましく、本実施形態においては、血液浄化装置100Aが実施する全工程のうち最も長い時間を要する治療工程で液体(血液)が流れる方向を基準に上流側及び下流側を決めればよい。
超音波流量計1Aの詳細については、後述する。
【0024】
静脈側ライン122は、一端側がダイアライザ110の血液導出口112bに接続される。静脈側ライン122には、静脈側接続部122a、静脈側気泡検知器122b、ドリップチャンバ122c、及び静脈側クランプ122dが配置される。
静脈側接続部122aは、静脈側ラインの他端側に配置される。静脈側接続部122aには、患者の血管に穿刺される針が接続される。
静脈側気泡検知器122bは、チューブ内の気泡の有無を検出する。
ドリップチャンバ122cは、静脈側気泡検知器122bよりも上流側に配置される。ドリップチャンバ122cは、静脈側ライン122に混入した気泡や凝固した血液等を除去するため、また、静脈圧を測定するため、一定量の血液を貯留する。
静脈側クランプ122dは、静脈側気泡検知器122bよりも下流側に配置される。静脈側クランプ122dは、静脈側気泡検知器122bによる気泡の検出結果に応じて制御され、静脈側ライン122の流路を開閉する。
【0025】
薬剤ライン123は、血液透析中に必要な薬剤を動脈側ライン121に供給する。薬剤ライン123は、一端側が薬剤を送り出す薬液ポンプ123aに接続され、他端側が動脈側ライン121に接続される。また、薬剤ライン123には不図示のクランプ手段が設けられており、薬剤を注入するとき以外は、クランプ手段により流路は閉鎖された状態である。本実施形態では、薬剤ライン123の他端側は、動脈側ライン121における超音波流量計1Aよりも下流側に接続される。
【0026】
排液ライン124は、ドリップチャンバ122cに接続される。排液ライン124には、排液ライン用クランプ124aが配置される。排液ライン124は、後述するプライミング工程でプライミング液を排液するためのラインである。
【0027】
以上のダイアライザ110、血液導管120及び血液ポンプ130によれば、対象者(透析患者)の動脈から取り出された血液は、血液ポンプ130により動脈側ライン121を流通してダイアライザ110の血液側流路に導入される。ダイアライザ110に導入された血液は、透析膜を介して後述する透析液導管140を流通する透析液により浄化される。ダイアライザ110において浄化された血液は、静脈側ライン122を流通して対象者の静脈に返血される。
【0028】
透析液導管140は、本実施形態では、いわゆる密閉容量制御方式の透析液ラインにより構成される。この透析液導管140は、透析液供給ライン141と、透析液導入ライン142と、透析液導出ライン143と、透析液排液ライン144と、を備える。
【0029】
透析液送液部150は、透析液チャンバ151と、バイパスライン152と、除水/逆ろ過ポンプ153と、を備える。
透析液チャンバ151は、一定容量(例えば、300ml〜500ml)の透析液を収容可能な硬質の容器で構成され、この容器の内部は軟質の隔膜(ダイアフラム)で区画され、送液収容部151a及び排液収容部151bに区画される。
バイパスライン152は、透析液導出ライン143と透析液排液ライン144とを接続する。
【0030】
除水/逆ろ過ポンプ153は、バイパスライン152に配置される。除水/逆ろ過ポンプ153は、バイパスライン152の内部の透析液を透析液排液ライン144側に流通させる方向(除水方向)及び透析液導出ライン143側に流通させる方向(逆ろ過方向)に送液可能に駆動するポンプにより構成される。
【0031】
透析液供給ライン141は、基端側が透析液供給装置(図示せず)に接続され、先端側が透析液チャンバ151に接続される。透析液供給ライン141は透析液チャンバ151の送液収容部151aに透析液を供給する。
【0032】
透析液導入ライン142は、透析液チャンバ151とダイアライザ110の透析液導入口113aとを接続し、透析液チャンバ151の送液収容部151aに収容された透析液をダイアライザ110の透析液側流路に導入する。
【0033】
透析液導出ライン143は、ダイアライザ110の透析液導出口113bと透析液チャンバ151とを接続し、ダイアライザ110から排出された透析液を透析液チャンバ151の排液収容部151bに導出する。
【0034】
透析液排液ライン144は、基端側が透析液チャンバ151に接続され、排液収容部151bに収容された透析液の排液を排出する。
【0035】
以上の透析液導管140及び透析液送液部150によれば、透析液チャンバ151を構成する硬質の容器の内部を軟質の隔膜(ダイアフラム)により区画することで、透析液チャンバ151からの透析液の導出量(送液収容部151aへの透析液の供給量)と、透析液チャンバ151(排液収容部151b)に回収される排液の量と、を同量にできる。
これにより、除水/逆ろ過ポンプ153を停止させた状態では、ダイアライザ110に導入される透析液の流量とダイアライザ110から導出される透析液(排液)の量とを同量にできる(
図3B参照)。
【0036】
また、除水/逆ろ過ポンプ153を逆ろ過方向に送液するように駆動させた場合には、透析液チャンバ151から排出された排液の一部がバイパスライン152及び透析液導出ライン143を通って再び透析液チャンバ151に回収される。そのため、ダイアライザ110から導出される透析液の量は、透析液チャンバ151に回収される量(即ち、透析液導入ライン142を流通する透析液の量)から、バイパスライン152を流通する透析液の量を減じた量となる。これにより、ダイアライザ110から導出される透析液の量は、バイパスライン152を通って再び透析液チャンバ151に回収される透析液(排液)の量分だけ、透析液導入ライン142を流通する透析液の流量よりも少なくなる。即ち、除水/逆ろ過ポンプ153を逆ろ過方向に送液するように駆動させた場合は、ダイアライザ110において、血液導管120に所定量の透析液が注入(逆ろ過)される(
図3A参照)。
【0037】
一方、除水/逆ろ過ポンプ153を除水方向に送液するように駆動させた場合には、透析液導出ライン143を流通する透析液の量は、透析液チャンバ151に回収される透析液の量(即ち、透析液導入ライン142を流通する透析液の量)に、バイパスライン152を流通する透析液の量を加えた量となる。これにより、透析液導出ライン143を流通する透析液の量は、バイパスライン152を通って透析液排液ライン144に排出される透析液(排液)の量分だけ、透析液導入ライン142を流通する透析液の量よりも多くなる。即ち、除水/逆ろ過ポンプ153を除水方向に送液するように駆動させた場合は、ダイアライザ110において、血液から所定量の除水が行われる(
図4及び5参照)。
【0038】
制御部160は、情報処理装置(コンピュータ)により構成され、制御プログラムを実行することにより、血液浄化装置1の動作を制御する。
具体的には、制御部160は、血液導管120及び透析液導管140に配置された各種のポンプやクランプ等の動作を制御して、血液透析装置100Aにより行われる各種工程、例えば、プライミング工程、脱血工程、治療工程、返血工程等を実行する。
【0039】
以下に、各種工程について、
図3〜
図6を参照して説明する。
【0040】
図3A及び3Bに示すプライミング工程は、ダイアライザ110及び血液導管120を洗浄し清浄化すると共に内部の空気を除去する準備工程である。
本実施形態では、プライミング工程として、
図3Aに示すプライミング両側工程と、
図3Bに示すプライミング循環工程を順に行う。
【0041】
プライミング両側工程では、
図3Aに示すように、排液ライン用クランプ124aを開状態にし、静脈側クランプ122dを開状態にする。また、動脈側接続部121aと静脈側接続部122aとは短絡状態にしておく。
【0042】
透析液チャンバ151に対して不図示の透析液供給装置は、例えば500ml/minの送液量で透析液を供給及び排出し、除水/逆ろ過ポンプ153を、逆ろ過方向に送液するように作動させる。除水/逆ろ過ポンプ153の送給量を400ml/minとすることで、透析液導入ライン142からダイアライザ110を介して血液導管120に400ml/minの逆ろ過透析液(プライミング液)が注入される。
血液ポンプ130を、血液導管120内の逆ろ過透析液をダイアライザ110側から動脈側接続部121a側に向けて200ml/minの送液量で送るように作動させる。
ダイアライザ110を介して血液導管120に注入された逆ろ過液は、それぞれ200ml/minの流量で血液導出口112bから静脈側ライン122に流れ、また血液導入口112aから動脈側ライン121に流れて、排液ライン124を通って排出される。
【0043】
続いて、プライミング循環工程では、
図3Bに示すように、排液ライン用クランプ124aを開状態から閉状態とし、透析液チャンバ151に対して不図示の透析液供給装置は500ml/minの送液量で透析液を供給及び排出した状態のまま、除水/逆ろ過ポンプ153を停止させる。また、送液方向を動脈側接続部121a側からダイアライザ110側に変えて200ml/minの送液量で血液ポンプ130を作動させる。
このようにして、逆ろ過透析液は200ml/minの流量で血液導管120内を循環する。
【0044】
次に
図4を参照して脱血工程について説明する。
脱血工程は、穿刺後に動脈側接続部121a及び静脈側接続部122aの両方から患者の血液を吸引して動脈側ライン121及び静脈側ライン122に血液を充填させる工程である。
【0045】
脱血工程では、
図4に示すように、動脈側接続部121a及び静脈側接続部122aは、それぞれ患者の血管に穿刺される針に接続され、排液ライン用クランプ124aは閉状態、静脈側クランプ122dは開状態である。
【0046】
透析液チャンバ151に対して不図示の透析液供給装置は500ml/minの送液量で透析液を供給及び排出し、除水/逆ろ過ポンプ153を、除水方向に送液するように作動させる。除水/逆ろ過ポンプ153の送給量を100ml/minとすることで、ダイアライザ110において、100ml/minの除水が行われる。
血液ポンプ130は40〜50ml/minの低流量で動脈側接続部121a側からダイアライザ110側に送液する。本実施形態においては50ml/minとする。
ダイアライザ110内には、血液導入口112aから50ml/minの流量で逆ろ過透析液、続いて血液が流入し、血液導出口112bから50ml/minの流量で逆ろ過透析液、続いて血液が流入する。また、逆ろ過透析液は、透析液導出口113bから導出される。このようにして、ダイアライザ110内及び血液導管120内は血液で充填される。
【0047】
次に
図5を参照して治療工程について説明する。
治療工程は、脱血工程に続いて約4時間行われ、動脈側接続部121aから導入される患者の血液は、動脈側ライン121を通ってダイアライザ110で浄化され、静脈側ライン122を通って静脈側接続部122aから患者に戻される。
【0048】
治療工程では、
図5に示すように、動脈側接続部121a及び静脈側接続部122aは、それぞれ患者の血管に穿刺される針に接続された状態であり、排液ライン用クランプ124aは閉状態、静脈側クランプ122dは開状態である。
【0049】
透析液チャンバ151に対して不図示の透析液供給装置は500ml/minの送液量で透析液を供給及び排出し、除水/逆ろ過ポンプ153を、除水方向に送液するように作動させる。除水/逆ろ過ポンプ153の送給量を一例として10ml/minとすることで、ダイアライザ110において、10ml/minの除水が行われる。
血液ポンプ130は、治療工程開始時の40〜50ml/minから例えば200ml/min程度まで流量を徐々に増加させ、動脈側接続部121a側からダイアライザ110側に血液を送出する。
ダイアライザ110内には、血液導入口112aから200ml/minの流量で血液が流入し、10ml/minの流量で除水されて、血液導出口112bから190ml/minの流量で導出される。また、逆ろ過透析液は、透析液導出口113bから導出される。
【0050】
次に
図6を参照して返血工程について説明する。
返血工程は、治療工程が終了後、血液導管120内及びダイアライザ110内の血液を患者の体内に戻す工程である。
【0051】
返血工程では、
図6に示すように、動脈側接続部121a及び静脈側接続部122aは、それぞれ患者の血管に穿刺される針に接続された状態であり、排液ライン用クランプ124aは閉状態、静脈側クランプ122dは開状態である。
【0052】
透析液チャンバ151に対して不図示の透析液供給装置は、例えば500ml/minの送液量で透析液を供給及び排出し、除水/逆ろ過ポンプ153を、逆ろ過方向に送液するように作動させる。除水/逆ろ過ポンプ153の送給量を100ml/minとすることで、ダイアライザ110において、100ml/minの注水が行われる。
血液ポンプ130は40〜50ml/minの低流量でダイアライザ110側から動脈側接続部121a側に送液する。本実施形態においては50ml/minとする。
ダイアライザ110内に注入された逆ろ過透析液は、それぞれ50ml/minの流量で、血液導入口112a及び血液導出口112bから流出し、動脈側接続部121a及び静脈側接続部122aに向かって流れる。このようにして、ダイアライザ110内及び血液導管120内の血液が患者の体内に戻される。
【0053】
以上説明したように、本実施形態においては、血液導管120内に逆ろ過透析液や血液等の液体が満たされた状態で、血液ポンプ130が停止して実流量がゼロとなる以下の3つのタイミングがある。(1)プライミング工程におけるプライミング両側工程からプライミング循環工程に移るタイミング(
図3A及び3B参照)、(2)プライミング循環工程から脱血工程に移るタイミング(
図3B及び4参照)、(3)治療工程から返血工程に移るタイミング(
図5及び6参照)の3つである。(1)及び(3)では、血液ポンプ130の送液方向が変わることにより、また、(2)では、穿刺する作業の間、血液ポンプ130が停止することにより、血液導管120内の実流量がほぼゼロとなるタイミングが生じる。本実施形態では、基準流量は流れのない流量がほぼゼロで基準流量を取得した場合として説明する。
【0054】
次に、本実施形態に係る超音波流量計1Aについて、
図1を参照しながら詳細に説明する。
超音波流量計1Aは、一対の超音波送受波器10A及び10Bと、液体の流量を測定する流量測定回路20Aと、を備え、血液浄化装置100Aが備える血液導管120に取り付けられる。
【0055】
超音波送受波器10A及び10Bは、それぞれ圧電素子11と、圧電素子カバー12とを含んで構成される。超音波送受波器10A及び10Bは、血液導管120を流れる液体の流れ方向について所定の距離をおいて配置されて血液導管120の外側に接触して斜めに対向して取り付けられ、超音波信号を送受可能である。
圧電素子11の両面には、それぞれ不図示の電極が取り付けられており、入力された電気信号を機械的振動に変換し、また、伝達された機械的振動を電気信号に変換して出力することができる。圧電素子11は、硬質ポリ塩化ビニルや変性ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネイト、アクリル等の樹脂により形成される圧電素子カバー12の内部に埋め込まれて配置される。圧電素子の材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛等の圧電セラミックス、酸化亜鉛等の圧電薄膜、フッ化ビニリデン等の圧電高分子膜等が適用可能である。本実施形態では、圧電素子の材料として、チタン酸ジルコン酸鉛を用い、電極として銀と白金を用いた。
【0056】
流量測定回路20Aは、送信部21と、受信部22と、送受信切替部23と、判定部24と、流量算出部25と、記憶部26と、較正流量算出部27と、を備える。流量測定回路20Aは、一対の超音波送受波器10A及び10Bで送受される超音波信号に基づいて、液体の流量を測定可能である。
【0057】
送信部21は、送受信切替部23を介して超音波送受波器10A又は10Bの圧電素子11に接続され超音波信号を送信する。
受信部22は、送受信切替部23を介して超音波送受波器10A又は10Bの圧電素子11に接続され超音波信号を受信し、受信した超音波信号を増幅する。
送受信切替部23は、超音波送受波器10A及び10Bの一方を送信部21に、他方を受信部22に切り替える。これにより、送受信切替部23は、超音波送受波器10Aから超音波信号を送信して超音波送受波器10Bで受信する時の伝搬時間と、超音波送受波器10Bから超音波信号を送信して超音波送受波器10Aで受信する時の伝搬時間とを測定可能としている。
【0058】
判定部24は、血液ポンプ130が停止して血液導管120を流れる液体の実流量がゼロとなるタイミングを判定する。
具体的には、判定部24は、血液浄化装置100Aの制御部160に接続され、制御部160から血液ポンプ130が停止するタイミング情報を受信する。このように実流量がゼロとなるタイミング情報を血液浄化装置100A側から取得することで、判定部24の回路構成を簡素化できる。また、判定部24を血液ポンプ130の流量設定値を受信するように構成して液体の実流量がゼロ以外、例えば血液ポンプの設定値が200mL/minに設定されて一定時間血液ポンプの設定値が変化せずに血液ポンプが動作した後、例えば10秒後に基準流量として取得するタイミングと判定するようにしてもよい。
【0059】
流量算出部25は、送信部21により送信された超音波信号及び受信部22により受信された超音波信号に基づいて流量を算出する。
【0060】
本実施形態においては、伝搬時間逆数差法又は伝搬時間差法を用いて以下のように流量Qを算出する。
超音波送受波器10A及び10Bは、液体の流れ方向に対して斜めに超音波信号を送受する。具体的には、超音波信号を送受する方向と液体の流れ方向とがなす角が所定の角度φとなるように血液導管120の外側に対向して配置され、交互に超音波信号を送受し、超音波信号の伝搬に要する時間を測定する。
【0061】
超音波送受波器10Aから10Bへ超音波信号が伝搬する時間をT
AB、超音波送受波器10Bから10Aへ超音波信号が伝搬する時間をT
BA、超音波信号の伝搬する距離をL、音速をC、血液導管120内の液体の流速をVとする。
血液導管120内に液体が満たされた状態で、実流量がゼロ、即ち流速Vがゼロの場合、T
ABとT
BAとは等しく、
T
AB=T
BA=L/C ・・・(a)
となる。
【0062】
〔伝搬時間逆差法により流量Qを測定する場合〕
図1に示すように液体が流速Vで超音波送受波器10A側から超音波送受波器10B側へ向かって流れる場合、
T
AB=L/(C+Vcosφ) ・・・(b)
となり、
T
BA=L/(C−Vcosφ) ・・・(c)
となる。これら(b)及び(c)式の関係からそれぞれの伝搬時間T
AB、T
BAの逆数の差を取ると、
1/T
AB−1/T
BA=(2Vcosφ)/L ・・・(d)
となる。(d)式から流速Vを求めると、
V=L/(2cosφ)×(1/T
AB−1/T
BA) ・・・(e)
となる。(e)式によれば、超音波信号の伝搬時間を測定することにより、流速Vが算出できる。
【0063】
(e)式においては、流速Vは温度依存性のある音速Cに依らないため、測定対象である液体の温度が変化してもその影響を受けずに流速Vを算出でき、その流速Vに血液導管120の断面積Aを乗じて流量Qを算出することができる。
Q=V×A ・・・(f)
【0064】
〔伝搬時間差法により流量Qを測定する場合〕
図1に示すように液体が流速Vで超音波送受波器10A側から超音波送受波器10B側へ向かって流れる場合、
T
AB=L/(C+Vcosφ) ・・・(b)
となり、
T
BA=L/(C−Vcosφ) ・・・(c)
となる。これら(b)及び(c)式の関係からそれぞれの伝搬時間T
AB、T
BAの差を取ると、流速Vの2乗は音速Cの2乗に比べて十分小さいので近似して、
T
AB−T
BA=(2LVcosφ)/(C
2−V
2cos
2φ)
≒(2LVcosφ)/C
2 ・・・(d)
となる。(d)式から流速Vを求めると、
V=C
2/(2Lcosφ)×(T
BA−T
AB) ・・・(e)
となる。(e)式によれば、超音波信号の伝搬時間を測定することにより、流速Vが算出できる。
【0065】
(e)式において、流速Vに血液導管120の断面積Aを乗じて流量Qを算出することができる。
Q=V×A ・・・(f)
【0066】
ところで、液体の実流量がゼロの場合、(a)及び(e)式より、理論上は算出される流速Vもゼロとなるはずある。しかしながら、流量算出部25により実流量がゼロの場合における流量Qを算出すると、超音波信号の伝搬時間T
AB及びT
BAに差が生じて実際にはゼロとはならず、Q=V
0×A=Q
0(≠0)が算出される。ここで、V
0はゼロ点流速、Q
0はゼロ点流量とする。
【0067】
ゼロ点流量Q
0がゼロとならない理由は、圧電素子11を有する超音波送受波器10A、10B、及び流量測定回路20A等の構成素子における製造上のばらつき、経時変化及び温度変化による影響、また、超音波送受波器10A及び10Bと血液導管120の表面との接触状態による影響等、いくつか考えられる。
本発明者らは、これら理由のうち超音波送受波器10A、10Bと血液導管120の表面との接触状態による影響が他の原因による影響よりも測定精度に与える影響が大きくなる可能性があることを見出した。
【0068】
さらに詳しく説明すると、前述したように血液導管120は軟質のチューブにより構成される。そのため、超音波送受波器10A、10Bと血液導管120の表面との接触部分に、超音波信号の伝達をよくするためにワセリン等をたとえ塗布したとしても、外部環境における温度や湿度の変化、また、血液導管120の内部を流れる流体の温度の変化等により、超音波送受波器10A、10Bと血液導管120の表面と接触状態が変化することが見出された。
【0069】
記憶部26は、判定部24により判定された実流量がゼロとなるタイミングにおいて流量算出部25により算出されるゼロ点流量Q
0を記憶可能である。前述した血液浄化装置100Aの実施工程において、血液ポンプ130が停止する等して実流量がゼロとなるタイミングは複数回生じる。それに応じてゼロ点流量Q
0も複数回算出される。
【0070】
較正流量算出部27は、流量算出部25により算出された算出流量Q及び記憶部26に記憶された直近のゼロ点流量Q
0に基づいてゼロ点較正した較正流量Q’を算出する。
具体的には、較正流量Q’は次式で求められる。
Q’=Q−Q
0・・・(g)
【0071】
以上説明した第1実施形態の超音波流量計1A及び血液浄化装置100Aよれば、以下のような効果を奏する。
【0072】
(1)超音波流量計1Aを、超音波送受波器10A及び10Bと、流量測定回路20Aと、を備え、流量測定回路20Aが、超音波信号を送信する送信部21と、超音波信号を受信する受信部22と、血液導管120を流れる液体の実流量を基準流量として取得するタイミングを判定する判定部24と、超音波送受波器10A及び10Bにより送受される超音波信号に基づいて流量を算出する流量算出部25と、判定部24により判定されたタイミングで流量算出部25により算出された基準流量Q
0を記憶する記憶部26と、流量算出部25により算出された算出流量Q及び記憶部26に記憶された直近の基準流量Q
0に基づいて較正流量Q’を算出する較正流量算出部27と、を備えるものとした。これにより、長時間に亘って流量を測定し、その測定環境が変化する場合であっても、所定のタイミングで適宜、基準流量Q
0を算出し、その値Q
0に基づいて較正流量Q’を算出できるので、測定誤差を小さくして測定精度を保つことができる。また、超音波送受波器10A及び10Bと血液導管120との接触面にワセリン等を塗布しなくても、測定精度を向上させることができるので、流量測定に要する手間を少なくすることができる。
【0073】
(2)血液浄化装置100Aが、血液ポンプ130を制御し液体の送液方向が異なる複数の工程を切り替える制御部160を備え、流量測定回路20Aにおける判定部24が、制御部160から血液ポンプ130が停止又は送液方向が変化するタイミング情報を受信することにより判定を行うものとした。これにより、実流量がゼロとなるタイミング情報を血液浄化装置100A側から取得することができるので、判定部24の回路構成を簡素化することができる。
【0074】
(3)超音波流量計1Aを、血液導管120を流れる液体の流れ方向について所定の距離をおいて配置される一対の超音波送受波器10A及び10Bを備えるものとした。これにより、測線が1本の簡易な構成で液体の流量を測定することができ、測線が複数本の構成に比べて製造コストを小さくすることができる。
【0075】
(4)流量測定回路20Aが、伝搬時間逆数差法により流量を算出した場合には、流速Vは温度依存性のある音速Cに依らないため、測定対象である液体の温度が変化してもその影響を受けずに流速Vを算出でき、その流速Vに血液導管120の断面積Aを乗じて流量Qを算出することができる。よって、音速Cに依存する伝搬時間差法(周知技術)により流量を算出する場合に比べて、測定誤差を小さくすることができる。
【0076】
(5)血液導管120(動脈側ライン121)が、超音波流量計1Aが取り付けられる部位において、液体の流れ方向が略垂直となるように保持されるものとした。これにより、血液導管120内の気泡が滞留しないようにできるため、気泡が流量の測定に与える影響を小さくできる。
【0077】
(6)血液導管120(動脈側ライン121)が、超音波流量計1Aが取り付けられる部位において、液体の流れ方向における上流側を下部に、下流側を上部になるように配置するものとした。これにより、流量測定部位における血液導管120内の気泡が速やかに上昇できるため、気泡が流量の測定に与える影響を小さくできる。
【0078】
<第2実施形態>
次に、
図7を参照しながら第2実施形態について説明する。
図7は、本発明の第2実施形態に係る血液浄化装置100B及び該装置に用いられる超音波流量計1Bの構成を示す説明図である。第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0079】
血液浄化装置100Bは、超音波流量計1Bと、ダイアライザ110と、血液導管120と、血液ポンプ130と、透析液導管140と、透析液送液部150、制御部160と、制御基板170と、を備える。
血液浄化装置100Bにおいて実施される各工程は、第1実施形態の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0080】
超音波流量計1Bは、一対の超音波送受波器10A及び10Bと、液体の流量を測定する流量測定回路20Bと、を備え、血液浄化装置100Bが備える血液導管120に取り付けられる。
【0081】
超音波送受波器10A及び10Bは、それぞれ圧電素子11と、圧電素子カバー12とを含んで構成される。超音波送受波器10A及び10Bは、血液導管120を流れる液体の流れ方向について所定の距離をおいて配置される。また、超音波送受波器10A及び10Bは、血液導管120の外側に接触して同じ側に取り付けられ、血液導管120において反射した超音波信号を送受可能である。
【0082】
流量測定回路20Bは、送信部21と、受信部22と、送受信切替部23と、判定部24と、流量算出部25と、記憶部26と、較正流量算出部27と、設定流量受信部28と、補正流量算出部29と、を備える。流量測定回路20Bは、一対の超音波送受波器10A及び10Bで送受される超音波信号に基づいて、液体の流量を測定可能である。
【0083】
設定流量受信部28は、判定部24により判定されたタイミングにおいてゼロ点流量Q
0を算出した後液体の流れが落ち着いた状態の血液ポンプ130の設定流量q
+0を制御部160から受信する。
【0084】
補正流量算出部29は、較正流量算出部27により算出された較正流量Q’、ゼロ点流量Q
0を算出した後液体の流れが落ち着いた状態(例えば、ゼロ点流量Q
0を算出し血液ポンプ130がある流量に設定された約1〜60秒後)において較正流量算出部27により算出された較正流量Q
+0’及び設定流量受信部28により受信した血液ポンプ130の設定流量q
+0に基づいて補正した補正流量Q’’を算出する。
具体的には、較正流量Q’に補正係数aを乗じることにより補正流量Q’’を算出する。
Q’’=a×Q’ ・・・(h)
ゼロ点流量Q
0を算出した後液体の流れが落ち着いた状態において、補正流量Q’’が設定流量q
+0となるように補正を行うので、Q’’=q
+0、Q’=Q
+0’である。これらを(h)式に代入すると、
q
+0=a×Q
+0’ ・・・(i)
が得られ、(h)式より補正係数aを求めると、
a=q
+0/Q
+0’ ・・・(j)
となる。(i)及び(j)式より、補正流量Q’’は以下の(k)式により算出できる。
Q’’=(q
+0/Q
+0’)×Q’ ・・・(k)
【0085】
制御基板170は、血液浄化装置100Bの本体内部に組み込まれており、流量測定回路20B及び制御部160を構成する回路が実装される。従って、流量測定回路20Bが備える判定部24及び設定流量受信部28と制御部160との信号の送受信を同一基板上で行うことができる。
【0086】
以上説明した第2実施形態の超音波流量計1B及びに血液浄化装置100Bよれば、上述の効果(1)〜(6)に加えて、以下のような効果を奏する。
【0087】
(7)超音波流量計1Bにおける流量測定回路20Bが、さらに、判定部24により判定されたタイミングにおいてゼロ点流量Q
0を算出した後液体の流れが落ち着いた状態の血液ポンプ130の設定流量q
+0を制御部160から受信する設定流量受信部28と、較正流量Q’、ゼロ点流量Q
0を算出した後液体の流れが落ち着いた状態において較正流量算出部27により算出された較正流量Q
+0’及び設定流量q
+0に基づいて補正した補正流量を算出する補正流量算出部29と、を備えるものとした。これにより、さらに測定誤差を小さくして測定精度を向上させることができる。
【0088】
(8)血液浄化装置100B備える制御基板170は、血液浄化装置100Bの本体内部に組み込まれており、流量測定回路20B及び制御部160を構成する回路が実装されるものとした。これにより、流量測定回路20Bが備える判定部24及び設定流量受信部28と制御部160との信号の送受信を同一基板上で行うことができるので、判定部24及び設定流量受信部28と制御部160間における情報の伝達の遅延を減少させることができ、流量の測定精度を向上させることができる。また、同一基板上に回路をまとめて実装することで、製造コストを低減させることができる。
【0089】
(9)一対の超音波送受波器10A及び10Bを、血液導管120を流れる液体の流れ方向について所定の距離をおいて配置し、血液導管120の外側に接触して同じ側に取り付けるものとした。これにより、一対の超音波送受波器を斜めに対向して配置する構成に比べて、超音波信号の伝搬する距離Lが長くなるので、測定対象である超音波信号の伝搬時間T
AB及びT
BAの測定精度を向上させることができる。よって伝搬時間T
AB及びT
BAに基づいて算出される流量の測定精度も向上させることができる。
【0090】
次に、第1実施形態で説明した超音波流量計1A及び血液浄化装置100Aを用いて、ゼロ点流量Q0を算出して較正した実施例の流量測定の結果と、較正しない場合の比較例の流量測定の結果について示す。
[実施例1]
血液ポンプ130で設定流量qを0〜400ml/minの範囲で変更しながら、逆ろ過透析液や血液の代替として、血液導管120に室温と同程度の温度25℃で一定に保った水を流した。超音波流量計1Aで測定された流量の測定結果と、実流量と見なせる設定流量qとを比較することにより、測定流量と実流量との相関関係を求めた。なお、測定の開始時に設定流量q=0の状態においてゼロ点算出流量Q
0を算出してから、較正流量Q’を算出した。
血液導管120としては、外径5.5mm、内径3.5mmのポリ塩化ビニルにより形成された軟質チューブを用いた。血液導管120に超音波流量計1Aを取り付ける際には、特にワセリン等は塗布せずに直接、超音波送受波器10A及び10Bを直接血液導管120の外側に取り付けた。
【0091】
送信部21は、例えば、セラミック振動子等を用いて数百kHz〜数MHzの発振回路で構成されており、受信部22は、受信した微弱な超音波信号による電圧を増幅する増幅回路で構成されている。
流量算出部25は、数MHz〜数GHz程度の高速なクロック信号を用いて、送信部21から超音波信号を送信した時刻(スタート時刻)と、受信部22が超音波信号を受信した時刻(ストップ時刻)との間の時間、即ち伝搬時間を計測するカウンタ回路を含んで構成されている。
【0092】
第1実施形態の伝搬時間差法を用いた場合において説明した(e)式によれば、流量に比例する流速Vは(T
BA−T
AB)に比例する。ここで、カウンタ回路におけるクロック信号のカウント数をN、周波数をFとすると、伝播時間Tは、N×Fで算出できる。従って、カウント数N
AB及びN
BAの差(N
BA−N
AB)は(T
BA−T
AB)に比例するので、流速Vは(N
BA−N
AB)に比例する。ここで、N
AB=T
AB/F、N
BA=T
BA/Fである。
【0093】
第1実施形態の伝搬時間差法を用いた場合において説明した(e)、(f)及び(g)式を用いて算出する較正流量Q’の代わりに、較正流量Q’に比例する較正後のカウント数N
AB及びN
BAの差(N
BA−N
AB)の測定結果を
図8に示した。
図8は、カウント数N
AB及びN
BAの差(較正あり)と実流量と見なせる血液ポンプ130の設定流量qとの関係を示したグラフである。
【0094】
図8に示すように、較正流量Q’に比例するカウント数N
AB及びN
BAの差(較正あり)と設定流量qにおける相関関係は、最小二乗法によれば相関関数R=0.9932となり、実流量と良好な相関性を示した。
【0095】
[比較例1]
流量の較正を行わない点以外は実施例1と同様の測定条件で、(e)及び(f)を用いて算出する算出流量Qの代わりに、算出流量Qに比例する較正なしのカウント数N
AB及びN
BAの差(N
BA−N
AB)の測定結果を
図9に示した。
図9は、カウント数N
AB及びN
BAの差(較正なし)と実流量と見なせる血液ポンプ130の設定流量qとの関係を示したグラフである。
【0096】
図9に示すように、算出流量Qに比例するカウント数N
AB及びN
BAの差(較正なし)と設定流量qにおける相関関係は、最小二乗法によれば相関関数R=0.9567となり、実施例1の結果と比較して相関性は低くなった。また、ゼロ点較正も行われていないため、測定誤差が大きくなった。
【0097】
[実施例2]
実施例1で測定した結果に基づいて、血液導管120を流れる水の温度が室温で一定に保たれた場合における較正流量Q’を算出してその測定精度αと設定流量qとの関係を
図10に示した。
測定精度αは、較正流量Q’、設定流量qを用いて次の(l)式により算出した。
α={(Q’−q)/q}×100 ・・・(l)
【0098】
図10に示すように、各設定流量qにおいて測定精度αは±5.0%以内を保っており、良好な測定精度を示した。
【0099】
[実施例3]
血液導管120を流れる水の温度が体温程度の約37℃で一定に保たれた場合における較正流量Q’を算出してその測定精度αと設定流量qとの関係を
図12に示した。なお、測定の開始時に水温約37℃、設定流量q=0の状態においてゼロ点算出流量Q
0を算出してから、較正流量Q’を算出した。
測定精度αは、前述した(l)式により算出した。
【0100】
図11に示すように、各設定流量qにおいて測定精度αは±7.0%以内を保っており、良好な測定精度を示した。
【0101】
[比較例2]
血液導管120を流れる水の温度が体温程度の約37℃で一定に保たれた場合における較正流量Q’を算出してその測定精度αと設定流量qとの関係を
図12に示した。なお、測定の開始時に水温が室温程度の約25℃、設定流量q=0の状態においてゼロ点算出流量Q
0を算出してから、水温を体温程度の約37℃に上昇させて一定に保った状態で設定流量qを50〜400ml/minの範囲で変更しながら、算出流量Qを算出した。
測定精度α’は、前述した(l)’式により算出した。
【0102】
図12に示すように、測定精度α’は±10.0%を超えて推移しており、良好な測定精度を保つことはできなかった。
【0103】
比較例2の結果により、超音波流量計1Aにおける超音波送受波器10A及び10Bと血液導管120の表面との接触状態が、血液導管120内を流れる液体の温度の変化により影響を受けることが示された。
【0104】
以上、本発明の超音波流量計及び血液浄化装置の好ましい各実施形態及び各実施例について説明したが、本発明は、上述した実施形態及び実施例に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、上述の実施形態では、血液浄化装置の一例として血液透析(HD)を行う透析装置を用いて説明したが、血液ろ過(HF)、血液ろ過透析(HDF)等の血液透析療法、血漿交換療法や血液吸着療法等にも適用可能である。
【0105】
また、超音波流量計における流量の算出方法について、一例として伝搬時間逆数差法を示したが、伝搬時間差法、シングアラウンド法、ドップラー法等の周知の算出方法を用いることができる。
【0106】
また、超音波流量計の血液導管への配置方法について、第1実施形態では一対の超音波送受波器を斜め対向させて配置させ、また、第2実施形態では一対の超音波送受波器を同じ側に取り付ける例を示したが、これに限らない。例えば、2対の超音波送受波器をそれぞれ斜めに対向させて取り付けてもよいし、超音波信号の送受を1つの超音波送受波器を用いて行う構成でもよい。
【0107】
また、超音波流量計の血液導管への配置位置は、第1実施形態及び第2実施形態の配置に限られず、超音波流量計のチューブへの装着のしやすさ等に依存する。例えば、超音波流量計は、
図2に示す、動脈側ライン121における薬剤ライン123と動脈側ライン121との接続部分よりも血液導入口112a側であってもよく、血液ポンプ130と動脈側気泡検知器121bとの間であってもよい。また、静脈側ライン122におけるドリップチャンバ122cと静脈側気泡検知器122bとの間であってもよく、静脈側クランプ122dと静脈側接続部122aとの間であってもよい。つまり、超音波流量計は、動脈側または静脈側の流量低下が検出可能な位置に配置されていればよい。
【0108】
また、第1実施形態において、血液浄化装置100Aの制御部160に、血液ポンプ130が治療工程中に停止するタイミングを意図的に生成させてもよい(例えば、1時間毎に約1〜30秒停止させる)。これにより、血液浄化中に流量ゼロの判定及び補正が可能となり、数時間を要する治療工程中であっても高い測定精度を保つことが可能となる。