【解決手段】管理作業の実施日時のデータと時系列的な稼働データとを記録するミシン10と、当該ミシンと通信を行って管理作業の実施日時のデータと時系列的な稼働データとを取得し記憶する管理装置101とを備える管理システム100において、複数の管理作業の実施日時によって区切られる複数の実施区間における稼働データの積算値に基づいて、管理作業を実施すべき時期の基準となる判断値を求める実施時期決定部105と、稼働データの積算値の判断値への接近又は到達により、管理作業を実施すべき時期であることを報知する報知部31とを備えている。
管理作業の実施日時のデータと時系列的な稼働データとを記録するミシンと、当該ミシンと通信を行って前記管理作業の実施日時のデータと前記時系列的な稼働データとを取得し記憶する管理装置とを備える管理システムにおいて、
複数の前記管理作業の実施日時によって区切られる複数の実施区間における前記稼働データの積算値に基づいて、前記管理作業を実施すべき時期の基準となる判断値を求める実施時期決定部と、
前記稼働データの積算値の前記判断値への接近又は到達により、前記管理作業を実施すべき時期であることを報知する報知部とを備えることを特徴とする管理システム。
前記実施時期決定部は、前記複数の実施区間における前記稼働データの積算値の平均値から標準偏差を減じて前記判断値を求めることを特徴とする請求項1に記載の管理システム。
前記ミシンと前記管理装置は、近距離無線通信により前記管理作業の実施日時のデータと前記時系列的な稼働データの送受信を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の管理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ミシンは、耐久性の問題や老朽化の問題により、ミシンの故障や不具合が発生した場合、修理箇所の特定や部品交換などの作業を行っている間は、ミシンによる生産が停止するため稼働率が低下し生産性を落としてしまう。
そのため、部品交換等のメンテナンス作業が必要な時期を予測し、余裕を持ってメンテナンス作業を実施したいという要請があった。
【0005】
本発明は、メンテナンス等の管理作業が必要な時期を予測して報知することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、
管理作業の実施日時のデータと時系列的な稼働データとを記録するミシンと、当該ミシンと通信を行って前記管理作業の実施日時のデータと前記時系列的な稼働データとを取得し記憶する管理装置とを備える管理システムにおいて、
複数の前記管理作業の実施日時によって区切られる複数の実施区間における前記稼働データの積算値に基づいて、前記管理作業を実施すべき時期の基準となる判断値を求める実施時期決定部と、
前記稼働データの積算値の前記判断値への接近又は到達により、前記管理作業を実施すべき時期であることを報知する報知部とを備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の管理システムにおいて、
前記実施時期決定部は、前記複数の実施区間における前記稼働データの積算値の平均値から標準偏差を減じて前記判断値を求めることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の管理システムにおいて、
前記ミシンは、複数種類の前記管理作業について実施日時のデータを記録し、
前記実施時期決定部は、前記複数種類の管理作業ごとに前記判断値を求めることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の管理システムにおいて、
前記ミシンは、複数種類の時系列的な稼働データを記録し、
前記実施時期決定部は、前記複数種類の時系列的な稼働データごとに前記判断値を求めることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の管理システムにおいて、
前記ミシンと前記管理装置は、近距離無線通信により前記管理作業の実施日時のデータと前記時系列的な稼働データの送受信を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項6記載の発明は、
管理作業の実施日時のデータと時系列的な稼働データを記録すると共に管理装置と通信を行うミシンにおいて、
前記管理装置との通信時に、当該管理装置から前記管理作業を実施すべき時期を報知するための判断値を取得し、
前記稼働データの積算値の前記判断値への接近又は到達により、前記管理作業を実施すべき時期であることを報知する報知部を備えることを特徴とする。
【0012】
請求項7記載の発明は、
管理作業の実施日時のデータと時系列的な稼働データとを記録するミシンから前記管理作業の実施日時のデータと前記時系列的な稼働データを取得する管理装置において、
複数の前記管理作業の実施日時によって区切られる複数の実施区間における前記稼働データの積算値に基づいて、前記管理作業を実施すべき時期の基準となる判断値を求める実施時期決定部を備え、
前記ミシンに対して前記判断値を通信により送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記構成により、稼働データが積算される過程で、メンテナンス等の管理作業が必要な時期を予測して報知することができ、適度なタイミングで管理作業の実施を促すことが出来、熟練による判断を要することなく、また、管理作業の実施タイミングを看過することも抑制して、管理作業を行うことが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[管理システムの概略構成]
以下、本発明の実施の形態である管理システム100について
図1乃至
図10に基づいて説明する。
図1は管理システム100の概略構成を示すブロック図である。
図1に示すように、管理システム100は、管理対象となる複数のミシン10,10Aと、これら各ミシン10,10Aから取得した複数の稼働データを収集する管理装置101とを備えている。
上記管理装置101は、具体的には、コンピューターを内蔵するタブレット端末から構成される場合を例示する。
そして、管理装置101は、近距離無線通信技術である(NFC: Near Field Communication)を利用して各ミシン10,10Aから稼働データの収集を行っている。
【0016】
[ミシン]
図2はミシン10を含む管理システム100の概略構成を示すブロック図である。
ミシン10は、縫製の駆動源となるミシンモーター11と、縫い糸の切断を行う糸切りメスを駆動させるメス駆動ソレノイド14と、縫製速度と糸切りの入力操作を行う操作ペダル13と、所定の画面表示と各種の入力が可能な操作パネル22と、後述する各種の処理を実行するためのプログラムが記憶されたプログラムメモリ32と、当該各種のプログラムを実行するCPU31と、CPU31の処理に関するデータを一時的に格納するRAM33と、近距離無線通信装置としてのNFCタグ34と、針数を検出するためにミシンモーター11による上軸回転数を検出するエンコーダー35と、フラッシュメモリー、EPROM又はEEPROM等の不揮発性のデータメモリ37とを備えている。
【0017】
なお、ミシン10Aはミシン10と機種の異なるミシンであり、主な構成はミシン10と同一なので、
図2では図示を省略している。
【0018】
上記ミシン10は、操作ペダル13の前踏み動作により、その踏み込み量に応じてミシンモーター11の回転速度(縫製速度)が制御され、後踏み動作により、メス駆動ソレノイド14が駆動されて糸切り動作が実行される。
【0019】
NFCタグ34は、後述するミシン10の各種のデータを管理装置101に送信するための無線通信装置である。このNFCタグ34は、管理装置101が備えるNFCリーダー/ライター107が近づけられると、信号を検知し、各種のデータをNFCリーダー/ライター107に送信する。
【0020】
プログラムメモリ32には、稼働データ記録プログラム32aと管理作業実行報知プログラム32bが格納されている。これらのプログラム32a,32bによって行われる処理又は制御内容の詳細については後述する。
【0021】
[管理装置]
管理装置101は、画面表示と入力操作を行うことができるタッチパネル式の表示部103と、後述する各種の処理を実行するための各種のプログラムが記憶されたプログラムメモリ104と、各種のプログラムを実行するCPU105と、CPU105の処理に関する各種データのワークエリアとなるRAM106と、ミシン10,10AのNFCタグ34と通信を行うNFCリーダー/ライター107と、NFCリーダー/ライター107を介して各ミシン10,10Aから受信した管理作業の実施日時のデータと稼働データを格納する記憶手段としてのフラッシュメモリー、EPROM又はEEPROM等の不揮発性のデータメモリ108とを備えている。
【0022】
上記NFCリーダー/ライター107は、ミシン10,10Aが備えるNFCタグ34に対して、数センチ又は数十センチの距離内で受信可能な検知信号を送信し、NFCタグ34側で検知信号を受信して通信が確立すると、ミシン10に対して各種データの送受信を行う。
【0023】
プログラムメモリ104には、管理作業の実施時期決定プログラム104aが格納されている。
なお、このプログラムメモリ104は、書き換え可能な不揮発性のメモリである。管理装置101は、外部のネットワークと通信を行う図示しない通信インターフェイスを備え、プログラムメモリ104に記録するプログラムの追加インストールや削除が可能となっている。
【0024】
[管理装置とミシンの間で行われる処理]
ミシン10は、メンテナンス等の管理作業をある程度の期間毎に実施する必要がある。管理作業としては、内部清掃(Cleaning)、縫い針交換(Needle Change)、潤滑油給油(Oil Add)、フック交換(hook Change)等が挙げられる。
ミシン10では、主電源の投入中は、稼働データ(針数、ミシンの通電時間、ミシンモーターの駆動時間、糸切り回数等)の検出が行われているので、管理装置101は、複数回実施された管理作業ごとの間隔(すなわち実施区間)で積算された稼働データ(針数、ミシンの通電時間、ミシンモーターの駆動時間、糸切り回数等)の積算値から、次の管理作業を行うのに適した稼働データの積算値を判断値として求める。
ミシン10は、管理装置101から判断値を取得し、稼働データの積算値を判断値に照らして管理作業の実施時期の到来を判断し、実施時期となる場合にその操作パネル22の表示部にて管理作業を実施すべき時期であることを報知する。
なお、ミシン10Aについてもミシン10と同一の処理が行われるが記載が重複するのでミシン10Aについては説明を省略する。
【0025】
上記管理装置101とミシン10の間で行われる処理について、管理装置101が実施時期決定プログラム104aに基づいて行う処理と、ミシン10が稼働データ記録プログラム32a及び管理作業実行報知プログラム32bに基づいて行う処理とを
図3に示すフローチャートに基づいて詳細に説明する。
なお、管理装置101のCPU105は、前述した実施時期決定プログラム104aを実行することにより、
図3のフローチャートのステップS1〜S11までの処理を実行する。
また、ミシン10のCPU31は、前述した稼働データ記録プログラム32aを実行することにより、
図3のフローチャートのステップT1〜T5までの処理を実行し、前述した管理作業実行報知プログラム32bを実行することにより、
図3のフローチャートのステップT7〜T11までの処理を実行する。
【0026】
まず、管理装置101側において、管理設定項目及び管理パラメータの設定が行われる(ステップS1)。この処理において、管理装置101のCPU105は、その表示部103に、
図4に示す予兆管理編集画面の表示を行う。
この予兆管理編集画面における入力欄K1から、管理者は管理設定項目として前述した管理作業を入力する。
図4では「縫い針交換(Needle Change)」を入力した状態を例示している。
【0027】
さらに、予兆管理編集画面における選択欄K2から、管理者は、管理パラメータとして、前述した稼働データの中から「縫い針交換(Needle Change)」に関連づけるものを選択することができる。
図4では「針数」と「駆動時間」を選択した状態を例示している。
なお、ここでは、管理作業に対して稼働データ(針数、ミシンの通電時間、ミシンモーターの駆動時間、糸切り回数)の中から任意のものを選択することができる場合を例示しているが、各管理作業に対して適切な稼働データが予め定められていても良い。
【0028】
管理装置101側において、管理設定項目及び管理パラメータの設定が行われると、CPU105は、設定された管理設定項目及び管理パラメータをミシン10に送信する(ステップS3)。この通信は、管理装置101のNFCリーダー/ライター107をミシン10のNFCタグ34に接近させることで行うことができる。
【0029】
管理装置101から管理設定項目及び管理パラメータを受信すると(ステップT1)、ミシン10のCPU31は、管理設定項目に設定された管理作業の実施日時と当該管理作業の管理パラメータとして選択された稼働データの積算を開始する(ステップT3)。
【0030】
即ち、ミシン10は、前述したように、主電源の投入中は稼働データとして針数、ミシンの通電時間、ミシンモーターの駆動時間、糸切り回数の検出が行われている。
そして、ミシン10のCPU31は、管理装置101から管理設定項目を受信すると、その管理作業の毎回の実施日時を記録し、毎回の管理作業の実施日時によって区切られる複数の実施区間における稼働データの積算値の記録を行う。
【0031】
まず、ミシン10のCPU31は、管理作業の毎回の実施日時を記録する必要があるが、管理作業の実施は検出することができないので、操作パネル22の表示部に、
図5に示す予兆管理機能の実施入力画面を表示し、管理作業の実施時に、ミシンの管理者(あるいは管理作業を実施した者)によって実施入力画面から実施したことを入力させる。
図5の実施入力画面では、ミシン10に対して、管理設定項目として、内部清掃(Cleaning)、縫い針交換(Needle Change)、潤滑油給油(Oil Add)の三つが設定されている状態を示し、これらのいずれかの管理作業を実施した場合には、該当する管理作業のクリアキーM1にタッチして入力を行う。
ミシン10のCPU31は、この入力操作が行われた日時を管理作業の実施日時として記録する。また、クリアキーM1が入力されると、前回の入力から今回の入力までの期間の当該管理作業について管理パラメータに設定されている稼働データについて積算値を求めて記録すると共に、当該稼働データの積算値をリセットして新たに積算を開始する。
これにより、毎回の管理作業が実施される度に、直前の管理作業から当該管理作業までの稼働データの積算値を求めることができる。
例えば、
図4の例のように、縫い針交換(Needle Change)の管理パラメータとして「針数」と「駆動時間」が設定されている場合には、毎回の縫い針交換について、直前の縫い針交換から何回の針落ちが行われ、どの程度の駆動時間でミシンモーター11の駆動が行われたかが記録される。
【0032】
一方、管理装置101からは、ミシン10が記録している管理設定項目及び管理パラメータを要求することができる(ステップS5)。この要求の際には、管理装置101のCPU105は、その表示部103に、
図6に示す予兆管理画面の表示を行う。
この予兆管理画面における要求ボタンK3の入力操作により、管理者は管理設定項目及び管理パラメータの要求コマンドを管理装置101からミシン10へ送信する。
この通信も、管理装置101のNFCリーダー/ライター107をミシン10のNFCタグ34に接近させることで行うことができる。
【0033】
管理装置101から管理設定項目及び管理パラメータの要求コマンドを受信すると、ミシン10のCPU31は、これまでに記録した管理作業の実施日時と稼働データの積算値を送信する(ステップT5)。
これにより、管理装置101は、ミシン10から管理作業の実施日時と稼働データの積算値を受信し、データメモリ108に格納する(ステップS7)。
図7は複数のミシン10又は10Aから管理作業の実施日時と稼働データの積算値を受信して、それらをデータメモリ108に格納している場合の予兆管理画面を示している。
この予兆管理画面では、各ミシン10又は10Aごとに、これらを識別する識別子とミシンの機種名と稼働データの積算値の受信日時と後述する判断値の送信ボタンをリスト表示している。
そして、
図7の予兆管理画面においてリスト表示されているミシンの識別子のいずれかを選択入力すると、選択されたミシンについて、
図8に示す予兆管理状態確認画面を表示する。
【0034】
管理装置101は、ステップS7において、ミシン10から管理作業の実施日時と稼働データの積算値を取得すると、CPU105が、稼働データの積算値から管理作業を実施すべき時期の基準となる判断値の算出を実行する(ステップS9)。
CPU105が実行する判断値の算出処理について、前述の
図8及び
図9の説明図に基づいて説明する。
図8に示す予兆管理状態確認画面では、管理設定項目として「内部清掃(Cleaning)」、「縫い針交換(Needle Change)」、「潤滑油給油(Oil Add)」、「フック交換(Hook Change)」が設定されており、「内部清掃」の管理パラメータは「針数」及び「駆動時間」、「縫い針交換」の管理パラメータは「針数」、「潤滑油給油」の管理パラメータは「通電時間」及び「駆動時間」、「フック交換」の管理パラメータは「通電時間」及び「駆動時間」が選択されている場合を例示している。
そして、
図8に示す予兆管理状態確認画面では、各管理作業の実施回数と、各管理パラメータの最頻値と判断値とデータ取得時の現在の積算値とを示している。
【0035】
ここで、CPU105が実行する、管理設定項目「内部清掃」の管理パラメータ「針数」についての判断値の算出方法を例に説明する。
図9に示すように、管理装置101は、ステップS7におけるミシン10から管理作業の実施日時と稼働データの積算値の取得により、複数回の「内部清掃」の実施日時における直前の実施日時からの実施区間ごとに「針数」の積算値を得ている。なお、
図8では「内部清掃」の実施回数が30回となっているが、
図9では説明のために一部データを省略し、簡略化を図っている。
【0036】
そして、CPU105は、各実施区間の「針数」の積算値を昇順で並び替え、さらに、それぞれの積算値の数値を丸めている。数値を丸める処理としては、例えば、上から3桁目に対する四捨五入を行っている。なお、四捨五入の桁数は積算値の桁数に応じて適宜変更してもよい。
数値を丸める処理によって、積算値は一致する数値が得られるので、当該丸められた数値に基づいて発生頻度(度数)を求めることができる。
なお、発生頻度(度数)を求めるためには、数値を丸める処理に限らず、針数の数値範囲を一定の数値幅で複数の帯域に分けて、各帯域に属する「針数」の積算値の個数を発生頻度(度数)としても良い。
【0037】
次に、発生頻度(度数)が最大となる「針数」の積算値(丸められた数値)を求める。
図9の例では、発生頻度が「5」となる針数の積算値「2000」が該当する。
そして、CPU105は、丸めることにより針数の積算値が「2000」となる数値範囲(最頻値区間とする)に属する五つの針数の積算値(
図9の19632,19654,19658,20157,20178)について、平均値及び標準偏差を算出する。
平均値は「19855.8」、標準偏差は「254.7」となる。これらにより、確率変数が0±σとなる範囲の最小値を判断値として算出する(σは標準偏差)。
つまり、判断値=平均値−標準偏差=19855.8−254.7=19601.1≒19601と算出される。
【0038】
そして、管理装置101のCPU105は、算出された判断値をミシン10に送信する(ステップS11)。
判断値の送信は、前述した
図7の予兆管理画面においてリスト表示されているミシンの
図7の予兆管理画面において各ミシンごとの判断値の送信ボタンM2を入力操作することにより実行される。
この場合の通信も、管理装置101のNFCリーダー/ライター107をミシン10のNFCタグ34に接近させることで行うことができる。
そして、管理装置101のCPU105では、判断値のミシン10への送信により、一連の処理を終了する。
【0039】
一方、ミシン10のCPU31は、判断値を受信すると(ステップT7)、それ以降は、当該管理パラメータである稼働データについてその積算値と判断値とを比較し、積算値が判断値に達していない間は同判定を繰り返し実行する(ステップT9)。
そして、積算値が判断値に達すると、ミシン10のCPU31は、該当する管理作業を実施すべき時期であることを報知する(ステップT11)。例えば、ミシン10の操作パネル22において縫製時に表示される
図10の縫製画面中に、報知表示M3を表示する。報知表示M3は、各管理作業毎に割り当てられた色彩のマークを点灯又は点滅させる表示でも良いし、文字情報で表示してもよい。また、音声で報知を行っても良い。
そして、ミシン10のCPU31では、管理作業の実施を報知して、一連の処理を終了する。
【0040】
[管理システムにおける技術的効果]
上記管理システム100では、管理装置101のCPU105が、複数の管理作業の実施日時によって区切られる複数の実施区間における稼働データの積算値に基づいて、管理作業を実施すべき時期の基準となる判断値を求める実施時期決定部として機能し、ミシン10のCPU31が、稼働データの積算値の判断値への到達により、管理作業を実施すべき時期であることを報知する報知部として機能する。
これにより、稼働データが積算される過程で、適度なタイミングで管理作業の実施を促すことが出来、熟練による判断を要することなく、また、管理作業の実施タイミングを看過することも抑制して、ミシンの故障前に管理作業を行うことが可能となる。
【0041】
また、管理装置101のCPU105は、複数の実施区間における稼働データの積算値の平均値から標準偏差を減じて判断値を算出しているので、過去に高頻度で実施された管理作業のタイミングに近いタイミングで実施を促すことが出来、より適切に管理作業を実施させることが可能となる。
また、上記平均値を算出する稼働データの複数の積算値は、最頻値区間に属する積算値とすることから、外れ値の影響を排除することができ、不適切なタイミングへのシフトを抑制し、さらに適切に管理作業を実施させることが可能となる。
【0042】
また、ミシン10は、複数種類の管理作業について実施日時のデータを記録するので、管理装置101のCPU105は、複数種類の管理作業ごとに判断値を求めることができる。
これにより、ミシン10において必要な複数の管理作業を適切なタイミングで実施させることが可能となる。
【0043】
また、ミシン10では、各管理作業について複数種類の時系列的な稼働データを記録することができ、管理装置101のCPU105は、複数種類の時系列的な稼働データごとに判断値を求める処理を実行する。
この場合、各管理作業について最も適切な稼働データを選択し、管理作業を適切なタイミングで実施させることが可能となる。
なお、一つの管理作業について複数の稼働データが選択されている場合、いずれか一つの稼働データから判断値を定めても良い。
また、各稼働データについて求められた判断値が示すタイミングで管理作業の実施を個別に判断すると共に、積算値が判断値に達した稼働データが増えるにつれて、管理作業を実施すべき時期であることの報知の緊急性を段階的に高めるように報知しても良い。
あるいは、報知の実行を判断値への接近ならびに超過の度合いによって、管理作業を実施すべき時期であることの緊急性を段階的に高めるように報知しても良い。それにより、他の管理作業と時期を合わせて実施することができたり、管理作業に必要な部品の手配を行うことができる。
【0044】
また、ミシン10と管理装置101は、NFCのような近距離無線通信により管理作業の実施日時のデータと時系列的な稼働データの送受信を行っているので、通信装置の構成の簡易化、低コスト化を図ることが可能となる。
【0045】
[その他]
また、上記実施形態では、各々のミシン10について個別に管理作業とその管理パラメータとなる稼働データの管理を行う場合を例示したが、例えば、機種が同一のミシンについては、管理作業とその管理パラメータとなる稼働データが一致する場合には、これらを一括してまとめ、そこから当該管理作業における判断値を算出しても良い。
判断値の算出は、管理作業と管理作業の間の実施区間における稼働データの積算値のデータ数が多い程、判断値を適切に求めることができるので、機種が同一のミシンについて一括管理することで、上記積算値をより数多く収集することができ、判断値のさらなる適正化を図ることが可能となる。
【0046】
また、上記管理システム100のミシン10,10Aとしては、あらゆるタイプのミシンを対象とすることができる。
これに伴い、管理作業は、上記実施形態に示したものに限らず、期間をあけて行う必要があるあらゆるメンテナンス作業を対象とすることが可能である。また、これらに関連づけられる管理パラメータとしての稼働データとしても、上記実施形態に示したものに限らず、ミシンにおいて検出し、積算可能なあらゆる対象の検出値を稼働データとすることができる。
また、管理装置101は、タブレット端末に限らず、いわゆるスマートフォンやパーソナルコンピューター等の情報処理端末であっても良い。
【0047】
また、管理装置101とミシン10との間の通信は、NFC以外の近距離無線通信方式を採用しても良いし、また、無線LANを採用しても良い。
【0048】
また、複数の管理装置101がそれぞれ取得した管理作業の実施日時と稼働データの積算値を、さらに1つの管理装置へ一括してまとめ、そこから判断値を算出しても良い。