特開2019-76679(P2019-76679A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社メディテックジャパンの特許一覧

特開2019-76679酸化エチレンガス滅菌器の廃ガス処理装置
<>
  • 特開2019076679-酸化エチレンガス滅菌器の廃ガス処理装置 図000007
  • 特開2019076679-酸化エチレンガス滅菌器の廃ガス処理装置 図000008
  • 特開2019076679-酸化エチレンガス滅菌器の廃ガス処理装置 図000009
  • 特開2019076679-酸化エチレンガス滅菌器の廃ガス処理装置 図000010
  • 特開2019076679-酸化エチレンガス滅菌器の廃ガス処理装置 図000011
  • 特開2019076679-酸化エチレンガス滅菌器の廃ガス処理装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-76679(P2019-76679A)
(43)【公開日】2019年5月23日
(54)【発明の名称】酸化エチレンガス滅菌器の廃ガス処理装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/20 20060101AFI20190426BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20190426BHJP
   C07C 31/20 20060101ALI20190426BHJP
   C07C 29/10 20060101ALI20190426BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20190426BHJP
   A61L 101/44 20060101ALN20190426BHJP
【FI】
   A61L2/20 104
   B01D53/94 280
   C07C31/20 A
   C07C29/10
   C07B61/00 300
   A61L101:44
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-219504(P2017-219504)
(22)【出願日】2017年10月26日
(71)【出願人】
【識別番号】301000871
【氏名又は名称】株式会社メディテックジャパン
(72)【発明者】
【氏名】景山 圭祐
(72)【発明者】
【氏名】村上 修一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 逸樹
(72)【発明者】
【氏名】小野 耕司
(72)【発明者】
【氏名】真木 俊久
(72)【発明者】
【氏名】真木 基允
【テーマコード(参考)】
4C058
4D148
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4C058AA12
4C058BB07
4C058JJ15
4C058JJ29
4D148AA17
4D148AB03
4D148BA46X
4D148CC40
4D148CD08
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC41
4H006BA66
4H006BA72
4H006BD84
4H006BE60
4H006FE11
4H006FG24
4H039CA60
4H039CF90
(57)【要約】      (修正有)
【課題】廃ガスに含まれる酸化エチレンガスの除去性能に優れた処理装置の提供。
【解決手段】滅菌処理後の廃ガスに含まれる酸化エチレンガスを除去する廃ガス処理装置5であって、一旦貯蔵するタンク4、及びタンクを通過した廃ガス中の酸化エチレンガスを分解するための処理槽2が接続されている廃ガス処理装置5。前記の処理方法と滅菌処理後の廃ガスに含まれる酸化エチレンガスを除去する廃ガス処理装置を組み合わせることにより、酸化エチレンガスが完全分解される方法。処理槽2内には触媒が入っており、触媒が液体酸及び固体酸であり、好ましくは固体酸である、酸化エチレガス含有廃ガスの処理装置5。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
滅菌処理後の廃ガスに含まれる酸化エチレンガスを除去する廃ガス処理装置であって、廃ガスを単体もしくは複数のタンクに一旦貯蔵し、単体もしくは複数の処理槽を通過させることによって、廃ガス中の酸化エチレンガスを分解することを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記処理槽には触媒であって、固体酸である薬液が入っていることを特徴とする処理装置。
【請求項3】
前記請求項1から前記請求項2に記載の方法を組み合わせることによって、酸化エチレンガスが完全分解される方法。
【請求項4】
前記請求項1から前記請求項3を制御する制御装置を組合せることによって、酸化エチレンガスが完全分解される方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化エチレンガス(以下EOGとする)滅菌器の廃ガスを加水分解して毒性の少ないエチレングリコール(以下EG)に変化させることにより、廃ガスに含まれるEOGの濃度を低減するEOG滅菌器の廃ガス処理装置および処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療の安全性の保証に関する重要な項目に滅菌保証がある。医療の高度化に伴い医療現場で使用される医療用具の滅菌保証が従来よりも強く要求されつつある。滅菌法としては、EOG滅菌法、薬剤滅菌法、高圧蒸気滅菌法、放射線滅菌法などが挙げられ、医療用具の材質に応じて最適な滅菌法が採用される。現在、医療用具としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、シリコーン、ポリ塩化ビニルなどを素材とするディスポーザブル製品が汎用されている。素材の損傷が少ないこと、操作がきわめて容易であること、幅広い菌スペクトルに対して有効であることなどの理由から、上記滅菌法の中でもEOG滅菌法が主流である。
【0003】
しかしながら、酸化エチレンガス(以下、EOGと略記することがある)は、細菌や微生物に有効である反面、作業者の身体に及ぼす影響も皆無ではない。特にEOGは、皮膚、粘膜の一過性あるいは長期にわたる損傷を引き起こすことが懸念されている(たとえば、高島征助「酸化エチレンの気管上皮への影響に関する実験的研究」、耳鼻臨床、補柵11:1〜25,1987)。
【0004】
また、東京都、大阪府、埼玉県などの自治体では、医療施設や医療用具の製造施設に対して、大気中に排出するEOGに対して極めて厳しいゼロ規制を施行しており、早晩、全国的な規制に拡大されることは必至である。
【0005】
国内の大規模な医療施設などでは、EOGを何らかの方法で分解処理している。EOGを分解処理する代表的な方法としては、EOGを炭酸ガスと水に分解する接触分解法が挙げられる。最も一般的な接触分解法は、金属製あるいはセラミック製の両端が解放された筒状の反応器内に五酸化バナジウムなどの強固な固体触媒を充填し、EOGを反応器内に導入し電気ヒーターで250〜350℃に加熱するという方法である。なお、接触分解法では、触媒活性が経時的に低下することが知られており触媒を適宜交換する必要がある。しかしながら、接触触媒法で用いられる触媒は高価であるため頻繁に交換することは現実的には難しい。また、接触触媒法による廃ガス処理装置は、廃ガスを大量の空気で希釈するので、装置が大型化し、また、触媒を加熱して活性温度にするために大量の熱を放出する。このため、設置場所が制限されるので、産業向け以外に一般の病院施設に設置するのは困難であった(特許文献1)。
【0006】
一方、本発明者らは、硫酸を用いてEOGをEGに加水分解する分解法を検討してきた。前記硫酸は水溶液にして用いる。EOGは、沸点が12.5℃の気体であり、爆発限界はごく低濃度(3%)〜ほぼ100%と極めて広く、火源があれば爆発する危険性は極めて高い。EOGを扱うに際しては引火、爆発に細心の注意を払う必要があるが、硫酸を用いた加水分解法は常温・常圧下で操作可能であるため安全性が高い。なお、加水分解法は、用いる硫酸水溶液の容積にもよるが、一定期間処理を行うと硫酸水溶液のpHが上昇するとともにEOGの分解率が低下することが確認されている。そのため、一定期間処理を行った硫酸水溶液は交換する必要があり、交換のたびに大量の硫酸水溶液を廃棄処理しなければならない問題があった。
【0007】
従来、EOG滅菌器に使用されるガスは取扱いしやすいようにEOGと炭酸ガスを混合させた混合ガスを使用している。このため、滅菌後の廃ガスの処理は、一般に燃焼炉を用いた燃焼処理、触媒を用いて燃焼させる触媒燃焼処理、薬液を用いた加水分解処理のいずれかで行っている。
【0008】
しかしながら、EOG滅菌器で滅菌処理した廃ガスは、最初に排出される廃ガスは高濃度の酸化エチレン(以下、EOとする)であるが、エアレーション運転中に排出される廃ガスは低濃度であるため、前記処理では高濃度の廃ガスの処理は効率よく経済的に行うことができるが、低濃度の廃ガスの処理を行わなければならず、作業効率が悪くなるという欠点があった(特許文献2)。
【0009】
また、現在市販されている酸化エチレンガス処理装置は、サイズが大きく、作業場所が確保できないという欠点もあった。
【0010】
発明者らは、特許文献3において、滅菌処理後の廃ガスに含まれるEOGを除去する廃ガス処理方法であって、石油または石炭または植物を原料とする活性炭に前記廃ガスを接触させてEOGを吸着させて分解することにより該廃ガスからEOを除去することを特徴とする廃ガス処理装置方法を提案したが、EOを吸着させた活性炭の処理が難しいという課題もあった。
【0011】
また、硫酸水溶液を使用することにより、外部へ前記硫酸水溶液が漏れるおそれがある。そのため、防波堤が必要となり、処理装置が大型化になる可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−181244号公報
【特許文献2】特開2006−758号公報
【特許文献3】特開2016−221497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、廃ガスに含まれるEOGの除去性能に優れた処理装置および処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は、滅菌処理後の廃ガスに含まれるEOGを除去する廃ガス処理装置であって、一旦貯蔵するタンク、及びタンクを通過した廃ガス中のEOGを分解するための処理装置が接続されていることを特徴とする廃ガス処理装置である。前記の処理方法と滅菌処理後の廃ガスに含まれるEOGを除去する廃ガス処理装置を組み合わせることにより、EOGが完全分解されることにより解決される。
【0015】
このとき、前記タンクは、役割として、(1)滅菌処理後の廃ガスを一旦入れる、(2)滅菌処理後の廃ガスを一時保管する、2つの機能を有する。
【0016】
滅菌処理後の廃ガスはEOG滅菌器から排出される廃ガスをタンクに一旦入れる。前記タンクに吹込むには、制御、もしくはEOG滅菌器の圧力によって行われる。
【0017】
前記タンクの大きさは大きければ大きいほど良いが、高さが2m以下、底面積が1m以下であることが好ましい。大きくなればEOG処理装置がコンパクトにならず、効率が悪くなるからである。また、円筒であろうが、直方体であろうが、形状に問題は無く、EOGや硫酸水溶液が外部に漏れなければ良い。
【0018】
また、EOG滅菌器から前記タンク、前記タンクから前記処理槽、排出するための配管は耐酸性、耐腐食性が好ましい。配管は金属系ではステンレス316、コバルトクロムなどがあげられる。また、樹脂系ではPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、FRP(繊維強化プラスチック)などがあげられる。
【0019】
また、前記タンクはEOGや硫酸水溶液などに接触もしくは接触する可能性があり、耐酸性、耐腐食性であることが好ましい。
【0020】
このとき、前記処理槽には触媒が入っており、前記触媒は液体酸および固体酸であって、液体酸には硫酸、酢酸、塩酸などの水素イオンを有している薬液であって、固体酸にはイオン交換樹脂などの水素イオンが付着している樹脂があるが、液体酸である硫酸を使用するのが好ましい。
【0021】
また、前記処理槽の大きさは大きければ大きいほど良いが、高さが2m以下、底面積が1m以下であることが好ましい。大きくなればEOG処理装置がコンパクトにならず、効率が悪くなるからである。また、円筒であろうが、直方体であろうが、形状に問題は無く、EOGや硫酸水溶液が外部に漏れなければ良い。
【0022】
また、このとき、前記硫酸は水溶液にして使用する。硫酸水溶液の濃度は1%から50%であって、そのなかでも5%から30%の濃度が好ましい。
【0023】
前記処理槽には、硫酸水溶液が入っており、EOG滅菌器から排出される廃ガスを気泡にして、硫酸水溶液と接触させ(加水分解させ)、毒性の少ないEGに変化する。
【0024】
また、前記処理槽の素材は耐酸性のものが好ましい。耐酸性の材料として、金属系ではステンレス316、コバルトクロムなどがあげられる。また、樹脂系ではPP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、FRP(繊維強化プラスチック)などがあげられる。
【0025】
また、前記処理槽には、硫酸水溶液が入っており、外部に漏れるおそれもあることから防波堤を必要とする。例えば、図1のように前記タンク、前記処理槽を覆う囲いと底版をボルト等で連結することで対応したり、図2のように大きい筒状容器に小さい筒状容器を入れることにより対応することができる。前記防波堤は硫酸水溶液が漏れない形状であることが好ましい。図1の囲い、図2の大きい筒状容器とすることによって、処理装置として販売が可能となる。
【0026】
また、図2は前記タンクと硫酸水溶液の漏れ防止の機能を兼ね備えている。こうすることにより、小型化(コンパクト)にすることが可能となる。
【0027】
上記記載の方法を組み合わせることによって、EOGが完全分解される方法を提供することによっても解決される。
【0028】
また、これらの処理槽を組合せ、制御装置によって制御することによって、EOGが完全分解される。
【発明の効果】
【0029】
本発明により、廃ガスに含まれるEOGの除去効率に優れた処理方法を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の実施例の全体的な構成を示す構成図の一例である。
図2】本発明の実施例の全体的な構成を示す構成図の一例である。
図3】本発明の実施例の全体的な構成を示す構成図の一例である。
図4】本発明の実施例の全体的な構成を示す構成図の一例である。
図5】本発明の実施例の漏れ防止のための防波堤を示した図の一例である。
図6】本発明の実施例の漏れ防止のための防波堤を示した図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0032】
本発明は、滅菌処理後の廃ガスに含まれるEOGを除去する廃ガス処理装置及び方法であって、図1の模式図に示す装置は、一旦貯蔵するタンク1、及びタンク1を通過した廃ガス中のEOGを分解するための処理槽2が接続され、無毒化された廃ガスを排出する廃ガス処理装置である。前記処理槽2にはEOGを泡状にして吹込む。
【0033】
前記タンク、前記処理槽は、耐酸性で、耐腐食性であることが好ましい。また、硫酸水溶液が外部に漏れださない密閉系であることが好ましい。図1の囲い3を行うことによって処理装置の販売が可能となる。
【0034】
また、処理槽は1つであっても、複数の処理槽が直列に連結されてもよく、また並列に連結されていてもよい。処理槽が複数の場合は、より短時間でEOGを処理することができる。
【0035】
また、図2の模式図に示す装置は、廃ガスを一旦貯蔵する単体のタンク4の中に、単体のタンク4を通過した廃ガス中のEOGを分解するための処理槽2がある処理装置である。前記処理槽2にはEOGを泡状にして吹込む。
【0036】
前記タンク、前記処理槽は、耐酸性で、耐腐食性であることが好ましい。また、硫酸水溶液が外部に漏れださない密閉系であることが好ましい。図2のタンク4を行うことによって処理装置の販売が可能となる。
【0037】
また、処理槽は1つであっても、複数の処理槽が直列に連結されてもよく、また並列に連結されていてもよい。処理槽が複数の場合は、より短時間でEOGを処理することができる。
【0038】
また、図3図4の模式図は制御系を示した図の一例である。緊急停止することにより、タンク及び処理槽にEOGを残留することは危険であるので、タンク及び処理槽に手動及び自動によって開放することのできる弁を設置している。
【0039】
図5図6は漏れ防止のための防波堤の一例である。図示した方法以外のどの方法を選択しても、漏れを防止することができる。図1の形状について、装置内部に防波堤12を設け、前記防波堤には、タンクと処理槽が入っており、当該機能を有するものが好ましい。図2の形状について、タンク4(処理装置(囲い)5)が防波堤13の機能を有する。前記防波堤は、前記処理槽に入ってある硫酸水溶液がすべて漏れても良い大きさの防波堤とする。前記防波堤は、耐酸性で、耐腐食性であることが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下に、本発明に関する実施例を述べる。実施例には分解率測定試験について示している。
【0041】
EOG分解率の測定方法と定義について、以下のように設定する。EOG分解率の測定は処理槽の排出口から排出されたEOG質量を100mLシリンジによって測定する。
分解率(%)=処理後のEOG濃度測定(ガス質量:L)/導入EOG濃度試料採取口測定×100
【0042】
目標とする分解率は東京都の排出規制基準が日本で一番厳しい基準値であることから46ppm以下(当社計算分解率99.995%以上)として検討を行った。
【実施例1】
【0043】
まず、EOG滅菌器から排出される廃ガスをFRP製処理槽に直接吹込むこと試験を実施した。前記FRP製処理槽の構成は、容器をFRP樹脂で作製し、処理槽内に散気管を有している。分解率を測定したところ、99.7%(平均)であり、目標とする分解率とはならなかった(EOG滅菌器からの流量は15L/min、処理槽内の硫酸水溶液の液相高さは30cm、硫酸水溶液濃度は30%であった)。流量、液相高さ、硫酸水溶液濃度を変化させても、分解率は上記記載値と同様な結果が得られた。
【0044】
さらに、発明者らは検討したところ、EOG滅菌器から排出される廃ガスを吹込む時間によって分解率が上昇することがわかり、時間を10秒、60秒、120秒で確認試験を実施した。下記表の分解率はEOG滅菌器からの流量は15L/min、処理槽内の硫酸水溶液の液相高さは30cm、硫酸水溶液濃度は30%のときに測定したものである。また、流量、液相高さ、硫酸水溶液濃度を変化させても、分解率は下記記載値と同様な結果が得られた。
【0045】
分解率は以下の結果となった。
時間を置いてからEOGを処理槽に吹込むことによって、分解率が上昇することがわかった。そこで、発明者らはEOGを一旦保管し、処理槽に吹込むことにより、目標とする分解率を達成することができた。実施例2以降で、EOGをタンクに一旦置き、処理槽に吹込む方法での分解率測定試験の結果を示す。
【実施例2】
【0046】
廃ガスを一旦貯蔵する単体のタンク、及び単体のタンクを通過した廃ガス中のEOGを分解するための処理槽を接続し、分解率を測定した(図1)。
【0047】
処理装置に使用する薬液は硫酸水溶液を使用した。硫酸水溶液濃度は1%から50%で、処理装置には流量1〜120L/minで吹き込みを行った。
【0048】
分解率は以下の結果となった。
※液相高さとは、処理槽内にある硫酸水溶液の液面高さのことであり、処理槽底面からの液面までの高さを示す。
※上記の試験結果は、EOG滅菌器からの流量15L/min、硫酸水溶液濃度30%のときを示す。
【0049】
液相高さを10cmより小さくなると、分解率は99.992%(平均)であり、分解率は悪くなる。また、液相高さを50cmより大きくなると、分解率は99.996%(平均)であり、分解率は液相高さ50cmと変わらない。液相高さが高くなることによって分解率は上昇する。これは硫酸水溶液とEOGが接触する時間が長くなり、分解率が上昇したと考えているが、液相高さが高くなることによって泡は大きくなり分解率は変化しなかったものと考えられる。
【0050】
硫酸水溶液濃度については、1%から5%にすると、分解率は上記の結果と変わらないが、交換頻度が硫酸水溶液濃度5%から30%と比較して多くなる。ちなみに、1%から5%のときは月1回、硫酸水溶液濃度5%から30%のときは年1回である。メンテナンスのことを考慮すれば、年1回のペースが望ましい。また、硫酸水溶液濃度30%より大きくなると、交換頻度は変わらない。これは硫酸水溶液中の水素イオンの量によって決まっていると考えている。EOGは加水分解反応により(触媒として水素イオンが利用される)エチレングリコールを生成する。硫酸水溶液の濃度が低いと水素イオンが少ないため、初期の分解率は目標とする分解率99.995%以上であるが、10回以上になると分解率は99.995%以下となる。また、硫酸水溶液の濃度が高いと水素イオンが多くなるが、交換頻度は変わらない。水素イオンが過剰に存在しても、少なすぎても影響がある。
【0051】
流量については流量の大きさを小さくすることによって(流量1L/minのとき)、分解率が上がる傾向があるが、分解率は99.996%(平均)であり、変化しない。また、流量120L/minのときは、分解率は下がる傾向があるが、分解率は99.995%(平均)であり、変化しない。タンクに一旦EOGを置くことによる効果があると考えている。
【0052】
EOGと硫酸水溶液が長く接触することにより、分解率は向上すると考えられる。
【実施例3】
【0053】
廃ガスを一旦貯蔵する単体のタンクの中に、単体のタンクを通過した廃ガス中の酸化エチレンガスを分解するための処理槽がある処理装置を使って、分解率を測定した(図2)。
【0054】
処理装置に使用する薬液は硫酸水溶液を使用した。硫酸水溶液濃度は1%から50%で、処理装置には流量1〜120L/minで吹き込みを行った。
【0055】
分解率は以下の結果となった。
※液相高さとは、処理槽内にある硫酸水溶液の液面高さのことであり、処理槽底面からの液面までの高さを示す。
※上記の試験結果は、EOG滅菌器からの流量15L/min、硫酸水溶液濃度30%のときを示す。
【0056】
液相高さを10cmより小さくなると、分解率は99.992%(平均)であり、分解率は悪くなる。また、液相高さを50cmより大きくなると、分解率は99.996%(平均)であり、分解率は液相高さ50cmと変わらない。液相高さを10cmより小さくなると、分解率は99.992%(平均)であり、分解率は悪くなる。また、液相高さを50cmより大きくなると、分解率は99.996%(平均)であり、分解率は液相高さ50cmと変わらない。液相高さが高くなることによって分解率は上昇する。これは硫酸水溶液とEOGが接触する時間が長くなり、分解率が上昇したと考えているが、液相高さが高くなることによって泡は大きくなり分解率は変化しなかったものと考えられる。
【0057】
硫酸水溶液濃度については、1%から5%にすると、分解率は上記の結果と変わらないが、交換頻度が硫酸水溶液濃度5%から30%と比較して多くなる。ちなみに、1%から5%のときは月1回、硫酸水溶液濃度5%から30%のときは年1回である。メンテナンスのことを考慮すれば、年1回のペースが望ましい。また、硫酸水溶液濃度30%より大きくなると、交換頻度は変わらない。これは硫酸水溶液中の水素イオンの量によって決まっていると考えている。EOGは加水分解反応により(触媒として水素イオンが利用される)エチレングリコールを生成する。硫酸水溶液の濃度が低いと水素イオンが少ないため、初期の分解率は目標とする分解率99.995%以上であるが、10回以上になると分解率は99.995%以下となる。また、硫酸水溶液の濃度が高いと水素イオンが多くなるが、交換頻度は変わらない。水素イオンが過剰に存在しても、少なすぎても影響がある。
【0058】
流量については流量の大きさを小さくすることによって(流量1L/minのとき)、分解率が上がる傾向があるが、分解率は99.996%(平均)であり、変化しない。また、流量120L/minのときは、分解率は下がる傾向があるが、分解率は99.995%(平均)であり、変化しない。タンクに一旦EOGを置くことによる効果があると考えている。
【実施例4】
【0059】
底面積と分解率の関係について以下に示す。底面積については広ければ広いほど良いが、0.5m以上になると分解率は変わらない。下記表の分解率はEOG滅菌器からの流量は15L/min、処理槽内の硫酸水溶液の液相高さは30cm、硫酸水溶液濃度は30%のときに測定したものである。
【0060】
底面積を大きくすることは装置の小型化(コンパクト化)につながらないので、底面積を1m以下にすることが好ましい。上記試験結果は底面が円状での結果であるが、正方形でも長方形でも同様の結果を得ることができた。
【0061】
また、液相高さ、硫酸水溶液濃度、流量を変化させても同様の結果を得ることができた。
【0062】
本発明の特定の実施形態について説明を行ったが、この技術分野における当事者は本明細書において記述された上記の実施形態を容易に修正することができることは明らかである。従って、本発明は、この明細書で示された特定の実施形態に限定されることなく、他のいかなる修正、変更、実施の形態への利用に適用されるものであり、それゆえに、他のすべての修正、変更、実施形態は、本発明の精神および範囲内に入るものとみなされるべきである。
【符号の説明】
【0063】
1,4,6,9 タンク
2,7,10 処理槽
3,5,8,11 処理装置(囲い)
12,13 防波堤
図1
図2
図3
図4
図5
図6