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特開2019-76813海水処理方法、海水処理装置及び海水利用構造物の防汚装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-76813(P2019-76813A)
(43)【公開日】2019年5月23日
(54)【発明の名称】海水処理方法、海水処理装置及び海水利用構造物の防汚装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/70 20060101AFI20190426BHJP
   C02F 1/46 20060101ALI20190426BHJP
   C02F 1/76 20060101ALI20190426BHJP
   C02F 1/50 20060101ALI20190426BHJP
【FI】
   C02F1/70 Z
   C02F1/46 Z
   C02F1/76 A
   C02F1/50 510E
   C02F1/50 520F
   C02F1/50 531M
   C02F1/50 531P
   C02F1/50 540A
   C02F1/50 540B
   C02F1/50 540C
   C02F1/50 550C
   C02F1/50 550L
   C02F1/50 560F
   C02F1/50 560Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-203966(P2017-203966)
(22)【出願日】2017年10月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000211891
【氏名又は名称】株式会社ナカボーテック
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大庭 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】曽根 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】水野 絵梨香
【テーマコード(参考)】
4D050
4D061
【Fターム(参考)】
4D050AA06
4D050AB06
4D050AB46
4D050BA10
4D050BA20
4D050BB04
4D050BB06
4D050BD03
4D050BD08
4D050CA10
4D061DA09
4D061DB09
4D061DB10
4D061EA03
4D061EA04
4D061EB04
4D061EB05
4D061EB17
4D061EB19
4D061EB20
4D061EB28
4D061EB30
4D061EB37
4D061EB39
4D061FA17
4D061GA30
4D061GC11
(57)【要約】
【課題】周辺環境に悪影響を及ぼすことなく海水中の塩素を除去することができる海水処理方法、海水処理装置及び海水利用構造物の防汚装置を提供すること。
【解決手段】防汚装置(海水処理装置)20は、海水取水路10Aに配置され、海水に塩素系殺菌剤を添加する殺菌剤供給機構21と、海水放水路10Cに配置され、該塩素系殺菌剤が供給された海水中の塩素を除去する塩素除去機構22とを備える。塩素除去機構22が、第一鉄イオン、硫酸第一鉄の酸溶解液及び過酸化水素からなる群から選択される1種以上を海水に添加することにより、該海水中の塩素を除去するようになされている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海水に、第一鉄イオン、硫酸第一鉄の酸溶解液及び過酸化水素からなる群から選択される1種以上を添加することにより、該海水中の塩素を除去する海水処理方法。
【請求項2】
前記第一鉄イオンの海水への添加が、海水中に配置された鉄電極による該海水の電気分解によって行われる請求項1に記載の海水処理方法。
【請求項3】
前記第一鉄イオンの海水への添加が電解槽を用いて行われ、該電解槽が、鉄電極を具備し、該海水の電気分解によって第一鉄イオンを発生させるものである請求項1に記載の海水処理方法。
【請求項4】
海水に塩素系殺菌剤を添加する殺菌剤供給機構と、該塩素系殺菌剤が供給された海水中の塩素を除去する塩素除去機構とを備えた海水処理装置であって、
前記塩素除去機構が、第一鉄イオン、硫酸第一鉄の酸溶解液及び過酸化水素からなる群から選択される1種以上を海水に添加することにより、該海水中の塩素を除去する海水処理装置。
【請求項5】
前記殺菌剤供給機構が、電源と、海水中に配置され該電源から給電を受ける電極とを具備する電解装置を備え、該電解装置による海水の電気分解によって前記塩素系殺菌剤を生成する請求項4に記載の海水処理装置。
【請求項6】
前記塩素除去機構が、海水に第一鉄イオンを添加する鉄イオン添加手段を具備し、
前記鉄イオン添加手段が、電源と、海水中に配置され該電源から給電を受ける鉄電極とを具備する電解装置を備え、該電解装置による海水の電気分解によって第一鉄イオンを生成する請求項4又は5に記載の海水処理装置。
【請求項7】
前記塩素除去機構が、海水に第一鉄イオンを添加する鉄イオン添加手段を具備し、
前記鉄イオン添加手段が、電源と、該電源から給電を受ける鉄電極と、該鉄電極を収容する電解槽とを具備する電解装置を備え、該電解装置による海水の電気分解によって第一鉄イオンを生成する請求項4〜6のいずれか1項に記載の海水処理装置。
【請求項8】
前記殺菌剤供給機構と前記塩素除去機構とで電源を共有している請求項4〜7のいずれか1項に記載の海水処理装置。
【請求項9】
さらに、海水中の塩素濃度の測定手段と、該測定手段による該塩素濃度の測定値に応じて前記塩素除去機構の動作を制御する制御手段とを備える請求項4〜8のいずれか1項に記載の海水処理装置。
【請求項10】
海水取水路と、該海水取水路から取水された海水を利用する海水利用設備と、該海水利用設備の外部に海水を放出する海水放水路とを備えた海水利用構造物に使用され、海生生物の付着に起因する該海水利用構造物の汚染を防止する、海水利用構造物の防汚装置であって、
前記海水取水路に配置され、海水に塩素系殺菌剤を添加する殺菌剤供給機構と、前記海水放水路に配置され、該塩素系殺菌剤が供給された海水中の塩素を除去する塩素除去機構とを備え、
前記塩素除去機構が、第一鉄イオン、硫酸第一鉄の酸溶解液及び過酸化水素からなる群から選択される1種以上を海水に添加することにより、該海水中の塩素を除去する、海水利用構造物の防汚装置。
【請求項11】
前記海水放水路が、主水路と、該主水路から分岐し、その分起点よりも海水の流れ方向の下流側にて該主水路に合流するバイパス水路とを具備し、前記塩素除去機構が該バイパス水路に配置されている請求項10に記載の海水利用構造物の防汚装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水中の塩素を除去する海水処理方法に関し、さらには、海に近い立地で海水を利用する海水利用構造物等において、塩素系殺菌剤を使用することで、配管などに海生生物が付着・繁殖することを防止しつつ、該塩素系殺菌剤による環境汚染を防止し得る海水処理装置及び海水利用構造物の防汚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所、原子力発電所等の発電プラントは、発電システムの冷却水として海水を使用しており、典型的には、海水を冷却水として使用する復水器等の機器と、該機器に海水を導入する取水路と、該機器の外部に海水を放出する放水路とを備えている。このような海水利用構造物では、取水路や放水路の内部に貝類や藻類等の海洋生物が付着することで、冷却水の流路が塞がれて冷却性能が低下するなどの不都合が発生することを防止するために、電解装置を用いて海水を電気分解し塩素系殺菌剤を生成することが従来行われている。斯かる電解装置は、一般に、海水などの被処理水を貯溜する電解槽と、被処理水中に浸漬される電極と、該電極に給電を行う電源装置とを備え、被処理水を電気分解することにより、被処理水中に次亜塩素酸などを発生させる(例えば特許文献1及び2)。
【0003】
ところで、各種用水や排水を塩素系殺菌剤で処理した場合には、遊離塩素や結合塩素等の残留塩素が処理水中に残留するところ、このような残留塩素を含む処理水をそのまま海などに排出してしまうと周辺環境に悪影響を及ぼすおそれがあるため、該処理水に対して残留塩素の無害化処理を行うことが従来行われている。このような残留塩素の無害化処理に関し、例えば特許文献3には、特定の3級アミノ化合物及び/又は特定のグアニジノ化合物を含有する残留塩素除去剤を用いて、飲料水、洗浄水、下水などを処理することが記載されている。また特許文献4には、船舶にバラスト水として取水される海水に塩素殺菌剤を供給する塩素殺菌剤供給装置と、該塩素殺菌剤が供給されたバラスト水を海に排水する際に、該バラスト水に塩素還元剤を供給する塩素還元剤供給装置とを備えたバラスト水処理装置が記載されており、該塩素還元剤として、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、チオ硫酸塩等を用いることが記載されている。
【0004】
また特許文献5には、水道水中の残留塩素の除去剤として、ファルカタ、檜、桐、杉等のチップ材、及び該チップ材の熱水抽出エキスが有用である旨記載されている。また特許文献6には、特定のイオン交換生成物を有効成分として含有する遊離塩素除去剤が、生活用水の残留塩素の除去に有用である旨記載され、該イオン交換生成物が、マグネシウム及びアルミニウムの複合炭酸塩又は複合酸化物からなるイオン交換体の有するイオン交換基を、アスコルビン酸イオン又は亜硫酸イオンでイオン交換することによって得られるものである旨記載されている。また特許文献7には、水道水から残留塩素を除去するための残留塩素除去器において、水道水に流入させる中和剤としてビタミンCを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−85750号公報
【特許文献2】特開2015−172251号公報
【特許文献3】特開2007−144399号公報
【特許文献4】特開2009−39680号公報
【特許文献5】特開2006−289208号公報
【特許文献6】特開2006−326468号公報
【特許文献7】特開2007−301446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発電プラントなどの海水を利用する海水利用設備において、塩素系殺菌剤が添加された海水を海に放出する場合には、環境への影響を避けるために、その放出される海水中の残留塩素の含有量が一定値以下であることが要求されている。そのため海水利用設備では、海水の放出口などで海水中の残留塩素濃度を測定し、その測定値が所定値以下となるように、海水への塩素系殺菌剤の添加量を調整している。しかし、例えば塩素系殺菌剤の一種である次亜塩素酸の海水中での濃度は、海水に含まれる有機物、温度等によって変化しやすいため、放出口での該濃度の測定値が安定しない場合があり、そのため、要求されている残留塩素濃度をクリアできるように、該測定値に基づいて次亜塩素酸の添加量を調整したにもかかわらず、それがクリアできないという事態を招くおそれがあり、逆に、残留塩素濃度に対する要求に応えることを優先して添加量を少量に調整すると、防汚効果が不十分となる事態を招くおそれがあった。そのため現状は、塩素系殺菌剤の海水への添加量を極力低減すると共に、そうすることで懸念される防汚効果の不足分を、防汚対象機器に防汚塗料を塗布するなどの別対策で補うことが行われており、このような別対策の手間や費用の負担増が問題となっている。
【0007】
また、塩素系殺菌剤が添加された海水中の残留塩素濃度を低減させるために、従来使用されている塩素還元剤、例えば、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、チオ硫酸塩等を海水に添加すると、亜硫酸塩等と海水中の溶存酸素とが反応して海水中の溶存酸素量が低減し、周辺環境に悪影響を及ぼすおそれがある。このような、塩素還元剤の添加に起因する溶存酸素量の低減は、特許文献4に記載されているように海水に空気を供給することで防止できるが、そのためには空気供給手段の設置が必要となり、海水処理装置の大型化、複雑化を招くおそれがある。
【0008】
本発明の課題は、周辺環境に悪影響を及ぼすことなく海水中の塩素を除去することができる海水処理方法、海水処理装置及び海水利用構造物の防汚装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、海水に、第一鉄イオン、硫酸第一鉄の酸溶解液及び過酸化水素からなる群から選択される1種以上を添加することにより、該海水中の塩素を除去する海水処理方法である。
【0010】
また本発明は、海水に塩素系殺菌剤を添加する殺菌剤供給機構と、該塩素系殺菌剤が供給された海水中の塩素を除去する塩素除去機構とを備えた海水処理装置であって、前記塩素除去機構が、第一鉄イオン、硫酸第一鉄の酸溶解液及び過酸化水素からなる群から選択される1種以上を海水に添加することにより、該海水中の塩素を除去する海水処理装置である。
【0011】
また本発明は、海水取水路と、該海水取水路から取水された海水を利用する海水利用設備と、該海水利用設備の外部に海水を放出する海水放水路とを備えた海水利用構造物に使用され、海生生物の付着に起因する該海水利用構造物の汚染を防止する、海水利用構造物の防汚装置であって、前記海水取水路に配置され、海水に塩素系殺菌剤を添加する殺菌剤供給機構と、前記海水放水路に配置され、該塩素系殺菌剤が供給された海水中の塩素を除去する塩素除去機構とを備え、前記塩素除去機構が、第一鉄イオン、硫酸第一鉄の酸溶解液及び過酸化水素からなる群から選択される1種以上を海水に添加することにより、該海水中の塩素を除去する、海水利用構造物の防汚装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、周辺環境に悪影響を及ぼすことなく海水中の塩素を除去することができる海水処理方法、海水処理装置及び海水利用構造物の防汚装置が提供される。
【0013】
また、本発明の海水処理装置及び海水利用構造物の防汚装置によれば、海水に塩素系殺菌剤を添加する殺菌剤供給機構と、該塩素系殺菌剤が供給された海水中の塩素を除去する塩素除去機構とを併用することにより、比較的簡単な構成でありながらも、塩素系殺菌剤に起因する周辺環境への悪影響を抑えつつ、海水流路の広範囲にわたって海生生物の付着・繁殖を効果的に防止することができる。尚、本明細書において「防汚」とは、海生生物の付着・繁殖(着生)を抑制又は防止することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の海水利用構造物の防汚装置(海水処理装置)の一実施形態の概略構成図である。
図2図2は、図1に示す防汚装置の要部(殺菌剤供給機構及び塩素除去機構)の概略斜視図である。
図3図3は、本発明の海水利用構造物の防汚装置の他の実施形態の要部(海水放水路)の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の海水処理装置及び海水利用構造物の防汚装置について、それらの好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。本発明の海水処理装置及び海水利用構造物の防汚装置は、本発明の海水処理方法を利用したものである。図1には、本発明の海水利用構造物の防汚装置の一実施形態である防汚装置20が示されている。防汚装置20は、本発明の海水処理装置の一実施形態でもある。防汚装置20は、海に近い立地で海水を利用する海水利用構造物10に使用される海水処理装置であり、海生生物の付着に起因する海水利用構造物10の汚染を防止する。
【0016】
海水利用構造物10は、図1に示すように、海水に接して配された海水取水路10Aと、海水取水路10Aから取水された海水を利用する海水利用設備10Bと、海水利用設備10Bの外部に海水を放出する海水放水路10Cとを備える。海水利用設備10Bは、海水取水路10Aから取水された海水を利用する設備本体12を具備している。設備本体12は、例えば循環水管13、復水器14、放水管15等を含んで構成され、建屋16内に配されている。海水利用設備10B(設備本体12)が屋内に配されているのに対し、海水取水路10A及び海水放水路10Cはいずれも屋外に配されている。図中の符号Xは、海水の流れ方向を示す。
【0017】
海水利用構造物10においては、海水取水路10A内に海水を取り込み、海水取水路10A内に設置された図示しない異物除去手段によって海水中の夾雑物を物理的に除去した後、その海水をポンプ11で汲み上げて海水利用設備10Bに送る。そして、海水利用設備10Bにおいては、ポンプ11から送られてきた海水は、循環水管13を通って復水器14に導入され、復水器14で蒸気の冷却等に利用された後、放水管15を通じて建屋16の外部の海水放水路10Cに放出される。海水利用構造物10の具体例として、例えば、火力発電所、原子力発電所、コンバインドサイクル発電プラントが挙げられる。
【0018】
防汚装置(海水処理装置)20は、図1に示すように、海水取水路10Aに配置され、海水に塩素系殺菌剤を添加する殺菌剤供給機構21と、海水放水路10Cに配置され、該塩素系殺菌剤が供給された海水中の塩素を除去する塩素除去機構22とを備える。
【0019】
殺菌剤供給機構21は、海水に塩素系殺菌剤を添加し得るように構成されていればよく、例えば、1)固体、液体又は気体の塩素系殺菌剤を海水に投入するように構成されたものでもよく、2)海水を電気分解して塩素系殺菌剤を生成するように構成されたものでもよい。前記1)の形態において、海水に投入する塩素系殺菌剤としては、例えば、塩素ガス、次亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。
【0020】
本実施形態では殺菌剤供給機構21について、前記2)の形態が採用されている。具体的には、本実施形態における殺菌剤供給機構21は図2に示すように、電源23と、海水中に配置され、電源23から給電を受ける電極21Aとを具備する電解装置を備え、該電解装置による海水の電気分解によって塩素系殺菌剤を生成する。本実施形態では、電源23は直流電源であり、また、電極21Aは、電源23から直接給電を受ける一対の給電電極からなり、いわゆる単極式電極である。一対の電極21A,21Aを被処理水たる海水中に浸漬した状態で直流電源23により通電を行うことで、電源23の正極と接続された電極21Aが陽極(アノード)、電源23の負極と接続された電極21Aが陰極(カソード)となり、該陽極の周辺の海水が電気分解されて塩素系殺菌剤、具体的には例えば次亜塩素酸ナトリウムが生成される。
【0021】
尚、図2に示す形態では、陽極である電極21Aは、導線24を介して電源23の正極に直接接続されているのに対し、陰極である電極21Aは、電源23の負極に直接接続されずに、間接接続されている。即ち、陰極である電極21Aは、後述する塩素除去機構22(鉄イオン添加手段)における電解装置の一対の電極22A,22Aのうちの一方(陽極)と導線25を介して直接接続され、また、該一対の電極22A,22Aのうちの他方(陰極)は、導線26を介して電源23の負極と直接接続されており、つまり、陰極である電極21Aは、電極22Aを介して電源23の負極に間接接続されている。このように本実施形態では、殺菌剤供給機構21と塩素除去機構22とで、電極に給電するための電源23を共有している。
【0022】
図2に示すように、電極21Aは平板状をなし、その平面方向が海水取水路10Aにおける海水の流れ方向Xと平行になるように、換言すれば、電極21Aの一面の法線方向と海水の流れ方向Xとが直交するように、海水取水路10A内に配置されている。海水中において平板状の電極21Aをこのように配置することで、海水の流れが電極21Aによって阻害される不都合が抑制され、また、電極21Aから生成された塩素系殺菌剤が海水の流れによって拡散されつつ、防汚対象たる海水利用設備10Bに送られるようになり、十分な防汚効果が得られやすくなる。
【0023】
一対の電極21A,21Aは材質が互いに同じでもよく、異なっていてもよい。電極21Aとしては、この種の電極として用いられているものを特に制限なく用いることができ、例えば、チタン、タンタル、ニオブ等からなる基材に、白金、イリジウム等の白金属類からなる触媒をコーティングしたものが挙げられる。少なくとも陽極が、このような、チタン等からなる基材に触媒がコーティングされた構成であることが好ましい。
【0024】
殺菌剤供給機構21によって海水に添加された塩素系殺菌剤(次亜塩素酸ナトリウム)は通常、海水中で次亜塩素酸イオンとなる。従って、海水取水路10Aから海水利用設備10Bに送られ海水放水路10Cに放出された海水中には次亜塩素酸イオンが含有されている。海水放水路10Cに配置された塩素除去機構22が海水中から除去すべき塩素(遊離塩素)の1つが、この次亜塩素酸イオンである。
【0025】
このように、海洋へと続く海水放水路10Cに塩素除去機構22が配置され、殺菌剤供給機構21によって海水に添加された塩素系殺菌剤(次亜塩素酸ナトリウム)に起因する海水中の塩素(次亜塩素酸イオン)が塩素除去機構22によって除去されるようになされていることにより、海水利用設備10Bから海水放水路10Cに送られてきた直後の海水に比較的多量の塩素が含有されていても塩素除去機構22によってその塩素を無害化することができるため、殺菌剤供給機構21による海水への塩素系殺菌剤の添加量を極端に抑制する必要がなく、海水利用設備10Bの防汚に必要十分な量の塩素系殺菌剤を海水に添加することができる。従って防汚装置(海水処理装置)20によれば、周辺環境に悪影響を及ぼすことなく、海生生物の付着に起因する海水利用設備10Bの汚染を効果的に防止することができる。
【0026】
そして、本実施形態の防汚装置(海水処理装置)20の主たる特徴の1つとして、塩素除去機構22による海水処理、具体的には海水中の塩素の除去が、第一鉄イオン(Fe2+)、硫酸第一鉄(FeSO)の酸溶解液及び過酸化水素(H)からなる群から選択される1種以上の還元剤を添加することにより行われる点が挙げられる。
【0027】
塩素(遊離塩素)として次亜塩素酸イオンを含む海水中に、第一鉄イオン及び/又は硫酸第一鉄の酸溶解液を添加することにより、該次亜塩素酸イオンは下記式(1)のように還元されて該海水から塩素が除去される。また、次亜塩素酸イオンを含む海水中に過酸化水素を添加することにより、該次亜塩素酸イオンは下記式(2)のように還元されて該海水から除去される。前述したように、亜硫酸塩、次亜硫酸塩、チオ硫酸塩等の従来使用されている塩素還元剤は、海水中の溶存酸素量を低下させるという欠点があるが、本発明で使用する前記の特定の還元剤(第一鉄イオン、硫酸第一鉄の酸溶解液、過酸化水素)はそのような欠点がなく、周辺環境への負担が少ないという特長を有する。
2H+ClO+Fe2+ → Fe3++Cl+HO …(1)
ClO+H → Cl+HO+O …(2)
【0028】
前記の特定の還元剤の1つである「硫酸第一鉄の酸溶解液」は、常温常圧で固体(粉体)の硫酸第一鉄(FeSO)を酸に溶解させることで調製することができる。この硫酸第一鉄を溶解させる酸としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明者らの知見によれば、粉体の硫酸第一鉄を酸に溶解させずに、直接海水に添加すると、その添加時点で硫酸第一鉄が酸化されて第二鉄になるため、塩素除去効果が低減してしまい、また、これを防止するために、粉体の硫酸第一鉄の海水への添加量を増やすと、海水が着色されるという問題が深刻化する。従って、硫酸第一鉄を塩素還元剤として使用するのであれば、本発明のように、酸溶解液としてから海水に添加することが好ましい。
【0029】
前記の特定の還元剤の海水への添加量は、海水中の塩素(遊離塩素)の量に応じて適宜調整すればよく特に制限されないが、海水中に第一鉄イオン(Fe2+)が多量に存在すると海水が着色されて好ましくないので、この海水の着色を防止する観点から、第一鉄イオン及び硫酸第一鉄の酸溶解液からなる群から選択される1種以上の還元剤を海水に添加する場合、海水中における該還元剤の濃度が、第一鉄イオンに換算して、好ましくは1ppm以下、さらに好ましくは0.5ppm以下、より好ましくは0.2ppm以下となるように、該還元剤の海水への総添加量を調整することが好ましい。また、海水に過酸化水素を添加する場合は、海水中における過酸化水素の濃度が、好ましくは0.7ppm以下となるように過酸化水素の海水への添加量を調整することが、海生生物に与える影響を極力低減させる点で好ましい。
【0030】
塩素除去機構22は、海水に前記の特定の還元剤(第一鉄イオン、硫酸第一鉄の酸溶解液、過酸化水素)を添加し得るように構成されていればよく、例えば、3)海水を電気分解して第一鉄イオンを生成するように構成されたものでもよく、4)硫酸第一鉄の酸溶解液若しくは過酸化水素又は海水中に添加されて第一鉄イオンを生成し得る物質を海水に投入するように構成されたものでもよい。
【0031】
本実施形態では塩素除去機構22について、前記3)の形態が採用されており、海水を電気分解して第一鉄イオンを生成することにより、海水に第一鉄イオンを添加している。斯かる第一鉄イオンの海水への添加は、3−1)海水中に配置された鉄電極による該海水の電気分解によって行ってもよく、3−2)鉄電極を具備し、海水の電気分解によって第一鉄イオンを発生させる電解槽を用いて行ってもよい。
【0032】
本実施形態における塩素除去機構22は、前記3−1)の形態であり、海水に鉄イオンを添加する鉄イオン添加手段を具備する。この塩素除去機構22が具備する鉄イオン添加手段は、図2に示すように、電源23と、海水中に配置され、電源23から給電を受ける鉄電極22Aとを具備する電解装置を備え、該電解装置による海水の電気分解によって第一鉄イオンを生成する。本実施形態では、鉄電極22Aは、直流電源23から直接給電を受ける一対の給電電極からなり、いわゆる単極式電極である。一対の鉄電極22A,22Aを被処理水たる海水中に浸漬した状態で直流電源23により通電を行うことで、電源23の正極と接続された電極22Aが陽極(アノード)、電源23の負極と接続された電極22Aが陰極(カソード)となり、該陽極から鉄がイオン化して溶出することで第一鉄イオンが生成される。
【0033】
尚、本発明において、塩素除去機構22の鉄イオン添加手段は、鉄電極を少なくとも1個具備していればよく、本実施形態のように、一対の電極22A,22Aの双方がいずれも鉄電極でなくてもよい。即ち、一対の電極22A,22Aは材質が互いに同じでもよく、異なっていてもよい。しかし、一対の電極22A,22Aの双方が鉄電極であると、一方のみが鉄電極である場合に比して、電極の寿命が長くなるため好ましい。鉄電極の材質としては、この種の電解装置において鉄電極として用いられているものを特に制限なく用いることができる
【0034】
本実施形態では前述したように、殺菌剤供給機構21と塩素除去機構22とで電源23を共有している。このように、両機構21,22が具備する電極21A,22Aへの給電用電源23が共用されていることで、防汚装置(海水処理装置)20の電源回路の省力化、簡略化、運用コストの低減が図られる。また、電極21A,22Aを用いて海水を電気分解すると、それらの陰極の表面に、海水中に含まれるカルシウムやマグネシウムなどからなる電解質被膜(エレクトロコーティング)が形成される場合があり、この電解質被膜を除去する方法として、電極21A,22Aの極性を、当初陽極であれば陰極に、当初陰極であれば陽極に切り替える、いわゆる極性変換があるところ、電極21A,22Aへの給電用電源23が共用されていると、斯かる複数の電極の極性変換を一括してスムーズに行うことが可能となり、防汚装置(海水処理装置)20を長期間安定的に作動させることが可能となる。
【0035】
図2に示すように、鉄電極22Aは平板状をなし、その平面方向が海水放水路10Cにおける海水の流れ方向Xと平行になるように、換言すれば、鉄電極22Aの一面の法線方向と海水の流れ方向Xとが直交するように、海水放水路10C内に配置されている。海水中において平板状の鉄電極22Aをこのように配置することで、海水の流れが鉄電極22Aによって阻害される不都合が抑制され、また、鉄電極22Aから生成された第一鉄イオンが海水の流れによって海水中に分散性よく拡散されるようになり、比較的短時間で海水中の塩素を除去することが可能となる。
【0036】
塩素除去機構22の配置位置、特に、それが具備する鉄イオン添加手段(鉄電極22A)の配置位置は、海水放水路10C内であればよく、特に制限されないが、塩素除去機構22による塩素除去をより効果的なものとする観点から、海水放水路10Cにおける海水中の残留塩素の検出位置(後述する測定手段27の配置位置)よりも該海水の流れ方向Xの上流側が好ましく、より具体的には、測定手段27から流れ方向Xの上流側に20〜100m、特に20〜40m離れた位置が好ましい。
【0037】
塩素除去機構22が具備する鉄イオン添加手段としては、例えば特開平10−306389号公報に記載の電気防蝕装置を用いることができる。この電気防蝕装置は、電源と、一方向に延びる電極支持ロッドと、該電極支持ロッドに取り付けられた複数の鉄電極とを具備し、該複数の鉄電極は、該電極支持ロッドの長手方向に間欠配置され、且つ該電極支持ロッドを介して該電源と接続されている。
【0038】
本実施形態の防汚装置(海水処理装置)20は、前述した構成に加えてさらに、海水中の塩素濃度の測定手段27(図1参照)と、該測定手段27による該塩素濃度の測定値に応じて塩素除去機構22の動作を制御する制御手段(図示せず)とを備えている。測定手段27は通常、塩素除去機構22が配置されている海水放水路10Cにおいて、塩素除去機構22の近傍に配置され、本実施形態では図1に示すように、塩素除去機構22よりも流れ方向Xの下流側に配置されている。測定手段27としては、海水中の塩素濃度を測定可能な公知の測定機器を用いることができる。
【0039】
前記制御手段は、例えば、測定手段27を用いて海水放水路10Cの海水中の塩素濃度を測定する測定部と、該測定部によって測定された該塩素濃度の測定値と予め記憶された所定の基準値と対比し、その対比結果に基づいて、電源23のON/OFFを制御する制御部を含んで構成することができる。前記制御手段が斯かる構成を有していることにより、例えば、測定手段27による海水中の塩素濃度の測定値が基準値を超えている場合は、電源23をONにして塩素除去機構22(鉄イオン添加手段)の電解装置を作動させて第一鉄イオンを生成し、該測定値が基準値以下の場合は、電源23をOFFにして該電解装置による第一鉄イオンの生成をストップするように制御することが可能となり、塩素除去作業(第一鉄イオンの添加作業)の自動化が図られる。前記制御手段は、例えば、CPU,MPU等のマイクロプロセッサ、ROM及びRAM等を含んで構成され、該ROM及び該RAMに、前記基準値や所定の処理を行うためのプログラムや各種データが格納される。
【0040】
図3には、本発明の海水利用構造物の防汚装置の他の実施形態が示されている。後述する他の実施形態については、前記実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前記実施形態についての説明が適宜適用される。
【0041】
図3に示す防汚装置20Aにおいては、海水放水路10Cが、主水路10C1と、該主水路10C1から分岐し、その分起点よりも海水の流れ方向Xの下流側にて該主水路10C1に合流するバイパス水路10C2とを具備している。これにより、塩素(遊離塩素)を含む海水は、海水利用設備10Bから海水放水路10Cに放出された後、先ず、主水路10C1を流通し、その流通の途中で該海水の一部がバイパス水路10C2を流通して再び主水路10C1に合流する。そして、防汚装置20Aにおいては図3に示すように、塩素除去機構22がバイパス水路10C2に配置されている。
【0042】
このように海水放水路10Cの海水流路を、互いに独立した2系統10C1,10C2とし、そのうちの副水路たるバイパス水路10C2に塩素除去機構22を配置することにより、塩素除去機構22の設置やメンテナンスなどを実施する場合に、主水路10C1に海水を流通させつつ、即ち海水利用設備10Bの運転を停止することなく、バイパス水路10C2で必要な作業を行うことが可能となり、作業性の一層の向上が図られる。バイパス水路10C2に配置する塩素除去機構22は、前記3)及び4)の形態のいずれでもよいが、特に前記3−2)の形態、即ち、塩素除去機構22の鉄イオン添加手段が、電源と、該電源から給電を受ける鉄電極と、該鉄電極を収容する電解槽とを具備する電解装置を備え、該電解装置による海水の電気分解によって第一鉄イオンを生成する形態が好適である。
【0043】
以上、本発明をその実施形態に基づいて説明したが、本発明は、前記実施形態に制限されることなく適宜変更が可能である。
殺菌剤供給機構21が具備する電解装置における電極21Aは、図2に示す如き単極式に限定されず、例えば、一対の給電電極としての電極21A,21A間に一又は複数の誘電電極が配置された構成のいわゆる複極式電極でもよい。また、殺菌剤供給機構21が具備する電解装置は、電極21Aを収容する電解槽を備え、被処理水たる海水が該電解槽の内部を通過するようになされていてもよい。
同様に、塩素除去機構22(鉄イオン添加手段)が具備する電解装置における電極22Aは、図2に示す如き単極式に限定されず、例えば、一対の給電電極としての電極22A,22A間に一又は複数の誘電電極が配置された構成のいわゆる複極式電極でもよい。また、塩素除去機構22(鉄イオン添加手段)が具備する電解装置は、電極22Aを収容する電解槽を備え、被処理水たる海水が該電解槽の内部を通過するようになされていてもよい。
【0044】
また、塩素除去機構22は、前記3)及び4)の形態の双方を含んで構成されていてもよく、即ち、前記3−1)又は3−2)の形態を具備し、鉄イオン添加手段により海水を電気分解して第一鉄イオンを生成するようになされていると共に、前記4)の形態を具備し、硫酸第一鉄の酸溶解液若しくは過酸化水素又は海水中に添加されて第一鉄イオンを生成し得る物質を海水に投入するようになされていてもよい。塩素除去機構22が斯かる構成を有していることにより、例えば通常は、鉄イオン添加手段によって海水を電気分解して第一鉄イオンを生成し、第一鉄イオンが不足した場合などの緊急時に、硫酸第一鉄の酸溶解液や過酸化水素などを海水に投入することが可能となり、結果として、海水中の残留塩素除去を長期間にわたって安定的に実施することが可能となる。
本明細書に記載した一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。
【符号の説明】
【0045】
10 海水利用構造物
10A 海水取水路
10B 海水利用設備
10C 海水放水路
10C1 主水路
10C2 バイパス水路
11 ポンプ
12 設備本体
13 循環水管
14 復水器
15 放水管
16 建屋
20,20A 海水利用構造物の防汚装置(海水処理装置)
21 殺菌剤供給機構
21A 電極
22 塩素除去機構
22A 電極(鉄電極)
23 電源
24,25,26 導線
27 測定手段
図1
図2
図3