特開2019-76909(P2019-76909A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-76909(P2019-76909A)
(43)【公開日】2019年5月23日
(54)【発明の名称】シーム溶接機及びその溶接施工法
(51)【国際特許分類】
   B23K 11/06 20060101AFI20190426BHJP
   B23K 11/16 20060101ALI20190426BHJP
【FI】
   B23K11/06 340
   B23K11/16 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-203523(P2017-203523)
(22)【出願日】2017年10月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000175973
【氏名又は名称】三晃金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080090
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 邦男
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 史隆
(72)【発明者】
【氏名】北村 雄
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、被覆金属板体の継手部をシーム溶接する自走タイプのシーム溶接機において、該継手部を自動で感知し、特に、Tジョイント部を水密的にシーム溶接することができること。
【解決手段】被覆金属板体8のX方向継手部85に沿って回転駆動する電極ロール3,3と、被覆金属板体8のTジョイント部88箇所に連続したY方向継手部83の箇所を感知する位置センサ4とを備え、Y方向継手部83に接触して反応するセンサ用動作棒41とからなること。電極ロール3,3にてシーム溶接する時間及び進行方向を適宜制御できるようにしていること。電極ロール3,3は水平面上且つ左右対称に配置されると共に回転駆動可能に駆動部が設けられ、Tジョイント部88箇所に連続したY方向継手部83の個所の立上り部箇所に対応する伸縮自在のセンサ用取付板を備えていること。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆金属板体のX方向継手部に沿って回転駆動する電極ロールと、前記被覆金属板体のTジョイント部箇所に連続したY方向継手部の箇所を感知する位置センサとを備え、前記Y方向継手部に接触して反応するセンサ用動作棒と、前記電極ロールにてシーム溶接する時間及び進行方向を適宜制御できるようにしたことを特徴とするシーム溶接機。
【請求項2】
請求項1において、前記電極ロールは水平面上且つ左右対称に配置されると共に回転駆動可能に駆動部が設けられ、前記Tジョイント部箇所に連続したY方向継手部の箇所の立上り部箇所に対応する伸縮自在のセンサ用取付板を備えてなることを特徴とするシーム溶接機。
【請求項3】
長尺な主板の幅方向両側に側部立上り部を形成した被覆金属材相互の両側部立上り部にてY方向継手部を構成し、これらを順次繰り返して葺成した一部被覆金属板体と、該一部被覆金属板体の連続した端部立上り部と、別に葺成した一部被覆金属板体の前記側部立上り部とによるX方向継手部との交差部にて存在するTジョイント部を備えた被覆金属板体において、
前記X方向継手部に沿って駆動するシーム溶接機の両電極ロールにて通常の前進溶接し、前記シーム溶接機に設けられた位置センサにて前記Tジョイント部箇所に連続した前記Y方向継手部の箇所で前記位置センサを感知させ、第1設定時間分で前記Tジョイント部箇所を溶接しつつ前進溶接して停止させ、停止直後に、前記Tジョイント部箇所を通過するようにして第2設定時間分を後退溶接して停止させ、停止直後に通常の前進溶接することを特徴とするシーム溶接施工法。
【請求項4】
請求項3において、前記シーム溶接機には前記両電極ロールを駆動させる駆動部が設けられると共に、前記位置センサは、前記シーム溶接機の前側位置において左右側方向に幅調整可能な調整板材が少なくとも一方側に設けられ、該調整板材に前記位置センサの本体部が固定され、前記位置センサ下端のセンサ用動作棒が前記Y方向継手部上端に接触可能に構成されてなることを特徴とするシーム溶接施工法。
【請求項5】
請求項4又は5において、前記Tジョイント部のX方向継手部における厚肉部が、平面的に観察して、前記被覆金属板体における前記Tジョイント部箇所の前記Y方向継手部位置と、前記シーム溶接機の両電極ロールとのX方向の位置関係において、前記Tジョイント部を構成する折曲した部位が内側に存在する場合には、前記厚肉部の中間位置に前記両電極ロールが達したときを基準位置としてシーム溶接制御してなることを特徴とするシーム溶接施工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆金属板体の継手部をシーム溶接する自走タイプのシーム溶接機において、該継手部を自動で感知し、特に、Tジョイント部を水密的にシーム溶接することができるシーム溶接機及びその溶接施工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、構造物のうち、外表面に多数の被覆金属材(主にステンレス等の不誘鋼材)の連結用の立上り部同士を当接してシーム溶接(抵抗溶接)し、水密状態とした被覆金属板体の施工が盛んに行われている。該被覆金属板体は、平坦上の主板の幅方向両側に立上り部を形成した被覆金属板体は、平坦状の主板の幅方向両側に立上り部を形成した被覆金属材を複数並設し、隣接する被覆金属材相互の対向する立上り部同士を重合し、シーム溶接を行って、シーム溶接継手部を形成するものである。
【0003】
その立上り部は、長手方向に沿って長尺であることが多い。そのために、シーム溶接作業は、作業効率化と仕上がりの均一性を得るために自走シーム溶接機が使用される。ところで、一般のシーム溶接機は、本体の下面側で且つ左右両側に二つの電極ロールが配置されており、これらが相互に反対方向に回動をする。また、両電極ロールの外側箇所に本体の左右方向に二つのソリ上の部材が装着されている。例えば、特許文献1及び特許文献2が存在している。
【0004】
そして、両電極ロールにて、隣接する被覆金属材の対向する両立上り部を挟むようにしてシーム溶接機がセッティングされ、両電極ロールが相互に反対方向に回動することによりシーム溶接機が自走し、両電極ロールにて挟持された両立上り部がシーム溶接されてゆく。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−253865号公報
【特許文献2】特開2002−18577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記シーム溶接機は、隣接する被覆金属材相互の対向する立上り部同士を重合し、シーム溶接を行ってシーム溶接継手部を形成し、被覆金属板体を水密状態とするものである。
【0007】
しかし、前記シーム溶接機は、被覆金属材同士をシーム溶接する際に同じ枚数でしか正常な溶接ができず、溶接の進行方向に異なる枚数の被覆金属材が存在する場合、いわゆるTジョイント部を形成する場合のシーム溶接は正常な溶接ができない。通常、電極ロールは円形状であり、通常の継手部に対してTジョイント部のように段差のある形状に押し当てた場合、隙間(ピンホール)ができてしまうため、自走のシーム溶接機のみでは適切なシーム溶接ができなかった。さらに、シーム溶接する速度(単位時間当たり)を緩めても無理であった。
【0008】
Tジョイント部は被覆金属板体の施工時に発生するものであり、従来であれば、重合した被覆金属材を銅合金電極で直接挟み込み、高い圧力を加え、一点に大電流を集中し、点状のナゲットを形成する溶接、いわゆるスポット溶接を施す必要があり、その溶接方法もTジョイント部に対し前記スポット溶接を連続で行い点状のナゲット部を重ね合わせながら重合した被覆金属材の溶接を行うものである。
【0009】
そして、Tジョイント部に施す前記スポット溶接は、わずか数ミリの点状のナゲット部を約35mm以上連続で重ね合わせ、擬似的に連続した溶接を再現したものとなっているが、この前記スポット溶接は従来のシーム溶接機のように自動で溶接は行えず、手動で溶接しなければならなかった。さらに、前記スポット溶接の作業者は前記スポット溶接時には常に中腰で作業を行わなければならず、また前記スポット溶接を抱えながら行う機械の重量も極めて重く、溶接時の作業者の負担が増大し、Tジョイント部継手箇所の溶接の仕上がりが極めて不良となる恐れがあった。
【0010】
また、スポット溶接以外の手段として、従来の自走するシーム溶接機の溶接の圧力を増大させようと、電流値を上げるためにトランスのサイズアップや電極ロールのサイズアップ等を行ない、各種接続機器の増加することで、従来より高い圧力を加えて溶接すれば、前述したTジョイント部における隙間も溶接ができると共に水密性の高い溶接は可能である。しかしながら重大な問題が発生するものである。それは、従来のような小型且つ軽量化したシーム溶接機では実現できないのみならず、大型化することで、取扱いしにくくなり、かえって作業効率が著しく低下してしまうという問題である。以下において、シーム溶接以外の用語において、「溶接」とあるのは、「シーム」なる語を省略したものとして説明している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、発明者は、鋭意、研究を重ね上記課題を解決するため、請求項1の発明を、被覆金属板体のX方向継手部に沿って回転駆動する電極ロールと、前記被覆金属板体のTジョイント部箇所に連続したY方向継手部の箇所を感知する位置センサとを備え、前記Y方向継手部に接触して反応するセンサ用動作棒と、前記電極ロールにてシーム溶接する時間及び進行方向を適宜制御できるようにしたことを特徴とするシーム溶接機としたことで、前記課題を解決した。
【0012】
請求項2の発明を、請求項1において、前記電極ロールは水平面上且つ左右対称に配置されると共に回転駆動可能に駆動部が設けられ、前記Tジョイント部箇所に連続したY方向継手部の箇所の立上り部箇所に対応する伸縮自在のセンサ用取付板を備えてなることを特徴とするシーム溶接機としたことで、前記課題を解決した。
【0013】
請求項3の発明を、長尺な主板の幅方向両側に側部立上り部を形成した被覆金属材相互の両側部立上り部にてY方向継手部を構成し、これらを順次繰り返して葺成した一部被覆金属板体と、該一部被覆金属板体の連続した端部立上り部と、別に葺成した一部被覆金属板体の前記側部立上り部とによるX方向継手部との交差部にて存在するTジョイント部を備えた被覆金属板体において、前記X方向継手部に沿って駆動するシーム溶接機の両電極ロールにて通常の前進溶接し、前記シーム溶接機に設けられた位置センサにて前記Tジョイント部箇所に連続した前記Y方向継手部の箇所で前記位置センサを感知させ、第1設定時間分で前記Tジョイント部箇所を溶接しつつ前進溶接して停止させ、停止直後に、前記Tジョイント部箇所を通過するようにして第2設定時間分を後退溶接して停止させ、停止直後に通常の前進溶接することを特徴とするシーム溶接による被覆金属板体の溶接施工法としたことで、前記課題を解決した。
【0014】
請求項4に開示の方法を、請求項3において、前記シーム溶接機には前記両電極ロールを駆動させる駆動部が設けられると共に、前記位置センサは、前記シーム溶接機の前側位置において左右側方向に幅調整可能な調整板材が少なくとも一方側に設けられ、該調整板材に前記位置センサの本体部が固定され、前記位置センサ下端のセンサ用動作棒が前記Y方向継手部上端に接触可能に構成されてなることを特徴とするシーム溶接による被覆金属板体の溶接施工法としたことで、前記課題を解決した。
【0015】
請求項5に開示の方法を、請求項3又は4において、前記Tジョイント部のX方向継手部における厚肉部が、平面的に観察して、前記被覆金属板体における前記Tジョイント部箇所の前記Y方向継手部位置と、前記シーム溶接機の両電極ロールとのX方向の位置関係において、前記Tジョイント部を構成する折曲した部位が内側に存在する場合には、前記厚肉部の中間位置に前記両電極ロールが達したときを基準位置としてシーム溶接制御してなることを特徴とするシーム溶接による被覆金属板体の溶接施工法としたことで、前記課題を解決した。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明においては、シーム溶接する時間及び進行方向を適宜制御できるようにしたことにより、被覆金属板体の継手部及びTジョイント部を、自動で、往復のみならず複数回シーム溶接することができる。又、自動的に溶接作業を行うため、作業時間の大幅な短縮ができ、作業員の負担を大幅に軽減することができる。
【0017】
請求項2の発明においては、伸縮自在のセンサ用取付板を設けたことにより、施工時に異なるTジョイント部箇所に連続したY方向継手部の箇所の立上り部箇所が存在していた場合においても、前記センサ用取付板によって立ち上がり箇所を適宜検出することができる。
【0018】
請求項3に開示の施工法には、位置センサによりTジョイント部を往復してシーム溶接することにより、極めて安定したシーム溶接ができると共に、効率的にTジョイント部をシーム溶接することを可能とした。該施工法では、一度Tジョイント部を溶接し、熱を加えられたことにより溶接した継手部及びTジョイント部が適宜溶解してやわらくなることで、加熱条件下でその後往復してシーム溶接することで前記Tジョイント部の隙間を埋めるように溶接し易くすることができるため、水密性の高い被覆金属板体を実現できる。
【0019】
請求項4及び請求項5に開示の施工法には、多様なTジョイント部の形状であっても、安定した水密性が確保されたシーム溶接をすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(A)は本発明の施工法の要部斜視図、(B)は(A)の平面図である。
図2】(A)は被覆金属材の一部斜視図、(B)は被覆金属板体における施工途中の平面図である。
図3】(A−1)、(A−2)、(A−3),(B−1)、(B−2)、(B−3)は第1実施形態の施工法の順序工程を示す側面図、平面図及び側面図の拡大図である。
図4】(C−1)、(C−2)、(C−3),(D−1)、(D−2)、(D−3)は第1実施形態の施工法の順序工程を示す一部側面図、平面図及び側面図の拡大図である。
図5】(E−1)、(E−2)、(E−3),(F−1)、(F−2)、(F−3)は第1実施形態の施工法の順序工程を示す一部側面図、平面図及び側面図の拡大図である。
図6】(A)は第1実施形態の施工法の要部簡易平面図、(B)は第2実施形態の施工法の要部簡易平面図である。
図7】本発明の一部省略したシーム溶接機の簡略斜視図である。
図8】(A)は従来技術としてのTジョイント部のシーム溶接状態を示す概略図、(B)は吊子を用いて被覆金属材相互をシーム溶接した状態の一部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明すると、図1乃至図8は本発明の第1実施形態及び第2実施形態が記載されている。これらの実施形態では、自動往復機能を備えたシーム溶接機本体部1を用いて、平面的に大きな水密平坦面を構成する被覆金属板体8をシーム溶接する施工法について記載している。
【0022】
先ず、本発明の自動往復機能を備えたシーム溶接機本体部1は、図1及び図7が示すように、シーム溶接機本体部1の構成として駆動部2、電極ロール3,3、位置センサ4、センサ用動作棒41、センサ用取付板5等から構成されている。図中12はローラー部、13は持ち手部である。
【0023】
前記駆動部2は、電動機が使用され、第1実施形態及び第2実施形態及ではサーボモータを使用している。駆動部2としては、他にステッピングモータを使用してもよい。この制御部が存在し、各スイッチ及びタイマー等が存在するが図面では省略する。
【0024】
前記シーム溶接機本体部1の下面側で、且つ前方部には、左右方向に電極ロール3,3が装着されている。電極ロール3,3はシーム溶接機本体部1の駆動部2に歯車機構等を介して連結されている。電極ロール3,3は、図1(A)及び(B)に示すように、その厚さ方向の中央部の直径が大きく、断面としてみると厚さ方向の中央箇所が三角形状又は台形形状に膨出形成されている。
【0025】
該電極ロール3,3は、前記駆動部2により、相互に反対に回動することができる。該電極ロール3,3が後述する、Y方向変換X方向継手部86又はTジョイント部88を、相互に反対方向に回動することにより、図1(B)が示すように自走をしながらシーム溶接を施していくものである。
【0026】
シーム溶接機本体部1の下面側で、且つ前方部には駆動部2に歯車機構等を介して連結されている電極ロール3,3が左右にあり、該電極ロール3,3には、電極ロール冷却用筒型部材に装着されており、該電極ロール冷却用筒型部材に備えているものに円筒型加圧調整器6がある(図7点線位参照)。該円筒型加圧調整器6は、駆動部2に歯車機構を介して連結されている電極ロール3,3の加圧調整を行う機能を有している。
【0027】
前記シーム溶接機本体部1の前方側に、左右対称のセンサ用取付板5,5が幅方向に伸縮可能に取付けられている。適宜一方側の該センサ用取付板5の端に、前記位置センサ4が装着されている。前記センサ用取付板5は前記位置センサ4の位置(シーム溶接機本体部1の幅方向の位置)を任意の箇所に移動する機能を有しており、移動に際には付属の蝶ボルトを緩め、任意の位置を設定したら蝶ボルトを締めて固定を行う。
【0028】
前記センサ用取付板5に付属しているものが、位置センサ4である。該位置センサ4,4は接触式の感知センサを使用しており、バネによって可動するピンによって、接点の開閉が行われるスイッチであり、物体の有無を、前記センサ用動作棒41を動作させることによって障害物を検知し、該位置センサ4が作動する構造である。
【0029】
前記センサ用動作棒41は前記位置センサ4に付属しており、高さ調整機能を備えている。即ち、障害物を検知させる場合には、位置センサ4の一定以上の傾きが必要であり、センサ用動作棒41の位置関係が位置センサ4,4の作動に影響を及ぼす場合があるため、センサ用動作棒41に対する調整機能を付与している。
【0030】
また、前記シーム溶接機本体部1の後方側には、タイマー機能を備え、前記駆動部2を介して前記電極ロール3,3の前進する時間及び後退する時間を任意に設定できるものとしている。第1実施形態では、前記センサ用取付板5と位置センサ4及びセンサ用動作棒41は、シーム溶接機本体部1の左右の一方側のみに設けられているが[図1(A)及び(B)参照]、場合によっては前記シーム溶接機本体部1の左右側に設けることもあり(図7参照)、この場合には、左右側を別々に独立してのタイマー制御を行うものである。
【0031】
また、前記シーム溶接機本体部1は自動走行するために、図示しない電子制御盤は必須であり、該シーム溶接機本体部1とケーブルを介して接続されている溶接電源となる。高周波インバータトランスを内蔵しており、定電流制御方式を採用し、各種の数値の設定はタッチパネル方式のモニター等を介して行う。なお定電流制御方式は、標準周波数で動作する固定制御モードと設定電流に対して周波数が変化する可変制御モードを備えている。
【0032】
また、前記シーム溶接機本体部1に少なくとも一つ以上付属している持ち手部13があり、該持ち手部13は、作業時の持ち運びに配慮した配置としているので、設置個所の変更を容易な構造としているので、その取付の際の自由度は高く、取付容易性に優れ、従来機より軽量化に成功した本発明のシーム溶接機の重量と相まって作業者の負担を大幅に軽減することができる。
【0033】
次に、シーム溶接をする被覆金属板体8及びTジョイント部88について説明する。図1(B)及び図2(A),(B)に示すように、長尺な主板81の幅方向両側に側部立上り部82,82を形成した被覆金属材87が基本単位部材として構成され、該被覆金属材87,87相互がシーム溶接接合されて、平面的に大きな水密平坦面をなす適宜な被覆金属板体8が構成されている。
【0034】
前記被覆金属材87の側部立上り部82に、隣接の被覆金属材87の側部立上り部82がシーム溶接されY方向継手部83が形成され、これを順次繰り返して葺成され、該Y方向継手部83の端部寄りのみを主板81面に当接するように折曲してこの部分と共に、長手方向一端に端部立上り部84を連続的に形成した一部被覆金属板体が存在したとする(図2[B]下側部材参照)。
【0035】
該一部被覆金属板体の連続した端部立上り部84に、別に葺成した一部被覆金属板体の前記被覆金属材87の側部立上り部82がシーム溶接されてX方向継手部85が形成されたものを被覆金属板体という(図2[B]全体参照)。又、別に葺成した一部被覆金属板体では、前記Y方向継手部83のY方向がX方向となり、これをY方向変換X方向継手部86という。なお、前記別に葺成した一部被覆金属板体に替わり、単に1枚のみの前記被覆金属材87の場合もある。
【0036】
本発明における、第1実施形態及び第2実施形態では、前記被覆金属板体8のTジョイント部88を含むX方向継手部85をシーム溶接する施工法である。又、通常であれば、Tジョイント部88の箇所を除くX方向継手部85の間に吊子aが設けられていることが一般的であるが、各実施形態を簡単に説明するため、省略することとした。具体的には、図8(B)に示すように、吊子aの部材の立上り部と共に、前記継手部は3枚になるが、この発明では省略した。
【0037】
次に、本発明の第1実施形態について、図3乃至図5に基づいて説明する。この第1実施形態では、図6(A)に示すように、X方向継手部85におけるシーム溶接機本体部1の進行方向(前方及び後方を含む)に対して、Tジョイント部88が、Y方向継手部83よりシーム溶接機本体部1側に形成されている被覆金属板体8でのシーム溶接を想定している。
【0038】
先ず、シーム溶接機本体部1が前記Tジョイント部88に向かってX方向継手部85を前進しながら通常のシーム溶接を行う[図3(A−1)、(A−2)及び(A−3)参照]。このとき、センサ用取付板5と位置センサ4及びセンサ用動作棒41は電極ロール3,3より前方に設けられ、且つ前記センサ用動作棒41は被覆金属板体8の表面に対して垂直となるように設けられている。又、センサ用動作棒41がY方向継手部83の側端部(折曲部分)以外の部分に接触できるように、センサ用取付板5,5と位置センサ4,4及びセンサ用動作棒41,41が調整された状態にある。
【0039】
次に、上記状態からさらにTジョイント部88に向かって前進すると、センサ用動作棒41がY方向継手部83に接触し、該センサ用動作棒41及び位置センサ4が傾けられていく。一定以上傾くと前記センサ用動作棒が動作する[図3(B−1)、(B−2)及び(B−3)参照]。
【0040】
前記位置センサ4が動作するときは、Y方向継手部83から電極ロール3,3の中心点の距離をm、Y方向継手部83からTジョイント部88の幅分の距離(倒れ幅)をn、とすると[図6(A)参照]、「m−n/2=0」となるときに動作するように制御されている。つまり、ほぼTジョイント部88の中心位置に電極ロール3,3が到達したところで位置センサ4が動作するように制御されている。
【0041】
位置センサ4が動作すると、その後、一定時間前進した後に停止し[図4(C−1)、(C−2)及び(C−3)参照]、そして、その後一定時間後退する状態が続き[図4(D−1)、(D−2)及び(D−3)参照]、再び停止する[図5(E−1)、(E−2)及び(E−3)参照]。その後通常の前進溶接に戻る[図5(F−1)、(F−2)及び(F−3)参照]。このように、Tジョイント部88をすべて自動で合計3度シーム溶接することが可能となる。なお、前述の前進と後退の一定時間は任意の時間を使用者が入力することができる。
【0042】
次に本発明の第2実施形態について、図6(B)に基づいて説明する。前述の施工法では、図に示したようにTジョイント部88がY方向継手部83より内側(シーム溶接本体部1側)に存在するときの施工法であるが、この第2実施形態においてはTジョイント部88が外側に形成されている被覆金属板体8でのシーム溶接を想定している。
【0043】
本実施形態でのシーム溶接の流れとしては、第1実施形態と同様、Tジョイント部88に向かって前進しながら通常のシーム溶接を行い、Y方向継手部83に位置センサ4が接触後一定の傾きによりセンサが動作したあと、一定時間前進して停止する。その後一定時間後退したあと再び停止することで、Tジョイント部88をすべて自動で合計3度シーム溶接することが可能となる。
【0044】
ここで、前述した通り、第1実施形態におけるTジョイント部88の位置が異なるため、第1実施形態と同一の時間設定にしてしまうと、Tジョイント部88のすべてを往復シーム溶接できない場合がある。また、m−n/2=P(プラスの適宜な有理数)として制御することもある。
【0045】
そこで、第2実施形態においては、Y方向継手部83から電極ロール中心点の距離をm、Y方向継手部83からTジョイント部88の幅分の距離をn、とすると、「m+n/2=−X(第1実施形態で、P=0としたとすると、進行方向の適宜の前側位置となり適宜なマイナスの有理数となる。)」(図6(B)参照)となることから、つまりは、Tジョイント部88の中心位置より後方に電極ロール3,3が到達したときに位置センサ4が動作するように制御されるようにした。従って、第1実施形態の施工法より前進の設定時間より長い時間を設定することで、前述の施工法と同じようにTジョイント部88をすべて自動で合計3度シーム溶接することが可能となる。
【0046】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。例えば、シーム溶接本体部1を支持しているローラー部12について、形状は適宜変更可能であり、ローラー以外のものであってもよく要はシーム溶接本体部1を移動させることのできるものであれば良い。
【0047】
また、本発明のシーム溶接機を用いてのシーム溶接は、Tジョイント部88以外にも、隣接する被覆金属材相互の対向する立上り部同士を重合している箇所のシーム溶接、いわゆる一般部といわれる個所のシーム溶接を行えることも当然可能である。
【0048】
さらに、駆動部2や溶接スイッチ部11等の構成は、上記実施形態に係る構成に限定されず、各種構成のものを適用可能であることは言うまでもない。また、前記位置センサ4は接触型であるが、該位置センサ4に替えて非接触型センサを使用することも思料できる。非接触型センサとしては、例えば光電センサやフォトマイクロセンサが挙げられる。この場合には、Y方向継手部83を感知できる非接触型センサを適宜選択する必要がある。
【符号の説明】
【0049】
1…シーム溶接機本体部、11…溶接スイッチ部、12…ローラー部、
13…持ち手部、2…駆動部、3…電極ロール、4…位置センサ、
41…センサ用動作棒、5…センサ用取付板、8…被覆金属板体、81…主板、
82…側部立上り部、83…Y方向継手部、85…X方向継手部、
86…Y方向変換X方向継手部、87…被覆金属材、88…Tジョイント部。
図1
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図8