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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-77686(P2019-77686A)
(43)【公開日】2019年5月23日
(54)【発明の名称】TLRリガンド固定化ナノ粒子
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20190426BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20190426BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20190426BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20190426BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20190426BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20190426BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20190426BHJP
【FI】
   A61K45/00
   A61K39/39
   A61P37/04
   A61K9/16
   A61K47/02
   A61K47/26
   B82Y5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】41
(21)【出願番号】特願2018-202064(P2018-202064)
(22)【出願日】2018年10月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-206818(P2017-206818)
(32)【優先日】2017年10月26日
(33)【優先権主張国】JP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(71)【出願人】
【識別番号】307011381
【氏名又は名称】株式会社スディックスバイオテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】隅田 泰生
(72)【発明者】
【氏名】新地 浩之
(72)【発明者】
【氏名】若尾 雅広
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
【Fターム(参考)】
4C076AA31
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC07
4C076DD21A
4C076DD67
4C084AA17
4C084AA27
4C084MA05
4C084MA41
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA06
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C085AA03
4C085AA38
4C085DD86
4C085EE06
4C085FF21
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C085GG06
(57)【要約】
【課題】アジュバントとして利用可能な、新規のTLRリガンド固定化ナノ粒子およびその利用を提供すること。
【解決手段】TLRリガンド複合体と、金属ナノ粒子とを含み、TLRリガンド複合体は、TLRリガンドと、第1のリンカー化合物とを有し、第1のリンカー化合物は、その一端にてTLRリガンドと結合し、その他端にて金属ナノ粒子に固定化されている、TLRリガンド固定化ナノ粒子とする。
【選択図】図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TLRリガンド複合体と、金属ナノ粒子とを含み、
上記TLRリガンド複合体は、TLRリガンドと、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えた第1のリンカー化合物とを有し、
上記第1のリンカー化合物の主鎖は、その一端に上記TLRリガンドと結合したアミノ基またはカルボニル基を有し、その他端に硫黄原子を含む第1の炭化水素構造を有しており、
上記第1の炭化水素構造が上記金属ナノ粒子に固定化されていることを特徴とする、TLRリガンド固定化ナノ粒子。
【請求項2】
糖鎖リガンド複合体をさらに含み、
上記糖鎖リガンド複合体は、糖鎖と、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えた第2のリンカー化合物とを有し、
上記第2のリンカー化合物の主鎖は、その一端に上記糖鎖と結合したアミノ基またはカルボニル基を有し、その他端に硫黄原子を含む第2の炭化水素構造を有しており、
上記第2の炭化水素構造が上記金属ナノ粒子に固定化されていることを特徴とする、請求項1に記載のTLRリガンド固定化ナノ粒子。
【請求項3】
上記TLRリガンドは、TLR3、TLR4、TLR7、TLR8またはTLR9に対する結合能を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のTLRリガンド固定化ナノ粒子。
【請求項4】
上記糖鎖は、グルコース、ガラクトース、マンノース、硫酸化糖およびシアル酸からなる群から選択される1つの化合物からなる単糖、または上記群から選択される2つ以上の化合物を含むオリゴ糖もしくは多糖であることを特徴とする、請求項2に記載のTLRリガンド固定化ナノ粒子。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載のTLRリガンド固定化ナノ粒子を含むことを特徴とする、アジュバント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TLRリガンド固定化ナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
ワクチンは、ウイルスや細菌などの病原体の感染や感染症の重症化を防ぐために世界中で広く利用されている。ワクチンの接種では、弱毒化または不活化した病原体を用いて感染による免疫応答を人工的に誘導し、それにより抗体産生能や細胞傷害性を有する細胞を誘導することにより、効率的に感染症を予防することができる。近年は、ワクチン接種による感染症予防と同様のメカニズムを利用し、がん特異的に発現する抗原を用いたがんの予防および治療ワクチンの開発も活発に行われている。
【0003】
ワクチンの接種において、抗原の免疫原性が低く、ワクチンの効果が十分に得られないことがしばしば問題となっている。このような場合、ワクチンの効果を増強するアジュバント(免疫活性化剤)の利用が必要である。現在、アジュバントとして水酸化アルミニウムなどが認可されているが、既存のアジュバントでは効果が限定的で、免疫活性化能が不十分な場合があり、より効果的なアジュバントが求められている。
【0004】
ヒトの免疫システムは、自然免疫と獲得免疫とに大別され、自然免疫では、体内に進入した病原体に対して非特異的な最初の防御反応を行う。一方、獲得免疫では、既に感染した病原体に対して特異的でより強力な防御反応を行う。近年の自然免疫研究の発展から、ワクチンが十分な効果を発揮するためには、自然免疫を活性化し、効率的に獲得免疫を誘導することが重要だと考えられている。そこで、自然免疫を活性化するToll様受容体(以下、TLR(Toll-like Receptor)と称する)に結合するリガンドが新規アジュバントとして注目されている(非特許文献1、2)。
【0005】
現在、ヒトでは10種類のTLRが同定されており、TLR7の合成低分子リガンドであるイミキモドが尖圭コンジローマや悪性黒色腫の治療薬として臨床利用されている(非特許文献3)。しかし、イミキモドは全身投与後のサイトカイン放出症候群の誘発や薬物動態の問題によりその利用が皮膚への局所投与に限定されている。
【0006】
発明者らはこれまでに、TLR7の合成低分子リガンドを多糖類などの高分子担体に修飾することで、in vitroおよびin vivoでの免疫活性化能が10〜1000倍向上し、アジュバントとして有用であることを見出している(非特許文献4、5)。また、これらの高分子担体は複数の官能基を有するため、TLRリガンドだけでなく、抗原分子などの様々な化合物を同時に修飾することも可能である。抗原分子と、TLRリガンド等のアジュバントとなる分子とを、単一の担体分子に修飾することで、ワクチン効果が向上することが報告されており、様々な化合物を修飾できる担体分子は、アジュバントの効果を向上させるだけでなく、幅広い疾患に対するワクチン開発のための有力な分子基盤になると期待できる(非特許文献6、7、8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5278992号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Akira, S., Takeda, K., Nat Rev Immunol. 4:499-511(2004)
【非特許文献2】Hussein, W.M. et al., Expert Opin. Ther. Patents. 24:453-470(2014)
【非特許文献3】Hemmi, H., et al., Nat Immunol. 3:196-200(2002)
【非特許文献4】Chan, M., et al., Bioconj. Chem. 20:1194-2000(2009)
【非特許文献5】Shinchi, H., et al., Bioconj. Chem. 26:1713-1723(2015)
【非特許文献6】Khan, S., et al., J. Biol. Chem. 282:21145-21159(2007)
【非特許文献7】Schlosser, E., Vaccine. 26:1626-1637(2008)
【非特許文献8】Zom. G.G., Adv. Immunol. 114:177-201(2012)
【非特許文献9】Nakamura-Tsuruta S., et al., J. Biochem. 143:833-839(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
TLR7をはじめとする数種類のTLRは、主に細胞内のエンドソーム画分に局在するため、TLRリガンドの安全性と免疫活性化能とを向上させるためには、TLRリガンドを効率的に細胞内へ輸送することが求められる。この要求を満たすため、上述した従来技術では、多糖類またはタンパク質などの高分子担体を利用していた。
【0010】
しかし、従来技術のように、TLRリガンドや抗原化合物等の複数の化合物を高分子担体に修飾する場合、修飾する化合物に複数の官能基が存在すると、任意の結合様式で化学修飾することは容易ではない。そのため、複数の化合物を、任意の結合様式で、単一の分子に簡便に修飾可能な新たな担体分子の探索が求められる。すなわち従来技術は、さらなる改善の余地があるものであった。
【0011】
本発明の一実施形態は、上述した従来技術に存在した改善点に鑑みてなされたものであって、その目的は、アジュバントとして利用可能な、新規のTLRリガンド固定化ナノ粒子およびその利用を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らはこのような背景に立脚して研究を開始し、TLRリガンド固定化ナノ粒子の開発を行ってきた。具体的には、本発明者らが今までに開発してきた、糖鎖固定化ナノ粒子の製造技術(特許文献1、非特許文献9)をさらに改良した。その結果、チオール基を有するリンカー化合物を用いることにより様々な化合物を簡便に固定化可能な金属ナノ粒子を担体として使用することにより、新規のTLRリガンド固定化ナノ粒子の開発に成功した。
【0013】
すなわち本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
〔1〕TLRリガンド複合体と、金属ナノ粒子とを含み、上記TLRリガンド複合体は、TLRリガンドと、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えた第1のリンカー化合物とを有し、上記第1のリンカー化合物の主鎖は、その一端に上記TLRリガンドと結合したアミノ基またはカルボニル基を有し、その他端に硫黄原子を含む第1の炭化水素構造を有しており、上記第1の炭化水素構造が上記金属ナノ粒子に固定化されていることを特徴とする、TLRリガンド固定化ナノ粒子。
〔2〕糖鎖リガンド複合体をさらに含み、上記糖鎖リガンド複合体は、糖鎖と、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えた第2のリンカー化合物とを有し、上記第2のリンカー化合物の主鎖は、その一端に上記糖鎖と結合したアミノ基またはカルボニル基を有し、その他端に硫黄原子を含む第2の炭化水素構造を有しており、上記第2の炭化水素構造が上記金属ナノ粒子に固定化されていることを特徴とする、〔1〕に記載のTLRリガンド固定化ナノ粒子。
〔3〕上記TLRリガンドは、TLR3、TLR4、TLR7、TLR8またはTLR9に対する結合能を有することを特徴とする、〔1〕または〔2〕に記載のTLRリガンド固定化ナノ粒子。
〔4〕上記糖鎖は、グルコース、ガラクトース、マンノース、硫酸化糖およびシアル酸からなる群から選択される1つの化合物からなる単糖、または上記群から選択される2つ以上の化合物を含むオリゴ糖もしくは多糖であることを特徴とする、〔2〕に記載のTLRリガンド固定化ナノ粒子。
〔5〕〔1〕〜〔4〕の何れか1つに記載のTLRリガンド固定化ナノ粒子を含むことを特徴とする、アジュバント組成物。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、TLRリガンドを介してTLRと特異的に結合することができる。その結果、当該TLRリガンド固定化ナノ粒子は、免疫応答を増強する作用を有する。
【0015】
本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、細胞毒性が低く、生体に対しても安全に利用できるものであるため、極めて実用的である。
【0016】
本発明の一実施形態は、また、TLR7を介した自然免疫応答を誘導可能なアジュバントを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA)の合成経路を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド複合体(1V209−mPDA−TA)の合成経路を示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド複合体(1V209−EDA−TA)の合成経路を示す図である。
図4】糖鎖リガンド複合体(Glcα1−4Glc−mono)の合成経路を示す図である。
図5】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)のコロイド溶液を示す図である。
図6】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)の透過型電子顕微鏡画像と平均粒径を示す図である。
図7】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)をDLSで測定したときの平均粒径を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)のPositive modeによるMALDI−TOF/MS分析の結果を示す図である。
図9】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)溶液のRAW264.7細胞への添加によって産生された、TNFαの産生量を示す図である。
図10】(a)は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)溶液のヒト末梢血単核細胞(以下、hPBMCと称す)への添加によって産生された、TNF−αの産生量を示す図であり、(b)は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)溶液のhPBMCへの添加によって産生された、IFN−αの産生量を示す図である。
図11】糖鎖リガンド複合体(Manα1−6Glc−mono)の合成経路を示す図である。
図12】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)のPositive modeによるMALDI−TOF/MS分析の結果を示す図である。
図13】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)のHPLC解析の結果を示す図である。
図14】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)の透過型電子顕微鏡画像と平均粒径を示す図である。
図15】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)をDLSで測定したときの平均粒径を示す図である。
図16】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)溶液のJ774A.1細胞への添加によって産生された、IL−6の産生量を示す図である。
図17】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)溶液のマウス骨髄由来樹状細胞(以下、mBMDCと称す)への添加によって産生された、IL−6の産生量を示す図である。
図18】本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)溶液のhPBMCへの添加によって産生された、TNF−αの産生量を示す図である。
図19】(a)は、オボアルブミン(以下、OVAと称す)と本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)溶液とのマウスへの投与によって産生された、IgG1抗体の産生量を示す図であり、(b)は、OVAと本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−Man−GNP)溶液とのマウスへの投与によって産生された、IgG2c抗体の産生量を示す図である。
図20】OVAと本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)溶液とのマウスへの投与後の、マウス体重に対する脾臓の重さの割合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【0019】
なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A〜B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0020】
[1.TLRリガンド固定化ナノ粒子]
本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、TLRリガンド複合体と、金属ナノ粒子とを含み、上記TLRリガンド複合体は、TLRリガンドと、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えた第1のリンカー化合物とを有し、上記第1のリンカー化合物の主鎖は、その一端に上記TLRリガンドと結合したアミノ基またはカルボニル基を有し、その他端に硫黄原子を含む第1の炭化水素構造を有しており、上記第1の炭化水素構造が上記金属ナノ粒子に固定化されているものである。
【0021】
本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、上記構成を有するため、TLRリガンドを介してTLRと特異的に結合することができる。また、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、TLRが存在する細胞内小胞にTLRリガンドを高濃度に輸送できる。これらの結果、当該TLRリガンド固定化ナノ粒子は、免疫応答を増強する作用を有する。
【0022】
また、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、上記構成を有するため、細胞毒性が低く、生体に対しても安全に利用できるものであるため、極めて実用的であるという利点を有する。
【0023】
さらに、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、上記構成を有するため、TLRを介した自然免疫応答を誘導可能なアジュバントを提供することができる。
【0024】
本明細書において、「TLRリガンド固定化ナノ粒子」とは、以下に詳述するTLRリガンド複合体および糖鎖リガンド複合体のそれぞれと金属ナノ粒子とを結合させてなるものである。なお、金属ナノ粒子は後述するように製造してもよいし、市販のものを使用してもよい。
【0025】
(1−1.TLRリガンド複合体)
本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子の構成要素であるTLRリガンド複合体は、TLRリガンド、および、任意の金属ナノ粒子と結合することのできる第1のリンカー化合物、から構成されている。上記TLRリガンドは、自然免疫応答を活性化し得るTLRと、特異的に結合することができる。
【0026】
本明細書において、TLRリガンドと結合する前の化合物であって、TLRリガンド複合体において第1のリンカー化合物となり得る化合物を、第1のリンカー化合物前駆体とも称する。
【0027】
(TLRリガンド)
TLRリガンドとは、TLRに対して結合能を有する化合物または分子を意図する。ヒトでは、TLR1〜TLR10の10種類のTLRが同定されており、それぞれのTLRに対して、同一のまたは異なるTLRリガンドが存在する。本発明の一実施形態において、TLRリガンドとしては、何れのTLRに対するリガンドも使用できる。TLRリガンドとしては、天然由来リガンド(微生物、ウイルスおよびTLRを発現している生物由来のリガンド)であってもよく、合成リガンドであってもよい。TLRリガンドとしては、公知のリガンドを用いることができる。
【0028】
TLRリガンドは、TLR3、TLR4、TLR7、TLR8またはTLR9に結合して、TLRの活性を誘起するものであることが好ましい。すなわち、TLRリガンドは、TLR3、TLR4、TLR7、TLR8またはTLR9に対する結合能を有することが好ましい。TLRリガンドは、TLR4またはTLR7に対する結合能を有し、TLR4またはTLR7に結合して、TLRの活性を誘起するものであることがより好ましく、TLR7に対する結合能を有し、TLR7に結合して、TLRの活性を誘起するものであることがさらに好ましい。
【0029】
上記構成によると、得られるTLRリガンド固定化ナノ粒子は、免疫応答をより増強する作用を有する。また、上記構成によると、得られるTLRリガンド固定化ナノ粒子は、TLRを介した自然免疫応答をより効果的に誘導可能なアジュバントを提供することができる。
【0030】
TLRリガンドは、第1のリンカー化合物を介して金属ナノ粒子に固定化された状態で、TLRと結合することによりTLRの活性を誘起してもよい。TLRが存在する細胞内小胞にTLRリガンド固定化ナノ粒子が輸送された後、TLRリガンドまたはTLRリガンド複合体は、金属ナノ粒子から遊離してもよい。すなわち、TLRリガンドは、金属ナノ粒子から遊離したTLRリガンドそのものまたはTLRリガンド複合体の状態で、TLRと結合することによりTLRの活性を誘起してもよい。
【0031】
本発明の一実施形態において、用いられ得るTLRリガンドとしては、(i)TLR4に対するTLRリガンド(以下、TLR4リガンドとも称する)であるモノホスホリルリピッドA(下記化学式(1))、4−((3−ニトロ−5−フェノキフェニル)アミノ)キナゾリン−2−カルボン酸(4−((3−nitro−5−phenoxyphenyl)amino)quinazoline−2−carboxylic acid)(下記化学式(2))、(ii)TLR7に対するTLRリガンド(以下、TLR7リガンドとも称する)であるイミキモド(下記化学式(3))および1V209(下記化学式(4))、(iii)TLR8に対するTLRリガンド(以下、TLR8リガンドとも称する)であるVTX−2337(下記化学式(5))およびチアゾロキノリン誘導体(下記化学式(6))、並びに(iv)TLR7および8に対するTLRリガンドであるCL097(下記化学式(7))およびR848(下記化学式(8))などが挙げられる。これらは全て合成リガンドである。本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、TLRリガンドを1種類のみを含んでいてもよく、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0032】
これらの中でも、TLRリガンドの免疫増強活性を失うことなく第1のリンカー化合物にTLRリガンドを容易に導入できることから、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、下記化学式(4)で表される1V209を含むことが特に好ましい。
【0033】
【化1】
【0034】
【化2】
【0035】
【化3】
【0036】
【化4】
【0037】
【化5】
【0038】
【化6】
【0039】
【化7】
【0040】
【化8】
【0041】
TLRリガンドは、縮合剤の存在下で、第1のリンカー化合物前駆体のアミノ基(例えば、−NH基)またはカルボキシ基(−COOH基)を介して、第1のリンカー化合物前駆体に容易に導入され得る。TLRリガンドは、第1のリンカー化合物前駆体と結合後、TLRへの結合親和性を失わないものを指す。なお、カルボキシ基はカルボキシル基と称される場合もあり、カルボキシ基とカルボキシル基は同義である。
【0042】
TLRリガンドは、カルボキシ基を有することが好ましい。上記構成によると、縮合剤の存在下で生じる、TLRリガンドのカルボキシ基と第1のリンカー化合物前駆体のアミノ基との反応(縮合反応またはアミド化反応とも称する。)によって、当該アミノ基を介して、第1のリンカー化合物前駆体により容易にTLRリガンドを導入することが可能である。
【0043】
カルボキシ基を有するTLRリガンドと第1のリンカー化合物前駆体との縮合反応によって得られるTLRリガンド複合体は、第1のリンカー化合物とTLRリガンドとがアミノ基を介して結合している構造(例えばアミド結合)、を有する。カルボキシ基を有するTLRリガンドとしては、TLR7リガンドである1V209が挙げられる。
【0044】
上記「カルボキシ基を持つTLRリガンド」とは、分子末端にカルボキシ基を有するTLRリガンドであれば、特に限定されるものではないが、リンカー化合物と結合後、TLRへの結合親和性を失わないものを指す。
【0045】
TLRリガンドは、アミノ基を有していてもよい。上記構成によると、縮合剤の存在下で生じる、TLRリガンドのアミノ基と第1のリンカー化合物前駆体のカルボキシ基との反応(アミド化反応)によって、当該カルボキシ基を介して、第1のリンカー化合物前駆体に容易にTLRリガンドを導入することが可能である。
【0046】
アミノ基を有するTLRリガンドと第1のリンカー化合物前駆体との縮合反応によって得られるTLRリガンド複合体は、第1のリンカー化合物とTLRリガンドとがカルボニル基を介して結合している構造(例えばアミド結合)、を有する。
【0047】
アミノ基を持つTLRリガンドとしては、特に限定されるものではないが、分子末端にアミノ基を有し、かつ、リンカー化合物と結合後、TLRへの結合親和性を失わないものが挙げられる。
【0048】
TLRリガンドと第1のリンカー化合物前駆体とのアミド化反応(縮合反応)に用いる縮合剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、HATU、COMU、およびEDC等を挙げることができる。
【0049】
(第1のリンカー化合物)
第1のリンカー化合物は、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えており、当該主鎖は、その一端に上記TLRリガンドと結合したアミノ基またはカルボニル基を有し、その他端に硫黄原子(S)を含む第1の炭化水素構造を有している。
【0050】
第1のリンカー化合物の主鎖に含まれる炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖は、炭素および水素からなる炭化水素鎖、または、一部の炭素および/または水素が他の原子または置換基に置き換わった炭化水素鎖を意図する。すなわち、上記炭化水素誘導鎖とは、炭化水素鎖の主鎖構造である炭素−炭素結合(C−C結合)の一部が、炭素−窒素結合(C−N結合)、炭素−酸素結合(C−O結合)、およびアミド結合(CO−NH結合)などに置き換わっていてもよいものを指す。
【0051】
硫黄原子を含む第1の炭化水素構造(以下、単に第1の炭化水素構造とも称する)とは、炭素および水素からなる炭化水素構造であり、一部の炭素が硫黄に置き換わっている炭化水素構造を意図する。第1の炭化水素構造は、鎖状(直鎖、および枝分かれ鎖の両方を含む)であってもよく、環状であってもよく、または、鎖状構造および環状構造の両方の構造を含んでいてもよい。
【0052】
第1の炭化水素構造は、S−S結合またはSH基を含む炭化水素構造を備えていることが好ましい。換言すると、第1のリンカー化合物は、ジスルフィド結合(S−S結合)またはチオール基(SH基)が含まれている第1の炭化水素構造を主鎖の他端に有していることが好ましい。
【0053】
上記構成によると、金属ナノ粒子に含まれる金属と第1のリンカー化合物に含まれる硫黄(S)との間に形成される金属−硫黄結合を介して、第1のリンカー化合物を容易に金属ナノ粒子に固定化することができるという利点を有する。それ故に、上記構成によると、第1のリンカー化合物は、金属ナノ粒子上に1種類以上のTLRリガンドを集合化して配列することができる。金属ナノ粒子とジスルフィド結合またはSH基中の硫黄との間で形成される金属−硫黄結合は、金属と第1のリンカー化合物との結合を強固にすることができる。金属ナノ粒子として金ナノ粒子を用いる場合、上記金属−硫黄結合は、Au−S結合である。
【0054】
第1のリンカー化合物前駆体は、一端にアミノ基を有することが好ましい。上記構成によると、アミノ基を介して、TLRリガンドを第1のリンカー化合物前駆体に簡便に導入することができる。換言すれば、第1のリンカー化合物前駆体がその一端にアミノ基を有する場合、当該アミノ基は、第1のリンカー化合物の主鎖の一端に含まれるTLRリガンドと結合したアミノ基となり得る。上記アミノ基は、修飾されているアミノ基(例えばアセチル基、メチル基、ホルミル基等で修飾されたアミノ基)または芳香族アミノ基であってもよいし、未修飾のアミノ基であってもよい。
【0055】
第1のリンカー化合物前駆体は、一端にカルボキシ基を有していてもよい。上記構成によると、カルボキシ基を介して、TLRリガンドを第1のリンカー化合物前駆体に簡便に導入することができる。換言すれば、第1のリンカー化合物前駆体がその一端にカルボキシ基を有する場合、当該カルボキシ基は、第1のリンカー化合物の主鎖の一端に含まれるTLRリガンドと結合したカルボニル基となり得る。
【0056】
第1のリンカー化合物前駆体としては、下記化学式(9)にて表される構造を有する化合物が好適に用いられ得る:
【0057】
【化9】
【0058】
(化学式(9)中、p,qはそれぞれ独立して0以上6以下の整数であり、Xは、末端にアミノ基または芳香族アミノ基を有するとともに、主鎖に炭素−窒素結合を有していてもよい炭化水素誘導鎖を、1鎖、2鎖または3鎖含んでなる構造であり、Yは、硫黄原子または硫黄原子を含む炭化水素構造であり、Zは、炭素−炭素結合または炭素−酸素結合をもつ直鎖または分岐を持つ構造である。)。
【0059】
上記Xに含まれ得る芳香族アミノ基の芳香環は、炭化水素のみで構成されていてもよく、炭素以外の元素を含む複素環であってもよい。上記Xは、下記の化学式(10)、化学式(11)、化学式(12)、化学式(13)、化学式(14)または化学式(15)にて表される構造を備えることが好ましい:
【0060】
【化10】
【0061】
【化11】
【0062】
(化学式(10)および化学式(11)中、m〜mはそれぞれ独立して0以上6以下の整数である)
【0063】
【化12】
【0064】
【化13】
【0065】
【化14】
【0066】
(化学式(14)中、nは1以上100以下の整数である。)
【0067】
【化15】
【0068】
上記Zは、下記の化学式(16)または化学式(17)であってもよい:
【0069】
【化16】
【0070】
【化17】
【0071】
(化学式(16)および化学式(17)中、nおよびnはそれぞれ1以上6以下の整数である。)。
【0072】
第1のリンカー化合物前駆体としては、下記の化学式(18)、化学式(19)、化学式(20)、化学式(21)、化学式(22)、化学式(23)、化学式(24)、化学式(25)または化学式(26)にて表される構造を有する化合物がより好適に用いられ得る:
【0073】
【化18】
【0074】
【化19】
【0075】
【化20】
【0076】
【化21】
【0077】
【化22】
【0078】
【化23】
【0079】
【化24】
【0080】
【化25】
【0081】
【化26】
【0082】
(化学式(18)、化学式(19)、化学式(20)、化学式(21)、化学式(23)および化学式(26)中、m〜mはそれぞれ独立して0以上6以下の整数であり、nおよびnはそれぞれ独立して1以上6以下の整数であり、nは1以上100以下の整数であり、qは0以上6以下の整数である。)。
【0083】
上記の化学式(18)、化学式(19)、化学式(20)、化学式(21)または化学式(22)にて表される構造を有する化合物は、例えば、チオクト酸(α−リポ酸とも称される。)と、芳香族アミノ基末端が保護基によって保護されたアミン化合物と、の縮合反応を行い、上記芳香族アミノ基末端の保護基を脱保護することによって製造され得る。
【0084】
上記の化学式(23)、化学式(24)または化学式(25)にて表される化合物は、例えば、チオクト酸とジアミノ化合物の一末端のアミノ基との縮合反応を行うことによって製造され得る。具体的には、チオクト酸とジアミノ化合物との縮合反応により、チオクト酸のカルボキシ基とジアミノ化合物の一末端のアミノ基とが縮合し、アミド結合が形成されることによって、上記の化学式(23)、化学式(24)または化学式(25)にて表される化合物を得ることができる。チオクト酸とジアミノ化合物との縮合反応にジアミノ化合物を供する前に、ジアミノ化合物の一末端のアミノ基を、保護基によって保護してもよい。この場合、縮合反応後に、保護基によって保護されたアミノ基の保護基を脱保護することにより、上記の化学式(23)、化学式(24)または化学式(25)にて表される化合物を得ることができる。
【0085】
上記化学式(26)にて表される構造を有する化合物は、例えば、γ−メルカプト酪酸の2量体と、2分子の芳香族アミノ基末端が保護基によって保護されたアミン化合物との縮合反応を行い、上記芳香族アミノ基末端の保護基を脱保護することによって製造され得る。
【0086】
上記チオクト酸は、
【0087】
【化27】
【0088】
にて表される構造を備えている。また、上記アミン化合物は、保護基によって保護された芳香族アミノ基末端を有するものであれば特に限定されるものではない。
【0089】
上記保護基とは、アミノ基(例えば芳香族アミノ基のアミノ基、またはジアミノ化合物の一末端のアミノ基)が上記縮合反応によって反応しないように導入される置換基である。このような保護基は、特に限定されるものではないが、例えば、t−ブトキシカルボニル基(−COOC(CH基;以下、Boc基とも称する。)、ベンジル基、アリルカルバメート基(−COOCHCH=CH、Alloc基)等を挙げることができる。
【0090】
上述したような第1のリンカー化合物前駆体を用いて、TLRリガンド複合体を製造することができる。具体的には、縮合剤の存在下で、第1のリンカー化合物前駆体に含まれる(例えば上記Xに含まれる)アミノ基または芳香族アミノ基を介して、TLRリガンドを第1のリンカー化合物前駆体に導入することにより、TLRリガンド複合体を得ることができる。
【0091】
第1のリンカー化合物前駆体としては、上記チオクト酸を使用してもよい。具体的には、縮合剤の存在下で、チオクト酸(第1のリンカー化合物前駆体)に含まれるカルボキシ基を介して、TLRリガンドをチオクト酸に導入することにより、TLRリガンド複合体を得ることができる。
【0092】
このようにして得られたTLRリガンド複合体は、第1のリンカー化合物に含まれる(例えば上記Yに含まれる)硫黄(S)と、金属ナノ粒子に含まれる金属との間に形成される金属−硫黄結合を介して、強固にかつ簡便に金属ナノ粒子に固定化され得る。このため、TLRリガンドを金属ナノ粒子表面に容易に固定化することができる。
【0093】
(1−2.金属ナノ粒子)
金属ナノ粒子としては、ナノ粒子であり、かつ少なくとも粒子の表面が無機金属成分で覆われている限り、その他の構成は特に限定されない。金属ナノ粒子において、好適に用いられる金属成分としては、Si、Ge、Cd、Zn、Cu、Ag、Ga、As、In、Te、S、Auなどが挙げられるがこれらに限定されない。金属ナノ粒子の表面は、一種類の金属成分で覆われていてもよく、二種以上の金属成分で覆われていてもよい。これら金属成分の中でも、生物に対する活性が低く、かつ生物に対する毒性が低いことから、Auが好ましい。
【0094】
金属ナノ粒子の内部(表面以外の部分ともいえる)は、金属以外の材料から構成されていてもよい。金属以外の材料としては、例えば、ガラス、水晶、シリコン(例えば酸化珪素)、ポリマー樹脂(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネートなど)および炭素(グラファイト)などが挙げられる。
【0095】
本明細書中において、「ナノ粒子」は水溶液中で分散してコロイド溶液を形成するものが意図される。よって、ナノ粒子の平均粒子径は、0.5〜400nmの範囲内であることが好ましく、0.5nm〜100nmの範囲内であることがより好ましく、1nm〜100nmの範囲内であることがさらに好ましく、1nm〜20nmの範囲内であることが特に好ましい。平均粒子径が、(i)0.5nm以上である場合、低い製造コストでナノ粒子を製造できるため実用的であり、(ii)400nm以下である場合、粒子の分散安定性が経時的に変化しないという利点を有する。本明細書において、上記平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって測定した平均粒子径をいう。
【0096】
(1−3.TLRリガンド固定化ナノ粒子による免疫増強活性)
本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、TLRに対する結合を介した免疫増強活性を有することが好ましい。免疫増強活性とは、生物(個体、臓器、細胞などを含む)が有する免疫応答を増強し得る活性を意図する。上記免疫応答は、自然免疫に対する免疫応答であってもよく、獲得免疫に対する免疫応答であってもよい。
【0097】
TLRリガンド固定化ナノ粒子は、TLRに対する結合を介して、免疫応答を活性化し得る分子の産生を増加させる効果を有することが好ましい。免疫応答を活性化し得る分子としては、IL−6、IL−12、IFN−α、IFN−γ、TNF−α等が挙げられる。
【0098】
TLRリガンド固定化ナノ粒子は、免疫応答を活性化した結果として、抗体の産生を増加させる効果を有することが好ましい。上記抗体としては、例えば哺乳類ではIgAおよびそのサブクラス、IgD、IgE、IgGおよびそのサブクラス、並びにIgMが挙げられる。
【0099】
(1−4.TLRリガンド固定化ナノ粒子の製造方法)
本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、特に限定されないが、例えば、金属ナノ粒子を含む溶液と、上述した構成を有するTLRリガンド複合体を含む溶液との混和によって得ることができる。上記混和により、TLRリガンド複合体の硫黄原子(S)が、金属ナノ粒子の表面上の金属と金属−硫黄結合によって結合する。
【0100】
金属ナノ粒子として金ナノ粒子を用いる場合を例に挙げ、さらに具体的に説明する。この場合、金ナノ粒子の溶液に上記TLRリガンド複合体を含む溶液を添加する。これによって、TLRリガンド複合体のS−S結合を、金ナノ粒子の表面上の金−硫黄結合に変換することにより、TLRリガンド固定化ナノ粒子として、TLRリガンド複合体を固定化した金ナノ粒子を得ることができる。
【0101】
なお、金属が塩として溶液に含まれているときは、上記TLRリガンド複合体と混和する前に、還元剤を用いて金属を還元しておくことが好ましい。これにより、金属とTLRリガンド複合体との結合を形成しやすくすることができる。還元剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸およびその塩類、アスコルビン酸およびその塩類、リン、タンニン酸およびその塩類、エタノール、ヒドラジン等を用いることができる。
【0102】
上述した方法により得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子は、水溶液中で分散する特徴を有している。すなわち、上述した方法は、TLRリガンド固定化ナノ粒子のコロイド溶液を調製する方法でもある。
【0103】
TLRリガンド固定化ナノ粒子を調製するために用いる金属、TLRリガンド複合体、および任意で還元剤、の各々の混合比は、特に限定されるものではない。金属が塩化金酸またはその塩類である場合を例に挙げて、混合溶液中の各成分の濃度について説明する。
【0104】
混合溶液における、塩化金酸またはその塩類の最終濃度は0.1mM〜10mMであることが好ましく、0.1mM〜5mMであることがより好ましく、0.1mM〜1mMであることがさらに好ましい。混合溶液における、還元剤の最終濃度は、塩化金酸またはその塩類のモル濃度の3〜10倍モル濃度であることが好ましく、4〜5倍モル濃度であることがさらに好ましい。混合溶液における、TLRリガンド複合体の最終濃度は、0.01mM〜1mMであることが好ましく、0.1mM〜5mMであることがより好ましく、0.1mM〜1mMであることがさらに好ましい。
【0105】
金属ナノ粒子およびTLRリガンド複合体を含む溶液に用いる溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、超純水、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メタノール、およびこれらの混合溶媒等を挙げることができる。また、上述した方法によって得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子をさらに透析または遠心濾過することにより、低分子の塩等の成分を除くことができる。これにより、溶液状態で安定なTLRリガンド固定化ナノ粒子を得ることができる。
【0106】
本発明の一実施形態では、1種類の第1のリンカー化合物前駆体と、1種類のTLRリガンドとを用いて製造された、1種類のTLRリガンド複合体のみを金属ナノ粒子に固定化して、TLRリガンド固定化ナノ粒子としてもよい。
【0107】
本発明の一実施形態では、1種類の第1のリンカー化合物前駆体と、2種類以上のTLRリガンドとを用いて製造された、2種類以上のTLRリガンド複合体を金属ナノ粒子に固定化して、TLRリガンド固定化ナノ粒子としてもよい。
【0108】
本発明の一実施形態では、2種類の第1のリンカー化合物前駆体と、1種類以上のTLRリガンドとを用いて製造された、2種類以上のTLRリガンド複合体を金属ナノ粒子に固定化して、TLRリガンド固定化ナノ粒子としてもよい。
【0109】
(1−5.糖鎖リガンド複合体)
本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、糖鎖リガンド複合体をさらに含むことが好ましい。上記糖鎖リガンド複合体は、糖鎖と、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えた第2のリンカー化合物とを有し、上記第2のリンカー化合物の主鎖は、その一端に上記糖鎖と結合したアミノ基またはカルボニル基を有し、その他端に硫黄原子を含む第2の炭化水素構造を有しており、上記第2の炭化水素構造が上記金属ナノ粒子に固定化されているものである。すなわち、上記糖鎖リガンド複合体は、金属ナノ粒子に固定化されている。
【0110】
本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、上述の構成を有する糖鎖リガンド複合体をさらに含有することによって、糖鎖リガンド複合体の金属ナノ粒子への固定化を通して、金属ナノ粒子に固定化したTLRリガンド複合体の局所密度を好適に調整することができる。
【0111】
すなわち、TLRリガンド複合体と糖鎖リガンド複合体とを、金属ナノ粒子に共固定化することによって、金属ナノ粒子に固定化したTLRリガンド複合体の局所密度が調整されたTLRリガンド固定化ナノ粒子もまた、本発明の一実施形態の範囲内である。
【0112】
本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、また、上述の構成を有する糖鎖リガンド複合体をさらに含有することによって、後述する実施例に示すように、TLRリガンド固定化金属ナノ粒子の親水性を増すことができる。したがって、水中で安定に分散し、さらに糖鎖が持つ特徴も有するTLRリガンド固定化金属ナノ粒子を得ることができる。
【0113】
本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、また、上述の構成を有する糖鎖リガンド複合体をさらに含有することによって、免疫応答をより増強する作用を有し得る。免疫応答をより増強可能な理由としては、以下のような理由が考えられるが、本発明の一実施形態は当該理由によって制限されるものではない。
【0114】
すなわち、樹状細胞およびマクロファージなどの抗原提示細胞の細胞膜表層には、外来異物を捕捉するためのマンノース受容体、マクロファージガラクトースレクチンなどのC型レクチン受容体、などの糖鎖受容体が発現している。そのため、TLRリガンド固定化ナノ粒子が糖鎖リガンド複合体をさらに含有することにより、抗原提示細胞にTLRリガンド固定化ナノ粒子を効率的に輸送できるようになる。その結果、免疫応答がより増強されるものと考えられる。本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、上述の構成を有する糖鎖リガンド複合体をさらに含有することによって、より効果的なアジュバントを提供できると期待できる。
【0115】
本明細書において、糖鎖と結合する前の化合物であって、糖鎖リガンド複合体において第2のリンカー化合物となり得る化合物を、第2のリンカー化合物前駆体とも称する。
【0116】
(糖鎖)
本発明の一実施形態で用いられ得る糖鎖としては、1つ以上の糖を有する限り、その他の構成は特に限定されない。すなわち、糖鎖には、単糖も含まれる。糖鎖は、糖がグリコシド結合によって複数結合した化合物であってもよい。すなわち、糖鎖には、オリゴ糖または多糖も含まれる。
【0117】
糖鎖は、公知の方法により、第2のリンカー化合物前駆体のアミノ基(例えば、−NH基)またはカルボキシ基(−COOH基)を介して、第2のリンカー化合物前駆体に容易に導入され得る。第2のリンカー化合物前駆体により容易に導入することができることから、糖鎖は還元末端を有することが好ましい。上記構成によると、糖鎖の還元末端と第2のリンカー化合物前駆体のアミノ基との還元アミノ化反応により、当該アミノ基を介して、第2のリンカー化合物前駆体により容易に糖鎖を導入することが可能である。
【0118】
上記還元アミノ化反応の具体例を以下に説明する。すなわち、平衡によって生じる糖鎖中のアルデヒド基(−CHO基)またはケトン基(−CRO基、ここでRは炭化水素基)と、第2のリンカー化合物前駆体のアミノ基(例えば、−NH基)とが反応する。そして、この反応によって形成されたシッフ塩基を引き続き還元することによって、アミノ基を介して、第2のリンカー化合物前駆体により容易に糖鎖を導入することができる。還元末端を有する糖鎖と第2のリンカー化合物前駆体との還元アミノ化反応によって得られる糖鎖リガンド複合体は、第2のリンカー化合物と糖鎖とがアミノ基を介して結合している構造(例えばアミド結合)、を有する。
【0119】
上記「還元末端を有する糖鎖」とは、アノマー炭素原子が置換を受けていない単糖、オリゴ糖鎖、または多糖鎖などが挙げられる。上記還元末端を有する糖鎖とは、還元糖鎖であるともいえる。
【0120】
糖鎖は、還元末端を有していなくてもよく、例えば末端にアルキルアミン、またはアミノ基など有していてもよい。上記構成によると、縮合剤の存在下で生じる、糖鎖のアルキルアミンまたはアミノ基と第1のリンカー化合物前駆体のカルボキシ基との反応によって、当該カルボキシ基を介して、第1のリンカー化合物前駆体に容易に糖鎖を導入することが可能である。
【0121】
アルキルアミンまたはアミノ基を有する糖鎖と第1のリンカー化合物前駆体との縮合反応によって得られる糖鎖リガンド複合体は、第1のリンカー化合物と糖鎖とがカルボニル基を介して結合している構造(例えばアミド結合)、を有する。
【0122】
糖鎖が、オリゴ糖または多糖である場合、同一の糖からなる単一オリゴ糖または多糖であってもよいし、種々の糖もしくはその誘導体からなる複合糖であってもよい。上記糖鎖を構成する単糖、オリゴ糖または多糖は、いずれも、自然界から単離および精製して得られる種々の天然の糖であってもよく、人工的に合成された糖であってもよい。上記単糖またはオリゴ糖は、多糖を分解して得られたものであってもよい。上記オリゴ糖または多糖は、糖により形成された直鎖状の構造を有していてもよく、糖により形成された枝分かれした構造(分枝構造)を有していてもよい。また、糖鎖としては、市販のものを利用することもできる。
【0123】
糖鎖を構成する糖としては、特に限定されるものではないが、グルコース、ガラクトース、マンノース、マルトース、イソマルトース、ラクトース、パノース、セロビオース、メリビオース、マンノオリゴ糖鎖、キトオリゴ糖鎖、ラミナリオリゴ糖鎖、グルコサミン、N−アセチルグルコサミン、グルクロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、などの還元末端を有する糖が好適に用いられ得る。また、シアリルラクトース等のシアル酸を有する糖、およびデキストラン硫酸などの硫酸化糖(硫酸基を有する糖)も好適に用いられ得る。
【0124】
具体的には糖鎖としては、Glc、GlcNAc、Gal、Glcα1−4Glc、Glcα1−4Glcα1−4Glc、Glcα1−6Glc、Glcα1−6Glcα1−6Glc、Glcβ1−3Glcβ1−3Glc、Glcβ1−4Glc、Glcβ1−6Glc、Galα1−6Glc、Galα1−4Galβ1−4Glc、Galβ1−3GalNAcα1−6Glc、Galβ1−4GlcNAcβ1−6Glc、Galβ1−4Glc、Galβ1−4[Fucα1−2]GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc、Manα1−2Man、Manα1−3Manα1−6Man、Manα1−6Man、Fucα1−2Galβ1−4Glc、Fucα1−6Glc、Fucβ1−6Glc、Xylβ1−6Glc、GlcNAcα1−6Glc、GlcNAcβ1−4GlcNAc、GlcNAcβ1−6Glc、GlcNAcβ1−3Galβ1−4GlcNAcβ1−3Galβ1−4Glc、GalNAcα1−6Glc、GalNAcβ1−3Gal、Neu5Acα2−3Galβ1−4Glc、Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAc、Neu5Acα2−3Galβ1−3GlcNAcβ1−6Glc、Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−6Glc、Neu5Acα2−6Galβ1−4Glc、Neu5Acα2−6Galβ1−3GlcNAcβ1−6Glc、Neu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−6Glc、GlcNS6Sα1−4IdoA2Sβ1−6Glc、Galβ1−4GlcGalβ1−4GlcNAcβ1−6Glc、Neu5Acα2−3Galβ1−4Glc、Neu5Acα2−6Galβ1−4Glc、Neu5Acα2−3Galβ1−3GlcNAcβ1−6Glc、Neu5Acα2−6Galβ1−3GlcNAcβ1−6Glc、Neu5Acα2−3Galβ1−4GlcNAcβ1−6Glc、Neu5Acα2−6Galβ1−4GlcNAcβ1−6Glc、GlcAβ1−3GalNAc4Sβ1−6Glc、GlcAβ1−3GalNAc6Sβ1−6Glc、GlcA2Sβ1−3GalNAc6Sβ1−6Glc、GlcAβ1−3GalNAc4S6Sβ1−6Glc、GlcNS6Sα1−4IdoA2Sα1−6Glc、GlcNSα1−4IdoA2Sα1−6Glc、GlcNS6Sα1−4GlcA2Sβ1−6Glc、GlcNSα1−4GlcAβ1−6Glc等を挙げることができる。
【0125】
なお、本明細書において、略語「Glc」はグルコース(Glucose)を、略語「Gal」はガラクトース(Galactose)を、略語「Man」はマンノース(Mannose)を、略語「Fuc」はフコース(Fucose)を、略語「Xyl」はキシロース(Xylose)を、略語「NAc」はN−アセチル(N-Acetyl)を、略語「Ido」はイドース(Idose)を、略語「Neu5Ac」はN−アセチルノイラミン酸(N-Acetylneuraminic acid)を、略語「GlcA」はグルクロン酸(Glucuronic acid)を、略語「IdoA」はイズロン酸(Iduronic aid)を、糖鎖の化学式中に表される「S」はスルフォニル(硫酸基)をそれぞれ表す。例えば、GlcAβ1−3GalNAc4Sβ1−6Glcにおける「4S」は4−O−硫酸を表す。
【0126】
また、糖鎖の化学式における「α」または「β」は、還元末端側の糖の水酸基がαまたはβの立体構造で隣り合う糖の水酸基と結合していることを示す。例えば、「α1−4」は還元末端側の糖の1位水酸基がαの立体構造で隣り合う糖の4位の水酸基と結合していることを示す。
【0127】
上記糖鎖は、グルコース、ガラクトース、マンノースおよびシアル酸からなる群から選択される1つの化合物からなる単糖、または上記群から選択される2つ以上の化合物を含むオリゴ糖もしくは多糖であることが好ましい。上記構成によると、得られるTLRリガンド固定化ナノ粒子は、免疫応答をさらに増強する作用を有し得る。
【0128】
本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、糖鎖を1種類のみを含んでいてもよく、2種類以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0129】
(第2のリンカー化合物)
第2のリンカー化合物は、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えており、当該主鎖は、その一端に上記糖鎖と結合したアミノ基またはカルボニル基を有し、その他端に硫黄原子(S)を含む第2の炭化水素構造を有している。
【0130】
第2のリンカー化合物の主鎖に含まれる炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖、および第2の炭化水素構造の態様は、それぞれ第1のリンカー化合物の主鎖に含まれる炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖、および第1の炭化水素構造の態様と同様であってもよい。すなわち、上記(第1のリンカー化合物)の項の説明を適宜援用できる。第2の炭化水素構造の態様が、第1の炭化水素構造の態様と同様である場合、第2のリンカー化合物は、金属ナノ粒子上に2種類以上の糖鎖を集合化して配列することができる。
【0131】
第2のリンカー化合物前駆体は、一端にアミノ基を有することが好ましい。上記構成によると、アミノ基を介して、糖鎖を第2のリンカー化合物前駆体に簡便に導入することができる。換言すれば、第2のリンカー化合物前駆体がその一端にアミノ基を有する場合、当該アミノ基は、第2のリンカー化合物の主鎖の一端に含まれる糖鎖と結合したアミノ基となり得る。上記アミノ基は、修飾されているアミノ基(例えばアセチル基、メチル基、ホルミル基等で修飾されたアミノ基)または芳香族アミノ基であってもよいし、未修飾のアミノ基であってもよい。上述したように、糖鎖は、好ましくは、糖鎖と第2のリンカー化合物との還元アミノ化反応によって製造され得る。還元アミノ化反応の最適条件であるpH3〜4においては、アミノ基がプロトン化されないことが必要である。そのため、芳香族との共役によってpH3〜4でも非共有電子対が窒素原子上に存在する芳香族アミノ基が好ましい。
【0132】
第2のリンカー化合物前駆体は、一端にカルボキシ基を有していてもよい。上記構成によると、カルボキシ基を介して、糖鎖を第2のリンカー化合物前駆体に簡便に導入することができる。換言すれば、第2のリンカー化合物前駆体がその一端にカルボキシ基を有する場合、当該カルボキシ基は、第2のリンカー化合物の主鎖の一端に含まれる糖鎖と結合したカルボニル基となり得る。第2のリンカー化合物前駆体としては、上記チオクト酸を使用してもよい。
【0133】
第2のリンカー化合物前駆体としては、第1のリンカー化合物前駆体と同様のものを使用できる。すなわち、第2のリンカー化合物前駆体の態様としては、上記(第1のリンカー化合物)の項の第1のリンカー化合物前駆体に関する説明を適宜援用できる。本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子において、第2のリンカー化合物前駆体と第1のリンカー化合物前駆体は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0134】
上述したような第2のリンカー化合物前駆体を用いて、糖鎖リガンド複合体を製造することができる。具体的には、第2のリンカー化合物前駆体に含まれる(例えば上記Xに含まれる)アミノ基または芳香族アミノ基を介して、還元アミノ化反応などにより、糖鎖を第2のリンカー化合物前駆体に導入して、糖鎖リガンド複合体を得ることができる。
【0135】
このようにして得られた糖鎖リガンド複合体は、第2のリンカー化合物に含まれる(例えば上記Yに含まれる)硫黄(S)と、金属ナノ粒子に含まれる金属との間に形成される金属−硫黄結合を介して、強固にかつ簡便に金属ナノ粒子に固定化され得る。このため、糖鎖を金属ナノ粒子表面に容易に固定化することができる。
【0136】
(糖鎖リガンド複合体の固定化方法)
糖鎖リガンド複合体を金属ナノ粒子に固定化する方法としては、特に限定されないが、例えば、金属ナノ粒子を含む溶液と、上述した構成を有する糖鎖リガンド複合体を含む溶液との混和によって得ることができる。上記混和により、TLRリガンド複合体の硫黄原子(S)が、金属ナノ粒子の表面上の金属と金属−硫黄結合によって結合する。金属ナノ粒子として金ナノ粒子を用いる場合を例に挙げ、さらに具体的に説明する。この場合、金ナノ粒子の溶液に還元剤処理した上記糖鎖リガンド複合体を含む溶液を添加する。これによって、糖鎖リガンド複合体のS−S結合を、金ナノ粒子の表面上の金−硫黄結合に変換することにより、糖鎖リガンド複合体が固定化された金ナノ粒子を得ることができる。
【0137】
糖鎖リガンド複合体の還元処理に用いられる還元剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウムなどの塩類および陽イオン成分が異なる塩類等を挙げることができる。
【0138】
糖鎖リガンド複合体を金属ナノ粒子に固定化する方法としては、上記(1−4.TLRリガンド固定化ナノ粒子の製造方法)の項に記載された、TLRリガンド複合体を金属ナノ粒子に固定化する方法と同様の方法が用いられてもよい。それ故に、金属が塩として溶液に含まれているときは、糖鎖と混和する前に、上述したように還元剤を用いて金属を還元しておくことが好ましい。
【0139】
糖鎖リガンド複合体を金属ナノ粒子に固定化するために用いられる金属、糖鎖リガンド複合体、および還元剤、の各々の混合比は、特に限定されるものではない。金属が塩化金酸またはその塩類である場合を例に挙げて、混合溶液中の各成分の濃度について説明する。混合溶液における、塩化金酸またはその塩類の最終濃度は0.1mM〜10mMであることが好ましく、0.1mM〜5mMであることがより好ましく、0.1mM〜1mMであることがさらに好ましい。混合溶液における、糖鎖リガンド複合体の最終濃度は、0.1mM〜10mMであることが好ましく、0.1mM〜5mMであることがより好ましく、0.1mM〜1mMであることがさらに好ましい。混合溶液における、還元剤の最終濃度は、糖鎖リガンド複合体のモル濃度の3〜10倍モル濃度であることが好ましく、5〜10倍モル濃度であることがより好ましく、8〜10倍モル濃度であることがさらに好ましい。
【0140】
金属ナノ粒子および糖鎖リガンド複合体を含む溶液に用いる溶媒としては、TLRリガンド複合体を金属ナノ粒子に固定化するときに用いられ得る溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
【0141】
糖鎖リガンド複合体の金属ナノ粒子に対する固定化は、TLRリガンド複合体の金属粒子に対する固定化前に行われてもよく、固定化後に行われてもよく、固定化と同時に行われてもよい。すなわち、TLRリガンド複合体と糖鎖リガンド複合体とを一緒に金属ナノ粒子に固定化することにより、TLRリガンド固定化ナノ粒子を製造してもよい。
【0142】
本発明の一実施形態では、1種類以上のTLRリガンド複合体を固定化した金属ナノ粒子に対して、1種類の第2のリンカー化合物前駆体と1種類の糖鎖とを用いて製造された、1種類の糖鎖リガンド複合体のみをさらに固定化して、TLRリガンド固定化ナノ粒子としてもよい。
【0143】
本発明の一実施形態では、1種類以上のTLRリガンド複合体を固定化した金属ナノ粒子に対して、1種類の第2のリンカー化合物前駆体と2種類以上の糖鎖とを用いて製造された、2種類以上の糖鎖リガンド複合体をさらに固定化して、TLRリガンド固定化ナノ粒子としてもよい。
【0144】
本発明の一実施形態では、1種類以上のTLRリガンド複合体を固定化した金属ナノ粒子に対して、2種類の第2のリンカー化合物前駆体と1種類以上の糖鎖とを用いて製造された、2種類以上の糖鎖リガンド複合体をさらに固定化して、TLRリガンド固定化ナノ粒子としてもよい。
【0145】
[2.アジュバント組成物]
本発明の一実施形態に係るアジュバント組成物は、上記[1.TLRリガンド固定化ナノ粒子]の項で説明したTLRリガンド固定化ナノ粒子を含んでいる。アジュバント組成物は、例えば水などの溶媒にTLRリガンド固定化ナノ粒子を含んでなる溶液であってもよい。TLRリガンド固定化ナノ粒子は水中における分散性が良好であるため、アジュバント組成物の溶液を得るための溶媒として、水を使用できる。
【0146】
アジュバント組成物は、任意で、緩衝剤、pH調整剤、塩類、安定化剤、賦形剤、酸化防止剤などをさらに含んでいてもよい。
【0147】
水などの溶媒に、TLRリガンド固定化ナノ粒子および任意で他の物質を分散させることにより、容易にアジュバント組成物の溶液を製造することができる。
【0148】
アジュバント組成物は、生物、並びに生物由来の組織および細胞などに投与することにより、生物、並びに生物由来の組織および細胞などにおける免疫応答を活性化することができる。
【0149】
アジュバント組成物の投与方法は、特に限定されるものではないが、例えば哺乳動物に投与する場合、静脈注射、腹腔内注射、皮内注射、皮下注射、筋肉注射などの方法が挙げられる。
【0150】
アジュバント組成物の投与量、投与期間、投与間隔などは、目的とする免疫応答の活性状態に合わせて適宜設定され得る。
【0151】
なお、本発明は以下のように構成することも可能である。
【0152】
本発明の一実施形態に係る金ナノ粒子は、TLRリガンドと、糖鎖と、主鎖に炭化水素鎖または炭化水素誘導鎖を備えたリンカー化合物とからなり、上記リンカー化合物の主鎖が、その一端に上記TLRリガンドと結合したアミノ基を有し、その他端に硫黄原子を含む炭化水素構造を備えているTLRリガンド誘導体と、金ナノ粒子と、を含有し、上記炭化水素構造が金ナノ粒子に固定化されてなる。
【0153】
本発明の一実施形態に係る金ナノ粒子は、上記TLRリガンドが、TLR4またはTLR7に結合して、TLRの活性を誘起するものである。
【0154】
本発明の一実施形態に係る金ナノ粒子は、上記糖鎖が、グルコースまたはガラクトースまたはマンノースまたはシアル酸からなる単糖またはオリゴ糖または多糖である。
【実施例】
【0155】
以下、本発明の一実施形態を実施例に基づき詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0156】
以下の実施例における各測定方法または評価方法は以下の通りである。
【0157】
(TLRリガンド固定化ナノ粒子の透過型電子顕微鏡画像の取得方法および平均粒径の測定方法)
TLRリガンド固定化ナノ粒子をグリッド(コロジオン膜貼付メッシュ、400メッシュ、Cu、日新EM社製)に載せ、余分な水分を除去後、減圧下で乾燥させた。得られたグリッドをサンプルステージに載せ、HT7700(日立ハイテクノロジーズ社製)の測定部へ入れ、透過型電子顕微鏡画像を撮影した。得られた画像から、ソフトウェアImageJを用いて平均粒子径を測定した。
【0158】
(TLRリガンド固定化ナノ粒子の動的光散乱(DLS)法による平均粒径の測定方法)
TLRリガンド固定化ナノ粒子を石英セルに移し、Zetasizer Nano(マルバーン社製)の測定部へ入れ、流体力学的粒径を測定した。
【0159】
(TLRリガンド固定化ナノ粒子のMALDI−TOF/MSの測定方法)
ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)を、メタノール溶液(水/メタノールの1/1溶液)に溶解し、DHBA溶液を調製した。DHBA溶液におけるDHBAの濃度は10mg/mLとした。得られたDHBA溶液10μLと製造例6および7で得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子の水溶液1μLとを混合し、混合液1μLを測定プレートに載せ、自然乾燥させた。その後、測定プレートをVoyager−DE−PRO(Applied Biosystems,CA,USA)の測定部へ入れ、質量分析を行った。
【0160】
(HPLCによる、金属ナノ粒子に固定化されたTLRリガンド複合体の定量方法)
ミクロチューブにTLRリガンド固定化ナノ粒子の水溶液100μLを入れ、TLRリガンド固定化ナノ粒子を凍結乾燥した。続いて、得られた凍結乾燥物にジメチルスルホキシド(DMSO)10μLと、シアン化カリウム水溶液(800mM)30μLを加えて、混合物を2時間撹拌した。その後、混合物にDMSO10μLをさらに加え、混合物をHPLC分析に供した。HPLCの条件は以下の通りである。カラム:Inertsil(登録商標)ODS-3、粒子径:φ4.6μm、カラム長:150mm、流速:0.5mL/min、溶出液:0〜5分(50%メタノール水溶液)、5〜15分(50%メタノール水溶液の後、70%メタノール水溶液)、15〜25分(70%メタノール水溶液)、25〜35分(70%メタノール水溶液の後、メタノール)、35〜40分(メタノール)。
【0161】
得られた結果におけるピーク面積から金属ナノ粒子(具体的には金ナノ粒子を使用しており、図および表中、GNPと示す)に固定化されたTLRリガンド複合体の量を算出した。検量線の作成のために、標準試料として、TLR7リガンド複合体(1V209−TTDDA−TA、1V209−mPDA−TA、または1V209−EDA−TA)の6.3μM〜50μMの溶液を用い、上記と同様にHPLCを行った。得られた結果におけるピーク面積から検量線を作成し、当該検量線を用いて、金属ナノ粒子に固定化されたTLRリガンド複合体の量を算出した。
【0162】
以下の製造例では、TLRリガンドとして、TLRに対するリガンドである1V209を使用した。1V209は、非特許文献4に記載の方法によって、製造した。
【0163】
[製造例1:TLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA)の合成]
図1は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA)の合成経路を示す図である。1V209−TTDDA−TAでは、ジアミノ化合物である4,7,10−トリオキサ−1,13−トリデカンジアミン(TTDDA)とチオクト酸との縮合反応により、上記化学式(23)にて表される第1のリンカー化合物前駆体を作製した。得られた第1のリンカー化合物前駆体に1V209を導入してTLRリガンド複合体である1V209−TTDDA−TAを得た。具体的な合成経路を以下に説明する。
【0164】
まず、図1に示すように、TTDDA(図1中、式(a)として示す)の一末端をBoc基で保護することによって、式(b)に示す化合物を粗収率76%で調製した。
【0165】
続いて、HATU(縮合剤)およびトリエチルアミンの存在下、ジメチルホルムアミド中で、式(b)に示す化合物のアミノ基にチオクト酸を縮合し、式(c)に示す化合物を粗収率62%で調製した。
【0166】
その後、式(c)に示す化合物のBoc基を、トリフルオロ酢酸を用いて脱保護することで、化学式(23)にて表される第1のリンカー化合物前駆体を得た。
【0167】
次に、HATUおよびトリエチルアミンの存在下、ジメチルホルムアミド中で、化学式(23)にて表される第1のリンカー化合物前駆体のアミノ基に、1V209を縮合し、式(d)に示すTLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA)を収率43%で得た。
【0168】
得られたTLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA)のスペクトルデータは以下の通りである。
HR MS:m/z:calcd for(理論値)C3451Na:772.3133;found(実測値):772.3136[M+Na]
【0169】
[製造例2:TLRリガンド複合体(1V209−mPDA−TA)の合成]
図2は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド複合体(1V209−mPDA−TA)の合成経路を示す図である。1V209−mPDA−TAでは、ジアミノ化合物であるm−フェニレンジアミン(mPDA)とチオクト酸との縮合反応により、上記化学式(24)にて表される第1のリンカー化合物前駆体を作製した。得られた第1のリンカー化合物前駆体に1V209を導入してTLRリガンド複合体である1V209−mPDA−TAを得た。具体的な合成経路を以下に説明する。
【0170】
まず、図2に示すように、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の存在下、ジメチルホルムアミド中で、mPDA(図1中、式(e)として示す)のアミノ基にチオクト酸を縮合し、化学式(24)にて表される第1のリンカー化合物前駆体を収率99%で調製した。
【0171】
その後、HATUおよびトリエチルアミンの存在下、ジメチルホルムアミド中で、得られた化学式(24)にて表される第1のリンカー化合物前駆体のアミノ基に、1V209を縮合し、式(f)に示すTLRリガンド複合体(1V209−mPDA−TA)を収率18%で得た。
【0172】
得られたTLRリガンド複合体(1V209−mPDA−TA)のスペクトルデータは以下の通りである。
HR MS:m/z:calcd for(理論値)C3035Na:660.2033;found(実測値):660.2039[M+Na]
【0173】
[製造例3:TLRリガンド複合体(1V209−EDA−TA)の合成]
図3は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド複合体(1V209−EDA−TA)の合成経路を示す図である。1V209−EDA−TAでは、ジアミノ化合物であるエチレンジアミン(EDA)とチオクト酸との縮合反応により、上記化学式(25)にて表される第1のリンカー化合物前駆体を作製した。得られた第1のリンカー化合物前駆体に1V209を導入してTLRリガンド複合体である1V209−E−TAを得た。具体的な合成経路を以下に説明する。
【0174】
まず、図3に示すように、HATUおよびトリエチルアミンの存在下、ジメチルホルムアミド/クロロホルム混合溶媒中で、EDA(図1中、式(g)として示す)のアミノ基にチオクト酸を縮合し、化学式(25)にて表される第1のリンカー化合物前駆体を調製した。
【0175】
その後、HATUおよびトリエチルアミンの存在下、ジメチルホルムアミド中で、得られた化学式(25)にて表される第1のリンカー化合物前駆体のアミノ基に、1V209を縮合し、式(h)に示すTLRリガンド複合体(1V209−EDA−TA)を収率23%で得た。
【0176】
得られたTLRリガンド複合体(1V209−EDA−TA)のスペクトルデータは以下の通りである。
HR MS:m/z:calcd for(理論値)C2635:590.2214;found:590.2214[M+H]
[製造例4:αグルコースを含有する糖鎖リガンド複合体(Glcα1−4Glc−mono)の合成]
図4は、糖鎖リガンド複合体(Glcα1−4Glc−mono)の合成経路を示す図である。Glcα1−4Glc−monoは、化学式(24)にて表される第2のリンカー化合物前駆体に、糖鎖としてマルトース一水和物を導入して得られた。具体的な合成経路を以下に説明する。なお、Glcα1−4Glc−mono中に表される「mono」は、化学式(24)にて表される第2のリンカー化合物前駆体を表している。
【0177】
図4に示すように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムおよび酢酸の存在下、ジメチルアセトアミド水溶液中で、化学式(24)にて表される第2のリンカー化合物前駆体のアミノ基に、還元アミノ化反応により、マルトース一水和物を縮合し、式(j)に示す糖鎖リガンド複合体(Glcα1−4Glc−mono)を収率30%で得た。
【0178】
得られた糖鎖リガンド複合体(Glcα1−4Glc−mono)のスペクトルデータは以下の通りである。
HR MS:m/z:calcd for(理論値)C264211K:661.1862;found(実測値):661.2085[M+K]
【0179】
[製造例5:αマンノースおよびαグルコースを含有する糖鎖リガンド複合体(Manα1−6Glc−mono)の合成]
図11は、糖鎖リガンド複合体(Manα1−6Glc−mono、以下単にαManとも称する)の合成経路を示す図である。Manα1−6Glc−monoは、化学式(24)にて表される第2のリンカー化合物前駆体に、糖鎖として、合成糖であるManα1−6Glcを導入して得られた。具体的な合成経路を以下に説明する。
【0180】
図11に示すように、シアノ水素化ホウ素ナトリウムおよび酢酸の存在下、ジメチルアセトアミド水溶液中で、化学式(24)にて表される第2のリンカー化合物前駆体のアミノ基に、還元アミノ化反応により、Manα1−6Glcを縮合し、式(k)に示す糖鎖リガンド複合体(Manα1−6Glc−mono)を収率94%で得た。
【0181】
得られた鎖リガンド複合体(Manα1−6Glc−mono)のスペクトルデータは以下の通りである。
HR MS:m/z:calcd for(理論値)C264211Na:645.2126;found(実測値):645.2122[M+Na]
【0182】
[製造例6:TLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)の調製]
15mLのコニカルチューブに20mMの塩化金酸ナトリウム(ナカライテスク社製)水溶液125μLを加え、超純水1250μLをさらに加えた。得られた溶液に、50mMの水素化ホウ素ナトリウム(ナカライテスク社製)水溶液250μLを加え、遮光下、室温で混合物を10分間激しく撹拌した。
【0183】
次に、(i)製造例1で調製しTLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA)と製造例4で調製した糖鎖リガンド複合体(Glcα1−4Glc−mono)との5mM混合溶液(50%ジメチルスルホキシド水溶液)250μL、および(ii)ジメチルスルホキシド625μLを上記コニカルチューブ内に加え、遮光下、室温でコニカルチューブを30分間撹拌した。ここで、上記混合溶液中の、TLRリガンド複合体と糖鎖リガンド複合体とのモル比(TLRリガンド複合体のモル:糖鎖リガンド複合体のモル)は、3:7、1:9、1:19、または1:39とした。
【0184】
これにより、TLRリガンド固定化ナノ粒子のコロイド水溶液を得た。得られたコロイド溶液を図5に示す。
【0185】
図5は、本発明の一実施形態のTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)のコロイド水溶液を示す図である。図5では、上記混合溶液中の、TLRリガンド複合体と糖鎖リガンド複合体とのモル比を、3:7、1:9、1:19、または1:39になるように調製した場合に得られた、TLRリガンド固定化ナノ粒子のコロイド溶液が示されている。
【0186】
その後、得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子のコロイド水溶液を透析により精製した。すなわち、分画分子量3500の透析膜を用い、10%DMSO水溶液(1L)中で2回、超純水(1L)中で2回透析し、TLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)の水溶液を得た。上記混合溶液中の、TLRリガンド複合体と糖鎖リガンド複合体とのモル比を、1:9になるように調製した場合に得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子について、透過型電子顕微鏡画像および平均粒径の測定結果を図6に示し、DLSで測定したときの平均粒径の測定結果を図7に示す。
【0187】
図6は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)の透過型電子顕微鏡画像と、TLRリガンド固定化ナノ粒子における金属ナノ粒子(GNP)の平均粒径を示す図である。図7は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)を動的光散乱(DLS)法で測定したときの平均粒径を示す図である。図7に示すように、DLS測定(使用機器:Zetasizer Nano ZS90、Malvern Instruments、Worcestershire、UK)によれば、得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)の平均粒子径は8.6nmであった。
【0188】
また、得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)をMALDI−TOF/MSに供した。結果を図8に示す。
【0189】
図8は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)のPositive modeによるMALDI−TOF/MS分析の結果を示す図である。図8に示すように、製造例1で調製したTLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA)と同じ質量数を有するピーク(m/Z値)、および製造例4で調製した糖鎖リガンド複合体(Glcα1−4Glc−mono)と同じ質量数を有するピーク(m/Z値)が得られ、金属ナノ粒子にTLRリガンド複合体および糖鎖リガンド複合体が固定化されていることが確認された。
【0190】
[製造例7:TLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)の調製]
15mLのコニカルチューブに20mMの塩化金酸ナトリウム(ナカライテスク社製)水溶液125μLを加え、超純水1250μLをさらに加えた。得られた溶液に、50mMの水素化ホウ素ナトリウム(ナカライテスク社製)水溶液250μLを加え、遮光下、室温で混合物を10分間激しく撹拌した。
【0191】
次に、(i)製造例1、2または3で調製しTLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA、1V209−mPDA−TA、または1V209−EDA−TA)と製造例5で調製した糖鎖リガンド複合体(Manα1−6Glc−mono)との1.5mM混合溶液(50%ジメチルスルホキシド水溶液)250μL、および(ii)ジメチルスルホキシド625μLを上記コニカルチューブ内に加え、遮光下、室温でコニカルチューブを30分間撹拌した。ここで、上記混合溶液中の、TLRリガンド複合体と糖鎖リガンド複合体とのモル比(TLRリガンド複合体のモル:糖鎖リガンド複合体のモル)は、1:9、1:19、または1:39とした。
【0192】
これにより、TLRリガンド固定化ナノ粒子のコロイド水溶液を得た。その後、得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子のコロイド水溶液を透析により精製した。すなわち、分画分子量3500の透析膜を用い、10%ジメチルスルホキシド水溶液(1L)中で2回、超純水(1L)中で2回透析し、TLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)の水溶液を得た。得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)をMALDI−TOF/MSに供した。結果を図12に示す。
【0193】
また、得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子について、HPLCを用いて測定した金属ナノ粒子におけるTLR7リガンド複合体の固定化量の測定結果を図13に示し、透過型電子顕微鏡画像および平均粒径の測定結果を図14に示し、DLSで測定したときの平均粒径の測定結果を図15に示す。さらに、図13から得られる金属ナノ粒子におけるTLR7リガンド複合体の固定化量の結果を表1として示す。
【0194】
図12は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)のPositive modeによるMALDI−TOF/MS分析の結果を示す図である。図13は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)のHPLC解析の結果を示す図である。図14は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子の透過型電子顕微鏡画像とTLRリガンド固定化ナノ粒子における金属ナノ粒子(GNP)の平均粒径を示す図である。図15は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子を動的光散乱(DLS)法で測定したときの平均粒径を示す図である。
【0195】
図12の(a)、図13の(d)、図14の(a)および図15の(a)は、TLRリガンド複合体(図中、TLR7Lと表記)として1V209−TTDDA−TAを使用した場合に得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子の結果を示している。図12の(b)、図13の(e)、図14の(b)および図15の(b)は、TLRリガンド複合体として1V209−mPDA−TAを使用した場合に得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子の結果を示している。図12の(c)、図13の(f)、図14の(c)および図15の(c)は、TLRリガンド複合体として1V209−EDA−TAを使用した場合に得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子の結果を示している。
【0196】
図12において、(x)はナトリウムイオン(Na)が結合した糖鎖リガンド複合体(Manα1−6Glc−mono)を示しており、(y)はカリウムイオン(K)が結合した糖鎖リガンド複合体(Manα1−6Glc−mono)を示しており、(z)はナトリウムイオン(Na)が結合したTLRリガンド複合体を示している。
【0197】
図13の(a)は、標準試料である、TLR7リガンド複合体(1V209−TTDDA−TA)の50μMの溶液を用いたときの結果を示している。図13の(b)は、標準試料として、TLR7リガンド複合体(1V209−mPDA−TA)の50μMの溶液を用いたときの結果を示している。図13の(c)は、標準試料として、TLR7リガンド複合体(1V209−EDA−TA)の50μMの溶液を用いたときの結果を示している。
【0198】
また、図12図13図14および図15では、混合溶液中の、TLRリガンド複合体(図中、TLR7Lと表記)と糖鎖リガンド複合体(図中、αManと表記)とのモル比(TLR7L:αMan)が、1:9、1:19、または1:39の場合に得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子を示している。また、図13において、検出されたTLRリガンド複合体のピークを矢印で示している。
【0199】
図12に示すように、製造例1、2または3で調製したTLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA、1V209−mPDA−TA、または1V209−EDA−TA)と同じ質量数を有するピーク(m/Z値)、および製造例5で調製した糖鎖リガンド複合体(Manα1−6Glc−mono)と同じ質量数を有するピーク(m/Z値)が得られ、金属ナノ粒子にTLRリガンド複合体および糖鎖リガンド複合体が固定化されていることが確認された。また、混合溶液中の、TLRリガンド複合体の濃度の減少に依存して、TLRリガンド複合体のピーク(z)が減少した。
【0200】
図13および表1に示すように、混合溶液中の、TLRリガンド複合体と糖鎖リガンド複合体とのモル比(TLR7L:αMan)、すなわちTLRリガンド複合体の濃度に依存して、金属ナノ粒子に固定化されるTLRリガンド複合体の量が増加した。従って、TLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)の調製時、混合溶液におけるTLRリガンド複合体の濃度を変化させることにより、金属ナノ粒子に対するTLRリガンド複合体の固定化量を調節できることが分かった。
【0201】
【表1】
【0202】
また、図15の(b)に示すように、TLRリガンド複合体として1V209−mPDA−TAを使用し、かつTLRリガンド複合体と糖鎖リガンド複合体とのモル比(TLR7L:αMan)が、1:9の場合に得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子は、平均粒径が90nmであった。これは、得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子が水中で凝集体を形成していることを示唆するものである。なお、得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)の水への分散性は、固定化したTLRリガンド複合体によって若干異なるものであった。
【0203】
具体的には、TLRリガンド複合体として1V209−mPDA−TAを使用し、かつTLRリガンド複合体と糖鎖リガンド複合体とのモル比(TLR7L:αMan)が1:9の場合に得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子は、時間経過と共に沈殿したことを確認した。このことから、TLRリガンド複合体として1V209−mPDA−TAを使用した場合、金属ナノ粒子における1V209−mPDA−TAの固定化量が多くなると水への分散性を保てなくなることが分かった。
【0204】
[比較製造例1:糖鎖リガンド複合体(Glcα1−4Glc−mono)のみを固定化した金属ナノ粒子(αGlc−GNP)の調製]
15mLコニカルチューブに超純水1875μLと20mMの塩化金酸ナトリウム水溶液125μLを加え、これら原料を混合した。続いて、得られた混合物を激しく攪拌しながら50mMの水素化ホウ素ナトリウム水溶液250μLを加え、遮光下、室温で混合物を10分間撹拌した。次に、1.5mMの糖鎖リガンド複合体(Glcα1−4Glc−mono)水溶液250μLを上記コニカルチューブ内に加え、室温で混合物を30分間撹拌した。その後、超純水(1L)中で3回透析(Spectra/Por(登録商標)7、MWCO=3,500)し、αGlc−GNPの水溶液を得た。
【0205】
[比較製造例2:糖鎖リガンド複合体(Manα1−6Glc−mono)のみを固定化した金属ナノ粒子(αMan−GNP)の調製]
15mLコニカルチューブに超純水1875μLと20mMの塩化金酸ナトリウム水溶液125μLを加え、これら原料を混合した。続いて、得られた混合物を激しく攪拌しながら50mMの水素化ホウ素ナトリウム水溶液250μLを加え、遮光下、室温で混合物を10分間撹拌した。次に、1.5mMの糖鎖リガンド複合体(Manα1−6Glc−mono)水溶液250μLを上記コニカルチューブ内に加え、室温で混合物を30分間撹拌した。その後、超純水(1L)中で3回透析(Spectra/Por(登録商標)7、MWCO=3,500)し、αMan−GNPの水溶液を得た。
【0206】
〔試験例1:TLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)の免疫増強活性の測定(1)〕
製造例6で調製したTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)の免疫増強活性の評価には、マウスマクロファージ由来細胞株であるRAW264.7細胞を用いた。免疫増強活性の評価は、TLRリガンド固定化ナノ粒子によって誘導されたサイトカイン(TNF−α)の産生量を、ELISA法を用いて定量することで行った。具体的な試験方法は以下の通りである。
【0207】
まず、96ウェルプレートに、1ウェルあたりの細胞数が1×10個になるように細胞懸濁液を150μLずつ播種し、37℃、5%COの条件下で一晩インキュベートした。本明細書において、「一晩」は約16時間を意図する。
【0208】
次に、製造例6で調製したTLRリガンド固定化ナノ粒子について、金属ナノ粒子に固定化されたTLRリガンド複合体の量を上述した方法に従い、定量した。そして、固定化されたTLRリガンド複合体の濃度が40μMになるように、製造例6で調製したTLRリガンド固定化ナノ粒子の水溶液を調製した。得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子の水溶液を、3倍ずつ連続希釈し、上記96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で18時間インキュベートした。
【0209】
ここで、(i)金属ナノ粒子に固定化していないTLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA)の水溶液(40μM)を3倍ずつ連続希釈した溶液、または(ii)αGlc−GNPの水溶液(65μM)も、上記96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で18時間インキュベートした。
【0210】
その後、以下の手順に沿って、ELISA法を行った。培養上清150μLを別の96ウェルプレートに移し、そのうち50μLを抗TNF−α抗体が固定化されたELISAプレートに移した。ELISAプレートを4℃で一晩インキュベート後、培養上清を除去し、Tween20を0.05%含有するPBS(以下、0.05%PBS/Tと称する)溶液で各ウェルを3回洗浄した。続いて、ビオチン標識抗TNF−α抗体を各ウェルに50μLずつ加え、室温で1時間インキュベートした。抗体溶液を除去後、0.05%PBS/Tで各ウェルを3回洗浄し、HRP修飾ストレプトアビジン溶液50μLを加えた。室温で30分間インキュベート後、0.05%PBS/Tで各ウェルを5回洗浄した。その後、TMB Microwell Peroxidase Substrate(ナカライテスク社製)50μLを加え、化学発光を観察後、1Mのo−Phosphoric Acid溶液50μLを加えて化学発光を停止した。その後、速やかに、ELISAプレートをプレートリーダーに供し、450nmの吸光度で測定した。ELISAプレートを用いた上述の操作をELISAとも称する。
【0211】
なお、濃度既知の組み換えTNF−α(eBioscience社製)を用いて、同様にELISAを行い、検量線を作成した。
【0212】
培養上清中のTNF−αの産生量は、GraphPad Prism 7ソフトウェアを用いて解析した。結果を図9に示す。
【0213】
図9は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)溶液のRAW264.7細胞への添加によって産生された、TNFαの産生量を示す図である。図9では、TLRリガンド固定化ナノ粒子製造時に、混合溶液中の、TLRリガンド複合体(図中、TTDDAと表記)と糖鎖リガンド複合体(図中、αGlcと表記)とのモル比(TTDDA:αGlc)が、1:9、1:19、または1:39とした場合に得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子の結果を示している。これら、TLRリガンド固定化ナノ粒子はそれぞれTTDDA:αGlc=1:9、TTDDA:αGlc=1:19、またはTTDDA:αGlc=1:39と表記している。図9において、横軸は、添加したTLRリガンド固定化ナノ粒子またはTLRリガンド複合体の濃度から算出される、実質的に添加されたTLR7リガンド(図中、TLR7 agonistと表記)の量(μM)を示している。
【0214】
図9に示すように、ELISA法で培養上清中のTNF−αを定量したところ、Glcα1−4Glc−monoのみを固定化した金属ナノ粒子(αGlc−GNP)では、TNF−αの産生が確認されなかったが、TLRリガンド複合体を固定化した金属ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)では、TLR7リガンドの濃度依存的なTNF−αの産生が確認された。
【0215】
図9に示すように、TLRリガンド固定化ナノ粒子製造時における、混合溶液中の、TLRリガンド複合体と糖鎖リガンド複合体とのモル比は、TNF−αの産生量(すなわちTLR7の活性化の程度)に影響を与えないことが示唆された。なお、TLRリガンド固定化ナノ粒子製造時における、混合溶液中の、TLRリガンド複合体と糖鎖リガンド複合体とのモル比は、結果として、単一の金属ナノ粒子に固定化されたTLR7リガンドの数に影響を与え得る。
【0216】
〔試験例2:TLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)の免疫増強活性の測定(2)〕
ヒト末梢血単核球(human peripheral blood mononuclear cell;hPBMCとも称する)を用いて、製造例6で調製したTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)の免疫増強活性の評価を行った。免疫増強活性の評価は、TLRリガンド固定化ナノ粒子によって誘導されたサイトカイン(TNF−αおよびIFN−α)の産生量を、ELISA法を用いて定量することで行った。具体的な試験方法は以下の通りである。
【0217】
まず、96ウェルプレートに、1ウェルあたりの細胞数が2×10個になるように細胞懸濁液を150μLずつ播種し、37℃、5%COの条件下で一晩インキュベートした。
【0218】
次に、金属ナノ粒子に固定化されたTLRリガンド複合体の量を上述した方法に従い、定量した。そして、固定化されたTLRリガンド複合体の濃度が40μMになるように、TLRリガンド固定化ナノ粒子の水溶液を調整した。得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子の水溶液を、2.5倍ずつ連続希釈し、上記96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で18時間インキュベートした。ここで、(i)金属ナノ粒子に固定化していないTLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA)の水溶液(40μM)を2.5倍ずつ連続希釈した溶液、または(ii)αGlc−GNPの水溶液(15μM)も、上記96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で18時間インキュベートした。
【0219】
続いて、上記試験例1と同様に、ELISA法を行い、培養上清中のTNF−αまたはIFN−αの産生量を定量した。なお、IFN−αの定量では、抗TNF−α抗体に代えて抗マウスIFN−α抗体を使用し、ビオチン標識抗TNF−α抗体およびHRP修飾ストレプトアビジン溶液に代えて、HRP標識抗マウスINF−α抗体を使用した。結果を図10に示す。
【0220】
図10では、TLRリガンド固定化ナノ粒子製造時の、TLRリガンド複合体と糖鎖リガンド複合体とのモル比が、1:9とした場合に得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子の結果を示している。図10では、TLRリガンド固定化ナノ粒子を添加した場合の結果は、GNP(1:9)で示されており、金属ナノ粒子に固定化していないTLRリガンド複合体を添加した結果は、ligandとして示されている。また一番右端の列には、αGlc−GNPを用いた結果が示されている。なお、TLRリガンド複合体として1V209−EDA−TAを用いたTLRリガンド固定化ナノ粒子については、IFN−αの産生量は定量しておらず、図10中、「Not Tested」と図示されている。
【0221】
図10の(a)は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)溶液のhPBMCへの添加によって産生された、TNF−αの産生量を示す図であり、図10の(b)は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)溶液のhPBMCへの添加によって産生された、IFN−αの産生量を示す図である。
【0222】
図10より、TNF−αの産生能は、TLRリガンド固定化ナノ粒子を添加した場合と、金属ナノ粒子に固定化されていないTLRリガンド複合体を添加した場合とを比較して、大きく変わらなかった。しかし、IFN−αは、金属ナノ粒子に固定化されていないTLRリガンド複合体を添加した場合にはほとんど産生されないのに対して、TLRリガンド固定化ナノ粒子を添加した場合は、多く産生された。すなわち、TLRリガンド固定化ナノ粒子には、高いIFN−α産生能があることを見出した。これらの結果は、IFN−αを多くことを特徴とする形質細胞用樹状細胞(pDC)にTLRリガンドが輸送されたことを示唆しており、TLRリガンド固定化ナノ粒子は、PBMC中の樹状細胞をターゲティングできることが示唆された。
【0223】
以上の結果から、TLRリガンドとしてTLR7リガンドである1V209を含むTLRリガンド複合体を固定化した金属ナノ粒子(TLR7L−αGlc−GNP)は、免疫増強活性を有していることが明らかとなった。
【0224】
〔試験例3:TLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)の免疫増強活性の測定(1)〕
マウスマクロファージ細胞株であるJ774A.1細胞を用いて、製造例7で調製したTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)の免疫増強活性の評価を行った。TLRリガンド固定化ナノ粒子としては、TLRリガンド複合体として1V209−TTDDA−TAを使用したものを使用した。免疫増強活性の評価は、TLRリガンド固定化ナノ粒子によって誘導されたサイトカイン(IL−6)の産生量を、ELISA法を用いて定量することで行った。具体的な試験方法は以下の通りである。
【0225】
まず、96ウェルプレートに、1ウェルあたりの細胞数が4×10個になるように細胞懸濁液を150μLずつ播種し、37℃、5%COの条件下で一晩インキュベートした。
【0226】
次に、金属ナノ粒子に固定化されたTLRリガンド複合体の量を上述した方法に従い、定量した。そして、固定化されたTLRリガンド複合体の濃度が8μMになるように、TLRリガンド固定化ナノ粒子の水溶液を調整した。得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子の水溶液を、3倍ずつ連続希釈し、上記96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で18時間インキュベートした。
【0227】
ここで、(i)金属ナノ粒子に固定化していないTLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA)の水溶液(40μM)を3倍ずつ連続希釈した溶液、または(ii)αMan−GNPの水溶液(65μM)も、上記96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で18時間インキュベートした。
【0228】
その後、以下の手順に沿って、ELISA法を行った。まず、96ウェルELISA用プレートにCoating Bufferで250倍希釈した抗マウスIL−6抗体50μLを加え、4℃で一晩インキュベートした。抗体溶液を除去後、Tween20を1%含むPBS溶液(以下、1%PBS/Tと称する。)300μLで各ウェルを3回洗浄した。その後、1%ウシ血清アルブミン−PBS溶液(以下、ブロッキングバッファーとも称する。)300μLをウェルに加え、37℃、5%COの条件下で2時間インキュベートした。ブロッキングバッファーを除去後、1%PBS/T300μLで各ウェルを3回洗浄した。
【0229】
続いて、ブロッキングバッファー25μLと、上記J774A.1細胞の培養上清25μLをELISAプレートの各ウェルに加え、37℃、5%COの条件下で2時間インキュベートした。同時に、検量線を作成するために、培養上清に代えて、濃度既知の組み換えマウスIL−6(BD Pharmingen社製)を用い、同様の条件でインキュベートした。
【0230】
各ウェル中の溶液を除去後、ELISAプレートの各ウェルを1%PBS/Tで5回洗浄し、ブロッキングバッファーで1000倍希釈したビオチン標識抗マウスIL−6抗体を各ウェルに50μLずつ加え、室温で2時間インキュベートした。抗体溶液を除去後、1%PBS/T300μLで各ウェルを3回洗浄し、ブロッキングバッファーで1,000倍希釈したHRP修飾ストレプトアビジン溶液50μLを加え、室温で1時間インキュベートした。HRP修飾ストレプトアビジン溶液を除去後、各ウェルを1%PBS/T300μLで5回洗浄した。その後、TMB Microwell Peroxidase Substrate50μLを各ウェルに加え、化学発光を観察後、1Mのo−Phosphoric Acid溶液50μLを加えて化学発光を停止した。その後、速やかに、ELISAプレートをプレートリーダーに供し、450nmの吸光度で測定した。
た。
【0231】
培養上清中のIL−6の産生量は、GraphPad Prism 7ソフトウェアを用いて解析した。結果を図16に示す。
【0232】
〔試験例4:TLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)の免疫増強活性の測定(2)〕
マウス骨髄由来樹状細胞(mouse bone marrow derived dendritic cell;mBMDCとも称する)を用いて、製造例7で調製したTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)の免疫増強活性の評価を行った。免疫増強活性の評価は、TLRリガンド固定化ナノ粒子によって誘導されたサイトカイン(IL−6)の産生量を、ELISA法を用いて定量することで行った。具体的な試験方法は以下の通りである。
【0233】
まず、96ウェルプレートに、1ウェルあたりの細胞数が1×10個になるように細胞懸濁液を150μLずつ播種し、37℃、5%COの条件下で一晩インキュベートした。
【0234】
次に、金属ナノ粒子に固定化されたTLRリガンド複合体の量を上述した方法に従い、定量した。そして、固定化されたTLRリガンド複合体の濃度が8μMになるように、TLRリガンド固定化ナノ粒子の水溶液を調整した。得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子の水溶液を、3倍ずつ連続希釈し、上記96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で18時間インキュベートした。ここで、(i)金属ナノ粒子に固定化していないTLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA)の水溶液(40μM)を3倍ずつ連続希釈した溶液、または(ii)αMan−GNPの水溶液(65μM)も、上記96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で18時間インキュベートした。
【0235】
続いて、上記試験例3と同様に、ELISA法を行い、培養上清中のIL−6の産生量を定量した。結果を図17に示す。
【0236】
図16および17では、TLRリガンド固定化ナノ粒子製造時に、混合溶液中の、TLRリガンド複合体(図中、TLR7Lと表記)と糖鎖リガンド複合体(図中、αManと表記)とのモル比(TLR7L:αMan)が、1:9、1:19、または1:39とした場合に得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子の結果を示している。これら、TLRリガンド固定化ナノ粒子はそれぞれTLR7L:αMan=1:9、TLR7L:αMan=1:19、またはTLR7L:αMan=1:39と表記している。図16および17において、横軸は、添加したTLRリガンド固定化ナノ粒子またはTLRリガンド複合体の濃度から算出される、実質的に添加されたTLR7リガンド(図中、TLR7 ligandと表記)の量(μM)を示している。
【0237】
図16は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)溶液のJ774A.1細胞への添加によって産生された、IL−6の産生量を示す図である。また、図17は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)溶液のmBMDCへの添加によって産生された、IL−6の産生量を示す図である。図17の(a)は、TLRリガンド複合体として1V209−TTDDA−TAを使用した結果を示しており、図17の(b)は、TLRリガンド複合体として1V209−mPDA−TAを使用した結果を示しており、図17の(c)は、TLRリガンド複合体として1V209−EDA−TAを使用した結果を示している。
【0238】
図16および図17の結果から、以下のようなことが分かった。すなわち、J774A.1細胞を用いた試験では、金属ナノ粒子に固定化していないTLRリガンド複合体を添加した場合と比較して、いずれのTLRリガンド固定化ナノ粒子を添加した場合も、細胞におけるIL−6の産生能が著しく低下した。一方、mBMDCを用いた試験では、TLRリガンド固定化ナノ粒子を添加した場合に、TLRリガンド複合体の構造または固定化量に大きく依存せず、TLRリガンド複合体の濃度依存的な、IL−6の産生が観測された。また、mBMDCを用いた試験では、TLRリガンド固定化ナノ粒子を添加した場合には、金属ナノ粒子に固定化していないTLRリガンド複合体を添加した場合と比較して、5〜10倍ほどのIL−6産生が観測された。また、陰性コントロールに用いたαMan−GNPではIL−6が産生されなかった。従って、いずれのTLRリガンド固定化ナノ粒子も高いサイトカイン産生能を有することが示された。
【0239】
細胞に応じてTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)のサイトカイン産生能が異なるのは、エンドサイトーシスによるTLRリガンド固定化ナノ粒子の取り込み能の違いによるものと考えられる。先行研究[非特許文献5]において、1V209の多糖への修飾によるサイトカイン産生能の向上は、エンドサイトーシスにより効率的に細胞内に移行することで起こることが示唆されている。一方、1V209は、単独ではエンドサイトーシスではなく、細胞膜を透過して細胞内に移行すると考えられるので、J774A.1細胞およびやmBMDCなどに対するサイトカイン産生能は大きく変わらない。
【0240】
したがって、J774A.1細胞を用いた場合にTLR7L−αMan−GNPのサイトカイン産生能が著しく低下したのは、J774A.1細胞にマンノースに対する受容体があまり発現しておらず、エンドサイトーシスによる細胞内への移行がほとんど行われなかったためだと考えられる。一方、mBMDCには多くのマンノース受容体が発現しており、TLR7L−αMan−GNPを多く取り込むことができたためにサイトカイン産生能が向上したと考えられる。
【0241】
〔試験例5:TLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)の免疫増強活性の測定(3)〕
hPBMCを用いて、製造例7で調製したTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)の免疫増強活性の評価を行った。免疫増強活性の評価は、TLRリガンド固定化ナノ粒子によって誘導されたサイトカイン(TNF−α)の産生量を、ELISA法を用いて定量することで行った。具体的な試験方法は以下の通りである。
【0242】
まず、96ウェルプレートに、1ウェルあたりの細胞数が2×10個になるように細胞懸濁液を150μLずつ播種し、37℃、5%COの条件下で一晩インキュベートした。
【0243】
次に、金属ナノ粒子に固定化されたTLRリガンド複合体の量を上述した方法に従い、定量した。そして、固定化されたTLRリガンド複合体の濃度が8μMになるように、TLRリガンド固定化ナノ粒子の水溶液を調整した。得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子の水溶液を、3倍ずつ連続希釈し、上記96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で18時間インキュベートした。ここで、(i)金属ナノ粒子に固定化していないTLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA)もしくはTLRリガンド(1V209)の水溶液(40μM)をそれぞれ3倍ずつ連続希釈した溶液、(ii)αMan−GNPの水溶液(0.3μM)、または(iii)0.25%DMSO溶液(表中、Vehicleと表記)も、上記96ウェルプレートの各ウェルに50μLずつ加え、37℃、5%COの条件下で18時間インキュベートした。
【0244】
続いて、上記試験例3と同様に、ELISA法を行い、培養上清中のTNF−αまたはIFN−αの産生量を定量した。なお、TNF−αの定量では、試験例3における、(i)Coating Bufferで250倍希釈した抗マウスIL−6抗体に代えて、PBSで250倍に希釈した抗マウスTNF−α抗体を使用し、(ii)ブロッキングバッファーで1000倍希釈したビオチン標識抗マウスIL−6抗体に代えて、ブロッキングバッファーで250倍希釈したビオチン標識抗マウスTNF−α抗体を使用した。結果を図18に示す。
【0245】
図18では、TLRリガンド固定化ナノ粒子製造時の、TLRリガンド複合体(1V209−TTDDA−TA(TLR7L))と糖鎖リガンド複合体とのモル比(TL7L:αMan)が、1:9とした場合に得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子の結果を示している。図18において、横軸は、添加したTLRリガンド固定化ナノ粒子もしくはTLRリガンド複合体の濃度から算出される、実質的に添加されたTLR7リガンド、または添加したTLRリガンド(図中、TLR7 ligandと表記)の量(μM)を示している。また、VehicleにはTLRリガンド(1V209)は含まれていないが、便宜上、右端(TLR7 ligandが40μMの位置)に図示している。
【0246】
図18は、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)溶液のhPBMCへの添加によって産生された、TNF−αの産生量を示す図である。
【0247】
図18より、TNF−αの産生量は、金属ナノ粒子に固定化されていないTLRリガンド複合体を添加した場合と比較して、TLRリガンド固定化ナノ粒子を添加した場合に、約10倍高くなることが分かった。
【0248】
〔試験例6:TLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)の免疫増強活性の測定(4)〕
TLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)のインビボ(in vivo)での免疫増強活性を、C57BL/6マウス(雌、7週齢)を用いて評価した。TLRリガンド固定化ナノ粒子としては、TLRリガンド複合体として1V209−TTDDA−TAを使用し、かつ製造時のTLRリガンド複合体と糖鎖リガンド複合体とのモル比を1:9とした場合に得られたTLRリガンド固定化ナノ粒子を使用した。具体的な試験方法は下記の通りである。
【0249】
モデルタンパク質抗原であるOVA(20ng)とアジュバントとなるTLRリガンド固定化ナノ粒子または1V209(TLR7リガンド:0.02〜2nmol)を0日目および14日目に皮内注射によりマウスに投与後、35日目に眼窩静脈叢により採血し、血中の抗OVAIgG1抗体および抗OVAIgG2c抗体の産生価を評価した。結果を図19に示す。
【0250】
アジュバントの陽性コントロールには、1V209−dextran(TLR7リガンド:0.2nmol)を用い、陰性コントロールにはPBSを使用した。なお、1V209−dextranは、非特許文献5に従い、調製した。
【0251】
また、35日目に、マウスから脾臓を採取し、マウス体重に対する脾臓の重さの割合を求めた。結果を図20に示す。
【0252】
図19の(a)は、OVAと本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)溶液とのマウスへの投与によって産生された、IgG1抗体の産生量を示す図であり、図19の(b)は、OVAと本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−Man−GNP)溶液とのマウスへの投与によって産生された、IgG2c抗体の産生量を示す図である。図20は、OVAと本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)溶液とのマウスへの投与後の、マウス体重に対する脾臓の重さの割合を示す図である。
【0253】
図19より、上述のように、TLR7L−αMan−GNPをアジュバントに用いてOVAをマウスに免疫し、35日後の血中の抗体価を評価したところ、TLR7リガンドの濃度依存的に、OVAに対するIgG2c抗体の抗体価が上昇し、1V209単体に比べて有意に高い免疫増強活性があることが分かった。また、液性免疫に関与するIgG1抗体の抗体価は大きく向上しなかったが、細胞性免疫に関与するIgG2c抗体の産生価が有意に上昇したことから、TLR7L−αMan−GNPは細胞性免疫の誘導能が高いことが示唆された。これは、陽性コントロールとして用いた1V209−dextranと同様の結果であった。
【0254】
また、図20より、1V209−dextranをアジュバントに使用した場合、脾臓の肥大が観察された。一方、TLR7L−αMan−GNPではほとんど脾臓の肥大は観察されなかったことから、TLR7リガンドをαマンノースと共に金属ナノ粒子(金ナノ粒子、GNP)に固定化することで、抗原提示細胞に効率的にTLR7L−αMan−GNPを輸送できるようになり、副作用を抑えてTLR7リガンドの免疫増強活性を向上できることが示唆された。これらの結果から、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子(TLR7L−αMan−GNP)がアジュバントとして有用であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0255】
本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、上述したように、免疫応答を増強する作用を有する。それ故に、本発明の一実施形態に係るTLRリガンド固定化ナノ粒子は、ワクチンの効果を増強し得るアジュバントとして、医療現場での利用可能性が大いに期待される。
図1
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