特開2019-78874(P2019-78874A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ボールウェーブ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2019078874-球の方位制御装置 図000003
  • 特開2019078874-球の方位制御装置 図000004
  • 特開2019078874-球の方位制御装置 図000005
  • 特開2019078874-球の方位制御装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-78874(P2019-78874A)
(43)【公開日】2019年5月23日
(54)【発明の名称】球の方位制御装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 21/00 20060101AFI20190426BHJP
【FI】
   G02B21/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-205293(P2017-205293)
(22)【出願日】2017年10月24日
(71)【出願人】
【識別番号】517078873
【氏名又は名称】ボールウェーブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108914
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 壯兵衞
(72)【発明者】
【氏名】小針 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】辻 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】山中 一司
(72)【発明者】
【氏名】赤尾 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】竹田 宣生
(72)【発明者】
【氏名】塚原 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】大泉 透
(72)【発明者】
【氏名】福士 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】岡野 達広
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 渚
【テーマコード(参考)】
2H052
【Fターム(参考)】
2H052AA01
2H052AD18
2H052AF14
(57)【要約】
【課題】球状の被方位制御体の極座標の方位や表面の位置を高い精度で制御するように被方位制御体を所望の方位に回転することが可能な、球の方位制御装置を提供する。
【解決手段】台座2と、台座2に固定され、3個の円形貫通孔40a〜40cを有する保持板4と、円形貫通孔40a〜40cのそれぞれへ回転自在に収容された保持球6a〜6cと、台座2と保持板4との間に配置され、保持球6a〜6cと接触し、保持球6a〜6cの回転を駆動する駆動板8を備える。保持球6a〜6cのそれぞれに点接触するように保持球6a〜6cの上に球状の被方位制御体1を搭載し、保持球6a〜6cの回転により被方位制御体1の極座標を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
台座と、
前記台座に固定され、且つn個(nは3以上の正の整数)の円形貫通孔を一定ピッチで円周上に配列した保持板と、
前記n個の円形貫通孔のそれぞれの内部に、水平移動を制限されて回転自在に収容された前記n個の保持球と、
前記台座と前記保持板との間に配置され、前記n個の保持球と接触し、前記n個の保持球の回転を駆動する駆動板と、を備え、
前記n個の保持球のそれぞれに点接触するように前記n個の保持球の上に球状の被方位制御体を搭載し、前記駆動板の水平面内の移動により、前記n個の保持球を回転させ、前記n個の保持球の回転により前記被方位制御体を回転させ、前記被方位制御体の方位を制御することを特徴とする球の方位制御装置。
【請求項2】
前記駆動板を移動させるアクチュエータを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の球の方位制御装置。
【請求項3】
前記駆動板と前記保持球との間の静摩擦係数を増加させる静摩擦係数増加機構を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の球の方位制御装置。
【請求項4】
前記保持板と前記保持球との間の動摩擦係数を低減させる動摩擦係数低減機構を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の球の方位制御装置。
【請求項5】
前記n個の円形貫通孔は、それぞれの中心点が、前記台座の主面に直交する方向から見て、前記n個の頂点を有する正多角形の頂点と重なっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の球の方位制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球状の被方位制御体の方位や表面の位置を高い精度で制御するように被方位制御体の極座標を所望の方位に回転・制御し、被方位制御体の極座標を任意に決定することが可能な球の方位制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受けの転動体等、球状の物体(球)に対して非破壊検査を行う技術として、例えば、特許文献1に開示されている技術がある。特許文献1に開示されている技術では、空気圧により浮上させて支持した球に非接触で共振を起こすことで、球の振動を非接触で測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4670000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術では、球の下方から空気を吹き上げることで、球を浮上させて支持するため、球の方位や表面の位置を制御することが困難であるという問題点があった。本発明の課題は、球状の被方位制御体の極座標の方位や表面の位置を高い精度で制御するように被方位制御体を所望の方位に回転することが可能な、球の方位制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の態様は、(a)台座と、(b)台座に固定され、且つn個(nは3以上の正の整数)の円形貫通孔を一定ピッチで円周上に配列した保持板と、(c)n個の円形貫通孔のそれぞれの内部に、水平移動を制限されて回転自在に収容されたn個の保持球と、(d)台座と保持板との間に配置され、n個の保持球と接触し、n個の保持球の回転を駆動する駆動板を備える球の方位制御装置であることを要旨とする。本発明の態様に係る球の方位制御装置においては、n個の保持球のそれぞれに点接触するようにn個の保持球の上に球状の被方位制御体を搭載する。そして、駆動板の水平面内の移動により、n個の保持球を回転させ、n個の保持球の回転により被方位制御体を回転させ、この被方位制御体の方位が制御される。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、球状の被方位制御体の極座標の方位や表面の位置を高い精度で制御するように被方位制御体を所望の方位に回転することが可能な、球の方位制御装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係る方位制御装置を表す図である。
図2】第1実施形態に係る方位制御装置を図1に示したII方向から見た側面図である。
図3】第1実施形態に係る方位制御装置の応用例として、球状の被方位制御体の干渉縞の観察を説明する図である。
図4】第1実施形態に係る方位制御装置を用いた、球状の被方位制御体のハンドリング動作を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して、本発明の第1実施形態を以下において説明する。以下の説明で参照する図面の記載において、同一、または類似の部分には、同一、または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、厚さの比率等は、現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚さや寸法は、以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0009】
さらに、以下に示す第1実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための球の方位制御装置(以降の説明では、「方位制御装置」と記載する)を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質や、それらの形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることが可能である。また、以下の説明における「左右」や「上下」の方向は、単に説明の便宜上の定義であって、本発明の技術的思想を限定するものではない。よって、例えば、紙面を90度回転すれば「左右」と「上下」とは交換して読まれ、紙面を180度回転すれば「左」が「右」に、「右」が「左」になることは勿論である。
【0010】
(第1実施形態)
図1及び図2に示す、本発明の第1実施形態に係る方位制御装置は、球状の被方位制御体1に対して、被方位制御体1の極座標を制御し、被方位制御体1の方位や表面の位置を精密に決定する装置である。具体的には、内部に球面座標系の極座標を設定した被方位制御体1に対し、被方位制御体1に定義される極座標の方位が所望の方位と一致するように、被方位制御体1を回転させて、被方位制御体1の方位を制御する。
【0011】
3次元ユークリッド空間R3における球面座標系(r,θ,φ)においては、1個の動径rと2個の偏角θ,φによって極座標が定義される。本発明の第1実施形態に係る方位制御装置の被方位制御体1の半径(直径)は、予め決定されているのが通常であるので、球面座標系(r,θ,φ)の動径r=一定である。球面座標系(r,θ,φ)において、動径rを固定し、2個の偏角θ,φを制御すれば、方位ベクトルの方向が決定できる。本発明の第1実施形態に係る方位制御装置は、この方位ベクトルの方向である「方位」を、任意の方向に制御する。
【0012】
図1及び図2に示すように、第1実施形態に係る方位制御装置は、台座2と、台座2に搭載された保持板4と、保持板4に保持された3つの保持球6a,6b,6cと、保持球6a〜6cの回転をそれぞれ駆動する駆動板8と、駆動板8を移動させるアクチュエータ10と、アクチュエータ10を制御する動作制御部20を備えている。
【0013】
台座2は、平板状又はブロック状の部材である。台座2の上面(図2中で上側の面)の駆動板8が搭載される駆動板搭載領域は、平滑な面となっている。また、台座2は、台座2の上面の駆動板搭載領域が水平面となるように設置されている。第1実施形態では、一例として、台座2を、平面視で長方形に形成した場合について説明するので、台座2の上面の全体が駆動板搭載領域に一致している例である。なお、「平面視」とは、図2中に矢印PSで表す視点であり、方位制御装置を、台座2の厚さ方向から見た視点(方位制御装置を上方から見た視点)である。
【0014】
図2では、保持板4を、台座2よりも面積の小さい平板状の部材で例示しているが、保持板4は、一定の平板領域を含めば、必ずしもその全体が平板状である必要はない。図2に例示した構造では、保持板4は、4本のボルト30a,30b,30c,30dを用いて、台座2に固定されているが、固定の方法や構造は図2に例示した方法や構造に限定されるものではない。また、保持板4は、台座2との間に駆動板8の移動空間を設定するように、台座2に固定されている。第1実施形態では、一例として、保持板4を、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系樹脂を用いて形成した場合について説明する。
【0015】
また、図1に示すように、保持板4の中央近傍において、一定ピッチで円周上に定義された3箇所には、同一の形状、同一の内径寸法の円形貫通孔40a,40b,40cが貫通している。保持板4に設けられた円形貫通孔40a,40b,40cは、それぞれの内径(直径)が等しい真円であるが、図2において視認できる保持板4の厚さは、円形貫通孔40a〜40cの内径よりも小さく、円形貫通孔40a〜40cのそれぞれは、保持板4の厚さ方向(図2中では「上下方向」と示す)に保持板4を貫通している。
【0016】
また、円形貫通孔40a,40b,40cは、平面視で(台座2の主面に垂直方向となる厚さ方向から見て)、それぞれの中心点が、正三角形の頂点と重なっている。すなわち、円形貫通孔40a〜40cのそれぞれの円の中心点は、平面視で円周上に等間隔に配置されており、円形貫通孔40a〜40cの中心点を結ぶ3本の直線は、互いのなす角度が60[°]となっている。
【0017】
3つの保持球6a,6b,6cは、例えば、金属、半導体、水晶、セラミックス等を用いて、同一の形状、同一寸法の真球に形成されている。各保持球6a〜6cの外径は、保持板4の厚さよりも大きい値である。更に、第1の保持球6aの外径は、第1の円形貫通孔40aの内径よりも小さく、第1の保持球6aは第1の円形貫通孔40aと、第1の保持球6aの外周で近似的な点接触をしている。又、第2の保持球6bの外径は、第2の円形貫通孔40bの内径よりも小さく、第2の保持球6bは第2の円形貫通孔40bと、第2の保持球6bの外周で近似的な点接触をしている。同様に、第3の保持球6cの外径は、第3の円形貫通孔40cの内径よりも小さく、第3の保持球6cは第3の円形貫通孔40cと、第3の保持球6cの外周で近似的な点接触をしている。
【0018】
各保持球6a,6b,6cは、対応する円形貫通孔40a,40b,40cの内部で、それぞれ高精度な回転が自在に可能であるが、各保持球6a,6b,6cは平行移動(水平移動)する範囲を制限されるように、円形貫通孔40a,40b,40cの内部に収容されている。このため、保持球6a〜6cと対応する円形貫通孔40a〜40cの内径との間のクリアランス(遊び)は、0.01〜0.1[mm]程度の範囲の値に設定されている。第1実施形態に係る方位制御装置では、保持球6a〜6cの、対応する円形貫通孔40a〜40cの内部での高精度な回転の自由度を達成するために、保持板4と保持球6a〜6cとの間の動摩擦係数を低く設定している。
【0019】
即ち、第1実施形態に係る方位制御装置では、保持板4に動摩擦係数の低いフッ素系樹脂を選定することにより、保持板4と保持球6a〜6cとの間の動摩擦係数を低減させる「動摩擦係数低減機構」を、保持板4が構成している。そして、動摩擦係数低減機構は、駆動板8の移動に伴って、水平移動を制限された3つの保持球6a〜6cは、それぞれ、円形貫通孔40a〜40cの内部で、それぞれの回転自由度に従って、円滑に回転する。そして、図2に示したように、保持球6a〜6cの上部は、保持板4の上面から突出し、保持球6a〜6cの下部は、保持板4の下面から突出している。
【0020】
図1及び図2に示したように、保持板4の上面から突出している各保持球6a〜6cのそれぞれの上部分には、球状の被方位制御体1が3点接触で載せられている。球状の被方位制御体1は、3つの保持球6a〜6cに載せられた状態で保持球6a〜6cと3点接触で転がり接触しており、保持球6a〜6cの回転に伴って回転し、被方位制御体1の内部に定義される極座標を変化させる。被方位制御体1の外径は、必ずしも保持球6a〜6cの外径と同一である必要はないが、3つの保持球6a〜6cが、円形貫通孔40a〜40cに収容された状態で被方位制御体1と転がり接触できる大きさであれば良い。
【0021】
図1から分かるように、駆動板8は、台座2よりも面積の小さい板状(平板状)の部材であり、台座2と保持板4との間の空間に挿入されている。図1中に示すように、駆動板8は、平面視で、保持板4のうち、ボルト30a〜30dを取り付けた位置とは重ならない位置に配置され、X−Y平面内での2次元の精密移動を可能にしている。駆動板8は、台座2のうち保持板4と対向する面(台座2の上面)と接触又は非接触に対向し、精密移動を実現している。位置制御を高精度にする場合は、リニアモーターカーと同様な磁気浮上等により、駆動板8を台座2に対して非接触となるようにして、台座2に対する駆動板8の摩擦係数をゼロに設定すればよい。
【0022】
駆動板8の上面には、ゴムシート50のような、保持球6a〜6cに対する静摩擦係数の大きな素材を設けておくことが好ましい。第1実施形態に係る方位制御装置において、ゴムシート50は、保持板4の下面から突出している保持球6a〜6cのそれぞれの下部分と接触する際の静摩擦係数を増大させる「静摩擦係数増加機構」を構成している。すなわち、ゴムシート50は、載せられた3つの保持球6a〜6cのそれぞれと大きな静摩擦係数で転がり接触し、駆動板8の移動と保持球6a〜6cの回転の精密な対応関係が実現できる。したがって、台座2と保持板4との間の水平位置で、駆動板8が2次元移動することにより、駆動板8に接触した保持球6a〜6cのそれぞれの回転を精密に制御して駆動することが可能である。
【0023】
このように、第1実施形態に係る方位制御装置によれば、静摩擦係数増加機構により、駆動板8の移動に伴って3つの保持球6a〜6cが回転する際に、駆動板8に対する保持球6a〜6cのスリップを抑制することが可能となる。これにより、3つの保持球6a〜6cを回転させる制御を高い精度で行うことが可能となり、被方位制御体1の極座標を変更するように、被方位制御体1を回転させる制御を、高い精度で行うことが可能となる。
【0024】
アクチュエータ10は、例えば、二つのモータや直動案内装置(例えば、ボールねじ)等を用いて形成されており、駆動板8をX軸方向及びY軸方向へ移動させる。例えば、図1において、X軸方向を、台座2の長辺と平行な方向に定義できる。この場合、Y軸方向は、平面視でX軸方向と直交する方向(台座2の短辺と平行な方向)となる。したがって、X軸方向及びY軸方向は、図2に示す水平方向である。
【0025】
動作制御部20は、例えば、コンピュータシステムに用いられる中央演算装置(CPU)等のプロセッサや、プロセッサの論理演算に必要なデータやプログラムの命令を記憶する主記憶装置や、この主記憶装置を補助する補助記憶装置部等を備え、アクチュエータ10の動作を制御する。
【0026】
また、動作制御部20は、駆動板8の移動で発生するすべての保持球6a〜6cの回転により被方位制御体1を回転させることで、被方位制御体1の中に定義される特定の方位が、第1実施形態に係る方位制御装置の内部に予め設定した方位と一致するように、アクチュエータ10の動作を制御する。
【0027】
具体的には、被方位制御体1の結晶方位を制御しながら、被方位制御体1の光学複屈折による干渉縞IFを観察する応用例が例示できる。この応用例の場合、図1に示すように、第1実施形態に係る方位制御装置が偏光顕微鏡等の撮像部60を備えるように構成し、この撮像部60によって、被方位制御体1の方位を光学複屈折が生じる特定の結晶軸(c軸)方向に制御して撮像すれば、図3中に示したような被方位制御体1の干渉縞IFを観察することが例示できる。なお、第1実施形態に係る方位制御装置に定義される観察方位軸は、X軸方向(第1軸方向)及びY軸方向(第2軸方向)と直交するデカルト座標系(3次元直交座標系)の第3軸方向(上下方向)となるZ軸方向に設定可能であるが、観察方位軸は必ずしもZ軸方向でなくてもよい。また、図3中には、Y軸方向に沿った撮像部60の照準線を符号「Ty」で表し、Z軸方向に沿った撮像部60の照準線を符号「Tz」で表す。
【0028】
第1実施形態に係る方位制御装置によれば、被方位制御体1の光学複屈折による干渉縞IFが観測出来るように、3つの保持球6a〜6cを回転させることで被方位制御体1の結晶軸(c軸)の方位を回転させ、被方位制御体1の結晶軸を観察方位軸と一致させる制御を行うことができる。すなわち、図1に示した第1実施形態に係る方位制御装置の動作制御部20は、被方位制御体1の中に定義される方位を「被方位制御体1の特定の方位」と定義し、予め設定した方位を「観察方位軸」と定義する。そして、被方位制御体1の特定の方位と観察方位軸が一致するように、アクチュエータ10の動作を制御する。
【0029】
なお、動作制御部20の記憶部には、予め、アクチュエータ10の動作による駆動板8の移動量と、駆動板8の移動に応じたすべての保持球6a〜6cの回転状態と、すべての保持球6a〜6cの回転状態に応じた被方位制御体1の回転状態との関係を記憶しておけば、学習効果よる繰り返し観察や高速な方位制御が可能となる。特に、動作制御部20を構成しているプロセッサや主記憶装置、補助記憶装置部によって深層学習機能を持たせれば、より迅速な極座標の制御が可能になり、被方位制御体1が真球から若干ずれている球状物体の場合であっても、被方位制御体1の極座標を制御することが可能となる。
【0030】
アクチュエータ10の動作による駆動板8の移動量には、駆動板8のX軸方向への移動量及びY軸方向への移動量を含む。駆動板8の移動に応じたすべての保持球6a〜6cの回転状態とは、3つの保持球6a〜6cの回転方向及び回転量を含む。すべての保持球6a〜6cの回転状態に応じた被方位制御体1の回転状態とは、被方位制御体1の特定の方位の回転方向及び回転量を含む。
【0031】
被方位制御体1の特定の方位と観察方位軸を一致させた後は、例えば、図4中に示すように、被方位制御体1の方位を制御した状態で、被方位制御体1の赤道上において操作アーム70を吸引又は接着等により固定することも可能である。例えば、結晶異方性を有する弾性体を被方位制御体1に用いれば、必要に応じて操作アーム70等を介在させながら、球状の弾性体に微細加工を施して各種の電気―機械変換素子等を製造することが可能となる。
【0032】
また、従来用いられていた、超音波モータを用いて被方位制御体1を回転させる装置と比較して、第1実施形態に係る方位制御装置は超音波モータの振動モードを制御する必要が無いため、装置構造を簡便化して低コスト化が可能となる。また、従来用いられていた、真空ピンセットを用いて被方位制御体1を受け渡す装置と比較して、第1実施形態に係る方位制御装置は被方位制御体1の落下の危険が無い。よって、第1実施形態に係る方位制御装置によれば、被方位制御体1の中心位置を変化させずに、被方位制御体1を正確且つ、高信頼性を維持して回転させることが可能となる。
【0033】
また、第1実施形態に係る方位制御装置は、円形貫通孔40a〜40cの、それぞれの中心点が、平面視で正三角形の頂点と重なっている。このため、第1実施形態に係る方位制御装置であれば、3つの保持球6a〜6cに対して被方位制御体1を載せると、被方位制御体1から加わる荷重により、平面視で、各保持球6a〜6cが、各円形貫通孔40a〜40cの内部で正三角形の頂点から離れる方向へ移動する。
【0034】
これにより、3つの保持球6a〜6cに対して被方位制御体1を載せると、平面視で、正三角形の頂点から3つの保持球6a〜6cの中心までの距離が等しくなる。このため、被方位制御体1を3つの保持球6a〜6cに載せるだけで、3つの保持球6a〜6cに対する被方位制御体1の接触面積を均等とすることが可能となる。したがって、方位制御装置の操作性を向上させることが可能となる。
【0035】
(その他の実施形態)
上述した第1実施形態に係る方位制御装置は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第1実施形態に係る方位制御装置に限定されることはない。すなわち、第1実施形態以外の態様であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0036】
例えば、第1実施形態に係る方位制御装置においては、アクチュエータ10を用いて自動的に駆動板8を水平面内で移動させ、これにより保持球6a,6b,6cを回転させ、保持球6a,6b,6cの回転により被方位制御体1を回転させ、この被方位制御体1の方位が制御される場合を例示的に説明した。しかしながら、高精度の制御が不要な場合等であれば、アクチュエータ10を用いずに、駆動板8を手動もしくは、機械的なマニュピュレータ等を用いて半自動的に、水平面内でX−Y移動させ、保持球6a,6b,6cを回転させるようにしてもよい。このように、装置構造を簡便化して低コスト化を達成した場合であっても、従来用いられていた真空ピンセットを用いて被方位制御体1を受け渡す装置と比較して落下の危険が無いので、小さな被方位制御体のハンドリングが容易になるという効果を奏することが出来る。
【0037】
第1実施形態に係る方位制御装置では、保持板4に円形貫通孔40a〜40cを形成し、円形貫通孔40a〜40cのそれぞれへ3つの保持球6a〜6cを回転自在に収容したが、これに限定するものではない。すなわち、保持板4にn=4箇所の円形貫通孔を形成し、4箇所の円形貫通孔のそれぞれへ4つの保持球を回転自在に収容してもよい。
【0038】
この場合、4箇所の円形貫通孔を、一定ピッチで円周上に配列し、それぞれの中心点が、平面視で正方形の頂点と重なるようにする。したがって、円形貫通孔及び保持球の数は、3以上のn個(nは3以上の正の整数)であればよく、また、n個の円形貫通孔は、それぞれの中心点が、台座2の厚さ方向から見て、n個の頂点を有する正多角形の頂点が円周上に一定ピッチで配列される構成であればよい。
【0039】
ただし、被方位制御体1の極座標を制御する点では、n=3の場合が最も設計が容易である。nが4以上の場合、実質的に被方位制御体1の極座標を制御する保持球を3個とし、他を自由回転する補助球としてもよい。外径が保持球より大きな被方位制御体1を回転・制御する場合は、駆動に寄与しない自由回転をする補助球を含めることによってnを4以上にしてもよい。例えば3個の大きさの等しい駆動用保持球と、駆動用保持球より外形の小さな3個の補助球を交互に配列して6個の保持球で、外径が保持球より大きな被方位制御体1を保持してもよい。
【0040】
第1実施形態では、駆動板8の上面に取り付けたゴムシート50により静摩擦係数増加機構を形成したが、これに限定するものではなく、静摩擦係数増加機構を、例えば、駆動板8の上面に溝幅10〜200[μm]程度の微細なローレット加工を格子状に施すことで形成してもよい。また、静摩擦係数増加機構を、例えば、駆動板8の上面に粒径10〜200[μm]程度の粒状の物体を接着することで形成してもよい。
【0041】
第1実施形態では、保持板4を、フッ素系樹脂を用いて形成したが、これに限定するものではない。すなわち、保持板4を、例えば、金属等を用いて形成してもよい。この場合、保持板4のうち、円形貫通孔の内径面、すなわち、保持球と接触する部分を、フッ素系樹脂を用いて被覆することで、保持板4と保持球との間の動摩擦係数を低減させる動摩擦係数低減機構を形成してもよい。
【0042】
この場合、駆動板8を、磁石を用いて形成することにより、着磁性を有する鋼球で形成した保持球と、磁石を用いて形成した駆動板8との組み合わせによって、駆動板8と保持球との間の静摩擦係数を増加させる静摩擦係数増加機構を形成してもよい。
【0043】
上記のように、本発明は第1実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。すなわち、第1実施形態の開示から、当業者には、様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0044】
1…被方位制御体、2…台座、4…保持板、6a,6b,6c…保持球、8…駆動板、10…アクチュエータ、20…動作制御部、30a,30b,30c,30d…ボルト、40a,40b,40c…円形貫通孔、50…ゴムシート、60…撮像部、70…操作アーム
図1
図2
図3
図4