【解決手段】 大略筒状のボビン(10)と、このボビン(10)のボビン本体(10a)の周面に巻回された、絶縁テープ12aおよび銅箔12bからなる1次コイル巻回層12Pおよび絶縁テープ22aおよび銅箔22bからなる2次コイル用巻回層22Sと、このボビン(10)の筒体中空部に嵌挿され、略日字状の磁路を形成するコア部と、ボビン本体(10a)の周面に巻回された1次コイル巻回層12Pおよび2次コイル巻回層22Sの間に挟持されてコイル部で発生した熱を外部に放出するためのコイル間放熱体(14)とを備えたトランス装置本体1aを金属製のケース16内に収容してなる。
前記ボビンを収納するケースまたは前記コア部に当接される枠体が高熱伝導材料よりなり、該ケースの本体または該枠体の本体に接続される、外部放熱手段に設置可能な脚部を備えたことを特徴とする請求項1記載のトランス装置。
分割された前記コア部同士の間に挟持される板状部材からなる本体と、該本体に接続される、外部放熱手段に設置可能な脚部を有する高導電部材よりなるコア間放熱板を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のトランス装置。
前記ボビンが、1対の断面コ字状の本体を有する導体からなるボビン半体を組み合わせてなり、各該ボビン半体の突合せ部分には、導体間ギャップを構成する絶縁部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項記載のトランス装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献2に記載の技術においては、2次コイルの端部を放熱板(以下、ヒートシンクとも称する)の表面に設置して、トランス装置内部で発生した熱をヒートシンクを介して放出するようにしているが、その一方で、2次コイルとヒートシンク(場合によってはコアについても)、さらにはこれらの部材に接続された導体の全てが2次側の回路とされてしまうため、これら全ての部材において、1次側の回路との絶縁が必要となり、煩雑な処理作業が増加する。
上記2次コイルの端部を絶縁板を介して上記ヒートシンクに設置すれば、上記のように1次側と2次側を互いに絶縁する必要はなくなるが、この絶縁板を間に介することにより熱伝導性が損なわれる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、トランス装置内で発生した熱を、ヒートシンク等の放熱手段を通じて外部に放出するタイプのものにおいて、装置の小型化を図った場合においても、煩雑な電気的絶縁処理を行うことなく、効率良くかつ簡易に熱を外部に放出し得るトランス装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係るトランス装置は、以下の特徴を備えている。
すなわち、本発明に係るトランス装置は、
高熱伝導材料により形成され、外部放熱手段に取り付け可能な脚部を備えた筒状のボビンと、
このボビンの筒状中空部に挿通され、磁路を形成するコア部と、
該ボビンの周面に巻回されるコイル部と、
このボビンの周面に巻回されたコイル部の巻回層間または該ボビンと該コイル部の巻回層との間に挟持され、このコイル部で発生した熱を伝達する本体部、および外部放熱手段に設置可能な脚部を備えた高熱伝導材料よりなる補助放熱手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
ここで、上記「高熱伝導材料」とは、アルミナや熱伝導性フィラーを用いたコンポジット材料等の20(W/m・K)以上の熱伝導率の良好な材料のことを称する。さらに、アルミニュームや銅等の熱伝導率が200(W/m・K)を超えるような材料であることが望ましい。
【0011】
前記ボビンを収納するケースまたは前記コア部に当接される枠体が高熱伝導材料よりなり、該ケースの本体または該枠体の本体に接続される、外部放熱手段に設置可能な脚部を備えることが好ましい。
【0012】
ここで、前記ボビンを収納するケースまたは、前記コア部に当接される枠体を構成する「高熱伝導材料」は、上記ボビンや上記補助放熱手段を構成する「高熱伝導材料」と同様に定義される。但し、上記ボビンや上記補助放熱手段の構成材料と、同じ材料であっても良いし、異なる材料であっても良い。
【0013】
分割された前記コア部同士の間に挟持される板状部材からなる本体と、該本体に接続される、外部放熱手段に設置可能な脚部を有する高導電部材よりなるコア間放熱板を備えることが好ましい。
ここで、放熱板を構成する「高熱伝導材料」は、上記ボビン、上記補助放熱手段、さらには上記ケースや上記枠体を構成する「高熱伝導材料」と同様に定義される。但し、上記ボビン、上記補助放熱手段、さらには上記ケースや上記枠体の構成材料と、同じ材料であっても良いし、異なる材料であっても良い。
【0014】
前記高熱伝導材料が、金属またはコンポジット高分子絶縁材料からなることが好ましい。
前記ボビンが、1対の断面コ字状の本体を有する導体からなるボビン半体を組み合わせてなり、各該ボビン半体の突合せ部分には、導体間ギャップを構成する絶縁部が設けられていることが好ましい。
また、前記コイル部が1次コイルおよび2次コイルからなり、前記補助放熱手段の本体が、前記1次コイルの巻回層と前記2次コイルの巻回層との間に挟持されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のトランス装置によれば、ボビンを熱伝導率の良い高熱伝導材料により構成し、これにより、コア部やコイル部で発生した熱を、ヒートシンク等の放熱手段の表面に設置可能なボビン脚部を介して放出することができる。
しかしながら、近年のトランス装置の小型化等の影響により、トランス装置内部で発生した熱の放出効率が低下してきている。
【0016】
そこで、本願発明においては、熱伝導率の良い高熱伝導材料により構成された補助放熱手段を、ボビンの周囲に巻回されたコイル巻回層間に挟持させ、コイル部で発生した熱を放熱手段まで伝達し、この放熱手段に設置した補助放熱手段の脚部を介して放熱手段に熱を放出する。これにより、上記ボビンを介して熱を放熱手段に放出するルートの他に、内部の熱、特にコイルで発生した熱を放出するルートを確保することができ、トランス装置の小型化を図った場合にも、トランス装置内部で発生した熱を効率的に放出することができる。
【0017】
しかも、この補助放熱手段は、コイル部の巻回層間、またはコイル部の巻回層とボビン周面間に挟持させ、かつこの補助放熱手段の脚部を放熱板(ヒートシンク)に設置するだけで、トランス装置内部で発生した熱を放出することができるので、極めて簡易に、熱の外部放出効率を向上させることができる。また、任意の個数の補助放熱手段を配することが容易に可能であり、必要に応じて、適宜、配設個数を調整することができる。
また、前述した従来技術のようにコイル自体ではなく、コイルとは別途の部材によって熱伝達を行っているので、電気的な絶縁処理を広い範囲に亘って行う必要もない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係るトランス装置の実施形態について、上記図面を参照しながら説明する。
【0020】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るトランス装置1の外観構成を示す斜視図であり、
図2は、この
図1に示すトランス装置1のボビン10とコイル間放熱体14との位置関係を示す斜視図である。
図3および
図4は、第1の実施形態に係るトランス装置1の製造過程を順に説明するものである。
また、
図1のコイル部分を明確に示すために、
図5(A)に
図1に示すトランス装置の平面図を、さらに、
図5(B)に、この平面図の一部拡大図を示す。また、
図3(D)のコイル部分を明確に示すために、
図6(A)に、
図3(D)に示すトランス装置の一部拡大図を示し、
図6(B)に、
図2、
図4(A)に示すトランス装置の一部拡大図を示す。さらに、
図4(B)のコイル部分を明確に示すために、
図7に、
図4(B)に示すトランス装置の一部拡大図を示す。
【0021】
図1、
図5(A)、(B)に示すように(以下、
図1と称するときは
図5(A)および
図5(B)(
図5(A)の一点鎖線円形部分の拡大図)も併せて参照のこと)、このトランス装置1は、大略筒状のボビン10と、このボビン10のボビン本体10aの周面に一体的に巻回された、絶縁テープ12aおよび銅箔12bからなる1次コイル巻回層12Pと、絶縁テープ22aおよび銅箔22bからなる2次コイル巻回層22Sと、このボビン10の筒体中空部に嵌挿され、略日字状の磁路を形成するコア部(上Eコア17aと下Eコア17bの組合せ)と、ボビン本体10aの周面に巻回された1次コイル巻回層12Pおよび2次コイル巻回層22Sの間に挟持されて、コイル部で発生した熱を外部に放出するためのコイル間放熱体14とを備えている。
【0022】
なお、本実施形態においては、1次および2次の各コイルは1次用コイル銅箔12bお
よび2次用コイル銅箔22bにより構成されているが、コイルは、この銅箔12b、22b等の金属箔に限られるものではなく、丸線や平角線からなる導線により形成しても良いことは勿論である。
【0023】
上記ボビン10は、全体としてアルミニューム等の熱伝導率の良い高熱伝導材料からなる角筒状に形成されてなり、コイル部が巻回されるボビン本体10aと、ヒートシンクの外表面にネジ止めされるボビン脚部10cと、ボビン本体10aおよびボビン脚部10cを接続するボビン接続部10bとを備えている(
図3(B)を参照)。ボビン脚部10cは、ボビン本体10aおよびボビン接続部10bに対して、直角に折り曲げられるように形成されている。
【0024】
ボビン脚部10cには、ボビン10をヒートシンクにネジ止めするためのネジ取り付け孔15が形成されている。
また、ボビン10は、ボビン本体10aが、1対の断面コ字状のボビン半体本体10a´を突き合わせて断面ロ字状に形成されてなるものであり、この突き合わせ部分には絶縁体からなる絶縁部11a、11bが取り付けられており、ボビン10の周面1周に亘って
導通状態となって、電気的にショート状態が発生することを防止するようにしている。
【0025】
上記ボビン本体10aの周面には、上述したように絶縁テープ12aとともに、この絶縁テープ12aに重ねた1次コイル用銅箔12bを一体として、例えば2〜十数ターン程度巻回するように構成される。この1次コイルを巻回する工程で、コイルの巻始め側に1次用リード13aを、コイルの巻終り側に1次用リード13bを接続する。リード13a、bは扁平な銅線等よりなる導体により形成する。なお、これらのリード13a、13bは、電源線やアース線に接続される。
この後、コイル間放熱体14のコイル間放熱体本体14aが、1次コイルの最終巻回された絶縁テープ12a上に当接される。本実施形態においては、ボビン本体10aの対向する2面に、各々コイル間放熱体本体14aが当接されるように配設される。なお、コイル間放熱体本体14aの周囲にはコイル間放熱体絶縁テープ14dが巻回されており、このコイル間放熱体本体14aと他の導体との間の絶縁性を確実にしている。
【0026】
この後、上記1次コイルと同様にして、絶縁テープ22aとともに、この絶縁テープ22aに重ねた2次コイル用銅箔22bを一体として、例えば2ターン〜数十ターン程度巻回する。1次コイルと2次コイルの巻回数比率は、昇圧あるいは降圧する電圧比に応じて調節する。なお、1次コイルと2次コイルの銅箔12b、22bの厚みは、上記巻回数比率を考慮して、1次コイル巻回層12Pの全厚(絶縁テープ12aを含む)と2次コイル巻回層22Sの全厚(絶縁テープ22aを含む)が略同様となるようにすれば、コイル間放熱体本体14aがコイル部巻回層の厚みの略中間位置に配されることとなり、コイル間放熱体14による放熱効果を向上させることができる。
【0027】
この2次コイルを巻回する工程で、コイルの巻始め側に2次用リード23aを、コイル
の巻終り側に2次用リード23bを接続する。リード23a、23bは、扁平な銅線等よりなる導体により形成する。なお、これらのリード23a、23bは、電源線やアース線に接続される。
なお、このコイル部の最終巻回層は絶縁テープ22aとする必要がある。
【0028】
次に、
図2および
図4(A)の一点鎖線矩形部分を拡大して示す
図6(B)に示すように、上記コイル間放熱体14は、1次コイル巻回層12Pと2次コイル巻回層22Sの間に挟持される平板上のコイル間放熱体本体14a(周囲にコイル間放熱体絶縁テープ14dが巻回されている)と、ヒートシンクの外表面にネジ止めされるコイル間放熱体脚部14cと、コイル間放熱体本体14aおよびコイル間放熱体脚部14cを接続するコイル間放熱体接続部14bとを備えている。コイル間放熱体脚部14cは、コイル間放熱体本体14aおよびコイル間放熱体接続部14bに対して、直角に折り曲げられるように形成されている。このコイル間放熱体脚部14cにもネジ取り付け孔15が設けられていて、コイル間放熱体脚部14cをヒートシンク等の外表面にネジ止めし得るように形成されている。
【0029】
前述したように、コイル間放熱体14においては、コイル間放熱体本体14aに伝わった、コイル部等において発生した熱がコイル間放熱体脚部14cを介してヒートシンク等に放出されるので、ボビン脚部10cからの、内部で発生した熱等のヒートシンク等への放出に加え、トランス装置1内部で発生した熱を外部に、さらに効率よく放出することができる。
【0030】
次に、上記ボビン本体10aの角筒中空部に嵌挿されて組み合わせられたコア部について説明する。コア部は、例えば
図4(c)に示す上Eコア17aと下Eコア17bからなり、各Eコア17a、bの中脚部分が、ボビン本体10aの角筒中空部に嵌挿され、この中脚部分と、各Eコア17a、bの両側脚部分の各先端部分において、各Eコア17a、bの対応する先端部分が、互いに突き当てられるように組み合わせられる。もっとも、ボビン本体10aの角筒中空部に嵌挿された各Eコア17a、bの中脚部分の先端部分同士の間には、磁気飽和状態となるのを防止するための僅かな隙間(ギャップ)を形成し得る。
【0031】
コア部の態様としては、2つのEコア17a、bの組合せ以外にも、後述するようにIコアとEコアの組合せ等の種々の態様のものを選択し得る。
また、本実施形態のトランス装置1においては、上述したように形成されたトランス装置本体1aが、金属等の熱伝導率の良い材料によって形成されたケース16内に収容される。
【0032】
ケース16は、全体として直方体状とされ、ケース上板16a、ケース側板16bおよびケース脚部16c等から構成されている。ケース側板16bは対向する左右両面において設けられ、他の2面にはボビン10の長手方向の端部に位置する2側部をこのケース16から突出させるために側板が設けられておらず、これらの2面にはケース開口部16eが設けられている。
【0033】
また、ケース上板16aの上面は開口されており、金属製の2つのケース蓋部16fによって、内部に収容した上Eコア17aが押下されるように構成されている。すなわち、このケース蓋部16fをケース16に取り付けた際の下方への付勢力(バネ力)によって、ケース16の内部に収容されている上Eコア17aが下Eコア17b方向に押し付けられ、全体として、略日字型の閉磁路が形成されるようになっている(ただし、前述した下Eコア17bの中脚部分の先端と上Eコア17a、bの中脚部分の先端との間に僅かな隙間を設けてもよい)。なお、上記ケース蓋部16fは、各Eコア17a、bよりも幅狭に
形成されている。
【0034】
図1に示すように、各ケース側板16bの下部の一部は、ケース脚部16cを設けるために切り欠かれている。すなわち、各ケース側板16bには、ケース側板開口部16dが形成されており、その開口部16dに相当するケース側板16b部分は、外側に直角に折り曲げられてケース脚部16cとされている。このケース脚部16cにもネジ取り付け孔15が設けられていて、ケース脚部16cがヒートシンク等の外表面にネジ止めされるようになっている。これにより、トランス装置本体1aから放射または伝導によりケース16に伝達された熱がこのケース脚部16cを介してヒートシンク等の外部に放出されるので、ボビン10およびコイル間放熱体14と相俟ってトランス装置内部の熱を外部にさらに効率よく放出することが可能となる。
【0035】
また、上記実施形態においては、前述したボビン10およびコイル間放熱体14に熱伝導率の良い高熱伝導材料を用いているが、この導電材料としては上記銅やアルミニューム等の金属に限られるものではなく、アルミナや熱伝導性フィラーを用いたコンポジット高分子絶縁材料等を用いてもよく、熱伝導率が20(W/m・K)以上の素材とされる。熱伝導率が20(W/m・K)以上のその他の素材としては、金属材料として、鉛、マグネシウム、真ちゅう、亜鉛、スズ等、また、コンポジット高分子絶縁材料としては、フィラーとして、六方晶窒化ホウ素、酸化マグネシウム、窒化アルミニューム、CNT(カーボンナノチューブ)およびBNNT(窒化ホウ素ナノチューブ)等を用いることができる。
【0036】
ここで、コンポジット高分子絶縁材料とは、高分子絶縁材料(例えば、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)等)に上述したような材料からなるフィラーを混合し、配向制御するようにして形成したものである。
但し、アルミニュームや銅等の熱伝導率が200(W/m・K)を超えるような材料であることが、より望ましい。
また、本実施形態においては、上記高熱伝導材料であり、かつ非磁性材料であることが要求される。
【0037】
次に
図3および
図4を用いて上記実施形態に係るトランス装置1の製造過程を説明する。
まず、
図3(A)に示すように、断面コ字状のボビン半体本体10a´とボビン脚部10cと、これらボビン半体本体10a´およびボビン脚部10cを接続するボビン接続部10bからなるボビン半体10´を形成する。ボビン半体本体10a´の突き当て部分の全長に亘って絶縁部11a、bを取り付ける。
【0038】
次に、
図3(B)に示すように、一対のボビン半体本体10a´を各絶縁部11a、bが互いに突き当てられるようにして組み合わせ、ボビン本体10aを形成する。これにより、互いのボビン半体10´の周囲1周に亘って導通され、電気的なショート状態となるのを防止することができる。
【0039】
次に、
図3(B)の状態でのボビン本体10aの周面に絶縁テープ12aを巻回する(
図3(C)を参照)。これにより、ボビン本体10aと、このボビン本体10aの周面に巻回される1次コイルとの間の絶縁状態が確保される。
【0040】
次に、
図3(D)(
図3(D)の一点鎖線矩形部分を拡大して示す
図6(A)を併せて参照)に示すように、絶縁テープ12aの外側に1次コイル用銅箔12bを巻回し、絶縁テープ12aと1次コイル用銅箔12bを一体として、ボビン本体10aの周面に巻回していく。この巻回数は1次コイルでは例えば2〜十数ターン、絶縁テープ12aは、さらにその外側に1回多く巻回する。
【0041】
この巻回処理の際に、1次コイル用銅箔12bにおいて、最も内側の巻回層には巻始め側の1次用リード13aを、最も外側の巻回層には巻終り側の1次用リード13bを、それぞれボビン本体10aの上方に突き出すように接続する。
【0042】
次に、
図4(A)(
図6(B)を併せて参照)に示すように、コイル間放熱体14のコイル間放熱体本体14a(周囲にコイル間放熱体絶縁テープ14dが巻回されている)を、ボビン本体10aの対向する短辺側の2面の絶縁テープ12a上に当接し、配置する。
また、このコイル間放熱体本体14aとはコイル間放熱体接続部14bを介して接続される各コイル間放熱体脚部14cを、対応するボビン脚部10cの外側に配置する。
【0043】
次に、
図4(A)の状態から、各コイル間放熱体本体14aを1次コイル側の絶縁テープ12aとの間に挟みこむようにして、2次側の絶縁テープ22aを巻回する。この後、2次側の絶縁テープ22aの外側に2次コイル用銅箔22bを巻回し、絶縁テープ22aと銅箔22bからなる2次コイルを一体として、ボビン本体10aの周面に巻回する(
図4(B)、および
図4(B)の一点鎖線部分を拡大して示す
図7を参照)。この巻回数は2次コイルでは例えば2〜数十ターンとし、その外側に絶縁テープ22aを巻回する。なお、この最外層の絶縁テープ22aの巻回数は、1〜数ターンの範囲とすることができる。
【0044】
この巻回処理の際に、2次コイル用銅箔22bにおいて、最も内側の巻回層には巻始め側の2次用リード23aを、最も外側の巻回層には巻終り側の2次用リード23bを、それぞれボビン本体10aの上方(1次側の1次用リード13a、bとはボビン本体10aの対向する面側から上方)に突き出すように接続する。
【0045】
次に、
図4(C)に示すように、上Eコア17aおよび下Eコア17bを用意する。前述したように、各Eコア17a、bの中脚部分が、ボビン本体10aの角筒中空部に、その上下方向から嵌挿され、各Eコア17a、bの中脚部分と両側脚部分の対応する先端部分同士が互いに突き当てられるようにして組み合わせられる(該先端部分同士の間には、磁気飽和状態となるのを防止するための僅かな隙間(ギャップ)を設けることも可能である)。
【0046】
この後、上記のようにして形成されたトランス装置本体1aをケース16に収容して、
図4(D)に示すようなトランス装置1を形成する。
【0047】
<第2の実施形態>
図8は、第2の実施形態に係るトランス装置101の外観構成を示す斜視図である。なお、本実施形態に係る装置は、いわゆる「チョークコイル」と称される装置であり、コイル部は1次、2次の両者を有していないが、基本的な構成および効果においてトランス装置と同様であるため、本願発明のトランス装置に含めるものとする。
この第2の実施形態に係るトランス装置101は、基本的な構成においては、上記第1の実施形態に係るトランス装置1と同様とされおり、大略筒状のボビン(
図8には全体形状が示されていない)と、このボビンの周面に一体的に巻回された、絶縁テープ122aと、コイル(第1の実施形態のように箔体ではなく丸線コイルとされている)により構成されるコイル122b(
図8には一部が示されている)と、このボビンの筒体中空部に一部が嵌挿されて、全体として略日字形状の磁路を形成するコア部(第2の実施形態ではIコア分割体27aとEコア分割体27bから構成される)と、ボビンの周面に巻回されたコイル122bの層間に挟持されて、コイル部で発生した熱を外部に放出するためのコイル間放熱体24とを備えている。
【0048】
また、本実施形態のトランス装置101は、上記第1の実施形態のトランス装置1とは異なり、トランス装置本体101aを収納するケース16は設けられておらず、トランス装置本体101aを固定してヒートシンク等に安定して取り付けるための1対の固定用枠体31がコア部(Iコア分割体27aおよびEコア分割体27b)の対向する両面に、複数個のビス(長ねじ)32およびナット42により取り付けられるように形成されている。すなわち、各ビス32は、1対の固定用枠体31の間にコア分割体27a、27bと、コア間放熱板33と、コア分割体27a、27bをこの順に貫通し、ナット42と螺合す
る。これにより、1対の両固定用枠体31間に、コア分割体27a、27bと、コア間放熱板33と、コア分割体27a、27bが確実に挟持される。
【0049】
また、コイル間放熱体24は、コイル巻回層の間に挟持されるコイル間放熱体本体24a(第1の実施形態のものと同様に、周囲にコイル間放熱体絶縁テープが巻回されている)が、コイル間放熱体接続部を介することなく、そのまま直角に折り曲げられてコイル間放熱体脚部24cとされており、この脚部24cをヒートシンクにネジ止めする(
図8の実施形態においてはコイル間放熱体脚部24cが、ボビン脚部20cに重ね合わされて、一体的にヒートシンクにねじ止めされる)ことにより、コイル部で発生した熱をこのヒートシンクを介して外部に放出することができる。このコイル間放熱体脚部24cは対向するトランス装置101の長辺側の面に各々設けられている。
【0050】
前述したように、このコイル間放熱体脚部24cの下側にはボビン本体からの熱が伝達されるボビン脚部20cが形成されており、この脚部20cをコイル間放熱体脚部24cと同軸にヒートシンクにネジ止めすることにより、トランス装置本体101aの内部で発生した熱をこのヒートシンクを介して外部に放出することができる。このボビン脚部20cは対向するトランス装置101の長辺側の面に各々1つずつ設けられている。
なお、コイル間放熱体脚部24cとボビン脚部20cは必ずしも重ね合わせなくてもよく、少なくとも一方の脚部20c、24cの形状を変更するなどして、これら両者を互いに同一平面上(例えばヒートシンク上)において各々、ネジ止めすることも可能である。
【0051】
さらに、このトランス装置101の短辺側には、固定用枠体31からコア部の熱を伝達される1対の枠体脚部31aが設けられており、この脚部31aをヒートシンクにネジ止めすることにより、コア部で発生した熱をこのヒートシンクを介して外部に放出することができる。この枠体脚部31aは対向するトランス装置101の短辺側の面に各々1対ずつ設けられている。
【0052】
また、本実施形態においては、IコアおよびEコアが各々2つに分割され(コアの分割数としては3つ以上とすることが可能である)て、Iコア分割体27aおよびEコア分割体27bとされている。また、分割された各Iコア分割体27a同士および分割された各Eコア分割体27b同士の間には、熱導電性の高いアルミニューム等の金属等からなる放熱板33が挟持されており、この放熱板33の下部が直角に折り曲げられて放熱板脚部33aが設けられている。放熱板脚部33aは、枠体脚部31a上に重ね合される。
【0053】
この脚部33aを、枠体脚部31aと一体として、ヒートシンクにネジ止めすることにより、コア部の内部で発生した熱をこのヒートシンクを介して外部に放出することができる。このように、コア部を分割して、放熱板33をそれらの間に挟むことにより、コア内部で発生した熱を、効率よく外部に放出することができる。
なお、放熱板脚部33aと枠体脚部31aは必ずしも重ね合わせなくてもよく、少なくとも一方の脚部31a、33aの形状を変更するなどして、これら両者を互いに同一平面上(例えばヒートシンク上)において各々、ネジ止めすることも可能である。
このように、この第2の実施形態に係るトランス装置101においては、1対のコイル間放熱体脚部24c、1対のボビン脚部20c、2対の枠体脚部31aおよび1対のコア
間放熱板脚部33aからなる4つのルートで、トランス装置101で発生した熱をヒートシンクに放出できるようにしている。これによりトランス装置内部で発生した熱を外部に放出する効果を大幅に向上させることができる。
【0054】
また、上述した第1の実施形態においては、1次コイルおよび2次コイルとしての銅箔12b、22bに、電源接続や接地のための各リード13a、b、23a、bを接続しているが、第2の実施形態においては、巻回されるコイル122bの各端部を引き出しコイル(巻始め側)123a、引き出しコイル(巻終り側)123bとし、電源線やアース線に接続する(
図8におけるトランス装置101はチョークコイル用であるので、引き出しコイルは2本とされている)。
【0055】
以上、本発明の実施形態に係るトランス装置について説明したが、本発明は上述した実施形態のものに限定されるものではなく、種々に態様を変更することが可能である。
【0056】
例えば、前述したコイル間放熱体14の形状としては、ボビン10等の形状に応じて種々の形状とすることができ、例えば
図9に示すように、コイル間放熱体214のコイル間放熱体本体214aにおいて、その両側端部から直角に延在する袖部214dを設け、この袖部214dをボビン本体10aの長辺側の面にも沿わせるようにすれば、コイル間放熱体本体214aとボビン本体10aの接触面積を増大させることができるので、放熱効果をさらに向上させることができる。
なお、
図9におけるコイル間放熱体接続部214bおよびコイル間放熱体脚部214cは、各々上記第1の実施形態におけるコイル間放熱体接続部14bおよびコイル間放熱体脚部14cと同様に構成されている。
【0057】
また、上記第1の実施形態においては、1対のボビン半体10´を組み合わせてボビン10を構成しているが、ボビンは、分割されたボビン部品を組み合わせて作るものに限られるものではない。ただし、前述したように、ボビンの周面1周に亘って導通状態となることを防止する必要があるので、ボビンの周面の任意の位置にボビンの軸方向に延びるスリット(絶縁部材をこのスリットに嵌め合せるようにしても良いし、スリット(ギャップ)として機能する樹脂等をボビン本体を形成する金属等と同時に一体成形しても良い)を形成する必要がある。なお、単に空気間隙を設けるだけでもよい。
【0058】
また、上記第1の実施形態においては、コイル間放熱体14のコイル間放熱体本体14aを1次コイル巻回層12Pと2次コイル巻回層22Sの間に挟むようにしているが、コイル間放熱体本体14aを1次コイル巻回層12P内または2次コイル巻回層22S内に挟むようにしても良い。また、ボビン本体10aの周面に絶縁テープ12aを巻回し、この後、コイル間放熱体本体14aを配し、その上から1次コイル巻回層12Pを巻回するようにしても良い。
また、コイル間放熱体14、24の配設個数は、上述した実施形態のように2つに限られるものではなく、任意の数のコイル間放熱体14、24をコイル層の間に挟む設定とすることができる。
【0059】
また、ヒートシンク等の放熱手段に設置する各部材の脚部は、
図1や
図8に示すトランス装置1、101の態様に限られるものではなく、脚部の形状、設置手法および各脚部の配列順等は、適宜変更し得る。例えば、設置手法としては、ビス止めに限られず溶接等の手法を用いても良い。
また、本願明細書で用いる「トランス装置」との用語は、コイル部として1次コイルおよび2次コイルを有するものに限られず、チョークコイルやインダクタ等の1次コイルと2次コイルの区別がなく変圧機能を有さない装置も、含まれるものとする。