(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-805(P2019-805A)
(43)【公開日】2019年1月10日
(54)【発明の名称】触媒成分担持体の製造方法及び触媒成分担持体
(51)【国際特許分類】
B01J 37/03 20060101AFI20181207BHJP
B01J 23/889 20060101ALI20181207BHJP
B01J 29/076 20060101ALI20181207BHJP
B01J 23/34 20060101ALI20181207BHJP
B01J 37/12 20060101ALI20181207BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20181207BHJP
【FI】
B01J37/03 A
B01J23/889 M
B01J29/076 M
B01J23/34 M
B01J37/12
B01J35/10 301J
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-117612(P2017-117612)
(22)【出願日】2017年6月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】川上 徹
(72)【発明者】
【氏名】本田 泰平
(72)【発明者】
【氏名】土居 誠司
(72)【発明者】
【氏名】林 孝三郎
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BA21C
4G169BC31A
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4G169BC62A
4G169BC62B
4G169BC66A
4G169BC67A
4G169BC67B
4G169BC68A
4G169BE14C
4G169BE19C
4G169CA10
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4G169DA05
4G169EA01Y
4G169EA02Y
4G169EB14Y
4G169EC02X
4G169EC02Y
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4G169EC03Y
4G169EC04X
4G169EC04Y
4G169EC05X
4G169FB08
4G169FB41
4G169FC03
4G169FC07
4G169FC08
(57)【要約】
【課題】担持された触媒成分が脱落しにくく、各種VOC及び悪臭成分の優れた除去性能が長期にわたって維持される触媒成分担持体の簡便な製造方法、及びこの製造方法によって製造される触媒成分担持体を提供する。
【解決手段】金属塩及び尿素を含有する水溶液に多孔質担体を接触させて70℃以上に加熱し、析出した析出物を多孔質担体の表面の少なくとも一部に担持させる工程を有し、析出物を焼成する工程、及び析出物を担持させた多孔質担体を焼成する工程のいずれも有しない触媒成分担持体の製造方法である。また、この製造方法によって製造された触媒成分担持体である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属塩及び尿素を含有する水溶液に多孔質担体を接触させて70℃以上に加熱し、析出した析出物を前記多孔質担体の表面の少なくとも一部に担持させる工程を有し、
前記析出物を焼成する工程、及び前記析出物を担持させた前記多孔質担体を焼成する工程のいずれも有しない触媒成分担持体の製造方法。
【請求項2】
前記金属塩が、銅、マンガン、コバルト、鉄、及びニッケルからなる群より選択される少なくとも一種の遷移金属の塩である請求項1に記載の触媒成分担持体の製造方法。
【請求項3】
前記多孔質担体のBET比表面積が、10m2/g以上である請求項1又は2に記載の触媒成分担持体の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質担体が、活性炭、ゼオライト、又はモレキュラーシーブである請求項1〜3のいずれか一項に記載の触媒成分担持体の製造方法。
【請求項5】
前記多孔質担体の表面の少なくとも一部に担持させた前記析出物を酸化する工程をさらに有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の触媒成分担持体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の製造方法によって製造された触媒成分担持体。
【請求項7】
前記多孔質担体の表面の少なくとも一部に触媒成分が担持されており、
前記触媒成分の担持量が、前記多孔質担体に対して1質量%以上である請求項6に記載の触媒成分担持体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機物(VOC)や悪臭成分を分解除去するために用いる触媒成分担持体、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生活まわり、家畜飼育場、及び汚水処理場などで発生する硫化水素、メルカプタン、アンモニア、及びイソ吉草酸などの悪臭成分や揮発性有機物(VOC)を除去する従来の方法としては、VOCなどを燃料と混ぜて燃焼させる方法などがある。但し、この方法の場合、処理装置が大型になるとともに燃焼コストもかかり、しかも除去効率もさほど高くないといった課題があった。
【0003】
また、悪臭成分等を吸着して除去する脱臭剤としては、活性炭が一般的に用いられている。さらに、除去性能をさらに高めるべく、金属の複合酸化物などを用いた脱臭剤等が検討されている。例えば、亜鉛イオン交換ゼオライトと、マンガン塩及びジルコニウム塩等を微粉状シリカに沈着させたものと、を乳鉢で混合した後に焼成して得られる脱臭剤が提案されている(特許文献1)。また、ケイ酸アルミニウムと塩基性酢酸銅とを、粉末状態で混合した後に焼成して得られる脱臭剤が提案されている(特許文献2)。
【0004】
さらに、除去性能を長期にわたって維持すべく、例えば、多孔質の担体上に金属を含む沈殿物を形成した後に焼成することで製造される、担体上に金属酸化物の被覆層が形成された脱臭剤が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−103487号公報
【特許文献2】特開平8−266894号公報
【特許文献3】特許第4543167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び2で提案された脱臭剤は、長期使用に対する適合性が必ずしも十分でないといった課題があった。
【0007】
なお、悪臭成分等を分解する分解触媒等をハニカム構造体などの多孔質担体に担持した触媒担持体を排ガスの処理経路に配置する方法がある。しかし、分解性能が必ずしも十分であるとは言えないとともに、使用状況によっては担持した分解触媒が脱落しやすいため、処理経路が汚染される、或いは長期使用が困難である等の課題があった。また、特許文献1〜3で提案された脱臭剤は焼成工程を経て得られるものであるため、製造工程が煩雑であり、必ずしも簡単に製造されるものではなかった。
【0008】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、担持された触媒成分が脱落しにくく、各種VOC及び悪臭成分の優れた除去性能が長期にわたって維持される触媒成分担持体の簡便な製造方法を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、担持された触媒成分が脱落しにくく、各種VOC及び悪臭成分の優れた除去性能が長期にわたって維持される触媒成分担持体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明によれば、金属塩及び尿素を含有する水溶液に多孔質担体を接触させて70℃以上に加熱し、析出した析出物を前記多孔質担体の表面の少なくとも一部に担持させる工程を有し、前記析出物を焼成する工程、及び前記析出物を担持させた前記多孔質担体を焼成する工程のいずれも有しない触媒成分担持体の製造方法が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、上記の製造方法によって製造された触媒成分担持体が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、担持された触媒成分が脱落しにくく、各種VOC及び悪臭成分の優れた除去性能が長期にわたって維持される触媒成分担持体の簡便な製造方法を提供することができる。
【0012】
また、本発明によれば、担持された触媒成分が脱落しにくく、各種VOC及び悪臭成分の優れた除去性能が長期にわたって維持される触媒成分担持体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
<触媒成分担持体及びその製造方法>
本発明の触媒成分担持体の製造方法は、金属塩及び尿素を含有する水溶液に多孔質担体を接触させて加熱し、析出した析出物を多孔質担体の表面の少なくとも一部に担持させる工程(担持工程)を有する。なお、本発明の触媒成分担持体の製造方法は、(i)析出物を焼成する工程;及び(ii)析出物を担持させた多孔質担体を焼成する工程;のいずれも有しない。また、本発明の触媒成分担持体は、この製造方法によって製造されたものである。以下、本発明の触媒成分担持体及びその製造方法の詳細について説明する。
【0015】
(担持工程)
担持工程は、金属塩及び尿素を含有する水溶液に多孔質担体を接触させて加熱し、析出した析出物を多孔質担体の表面の少なくとも一部に担持させる工程である。
【0016】
金属塩は水溶性の塩であればよく、特に限定されない。金属塩の具体例としては、硫酸塩、塩化物、硝酸塩などを挙げることができる。また、金属塩は、遷移金属の塩であることが好ましい。遷移金属としては、触媒作用が期待される通常の遷移金属を用いることができる。遷移金属の具体例としては、銅、マンガン、コバルト、鉄、及びニッケルなどを挙げることができる。これらの遷移金属は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、尿素としては、市販の尿素を用いることができる。
【0017】
多孔質担体は、その表面の少なくとも一部に触媒成分を担持するための担体(母体、基材)である。多孔質担体は多孔質であればよく、特に限定されない。多孔質担体の具体例としては、シリカ、アルミナ、活性アルミナ(表面積の大きい多孔質アルミナ)、活性炭、ゼオライト、モレキュラーシーブ、ハニカム、ジルコニア、セリア、珪藻土、アパタイト、フライアッシュ、クリンカアッシュなどを挙げることができる。また、無機物質だけでなく、例えば、繊維状高分子やキトサンなどの有機材料であっても多孔質担体として用いることができる。これらの多孔質担体は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】
多孔質担体は、その比表面積の違いにより、担持可能な触媒成分の量が異なる。多孔質担体のBET比表面積は、10m
2/g以上であることが好ましく、20m
2/g以上であることがさらに好ましく、40m
2/g以上であることが特に好ましい。そのBET比表面積が10m
2/g以上の多孔質担体を用いることで、より好ましい量の触媒成分を担持させることができる。
【0019】
担持工程では、金属塩及び尿素を含有する水溶液に多孔質担体を接触させる。具体的には、まず、所定量の金属塩及び尿素を適当な反応槽に入れ、水に溶解させて水溶液(処理液)を調製する。処理液中の金属塩の濃度は、担持しようとする触媒成分の量に応じて適宜設定すればよいが、例えば、5〜30質量%とすればよい。また、処理液中の尿素の濃度は、例えば、20〜40質量%とすればよい。
【0020】
次いで、所定量の多孔質担体を反応槽に入れ、処理液に多孔質担体を接触させる。ここで、多孔質担体の全体形状が粉末状、粒子状などである場合には、処理液を撹拌して多孔質担体を懸濁すればよい。なお、多孔質担体が懸濁しにくい粉末状である場合には、ホモミキサー、ホモジェッター、ディスパーミル、サンドミル、ダイノウミルなどの分散機を使用して予め分散させてから反応槽に入れるとよい。一方、多孔質担体が、ある程度の大きさの成形体である場合には、処理液に多孔質担体を浸漬(含浸)させればよい。
【0021】
その後、必要に応じて撹拌しながら処理液を70℃以上、好ましくは90〜100℃に加熱する。処理液は、例えば、電熱器やマントルヒーターなどの加熱器具を使用して加熱することができる。水に溶解した尿素は、70℃以上に加熱すると加水分解し、炭酸ガスと、いわゆる沈殿剤として機能しうるアンモニアが発生する。そして、発生したアンモニアが金属塩と反応し、極めて微細な析出物が析出する。この析出物は、金属塩に由来する、金属水酸化物や金属酸化物の微細な粒子(ナノ粒子)を含む複雑な混合物であると考えられる。析出物は、金属塩の濃度、pH、及び温度等がどの場所においても均一な反応槽内(反応系内)で微細かつ均質に析出するため、部分的に凝集等することなく、多孔質担体の細孔内部にまでに入り込んで均一に付着(固着)し、担持されることになる。さらに、このようにして担持された析出物は多孔質担体の表面に強固に固着しているために脱落(剥離)しにくい。
【0022】
処理液を加熱する時間(処理時間)は、例えば、1〜5時間とすれば、十分な量の析出物を析出させることができる。処理後は、デカンテーションして上澄み液を除去し、必要に応じてブフナーロートなどのろ過器を用いてろ過した後、水洗及び乾燥等して水分を除去すれば、目的とする本発明の触媒成分担持体を得ることができる。
【0023】
上記の手順で製造される本発明の触媒成分担持体は、多孔質担体の表面(細孔の内表面を含む)の少なくとも一部に触媒成分が担持されている。すなわち、前述の担持工程で析出した析出物が、多孔質担体の表面に担持されて触媒成分として機能することになる。このような析出物により形成された触媒成分は、金属塩に由来して生成した金属水酸化物や金属酸化物を含有する複雑な混合物であると考えられる。また、二種以上の金属を用いた場合には、二種以上の金属が複合化した複合酸化物等も析出物(触媒成分)に含まれていると考えられる。このため、上記の手順で製造される本発明の触媒成分担持体の構造を分析等して特定することは実質的に困難である。
【0024】
多孔質担体の表面に担持された析出物は、焼成しなくとも、悪臭成分等を分解・除去可能な触媒成分として機能する。すなわち、本発明の製造方法では、(i)析出物を焼成する工程;及び(ii)析出物を担持させた多孔質担体を焼成する工程;のいずれの工程も不要である。いわゆる焼成工程を有しないことから、本発明の製造方法によれば、各種VOC及び悪臭成分の優れた除去性能を有する触媒成分担持体をより簡便に製造することができる。
【0025】
本発明の触媒成分担持体を構成する触媒成分は、多孔質担体の表面に強固に固着して担持されており、使用中に脱離(剥離)しにくい。このため、本発明の触媒成分担持体は、各種VOC及び悪臭成分の優れた除去性能が長期にわたって維持されるとともに、脱落した触媒成分によって設置箇所を汚染する等の問題が生じにくい。
【0026】
(酸化工程)
本発明の触媒成分担持体の製造方法は、多孔質担体の表面の少なくとも一部に担持させた析出物を酸化する工程(酸化工程)をさらに有することが好ましい。多孔質担体の表面に担持した析出物を酸化することで、触媒機能がさらに向上した触媒成分が担持された担持体とすることができる。例えば、析出物を担持した多孔質担持体をアルカリ雰囲気の水系媒体中で加熱することで、析出物を酸化することができる。水系媒体のpHは、10以上とすることが好ましく、12以上とすることが好ましい。但し、pHが高すぎるとアルカリが過剰であるため、酸化後の処分(酸による中和)の手間が掛かる場合がある。一方、pHが低すぎると、酸化が不十分になることがある。アルカリとしては、苛性ソーダの他、ソーダ灰、炭酸水素ナトリウムなどを使用することができる。酸化温度は50℃以上とすることが好ましく、70〜100℃とすることがより効率的であるために特に好ましい。さらに、過酸化水素の存在下で酸化することで、酸化効率をより向上させることができる。
【0027】
本発明の触媒成分担持体を構成する触媒成分の担持量は、多孔質担体に対して、1質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがさらに好ましい。触媒成分の担持量は、触媒成分(析出物)を担持する前の多孔質担体の質量から算出することができる。また、触媒成分担持体を酸に浸して金属成分を溶解させてから担体を除去した後、原子吸光分析やICP分析することでも、触媒成分の担持量を測定及び算出することができる。
【0028】
本発明の触媒成分担持体は、気相、液相を問わず、各種分野で使用することができる。
例えば、化学工場、畜産場、排水処理場、トイレなどの生活まわりの悪臭成分の除去や、食品工場、化粧品工場、化学工場等における各種VOCの除去などに用いることができる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0030】
<触媒成分担持体の製造>
(実施例1)
硫酸銅五水和物9.5部、硫酸マンガン一水和物12部、硫酸コバルト七水和物5部、尿素20部、及び水200部をセパラブルフラスコに入れ、各成分を溶解させて処理液を調製した。多孔質担体として、市販のゼオライト成形物(粒状物、BET比表面積:27m
2/g、粒子径:約3mm)100部を調製した処理液に投入して浸漬させた。処理液のpHが5前後となるように薄いアルカリ溶液にて調整した後、蓋をして、マントルヒーターを用いて100℃まで加温した。この際、ゼオライト成形物が壊れない程度にゆっくりと撹拌し、液温が均一になるように制御した。液温が70℃以上となったところで尿素が分解しはじめ、沈殿剤として機能するアンモニアが生成した。これにより、析出物が析出して処理液が徐々に濁りはじめた。液温を90〜100℃に調整して2時間放置した後、デカンテーションして上澄み液を除去した。洗浄液の電気伝導度が300μs/cm以下になるまで沈殿物を繰り返し水洗した。
【0031】
水洗後の沈殿物の全量を含む懸濁液150部、苛性ソーダ6.5部、及び35%過酸化水素水5部をセパラブルフラスコに入れた。内容物のpHが13前後になったことを確認した後、蓋をして、マントルヒーターを用いて90℃まで加温した。酸化の進行に伴って内容物のpHが低下し、2時間程度でpHが9前後になったところで加温を停止した。デカンテーションして上澄み液を除去した後、洗浄液の電気伝導度が300μs/cm以下になるまで沈殿物を繰り返し水洗した。乾燥機を使用し、水洗後の沈殿物を120℃で12時間乾燥して触媒成分担持体を得た。使用した多孔質担体の量と得られた触媒成分担持体の量から算出した触媒成分担持量は、5.0質量%であった。
【0032】
(実施例2)
市販の石炭系の活性炭粉(BET比表面積:668m
2/g)を多孔質担体として使用し、この活性炭粉を処理液中に撹拌して懸濁液としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、触媒成分担持体を得た。
【0033】
(実施例3)
市販の石炭系の活性炭ペレット(BET比表面積:817m
2/g、ペレット径:4mm)を多孔質担体として用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、触媒成分担持体を得た。
【0034】
(実施例4)
市販のモレキュラーシーブ(ペレット、BET比表面積396m
2/g、ペレット径:3mm)を多孔質担体として用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、触媒成分担持体を得た。
【0035】
(実施例5)
硫酸銅五水和物9.5部、硫酸マンガン一水和物12部、硫酸コバルト七水和物5部、尿素20部、及び水200部をセパラブルフラスコに入れ、各成分を溶解させて処理液を調製した。多孔質担体として、市販のモレキュラーシーブ(ペレット、BET比表面積396m
2/g、ペレット径:3mm)100部をさらに投入して浸漬させた。内容物(水溶液)のpHが5前後となるように薄いアルカリ溶液にて調整した後、蓋をして、マントルヒーターを用いて100℃まで加温した。この際、ペレット状のモレキュラーシーブが壊れない程度にゆっくりと撹拌し、液温が均一になるように制御した。液温を90〜100℃に調整して2時間放置した後、デカンテーションして上澄み液を除去した。洗浄液の電気伝導度が300μs/cm以下になるまで沈殿物を繰り返し水洗した。乾燥機を使用し、水洗後の沈殿物を120℃で12時間乾燥して触媒成分担持体を得た。
【0036】
(実施例6)
硫酸マンガン一水和物21.5部、尿素20部、及び水200部をセパラブルフラスコに入れ、各成分を溶解させて処理液を調製した。このように調製した処理液を用いたこと、及び市販の石炭系の活性炭ペレット(BET比表面積:817m
2/g、ペレット径:4mm)を多孔質担体として用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、触媒成分担持体を得た。
【0037】
(実施例7)
硫酸銅五水和物5.0部、硫酸マンガン一水和物18.1部、尿素20部、及び水200部をセパラブルフラスコに入れ、各成分を溶解させて処理液を調製した。このように調製した処理液を用いたこと、及び市販の石炭系の活性炭ペレット(BET比表面積:817m
2/g、ペレット径:4mm)を多孔質担体として用いたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、触媒成分担持体を得た。
【0038】
(比較例1)
実施例1で製造した触媒成分担持体に用いた触媒成分と同様の組成の市販の複合酸化物吸着剤(粉末)を用意した。アニオン系の分散剤1部及び無機系結着剤3.3部をイオン交換水79.2部に溶解させて得た水溶液に、用意した複合酸化物吸着剤16.5部を添加して懸濁液を得た。ホモミキサーを使用して得られた懸濁液を1時間邂こう処理し、スラリーを調製した。調製したスラリーに無機繊維製ハニカム(体積60mL(3cm×2cm×10cm))を浸漬し、5分後に引き上げた。過剰に付着したスラリーをエアーブローにより除去した後、再度スラリーに浸漬する操作を合計で3回行った。その後に乾燥して、触媒成分担持体を得た。
【0039】
<評価>
製造した触媒成分担持体について、以下に示す各評価を行った。また、実施例の触媒成分担持体を製造する際に用いた多孔質担体(参考例1〜7)について、アンモニア吸着量及び硫化水素吸着量を測定した。
【0040】
(アンモニア吸着量の測定・算出)
デシケーター(8L容、ポリカーボネート製)の上部に直径10mmの穴を開けた。開けた穴をパラフィンフィルムで覆い、ダブルクリップを用いて密閉した試験容器を用意した。製造した触媒成分担持体、及び14%アンモニア水溶液50μLを試験容器に入れ、25℃で24時間放置した。放置後、ガス検知器(北川式ガス検知器)を使用して試験容器内のアンモニア残存濃度を測定し、アンモニア吸着量を算出した。結果を表1に示す。
【0041】
(硫化水素吸着量の測定・算出)
デシケーター(8L容、ポリカーボネート製)の上部に直径10mmの穴を開けた。開けた穴をパラフィンフィルムで覆い、ダブルクリップを用いて密閉した試験容器を用意した。製造した触媒成分担持体、5%硫化ナトリウム溶液0.2mL、及び0.5mol/L硫酸0.5mLを試験容器に入れて硫化水素を発生させ、25℃で24時間放置した。放置後、ガス検知器(北川式ガス検知器)を使用して試験容器内の硫化水素残存濃度を測定し、硫化水素吸着量を算出した。結果を表1に示す。
【0042】
(脱離試験(液相))
製造した触媒成分担持体をカラム(200mL容)に入れ、流速8mL/minの水を8時間継続して流通させる脱離試験を行った。流通させた水を約1.7時間毎にサンプリングし、触媒成分の脱離の有無を目視で確認した。脱離試験後の触媒成分担持体を乾燥させた後、上記の脱離試験を再度行った。上記の脱離試験及び乾燥の手順を3回繰り返し、以下に示す評価基準にしたがって触媒成分の固着性(脱離しにくさ)を評価した。結果を表1に示す。
A:合計24時間流通させても水に濁りが発生せず、脱離試験後に触媒成分(粉末)の脱離が確認できなかった。
B:合計24時間流通させる前に水に濁りが発生し、脱離試験後に触媒成分(粉末)の脱離が確認された。
C:合計24時間流通させたところ、水が濁るとともに、触媒成分(粉末)が顕著に脱離した。
【0043】
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の触媒成分担持体は、硫化水素、メルカプタン、アンモニア、イソ吉草酸等の悪臭成分や揮発性有機物(VOC)を分解除去する担持体として有用である。