【解決手段】ロッド部52の製造工程は、スライドピン83を第1及び第2の金型81,82に挿入してスライドピン83を保持部821に配置する第1工程と、スライドピン83が保持部821に保持された状態で第1及び第2の金型81,82の成形用空間810,820に溶融樹脂Aを射出して充填する第2工程と、溶融樹脂Aを冷却して固化した後に前記スライドピンを引き抜く第3工程と、を有し、第3工程においてスライドピン83が引き抜かれることにより形成された空間が成形品800の中空部801aとして形成される。
前記ロック部材には、その中心軸方向に沿って延びて形成された第1肉抜き部と、前記中心軸方向に直交する方向の寸法が前記第1肉抜き部よりも大きい第2肉抜き部と、を有している、
請求項5に記載の車両用リッドロック装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態の要約)
本実施の形態に係るロック部材の製造方法は、溶融樹脂を充填して成形品を形成する成形用空間が設けられた金型を用い、前記金型には、スライドピンを保持する保持部が設けられ、前記ロック部材の製造工程は、前記スライドピンを前記金型に挿入して前記スライドピンを前記保持部に配置する第1工程と、前記スライドピンが前記保持部に保持された状態で前記金型の前記成形用空間に溶融樹脂を射出して充填する第2工程と、前記溶融樹脂を冷却して固化した後に前記スライドピンを引き抜く第3工程と、を有し、前記第3工程において前記スライドピンが引き抜かれることにより形成された空間が前記成形品の中空部として形成される。
【0013】
このロック部材の製造方法によれば、金型にスライドピンを保持する保持部を設けるだけでロック部材に中空部を設けることができ、成形時におけるスライドピンの体積が減ぜられる。これにより、簡素な方法でボイドの発生を抑制されたロック部材を製造することが可能である。
【0014】
[実施の形態]
本発明の実施の形態として燃料給油口を開閉するフューエルリッドをロックする車両用リッドロック装置の構成及び動作について、
図1乃至
図5を参照して説明する。この車両用リッドロック装置は、車体9の給油用開口部9aを開閉するフューエルリッド91のロック及びアンロックの切替が可能である。また本実施の形態では、車両用リッドロック装置が燃料給油口を開閉するフューエルリッドをロックする装置である場合について説明するが、これに限定されず例えば本発明における車両用リッドロック装置は、給電口に設けられたリッドを開閉する装置として用いられてもよい。なお、
図1及び
図2では、車両用リッドロック装置100を模式化して図示している。
【0015】
(車両用リッドロック装置の概要)
図1は、本実施の形態に係る車両用リッドロック装置100が搭載された車体の給油用開口部9a及びフューエルリッド91を示す斜視図である。
図2は、車両用リッドロック装置100のロック状態におけるフューエルリッド91及びその周辺部の構造を示す断面図である。
【0016】
図1に示すように、フューエルリッド91は、車体9にヒンジ92を介して開閉可能に取り付けられ、車体9に設けられた給油用開口部9aを開閉する。フューエルリッド91の内側に設けられた取付座面910には、車両用リッドロック装置100に係合するロック板911が取り付けられている。ロック板911には、後述する車両用リッドロック装置100の移動部材5の先端部に係止される凹部911aが形成されている。フューエルリッド91の取付座面910と対向する車体9の対向面9cには、フューエルリッド91を開方向に付勢するオープンスプリング9bが設けられている。
【0017】
図2に示すように、ロック板911は、例えば樹脂からなる部材であり、フューエルリッド91の取付座面910にボルト101によって固定されている。車両用リッドロック装置100は、車体9のアウタパネル93よりも内側に設けられたインナパネル94に車体取付部材90を介して固定されている。
【0018】
フューエルリッド91の閉状態においては、フューエルリッド91のロック板911における凹部911aに車両用リッドロック装置100の移動部材5の先端部が係止することにより、フューエルリッド91が閉状態でロックされている。そして、フューエルリッド91の開動作においては、例えば運転者が運転席に設けられたリッドオープナーを操作することにより、車両用リッドロック装置100が作動して移動部材5が収容部材2から突出した突出位置Yから収容部材2に引き込まれた引込位置X(二点鎖線)に移動する。そうすると、フューエルリッド91におけるロック板911の凹部911aから移動部材5の先端部が離脱して、フューエルリッド91がオープンスプリング9bの付勢力を受けて半開する。このように、フューエルリッド91がアンロックされて開状態となる。
【0019】
(車両用リッドロック装置の構成)
図3は、車両用リッドロック装置100の構成例を示し、(a)はケース部材21にカバー部材22が取り付けられた組付状態を示す平面図であり、(b)はケース部材21からカバー部材22が取り外された状態を示す平面図である。
図4は、
図3(a)に示す車両用リッドロック装置100の分解斜視図である。
図5(a)は車両用リッドロック装置の上面図を示し、(b)は(a)のA−A線断面図である。
【0020】
車両用リッドロック装置100は、出力軸3aにウォーム30が連結されたモータ3と、モータ3の作動によって所定の角度範囲で回転するセクタギヤ4と、セクタギヤ4の回転に伴って軸方向に進退移動可能に配置されて、円柱状のロッド部52を有する移動部材5と、モータ3、セクタギヤ4、及び移動部材5を収容する収容部材2と、移動部材5を所定の方向に付勢する弾性部材としてコイルばね6と、収容部材2の筒状部材23と移動部材5との間に配置されたシール部材7と、を有している。
【0021】
なお、移動部材5のロッド部52は、本発明における「ロック部材」の一例である。「ロック部材」は、収容部材2に対して突出した突出位置Yあるいは引き込んだ引込位置Xとの間を進退移動して、かつ、突出した際にフューエルリッド91と係合することによりフューエルリッド91をロックする軸状の部材であればよいので、ロッド部52のように必ずしも円柱状である必要はない。
【0022】
(セクタギヤの構成)
セクタギヤ4は、円弧状に形成された扇部41と、ケース部材21のケース本体部210に設けられたピン20に回転可能に連結された回転軸部42と、回転軸部42から扇部41とは反対側に設けられて移動部材5に係合する係合部43とを一体に有している。扇部41の外周には、ウォーム30に噛み合うギヤ部41aが形成されている。
【0023】
(移動部材の構成)
移動部材5は、全体として軸状に形成された部材であり、セクタギヤ4の係合部43が係合する係合凹部510が形成された本体部51と、本体部51のコイルばね6とは反対側の軸方向端面51cから本体部51の延伸方向にさらに延びて形成された円柱状のロッド部52とを一体に有している。
【0024】
本体部51には、その軸方向端面51cとは反対側に設けられた軸方向の端面51bから突出して形成された突出部511が設けられている。この突出部511には、コイルばね6の一端6aが連結されている。また、本体部51には、セクタギヤ4の回転軸方向の一面側が開口した穴部51dが形成されている。穴部51dは、セクタギヤ4の回転軸方向に沿って見た形状が略矩形状である。この穴部51dは、移動部材5の成形時において、後述する第2の金型82の保持部821によって形成される部位である。
【0025】
ロッド部52は、その外周面52bが軸方向及び周方向の全域に亘って凹凸の無い平滑面である。また、ロッド部52の先端には、軸方向に対して傾斜した傾斜面52aが形成されている。この傾斜面52aは、フューエルリッド91の閉動作時においてロック板911の先端面911bと摺動する摺動面として形成されている(
図2参照)。これにより、フューエルリッド91の閉動作時における、フューエルリッド91のロック板911と移動部材5との衝突が緩和されている。
【0026】
(コイルばねの構成)
コイルばね6は、その一端6aが移動部材5の本体部51における突出部511に連結されると共に、その他端6bが後述するケース部材21におけるスライド収容部210cに形成された突起部214に連結されて、圧縮された状態で配置されている。これにより、移動部材5は、コイルばね6から軸方向における引込位置Xから突出位置Yの方向の付勢力を常時受けている。
【0027】
(収容部材の構成)
図4に示すように、収容部材2は、モータ3を収容するモータ収容部210aが形成されたケース部材21と、ケース部材21の開口(後述の開口210d,211d)を覆うカバー部材22と、ケース部材21に対してカバー部材22を取り付けた状態において、ケース部材21及びカバー部材22に設けられた第1及び第2ロッド支持部211,221に固定される筒状部材23と、を有している。
【0028】
(ケース部材の構成)
ケース部材21は、前述のモータ収容部210a、セクタギヤ4を収容するギヤ収容部210b、及び移動部材5の本体部51をスライド可能に収容するスライド収容部210cが形成されたケース本体部210と、ケース本体部210から移動部材5の軸方向に突出して形成された半円筒状の第1ロッド支持部211とを有している。
【0029】
また、ケース部材21には、カバー部材22に設けられた第1乃至第6係止爪22a〜22fにそれぞれ係止される第1乃至第6突起部21a〜21fが形成されている。この構成により、ケース部材21とカバー部材22とが相互に締結される。ケース部材21のギヤ収容部210bとスライド収容部210cとは隔壁24によって隔離されている。
【0030】
(カバー部材の構成)
カバー部材22は、ケース部材21のモータ収容部210a,ギヤ収容部210b,スライド収容部210cの開口210dを覆うカバー本体部220と、第1ロッド支持部211の開口211dを覆い、かつ、カバー本体部220から移動部材5の軸方向に突出して形成された半円筒状の第2ロッド支持部221とを有している。ケース部材21に対してカバー部材22が取り付けた状態において、第1ロッド支持部211と第2ロッド支持部221とが重ね合わさって円筒状となる。
【0031】
(第1及び第2ロッド支持部の構成)
第1ロッド支持部211の外周には、後述する筒状部材23の第1筒部231に形成された第1及び第2係止孔231a,231bにそれぞれ係止する第1及び第2係止爪211b,211cが形成されている。第1係止孔231aと第2係止孔231bとは、第1筒部231の周方向に沿って180°ずれた位置にそれぞれ設けられている。
【0032】
第2ロッド支持部221の外周には、筒状部材23の第1筒部231に形成された第1及び第2係止孔231a,231bにそれぞれ係止する第1及び第2係止爪221b,221cが形成されている。第1ロッド支持部211の第1係止爪211bと第2ロッド支持部221の第1係止爪221bとで一つの係止爪が構成され、第1ロッド支持部211の第2係止爪211cと第2ロッド支持部221の第2係止爪221cとで一つの係止爪が構成されている。
【0033】
(筒状部材の構成)
図5(a)及(b)に示すように、筒状部材23は、ケース部材21及びカバー部材22側に配置された第1筒部231と、第1筒部231とは軸方向に沿って反対側の位置に配置された第2筒部232と、第1及び第2筒部231,232の間に設けられた第3筒部233と、を一体に有している。
【0034】
第1筒部231は、第1及び第2ロッド支持部211,221(
図5(b)では第1ロッド支持部211のみ示す)が収容される収容空間231cを有し、ケース部材21及びカバー部材22側に開口している。第1筒部231の第1及び第2係止孔231a、231bは、ケース部材21及びカバー部材22のそれぞれの第1係止爪211b、221b及びそれぞれの第2係止爪211c、221cに係止されている。この構成により、ケース部材21及びカバー部材22の第1及び第2ロッド支持部211,221に対する筒状部材23の抜け止めが図られている。
【0035】
第2筒部232には、ロッド部52を挿通する挿通孔230が形成されている。第2筒部232の挿通孔230と第1筒部231の収容空間231cとは軸方向に連通している。第2筒部232の挿通孔230の内面230aは、ロッド部52の外周面52bと僅かな隙間を介して対向している。シール部材7が、当該隙間を封止している。第2筒部232の内径は、第1筒部231の内径よりも小さい。
【0036】
また、第2筒部232には、その先端側の端部から径方向の外側に突出した第1及び第2突出部232a,232bが形成されている。第1突出部232aと第2突出部232bとは、周方向に向かい合う位置に設けられている。これら第1及び第2突出部232a,232bがリング状の車体取付部材90に係止することにより、車両用リッドロック装置100が車体に対して固定される。
【0037】
第2筒部232の段差部232cは、筒状部材23の第2筒部232の軸方向における後端(ケース部材21及びカバー部材22の第1及び第2ロッド支持部211,221側)に設けられ、挿通孔230よりも大径に形成されたリング状である。
【0038】
収容部235は、段差部232cの内面と、第1及び第2ロッド支持部211,221の軸方向端面と、に囲まれた空間である。
【0039】
図5(b)に示すように、移動部材5の中心部には、中空状の肉抜き部520が形成されている。肉抜き部520は、ロッド部52の中心軸線O方向(以下、単に軸方向という)に沿って延びて形成された第1肉抜き部520aと、軸方向に直交する方向の寸法が第1肉抜き部520aよりも大きい第2肉抜き部520bと、を有している。第2肉抜き部520bは、本体部51の中心部に設けられている。ここで、肉抜き部520は第1肉抜き部520aのみであってもよく、必ずしも第1及び第2肉抜き部520a,520bの双方を備えている必要はない。
【0040】
図5(c)に示すように、ロッド部52の外径をDとし、第1肉抜き部520aの内径をdとすると、ロッド部52の肉厚t(=(D−d)/2)は、例えば3mm以内である。
【0041】
(車両用リッドロック装置の動作)
上記のように構成された車両用リッドロック装置100のアンロック動作の際には、フューエルリッド91の閉状態において、モータ3の作動によってセクタギヤ4が
図3における時計回り方向に回転し、移動部材5がコイルばね6の付勢力に抗して突出位置Yから引込位置Xに向かって移動する(
図2参照)。これにより、移動部材5のロッド部52の先端部がフューエルリッド91のロック板911の凹部911aから離脱してロックが解除される。
【0042】
一方、車両用リッドロック装置100のロック動作の際には、フューエルリッド91の閉動作に伴って、フューエルリッド91におけるロック板911の先端面911bと移動部材5のロッド部52の傾斜面52aとが接触して移動部材5が突出位置Yから引込位置X側に押し込まれる。そして、一旦引込位置Xに移動した移動部材5がコイルばね6の付勢力によって再度突出位置Yに移動して、ロッド部52の先端がフューエルリッド91のロック板911の凹部911aに係止する。これにより、フューエルリッド91がロックされる。
【0043】
(金型の構成)
次に、移動部材5の製造に用いる金型について
図6を参照して説明する。
図6は、本実施の形態に係る金型の構成を示す斜視図である。この金型は、第1の金型81と第2の金型82とからなる。
【0044】
第1の金型81と第2の金型82とのそれぞれの端面81a,82aを接触させたときに成形品を形成する成形用空間が形成される。
【0045】
第1の金型には、成形用空間の一側を形成する第1成形部810を有している。第1成形部810は、端面81a側が開口した凹部であり、ロッド成形部810aと本体成形部810bとを有している。ロッド成形部810aは移動部材5のロッド部52の一部を形成し、本体成形部810bは移動部材5の本体部51を形成する。
【0046】
第2の金型82には、成形用空間の他側を形成する第2成形部820を有している。第2成形部820は、端面82a側が開口した凹部であり、ロッド成形部820aと本体成形部820bとを有している。ロッド成形部820aは移動部材5のロッド部52の他部を形成し、本体成形部820bは移動部材5の本体部51の他部を形成する。
【0047】
第2の金型82には、スライドピン83を保持する保持部821が設けられている。保持部821は、スライドピン83を軸方向移動可能に保持している。保持部821は、略直方形状であり、第2の金型82の本体成形部820bの底面に立設されている。また、保持部821には、軸方向に貫通し、スライドピン83を挿入する挿入孔821aが形成されている。挿入孔821aの内径は、少なくともスライドピン83の外径より大きく形成される。
【0048】
なお、保持部821は、第1及び第2の金型81,82の何れか一方の金型に設けられていればよい。つまり、本実施の形態では、第2の金型82に保持部821が設けられているが、これに限定されず、例えば第1の金型81に保持部が設けられていてもよい。また、保持部821は、必ずしも第1及び第2の金型81,82に設ける必要はなく、第1及び第2の金型81,82とは異なる別の金型に設けてもよい。
【0049】
(ロッド部の製造方法)
移動部材5のロッド部52の製造工程について、
図7を参照して説明する。本実施の形態に係るロッド部52の製造工程は、第1〜第3工程を有している。各工程について、以下で説明する。
【0050】
図7は、ロッド部52の製造工程を
図6のC−C線断面で見たときの様子を示し、(a)及び(b)は第1工程を示し、(c)は第2工程を示し、(d)は第3工程を示し、(e)は製造工程が完了した状態を示している。なお、
図7では、第1の金型81と第2の金型82とがそれぞれの端面81a,82aが接触して1つの金型になった状態を前提として説明する。
【0051】
第1工程は、スライドピン83を第1及び第2の金型81,82に挿入してスライドピン83を保持部821に配置する工程である。
図7(a)に示すように、先ず、スライドピン83を軸方向に沿って第2成形部820の本体成形部820b側から移動させて、保持部821の挿入孔821aに挿入する。
【0052】
ここで、スライドピン83の外径をwとし、ロッド成形部820aの最大幅(端面82aに沿った平面上で、かつ、スライドピン83の軸方向に直交する方向の幅寸法)の寸法をWとすると、(W−w)/2は、例えば3mm以内である。
【0053】
第1工程が完了した状態では、
図7(b)に示すように、スライドピン83が保持部821に保持された状態で、スライドピン83の一端側(軸方向における成形部820のロッド成形部820a側)が第2成形部820のロッド成形部820aに位置するようにスライドピン83が配置される。
【0054】
ここで、第2の金型82における成形部820のロッド成形部820aの軸方向の長さをLとし、スライドピン83の軸方向の長さをlとすると、長さLは、少なくとも長さlよりも大きく(L>l)、かつ、長さLと長さlとの差(L−l)は、例えば3mm以内である。
【0055】
第2工程は、
図7(c)に示すように、スライドピン83が保持部821に保持された状態で、第1及び第2の金型81,82の成形用空間810,820に溶融樹脂Aを射出して充填する工程である。第2工程において、溶融樹脂Aは成形用空間810,820の本体成形部810b,820b側から射出されて、ロッド成形部810a,820a側から本体成形部820a,820bに向けて充填されていく。この際、スライドピン83には高圧な樹脂圧が作用する。
【0056】
第3工程は、溶融樹脂Aを冷却して固化した後にスライドピン83を保持部821の挿入孔821aから引き抜く工程である。
図7(d)に示すように、溶融樹脂Aが固化されると、成形用空間810,820の形状に対応した成形品800が形成される。成形品800は、第1の形成部800aと第2の形成部800bとを有し、第1の形成部800aが移動部材5のロッド部52に対応し、第2の形成部800bが移動部材5の本体部51に対応する。
【0057】
第3工程では、スライドピン83を軸方向に沿って移動させ、スライドピン83を保持部821の挿入孔821aから引き抜いて、第2の金型82からスライドピン83を離脱させる。これにより、成形品800の中心部に中空が形成される。すなわち、スライドピン83が引き抜かれることにより形成された空間が、成形品800の中空部801aとして形成される。この成形品800の中空部801aは、ロッド部52の中心部に形成された中空状の肉抜き部520に対応する。
【0058】
以上説明したように、保持部821が設けられた第2の金型82と、スライドピン83を用いることで、中心部が中空状であるロッド部52を備えた移動部材5を製造することができる。ここで、例えば保持部821がない金型を用いた場合には、溶融樹脂Aを射出する際の樹脂圧によってスライドピン83が曲がってしまうという問題がある。さらに、スライドピン83が曲がった状態で溶融樹脂Aが冷却、固化されるので、スライドピン83を引き抜く際にスライドピン83が折れて破損する可能性がある。
【0059】
本実施の形態では、スライドピン83を保持する保持部821を第2の金型82に設けることにより、上述したスライドピン83の破損を防止することで、ロッド部52の中心部に中空状の肉抜き部を形成することを可能にしている。
【0060】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した本実施の形態によれば、以下に示す作用及び効果が得られる。
【0061】
(1)ロッド部52の製造工程は、第1及び第2の金型81,82に充填された溶融樹脂Aを冷却して固化した後にスライドピン83を引き抜く第3工程を有し、スライドピン83が引き抜かれたことにより形成された空間が成形品800の中空部801aとして形成される。これにより、移動部材5のロッド部52の中心部に中空状の肉抜き部520を設けることができるので、ロッド部52の肉厚が減ぜられてボイドの発生が抑制されたロッド部52を製造することが可能である。また、特許文献2,3に記載された金型のように複雑な構成を必要としないので、簡素な方法でボイド率の低減を図ることができるができる。
【0062】
(2)保持部821にはスライドピン83を挿入する挿入孔821aが形成されているので、溶融樹脂Aの樹脂圧によってスライドピン83が破損することが防止される。
【0063】
(3)保持部821が第1及び第2の金型81,82のうち第2の金型82にのみ設けられているので、第1及び第2の金型81,82の両方に保持部を設ける場合に比較して、金型の構成を簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0064】
次に、変形例1について、
図8を参照して説明する。
図8は、変形例1に係る第1及び第2の金型81A,82Aの構成を示す斜視図である。変形例1は、本実施の形態に係る第1及び第2の金型81,82と構成が異なる他は、同様の構成である。なお、
図8及び
図9において、上記実施の形態について説明したものと共通する機能を有する構成要素については、同一の又は対応する符号及び名称を付してその説明を省略する。
【0065】
図8に示すように、変形例1に係る第2の金型82Aには、スライドピン83を保持する保持部821Aが設けられている。保持部821Aには、第1の金型81A側に開口した凹部821bが形成されている。
【0066】
凹部821bには、スライドピン83を保持する保持面821cがスライドピン83の外周面に沿った曲率で形成された円弧面である。つまり、保持部821Aの凹部821bは、スライドピン83の軸方向に沿って見た場合に円弧状である。
【0067】
変形例1によれば、溶融樹脂Aが射出された際にスライドピン83に対する樹脂圧が第2の金型82A側に作用した場合に、スライドピン83が曲がることを防止することができる。なお、樹脂圧によるスライドピン83が曲がる方向をシミュレーション解析等で予め把握しておけば、本変形例の形態がより有効となる。
【0068】
次に、変形例2について
図9及び
図10を参照して説明する。
【0069】
図9は、変形例2に係る第1及び第2の金型81B,82Bの構成例を示す斜視図である。
図10(a)は、変形例2に係る第1及び第2の金型81B,82Bを重ねた状態をスライドピン83の軸方向に沿った見た場合の断面図であり、
図10(b)は
図10(a)におけるD−D線断面図である。なお、
図10(b)のD―D線は、スライドピン83の中心点を通る平面で切った断面線である。
【0070】
変形例2に係る第1及び第2の金型81B,82Bには、それぞれにスライドピン83を保持する保持部が設けられている点で本実施の形態に係る第1及び第2の金型81,82と構成が異なる。従って、変形例2に係る第1及び第2の金型81B,82Bは、保持部を除いたその他の構成は、実施の形態に係る第1及び第2の金型81,82と同様の構成である。なお、
図9及び
図10において、上記実施の形態について説明したものと共通する機能を有する構成要素については、同一の又は対応する符号及び名称を付してその説明を省略する。
【0071】
図9及び
図10に示すように、変形例2に係る第1の金型81Bには第1の保持部841が設けられ、第2の金型82Bには第2の保持部842が設けられている。第1の保持部841は、第1の金型81Bの本体成形部810bの第1壁面810cから突出し、第2の保持部842は第2の金型82Bの本体成形部820bの第2壁面820cから突出している。
【0072】
図10(a)に示すように、スライドピン83の径方向であって、第1及び第2壁面810c,820cと平行な平面に沿った方向の第1及び第2保持部841,842の長さwは、スライドピン83の外径dよりも小さい(w<d)。ここで、例えば第1及び第2保持部841,842の長さwがスライドピン83の外径dよりも大きい場合は(w>d)、保持部のサイズが大きくなる結果、第2肉抜き部520bの体積も増大してロッド部52の強度が低下してしまう。これに対して本変形例2に係る第1及び第2の金型81B,82Bでは、保持部の体積を小さくできるので、ロッド部52の強度を向上させることが可能である。
【0073】
第1の金型81Bの第1壁面810cと第2の金型82Bの第2壁面820cとは対向する。ロッド部52を製造する際には、第1工程において、第1壁面810cと第2壁面820cとの間の隙間をスライドピン83が移動する。そして、スライドピン83を第1保持部841と第2保持部842との間を挿通させて、第1及び第2保持部841,842に保持させる。
【0074】
第1保持部841は第2保持部842と対向して所定の曲率で湾曲した円弧状の対向面841aを有している。同様に、第2保持部842は第1保持部と対向して所定の曲率で湾曲した円弧状の対向面842aを有している。第1保持部841の対向面841aと第2保持部842の対向面842aとの間の隙間が最も大きくなる寸法(対向面841a及び対向面842aの最も凹んだ部位における隙間の距離)をCとすると、寸法Cはスライドピン83の外径dよりわずかに大きい寸法である(C>d)。
【0075】
変形例2によれば、スライドピン83を第1保持部841及び第2保持部842で挟み込んで保持することができるので、溶融樹脂Aを射出した際の樹脂圧によるスライドピン83の曲げを防止することができる。
【0076】
次に、変形例3について
図11を参照して説明する。
図11は、変形例3に係る第2の金型82Cの構成例を示す斜視図である。
【0077】
変形例3に係る第2の金型82Cは、保持部が形成されていない点で本実施の形態及び上記変形例1,2と異なる。つまり、本変形例に係る第2の金型82Cには、スライドピン83を保持する保持器85が備え付けられている。すなわち、本実施の形態では、スライドピン83を保持する保持部821が第2の金型82に一体に形成されていたが、本変形例では保持部が金型とは別体に設けられている。
【0078】
保持器85は、長尺に形成された略直方形状であり、その先端部にスライドピン83を挿通するための挿通孔85aが形成されている。保持器85は、その延伸方向が第2の金型82Cのロッド成形部820a及び本体成形部820bの長手方向と直交するように配置され、第2の金型82Cに形成された配置孔820eに嵌合している。
【0079】
本変形例によれば、保持器85がスライドピン83を挿通する挿通孔85aを有しているので、溶融樹脂Aの樹脂圧によってスライドピン83が破損することが防止される。また、本変形例では、スライドピン83を保持する保持部が第2の金型82Cと別体に設けられているので、例えばスライドピン83の外径を変更したい場合には金型の形状を変更する必要がないので、汎用性が高い。さらに、第2の金型82Cにスライドピン83を保持する保持部を設ける必要がないので、金型の製造コスト及び運用コストを低減することができる。
【0080】
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。
を形成する成形用空間が設けられた金型を用い、前記金型には、スライドピンを保持する保持部が設けられ、前記ロック部材の製造工程は、前記スライドピンを前記金型に挿入して前記スライドピンを前記保持部に配置する第1工程と、前記スライドピンが前記保持部に保持された状態で前記金型の前記成形用空間に溶融樹脂を射出して充填する第2工程と、前記溶融樹脂を冷却して固化した後に前記スライドピンを引き抜く第3工程と、を有し、前記第3工程において前記スライドピンが引き抜かれることにより形成された空間が前記
また、本発明は、上記課題を解決するために、車体に設けられたリッドをロック及びアンロックする車両用リッドロック装置であって、前記車体に固定された収容部材と、前記収容部材に収容されたモータと、前記モータの回転によって所定の角度範囲で回転するセクタギヤと、前記セクタギヤの回転に伴って前記収容部材に対して進退移動可能に配置された軸状のロック部材と、を備え、前記ロック部材の中心部には、中空状の肉抜き部が設けら