特開2019-81304(P2019-81304A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-81304(P2019-81304A)
(43)【公開日】2019年5月30日
(54)【発明の名称】複合積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/04 20060101AFI20190510BHJP
   D04H 1/4374 20120101ALI20190510BHJP
   D04H 1/74 20060101ALI20190510BHJP
   A61F 13/49 20060101ALN20190510BHJP
【FI】
   B32B5/04
   D04H1/4374
   D04H1/74
   A61F13/49 319
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-210046(P2017-210046)
(22)【出願日】2017年10月31日
(71)【出願人】
【識別番号】502179282
【氏名又は名称】東レ・オペロンテックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182785
【弁理士】
【氏名又は名称】一條 力
(72)【発明者】
【氏名】田中 利宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克哉
(72)【発明者】
【氏名】武内 文男
(72)【発明者】
【氏名】谷口 耕一
【テーマコード(参考)】
3B200
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BB04
3B200BB11
3B200CA02
3B200DA01
3B200DA21
3B200DD02
3B200DD07
4F100AK01C
4F100AK51C
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DG01C
4F100DG11A
4F100DG11B
4F100DG15A
4F100DG15B
4F100GB72
4F100JA04C
4F100JK08C
4F100JN30
4F100YY00C
4L047BD02
4L047CA02
4L047CA04
4L047CA05
4L047CB01
4L047CC01
4L047CC03
4L047CC04
4L047CC05
(57)【要約】
【課題】衣料品や高度な紙おむつ製品に求められる機能性と審美性を両立することができ、また、優れた着用時のフィット性となめらかで規則性のよい襞を有し、弾性繊維が目立たない均質な外観の複合積層体を提供する。
【解決手段】2枚の布帛の間に一方向に複数本並列に配置された弾性繊維と、弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂を有する複合積層体であって、弾性繊維の長手方向に隣り合う一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所の間では前記2枚の各布帛と弾性繊維が離間しており、布帛を構成する繊維の繊度に対する弾性繊維の繊度の比が0.5以上200以下である複合積層体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の布帛の間に一方向に複数本並列に配置された弾性繊維と、
弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂を有する
複合積層体であって、
弾性繊維の長手方向に隣り合う一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所の間では前記2枚の各布帛と弾性繊維が離間しており、
走査型電子顕微鏡によって測定される、複合積層体を構成する弾性繊維の長さ方向に対する垂直方向の投影太さX及び複合積層体を構成する布帛の表面に分布する繊維の長さ方向に対する垂直方向の投影太さYから求められる、投影太さ比X/Yが1以上200以下である複合積層体。
【請求項2】
弾性繊維と布帛との色差ΔEが10以下である
請求項1に記載の複合積層体。
【請求項3】
一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所での厚みが、0.1mm以上5.0mm以下であり、
弾性繊維の長手方向に隣り合う、当該箇所間の厚みの最大値が1mm以上20mm以下である
請求項1または2に記載の複合積層体。
【請求項4】
一方向に延在する樹脂の幅が最大伸長時に0.2mm以上10mm以下、
樹脂の間隔が最大伸長時に1mm以上20mm以下である
請求項1から3のいずれかに記載の複合積層体。
【請求項5】
弾性繊維間のピッチが0.5mm以上10mm以下である
請求項1から4のいずれかに記載の複合積層体。
【請求項6】
弾性繊維の熱軟化点が100℃以上240℃以下である
請求項1から4のいずれかに記載の複合積層体。
【請求項7】
弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂は、布帛および/または弾性繊維の成分を含むものである
請求項1から5のいずれかに記載の複合積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合積層体に関するものである。さらに詳細には、伸縮性を有する複合積層体であって、肌に密着する衣類、具体的には下着、スポーツウェアあるいは、子供用および大人用おむつ、生理用品のような衛生材料等の用途に好適に使用され得る伸縮性を有する複合積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙おむつのような衛生材料等の肌に密着する用途においては、着用感と着用安定性を向上させるため、伸縮性を有する素材が使用されてきた。
【0003】
例えば、紙おむつなどにおいては、足回り、腹回り、腰回りなど身体とのフィット性を向上させるため、または尿の漏れを防止するために積層不織布に弾性繊維が挿入された複合積層体が使用されてきた。
【0004】
かかる伸縮性を有する複合積層体は複数の弾性繊維を所定のドラフトに伸長し、その状態を維持したまま複数枚の不織布等の布帛シートによってラミネートされ製造されることが多く、その複合積層体の形態は不織布等の布帛シート中の弾性繊維と並行方向に延在するホットメルト樹脂を有するものであった。かかる形態の複合積層体は、紙おむつに多用され、ギャザー部材の主流をなしている。
【0005】
さらに、特許文献1〜3の様な不織布等の布帛シート中の弾性繊維と交差する方向に延在する熱融着繊維を有する形態の複合積層体も考案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013−202056号公報
【特許文献2】特開2005−320636号公報
【特許文献3】特開2014−076077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かかるいずれの複合積層体も伸縮性や感触といった機能が近年向上する一方で、その外観や審美性については充分に満足できるものではなかった。すなわち、下着として使用できる高度な紙おむつ製品、ましてや、スポーツウェアなどアパレル製品に供するには不十分であった。
【0008】
外観が不十分である主たる理由として、複合積層体中の弾性繊維の存在が明らかに目視で判別できてしまうことが挙げられる。かかる点については、感触などを優先して、不織布を低目付化などすることよって、更に顕著になる。審美性が不十分である主たる理由として、複合積層体の襞が不規則であり、紙おむつ特有の表面あるいは輪郭の形態を呈することが挙げられる。
【0009】
複合積層体の外観および審美性は、高度な紙おむつ製品や衣料用途への展開を図る上で最も重要な要素の一つである。おむつであることをそのルックスから認識する最大の要因は、複合積層体の襞が不規則であり、また、弾性繊維の存在が明らかに目視で判別できることである。特に、複合積層体の伸長時には、衣料用布帛で云う伸長時の弾性繊維が露出する(目剥き現象)ことと同様、着用時、すなわち、複合積層体の伸長状態では、更に弾性繊維の存在が目立ち、その外観を不満足なものにする。そして、これを改良するために染色や捺染加工による意匠性付与を試みても、弾性繊維が縞状や筋状に浮きあがり、意図した色彩や図柄を発現することを困難にする。
【0010】
この様に、従来技術では複合積層体の外観および審美性は省みられることがなく、優れた着用時のフィット性および感触と、弾性繊維が目立たない均質な外観およびなめらかで規則性のよい襞を有する、複合積層体を得ることはできなかった。かかる技術をそのまま適用しても、高度な紙おむつ製品や衣料品に求められる機能性と外観および審美性の高度化との両立ができなかった。
【0011】
本発明は、高度な紙おむつ製品や衣料品を得るために求められる、機能性と、外観および審美性とを、両立すること、すなわち、優れた着用時のフィット性および感触と、弾性繊維が目立たない均質な外観およびなめらかで規則性のよい襞を有する複合積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意検討した結果、高度な伸縮機能を有し、複合積層体中の弾性繊維の存在が判別困難である形態を見いだしたものである。すなわち、
2枚の布帛の間に一方向に複数本並列に配置された弾性繊維と、
弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂を有する
複合積層体であって、
弾性繊維の長手方向に隣り合う、一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所の間では前記2枚の各布帛と弾性繊維が離間しており、
走査型電子顕微鏡によって測定される、複合積層体を構成する弾性繊維の長さ方向に対する垂直方向の投影太さX及び複合積層体を構成する布帛の表面に分布する繊維の長さ方向に対する垂直方向の投影太さYから求められる、投影太さ比X/Yが1以上200以下である複合積層体。
【0013】
前記弾性繊維と布帛との色差ΔEが10以下であることが好ましい。
【0014】
また、一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所での厚みが、0.1mm以上5.0mm以下であり、弾性繊維の長手方向に隣り合う、当該箇所間の厚みの最大値が1mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0015】
また、一方向に延在する樹脂の幅が最大伸長時に0.2mm以上10mm以下、樹脂の間隔が最大伸長時に1mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0016】
また、弾性繊維の熱軟化点が100℃以上240℃以下であることが好ましい。
【0017】
また、弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂は、布帛および/または弾性繊維の成分を含むものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、優れた伸縮性と感触を有し、かつ、弾性繊維が目立たない均質な外観となめらかで規則性のよい襞を有する、複合積層体を得ることができる。このような本発明の複合積層体を用いることにより、衣料品や高度な紙おむつ製品に求められる、機能性すなわち優れた着用時のフィット性および感触と、外観および審美性とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】は実施例1の複合積層体の試験片を略平面方向から撮影した外観写真である。
図2】は実施例1の複合積層体の試験片を略断面方向から撮影した外観写真である。Aは一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所での厚みを示し、Bは一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所間の厚みの最大値の測定箇所を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意検討した結果、高度な伸縮機能を有し、複合積層体中の弾性繊維の存在が判別困難である形態を見いだしたものである。すなわち、
2枚の布帛の間に一方向に複数本並列に配置された弾性繊維と、
弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂を有する
複合積層体であって、
弾性繊維の長手方向に隣り合う、一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所の間では弾性繊維を挟んで向かい合う前記2枚の各布帛と弾性繊維が離間しており、
走査型電子顕微鏡(以降、SEMと略記することもある)によって測定される、複合積層体を構成する弾性繊維の長さ方向に対する垂直方向の投影太さX及び複合積層体を構成する布帛の表面に分布する繊維の長さ方向に対する垂直方向の投影太さYを求め、投影太さ比X/Yが1以上200以下である複合積層体である。
【0021】
かかる構成を採用することにより、本発明の複合積層体は、弾性繊維を含有しないかの様な外観を有するのみならず、反射光下にて手にとって伸縮させたり、更には最大限伸長したとしても、本発明の複合積層体中に弾性繊維を含有することが判別困難となると共に弾性繊維が本来有する伸縮機能までも顕著に発現すること見出した。
【0022】
まず、本複合積層体の形態について述べる。
【0023】
本発明においては、2枚の布帛の間に一方向に複数本並列に配置された弾性繊維を有する。弾性繊維は、直線状もしくは曲線状またはそれらの組み合わせた形態で配置され、布帛で挟み込まれている。
【0024】
本発明においては、弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂を有する。すなわち、弾性繊維が挿入される方向に対して交差する方向に樹脂が配置される。ここで、一方向に延在するとは、樹脂が線状であり、全体として一方向に配置されていることをいう。線状の形態としては直線状もしくは曲線状またはそれらの組み合わせた形態いずれも取り得る。全体として一方向に配置されるとは、かかる線状の形態が幅10mm以内の平行な線の範囲内に収まるように配置されることをいい、一方向の方向とはかかる仮想の平行線の方向をいう。弾性繊維と一方向に延在する樹脂の交差する角度は特に限定されないが、90±20°であることが好ましく、90±10°であればより好ましく、90±5°であればさらに好ましい。
【0025】
本発明においては、弾性繊維の長手方向に隣り合う、一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所の間では各布帛と弾性繊維が離間している。
【0026】
一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所の間の厚みは、0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましく、より好ましいのは0.2mm以上4.0mm以下である。0.1mmより小さいと、複合積層体中の弾性繊維の存在が目視で判別できる場合があり、複合積層体を伸長した場合は、弾性繊維の存在がより顕著に判別できるようになることから、複合積層体の外観および審美性が低下する場合がある。5.0mmより大きいと、形成した襞が挫屈し易くなる場合があり、着用時のフィット性となめらかで規則性のよい襞の感触が不満足となる場合がある。
【0027】
そして、弾性繊維の長手方向に隣り合う、当該箇所の間において、その厚みの最大値は、1mm以上20mm以下であることが好ましく、より好ましいのは2mm以上10mm以下である。1mmより小さいと、伸長複合積層体中の弾性繊維の存在が明らかに目視で判別できる場合があり、複合積層体を伸長した場合は、弾性繊維の存在がより顕著に判別できるようになることから、複合積層体の外観および審美性が低下する場合がある。20mmより大きいと、形成した襞が挫屈し易くなる場合があり、着用時のフィット性となめらかで規則性のよい襞の感触が不満足な場合がある。
【0028】
一方向に延在する樹脂の幅は、最大伸長時に0.2mm以上10mm以下であることが好ましく、より好ましいのは0.4mm以上6mm以下である。0.2mmより小さいと、複合積層体中の弾性繊維が動きやすく、伸縮を繰り返した場合に、襞の均一性が低下したり、隣り合う弾性繊維が近接して、その存在が目視で判別できる場合があり、複合積層体の外観および審美性が低下する場合がある。10mmより大きいと、複合積層体を透過光で見た場合、弾性繊維の存在が筋状または縞状に目立ちやすくなる場合がある。さらに、複合積層体の伸度が低下し、置き寸が大きくなる場合や着用時のフィット性となめらかで規則性のよい襞の感触が不満足な場合がある。
【0029】
そして、一方向に延在する樹脂の間隔は、最大伸長時に1mm以上20mm以下であることが好ましく、より好ましいのは2mm以上15mm以下である。一方向に延在する樹脂の間隔とは、一方向に延在する樹脂の中心間の距離をいう。かかる間隔が1mmより小さいと、複合積層体中の弾性繊維の存在が明らかに目視で判別できる場合が出現し、複合積層体を伸長した場合は、より顕著であり、著しく複合積層体の外観および審美性が低下する場合がある。20mmより大きいと、形成した襞が挫屈し易くなる場合があり、着用時のフィット性となめらかで規則性のよい襞の感触が不満足となる場合がある。
【0030】
次に、弾性繊維間のピッチは、0.5mm以上10mm以下であることが好ましく、より好ましいのは1mm以上8mm以下である。特に弾性繊維の繊度範囲が44dtexから250dtex以下の時に弾性繊維間のピッチを2mm以上6mm以下とすることで、特に襞の規則性が優れた複合積層体となる。弾性繊維間のピッチとは、隣り合った2本の弾性繊維の中心間の距離をいう。かかるピッチが0.5mmより小さいと、弾性繊維同士が触れ合って複合積層体作成時に糸切れを起こしやすい。また、ピッチが10mmより大きいと複合積層体の襞の規則性が乱れ、外観や感触および紙おむつにした際のフィット性が損なわれる場合がある。
【0031】
本発明の複合積層体に用いられる布帛とは織物、編物、不織布などが好適で、特に好ましい布帛は不織布であり、抄紙法などの湿式不織布製造法またはレジンボンド式、サーマルボンド式、ニードルパンチ式、スパンボンド式、スパンレース法、メルトブロー法およびフラッシュ紡糸法などの乾式不織布製造法により得られるもののいずれであってもよく、それらのうち単層体であっても複数の積層体であってもよい。
【0032】
布帛を構成する繊維の素材については特に限定されないが、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、プロピレンとエチレン等各種α−オレフィンのコポリマー、ポリウレタン等の合成繊維、レーヨン、アセテート等の再生繊維、半合成繊維、ウール、綿等の天然繊維などが好ましい。
【0033】
布帛を構成する繊維の形態は、長繊維フィラメント、短繊維紡績糸のいずれであってもよく、2種以上の繊維を混紡、混繊したものや、捲縮加工を施したもの、その他、複合繊維等広く選択することができる。
【0034】
本発明の複合積層体は、少なくとも一部に弾性繊維が用いられるものである。
【0035】
本発明で使用される弾性繊維は、ポリウレタン系弾性繊維、ポリエーテル・エステル系弾性繊維等、ポリアミド系弾性繊維、もしくは、天然ゴム、合成ゴム、半合成ゴムからなる糸状のいわゆるゴム糸、さらに、エラストマーフィルムを繊維状に裁断したもの、または、これらを主体とした他の有機合成樹脂体との複合もしくは混合によって得られる繊維、捲縮繊維などが採用でき、繊維自身がエンタルピー弾性を有するものがより好ましい。そして、複合積層体として伸縮性がよりよく発揮させる観点から、最も好ましいのはポリウレタン系弾性繊維である。
【0036】
本発明の複合積層体に用いられる弾性繊維は裸糸であっても、他の弾性繊維または非弾性繊維によって被覆(カバリング)されたものであってもよい。複合積層体として伸縮性の観点から、最も好ましいのは裸糸である。
【0037】
なお、ポリウレタン系弾性繊維とは、ソフトセグメントとしてコポリエステルジオールなどの長鎖ジオール、ハードセグメントとしてジフェニルメタン−4,4ジイソシアネートなどのジイソシアネートおよび鎖伸長剤として二官能性水素化合物を主構成成分とするポリエステル系弾性繊維またはソフトセグメントとしてポリテトラメチレンエーテルグリコール、ハードセグメントとしてジフェニルメタン−4,4ジイソシアネート、鎖伸長剤として低分子量の二官能性水素化合物を主構成成分とするポリエーテル系弾性繊維が好ましい。
【0038】
また、ポリエーテル・エステル系弾性繊維とは、ソフトセグメントとしてポリテトラメチレンエーテルグリコール、ハードセグメントとしてポリブチルテレフタレートまたはポリブチルイソフタレートを主構成成分とするものが好ましい。
【0039】
本発明においては、最終製品に所望の伸縮性を付与させる観点から、ポリウレタン系弾性繊維を用いるのが好ましい。
【0040】
本発明で使用され得るポリウレタン系弾性繊維に用いるポリウレタン重合体は、いずれも長鎖のポリエーテルセグメント、ポリエステルセグメントまたはポリエーテルエステルセグメント等を主構成成分とするソフトセグメントとイソシアネートと鎖伸長剤であるジアミンまたはジオールを主構成成分とするハードセグメントとから構成されることが好ましい。
【0041】
かかるポリウレタン重合体のソフトセグメントを構成する原料としては、1)テトラヒドロフラン、テトラメチレングリコール、3−メチル−1、5−ペンタンジオール、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン等から得られる重合体または共重合体であるポリエーテルセグメント、2)エチレングリコール、テトラメチレングリコール、2、2−ジメチル−1、3−プロパンジオール等のジオールとアジピン酸、コハク酸等の二塩基酸とから得られるポリエステルセグメント、3)ポリ−(ペンタン−1、5−カーボネート)ジオール、ポリ−(ヘキサン−1、6−カーボネート)ジオール等から得られるポリエーテルエステルセグメントを用いることができるが、中でもテトラメチレングリコールから得られるポリエーテルセグメント、すなわちポリテトラメチレンエーテルグリコール(以下、PTMGと略する)が好ましい。
【0042】
本発明の複合積層体に用いられる弾性繊維においてポリウレタン重合体は、ヒドロキシル末端ソフトセグメント前駆体を有機ジイソシアネートで重付加反応させること(キャッピング反応)によって得られたプレポリマー生成物をアミン鎖伸長剤またはジオール鎖伸長剤で鎖伸長させて得ることができる。さらには、熱軟化点を調整する目的で、プレポリマー生成物にさらに有機ジイソシアネートを反応させた後、鎖伸長剤を反応させて得ることも好適である。
【0043】
本発明においてポリウレタン重合体に供する有機ジイソシアネートとしては、ビス−(p−イソシアナートフェニル)−メタン(以下、MDIと略する)、トリレンジイソシアネート(以下、TDIと略する)、ビス−(4−イソシアナートシクロヘキシル)−メタン(以下、PICMと略する)、ヘキサメチレンジイソシアネート、3、3、5−トリメチル−5−メチレンシクロヘキシルジイソシアネート等を用いることができるが、中でもMDIが好ましい。
【0044】
種々のジアミン、たとえばエチレンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等がポリウレタンウレアを形成させるためのアミン鎖伸長剤として好ましく使用される。
【0045】
アミン鎖伸長剤は、1種のみのジアミンに限定されるわけでなく、複数種のアミンからなるものであってもよい。鎖停止剤は、ポリウレタンウレアの最終的な分子量の調節を助けるために反応混合物に包有させることができる。通常、鎖停止剤として活性水素を有する一官能性化合物、たとえばジエチルアミン等を使用することができる。
【0046】
また、鎖伸長剤としては、上記アミンに限定されることはなく、ジオールであってもよい。特に、100℃〜180℃の熱軟化点を有する弾性繊維を得るのに好適である。例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス(β−ヒドロキシエチル)テレフタレートおよびパラキシリレンジオール等を用いることができる。ジオール鎖伸長剤は、1種のみのジオールに限定されるわけでなく、複数種のジオールからなるものであってもよい。また、イソシアネート基と反応する1個の水酸基を含む化合物と併用していてもよい。この場合、このようなポリウレタンを得る方法については溶融重合法、溶液重合法など各種方法を採用することができ、限定されるものではない。重合の処方についても、特に限定されずに、たとえば、ポリオールとジイソシアネートと、ジオールからなる鎖伸長剤とを同時に反応させることにより、ポリウレタンを合成する方法等を採用することができ、いずれの方法によるものでもよい。
【0047】
さらに本発明の効果を損なわない範囲で安定剤、熱伝導性改良剤、顔料を配合することも好ましい。
【0048】
例えば、耐光剤、酸化防止剤などとして、いわゆるBHTや住友化学工業(株)製の“スミライザー(登録商標)”GA−80などをはじめとするヒンダードフェノール系薬剤、BASF社製“チヌビン(登録商標)”等のベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系薬剤、リン系薬剤、各種のヒンダードアミン系薬剤、ポリフッ化ビニリデンなどを基とするフッ素系樹脂粉体またはシリコーン系樹脂粉体、ステアリン酸マグネシウム等の金属石鹸、また、銀や亜鉛やこれらの化合物などを含む殺菌剤、消臭剤、またシリコーン、鉱物油などの滑剤、硫酸バリウム、酸化セリウム、ベタインやリン酸化合物、リン酸エステル化合物などの各種の帯電防止剤などが添加されてもよいし、またポリマーと反応して存在してもよい。そして、特に光や各種の酸化窒素などへの耐久性をさらに高めるには、酸化窒素捕捉剤、例えば日本ヒドラジン(株)製のHN−150,Clariant Corporation製“Hostanox(登録商標)”SE10等、熱酸化安定剤などを含有させることが好ましい。
【0049】
そして、溶融や熱軟化を促進するために、熱伝導性改良剤として、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、シリカ、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素等を含有させることが好ましい。
【0050】
例えば、顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、リン酸ジルコニウムなどを含有させることが好ましい。中でも弾性繊維の目剥きによるギラツキを抑え、弾性繊維が目立たない均質な外観の複合積層体を得るという観点からは酸化チタンが好ましい。酸化チタンであればルチル型、アナターゼ型のいずれでも好ましく用いられる。また、光の反射を抑え、かつポリウレタン系弾性繊維を安定的に製造するという観点から、平均一次粒子径が0.15μmから0.3μmの範囲のものであることが好ましい。また、ポリウレタン系弾性繊維中への含有量はギラツキの防止という観点から0.3質量%以上であることが好ましく、口金への詰まり等を防ぎ安定的にポリウレタン系弾性繊維を紡糸するという観点から3質量%以下であることが好ましい。
【0051】
そして、溶融や熱軟化を促進するために、熱伝導性改良剤として、例えば、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、シリカ、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭化ケイ素等を含有させることが好ましい。
【0052】
ポリウレタン重合体を溶液とする場合に用いる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと略する)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等を使用することができるが、DMAcが最も一般的に使用される溶媒である。
【0053】
ポリウレタン重合体の溶液濃度としては、30〜50質量%(溶液の全質量を基準にして)の溶液濃度にてポリウレタン系弾性繊維のフィラメント糸を得る乾式紡糸法が好ましい。
【0054】
本発明においては、ポリウレタン重合体からポリウレタン系弾性繊維を紡糸する方法は特に限定されるものではないが、例えば、1)ジオールを鎖伸長剤として用いたポリウレタン系弾性繊維の紡糸法として、溶融紡糸法、乾式紡糸法または湿式紡糸法等を採用することができる。また2)アミンを鎖伸長剤として用いたポリウレタン系弾性繊維の紡糸法として、通常乾式紡糸法を採用することができる。
【0055】
本発明においては、高度な伸縮性、特に伸縮回復応力の観点からはポリウレタン系弾性繊維のフィラメント糸の使用が好適であるが、弾性繊維自体が目立ちやすくなる傾向がある。そこで、次の形態の繊維仕様や組み合わせが好ましい。
【0056】
布帛を構成する繊維および弾性繊維の繊度は、使用される用途に応じて適宜選択しうるが、0.1〜5000デシテックスの範囲が好ましい。
【0057】
そして、布帛を構成する繊維の繊度は、0.1〜500デシテックスがより好ましく、0.3〜30デシテックスがさらに好ましい。
【0058】
また、弾性繊維の繊度は、1〜3000デシテックスがより好ましく、10〜200デシテックスがさらに好ましい。本発明において弾性繊維の繊度はISO2060に準じて測定した見掛繊度であり、測定方法は次の通りである。見掛繊度の測定に供する弾性繊維のサンプルは20℃、65%相対湿度環境下に24時間静置したものを使用する。弾性繊維を無荷重下で長さd(単位:m)に切断し、見掛繊度(デシテックス)=長さd(m)の糸質量(g)×10000÷dを小数点以下1桁まで求める。ここで、長さdとしては、通常0.1mあれば足りるが、連続した1本の繊維である必要はなく、複数本の合計の長さd’が0.1mあればよい。この場合、弾性繊維のサンプルを複合積層体から取り出す場合には2枚の布帛の間に配置された弾性繊維が各布帛と離間した箇所からサンプリングすればよい。例えば、複合積層体を、弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂に沿って、ハサミを用いて切断し、直線形状のよい弾性繊維片を長さの合計が0.1±0.01mになるまで光学顕微鏡にて寸法を測定して複数本の弾性繊維片を選び、合計した長さd’を求める。次に精密天秤にて選んだ複数本の弾性繊維片の合計質量を測定し、弾性繊維片の合計質量(g)×10000÷d’を算出して弾性繊維の繊度を求める方法が挙げられる。
【0059】
繊度が、10デシテックスに満たない弾性繊維を用いると製造時、走行摩擦に弾性繊維が耐えられず糸切れが生じやすくなるという傾向があり、また、5000デシテックスを越える弾性繊維を用いると、製造時、走行摩擦にセンサー側が耐えきれずに破損する傾向がある。
【0060】
本発明の複合積層体において、弾性繊維と布帛の色差ΔEは、10以下であることが好ましい。
【0061】
ここでいう色差とは、後述するLab表色系におけるL値、a値、b値の各値から後述する式により算出される値である。かかる色差ΔEが10以下であることにより複合積層体を伸張したときに弾性繊維が目立たず、着用時の審美性が保たれる。
【0062】
本発明においては弾性繊維が原着糸であってもよく、布帛やそれを構成する繊維は予め着色されたものを使用することも好ましい。布帛やそれを構成する繊維の着色方法については特に限定されるものではないが、弾性繊維と同色に着色するという観点から、色の調整が可能なチーズ染色等によって着色することも好ましい。
【0063】
Lab表色系におけるL値、a値、b値は次のようにして測定して得られる値と定義する。
【0064】
測定対象の繊維をステンレス板に10g巻き取りカード状の試料とし、非接触式の分光測色計(たとえば、カラーマスター D25 DP−9000型 シグナルプロセッサー)を使用して測定する(なお、後述するa値、b値もこの測定から得られる)。
【0065】
ここで、Lab表色系におけるL値とは、上述のとおり明度を表す指標であり、a値は赤〜緑の間の位置、b値は黄〜青の間の位置を表す指標である。これらの各値は、上記のL値と同様に測定対象の繊維または布帛をステンレス板に10g巻き取りカード状の試料とし、非接触式の分光測色計を用いて測定して得られる値と定義する。
色差ΔEが10より大きいと、投影太さ比に関わらず、複合積層体中の弾性繊維が目視確認できる様になり、審美性が損なわれる場合がある。
【0066】
本発明で使用される弾性繊維として好ましいのは、工程通過性も含め、実用上の問題がなく、かつ、一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所での形態に優れたものを得る観点から、熱軟化点が100℃以上240℃以下の範囲となるものが好ましい。熱軟化点が100℃より低いと、染色など加工工程や実用上、タンブラー乾燥などで形態が破壊される場合があり、240℃より大きいと、一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所での弾性繊維の存在が目立ち、不満足な外観を呈する場合が起こったり、積層体の厚みが大きくなりすぎる場合がある。熱軟化点の範囲はより好ましくは、110℃以上200℃以下、さらに、好ましいのは120℃以上160℃の範囲である。この範囲であれば、公知の手法である熱ロールや超音波ウエルダー、高周波ウエルダー、電磁誘導ウエルダー、これらの複合ウエルダーを使用して、弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂を弾性繊維および/または布帛を構成する素材が熱軟化または溶融せしめるのに好適である。
【0067】
本発明の複合積層体に用いられる布帛においては、弾性繊維と交差する方向に複数本配置された一方向に延在する樹脂が存在し、樹脂とはホットメルト接着剤、溶剤系接着剤等の各種接着剤や弾性繊維および/または布帛を構成する素材が熱軟化または溶融したものである。
【0068】
布帛を構成する素材が熱軟化または溶融したものの場合には熱エンボス加工、超音波融着等の熱融着法による種々公知の方法を採り得る。
【0069】
一方向に延在する樹脂の領域にはニードルパンチ、ウォータージェット等の機械的交絡法が加わっていることも好ましい。
【0070】
さらに、一方向に延在する樹脂として好ましい樹脂は、本発明はその効果を高めるために、布帛や弾性繊維と同種の素材を含む樹脂であり、布帛や弾性繊維の成分を含むものであることがより好ましい。そして、一方向に延在する樹脂として、かかる布帛や弾性繊維の成分を含む樹脂を用いる場合、布帛または弾性繊維を熱軟化または溶融させて一方向に延在する樹脂を形成することもが好ましく、布帛と弾性繊維が共に熱軟化または溶融することがより好ましい。
【0071】
本発明の複合積層体は、伸縮性を有する複合積層体であって、肌に密着する衣類、具体的には下着、スポーツウェアあるいは、子供用および大人用おむつ、生理用品、マスク、医療用ウエア、手術着、包帯、サポーターのような衛生材料、医療材料等の用途に好適に使用され、更には、審美性に優れることからカーテン、家具などのインテリア用品、寝具、裏地、ガードル、ブラジャー、インティメイト商品、衣料用ウエストバンド、ストレッチスポーツウエア、ストレッチアウター等の用途が挙げられる。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。
【0073】
[投影太さ比]
複合積層体を構成する弾性繊維の長さ方向に対する垂直方向の投影太さX及び複合積層体を構成する布帛の表面に分布する繊維の長さ方向に対する垂直方向の投影太さYは、走査型電子顕微鏡により測定した。本実施例では、日立製作所製S−2380N型を用いて測定した。
【0074】
複合積層対中の複合積層体を構成する弾性繊維の長さ方向に対する垂直方向の投影太さX(以降、弾性繊維の太さXと略記する)を測定するため、複合積層体を剥がして弾性繊維を露出させSEMにて50倍で観察し、弾性繊維の太さXを測定した。このとき、ランダムに5カ所測定し、その平均値を求めた。次に、複合積層体を構成する布帛の表面に分布する繊維の長さ方向に対する垂直方向の投影太さY(以降、布帛表面繊維の太さYと略記する)を測定するため、複合積層体の表面をSEMを用い50倍で観察し、布帛表面繊維の太さYを測定した。このとき、ランダムに5カ所測定し、その平均値を求めた。
測定したXおよびYから投影太さ比を以下の式(1)で求めた。
【0075】
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY (1)
[熱軟化点]
弾性繊維の耐熱性の指標の一つとして熱軟化点を測定した。弾性繊維について、レオメトリック社製動的弾性率測定機RSAIIを用い、昇温速度10℃/分で、動的貯蔵弾性率E’の温度分散を測定した。熱軟化点は、E’曲線が80℃以上130℃以下のプラト領域での接線と、160℃以上にてE’が熱軟化により降下するE’曲線の接線との交点から求めた。なお、E’は対数軸、温度は線形軸を用いた。
【0076】
[カラー測定]
測定対象の繊維をステンレス板に10g巻き取り試料カードを作製した。非接触式の分光測色計としてカラーマスター(D25 DP−9000型 シグナルプロセッサー)を使用してLab表色系におけるL値、a値、b値の各値を測定した。また、対象繊維同士の色差“△E”に関しては以下の算式より求めた。
【0077】
ΔE=√((L2−L1)+(a2−a1)2+(b2−b1)
(L1、a1、b1)は弾性繊維の測定値
(L2、a2、b2)は布帛または布帛を構成する繊維の測定値。
【0078】
[複合積層体の外観評価]
積層体に挿入された弾性繊維が積層体の上から目立たないかを、10人の判定者が肉眼で観察して判定する官能評価を行った。また、その判定結果は以下の区分で表示した。
【0079】
◎ : 8人以上が目立たないと感じた。
【0080】
○ : 8人未満6人以上が目立たないと感じた。
【0081】
△ : 6人未満4人以上が目立たないと感じた。
【0082】
× : 4人未満が目立たないと感じた。
【0083】
[複合積層体の襞の規則性評価]
リラックス状態の複合積層体において、複合積層体に生じる襞に規則性があるかを、10人の判定者が肉眼で観察して判定する官能評価を行った。また、その判定結果は以下の区分で表示した。
【0084】
◎ : 8人以上が規則性があると感じた。
【0085】
○ : 8人未満6人以上が規則性があると感じた。
【0086】
△ : 6人未満4人以上が規則性があると感じた。
【0087】
× : 4人未満が規則性があると感じた。
【0088】
[積層体の感触評価]
積層体を素手で触れ、その感触から感じる柔軟性を10人の判定者が判定する官能評価を行った。また、その判定結果は以下の区分で表示した。
【0089】
◎ : 8人以上が柔軟性があると感じた。
【0090】
○ : 8人未満6人以上が柔軟性があると感じた。
【0091】
△ : 6人未満4人以上が柔軟性があると感じた。
【0092】
× : 4人未満が柔軟性があると感じた。
【0093】
[積層体の伸縮性評価]
リラックス状態の積層体を素手で伸縮させ、積層体の伸縮性を10人の判定者が判定する官能評価を行った。また、その判定結果は以下の区分で表示した。
【0094】
◎ : 8人以上が伸縮性が優れていると感じた。
【0095】
○ : 8人未満6人以上が伸縮性が優れていると感じた。
【0096】
△ : 6人未満4人以上が伸縮性が優れていると感じた。
【0097】
× : 4人未満が伸縮性が優れていると感じた。
【0098】
[フィット性:紙おむつの締め付け力の分散度合い]
紙おむつのギャザー部に使用された積層体が、人間の肌にくい込み難いと感じるかを、10人の判定者が肌に押し当てて観察する官能評価を行った。また、その判定結果は以下の区分で表示した。
【0099】
◎ : 8人以上がくい込みにくいと感じた。
【0100】
○ : 8人未満6人以上がくい込みにくいと感じた。
【0101】
△ : 6人未満4人以上がくい込みにくいと感じた。
【0102】
× : 4人未満がくい込みにくいと感じた。
【0103】
[実施例1]
使用した弾性繊維:東レ・オペロンテックス(株)製“Lycra(登録商標)fiber”T−127C
その弾性繊維の繊度: 78dtex
弾性繊維ビームを構成する弾性繊維の本数:76本
弾性繊維ビームとしてボビン上に巻き上げた弾性繊維の繊維長: 20,000m
使用したボビン:アルミ製の鍔付きボビン(筒外径20cmφ、巻き幅22.5cm、鍔外径38.0cmφ)
使用したテープ:布製粘着テープ(巾2.5cm、長さ24.5cm)
使用した不織布:PPスパンボンド、表面に存在する繊維の繊度2dtex、目付16g/m
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=930μm/21μm
=44
特開2005−320636号公報の方法に従い、上記弾性繊維の巻繊維体の38個を送り出しローラー上に並べて同じ速度で解舒供給し、76本の弾性繊維が幅20cm内に均等に平行配列するビーム状態とし、上記ボビン上に巻き上げ、弾性繊維の繊維長20,000mが巻上げられた弾性繊維ビーム巻上げ体を作製した。なお、ボビン上に巻上げる前には、弾性繊維ビームの巻き始め端から200cmの位置に、ビーム幅にわたって布製粘着テープを貼り付けておいた。さらに、巻き終わり端から300cmの位置に、ビーム幅にわたって布製粘着テープを貼り付けておいた。
【0104】
ポリウレタン系弾性繊維ビーム巻取体から、繊維速度が66.7m/分となるように76本のポリウレタン系弾性繊維を解舒して供給した。二つの不織布巻取体から、不織布の線速度が100m/分となるように解舒して供給した。供給した二つの不織布の間に、平行に配列するように繊維分けガイドで弾性繊維間のピッチを2mmに分繊したポリウレタン系弾性繊維が供給されるよう配置し、特開2014−76077号公報の方法に従い、デザインローラ塗布装置を使用して積層体の移送方向と直交方向の樹脂の塗布帯状塗布面は、2mm巾、樹脂帯状塗布面の相互間の空白部が、6mmの複合積層体を作製し、続いて通常の紙おむつを製造した。
【0105】
作成した複合積層体は、触感が柔らかく柔軟性に富んだもので、目視で弾性繊維が確認できないものであった。
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。なお、不織布の表面に存在する繊維の繊度を表中では、繊度と略記している。また、「一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所での厚み」および「一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所間の厚みの最大値」について測定箇所は図2に示したとおりである。
【0106】
[実施例2]
実施例1に対して以下の弾性繊維に変更した以外は同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
使用した弾性繊維:東レ・オペロンテックス(株)製“Lycra(登録商標)fiber”T−127C
その弾性繊維の繊度: 44dtex
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=679μm/21μm
=32
作成した複合積層体は、触感が柔らかく柔軟性に富んだもので、目視で弾性繊維が確認できないものであった。
【0107】
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0108】
[実施例3]
実施例1に対して以下の弾性繊維および本数に変更し、弾性繊維間のピッチを4mm変更した以外は同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
使用した弾性繊維:東レ・オペロンテックス(株)製“Lycra(登録商標)fiber”T−127C
その弾性繊維の繊度: 156dtex
弾性繊維ビームを構成する弾性繊維の本数:38本
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=1240μm/21μm
=59
作成した複合積層体は、触感が柔らかく柔軟性に富んだもので、目視で弾性繊維が確認しにくいものであった。
【0109】
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0110】
[実施例4]
実施例1に対して以下の弾性繊維および本数に変更した以外は同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
使用した弾性繊維:東レ・オペロンテックス(株)製“Lycra(登録商標)fiber”T−127
その弾性繊維の繊度: 78dtex
弾性繊維ビームを構成する弾性繊維の本数:76本
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=935μm/21μm
=45
作成した複合積層体は、触感が柔らかく柔軟性に富んだもので、目視で弾性繊維が確認しにくいものであった。
【0111】
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0112】
[実施例5]
実施例1に対して以下の方法で製造した弾性繊維に変更し、複合積層体を作成する際にデザインローラ装置から超音波ウェルダーを使用したこと以外は同様に複合積層体と紙おむつを製造した。
【0113】
数平均分子量2000のPTMG1モルに対しMDIを1.6モルになるように容器に仕込み、70℃で反応せしめ、得られた反応生成物をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に十分に撹拌し、溶解させて溶液を得た。次に、前述数平均分子量2000のPTMG1モルに対しMDIを0.4モルを加え、十分に撹拌し、次に鎖伸長剤として1,4−ブタンジオールを含むDMAc溶液を加え、十分に撹拌し、さらに末端封鎖剤としてブタノールを含むDMAc溶液を添加して、ポリマー固体分が35質量%であるポリウレタン溶液pu1を調製した。得られた溶液は40℃で約3300ポイズの粘度を有していた。重合体はDMAc中で0.5g/100mlの溶液濃度で25℃で測定すると、0.88の極限粘度であった。
【0114】
次に、酸化防止剤として、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン溶液(デュポン社製“メタクロール(登録商標)”2462D)と、p−クレゾ−ルおよびジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール(登録商標)”2390D)とを2対1(質量比)で混合し、酸化防止剤DMAc溶液(濃度35質量%)を調整し、前記ポリウレタン溶液pu1の96質量部と酸化防止剤溶液4質量部を混合し、ポリマー溶液(A1)とした。次に白色顔料として石原産業製酸化チタン“TIPAQUE(登録商標)”PF−711および神島化学社製無水炭酸マグネシウム“マグシーズ(登録商標)”を1:1の質量比でDMAcに分散し、濃度35質量%DMAc分散液(B1)を調製した。さらに着色顔料として酸化第二鉄、オキシ水酸化鉄、およびカーボンブラックからなる35質量%DMAc分散液(C1)を調整した。
【0115】
ポリマー溶液A1、B1、C1をそれぞれ98.7質量%、1.0質量%、0.3質量%の比率で混合し紡繊維原液pus1を調整した。このpus1を紡繊維口金から高温(350℃)の不活性ガス(窒素ガス)中に5フィラメントで吐出し、この高温ガス中の通過により乾燥し、乾燥途中の繊維が撚り合わされるようにエアージェット式撚繊維機を通し、5フィラメントを合着させ、600m/分のスピードで巻き取り、78dtexのポリウレタン系弾性繊維(PU1)を製造した。
【0116】
このポリウレタン弾性繊維(PU1)の熱軟化点は151℃であった。
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=930μm/21μm
=44
作成した複合積層体は、触感が柔らかく柔軟性に富んだもので、目視で弾性繊維が確認しにくいものであった。
【0117】
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0118】
[実施例6]
デザインローラー塗布装置を使用して複合積層体の移送方向と直交方向の樹脂の塗布帯状塗布面を、5mm巾、樹脂帯状塗布面の相互間の空白部が、8mmにしたこと以外は実施例1と同様に複合積層体を作製し、続いて通常の紙おむつを製造した。
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=933μm/21μm
=44
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0119】
[実施例7]
実施例3に対して以下の不織布に変更した以外は同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
使用した不織布:PPスパンボンド、表面に存在する繊維の繊度0.7dtex、目付16g/m
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=1240μm/10μm
=124
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0120】
[実施例8]
実施例7に対して以下の弾性繊維および本数に変更し、弾性繊維間のピッチを6mmに変更した以外は同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
使用した弾性繊維:東レ・オペロンテックス(株)製“Lycra(登録商標)fiber”T−127C
その弾性繊維の繊度: 230dtex
弾性繊維ビームを構成する弾性繊維の本数:24本
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=1488μm/10μm
=149
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0121】
[実施例9]
実施例7に対して以下の弾性繊維および本数に変更し、弾性繊維間のピッチを8mmに変更した以外は同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
使用した弾性繊維:東レ・オペロンテックス(株)製“Lycra(登録商標)fiber”T−127C
その弾性繊維の繊度: 310dtex
弾性繊維ビームを構成する弾性繊維の本数:20本
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=1860μm/10μm
=186
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0122】
[比較例1]
実施例3に対して以下の弾性繊維および本数に変更し、弾性繊維間のピッチを12mmに変更した以外は同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
使用した弾性繊維:東レ・オペロンテックス(株)製“Lycra(登録商標)fiber”T−127C
その弾性繊維の繊度: 470dtex
弾性繊維ビームを構成する弾性繊維の本数:12本
作成した複合積層体は、弾性繊維が外観からはっきりと確認でき、紙おむつのフィット感に劣るものであった。
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0123】
[比較例2]
樹脂の塗布方法をカーテンスプレー方式に変更し、樹脂の塗布量を布帛の面積あたり5g/mにした以外は実施例1と同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
【0124】
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0125】
[比較例3]
樹脂の塗布方法をカーテンスプレー方式に変更し、樹脂の塗布量を布帛の面積あたり5g/mにした以外は実施例5と同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
【0126】
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0127】
【表1】
図1
図2