【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例を用いて説明する。
【0073】
[投影太さ比]
複合積層体を構成する弾性繊維の長さ方向に対する垂直方向の投影太さX及び複合積層体を構成する布帛の表面に分布する繊維の長さ方向に対する垂直方向の投影太さYは、走査型電子顕微鏡により測定した。本実施例では、日立製作所製S−2380N型を用いて測定した。
【0074】
複合積層対中の複合積層体を構成する弾性繊維の長さ方向に対する垂直方向の投影太さX(以降、弾性繊維の太さXと略記する)を測定するため、複合積層体を剥がして弾性繊維を露出させSEMにて50倍で観察し、弾性繊維の太さXを測定した。このとき、ランダムに5カ所測定し、その平均値を求めた。次に、複合積層体を構成する布帛の表面に分布する繊維の長さ方向に対する垂直方向の投影太さY(以降、布帛表面繊維の太さYと略記する)を測定するため、複合積層体の表面をSEMを用い50倍で観察し、布帛表面繊維の太さYを測定した。このとき、ランダムに5カ所測定し、その平均値を求めた。
測定したXおよびYから投影太さ比を以下の式(1)で求めた。
【0075】
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY (1)
[熱軟化点]
弾性繊維の耐熱性の指標の一つとして熱軟化点を測定した。弾性繊維について、レオメトリック社製動的弾性率測定機RSAIIを用い、昇温速度10℃/分で、動的貯蔵弾性率E’の温度分散を測定した。熱軟化点は、E’曲線が80℃以上130℃以下のプラト領域での接線と、160℃以上にてE’が熱軟化により降下するE’曲線の接線との交点から求めた。なお、E’は対数軸、温度は線形軸を用いた。
【0076】
[カラー測定]
測定対象の繊維をステンレス板に10g巻き取り試料カードを作製した。非接触式の分光測色計としてカラーマスター(D25 DP−9000型 シグナルプロセッサー)を使用してLab表色系におけるL値、a値、b値の各値を測定した。また、対象繊維同士の色差“△E”に関しては以下の算式より求めた。
【0077】
ΔE=√((L2−L1)
2+(a2−a1)2+(b2−b1)
2)
(L1、a1、b1)は弾性繊維の測定値
(L2、a2、b2)は布帛または布帛を構成する繊維の測定値。
【0078】
[複合積層体の外観評価]
積層体に挿入された弾性繊維が積層体の上から目立たないかを、10人の判定者が肉眼で観察して判定する官能評価を行った。また、その判定結果は以下の区分で表示した。
【0079】
◎ : 8人以上が目立たないと感じた。
【0080】
○ : 8人未満6人以上が目立たないと感じた。
【0081】
△ : 6人未満4人以上が目立たないと感じた。
【0082】
× : 4人未満が目立たないと感じた。
【0083】
[複合積層体の襞の規則性評価]
リラックス状態の複合積層体において、複合積層体に生じる襞に規則性があるかを、10人の判定者が肉眼で観察して判定する官能評価を行った。また、その判定結果は以下の区分で表示した。
【0084】
◎ : 8人以上が規則性があると感じた。
【0085】
○ : 8人未満6人以上が規則性があると感じた。
【0086】
△ : 6人未満4人以上が規則性があると感じた。
【0087】
× : 4人未満が規則性があると感じた。
【0088】
[積層体の感触評価]
積層体を素手で触れ、その感触から感じる柔軟性を10人の判定者が判定する官能評価を行った。また、その判定結果は以下の区分で表示した。
【0089】
◎ : 8人以上が柔軟性があると感じた。
【0090】
○ : 8人未満6人以上が柔軟性があると感じた。
【0091】
△ : 6人未満4人以上が柔軟性があると感じた。
【0092】
× : 4人未満が柔軟性があると感じた。
【0093】
[積層体の伸縮性評価]
リラックス状態の積層体を素手で伸縮させ、積層体の伸縮性を10人の判定者が判定する官能評価を行った。また、その判定結果は以下の区分で表示した。
【0094】
◎ : 8人以上が伸縮性が優れていると感じた。
【0095】
○ : 8人未満6人以上が伸縮性が優れていると感じた。
【0096】
△ : 6人未満4人以上が伸縮性が優れていると感じた。
【0097】
× : 4人未満が伸縮性が優れていると感じた。
【0098】
[フィット性:紙おむつの締め付け力の分散度合い]
紙おむつのギャザー部に使用された積層体が、人間の肌にくい込み難いと感じるかを、10人の判定者が肌に押し当てて観察する官能評価を行った。また、その判定結果は以下の区分で表示した。
【0099】
◎ : 8人以上がくい込みにくいと感じた。
【0100】
○ : 8人未満6人以上がくい込みにくいと感じた。
【0101】
△ : 6人未満4人以上がくい込みにくいと感じた。
【0102】
× : 4人未満がくい込みにくいと感じた。
【0103】
[実施例1]
使用した弾性繊維:東レ・オペロンテックス(株)製“Lycra(登録商標)fiber”T−127C
その弾性繊維の繊度: 78dtex
弾性繊維ビームを構成する弾性繊維の本数:76本
弾性繊維ビームとしてボビン上に巻き上げた弾性繊維の繊維長: 20,000m
使用したボビン:アルミ製の鍔付きボビン(筒外径20cmφ、巻き幅22.5cm、鍔外径38.0cmφ)
使用したテープ:布製粘着テープ(巾2.5cm、長さ24.5cm)
使用した不織布:PPスパンボンド、表面に存在する繊維の繊度2dtex、目付16g/m
2
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=930μm/21μm
=44
特開2005−320636号公報の方法に従い、上記弾性繊維の巻繊維体の38個を送り出しローラー上に並べて同じ速度で解舒供給し、76本の弾性繊維が幅20cm内に均等に平行配列するビーム状態とし、上記ボビン上に巻き上げ、弾性繊維の繊維長20,000mが巻上げられた弾性繊維ビーム巻上げ体を作製した。なお、ボビン上に巻上げる前には、弾性繊維ビームの巻き始め端から200cmの位置に、ビーム幅にわたって布製粘着テープを貼り付けておいた。さらに、巻き終わり端から300cmの位置に、ビーム幅にわたって布製粘着テープを貼り付けておいた。
【0104】
ポリウレタン系弾性繊維ビーム巻取体から、繊維速度が66.7m/分となるように76本のポリウレタン系弾性繊維を解舒して供給した。二つの不織布巻取体から、不織布の線速度が100m/分となるように解舒して供給した。供給した二つの不織布の間に、平行に配列するように繊維分けガイドで弾性繊維間のピッチを2mmに分繊したポリウレタン系弾性繊維が供給されるよう配置し、特開2014−76077号公報の方法に従い、デザインローラ塗布装置を使用して積層体の移送方向と直交方向の樹脂の塗布帯状塗布面は、2mm巾、樹脂帯状塗布面の相互間の空白部が、6mmの複合積層体を作製し、続いて通常の紙おむつを製造した。
【0105】
作成した複合積層体は、触感が柔らかく柔軟性に富んだもので、目視で弾性繊維が確認できないものであった。
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。なお、不織布の表面に存在する繊維の繊度を表中では、繊度と略記している。また、「一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所での厚み」および「一方向に延在する樹脂と弾性繊維が交差する箇所間の厚みの最大値」について測定箇所は
図2に示したとおりである。
【0106】
[実施例2]
実施例1に対して以下の弾性繊維に変更した以外は同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
使用した弾性繊維:東レ・オペロンテックス(株)製“Lycra(登録商標)fiber”T−127C
その弾性繊維の繊度: 44dtex
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=679μm/21μm
=32
作成した複合積層体は、触感が柔らかく柔軟性に富んだもので、目視で弾性繊維が確認できないものであった。
【0107】
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0108】
[実施例3]
実施例1に対して以下の弾性繊維および本数に変更し、弾性繊維間のピッチを4mm変更した以外は同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
使用した弾性繊維:東レ・オペロンテックス(株)製“Lycra(登録商標)fiber”T−127C
その弾性繊維の繊度: 156dtex
弾性繊維ビームを構成する弾性繊維の本数:38本
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=1240μm/21μm
=59
作成した複合積層体は、触感が柔らかく柔軟性に富んだもので、目視で弾性繊維が確認しにくいものであった。
【0109】
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0110】
[実施例4]
実施例1に対して以下の弾性繊維および本数に変更した以外は同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
使用した弾性繊維:東レ・オペロンテックス(株)製“Lycra(登録商標)fiber”T−127
その弾性繊維の繊度: 78dtex
弾性繊維ビームを構成する弾性繊維の本数:76本
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=935μm/21μm
=45
作成した複合積層体は、触感が柔らかく柔軟性に富んだもので、目視で弾性繊維が確認しにくいものであった。
【0111】
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0112】
[実施例5]
実施例1に対して以下の方法で製造した弾性繊維に変更し、複合積層体を作成する際にデザインローラ装置から超音波ウェルダーを使用したこと以外は同様に複合積層体と紙おむつを製造した。
【0113】
数平均分子量2000のPTMG1モルに対しMDIを1.6モルになるように容器に仕込み、70℃で反応せしめ、得られた反応生成物をN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)に十分に撹拌し、溶解させて溶液を得た。次に、前述数平均分子量2000のPTMG1モルに対しMDIを0.4モルを加え、十分に撹拌し、次に鎖伸長剤として1,4−ブタンジオールを含むDMAc溶液を加え、十分に撹拌し、さらに末端封鎖剤としてブタノールを含むDMAc溶液を添加して、ポリマー固体分が35質量%であるポリウレタン溶液pu1を調製した。得られた溶液は40℃で約3300ポイズの粘度を有していた。重合体はDMAc中で0.5g/100mlの溶液濃度で25℃で測定すると、0.88の極限粘度であった。
【0114】
次に、酸化防止剤として、t−ブチルジエタノールアミンとメチレン−ビス−(4−シクロヘキシルイソシアネ−ト)の反応によって生成せしめたポリウレタン溶液(デュポン社製“メタクロール(登録商標)”2462D)と、p−クレゾ−ルおよびジビニルベンゼンの縮合重合体(デュポン社製“メタクロール(登録商標)”2390D)とを2対1(質量比)で混合し、酸化防止剤DMAc溶液(濃度35質量%)を調整し、前記ポリウレタン溶液pu1の96質量部と酸化防止剤溶液4質量部を混合し、ポリマー溶液(A1)とした。次に白色顔料として石原産業製酸化チタン“TIPAQUE(登録商標)”PF−711および神島化学社製無水炭酸マグネシウム“マグシーズ(登録商標)”を1:1の質量比でDMAcに分散し、濃度35質量%DMAc分散液(B1)を調製した。さらに着色顔料として酸化第二鉄、オキシ水酸化鉄、およびカーボンブラックからなる35質量%DMAc分散液(C1)を調整した。
【0115】
ポリマー溶液A1、B1、C1をそれぞれ98.7質量%、1.0質量%、0.3質量%の比率で混合し紡繊維原液pus1を調整した。このpus1を紡繊維口金から高温(350℃)の不活性ガス(窒素ガス)中に5フィラメントで吐出し、この高温ガス中の通過により乾燥し、乾燥途中の繊維が撚り合わされるようにエアージェット式撚繊維機を通し、5フィラメントを合着させ、600m/分のスピードで巻き取り、78dtexのポリウレタン系弾性繊維(PU1)を製造した。
【0116】
このポリウレタン弾性繊維(PU1)の熱軟化点は151℃であった。
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=930μm/21μm
=44
作成した複合積層体は、触感が柔らかく柔軟性に富んだもので、目視で弾性繊維が確認しにくいものであった。
【0117】
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0118】
[実施例6]
デザインローラー塗布装置を使用して複合積層体の移送方向と直交方向の樹脂の塗布帯状塗布面を、5mm巾、樹脂帯状塗布面の相互間の空白部が、8mmにしたこと以外は実施例1と同様に複合積層体を作製し、続いて通常の紙おむつを製造した。
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=933μm/21μm
=44
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0119】
[実施例7]
実施例3に対して以下の不織布に変更した以外は同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
使用した不織布:PPスパンボンド、表面に存在する繊維の繊度0.7dtex、目付16g/m
2
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=1240μm/10μm
=124
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0120】
[実施例8]
実施例7に対して以下の弾性繊維および本数に変更し、弾性繊維間のピッチを6mmに変更した以外は同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
使用した弾性繊維:東レ・オペロンテックス(株)製“Lycra(登録商標)fiber”T−127C
その弾性繊維の繊度: 230dtex
弾性繊維ビームを構成する弾性繊維の本数:24本
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=1488μm/10μm
=149
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0121】
[実施例9]
実施例7に対して以下の弾性繊維および本数に変更し、弾性繊維間のピッチを8mmに変更した以外は同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
使用した弾性繊維:東レ・オペロンテックス(株)製“Lycra(登録商標)fiber”T−127C
その弾性繊維の繊度: 310dtex
弾性繊維ビームを構成する弾性繊維の本数:20本
投影太さ比Z=弾性繊維の太さX/布帛表面繊維の太さY
=1860μm/10μm
=186
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0122】
[比較例1]
実施例3に対して以下の弾性繊維および本数に変更し、弾性繊維間のピッチを12mmに変更した以外は同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
使用した弾性繊維:東レ・オペロンテックス(株)製“Lycra(登録商標)fiber”T−127C
その弾性繊維の繊度: 470dtex
弾性繊維ビームを構成する弾性繊維の本数:12本
作成した複合積層体は、弾性繊維が外観からはっきりと確認でき、紙おむつのフィット感に劣るものであった。
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0123】
[比較例2]
樹脂の塗布方法をカーテンスプレー方式に変更し、樹脂の塗布量を布帛の面積あたり5g/m
2にした以外は実施例1と同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
【0124】
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0125】
[比較例3]
樹脂の塗布方法をカーテンスプレー方式に変更し、樹脂の塗布量を布帛の面積あたり5g/m
2にした以外は実施例5と同様に複合積層体および紙おむつを製造した。
【0126】
複合積層体の仕様、複合積層体および紙おむつの判定結果を表1に示す。
【0127】
【表1】