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特開2019-81773速効型インスリン製剤及び医薬送達システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-81773(P2019-81773A)
(43)【公開日】2019年5月30日
(54)【発明の名称】速効型インスリン製剤及び医薬送達システム
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/28 20060101AFI20190510BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20190510BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20190510BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20190510BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20190510BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20190510BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20190510BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20190510BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20190510BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20190510BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20190510BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20190510BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20190510BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20190510BHJP
   A61M 5/172 20060101ALI20190510BHJP
   C07K 14/62 20060101ALN20190510BHJP
【FI】
   A61K38/28ZNA
   A61K9/08
   A61K47/12
   A61K47/18
   A61K47/20
   A61K47/22
   A61K47/36
   A61K47/46
   A61P3/10
   A61K45/00
   A61K45/06
   A61P43/00 121
   A61M5/142 522
   A61M5/142 530
   A61M5/145 508
   A61M5/172 500
   C07K14/62
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2019-14241(P2019-14241)
(22)【出願日】2019年1月30日
(62)【分割の表示】特願2016-563903(P2016-563903)の分割
【原出願日】2015年1月13日
(31)【優先権主張番号】61/926,946
(32)【優先日】2014年1月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/926,944
(32)【優先日】2014年1月13日
(33)【優先権主張国】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】516210241
【氏名又は名称】サーマリン ダイアビティズ, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー アイ. ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ウィリアム ベレンソン
(72)【発明者】
【氏名】ブルース フランク
(72)【発明者】
【氏名】マイケル エー. ウェイス
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハティヤー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー ドュベ
(72)【発明者】
【氏名】ジチャン チェン
【テーマコード(参考)】
4C066
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066FF01
4C066QQ61
4C066QQ93
4C076AA12
4C076BB16
4C076CC21
4C076CC30
4C076DD01
4C076DD41
4C076DD42
4C076DD43
4C076DD49
4C076DD55
4C076DD56
4C076DD57
4C076DD61
4C076EE36
4C076EE58
4C076FF34
4C076FF36
4C076FF41
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA19
4C084AA23
4C084DB34
4C084MA05
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA03
4C084NA11
4C084ZB112
4C084ZC351
4C084ZC412
4C084ZC751
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA13
4H045CA40
4H045DA37
4H045EA20
(57)【要約】
【課題】速効型インスリン製剤及び医薬送達システムを提供すること。
【解決手段】本発明は、速効型インスリン製剤、及び速効型インスリンアナログ製剤を提供する。本発明は、インスリン及びインスリンアナログ、ならびに他の活性薬剤の迅速吸収を可能にする送達機器、具体的には、注入セットをさらに提供する。糖尿病を有する対象の治療のための、インスリン製剤及びインスリンアナログ製剤、ならびにインスリン送達機器の使用方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2014年1月13日出願の米国仮特許出願第61/926,944号、及
び2014年1月13日出願の米国仮特許出願第61/926,946号の利益を主張し
、参照によって、それらの全体が本明細書にそれぞれ組み込まれる。
【0002】
連邦政府による支援を受けた研究または開発に関する記載
本発明の一部は、助成金番号1R43DK092041、1R43DK088506、
1R43DK094668、5R44DK088506、5R43DK094668、1
R43DK100186、1R43DK100190、2R44DK092041、1R
43DK103445、1R41DK081292、及び1R43DK089831の下
、National Institutes of Healthによって付与されたS
BIR助成金を受け、政府支援でなされた。米国政府は、本発明に対し、一定の権利を有
する。
【0003】
技術領域
本発明は、医薬製剤及び医薬送達システムに部分的に関係する。
【背景技術】
【0004】
背景
糖尿病は、異常な高血中グルコースレベルによって特徴づけられる代謝病のスペクトル
を示す。糖尿病には、主に二つの型が存在する。1型糖尿病は、身体におけるインスリン
生成不全に起因する。こうした患者にとっては、インスリン投与が、唯一の利用可能な治
療である。2型糖尿病は、インスリン抵抗性から典型的には始まり、インスリン抵抗性と
は、身体の細胞が、インスリンに応答しない状態である。病気が進行するにつれ、インス
リン生成の相対的または絶対的欠乏も発症する。2型糖尿病は、過剰体重及び運動不足と
関連することが多い。2型糖尿病の治療は、運動、及び食事管理、ならびにインスリンを
使用しない薬物療法から典型的には始まる。病気が悪化するにつれ、2型糖尿病を有する
患者の多くが、代謝維持のためにインスリン療法を最終的に必要とする。
【0005】
健常者では、インスリン分泌は、血中グルコースレベルと密接に連動する。食後などに
おけるグルコースレベルの増加は、グルコースが血液へ入ってから数分以内にインスリン
放出が迅速に増加することによって、補正される。空腹状態では、インスリンレベルは、
基礎レベルまで低下し、当該レベルは、インスリン感受性の臓器及び組織へのグルコース
の継続的な供給を保証するのに十分である。インスリン療法の目的は、糖尿病患者におい
て、インスリンのこの自然な時間作用プロファイルを再現し、血中グルコースレベルが健
常者に特有の正常範囲内にとどまり得るようにすることである。しかしながら、現在のイ
ンスリン製品及び送達システムは、インスリンまたはインスリンアナログの吸収に限界が
あるため、この目的を達成するには十分ではない。
【0006】
例えば、インスリンを、亜鉛を含まない緩衝剤において可溶化し、室温(25〜30℃
)で保存すると、当該インスリンは、7〜14日以内にアミロイド原線維を形成し始める
。この問題を回避するために、現在利用可能なインスリン製品は、亜鉛を使用して典型的
には製剤化されており、亜鉛は、亜鉛−インスリン6量体と呼ばれるインスリンとの複合
体を形成する。亜鉛−インスリン6量体は、溶液中において、室温で30日を超える期間
、安定に存在でき、これは、インスリン製剤の安定性に求められる規制上の要件に適合す
るのに十分な長さである。しかしながら、亜鉛−インスリン6量体は、毛細血管によって
迅速に吸収されるには、大きすぎるため、注射後、当該インスリンが吸収され得る前に、
6量体が、解離しなくてはならない。これは、こうした製剤が十分速やかに吸収されるこ
とを妨げる。
【0007】
したがって、インスリンの自然な時間作用プロファイルをよりよく再現するインスリン
組成物、製剤、及び送達システムが必要とされているが、満たされていないのが現状であ
る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、インスリンの自然な活性プロフィル(すなわち、糖尿病を有さないヒト対象
における膵臓の分泌に合うもの)をよりよく再現する速効型(rapid−acting
)のインスリン組成物、製剤、及び送達システムに部分的に関係する。本発明は、糖尿病
患者に、食事前または食事中に投与される食事インスリンに特に関係する。様々な態様で
は、本発明は、インスリン及びインスリンアナログの迅速吸収を提供するインスリン組成
物、製剤、送達システム、及び治療方法を提供する。いくつかの実施形態において、基礎
インスリン製剤と併用されるとき、または人工膵臓システムにおいて使用されるとき、本
発明は、グルコースレベルのより厳格な制御を提供する。
【0009】
他の態様では、本発明は、医薬製剤(限定はされないが、インスリンを含む)の吸収を
、エネルギー送達システムを介して増進する注入セットを提供する。
【0010】
様々な態様及び実施形態では、本発明は、投与後約40分未満のインスリン活性の発現
を提供し、いくつかの実施形態では、活性の発現は、投与後、約30分以内、または約2
0分以内、または約15分以内である。いくつかの実施形態では、インスリンは、投与後
約60分未満でTmaxに達し、いくつかの実施形態では、約40分未満でTmaxに達
する。さらなる実施形態では、本発明は、約5時間以下のインスリン活性の持続時間を提
供し、いくつかの実施形態では、約3時間以下、または約2時間以下である。
【0011】
1つの態様では、本発明は、単量体インスリンアナログの有効量、ならびに1つもしく
は複数のカルシウムイオンキレート剤、及び/または電荷遮蔽剤を含む医薬組成物を提供
する。様々な実施形態では、医薬組成物または医薬製剤は、実質的に亜鉛を含まない製剤
であり、それによって、インスリン6量体会合を回避する。本発明の医薬組成物は、原線
維形成を減少させるか、もしくは排除する、または共有結合性の2量体/多量体もしくは
関連物質などのような分解産物の形成を低減する1つもしくは複数の変異を有し得る単量
体インスリンアナログを含み、したがって、単量体または2量体状態におけるインスリン
の安定性を維持する。いくつかの実施形態では、インスリンは、天然もしくは非天然アミ
ノ酸変異を有する単鎖インスリンアナログまたはインスリンアナログである。本発明の様
々な態様で使用できる様々なインスリンアナログが、本明細書で詳細に説明される。様々
な実施形態では、単量体インスリンアナログは、約U10〜約U2000で製剤化される
。様々な実施形態では、インスリンアナログは、U100で、またはそれを超えて(例え
ば、約U200、約U300、約U400、約U500、約U1000、約U1500、
または約U2000)顕著な原線維形成無しに製剤化される。例えば、様々な実施形態で
は、医薬組成物は、25℃で、少なくとも約1ヶ月間、少なくとも約6ヶ月間、少なくと
も約9カ月間、または少なくとも約12カ月間、インスリン原線維を実質的に形成するこ
となく、安定である。
【0012】
本発明の医薬組成物は、1つまたは複数のカルシウムイオンキレート剤及び/または電
荷遮蔽剤を含む。いくつかの実施形態では、当該薬剤は、1つまたは複数のアミノ有機酸
、無機塩(例えば、Na、K、Mg等の陽イオンが含まれる)、ポリカルボン酸化合物、
陰イオン性多糖、有機硫黄化合物、ジカルボン酸またはトリカルボン酸、ペニシラミン、
ならびにクロレラ及び/またはシラントロの抽出物または部分抽出物を含む。様々な実施
形態では、理論に限定されることなく、当該薬剤は、皮下組織における電荷を遮蔽するこ
とで、インスリン及びインスリンアナログ上の荷電表面が、組織液または間質液中で、荷
電要素によって「捕捉される」ことからの回避が可能になると共に、吸収に向けた血管ま
たはリンパ管へのより迅速な移動が可能になる。いくつかの実施形態では、理論に限定さ
れることなく、皮下組織におけるカルシウムイオンのキレート化は、管内皮などにおいて
、接着結合及び密着結合(すなわち、細胞の細胞骨格に連結された細胞−細胞結合におけ
るタンパク質複合体)、及び細胞間の密着結合の他の型の解離を促進し、それによって、
インスリンの吸収速度を増加させる。本発明の組成物及び製剤は、無菌バイアル及び事前
充填された注射用のペンまたはカートリッジを含む溶液形態においてパッケージ化でき、
インスリンポンプを利用する注入セットと共に使用してよい。
【0013】
他の態様では、本発明は、注入セットを提供し、当該注入セットは、速効型インスリン
製剤及び他の医薬製剤、ならびに超音波振動子、触覚器、及び電気泳動電極などの1つま
たは複数のエネルギー送達システムと共に使用してよい。エネルギー送達システムは、皮
下のデポから脈管構造への活性薬剤の移動を促進することによって、または当該領域への
血液循環を増加させることによって、医薬製剤の吸収を増加させる。超音波振動子は、低
出力超音波(LITUS)振動子であってよく、触覚器は、低周波圧電触覚器であってよ
い。
【0014】
様々な実施形態では、注入セットは、第一本体、接着面、皮下注入カテーテル、ならび
に1つまたは複数の超音波振動子、触覚器、及び電気泳動電極を含む。電気泳動を利用す
るある実施形態では、注入セットは、注入カテーテルの遠位末端近位の第一電気泳動電極
(すなわち、陰極)、及び皮膚表面または皮膚表面付近の第二電気泳動電極(すなわち、
陽極)を含み、当該第二電気泳動電極は、注入セットの接着面に取り付けできる。このデ
ザインは、例えば、カテーテルの先端から皮下組織上部の管へのインスリンの移動(特に
負に荷電したインスリンアナログ)を促進するであろう。いくつかの実施形態では、イン
スリンアナログ(または他の活性薬剤)は、−2〜−6の範囲の正味電荷を有している。
いくつかの実施形態では、インスリン製剤は、6量体の解離の増加を示すか、または安定
な単量体インスリンアナログであり、6量体会合を回避する亜鉛を実質的に含まない製剤
において提供される。
【0015】
本発明の他の態様は、本発明の下記の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、皮膚の解剖図である。
図2図2は、皮膚の組織学的切片及びインスリン注射物の概算量を示す。
図3図3は、皮下に投与されたインスリンの吸収増加に向けた可能性のある方法を特定する特性要因図を示す。
図4図4は、Yorkshireブタにおける正常血糖クランプ試験から得たインスリン作用の発現速度を示す。この実施例では、インスリン作用の発現は、1/2最大力価までの時間として測定した。試験では、単量体インスリン(Fluorolog)を使用した。EDTA有り、及びEDTA無しで実施した試験が示されている。
図5図5は、Sinclairブタの剃毛された注射部位に適用したUltrOZ機器を示す。
図6図6は、単一のSinclairブタにおけるリスプロインスリン皮下注射の正常血糖クランプ試験の結果を示し、超音波に曝露した注射では、発現が速くなり、定常期が長くなり、そして力価(AUC)は本質的に同一であることが示された。
図7図7Aは、試作品である注入セットのヘッドの上面概略図を示す。図7Bは、超音波振動子(3)の可能な位置と共に示した試作品である注入セットのヘッドの側面概略図を示す。
図8図8A〜8Cは、電気泳動注入セットの概略図を示す。図8A及び8Bは、注入セットのヘッドから離れた接着パッチ上に設置された陽極(5)を有する構成の上面図及び側面図をそれぞれ示す。図8Cは、注入部位を覆って直接設置された陽極を有する構成を示す。
図9図9A及び図9Bは、環状皮膚表面電極の概略図の上面図及び側面図をそれぞれ示す。
図10】負に荷電したインスリンデポが起電力(EMF)下で、どのように真皮深部へ迅速に移動するかを示す。
図11図11A及び11Bは、インスリン及びインスリンの様々なアナログが、pH7、0.5mA/cm、15分間の条件下で、勾配アクリルアミドゲルにおいて移動することを示す。図11Aは、結果の表であり、図11Bに示すウェルに対するキーを含む。図11Bは、例示のアクリルアミドゲルの画像である。
図12図12A及び12Bは、組織におけるインスリンの移動を示すために使用されたFranz装置の図(12A)及びその装置の実際の実施状況(12B)を示す。
図13図13は、37℃で1時間、全層の皮膚層を通すEMF無し(0V)、及びEMF有り(10V)で、ブロモフェノールブルー(0.05%、pH7.3)処理した後のブタの皮膚を示す。EMF影響下で負に荷電したブロモフェノールブルーが組織に浸透した。
図14図14は、10VのEMF下で1時間電気泳動した後のブタ皮膚におけるCy5−インスリンの局在を示す。表皮は、左側である。
図15図15は、1時間の処理の間、皮下面(subcutaneous surface)をリスプロインスリンに曝露した2つの代表的な対照試料(電圧適用無し)及び2つの試験皮膚試料(10ボルト適用)を示す。皮膚試料はすべて同一の動物由来であり、左側が表皮、右側が皮下組織として配向されている。左列の画像は、H&Eで染色した皮膚の薄切片である。中央列は、Alexa594画像(右列)に対応する明視野(BF)画像を示す。電圧を適用しなかった組織では、Alexa594標識は、皮下面のみで確認可能(対照番号1)であるか、またはどの皮膚層においても検出不可能である(対照番号2)。比較により、試験試料1及び2から得られたAlexa594画像は、皮下組織の境界における集中(試験番号1)と共に、皮膚の全層を通じて蛍光標識を示しており、皮下面からより深い皮膚層へのインスリンの動きが検出可能であることを示している。
図16図16は、単量体インスリンアナログT−0339の皮下注射後の作用発現に対する様々な電荷遮断添加剤の効果を示す。
図17A図17A〜17Cは、3匹のブタを使用した試験において、単量体インスリンアナログT−0339(U500)を皮下注入した後の作用発現(Tmax 1/2早期)に対する様々な電荷遮断添加剤の効果を示す。n>1であれば、+SEMのエラーバーが表示されている。
図17B図17A〜17Cは、3匹のブタを使用した試験において、単量体インスリンアナログT−0339(U500)を皮下注入した後の作用発現(Tmax 1/2早期)に対する様々な電荷遮断添加剤の効果を示す。n>1であれば、+SEMのエラーバーが表示されている。
図17C図17A〜17Cは、3匹のブタを使用した試験において、単量体インスリンアナログT−0339(U500)を皮下注入した後の作用発現(Tmax 1/2早期)に対する様々な電荷遮断添加剤の効果を示す。n>1であれば、+SEMのエラーバーが表示されている。
図18A図18A〜18Cは、図17と同一のブタ試験のAUC1/2後期を示す。n>1であれば、+SEMのエラーバーが表示されている。
図18B図18A〜18Cは、図17と同一のブタ試験のAUC1/2後期を示す。n>1であれば、+SEMのエラーバーが表示されている。
図18C図18A〜18Cは、図17と同一のブタ試験のAUC1/2後期を示す。n>1であれば、+SEMのエラーバーが表示されている。
図19A図19A〜19Cは、図17と同一のブタ試験のTmax1/2後期を示す。n>1であれば、+SEMのエラーバーが表示されている。
図19B図19A〜19Cは、図17と同一のブタ試験のTmax1/2後期を示す。n>1であれば、+SEMのエラーバーが表示されている。
図19C図19A〜19Cは、図17と同一のブタ試験のTmax1/2後期を示す。n>1であれば、+SEMのエラーバーが表示されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
本発明は、速効型のインスリン製剤及びインスリンアナログ製剤を提供する。本発明は
、インスリン及び単量体インスリンアナログを含むインスリンアナログ(または他の医薬
製剤)の迅速な吸収を促進する送達機器、具体的には注入セットをさらに提供する。糖尿
病を有する対象を治療するための、インスリン製剤及びインスリンアナログ製剤、ならび
にインスリン送達機器の使用方法も提供される。
【0018】
インスリン療法は、糖尿病の治療に90年を超えて使用されてきた。典型的には、治療
は、毎日複数回のインスリン注射を伴う。従来の投与計画によれば、患者は、基礎インス
リンの必要量を満たすために毎日1回または2回の長期作用型インスリンのインスリン注
射で治療され、補足として、食事に関連したインスリン必要量を満たすため、即効型(f
ast−acting)インスリン製剤(または即効型インスリンアナログ製剤)の注射
が実施される。しかしながら、適切かつ時宜にかなった投与がなされたときでさえ、イン
スリン注射は、インスリンの自然な作用プロファイルを模倣しないことが多い。例えば、
利用可能な速効型インスリンアナログは、血液及び作用部位へ入る速度が遅すぎ、作用の
全体的な持続時間が長すぎる。このことは、食事の開始時において不適切なインスリンレ
ベルをもたらすと共に、食事と食事の間(及び特に食事の直後)では、過剰なインスリン
が存在する結果となる。次いで、このインスリン送達における遅れが、食事開始後早期の
高血糖、及び食事後の低血糖を引き起こす。
【0019】
インスリンは、皮下組織を介して典型的には送達される。皮下組織(「皮下組織(su
bcutis)」または「皮下(s.q.)」)は、表皮(厚さ約0.05〜1mm)及
び真皮(厚さ約0.3〜3mm)の下に位置し、線維性中隔によって分離された脂肪小葉
からなる。個々の小葉は、最大で3mmの厚さであり得、一次及び二次微小小葉(mic
rolobule)で構成される(図1)。皮下組織全体の厚みは、3〜20mmの間で
あり得る。皮下組織の上部(真皮との境界面近く)及び下部に管網が典型的には存在する
ものの、血液供給は、(特に真皮と比較した場合)相対的に乏しい。皮下組織中にはリン
パ管も存在する。
【0020】
皮下送達は、個別の注射用の注射針(典型的な長さは、3〜13mm)によって、また
は継続的な皮下インスリン注入(CSII)などのための注入カテーテル(典型的な長さ
は、6〜9mm)によって実施できる。後者は、インスリンポンプに接続された注入セッ
トに接続され、挿入機器を使用して典型的には設置される。両方の場合で、インスリンは
、皮膚表面から2〜11mmの間に存在する管腔の遠位末端から組織へ送達される。管腔
は、典型的には直径で0.2〜0.4mmの間である。CSIIでは、基礎インスリンは
、速効型インスリンの高頻度微小ボーラスとして送達される。しかしながら、すべての食
事時間インスリンアナログ製剤は、典型的には、20〜500μlの注射量で、ボーラス
として典型的には送達され、直径で約2.7〜8mmの領域を占める(図2)。
【0021】
注入セットは、表皮に接着する接着面を有する第一本体、(多くの場合、挿入機器を使
用して)表皮及び真皮を介して皮下組織へ挿入する注入カテーテル、ならびにカテーテル
と接触する液を継続的に供給するチューブを典型的には含む。注入セットは、1日に1回
または1日おきに1回典型的には設置される。注入セットは、何らかの液体医薬製剤の皮
下への送達に使用できる。
【0022】
インスリンボーラスは、初期には、管腔の末端近くに溜まり(デポを形成する)、それ
によって局所の脂肪小葉を置き換え、圧縮し、そして、局所中隔を引き伸ばす。その後、
当該インスリンは、毛細血管及び細静脈に到達するために中隔において基礎物質(bas
e substance)を介して拡散しなくてはならず、そこで、血管腔を介して血液
へ最終的に吸収される。血管は、陽性の液圧を有しており、吸収というより、漏出する可
能性が高いため、血管への吸収は困難である。インスリン6量体は、吸収されるには、大
きすぎるため、当該インスリンが吸収され得る前に、6量体インスリン製剤は、2量体ま
たは単量体へと解離しなくてはならない。
【0023】
インスリン作用の迅速性は、皮下組織からいかに速やかにそれが吸収されるかに大きく
依存する。血流におけるインスリンの活性形態は、単量体である。しかしながら、単量体
及び2量体の形態におけるタンパク質分子を優位に含むインスリン製剤(またはインスリ
ンアナログ製剤)は、凝集し、そして不活性な原線維を形成する傾向が強いことが通常で
ある。したがって、典型的な市販の100IU/mL(すなわち、U100)のインスリ
ン製剤は、分子会合体及びその構成要素である単量体単位を安定化する2個の亜鉛原子を
有する6量体からなる。亜鉛6量体の形態において調製されたインスリン製剤は、十分な
保存期間(例えば、30℃で30日)を有するが、その大きさから大部分が容易に吸収さ
れない。6量体が、血管を介して吸収されるためには、まずは解離しなくてはならない。
【0024】
この問題を解決する試みは、なされてきた。例えば、WO2007/121256及び
WO2010/102020は、6量体インスリンをEDTA及びクエン酸塩と投与前に
混合することを開示しており、これは、6量体から亜鉛をキレートしてインスリン上の電
荷を遮蔽することで6量体形成を阻止し、それによって、6量体を注射前に強制的に解離
させることが目的である。この手法は、インスリンの吸収を速めるかもしれないが、イン
スリン製剤もまた不安定化してしまうか、またはそれぞれの投与前に添加剤を6量体イン
スリンと混合する必要がある。そのような方法は、患者の利便性及びコンプライアンスの
観点から望ましくないだけでなく、そのような方法は、インスリンポンプシステム向けや
、継続的または自動化送達システムでの使用向けの候補にもなりにくい。
【0025】
しかしながら、単量体及び/または2量体インスリンアナログ製剤の場合でさえ、6量
体の解離は無関係であり、皮下注射後のインスリン作用は、(例えば、静脈注入によって
)血流に直接送達されたときのインスリン作用ほど速くはない。したがって、6量体の解
離は、皮下投与に際してインスリン吸収速度を制限する唯一の要因ではない。
【0026】
インスリン吸収モデルのほとんどが、事実上すべての皮下インスリン分子が毛細血管へ
と吸収されることを想定している。しかしながら、ヒツジにおける研究は、実際は、ほぼ
半分量のインスリンが、リンパ管を介して吸収されることを示唆している(Charma
n S,et al.,(2001)Pharmaceutical Research
,18(11):1620−1626参照)。リンパ系は、間質空間において過剰な体液
及び大きなタンパク質の再吸収が容易となるように設計されている。インスリン6量体、
及びインスリン2量体(毛細血管によって単量体よりもゆっくりと吸収され得る)は、リ
ンパの吸収へと偏って流れ込み得る。皮下の毛細血管を経由する血管までの直接的な経路
と比較して、リンパ系までの経路及びリンパ系を介する経路は、より長く、そして注射と
一般的な血液循環との間に存在する時間のずれは大きくなり得る。
【0027】
インスリン分子が、皮下のデポから血流へ吸収される際の速度に影響を与え得る様々な
要因を図3に示した。例えば、インスリン吸収は、血管近くのインスリン濃度の増加、ま
たは血管透過性の増加のいずれかによって血管による取り込みを増加させることで、増進
できる。あるいは、インスリン吸収は、細動脈透過性の増加、または血管拡張のいずれか
によって、間質液圧力に影響を与えることで増進できる。さらに、あるいは、デポの粘性
改変、インスリン結合部位の遮断、インスリン電荷の遮蔽、組織電荷の遮蔽、凝集体の脱
会合、及び/または周囲組織の基礎物質もしくはマトリックスの溶解もしくは分解などに
よって達成できる組織におけるインスリンの「粘着性」の低減などにより、流動に対する
抵抗を低減することによって、インスリンの吸収は増進できる。あるいは、流動に対する
抵抗の低減は、血栓、線維化、または細胞の残骸(例えば、免疫細胞の残骸)などの障害
物を除去することで、達成され得る。さらに他の実施形態では、インスリンの吸収速度は
、細胞の免疫応答の低減、及び/または細胞の免疫障害の低減によって増進される。皮下
空間において、そのような生物学的過程を弱めることもまた原位置での分解を低減し得、
その結果、注射されたインスリン製剤の生体利用率は、向上し得る。
【0028】
1つの態様では、本発明は、単量体インスリンアナログの有効量、及び1つまたは複数
のカルシウムイオンキレート剤または電荷遮蔽剤を含む医薬組成物を提供する。理論に拘
束されることなく、皮下組織における電荷の遮蔽は、単量体インスリンの皮下組織を介し
た血管までの移動を増進し、特に、単量体インスリンが表面に露出している荷電領域を有
していれば、増進される。さらに、理論に限定されることなく、陽イオン(例えば、Ca
2+)をキレートすることにより、管内皮などにおいて、接着結合または密着結合の一時
的な局所解離を促進することで、インスリンの吸収は改善できる。
【0029】
天然ヒトインスリンは、21残基を含むA鎖、及び30残基を含むB鎖の2つの鎖を含む
。インスリンは、膵臓のβ細胞にZn2+で安定化された6量体として通常は貯蔵されて
いるが、血流では、Zn2+を含まない単量体として機能する。しかしながら、単量体は
、原線維形成及び化学的分解に対して最も影響を受けやすく、したがって、インスリンは
、亜鉛と共にその6量体状態で一般的には製剤化されるが、6量体の解離を促進する変異
及び/または製剤成分と共に製剤化されることが多い。しかしながら、こうしたインスリ
ンアナログ(例えば、インスリンリスプロ)でさえ、6量体の解離の遅延を幾分か示し、
したがって、作用発現における相当の遅延、及び持続時間における「長期化(tail)
」を示す。
【0030】
様々な実施形態では、医薬組成物は、単量体インスリンアナログを含む。本明細書では
、「単量体インスリンアナログ」は、実質的に亜鉛無し(例えば、インスリンのモル当た
り亜鉛が約0.05モル未満)で製剤化されるとき、25℃で少なくとも30日間安定な
インスリンを意味し、したがって、亜鉛−6量体形態とは対照的に、溶液において、単量
体または2量体の形態が優位に存在する。例えば、単量体インスリンアナログは、100
IU/mL(例えば、約U100)またはそれを超える濃度(例えば、約U200、約U
300、約U400、約U500、約U1000、約U1500、または約U2000)
などの高濃度で、顕著な原線維形成または化学的分解無しに製剤化できる。様々な実施形
態では、単量体インスリンは、医薬組成物において、25℃で、少なくとも約1ヶ月間、
または少なくとも約2ヶ月間、または少なくとも約3ヶ月間、または少なくとも約4ヶ月
間、または少なくとも約5ヶ月間、または少なくとも約6ヶ月間、または少なくとも約9
ヶ月間、または少なくとも約12ヶ月間、実質的にインスリン原線維を形成することなく
、安定である。
【0031】
本明細書では、「約」という用語は、関連する数値の+または−10%を意味する。
【0032】
したがって、さまざまな実施形態では、本発明は、他の共有結合性の2量体/多量体も
しくは関連物質への、原線維形成の低減もしくは排除、及び/または化学的な分解の減弱
化をする1つまたは複数の変異を有する単量体インスリンアナログの使用も企図する。変
異は、(独立に)天然または非天然(例えば、遺伝的にコードされていない)アミノ酸の
置換、挿入、また欠失であってもよい。変異は、存在するインスリンまたはインスリンア
ナログ、特に既知の速効型インスリン製品のいずれかの構造または配列へ導入できること
が企図される。例えば、リスプロ(KP)インスリン(Humalog(登録商標)の名
称で販売)、アスパルトインスリン(Novalog(登録商標)の名称で販売)、グル
リジンインスリン(Apidra(登録商標)の名称で販売)などのインスリンアナログ
、または天然インスリン(例えば、天然ヒトインスリン)を含む他の速効型インスリンも
しくは食事インスリンへ変異を導入できる。
【0033】
ある実施形態では、変異は、保存アミノ酸置換、及び/または非保存アミノ酸置換など
のアミノ酸置換を含む。「保存的置換(Conservative substitut
ion)」は、類似の側鎖を有するアミノ酸の群内でなされる置換を含み、類似の側鎖を
有するアミノ酸の群は、例えば、中性及び疎水性アミノ酸であるグリシン(Glyまたは
G)、アラニン(AlaまたはA)、バリン(ValまたはV)、ロイシン(Leuまた
はL)、イソロイシン(IleまたはI)、プロリン(ProまたはP)、トリプトファ
ン(TrpまたはW)、フェニルアラニン(PheまたはF)及びメチオニン(Metま
たはM)、ならびに天然の極性アミノ酸であるセリン(SerまたはS)、スレオニン(
ThrまたはT)、チロシン(TyrまたはY)、システイン(CysまたはC)、グル
タミン(GluまたはQ)、及びアスパラギン(AsnまたはN)、ならびに塩基性アミ
ノ酸であるリジン(LysまたはK)、アルギニン(ArgまたはR)及びヒスチジン(
HisまたはH)、ならびに酸性アミノ酸であるアスパラギン酸(AspまたはD)及び
グルタミン酸(GluまたはE)である。さらに、標準アミノ酸が、同一の化学クラスに
属するものなどの非標準アミノ酸によって置換されてもよい。非限定例として、塩基性側
鎖を有するリジンが、より短い側鎖長の塩基性アミノ酸(オルニチン、ジアミノ酪酸、ま
たはジアミノプロピオン酸)によって置き換えられてよい。リジンは、中性の脂肪族イソ
スターであるノルロイシン(Nle)によって置き換えられてもよく、次いでより短い脂
肪酸側鎖を含むアナログ(アミノ酪酸またはアミノプロピオン酸)によって置換されてよ
い。いくつかの実施形態では、インスリンアナログは、インスリンリスプロ、インスリン
アスパルト、またはFluorolog(Asp B10、オルト−モノフルオロフェニ
ルアラニン−B24、リスプロインスリン)の配列に関して、1〜5個の変異を有する。
いくつかの実施形態では、こうした変異は、1、2、または3個以下の非保存的変異また
は非標準変異を有する保存的変異である。
【0034】
様々な実施形態では、単量体インスリンアナログは、天然ヒトインスリンのB24、B
25、またはB26に対応する位置における変異を有するB鎖ポリペプチドを含む。例え
ば、単量体インスリンアナログは、位置B24、B25、またはB26にハロゲン化フェ
ニルアラニン置換を含むB鎖ポリペプチドを含んでよい。1つの実施形態では、ハロゲン
化フェニルアラニンは、位置B24に位置する。ハロゲンは、例えば、フッ素、塩素、ま
たは臭素であってよい。1つの実施形態では、B24におけるハロゲン化フェニルアラニ
ンは、塩素化フェニルアラニンまたはフッ素化フェニルアラニンである。別の実施形態で
は、ハロゲン化フェニルアラニンは、オルト−モノフルオロ−フェニルアラニン(2−フ
ルオロ−フェニルアラニン)、オルト−モノブロモ−フェニルアラニン(2−ブロモ−フ
ェニルアラニン)、オルト−モノクロロ−フェニルアラニン(2−クロロ−フェニルアラ
ニン)、パラ−モノフルオロ−フェニルアラニン(4−フルオロ−フェニルアラニン)、
パラ−モノクロロ−フェニルアラニン(4−クロロ−フェニルアラニン)、パラ−モノブ
ロモ−フェニルアラニン(4−ブロモ−フェニルアラニン)、またはペンタ−フルオロ−
フェニルアラニンである。1つの実施形態では、単量体インスリンアナログは、位置B2
4に2−フルオロフェニルアラニンを有する。別の実施形態では、単量体インスリンアナ
ログは、位置B24にペンタ−フルオロ−フェニルアラニンを有する。こうしたハロゲン
化インスリンアナログは、例えば、米国特許出願公開第2011/0166064号及び
2014/0128319号において説明されており、それらの内容全体が参照によって
本明細書に組み込まれる。
【0035】
いくつかの実施形態では、単量体インスリンアナログは、位置B24に非標準アミノ酸
置換を含んでもよい。非標準アミノ酸は、芳香族性を欠いてよい。1つの実施例では、位
置B24における非標準アミノ酸は、非平面脂肪族環系を含むシクロヘキサニルアラニン
(cyclohexanylalanine)であってよい。非芳香族環系における平面
性の消失は、その局所的な輪郭における変化、及びフェニルアラニンと比較して側鎖体積
が増加することと関連しており、6量体の解離を促進し得る。
【0036】
他の実施形態では、単量体インスリンアナログは、位置B29に非標準アミノ酸置換を
含んでよい。1つの実施例では、B29における非標準アミノ酸は、ノルロイシン(Nl
e)である。別の実施例では、B29における非標準アミノ酸は、オルニチン(Orn)
である。そのような非標準アミノ酸を含むインスリンアナログは、例えば、米国特許公開
第2014/0303076号において説明されており、その内容全体が参照によって本
明細書に組み込まれる。
【0037】
単量体インスリンアナログは、他の改変を含んでよい。様々な実施形態では、インスリ
ンアナログは、天然ヒトインスリンの下記の位置に対応する位置において1つまたは複数
の変異を含んでよい。A鎖のA3、A8、A10、A12、A13、A14、A17、及
びA21、ならびにB鎖のB2、B3、B4、B10、B13、B17、B28、及びB
29。
【0038】
いくつかの実施形態では、単量体インスリンアナログは、B鎖のアミノ酸28(B28
)におけるプロリン(ProもしくはP)のアスパラギン酸(AspもしくはD)または
リジン(LysもしくはK)による置換、あるいはB鎖のアミノ酸29(B29)におけ
るリジンのプロリンによる置換、あるいはそれらの組み合わせを含む。別の実施例では、
単量体インスリンアナログは、B鎖のアミノ酸3(B3)におけるアスパラギンのリジン
による置換、またはB鎖のアミノ酸29(B29)におけるリジンのグルタミン酸による
置換、またはそれらの組み合わせを含み得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、単量体インスリンアナログは、1つまたは複数の下記の改変
を含む。A3に対応する位置におけるリジン、アルギニン及びロイシン、A8に対応する
位置におけるグルタミン酸、ヒスチジン、アルギニン、リジン、及びグルタミン、A10
に対応する位置におけるシステイン、グルタミン酸、またはアスパラギン酸、A12に対
応する位置におけるアスパラギン酸またはスレオニン、A13に対応する位置におけるト
リプトファン、チロシン、ヒスチジン、グルタミン酸、アラニン、またはフェニルアラニ
ン、A14に対応する位置におけるヒスチジンまたはグルタミン酸、A17に対応する位
置におけるトリプトファン、チロシン、アラニン、ヒスチジン、グルタミン酸、グルタミ
ン、フェニルアラニン、またはアスパラギン、A21に対応する位置におけるグリシン、
B2に対応する位置におけるシステイン、B3に対応する位置におけるリジン、B4に対
応する位置におけるシステイン、B10に対応する位置におけるアスパラギン酸、B13
に対応する位置におけるトリプトファン、チロシン、アラニン、ヒスチジン、グルタミン
酸、フェニルアラニン、アスパラギン、またはグルタミン、B17に対応する位置におけ
るトリプトファン、チロシン、ヒスチジン、またはグルタミン、B24に対応する位置に
おけるトリプトファン、チロシン、ヒスチジン、グルタミン、アスパラギン酸、スレオニ
ン、アラニン、フェニルアラニン、(上で説明した)ハロゲン化フェニルアラニン、また
はシクロヘキサニルアラニン、ならびに位置B29におけるグルタミン酸。いくつかの実
施形態では、単量体インスリンアナログは、A10に対応する位置においてアスパラギン
酸、及びB24に対応する位置においてオルト−モノフルオロ−フェニルアラニンを含む
。例示のアナログは、例えば、米国特許公開第2014/0323398号において説明
されており、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0040】
様々な実施形態では、単量体インスリンアナログは、1つまたは複数のアミノ酸の欠失
を含んでよい。1つの実施形態では、単量体インスリンアナログは、位置B1〜B3に対
応するアミノ酸の欠失を含んでよく、例えば、国際特許公開第WO2014/11675
3号において説明されるとおりであり、その内容全体が参照によって本明細書に組み込ま
れる。いくつかの実施形態では、単量体インスリンアナログは、A8、B24、B28、
及び/または/B29における1つまたは複数の追加の置換に加えて、アミノ酸B1〜B
3を欠いたB鎖を含んでよい。1つの実施形態では、単量体インスリンアナログは、アミ
ノ酸B1〜B3を欠いたB鎖、及びB29においてオルニチンまたはグルタミン酸を含む
【0041】
様々な実施形態では、単量体インスリンアナログは、1つまたは複数のアミノ酸の挿入を含んでよい。1つの実施形態では、挿入はC末端に位置する。例えば、単量体インスリンアナログは、B鎖のカルボキシル末端に少なくとも2つのアミノ酸の付加を含んでよい。1つの実施形態では、B鎖は、位置B31におけるグルタミン酸またはアスパラギン酸の挿入、ならびに位置B32におけるグルタミン酸、アラニン、及びアスパラギン酸から選択される追加の挿入を含む。そのようなインスリンアナログは、例えば、米国特許第8,399,407号において説明されており、その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる。様々な実施形態では、単量体インスリンアナログは、C末端においてアミノ酸配列Lys−Pro−Ile−Glu−Glu(KPIEE;配列番号1)、Glu−Pro−Ile−Glu−Glu(EPIEE;配列番号2)、Pro−Orn−Thr−Glu−Glu(POTEE;配列番号3)、またはPro−Orn−Thr−Orn(POTO;配列番号4)を有するB鎖を有する。そのような残基は、残基B28〜B32、B28〜32、B28〜B32、及びB28〜B31をそれぞれ含み、残基B31〜B32は、B鎖のC末端延長である。
【0042】
いくつかの実施形態では、単量体インスリンアナログは、リンカーによって結合されたインスリンA鎖、及びインスリンB鎖を有する単鎖インスリンであって、例えば、米国特許第8,192,957号及び8,501,440において説明されるとおりであり、その内容全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。リンカーの長さは、15個のアミノ酸であってよい。例えば、リンカーの長さは、4、5、6、7、8、9、または10個のアミノ酸などの4〜12個のアミノ酸であってよい。1つの実施形態では、リンカーは配列GPRR(配列番号5)を含んでよい。様々な実施形態では、リンカーは、配列GGGPRR(配列番号6)、GGPRR(配列番号7)、GSEQRR(配列番号8)、RREQKR(配列番号9)、RREALQKR(配列番号10)、GAGPRR(配列番号11)、GGGPGKR(配列番号12)、EEGSRRSR(配列番号13)、EEGPRR(配列番号14)、GEGPRR(配列番号15)、AEGSRRSR(配列番号16)、ASGSRRSR(配列番号17)、EEGSRRD(配列番号18)、またはEEGSRRK(配列番号19)を含んでよい。
【0043】
1つの態様では、本発明は、カルシウムイオンキレート剤、及び/または電荷遮蔽剤を
含む単量体インスリン製剤を提供する。理論に拘束されることなく、そのような薬剤は、
インスリンもしくは周囲組織の電荷を遮蔽でき、ならびに/または接着結合及び/もしく
は密着結合の解離を誘導でき、迅速なインスリン吸収を促進する。亜鉛が存在していなく
ても迅速な吸収は観察されるため、この効果は、亜鉛のキレート(及びそれによる6量体
の解離)とは無関係である。理論に拘束されることなく、カルシウムイオンキレート剤は
、血管周辺の間質性カルシウムイオンレベルを低減し、それによって管内皮細胞間の接着
結合及び密着結合の解離を促進して、透過性を増進すると考えられる。あるいは、または
さらに、理論に拘束されることなく、薬剤は、インスリンデポ周囲の組織の電荷、及び/
またはインスリン分子自体の電荷を遮蔽し得、それによって、荷電単量体インスリン分子
が、皮下組織に静電的に拘束されるようになる度合を軽減し、当該単量体インスリン分子
の管までの動きと、管への吸収とを遅延または阻止する。
【0044】
1つの実施形態では、薬剤は、1つまたは複数のポリカルボン酸化合物を含む。例示の
薬剤には、限定はされないが、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコー
ル四酢酸(EGTA)、及びシクロヘキサンジアミノ四酢酸(CDTA)が含まれる。別
の実施形態では、薬剤は、1つまたは複数の陰イオン性多糖を含む。例えば、薬剤は、ア
ルギン酸を含んでよい。別の実施形態では、薬剤は1つまたは複数の有機硫黄化合物を含
む。例えば、薬剤は、1つまたは複数のアルファリポ酸、ジメルカプトコハク酸(DMS
A)、ジメルカプロール、及びジメルカプトプロパンスルホン酸塩(DMPS)を含んで
よい。さらなる実施形態では、薬剤は、1つまたは複数のジカルボン酸またはトリカルボ
ン酸を含む。こうした薬剤は、クエン酸またはシュウ酸などを含む。さらなる実施形態で
は、薬剤は、1つまたは複数の安息香酸塩を含んでよい。薬剤は、1つまたは複数のナト
リウム陽イオン、カリウム陽イオン、及びマグネシウム陽イオンを含む塩などの塩として
、製剤へ組み込まれてよい。別の実施形態では、薬剤は、1つまたは複数のペニシラミン
、ならびにクロレラ及び/またはシラントロの抽出物または部分抽出物を含む。
【0045】
いくつかの実施形態では、カルシウムイオンキレート剤、及び/または電荷遮蔽剤は、
EDTA及び/またはEGTAである。ある実施形態では、EDTA及び/またはEGT
Aは、約1〜50mMの範囲内で組成物中に存在し、例えば、いくつかの実施形態では、
5〜25mMの範囲内で存在する。例えば、組成物または製剤は、約2mMのEDTA、
約5mMのEDTA、約10mMのEDTA、約15mMのEDTA、約20mMのED
TA、または約25mMのEDTAを含んでよい。いくつかの実施形態では、組成物また
は製剤は、約2mMのEGTA、または約5mMのEGTA、または約10mMのEGT
A、または約15mMのEGTA、または約20mMのEGTA、または約25mMのE
GTAを含んでよい。
【0046】
いくつかの実施形態では、カルシウムイオンキレート剤、及び/または電荷遮蔽剤は、
クエン酸塩または安息香酸塩(例えば、クエン酸ナトリウムまたは安息香酸ナトリウム)
である。様々な実施形態では、クエン酸塩または安息香酸塩は、製剤に、約1mM〜約2
5mMで存在し、例えば、約5mM〜約20mM、または約5mM〜約15mM、または
約5mM〜約10mMで存在する。
【0047】
いくつかの実施形態では、製剤は、約3〜約6のpKaを有する1つまたは複数の有機
酸を含む。様々な実施形態では、酸は、生理学的pHにおいてプロトン型が優位ではなく
、その結果、薬剤は、正味の負電荷を有し、皮下における正電荷を遮蔽する能力を有する
。そのような有機酸は、約1mM〜約25mMで製剤に存在してよく、例えば、約5mM
〜約20mM、または約5mM〜約15mM、または約5mM〜約10mMで存在してよ
い。
【0048】
いくつかの実施形態では、医薬製剤は、インスリンデポ周囲の皮下組織における正電荷
の遮蔽に十分な1つまたは複数の塩、及び/または酸を含む。例えば、製剤は、0.9%
のNaClによって付与されるのと同等以上か、または120mMのNaClによって付
与されるのと同等以上のイオン強度を有してよい。例えば、製剤は、150mMのNaC
l、または180mMのNaCl、または200mMのNaCl、または250mMのN
aClによって付与されるのと同等以上のイオン強度を有してよい。
【0049】
いくつかの実施形態では、製剤はヒトC−ペプチドを含む。ヒトC−ペプチドは、
中性pHにおいて−3の正味電荷を有する。いくつかの実施形態では、C−ペプチドは、
インスリンに対して(モルで)、約5:1〜約1:5で存在する。いくつかの実施形態で
は、ヒトC−ペプチドは、インスリンに対して約2:1〜約1:2で存在するか、または
インスリンに対して約等モル存在する。
【0050】
さらに他の実施形態では、医薬製剤は、細胞、細胞内構造、または間質液の負または正
に荷電した領域に、静電的、または非静電的に結合する(したがって、インスリンが結合
しないように遮蔽する)ために十分な、正または負のいずれかの、露出表面電荷(例えば
、利用可能な電荷)を有する1つまたは複数の分子を含む。
【0051】
本発明の医薬組成物は、望ましい使用及び投与経路に適する何らかの適した形態へと製
剤化できる。例えば、医薬組成物は、溶液形態、懸濁液形態、エマルジョン形態、ドロッ
プ形態、錠剤形態、丸剤形態、ペレット形態、カプセル形態、粉末形態、エアロゾル形態
、スプレー形態、またはインスリン投与、及び望ましい吸収改善に適した何らかの他の形
態をとることができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、皮下投与に向けて製剤化され、水溶性製剤と
して製剤化されてよい。しかしながら、本発明の製剤は、非経口、皮内、筋肉内、鼻腔内
、舌下、肺内、及び経口投与に限らず、様々な投与経路に適用できる。1つの実施形態で
は、医薬組成物は、皮下投与に向けて製剤化され、本明細書で説明される注入機器などの
注入機器を使用した送達に向けて製剤化される。あるいは、製剤は、事前充填されたイン
スリンポンプまたは事前充填された注射用のペン、及び/または皮下投与のための単回も
しくは反復用量バイアルもしくはカートリッジにおいて提供される。例えば、製剤は、1
〜20,000ボーラス用量、または1〜約10,000ボーラス用量、または1〜5,
000ボーラス用量、または1〜約1000ボーラス用量、または1〜約100ボーラス
用量、または1〜約50ボーラス用量、または1〜約25ボーラス用量を含むバイアルに
おいて提供されてよい。いくつかの実施形態では、バイアルまたはカートリッジは、患者
が毎日、毎週、または毎月必要とするインスリンを供給するために十分である。バイアル
は、例えば、全量で約3ml〜約50ml用量を含んでよく、例えば、全量で約3ml〜
約10ml用量を含んでよい。
【0053】
様々な実施形態では、本明細書で説明される医薬組成物は、1つまたは複数の医薬的に
許容可能な添加剤または担体をさらに含み、その選択は、投与の望ましい経路に依存する
であろう。さらに、特定の添加剤は、製剤において2つ以上の機能を有してよい。以下の
表1は、例示の添加剤及び製剤におけるそれらの例示機能の一覧を示す。
【表1】
【0054】
様々な実施形態では、医薬組成物は、1つまたは複数の医薬的に許容可能な緩衝剤、安
定化剤、界面活性剤、可溶化剤、電荷遮蔽剤、抗凝集剤、拡散増進剤、吸収増進剤、及び
保存剤を含む。こうした薬剤は、組み合わせて使用でき、相乗的に機能することで、例え
ば、インスリン吸収の増進、インスリン薬物動態の迅速化促進、及びインスリン安定性の
増加をもたらす。
【0055】
ある実施形態では、医薬組成物は、製剤の等張性を維持または調節する1つまたは複数
の薬剤を含んでよい。そのような薬剤には、限定はされないが、グリセロール、マンニト
ール、ソルビトール、ラクトース、デキストロース、トレハロース、塩化ナトリウム、及
びプロピレングリコールが含まれる(例えば、米国特許公開第2012/0225810
号参照。その内容全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。様々な実施形態では、
製剤は、高張または低張であってよい。例えば、医薬組成物は、製剤が高張になるようデ
ザインされた1つまたは複数の薬剤を含んでよい。例示の薬剤には、グリセリン、デキス
トロース、マンニトール、NaCl、及びKClなどの、製剤中で可溶であり、細胞の原
形質膜を自由に透過できない何らかの薬剤が含まれる。
【0056】
ある実施形態では、医薬組成物は、製剤を特定のpHに維持するための1つまたは複数
の緩衝剤を含んでよい。例示の緩衝剤には、限定はされないが、リン酸ナトリウム、アル
ギニン、トリス(2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール)、グ
リシルグリシン、L−ヒスチジン、HEPES、ビシン、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウ
ム、クエン酸塩、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、ビシン、トリシン
、リンゴ酸、コハク酸塩、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸、エチレンジアミン、また
はそれらの混合物が含まれる。例えば、米国特許第6,906,028号及び米国特許公
開第2012/0225810号参照。それらの内容全体が参照によって本明細書に組み
込まれる。
【0057】
ある実施形態では、医薬組成物は、インスリン製剤を安定化させるための1つまたは複
数の安定化剤を含んでよい。例示の安定化剤には、限定はされないが、亜鉛(例えば、製
剤において、インスリンに対してモル比0.05未満)、フェノール、m−クレゾール、
安息香酸塩、トリス、非還元性炭水化物(例えば、マンニトールまたはデキストラン)、
界面活性剤(例えば、TWEENなどのポリソルベート、胆汁酸塩、脂肪酸またはリン脂
質の塩、多価アルコール、グリセロールまたはソルビトール、及びスクロースの部分エス
テル及び脂肪酸エステル及びエーテル、ならびにポリオール、SPANポリソルベート、
MYRJ、BRIJ、TRITON、及びCREMOPHORなどの多価アルコールの部
分エステル及び脂肪酸エステル及びエーテル、ポリオキシエチレンエーテル、ならびにポ
リエチレングリコールエーテル)、アミノ酸(例えば、L−アルギニン、L−グルタミン
酸、L−ヒスチジン、またはL−メチオニン)、アルキル糖(例えば、ドデシル−β−D
−マルトシド、トリデシルマルトシド、テトラデシルマルトシド、スクロースモノドデカ
ノエート、スクロースモノトリデカノエート、スクロースモノテトラデカノエート)、A
−L−S−L−A化合物、クロム塩、アセトン、メチルエチルケトン、プロピルメチルケ
トン、イソプロピルメチルケトン、ピルビン酸、グリオキシル酸、アルファ−ケト酪酸、
アルファ−ケトグルタル酸、アセト酢酸、ピリドキサール、及びピリドキサールピロリン
酸が、単独または組み合わせで含まれる。
【0058】
ある実施形態では、医薬組成物は、製剤内でのインスリンまたはインスリンアナログの
沈降を回避し、インスリンまたはインスリンアナログの溶解性を増進するための1つまた
は複数の可溶化剤を含んでよい。例示の可溶化剤には、限定はされないが、L−アルギニ
ン、L−アルギニンアナログまたはアルギニンを含むジペプチド及びトリペプチド、グア
ニジン、マグネシウム、アルコール、有機酸のアルコールエステル、窒素含有溶媒、リン
脂質、酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、コハク酸、フ
マル酸、マレイン酸、アジピン酸、アグマチン、4−グアニジノ安息香酸、グアニド酢酸
、グアニジノコハク酸、ならびにコ−ポリアミノ酸(co−polyamino aci
d)が、単独または組み合わせで含まれる。
【0059】
ある実施形態では、医薬組成物は、溶液におけるインスリン凝集を回避するための1つ
または複数の抗凝集剤を含んでよい。例示の抗凝集剤には、限定はされないが、アルギニ
ン、ポリソルベート20、ヒスチジン、プロリンまたはプロリン誘導体、スルホブチルエ
ーテル−β−シクロデキストリン、トリペプチドHTD、アルギニウムイオンまたはリジ
ン、及びプロピレングリコール、クエン酸、及びニコチンアミドが含まれる。
【0060】
ある実施形態では、医薬組成物は、膜を介するインスリンまたはインスリンアナログの
透過及び拡散を容易にするための1つまたは複数の膜透過剤を含んでもよい。例示の膜透
過剤には、限定はされないが、酢酸、アスコルビン酸、クエン酸、グルタミン酸、アスパ
ラギン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、及びアジピン酸が、単独または組み合わせ
で含まれる。
【0061】
ある実施形態では、医薬組成物は、様々なメカニズムのいずれかによってインスリンま
たはインスリンアナログの吸収を容易にするための1つまたは複数の吸収増進剤を含んで
よい。例示の吸収増進剤には、限定はされないが、界面活性剤(例えば、胆汁酸塩、脂肪
酸またはリン脂質の塩)、ニコチン剤(nicotinic agent)(例えば、ニ
コチンアミド、ニコチン酸、ナイアシン、ナイアシンアミド、ビタミンB3、及びそれら
のいずれかの塩)、膵臓トリプシン阻害剤、マグネシウム塩、ポリ不飽和脂肪酸、ジデカ
ノイルホスファチジルコリン、アミノポリカルボン酸塩、トルメチン、カプロン酸ナトリ
ウム、サリチル酸、オレイン酸、リノール酸、EPA、DHA、ベンジル酸、NOドナー
(例えば、3−(2−ヒドロキシ−1−(1−メチルエチル)−2−ニトロソヒドラジノ
)−1−プロパンアミン、N−エチル−2−(1−エチル−ヒドロキシ−2−1−ニトロ
ソヒドラジノ)−エタンアミン、またはS−ニトロソ−N−アセチルペニシラミン)、胆
汁酸、胆汁酸のグリシン結合形態、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸カリウム
、サリチル酸ナトリウム、5サリチル酸カリウム(potassium 5 salic
ylate)、アセチルサリチル酸、サリチルサリチル酸(salicylosalic
ylic acid)、アセチルサリチル酸アルミニウム、サリチル酸コリン、サリチル
アミド、アセチルサリチル酸リジン、エキサラミド、ジフルニサル、及びエテンザミドが
、単独または組み合わせで含まれる。
【0062】
ある実施形態では、医薬組成物は、基礎物質拡散増進剤などの1つまたは複数の拡散増
進剤を含んでよい。例示の拡散増進剤には、限定はされないが、グリコサミノグリカナー
ゼ(例えば、ヒアルロニダーゼ)が含まれる。
【0063】
ある実施形態では、医薬組成物は、微生物の成長を防止するための1つまたは複数の保
存剤を含んでよい。例示の保存剤には、限定はされないが、フェノール、メタ−クレゾー
ル、メチルパラベン、及び安息香酸ナトリウムが含まれる。
【0064】
様々な実施形態では、医薬組成物は、1つまたは複数の血管拡張剤、抗炎症剤、抗血栓
剤、抗分解剤、インスリン結合アンタゴニスト(insulin−binding an
tagonist)、抗線維化剤、抗酸化剤、抗増殖剤、神経鎮静剤、及び抗生物質を含
んでよい。こうした薬剤は、本明細書で説明されるいずれかの他の添加剤及び薬剤と組み
合わせて使用でき、相乗的に機能し得ることで、例えば、インスリン吸収の増進、インス
リン薬物動態の迅速化促進、及びインスリンまたはインスリンアナログの安定性の増加に
つながる。
【0065】
例えば、医薬組成物は、1つの領域における液体流動を増加させる1つまたは複数の血
管拡張剤を含んでよい。例示の血管拡張剤には、限定はされないが、一酸化窒素(NO)
ドナー(例えば、ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、一硝酸イソソルビド、硝酸ア
ミル、エリスリチル、四硝酸、及びニトロプルシド)、ヒスタミン、2−メチルヒスタミ
ン、2−(2−ピリジル)エチルアミン、2−(2−チアゾリル)エチルアミン、4−メ
チルヒスタミン、パパベリン、ミノキシジル、ジピリダモール、ヒドララジン、アデノシ
ン、GPLC及びL−カルニチンの他の形態、アルギニン、プロスタグランジンD2、ア
デノシン三リン酸、ウリジン三リン酸、カリウム塩、ならびにある状況では、α1及びα
2受容体アンタゴニスト(例えば、プラゾシン、フェノキシベンザミン、フェントラミン
、ジベナミン、及びトラゾリン)、ベタゾール、ジマプリット、β2受容体アゴニスト(
例えば、イソプロテレノール、ドブタミン、アルブテロール、テルブタリン、アミノフィ
リン、テオフィリン、カフェイン、ならびにカルシウムチャネル遮断剤(例えば、アムロ
ジピン、アラニジピン、アゼルニジピン、バルニジピン、ベニジピン、シルニジピン、ク
レビジピン、イスラジピン、エホニジピン、フェロジピン、ラシジピン、レルカニジピン
、マニジピン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニソルジピン
、ニトレンジピン、プラニジピン)が、単独または組み合わせで含まれる。
【0066】
医薬組成物は、1つまたは複数の抗炎症剤を含んでよい。理論に拘束されることなく、
抗炎症剤は、細胞の免疫応答を低減し、結果的に酸化酵素、ある特定の血管収縮酵素、サ
イトカイン、及び注入部位付近のインスリン分解プロテアーゼの生成、細胞残骸の蓄積、
ならびに注入カテーテル周辺の結合組織性被膜の形成を限定すると考えられる。抗炎症剤
は、eNOS及びnNOSの下方制御も限定でき、それにより局所的血管拡張を伴う生体
利用可能なNOの維持を容易にする。例示の血管拡張剤には、限定はされないが、チオ炭
酸塩アナログまたはクリプトレピンアナログ、免疫抑制剤(例えば、シクロスポリン、タ
クロリムス、及びシロリムス/ラパマイシン)、トラドール(toradol)、クロモ
グリク酸ナトリウム、コルチゾール、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、デキサメタ
ゾン、アセチルシステイン、サリチル酸(例えば、アセチルサリチル酸、ジフルニサル、
サルサラート、コリンマグネシウムトリサリチル酸、サリチル酸ナトリウム、サリチル酸
マグネシウム、トロラミンサリチル酸、サリチル酸メチル)、プロピオン酸誘導体(例え
ば、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプ
ロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフ
ェン)、酢酸誘導体(例えば、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、
ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン)、エノール酸誘導体(例
えば、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イ
ソキシカム)、フェナム酸誘導体(例えば、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェ
ナム酸、トルフェナム酸)、COX−2阻害剤(例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ
、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ)
、スルホンアニリド(例えば、ニメスリド)、リコフェロン、H−ハルパギド、クロニキ
シン酸リジン(Lysine clonixinate)、ドキソルビシン、ならびにタ
モキシフェンが、単独または組み合わせで含まれる。
【0067】
医薬組成物は、1つまたは複数の抗血栓剤または線維素溶解剤を含んでよい。理論に拘
束されることなく、抗血栓剤は、凝固カスケードを阻止し、血栓溶解を増進することによ
って、何らかの注入部位付近の液体流動を遮断し得る血栓塊を低減すると考えられる。例
示の抗血栓剤または線維素溶解剤には、限定はされないが、抗トロンビンI−III、ヘ
パリン、ワルファリン、アニシンジオン、ダナパロイド、アルガトロバン、レピルジン、
ビバリルジン、フォンダパリヌクス、ドロトレコギンアルファ、組織プラスミノーゲン活
性化因子(TPa)、ストレプトキナーゼ、及びウロキナーゼが、単独または組み合わせ
で含まれる。
【0068】
医薬組成物は、1つまたは複数の抗分解剤を含んでよい。そのような薬剤は、デポにお
けるインスリン分解の低減、インスリンの分子間結合の安定化、ならびに/またはインス
リンのアンフォールディング及びアミロイドーシスの防止が可能である。例示の抗分解剤
には、限定はされないが、アプロチニン及びヒト膵臓トリプシン阻害剤、抗レトロウイル
ス剤(例えば、サキナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、アンプレナビ
ル、ロピナビル、アタザナビル、ホスアンプレナビル、チプラナビル、及びダルナビル)
、ベルケイド、アルファ1−プロテアーゼ阻害剤、ドキシサイクリン、トレハロース、L
−アルギニン、L−グリシン、L−ヒスチジン、グリシルグリシン、ニコンアミド、HP
−βCD、ならびにシクロデキストリン誘導体が、単独または組み合わせで含まれる。い
くつかの実施形態では、抗分解剤は、アプロチニンまたはトレハロースから選択される。
【0069】
医薬組成物は、1つまたは複数のインスリン結合アンタゴニストを含んでよい。理論に
拘束されることなく、そのような薬剤は、皮下組織における潜在的な低親和性結合部位を
遮断し得、さもなければ、デポからのインスリンの拡散が遅延することになると考えられ
る。例示のインスリン結合アンタゴニストには、例えば、そのタンパク質配列を機能的に
不活性にする若干の改変を有するインスリンアナログ(例えば、Leu−A3インスリン
)が含まれる。
【0070】
医薬組成物は、1つまたは複数の電荷遮蔽剤を含んでよい。理論に拘束されることなく
、そのような薬剤は、皮下組織における静電的結合部位を遮断し得、さもなければ、デポ
からのインスリンの拡散が遅延することになると考えられる。例示の電荷遮蔽剤には、例
えば、弱酸もしくは強酸、または弱塩基もしくは強塩基、及びイオン性塩が含まれる。
【0071】
医薬組成物は、1つまたは複数の抗線維化剤を含んでよい。そのような薬剤は、線維芽
細胞による細胞外マトリックスの生成を遮断し得る。またさらに、そのような薬剤は、注
入カテーテル周辺の線維性被膜の形成を遮断、またはその分解を増進し得る。例示の抗線
維化剤には、限定はされないが、マトリックスメタロプロテアーゼ(例えば、コラゲナー
ゼ−1、−3、及び−4、ゼラチナーゼA及びB、ストロメライシン−1、−2、及び−
3、トランシン−1(transin−1)、マトリライシン、エラスターゼ、ならびに
その他のもの)、タモキシフェン、フィブリノリジン、組織プラスミノーゲン活性化因子
(例えば、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、及びテネクテプラーゼ)、ストレプトキナー
ゼ(例えば、天然ストレプトキナーゼ及びアニストレプラーゼ)ならびにウロキナーゼ(
例えば、Abbokinase(登録商標))などの線維素溶解剤が含まれる。
【0072】
医薬組成物は、1つまたは複数の抗酸化剤を含んでよい。そのような薬剤は、酸化酵素
によって発生する酸素由来のフリーラジカルが有する炎症誘発効果、及び/またはインス
リン分解効果に対抗し得る。例示の抗酸化剤には、限定はされないが、GPLC(グリシ
ンプロピオニル−l−カルニチン)、アセチルカルニチン、L−カルニチン及びL−カル
ニチンを含む他の実体(entity)、ペントキシフィリン、アスコルビン酸、レチノ
ール、ユビキノン、メラトニン、グルタチオン及びそれぞれの誘導体、ならびにアルファ
リポ酸が含まれる。1つの実施形態では、抗酸化剤は、GPLC(グリシンプロピオニル
−l−カルニチン)、アセチルカルニチン、L−カルニチンまたは他のL−カルニチン含
有化合物、アスコルビン酸、メラトニン、またはグルタチオン、及びそれぞれの誘導体か
ら、単独または組み合わせで選択される。
【0073】
医薬組成物は、一つまたは複数の抗増殖剤を含んでよい。理論に拘束されることなく、
抗増殖剤は、白血球、平滑筋細胞、線維芽細胞、及び他の免疫細胞または修復細胞の局所
的な増殖を防止し得、それによって、細胞数を低減するが、さもなければ、当該細胞が注
入カテーテルに関係する損傷領域において存在し、そこで、そのような細胞は、とりわけ
、血管もしくは間質液の流動を妨害し得る細胞外マトリックス分泌し、かつ/またはカテ
ーテル先端の被覆化の原因になると考えられる。例示の抗増殖剤には、フラボピリドール
、パクリタキセルなどが含まれる。
【0074】
医薬組成物は、局所的神経伝達を低減する1つまたは複数の神経沈静剤を含み得、当該
局所神経伝達は、低減されない場合、局所的部位の反応として存在し得る。例示の神経沈
静剤には、限定はされないが、硫酸マグネシウム、リドカイン、ブピバカイン、エチドカ
イン、イソフルラン、ハロタン、セボフルラン、デスフルラン、エンフルラン、プロカイ
ン、ベンゾカイン、クロロプロカイン、コカイン、シクロメチカイン、ジメトカイン/ラ
ロカイン、ピペロカイン、プロポキシカイン、プロカイン/ノボカイン、プロパラカイン
、テトラカイン/アメトカイン、アルチカイン、シンコカイン/ジブカイン、レボブピバ
カイン、リグノカイン、メピバカイン、プリロカイン、ロピバカイン、トリメカイン、サ
キシトキシン、ネオサキシトキシン、テトロドトキシン、メントール、オイゲノール、及
び節後アドレナリン作動遮断剤(例えば、グアネチジン及びブレチリウム)が、単独また
は組み合わせで含まれる。いくつかの実施形態では、神経鎮静剤は、硫酸マグネシウム、
リドカイン、ブピバカイン、またはロピバカインである。
【0075】
医薬組成物は、1つまたは複数の抗生物質をさらに含んでよい。例示の抗生物質には、
限定はされないが、(通常レベルよりも高く含まれる)保存剤、アミカシン、ゲンタマイ
シン、カナマイシン、ネオマイシン、ネチルマイシン、トブラマイシン、パロモマイシン
、スペクチノマイシン、ゲルダナマイシン、ハービマイシン、リファキシミン、ストレプ
トマイシン、ロラカルベフ、エルタペネム、ドリペネム、イミペネム/シラスタチン、メ
ロペネム、セファドロキシル、セファゾリン、セファロチン(cefalotin)また
はセファロチン(cefalothin)、セファレキシン、セファクロル、セファマン
ドール、セフォキシチン、セフプロジル、セフロキシム、セフィキシム、セフジニル、セ
フジトレン、セフォペラゾン、セフォタキシム、セフポドキシム、セフタジジム、セフチ
ブテン、セフチゾキシム、セフトリアキソン、セフェピム、セフタロリンフォサミル、セ
フトビプロール、テイコプラニン、バンコマイシン、テラバンシン、クリンダマイシン、
リンコマイシン、ダプトマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、ジリスロマ
イシン、エリスロマイシン、ロキシスロマイシン、トロレアンドマイシン、テリスロマイ
シン、スピラマイシン、アズトレオナム、フラゾリドン、ニトロフラントイン、リネゾリ
ド、ポシゾリド(posizolid)、ラデゾリド(radezolid)、トレゾリ
ド(torezolid)、アモキシシリン、アンピシリン、アズロシリン、カルベニシ
リン、クロキサシリン、ジクロキサシリン、フルクロキサシリン、メズロシリン、メチシ
リン、ナフシリン、オキサシリン、ペニシリンg、ペニシリンv、ピペラシリン、テモシ
リン、チカルシリン、アモキシシリン/クラブラン酸、アンピシリン/スルバクタム、ピ
ペラシリン/タゾバクタム、チカルシリン/クラブラン酸、バシトラシン、コリスチン、
ポリミキシンb、シプロフロキサシン、エノキサシン、ガチフロキサシン、レボフロキサ
シン、ロメフロキサシン、モキシフロキサシン、ナリジクス酸、ノルフロキサシン、オフ
ロキサシン、トロバフロキサシン、グレパフロキサシン、スパルフロキサシン、テマフロ
キサシン、マフェニド、スルファセタミド、スルファジアジン、スルファジアジン銀、ス
ルファジメトキシン、スルファメチゾール、スルファメトキサゾール、スルファニルイミ
ド(sulfanilimide)(初期(archaic))、スルファサラジン、ス
ルフィソキサゾール、トリメトプリム−スルファメトキサゾール(コ−トリモキサゾール
)(tmp−smx)、スルホンアミドクリソイジン(sulfonamidochry
soidine)(初期)、デメクロサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、
オキシテトラサイクリン、テトラサイクリン、クロファジミン、ダプソン、カプレオマイ
シン、シクロセリン、エタンブトール、エチオナミド、イソニアジド、ピラジナミド、リ
ファンピシン、リファブチン、リファペンチン、ストレプトマイシン、アルスフェナミン
、クロラムフェニコール、ホスホマイシン、フシジン酸、メトロニダゾール、ムピロシン
、プラテンシマイシン(platensimycin)、キヌプリスチン/ダルホプリス
チン、チアンフェニコール、チゲサイクリン、チニダゾール、及びトリメトプリムが、単
独または組み合わせで含まれる。
【0076】
様々な実施形態では、医薬組成物は、肺内及び腸内での適用などに向けて密着結合を開
く1つまたは複数のペプチド剤を含んでもよい。そのようなペプチド剤には、限定はされ
ないが、閉鎖帯毒(ZOT)、ゾヌリンまたはペプチドFCIGRLが含まれる(例えば
、米国特許公開第2008/0014218号及び2007/0196272号、ならび
に米国特許第8,557,763号及び8,728,491号参照。それらのすべての内
容全体が参照によって本明細書に組み込まれる)。
【0077】
様々な実施形態では、本発明の医薬組成物は、最小全身効果レベルより十分低い濃度で
、本明細書で説明される薬剤のいずれかを含んでよい。いくつかの実施形態では、本明細
書で説明される1つまたは複数の薬剤の組み合わせは、インスリン吸収増進、インスリン
薬物動態の迅速化促進、及びインスリン安定性の増加などにおいて相乗効果を有する。以
下の表2は、いくつかの薬剤の例示投与範囲の一覧である。
【表2-1】

【表2-2】

【表2-3】

【表2-4】

【表2-5】
【0078】
様々な実施形態では、医薬組成物は、亜鉛を含まないか、または亜鉛をインスリンのモ
ル当たり0.05モル未満で含む。
【0079】
本発明に従って投与されるインスリンまたは単量体インスリンアナログまたは2量体イ
ンスリンアナログの実際の用量は、例えば、特定の投与量形態及び投与様式、ならびに患
者の病気によって変わるであろうことが理解されよう。
【0080】
インスリンまたは単量体インスリンアナログまたは2量体インスリンアナログのそれぞ
れの用量は、約1U/ml(ml当たり1インスリン単位)〜約2000U/ml、また
は約1U/ml〜約1000U/ml、または約1U/ml〜約500U/ml、または
約1U/ml〜約400U/ml、または約1U/ml〜約300U/ml、または約1
U/ml〜約200U/ml、または約1U/ml〜約100U/ml、または約1U/
ml〜約50U/ml、または約1U/ml〜約10U/mlなどで製剤化できる。いく
つかの実施形態では、製剤は、ボーラス投与当たり1U〜約100Uを含み、いくつかの
実施形態では、例えば、約1U〜約20U(例えば、約5U、約10U、約12U、また
は約15U)を含む。
【0081】
様々な実施形態では、本発明の医薬組成物は、投与後約40分未満のインスリン活性発
現(例えば、1/2Tmax−早期として測定可能)を提供し、または、様々な実施形態
では、投与後、約30分未満、または約20分未満、または約15分未満、または約10
分未満、または約5分未満のインスリン活性発現を提供する。
【0082】
様々な実施形態では、医薬組成物は、Cmax及び/またはTmaxなどによって測定
される迅速なインスリン吸収プロファイルを提供する。本明細書では、Cmaxは、その
投与後に観察される薬物の最大またはピークの濃度である。本明細書では、Tmaxは、
最大濃度(Cmax)に達する時間である。ある実施形態では、医薬組成物は、投与後、
約120分未満、または約90分未満、または約60分未満、または約50分未満、また
は約40分未満、または約30分未満、または約20分未満、または約15分未満でT
axに達する。
【0083】
様々な実施形態では、医薬組成物は、インスリン活性の短い持続時間を提供する。ある
実施形態では、医薬組成物は、投与後、約5時間以下、約4時間以下、約3時間以下、ま
たは約2時間以下のインスリン活性の持続時間を提供する。さらなる実施形態では、医薬
組成物は、投与後約1〜2時間のインスリン活性の持続時間を提供する。いくつかの実施
形態では、活性の持続時間は、インスリン作用が最大活性の1/2未満まで降下する時間
として測定される。
【0084】
例示の実施形態では、医薬組成物は、皮下注射の際に、約30分以下または約20分以
下でインスリン活性の発現(例えば、1/2Tmaxとして測定される)を提供すると共
に、約2時間以下の活性の持続時間を提供する。
【0085】
様々な実施形態では、医薬組成物は、保存安定性の増進を提供する。ある実施形態では
、医薬組成物は、25℃で、実質的にインスリン原線維を形成することなく、少なくとも
約1ヶ月、または少なくとも約3ヶ月、または少なくとも約6ヶ月、または少なくとも約
12カ月、または少なくとも約18カ月、またはそれより長い期間、安定である。
【0086】
さらなる実施形態では、医薬組成物は、25℃で、6ヶ月後に、少なくとも約60%力
価、約70%力価、約80%力価、約90%力価、または約95%力価を維持する。別の
実施形態では、医薬組成物は、30℃で、9カ月後に、少なくとも約60%力価、約70
%力価、約80%力価、約90%力価、または約95%力価を維持する。さらなる実施形
態では、医薬組成物は、25℃で、12カ月後に、少なくとも約60%力価、約70%力
価、約80%力価、約90%力価、または約95%力価を維持する。
【0087】
1つの態様では、本発明は、インスリンまたはインスリンアナログまたは他の医薬品を
含む医薬製剤の注入を可能にする機器を提供し、その結果、注入は、薬物動態の迅速化(
例えば、作用の迅速発現、及び/または持続時間の短期化)などの医薬的特性の増進を示
す。1つの実施形態では、本発明は、皮下注入、及びインスリンまたはインスリンアナロ
グなどの医薬製剤の皮下デポから循環への吸収を増進する機器を提供する。理論に拘束さ
れることなく、本発明の注入機器は、注入デポから血管及びリンパ管の両方への活性薬剤
の拡散を増進し、こうした管への活性薬剤の吸収速度を増加させると考えられる。いくつ
かの実施形態では、本発明は、リンパ管とは対照的に血管による活性薬剤の取り込みを改
善する。
【0088】
様々な実施形態では、本発明は、医薬組成物を使用するための注入セット、ならびに超
音波振動子、触覚器、及び/または電気泳動電極などの1つまたは複数のエネルギー伝達
システムを提供する。いくつかの実施形態では、医薬製剤は、当該技術領域で既知、及び
/または本明細書で説明されるインスリンまたはインスリンアナログのいずれかを含み得
るインスリン製剤である。1つの実施形態では、注入セットと共に使用するためのインス
リン製剤は、天然ヒトインスリンと比較し、迅速な6量体の解離を示す。別の実施形態で
は、インスリン製剤は、安定な単量体または2量体インスリンアナログ製剤であり、実質
的に亜鉛を含まない製剤である。さらなる実施形態では、インスリン製剤は、本明細書で
説明されるインスリン医薬組成物のいずれかを含むインスリン製剤である。
【0089】
いくつかの実施形態では、薬剤は、皮下注射に際して、迅速に吸収されないタンパク質
、ペプチド、オリゴヌクレオチド、または小分子活性薬剤(small molecul
e active agent)である。いくつかの実施形態では、活性薬剤は、抗体も
しくはその抗原結合部分であるか、またはサイトカインもしくは成長因子である。いくつ
かの実施形態では、注入セットにおいて電気泳動を利用するものなどといった、活性薬剤
は、少なくとも−2の正味の負電荷を有するか、または少なくとも+2の正味の正電荷を
有する。
【0090】
様々な実施形態では、注入セットは、第一本体、接着面、皮下注入カテーテル、ならび
に超音波振動子、触覚器、及び電気泳動電極から選択される1つまたは複数のエネルギー
送達システムを含む。注入セットは、注入カテーテルの皮膚への容易な留置または挿入を
可能にする追加の付属機器を含んでよい。
【0091】
様々な実施形態では、注入セットは、他の部品が接続し得る第一本体を含む。1つの実
施形態では、本体は、半硬質プラスチックなどのプラスチックで構成されている。
【0092】
様々な実施形態では、注入セットは、接着面を含む。接着面は、注入セットを皮膚表面
上に保持する。
【0093】
様々な実施形態では、注入セットはカテーテルを含む。より具体的には、注入セットは
、皮下注入カテーテルを含む。1つの実施形態では、カテーテルは、第一本体から接着面
の平面を介し、真皮を介し、そして皮下組織へと通される。1つの実施形態では、カテー
テルは、皮下組織へ、約1mm〜約10mm突出する。例えば、カテーテルは、皮下組織
へ、約3mm、約5mm、約6mm、約7mm、約8mm、約9mm、または約10mm
突出してよい。1つの実施形態では、カテーテルは、皮下組織へ約7mm突出する。カテ
ーテルは、様々な材料で構成でき、限定はされないが、テフロン(登録商標)または金属
が含まれる。
【0094】
注入セットは、供給チューブまたは供給チューブが接続できるポートをさらに含んでよ
い。供給チューブが接続されるとき、注入カテーテルと継続的に流体連通し、その結果、
活性薬剤(例えば、インスリン)をカテーテルへ供給チューブを介して送り出せる。様々
な実施形態では、活性薬剤リザーバーは、供給チューブに接続、及び接続解除できる。
【0095】
ある実施形態では、供給チューブを介して、カテーテルに活性薬剤を送達するための活
性薬剤(例えば、インスリン)リザーバーに操作可能なように接続されたポンプ及び制御
装置に、注入セットは、操作可能なように接続される。ポンプは、回転式ピストン、圧縮
ブラダ、シリンジまたは他の機構を駆動するステップモーター、電気機械モーター、電気
化学モーター、化学モーター、または他のモーターなどのポンプ機構を含む。制御装置は
、第一本体に任意選択で含まれる、マイクロプロセッサー、制御アルゴリズム、及びイン
ターフェイス画面を典型的には含む。制御装置は、第一本体に任意選択で含まれる、1つ
または複数の外部ユーザー制御及び/または通信インターフェイスをさらに含んでよい。
例えば、制御装置は、ボタン、任意選択で外部入力ポート、任意選択で無線通信インター
フェイスなどの1つまたは複数の入力制御、ならびにポンプ機構及び可能性のある他の機
器を駆動するようにデザインされた1つまたは複数の駆動装置インターフェイスを含んで
よい。
【0096】
ある実施形態では、リザーバーは、第一本体から取り外しできる第二本体に含まれる。
そのような実施形態では、接着面は、第二本体に位置してよい。1つの実施形態では、第
二本体は、注入カテーテルも含んでよい。第二本体は、活性薬剤の補充必要性に応じて随
時交換できる。
【0097】
いくつかの実施形態では、注入セットは、超音波振動子を含む。いくつかの実施形態で
は、超音波振動子は、低出力超音波(LITUS)振動子である。他の実施形態では、注
入セットは、低周波圧電触覚器などの触覚器を含む。いくつかの実施形態では、振動子ま
たは触覚器は、注入カテーテルの遠位末端上に位置する。他の実施形態では、振動子また
は触覚器は、注入セット本体内のどこか他の位置に設置される。いくつかの実施形態では
、振動子または触覚器は、第一本体内に含まれる。例えば、注入セット本体は、振動子ま
たは触覚器(3)を含む第一本体(1)、ならびに接着面及び注入カテーテル(2)に接
続された第二本体を有してよい。図7A及び7B。
【0098】
いくつかの実施形態では、振動子または触覚器は、例えば、約1μW、約10μW、約
0.1mW、または1mW、または約10mWの電力の使用時に、エネルギー効率がよい
。例えば、振動子または触覚器は、ポンプに電力供給するバッテリーによって電力供給さ
れてよい。任意選択で、振動子または触覚器は、ポンプによって制御されるポンプの信号
発生器によって駆動する。あるいは、振動子または触覚器は、注入セット自体に存在する
再充電可能なバッテリーによって電力供給され、注入セット自体に存在する信号発生器に
よって駆動し、及び/あるいは注入セット上のスイッチによって、または(例えば、Bl
uetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、または他の無線プロトコルを
使用した)有線もしくは無線の遠隔制御によって制御される。
【0099】
いくつかの実施形態では、超音波振動子は、約0.1MHz〜約5MHz、約0.2〜
約3MHz、約0.2〜約2.5MHz、約0.2〜約2MHz、約0.2〜約1.5M
Hz、約0.2〜約1MHz、約0.2〜約0.5MHz、約0.5〜約3MHz、約0
.5〜約2.5MHz、約0.5〜約2MHz、約0.5〜約1.5MHz、約0.5〜
約1MHz、約1MHz〜約2MHz、または約1MHz〜約1.5MHzの範囲内の信
号を発し、それらの間の値及び範囲がすべて含まれる。例えば、超音波振動子は、約0.
1MHz、約0.2MHz、約0.3MHz、約0.4MHz、約0.5MHz、約0.
6MHz、約0.7MHz、約0.8MHz、約0.9MHz、約1.0MHz、約1.
5MHz、約2.0MHz、約2.5MHz、約3.0MHz、約3.5MHz、約4.
0MHz、約4.5MHz、または約5.0MHzの信号を発してよく、それらの間の値
及び範囲がすべて含まれる。
【0100】
いくつかの実施形態では、圧電触覚器は、2kHz未満、または約1kHz未満の周波
数を有する信号を発し、例えば、約0.1kHz〜約1.0kHzの周波数を有する信号
を発する。1つの実施形態では、圧電触覚器は、約1kHz未満の周波数を有する信号を
発する。理論に拘束されることなく、そのような低周波触覚器は、注入部位に対して振動
マッサージ効果を再現できると考えられる。
【0101】
様々な周波数が、様々な組織と共鳴する(例えば、1mmの脂肪小葉は、約170k
Hzの特有の周波数を有し得る)。したがって、1つの実施形態では、振動子は、様々な
周波数において、様々なパターンで駆動してよい。1つの実施形態では、振動子または触
覚器は、複数の高調波を生成する方形波を生成する。別の実施形態では、振動子または触
覚器は、より強い原動効果を有し得る、のこぎり波または他の型を生成する。様々な実施
形態では、振動子または触覚器は、信号を継続的に送達する。他の実施形態では、振動子
または触覚器は、相対的に静的な組織においてより有効であり得るパルス信号(例えば、
10%オフ及び90%オン、20%オフ及び80%オン、30%オフ及び70%オン、4
0%オフ及び60%オン、または50%オン及び50%オフ)を送達してよい。様々な実
施形態では、振動子または触覚器は、低出力レベル、中出力レベル、または高出力レベル
で作動する。
【0102】
超音波または触覚器は、インスリンの注入前、注入中、及び/または注入後に作動して
よい。
【0103】
様々な実施形態では、特に、インスリンリザーバー及び接着面を含む第二本体上の第一
本体に超音波が位置する実施形態では、接着面は、超音波を伝達可能である。
【0104】
いくつかの実施形態では、インスリン注入セットは、電気泳動電極を含む。本明細書で
示されるとおり、インスリンデポに電場を適用することで、インスリンの電荷に基づき、
1〜2mm/分の間の速度で、インスリンを、ゲルを介して移動させることができる。理
論に拘束されることなく、電場は、皮下組織のすぐ上にある真皮内の深部血管網へとイン
スリンを引き上げることができ、深部血管網では、インスリンは、より迅速に吸収され得
る。様々な実施形態では、注入セットの遠位末端が、真皮下6mm未満であるとき、注入
セットは、インスリンを毛細血管が豊富に存在する血管網に、5分以下の時間で、引き込
める。
【0105】
1つの実施形態では、図8A及び8Bに示すとおり、注入セットは、少なくとも2つの
電気泳動電極を含んでよい。1つの実施形態では、第一電気泳動電極(4)は、注入カテ
ーテルの遠位末端の近くに位置する。いくつかの実施形態では、第一電気泳動電極は、注
入カテーテル管腔の内面または外面に埋め込まれているか、または取り付けられている1
つまたは複数の伝導性の金属またはプラスチック電線によって電圧源に部分的に接続され
る。いくつかの実施形態では、注入カテーテル管腔全体は、伝導性であるか、または絶縁
膜で1つまたは複数の面が被覆された電動性管腔からなるか、または絶縁管腔によって成
る。いくつかの実施形態では、遠位末端の電極は、長さが少なくとも1mmであり、管腔
の外周全体を包含してよい。あるいは、注入カテーテルに沿って設置された複数の注入カ
テーテル電極が存在してよい。1つの実施形態では、注入カテーテル管腔は、遠位末端か
ら以外に、管腔から注入液が抜けることが可能なように、その長さに沿って穿孔されてよ
い。
【0106】
1つの実施形態では、第二電気泳動電極(5)は、皮膚表面に存在する。任意選択で、
第二電気泳動電極は、接着面に取り付けられる。図8C。第二電気泳動電極は、皮膚に対
する伝導性が増加するように設計された生体適合性のゲルまたは接着物質、電気化学的な
ゲルまたは接着物質などの被覆を有してよい。1つの実施形態では、第二電気泳動電極は
、注入カテーテルの遠位末端上に位置してよい。図8C。別の実施形態では、皮膚表面第
二電気泳動電極は、注入カテーテルが真皮に入る点の周辺で、環、または正方形、または
一連の不連続形状などのパターンを形成する(図9)。別の実施形態では、皮膚表面第二
電気泳動電極は、注入カテーテルから幾分か離れて位置する。別の実施形態では、接着面
のすべてまたは一部は、電気的に伝導性であり、電極としての役割を果たす。代替的な実
施形態では、皮膚表面電極は、皮膚表面の上に存在し、皮膚と直接接触しない。
【0107】
様々な実施形態では、第一及び第二電気泳動電極は、電圧源(6)の反対側の末端に接
続される。1つの実施形態では、第一電気泳動電極は、陰極であり、第二電気泳動電極は
陽極である。他の実施形態では、第一電気泳動電極は、陽極であり、第二電気泳動電極は
、陰極である。実際の選択は、例えば、活性薬剤の電荷に基づくであろう。1つの実施形
態では、電極は、電圧源への、または電圧源からの接続または接続解除が容易なようにデ
ザインされたインターフェイスプラグに、導電体によって接続される。様々な実施形態で
は、電圧源は、定電圧を供給する。電圧は、約0.1ボルト〜約20ボルト、約0.1ボ
ルト〜約19ボルト、約0.1ボルト〜約18ボルト、約0.1ボルト〜約17ボルト、
約0.1ボルト〜約16ボルト、約0.1ボルト〜約15ボルト、約0.1ボルト〜約1
4ボルト、約0.1ボルト〜約13ボルト、約0.1ボルト〜約12ボルト、約0.1ボ
ルト〜約11ボルト、約0.1ボルト〜約10ボルト、約0.1ボルト〜約9ボルト、約
0.1ボルト〜約8ボルト、約0.1ボルト〜約7ボルト、約0.1ボルト〜約6ボルト
、約0.1ボルト〜約5ボルト、約0.1ボルト〜約4ボルト、約0.1ボルト〜約3ボ
ルト、または約0.1ボルト〜約2ボルトの範囲であってよく、それらの間の値及び範囲
がすべて含まれる。1つの実施形態では、電圧は、約1ボルト〜約15ボルト、または約
1ボルト〜約10ボルトの範囲である。1つの実施形態では、電圧は、約1ボルト、約2
ボルト、約3ボルト、約4ボルト、約5ボルト、約6ボルト、約7ボルト、約8ボルト、
約9ボルト、約10ボルト、約11ボルト、約12ボルト、約13ボルト、約14ボルト
、約15ボルト、約16ボルト、約17ボルト、約18ボルト、約19ボルト、または約
20ボルトであり、それらの間の値及び範囲がすべて含まれる。
【0108】
1つの実施形態では、電圧源は、インスリンポンプのバッテリーにより電力供給され、
ポンプによって制御される。この実施形態では、電圧源は、インスリン供給チューブにそ
って走るか、またはインスリン供給チューブに埋め込まれている電線によって、注入セッ
トに接続される。代替的な実施形態では、電圧源は、注入セット自体に存在する再充電可
能なバッテリーによって電力供給され、かつ/あるいは注入セット上のスイッチによって
、または(例えば、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)、Wi
Fi、または他の無線プロトコルを使用した)有線もしくは無線の遠隔制御によって制御
される。1つの実施形態では、電圧源及び制御装置は、第一の使い捨て本体に適合する第
二の再利用可能な本体に含まれ、第一の使い捨て本体は、接着面、注入カテーテル、及び
電極に接続されると共に、第一本体及び第二本体の管腔と電線との間の適切な接続を維持
するインターフェイス機構を有する。
【0109】
1つの実施形態では、電圧は、ボーラス注入直前または注入時に供給開始できると共に
、0.5、1、1.5、もしくは2時間後、または一定の他の時間経過後に、手動、また
は時限制御、または遠隔制御の下で供給停止できる。好ましい実施形態では、この供給開
始−停止制御は、駆動装置インターフェイスを介した直接的制御、または無線接続を介し
た間接的制御のいずれかで、ポンプによって制御されることになる。
【0110】
1つの実施形態では、電圧源の負極は、第一電気泳動電極に接続される。1つの実施形
態では、適用電圧は、約0.2〜約5.0mAの間の電流を生成するように調節される。
【0111】
電気泳動電極は、何らかの伝導性材料、または伝導性となるよう添加される材料のいず
れかで構成され得る。1つの実施形態では、電気泳動電極は、伝導性被覆を含む。伝導性
被覆は、抗菌特性を有する材料をさらに含んでよい。1つの実施形態では、伝導性被覆は
、抗菌特性を有する銀含有化合物を含んでよい。またさらに、本発明の電気泳動電極間の
電流によって生じる電場は、防汚効果及び抗菌効果を有することが発見された。したがっ
て、1つの実施形態では、電極間の電気の流れは、生体電気効果を作り出すのに十分であ
る。
【0112】
電極が、接着面を有する第二本体上の第一本体に含まれる様々な実施形態では、第二本
体及び接着面は、電気的に伝導性である。
【0113】
1つの実施形態では、本発明の注入セットは、インスリンリザーバーをさらに含む。ま
たさらなる実施形態では、本発明の注入セットは、カテーテル挿入機器をさらに含む。別
の実施形態では、第一電気泳動電極は、センサーの近くに位置し得るか、センサーから離
れて位置し得るか、またはセンサーと統合され得、当該センサーは、グルコースセンサー
などであり、注入カテーテルにも存在する。別の実施形態では、電極は、注入カテーテル
管腔の末端を超えて伸長し得るか、または管腔の末端を超えて伸長する構成部品に設置さ
れ得る。別の実施形態では、注入カテーテルは、皮下組織への注入カテーテルとは別に設
置される電気泳動電極によって交換されるか、または補完される可能性がある。
【0114】
様々な実施形態では、超音波振動子、触覚器、または電気泳動システムは、速効型イン
スリンまたは基礎インスリンまたはその両方の吸収を増進するために使用してよい。
【0115】
様々な実施形態では、本明細書で説明される注入セットの様々な構成部品は、インスリ
ン吸収の容易化、及びインスリン薬物動態の迅速化促進などにおいて相乗効果を有する。
例えば、本発明のインスリン注入セットは、例えば、インスリン吸収の増進などにおいて
相乗効果を生成する超音波振動子、触覚器、及び/または電気泳動電極の組み合わせを含
んでよい。
【0116】
注入セット及び注入カテーテルの使用に関連する課題の1つは、長期開存性の維持であ
る。現在、FDAは、注入セットを2〜3日毎に交換することを要求している。これは、
身体の免疫応答によって生成する線維性被膜の存在によるカテーテル閉塞のリスクによる
ものである。線維性被膜は、インスリンの拡散、及びまたは注入物の流動を妨害し得る。
またさらに、炎症カスケード、及び対応する細胞免疫応答は、カテーテルの設置及び設置
後動作によって生じる組織の損傷及び創傷によって引き起こされ、カテーテル周辺に細胞
残骸の蓄積を招き、カテーテルからのインスリン流動を妨害し得る。またさらに、カテー
テル設置領域周辺の感染リスクも使用時間と共に増加する。インスリン吸収の増進に加え
、いくつかの実施形態では、本発明は、3日を超えて持続する注入セットも供給し、例え
ば、少なくとも約5日、または少なくとも1週間、または少なくとも約2週間、または少
なくとも約1ヶ月持続する注入セットを供給する。
【0117】
しがたって、様々な実施形態では、本発明の医薬組成物は、凝固カスケードを制限する
ことで、血栓形成を軽減し、細胞免疫応答を限定し、そして線維化を低減して、カテーテ
ル開存性の増進をもたらす。本発明の医薬組成物は、感染が低減されるように、カテーテ
ル設置創傷における細菌及び真菌などの微生物の成長も妨げる。例えば、本発明の医薬組
成物は、カテーテル設置部位周辺の熱傷、刺激、及び炎症を低減する。
【0118】
具体的には、カテーテル開存性の促進、及び/またはカテーテル周囲の創傷からのイン
スリン吸収の増進のために、様々な薬剤を本発明の医薬組成物に添加してよい。
【0119】
ある実施形態では、脂肪組織の毛細血管及び細静脈を介した血液流動を増加させる薬剤
を、医薬組成物に含んでよい。こうした薬剤には、プラゾシン、フェノキシベンザミン、
フェントラミン、ジベナミン、トラゾリン、クロルプロマジン、及びハロペリドールなど
のα及びα受容体遮断剤が含まれる。1つの実施形態では、細動脈平滑筋及び/また
は静脈平滑筋を直接的に弛緩する薬剤を含んでよい。そのような薬剤には、限定はされな
いが、皮下血液流動を伴うか、または伴わないヒドラジン、アデノシン、ジピリダモール
、ジアゾキシド、ミノキシジル、パパベリン、ニトロプルシド、プラゾシン、ヒスタミン
、ブラジキニン、ニトログリセリン、二硝酸イソソルビド、亜硝酸アミル、エリスリチル
、及び四硝酸が含まれる。1つの実施形態では、イソプロテレノール、ドブタミン、アル
ブテロール、テルブタリン、アミノフィリン、テオフィリン、またはカフェインなどのB
受容体アゴニストを(単独または組み合わせで)含んでよい。1つの実施形態では、カ
ルシウムチャネル阻害剤を含んでよい。そのような阻害剤には、限定はされないが、アム
ロジピン(Norvasc)、アラニジピン(Sapresta)、アゼルニジピン(C
alblock)、バルニジピン(HypoCa)、ベニジピン(Coniel)、シル
ニジピン(Atelec、Cinalong、Siscard)、クレビジピン(Cle
viprex)、イスラジピン(DynaCirc、Prescal)、エホニジピン(
Landel)、フェロジピン(Plendil)、ラシジピン(Motens、Lac
ipil)、レルカニジピン(Zanidip)、マニジピン(Calslot、Mad
ipine)、ニカルジピン(Cardene、Carden SR)、ニフェジピン(
Procardia、Adalat)、ニルバジピン(Nivadil)、ニモジピン(
Nimotop)、ニソルジピン(Baymycard、Sular、Syscor)、
ニトレンジピン(Cardif、Nitrepin、Baylotensin)、及びプ
ラニジピン(Acalas)が、単独または組み合わせで含まれる。1つの実施形態では
、節後アドレナリン作動神経を遮断する薬剤(例えば、グアネチジン、ブレチリウム)を
含んでよい。1つの実施形態では、局所組織において、酸素の減少、pHの減少、及び二
酸化炭素の増加を起こす薬剤を含んでよい。そのような薬剤は、内皮由来の、一酸化窒素
、非エステル化脂肪酸、プロスタグランジン、及びアデノシンを増加させることができ、
そうして細静脈の拡張を起こす。1つの実施形態では、脂肪細胞上のα及びB受容体
を活性化する薬剤を含んでもよい。さらに、本発明の医薬組成物は、運動などの心拍出量
及び総血液流動を増加させる手法などと併せて、そして局所加温または局所血液流動が増
加するように設計された他のエネルギー送達と関連して投与されてよい。
【0120】
ある実施形態では、毛細血管壁及び細静脈壁を介した血漿への吸収を増加させる薬剤を
、医薬組成物に含んでよい。こうした薬剤は、毛細血管、細静脈、及びリンパ管によるイ
ンスリンの取り込み増進に向けて機能すると考えられる。1つの実施形態では、毛細血管
及び細静脈の透過性を増加させる薬剤が含まれる。そのような薬剤には、例えば、ヒスタ
ミン、2−メチルヒスタミン、2−(2−ピリジル)エチルアミン、及び2−(2−チア
ゾリル)エチルアミンなどのH受容体アゴニスト、ならびに4−メチルヒスタミン、ベ
タゾール、及びジマプリットなどのH受容体アゴニストが、単独または組み合わせで含
まれる。1つの実施形態では、組織から血漿へのインスリンの濃度勾配を増加させるため
に、より高いインスリン濃度を利用してよい。さらなる実施形態では、組織液内の静水圧
を増加させる薬剤を使用してよい。そのような薬剤には、例えば、3%高張生理食塩水、
ヒスタミン、マンニトール、アルブミン、及びデキストランが含まれる。別の実施形態で
は、組織液内の浸透圧を低下させる薬剤を使用してよい。
【0121】
ある実施形態では、活性薬剤(例えば、インスリン)の拡散を増加させる薬剤を、医薬
組成物に含んでよい。こうした薬剤は、インスリンの生物学的活性に影響を与えずに、肉
芽組織内の血液凝固密度の最小化、線維素、DNA及び細胞外マトリックス結合組織(コ
ラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸)の溶解に使用できる。非限定例として、こうした
薬剤には、ヒアルロニダーゼ、アセチルシステイン、ストレプトキナーゼ、ストレプトド
ルナーゼ、ウロキナーゼ、組換え組織プラスミノーゲン活性化因子、デオキシリボヌクレ
アーゼ、キモトリプシン、コラゲナーゼ、フィブリノリジン、デオキシリボヌクレアーゼ
、マトリックスメタロプロテアーゼ、ヘパリン、ならびにデキサメタゾン、コルチゾール
、ソルメドロール、及びメドロールなどの糖質コルチコイドが、単独、または組み合わせ
で含まれる。
【0122】
ある実施形態では、活性薬剤(例えば、インスリン)のリンパ管への流動を増加させる
薬剤を、医薬組成物に含んでよい。こうした薬剤は、注入カテーテル周囲の肉芽組織から
リンパ管への活性薬剤の流動を増加させる。1つの実施形態では、組織液内の静水圧を増
加させる薬剤を含んでよい。こうした薬剤には、例えば、ヒスタミン、2〜3%高張生理
食塩水、尿素、及びグルコースが含まれる。製剤に高張性を付与するための他の薬剤には
、グリセリン、デキストロース、マンニトール、NaCl、及びKCl、ならびに既に記
載した他のものが含まれる。1つの実施形態では、組織液内の水分量を増加させる薬剤を
含んでよい。こうした薬剤には、例えば、水、ヒスタミン、及び2〜3%高張生理食塩水
が含まれる。別の実施形態では、筋肉動作及び分時換気量の増加によってリンパ流動を増
加させる薬剤を含んでよい。
【0123】
ある実施形態では、活性薬物(例えば、インスリン)の分解を最小化する薬剤を、医薬
組成物に含んでよい。理論に拘束されることなく、そのような薬剤は、好中球、単球、マ
クロファージ、リンパ球及び血小板の活性を阻害し、これらは、組織の外傷後に肉芽組織
内に蓄積し、注入カテーテル周囲のインスリンを分解するプロテアーゼ、リパーゼ、酸素
ラジカル、IL−1、IL−6、IL−8、MCP−1、及びTNFを放出すると考えら
れる。こうした薬剤には、限定はされないが、デキサメタゾン、コルチゾール、ソルメド
ロール、及びメドロールなどの糖質コルチコイド、リドカイン、ブピバカイン、プロカイ
ン、エチドカイン、ロピバカイン、メピバカイン、イソフルラン、ハロタン、セボフルラ
ン、デスフルラン、及びエンフルランなどの麻酔剤、アプロチニンまたはtraysyl
ol、アスピリン及び非ステロイド抗炎症剤(NSAID)、クロモグリク酸ナトリウム
、ならびにシクロスポリン、タクロリムス、及びシロリムスなどの免疫抑制剤が、単独ま
たは組み合わせで含まれる。
【0124】
ある実施形態では、創傷治癒過程を促進する薬剤を、医薬組成物に含んでよい。1つの
実施形態では、例えば、エイコサノイドの活性を阻害する抗炎症剤を含んでよい。こうし
た薬剤には、限定はされないが、アスピリン及びNSAID、抗炎症性サイトカイン、糖
質コルチコイド、シクロスポリン、タクロリムス(Prograf)、シロリムス、(ラ
パマイシン、Rapamune)、ブラジキニン、アデノシン、一酸化窒素(NO)、マ
トリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、エキソペプチダーゼ(例えば、アミノペプチ
ダーゼ、ジペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、トリペプチジルペプチダーゼ、ア
ンジオテンシン変換酵素、セリン型カルボキシペプチダーゼ:カテプシンA、メタロカル
ボキシペプチダーゼ:カルボキシペプチダーゼ、メタロエキソペプチダーゼ)、エンドペ
プチダーゼ(例えば、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プ
ロテアーゼ、メタロエンドペプチダーゼ、セクレターゼ)、ならびにデオキシリボヌクレ
アーゼが、単独または組み合わせで含まれる。
【0125】
いくつかの態様では、本発明は、本明細書で説明されるインスリンセットを使用した活
性薬剤(例えば、インスリンまたは他の活性薬剤)の投与による、患者における状態の治
療または防止方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明は、本明細書で説明され
るインスリンまたはインスリンアナログを含む医薬組成物または医薬製剤のいずれかを使
用して、速効型インスリンで治療される糖尿病または他の状態を有する患者の治療方法を
提供する。本発明は、本明細書で説明される速効型インスリン製剤の送達のためのインス
リン注入セットのいずれかを使用した、糖尿病を有する対象の治療方法も提供する。1つ
の実施形態では、対象は、1型糖尿病及び/または2型糖尿病を有する。いくつかの実施
形態では、患者は、糖尿病耐性を示す。さらなる実施形態では、対象は、妊娠糖尿病を有
する。ある実施形態では、対象は、基礎インスリンの投与計画が進行中である。基礎イン
スリンは、ボーラス注射として、1日に1〜3回投与されてよく、または継続注入によっ
て投与される。継続注入は、本明細書で説明されるインスリンまたはインスリンアナログ
を含む医薬組成物または医薬製剤のいずれかでよく、本明細書で説明される注入セットの
いずれかを利用してよい。
【0126】
任意選択で、対象は、肥満または代謝症候群などの、インスリン投与が有益であり得る
代謝病に罹患していてよい。本明細書では、「代謝病(metabolic disea
se)」という用語は、代謝異常、代謝における不均衡、または不十分な代謝恒常性維持
を発症する特定された疾患の群を意味する。
【0127】
1つの実施形態では、代謝病は、肥満である。例えば、対象は、中心性肥満に罹患して
いてよい。いくつかの実施形態では、肥満は、単純性肥満(食事性肥満であり、身体が利
用できるよりさらに多くのカロリーを摂取することから通常もたらされる)、症候性肥満
(例えば、クッシング症候群及び多嚢胞性卵巣症候群などの根底に存在する医学的状態か
ら通常もたらされる)、及び小児肥満の内の1つである。いくつかの実施形態では、肥満
は、30〜34.99のBMIを含むクラスI、35〜39.99のBMIを含むクラス
II、及び40を超えるBMIを含むクラスIIIとして分類される。さらに、本発明は
、重度肥満、病的肥満、及び超肥満としてさらに分類されるクラスI、II、またはII
Iのいずれかの肥満向けに提供される。
【0128】
さらなる実施形態では、本発明は、本明細書で説明されるインスリンを含む医薬組成物
、製剤、または注入セットのいずれかを使用している、前糖尿病性である対象の治療方法
を提供する。空腹時血糖異常(impaired fasting glucose)(
IFG)または耐糖能異常(impaired glucose tolerance)
(IGT)とも呼ばれる前糖尿病は、2型糖尿病への前触れの状態である。空腹時血漿グ
ルコースが、100〜125mg/dL(5.56〜6.94mmol/L)であるか、
または75gのグルコース負荷後2時間において、血漿グルコースレベルが140〜19
9mg/dL(7.78〜11.06mmol/L)であるか、またはACレベルが5
.7〜6.4%であるとき、前糖尿病は、診断される。介入治療及び適切な治療が無く、
前糖尿病を有する人々は、2型糖尿病を発症するリスクに瀕している。
【0129】
さらなる実施形態では、本発明は、注入セットを介して、本明細書で説明される医薬組
成物または医薬製剤の1つを投与することによる、糖尿病を有する対象の治療方法を提供
し、当該注入セットは、3日毎、または4日毎、または5日毎、または6日毎、または7
日毎、または8日毎、または9日毎、または10日毎、または11日毎、または12日毎
、または13日毎、または14日毎、または15日毎、または16日毎、または17日毎
、または18日毎、または19日毎、または20日毎、または21日毎、または22日毎
、または23日毎、または24日毎、または25日毎、または26日毎、または27日毎
、または28日毎、または29日毎、または30日毎、または31日毎に交換される
【0130】
医薬組成物、医薬製剤、及び/または注入セットは、食事前または食事中のインスリン
投与に使用してよい。送達されたインスリンは、迅速吸収されるため、肝臓におけるグリ
コーゲンからグルコースへの変換を遮断でき、それによって、高血糖を防止する。1つの
実施形態では、医薬組成物、医薬製剤、及び/または注入セットは、食事の約60分未満
前、約50分未満前、約40分未満前、約30分未満前、約20分未満前、約15分未満
前、約10分未満前、または約5分未満前、あるいは、食事開始時とほぼ等しい時間にお
ける速効型インスリンの投与に使用される。1つの実施形態では、医薬組成物、医薬製剤
、及び/または注入セットは、食事開始の約10分〜約20分以内(例えば、食事開始前
または食事開始後)のインスリン投与のために使用される。
【0131】
様々な実施形態では、医薬組成物または医薬製剤は、食事と関連して、毎日、少なくと
も1回、少なくとも2回、少なくとも3回、少なくとも4回、少なくとも5回、またはよ
り多い回数、注入セットを使用して、または使用せずに投与される。1つの実施形態では
、医薬組成物または医薬製剤は、食事摂取と関連して、毎日少なくとも3回、(注入セッ
トを使用して、または使用せずに)投与される。ある実施形態では、医薬組成物または医
薬製剤は、高血糖の症状に合わせて投与される(または送達が有効にされる)。
【0132】
ある実施形態では、医薬組成物または医薬製剤は、ボーラス皮下注射として、(注入セ
ットを使用して、または使用せずに)投与される。例えば、投与は、単回ボーラス皮下注
射を介して達成してよい。1つの実施形態では、医薬組成物または医薬製剤は、速効型イ
ンスリン送達のための、本明細書で説明される注入システムなどの注入システムを介して
投与される。いくつかの実施形態では、医薬組成物、医薬製剤、及び/または注入セット
は、低血中グルコースレベルの検出時に、速効型インスリンを自動的に投与する。低血中
グルコースレベルは、本明細書で説明されるインスリン注入セットなどのインスリン注入
システムから近位または遠位のセンサーによって検出されてよい。
【0133】
いくつかの実施形態では、投与される医薬組成物または医薬製剤の量は、変動する。い
くつかの実施形態では、インスリン注入セットによって送達される速効型インスリン組成
物の量は、変動する。様々な実施形態では、注射物量は、約2ml未満、約1.9ml未
満、約1.8ml未満、約1.7ml未満、約1.6ml未満、約1.5ml未満、約1
.4ml未満、約1.3ml未満、約1.2ml未満、約1.1ml未満、約1.0ml
未満、約0.9ml未満、約0.8ml未満、約0.7ml未満、約0.6ml未満、約
0.5ml未満、約0.4ml未満、約0.3ml未満、約0.2ml未満、もしくは約
0.1ml未満、または約90μl未満、または約80μl未満、または約70μl未満
、または約60μl未満、または約50μl未満、または約40μl未満、または30μ
l未満、または約20μl未満、または約10μl未満、または約9μl未満、または約
8μl未満、または約7μl未満、または約6μl未満、または約5μl未満、または約
4μl未満、または約3μl未満、または約2μl未満、または約1μl未満、または約
0.5μl未満、または約0.1μl未満であり、それらの間の値及び範囲がすべて含ま
れる。
【0134】
医薬組成物または医薬製剤の投与は、1つまたは複数の低出力超音波(LITUS)、
機械的マッサージ、及び電気泳動の使用を伴ってよい。こうした応用の組み合わせは、例
えば、循環へのインスリン吸収速度の増進、及び/またはインスリン薬物動態の迅速化促
進などにおいて相乗効果を提供すると考えられる。1つの実施形態では、超音波、機械的
メッセージ、及び/または電気泳動は、ボーラス注入後、少なくとも約4時間、少なくと
も約3時間、少なくとも約2時間、少なくとも約1.5時間、少なくとも約60分間、少
なくとも約50分間、少なくとも約40分間、少なくとも約30分間、少なくとも約20
分間、少なくとも約10分間、または少なくとも約5分間、適用される。1つの実施形態
では、超音波、機械的メッセージ、及び/または電気泳動は、ボーラス注入後、少なくと
も約60分間適用される。別の実施形態では、超音波、機械的メッセージ、及び/または
電気泳動は、ボーラス注入後、少なくとも約30分間適用される。さらなる実施形態では
、超音波、機械的メッセージ、及び/または電気泳動は、ボーラス注入前、及び/または
注入後、約10分間適用される。超音波、機械的メッセージ、及び/または電気泳動は、
予め設定された時間、自動的に作動してよい。あるいは、超音波、機械的マッサージ、ま
たは電気泳動は、アルゴリズムに基づいて停止されてよく、当該アルゴリズムは、入力と
して血中グルコースレベルを任意選択で追跡してよい。あるいは、超音波、機械的メッセ
ージ、及び/または電気泳動は、対象によって手動で停止されてよい。
【0135】
1つの実施形態では、注入セットは、表皮に設置されてよく、約1/4日毎、約1/2
日毎、約3/4日毎、約1日毎、約1.5日毎、約2日毎、約2.5日毎、約3日毎、約
3.5日毎、約4日毎、約5日毎、約6日毎、約7日毎、約8日毎、約9日毎、約10日
毎、約11日毎、約12日毎、約13日毎、約14日毎、約15日毎、約16日毎、約1
7日毎、約18日毎、約19日毎、約20日毎、約21日毎、約22日毎、約23日毎、
約24日毎、約25日毎、約26日毎、約27日毎、約28日毎、約29日毎、または約
30日毎に交換されてよい。
【0136】
1つの実施形態では、対象は、医薬組成物または医薬製剤を、人工膵臓システムによっ
て制御される基礎インスリン組成物と共に、または基礎インスリン組成物は無しに、受け
入れてよく、当該人工膵臓システムは、グルコースセンサーをさらに含んでよい。例えば
、対象は、グルコースセンサーが検知する高血糖の消失に合わせて、注入セットによって
送達される速効型インスリン組成物を受け入れてよく、対象は、人工膵臓システムによっ
てすべて制御される長期作用型基礎インスリン組成物の定期的投与(例えば、毎日1〜3
回)を受けてもよい。
【0137】
基礎インスリンが送達される場合、いくつかの実施形態では、基礎インスリンは、毎日
、約10U〜約500Uのインスリン用量で注入され、例えば、約10U〜約100Uの
インスリンである。
【0138】
本発明は、下記の非限定実施例によってさらに示される。
【実施例】
【0139】
実施例1:カルシウムイオンキレート剤を含むインスリン製剤を使用した正常血糖クラン
プ試験
正常血糖クランプ試験は、Yorkshireブタで実施し、インスリン吸収の薬力学
(PD)を試験した。試験日に動物を、イソフルランでそれぞれ麻酔し、気管内に挿管し
た。酸素飽和度、及び呼気終末COを継続的に監視した。内在性の膵臓α及びβ−細胞
の分泌を遮断するために、クランプ開始前及びその後継続的に、ブタに、酢酸オクトレオ
チドを静脈注射した。IVカテーテルを設置し、ベースライン正常血糖を10%デキスト
ロース注入で確立した。
【0140】
襟首に試験製剤の皮下注射を実施した。すなわち、皮膚を挟み、注射実施前に針を0.
8mm挿入した。
【0141】
可変速度グルコース注入(variable−rate glucose infus
ion)(GIR)を実施し、GIRが事前のインスリンベースラインに回帰するまでの
3〜4時間、血中グルコース(BG)を約85mg/dlで維持した。グルコースクラン
プのためにコンピューター化されたプロトコルを使用した。下記のスケジュールに従って
、インスリンアッセイ用に、2mlの血液試料を得た。すなわち、インスリン送達後、0
〜40分では、5分間隔、50〜140分では、10分間隔、及び160分からGIRが
ベースラインに戻る時点までは、20分間隔である。
【0142】
それぞれの分析に向けて、生データではなく、適合曲線を使用した。GIRをグラフ化
し、曲線パラメーターを計算した。すなわち、最大効果の半分までの時間(早期)、最大
効果の半分までの時間(後期)、最大効果までの時間、及びベースライン上の曲線下面積
(AUC)である。
【0143】
(亜鉛を含まない製剤において安定なインスリンアナログである)Fluorolog
(Asp B10、オルトモノフルオロフェニルアラニン−B24、リスプロインスリン
)の製剤を含む、亜鉛を含まないリン酸緩衝剤を、5mMのEDTAを含む(N=2)ま
たは含まない(N=4)、U100(N=4)濃度及びU400(N=2)濃度で投与し
た。インスリン作用(GIRがそのピークの半分に達するまでの時間と定義される)の発
現は、EDTAを含まないものと比較して、EDTAを含む製剤では、2倍速かった。図
4。
実施例2:エネルギー送達を使用した正常血糖クランプ試験
【0144】
正常血糖クランプ試験は、Sinclairブタで実施し、インスリン吸収の薬物動態
(PK)及び薬力学(PD)を試験した。試験日に動物を、イソフルランでそれぞれ麻酔
し、気管内に挿管した。酸素飽和度、及び呼気終末COを継続的に監視した。内在性の
膵臓α及びβ−細胞の分泌を遮断するために、クランプ開始前及びその後継続的に、ブタ
に、酢酸オクトレオチドを静脈内注射した。IVカテーテルを設置し、ベースライン正常
血糖を10%デキストロース注入で確立した。
【0145】
ZetrOZ UltrOZ低出力超音波(LITUS)治療機器を開始し、注射に先
立ち、30分間、注射部位を覆って設置した(図5)。UltrOZ機器は、直径約4c
mであって、獣医学的用途でデザインされており、そして注入部位付近において、約50
mW/cm2のエネルギー濃度、3MHzでLITUSを送達する。襟首にhumalo
gの皮下注射を実施した。すなわち、皮膚を挟み、注射実施前に針を0.8mm挿入した
。機器は、注入後に交換し、残りの手順の間、留置した。LITUSへのこの暴露が、イ
ンスリン分解の原因とならないことを検証するため、Humalogの試料をLITUS
のこの出力に、37℃で48時間暴露し、その後、HPLCによる化学分解の証拠、また
は視覚的な原線維形成は、検出されなかった。
【0146】
可変速度グルコース注入(GIR)を実施し、GIRが事前のインスリンベースラインに
回帰するまでの3〜4時間、BGを約85mg/dlで維持した。グルコースクランプの
ためにコンピューター化されたプロトコルを使用した。下記のスケジュールに従って、イ
ンスリンアッセイ用に、2mlの血液試料を得た。すなわち、インスリン送達後、0〜4
0分では、5分間隔、50〜140分では、10分間隔、及び160分からGIRがベー
スラインに戻る時点までは、20分間隔である。
【0147】
こうした分析のそれぞれに向けて、生データではなく、適合曲線を使用した。GIRをグ
ラフ化し、曲線パラメーターを計算した。すなわち、最大効果の半分までの時間(早期)
、最大効果の半分までの時間(後期)、最大効果までの時間、及びベースライン上の曲線
下面積(AUC)である。
【0148】
こうした試験は、注射部位を超音波に暴露したとき、PKの迅速化、及びPD発現の迅
速化(図6)が、達成されたことを示した。
実施例3:電場におけるインスリンの動き
【0149】
電気泳動を、皮下組織の中隔においてみられるものと類似のヒドロゲル媒体を介した標
的方向での皮下投与インスリンの拡散を加速する電気泳動使用の効果を評価するため、市
販のイオン泳動機器の標準である、電流0.5mA/cmの下、15分間、アクリルアミ
ドゲル中で様々なインスリンアナログの移動速度を試験した。様々な正味電荷を有するイ
ンスリンアナログを試験した。Humalog(登録商標)に加え、ヒトインスリンと比
較し、より顕著に負に荷電している、Asp−B10オルト−モノフルオロフェニルアラ
ニン−B24、リスプロインスリン(Fluorolog)、Glu−B31 Glu−
B32インスリン(Hexalog−1)、及びGlu−A8 Glu−B31 Glu
−B32インスリン(Hexalog−2)もまた、試験した。結果(表3)は、インス
リンが、生理学的に許容可能な電場下で、高度に可動的であり、より負に荷電したインス
リンアナログは、さらにより可動的であることを示唆する。
【表3】

実施例4:組織におけるインスリンの動き
【0150】
現地の屠殺場から得た新鮮ブタ腹部皮膚組織を使用し、皮下組織を介する移動に対する
電場の効果を検討した。これを実施するため、最大12個の試料を同時に試験可能な改変
Franz装置を開発した(図12A、12B)。直径3cmである全層ブタ皮膚組織プ
ラグを試験用液2mlの下に陰極を含むリザーバーを覆う各ウェルに皮下組織を下にして
設置した。その後、装置を反転させ、実験を行った。
【0151】
加熱ランプを使用し、組織及び試験溶液を37℃で維持し、組織に隣接した、プレキシ
ガラスプレート間に設置したデジタル温度計プローブで監視した。陽極を、表皮面に設置
した伝導性ペーストへ挿入した。その後、複数の電気泳動電源を利用し、10Vまたは2
0Vの起電力電位を、それぞれの負極−陽極対にわたって、1時間発生させた。電流は、
約20mAで典型的には開始し、継時的に約5mAまで典型的には下降した。これは、イ
オンの枯渇によるものである可能性がある。10Vを受けたものと比較し、20ボルトを
受けたウェルでは、電流が高くなる傾向があった。安定であり、微量かつ低頻度の脱色し
か起こさなかったため、ニクロム(80/20 ニッケル/クロム)電極を選択した。
【0152】
ブロモフェノールブルー(BPB)溶液を使用し、装置を試験した。ブロモフェノール
ブルーは、0.67kDaの色素であり、pH4.6を超えると青色に見えと共に中性p
H付近で負の電荷を帯び、インスリンのそれと類似している。電圧がオフであったときと
比較し、電圧がオンであったときに、当該色素が顕著に移動することを示せた(図13
。電圧処理した組織において、表皮面は、暗青色であった。側面図によって、電圧処理さ
れた組織において、色素が皮下組織を介して浸透したことが示された(しかし、0Vでは
浸透しなかった)。これにより、荷電化学物質が皮下組織を介して移動することが示され
た。
【0153】
シアニン−5−標識されたインスリンを使用したパイロット実験を次に実施した(Cy
5−インスリン、P/N IS1−S5−1、Nanocs,Inc.)。これは、シア
ニン−5−NHS−エステルに結合したヒトインスリンであって、619DaのMWを有
し、647nmで最適に励起し、662nmがピークであるエネルギーを有して放出する
蛍光体である。製造者によれば、Cy5−インスリンにおけるインスリン分子は、それぞ
れが2〜7の蛍光体単位で標識されている。蛍光体標識効率の通常の分布を想定すると、
インスリン分子の約2%が1機能性蛍光体単位を有しているであろう。中性pHでのCy
5は、+1の正味電荷を有し、インスリンは、中性pHでは、−2の正味電荷を有するた
め、単一の標識されたCy5−インスリンの平均全体電荷は、負であることになり、結果
的に陽極に移動する。
【0154】
図14は、10ボルトの電圧差を適用した2時間の間、Cy5−インスリン(0.62
Uインスリン/ml)に曝露した薄切片におけるCy5−インスリンの分布を示す。1時
間電気泳動した後、組織を除去し、表皮面に対し垂直平面で皮膚ディスクの中心を介して
二等分し、4%のパラホルムアルデヒド中(pH7.4)に18〜24時間置き、続いて
、OCT内に包埋されるまで、30%のスクロースに移した。それぞれの凍結OCTブロ
ックから、14μm切片を切り、顕微鏡スライドに乗せ、Nikon逆重畳積分明視野−
落射蛍光顕微鏡の10X対物レンズを介して画像化した。当該顕微鏡は、Cy5の吸収及
び放出スペクトルに適したキューブフィルター、ならびに電荷結合素子(CCD)デジタ
ルカメラを装備している。明視野(BF)画像は、左側に表皮、及び右側に皮下組織を有
する全皮膚層を示す。Cy5標識は、皮下組織に優位に存在していることが見て取れるが
、真皮及び表皮にも浸透しており、蛍光タグを有するインスリンの全皮膚層を介した移動
を示している。
【0155】
次に、非標識インスリンリスプロを使用して実験を実施した。非標識インスリンリスプ
ロの移動を免疫組織化学(IHC)によって検出し、Cy5−インスリン実験について上
で説明したものと類似のプロトコルに従って処理した。1つの顕微鏡スライドをH&Eで
染色し、隣接するスライドは、Guineaブタポリクローナル抗体(Ab)(Abca
m ab7842)で染色してから、ヤギ抗GuineaブタポリクローナルIgG H
&L(Alexa Fluor(登録商標)594、Abcam ab150188)で
検出した。この実験の顕微鏡画像は、図15に示され、電場影響下での組織を介したイン
スリンの移動を示す。
実験5:製剤を介したインスリン吸収の増進
【0156】
Yucatanブタでの5つ試験において、インスリンアナログT−0339の様々な製剤を皮下に注射し、インスリン活性の効果を、正常血糖維持に必要なグルコース注入速度によって監視した。T−0339は、GIVEQCCESICSLYQLENYCN(配列番号20)のアミノ酸配列を有するA鎖と共に、FVNQHLCGSDLVEALYLVCGERGXFYTPET(配列番号21)のアミノ酸配列を有するB鎖を有し、ここで、Xは、オルト−モノフルオロフェニルアラニンである。T−0339は、ヒトインスリンと同一の3つのジスルフィド結合、すなわち、A7をB7に繋ぐ結合、及びA20をB19に繋ぐ結合の2つの鎖間ジスルフィド結合、ならびにA6をA11に繋ぐ1つの鎖内ジスルフィド結合を有する。
【0157】
T−0339は、負に荷電(−3)しており、トリス緩衝剤にて製剤化したとき、ピー
ク力価の半分に達するのに90分を要した。しかしながら、EDTA(20mM)、クエ
ン酸塩(20mM)、及びEDTA(10mM)+クエン酸塩(8.6mM)の過剰モル
量を当該製剤に添加したとき、ピーク力価の半分に達する時間は顕著に減少した。EDT
A及びクエン酸塩は、両方、負に荷電したイオン(それぞれ、−4及び−3)であり、こ
うした分子は、皮下組織における正に荷電した電気的結合部位においてインスリンの代わ
りになり、単量体インスリンが、迅速吸収に向け、管までより自由に動くことが可能にな
ると仮定される。EDTA及びクエン酸塩の組み合わせ効果は、この試験においては、相
乗的ではなかった。図16参照。製剤は、等しい浸透圧(0.8〜0.9%のNaClと
等価)を維持するように調整された、50mMのトリス、3.2mg/mlのm−クレゾ
ール、及びグリセリンから構成された。
【0158】
図17〜19は、追加試験を示す。すなわち、図17は、Tmax1/2早期を示し、
図18は、AUC1/2後期を示し、及び図19は、Tmax1/2後期を示す。添加剤
には、EDTA、クエン酸塩、及び安息香酸ナトリウムが含まれる。
同等のもの
【0159】
本発明は、その特定の実施形態と関連して説明されたが、一方で、さらなる改変が可能
であり、この応用は、一般に、本発明の原理に従う本発明の何らかの変型、使用、または
適応を包含することが意図され、本発明が属する技術領域で既知または慣行の範囲である
ような本開示からの逸脱、ならびにここまで本明細書で示した本質的特徴、及び添付の請
求の範囲において次に示されるものに適用し得るような本開示からの逸脱が含まれると理
解されるであろう。
【0160】
当業者であれば、日常的な実験法を使用するだけで、本明細書で具体的に説明される特
定の実施例と同等な多くのものを認識、または突き止めることができるであろう。そのよ
うな同等なものは、次の請求の範囲に包含されることが意図される。
参照による組み込み
【0161】
本明細書で参照されるすべての特許及び出版物は、参照によってそれらの全体が本明細
書に組み込まれる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
単量体インスリンアナログまたは2量体インスリンアナログの有効量、及び1つまたは複数のカルシウムイオンキレート剤を含む、医薬組成物。
(項目2)
単量体インスリンアナログまたは2量体インスリンアナログの有効量、及び皮下組織における電荷の遮蔽に十分である1つまたは複数の電荷遮蔽剤の有効量を含む、医薬組成物。
(項目3)
前記組成物が、水溶性製剤である、項目1または2に記載の医薬組成物。
(項目4)
前記組成物が、皮下投与または皮内投与向けに製剤化される、項目3に記載の医薬組成物。
(項目5)
前記組成物が、インスリンのモル当たり0.05モル未満の亜鉛を含む、項目1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目6)
前記カルシウムイオンキレート剤または電荷遮蔽剤が、1つまたは複数のアミノポリカルボン酸化合物を含む、項目1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目7)
前記カルシウムイオンキレート剤または電荷遮蔽剤が、1つまたは複数のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、エチレングリコール四酢酸(EGTA)、及びシクロヘキサンジアミノ四酢酸(CDTA)を含み、前記薬剤が、任意選択でナトリウム塩またはマグネシウム塩である、項目6に記載の医薬組成物。
(項目8)
前記カルシウムイオンキレート剤または電荷遮蔽剤が、陰イオン性多糖を含む、項目1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目9)
前記カルシウムイオンキレート剤または電荷遮蔽剤が、アルギン酸を含む、項目8に記載の医薬組成物。
(項目10)
前記カルシウムイオンキレート剤または電荷遮蔽剤が、1つまたは複数の有機硫黄化合物を含む、項目1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目11)
前記カルシウムイオンキレート剤または電荷遮蔽剤が、1つまたは複数のアルファリポ酸、ジメルカプトコハク酸(DMSA)、ジメルカプロール、及びジメルカプトプロパンスルホン酸塩(DMPS)を含む、項目10に記載の医薬組成物。
(項目12)
前記カルシウムイオンキレート剤または電荷遮蔽剤が、1つまたは複数のジカルボン酸またはトリカルボン酸を含む、項目1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目13)
前記カルシウムイオンキレート剤または電荷遮蔽剤が、クエン酸またはシュウ酸を含む、項目12に記載の医薬組成物。
(項目14)
前記カルシウムイオンキレート剤が、1つまたは複数のペニシラミン、ならびにクロレラ及び/またはシラントロの抽出物または部分抽出物を含む、項目1〜5のいずれか1
項に記載の医薬組成物。
(項目15)
前記電荷遮蔽剤が、安息香酸塩である、項目1〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目16)
前記組成物が、皮下投与後約40分未満のインスリン活性の発現を提供する、項目1〜15のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目17)
前記組成物が、投与後約120分未満でTmaxに達する、項目16に記載の医薬組成物。
(項目18)
前記組成物が、約5時間以下のインスリン活性の持続時間を提供する、項目17に記載の医薬組成物。
(項目19)
前記組成物が、1〜2時間のインスリン活性の持続時間を提供する、項目18に記載の医薬組成物。
(項目20)
前記単量体インスリンアナログが、約U10〜約U500で製剤化される、項目1〜19のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目21)
前記組成物が、25℃で、インスリン原線維の実質的形成無しに、少なくとも約1ヶ月間安定である、項目1〜20のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目22)
前記組成物が、25℃で、6ヶ月後に少なくとも約90%力価を維持する、項目21に記載の医薬組成物。
(項目23)
前記単量体インスリンアナログが、原線維形成を低減または排除する1つまたは複数の変異を有する、項目21に記載の医薬組成物。
(項目24)
前記1つまたは複数の変異が、B24、B25、またはB26における変異を含む、請求項23に記載の医薬組成物。
(項目25)
前記単量体インスリンアナログが、天然ヒトインスリンのB24、B25、またはB26に対応する位置においてハロゲン化フェニルアラニンを含み、前記ハロゲン化フェニルアラニンが、任意選択で、2−フルオロ、4−クロロ、2−クロロ、または2−ブロモである、項目24に記載の医薬組成物。
(項目26)
前記単量体インスリンが、位置B24において2−フルオロフェニルアラニンを有する、項目25に記載の医薬組成物。
(項目27)
前記単量体インスリンの位置B24における前記アミノ酸が、側鎖として非平面脂肪族環を有し、位置B24における前記アミノ酸が、任意選択で、シクロヘキサニルアラニン(Cha)である、項目24に記載の医薬組成物。
(項目28)
前記単量体インスリンアナログが、天然ヒトインスリンの位置B2、B3、B4、B10、B13、B17、B28、B29、A8、A10、A12、A13、A14、A17、及びA21に対応する位置において1つまたは複数の変異を含み、任意選択で、単鎖インスリンである、項目23に記載の医薬組成物。
(項目29)
前記単量体インスリンアナログが、ProB28に対応する位置においてリジン、及びLysB29に対応するアミノ酸においてプロリンを有する、項目28に記載の医薬組
成物。
(項目30)
前記単量体インスリンアナログが、ProB28に対応する位置においてアスパラギン酸を有する、項目28に記載の医薬組成物。
(項目31)
前記単量体インスリンアナログが、AsnB3に対応する位置においてリジン、及びLysB29に対応する位置においてグルタミン酸を有する、項目28に記載の医薬組成物。
(項目32)
前記単量体インスリンアナログが、1つまたは複数の、
A3に対応する位置におけるLeuと、
A8に対応する位置における Glu、His、Glnと、
A10に対応する位置におけるCysと、
A12に対応する位置におけるAspまたはThrと、
A13に対応する位置におけるTrp、Tyr、His、Glu、Ala、またはPheと、
A14に対応する位置におけるHisまたはGluと、
A17に対応する位置におけるTrp、Tyr、Ala、His、Glu、Gln、Phe、またはApnと、
A21に対応する位置におけるGlyと、
B2に対応する位置におけるCysと、
B3に対応する位置におけるLysと、
B4に対応する位置におけるCysと、
B10に対応する位置におけるAspと、
B13に対応する位置におけるTrp、Tyr、Ala、His、Glu、Phe、Apn、またはGlnと、
B17に対応する位置におけるTrp、Tyr、His、またはGlnと、
B24に対応する位置におけるTrp、Tyr、His、Gln、Asp、Thr、Ala、Phe、またはChaと、
B29に対応する位置におけるGluと、
を含む、項目28に記載の医薬組成物。
(項目33)
前記単量体インスリンアナログが、アミノ酸B1〜B3の欠失を有する、項目21に記載の医薬組成物。
(項目34)
前記単量体インスリンアナログが、位置B29においてオルニチンまたはGluを有する、項目33に記載の医薬組成物。
(項目35)
前記単量体インスリンアナログが、C末端セグメントにおいて、アミノ酸配列KPIEE、EPIEE、POTEE、またはPOTOを有するB鎖を有し、前記C末端セグメントは、残基B28〜B32、B28〜32、B28〜B32、及びB28〜B31をそれぞれ含み、残基B31〜B32は、前記B鎖のC末端延長である、項目21に記載の医薬組成物。
(項目36)
前記単量体インスリンアナログが、前記A鎖及びB鎖間にペプチドリンカーを有する単鎖インスリンである、項目1〜35のいずれかに1項に記載の医薬組成物。
(項目37)
前記ペプチドリンカーが、4〜10個のアミノ酸であり、配列GPRRを、任意選択で含む、項目36に記載の医薬組成物。
(項目38)
前記ペプチドリンカーが、配列GGGPRR、GGPRR、GSEQRR、RREQKR、RREALQKR、GAGPRR、またはGGGPGKR、EEGSRRSR、EEGPRR、GEGPRR、AEGSRRSR、ASGSRRSR、EEGSRRD、またはEEGSRRKを有する、項目37に記載の医薬組成物。
(項目39)
前記組成物が、1つまたは複数の医薬的に許容可能な添加剤を含む、項目1〜38のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目40)
前記組成物が、1つまたは複数の医薬的に許容可能な緩衝剤、安定化剤、界面活性剤、可溶化剤、抗凝集剤、拡散増進剤、吸収増進剤、及び保存剤を含む、項目39に記載の医薬組成物。
(項目41)
前記組成物が、1つまたは複数の抗炎症剤、及び/または1つまたは複数の抗線維化剤を含む、項目39に記載の医薬組成物。
(項目42)
前記組成物が、密着結合を開くペプチド剤を含む、項目39に記載の医薬組成物。
(項目43)
前記組成物が、インスリン注入セット内で供給される項目1〜42のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目44)
第一本体、接着面、皮下注入カテーテル、ならびに1つまたは複数の超音波振動子、触覚器、及び電気泳動電極を含む、注入セット。
(項目45)
前記振動子、触覚器、及び/または電気泳動電極が、医薬製剤の、皮下デポから循環への吸収速度を増加させる、項目44に記載の注入セット。
(項目46)
前記医薬製剤が、インスリン製剤であり、任意選択で、速効型インスリン製剤である、項目45に記載の注入セット。
(項目47)
前記インスリン製剤が、安定な単量体インスリンアナログまたは2量体インスリンアナログの実質的に亜鉛を含まない製剤である、項目46に記載の注入セット。
(項目48)
前記製剤が、項目1〜43のいずれか1項に記載の医薬組成物である、項目46に記載の注入セット。
(項目49)
前記注入カテーテルが、皮下組織へ約1mm〜約10mm突出し、任意選択で、皮下組織へ7mm突出する、項目48に記載の注入セット。
(項目50)
供給チューブまたは供給チューブを接続できるポートをさらに含み、医薬組成物リザーバーを前記供給チューブに接続及び接続解除できる、項目49の注入セット。
(項目51)
前記供給チューブを介して、前記カテーテルに医薬組成物を送達するリザーバーに、操作可能なように接続されたポンプ及び制御装置をさらに含む、項目50に記載の注入セット。
(項目52)
前記制御装置が、第一本体に任意選択で含まれるマイクロプロセッサー、制御アルゴリズム、及びインターフェイス画面を含む、項目51に記載の注入セット。
(項目53)
前記第一本体に任意選択で含まれる1つまたは複数の外部ユーザー制御及び/または通信インターフェイスをさらに含む、項目52に記載の注入セット。
(項目54)
前記リザーバーが、前記第一本体から取り外しできる第二本体に含まれる、項目51に記載の注入セット。
(項目55)
前記接着面が、前記第二本体にあり、前記第二本体が、前記注入カテーテルを含む、請求項54に記載の注入セット。
(項目56)
低出力超音波(LITUS)振動子、または低周波圧電触覚器を含む、項目44〜55のいずれか1項に記載の注入セット。
(項目57)
前記LITUS振動子または触覚器が、前記第一本体内に含まれ、前記注入カテーテルの遠位末端上に任意選択で位置する、項目56に記載の注入セット。
(項目58)
前記超音波振動子または触覚器が、ポンプに電力供給するバッテリーによって電力供給され、前記ポンプにおける信号発生器によって任意選択で駆動する、項目56に記載の注入セット。
(項目59)
前記超音波振動子が、約0.2MHz〜約3MHzの範囲内、及び任意選択で約0.5MHz〜2.5MHzの範囲、及び任意選択で約1〜2MHzの範囲、及び任意選択で約1.0、1.5、または2.0MHzの信号を発する、項目56に記載の注入セット。
(項目60)
前記圧電触覚器が、約1kHz未満の周波数を有する、項目56に記載の注入セット。
(項目61)
前記信号が、連続的またはパルス状である、項目56に記載の注入セット。
(項目62)
前記接着面が、超音波を伝達可能である、項目59に記載の注入セット。
(項目63)
前記注入カテーテルの遠位末端近位に第一電気泳動電極を含む、項目44〜55のいずれか1項に記載の注入セット。
(項目64)
前記接着面が、電気的に伝導性である、項目63に記載の注入セット。
(項目65)
前記接着面に任意選択で取り付けられる、皮膚表面の第二電気泳動電極をさらに含む、項目63に記載の注入セット。
(項目66)
前記第二電極が、皮膚に対する電気的伝導性を増加させる被覆を有し、任意選択で、電気化学的なゲルまたは接着物質である、項目65に記載の注入セット。
(項目67)
前記第二電極が、前記注入カテーテルの遠位末端上に位置する、項目65に記載の注入セット。
(項目68)
前記第一及び第二電気泳動電極が、電圧源の反対端に接続される、項目65に記載の注入セット。
(項目69)
前記電圧が、定電圧であって、前記電圧が、任意選択で、1ボルト〜約15ボルトの範囲であり、任意選択で、1ボルト〜約10ボルトの範囲である、項目68に記載の注入セット。
(項目70)
前記第一電気泳動電極が、陰極であり、前記第二電気泳動電極が、陽極である、項目68に記載の注入セット。
(項目71)
前記電極が、導電体によって、インターフェイスプラグに接続され、前記プラグが、電圧源に接続及び接続解除できる、項目70に記載の注入セット。
(項目72)
前記電気泳動電極が、伝導性被覆を含む、項目70に記載の注入セット。
(項目73)
前記伝導性被覆が、抗菌特性を有する材料を含む、項目72に記載の注入セット。
(項目74)
前記抗菌性材料が、銀含有化合物を含む、項目73に記載の注入セット。
(項目75)
医薬製剤のリザーバーをさらに含む、項目44〜74のいずれか1項に記載の注入セット。
(項目76)
項目44〜75のいずれか1項に記載のインスリン注入セット、及びカテーテル挿入機器を含む、注入セットシステム。
(項目77)
糖尿病を有する対象の治療方法であって、項目1〜43のいずれか1項に記載の医薬組成物の前記対象への投与を含む、方法。
(項目78)
前記患者が、1型糖尿病または2糖尿病を有し、前記患者が、肥満または代謝病に任意選択で罹患している、項目77に記載の方法。
(項目79)
前記患者が、前糖尿病を有する、項目77に記載の方法。
(項目80)
前記組成物が、食事前の約20分未満に投与される、項目77〜79のいずれか1項に記載の方法。
(項目81)
前記組成物が、食事開始の10〜20分以内に投与される、項目77〜79のいずれか1項に記載の方法。
(項目82)
前記組成物が、食事と関連して、毎日3回投与される、項目80または81に記載の方法。
(項目83)
前記組成物が、高血糖の症状に合わせて投与される、項目77〜79のいずれか1項に記載の方法。
(項目84)
前記患者の、基礎インスリン製剤または基礎インスリンアナログ製剤の投与計画が、進行中である、項目77〜83のいずれか1項に記載の方法。
(項目85)
前記組成物が、単回ボーラス皮下注射または注入として投与される、項目77〜84のいずれか1項に記載の方法。
(項目86)
前記組成物が、項目43〜76のいずれか1項に記載の注入セットによって投与される、項目85に記載の方法。
(項目87)
前記組成物が、低血中グルコースの検出に合わせて、前記インスリン注入システムによって自動的に投与される、項目86に記載の方法。
(項目88)
前記組成物が、約0.1ml未満の注射物量において投与される、項目86に記載の方法。
(項目89)
1つまたは複数の低出力超音波(LITUS)、機械的マッサージ、及び電気泳動が、注射部位において開始され、それにより循環へのインスリンの取り込み速度を増加させる、項目86に記載の方法。
(項目90)
前記超音波、機械的マッサージ、及び/または電気泳動が、前記注射前及び/または注射後の少なくとも10分間作動する、項目89に記載の方法。
(項目91)
前記超音波、機械的マッサージ、及び/または電気泳動が、前記注射前及び/もしくは注射後の少なくとも30分間、または前記注射前及び/もしくは注射後の少なくとも1時間作動する、項目89に記載の方法。
(項目92)
前記超音波、機械的マッサージ、及び/もしくは電気泳動が、前記対象によって手動で停止されるか、または予め設定された時間作動するか、またはアルゴリズムによって設定された時間作動する、項目86に記載の方法。
(項目93)
前記患者が、人工膵臓システムによって制御される前記組成物を受け入れる、項目87に記載の方法。
(項目94)
糖尿病を有する対象の治療方法であって、項目44〜76のいずれか1項に記載の注入セットを使用した、速効型インスリン製剤の前記対象への投与を含む、方法。
(項目95)
前記患者が、1型糖尿病または2型糖尿病を有し、前記患者が、肥満または代謝病に任意選択で罹患している、項目94に記載の方法。
(項目96)
前記患者が、前糖尿病を有する、項目94に記載の方法。
(項目97)
前記速効型インスリンが、食事前約20分未満に投与される、項目94〜96のいずれか1項に記載の方法。
(項目98)
前記速効型インスリン組成物が、食事開始の10〜20分以内に投与される、項目94〜96のいずれか1項に記載の方法。
(項目99)
前記速効型インスリン組成物、または速効型インスリンアナログ組成物が、食事と関連して毎日3回投与される、項目97〜98に記載の方法。
(項目100)
前記速効型インスリン組成物、または速効型インスリンアナログ組成物が、高血糖の症状に合わせて投与される、項目94〜96のいずれか1項に記載の方法。
(項目101)
前記患者の、基礎インスリン製剤または基礎インスリンアナログ製剤の投与計画が、進行中である、項目94〜100のいずれか1項に記載の方法。
(項目102)
前記基礎インスリン製剤、または基礎インスリンアナログ製剤が、毎日1〜3回投与されるか、または継続注入によって投与される、項目101に記載の方法。
(項目103)
前記速効型インスリン組成物または速効型インスリンアナログ製剤が、単回ボーラス皮下注射として投与される項目94〜102のいずれか1項に記載の方法。
(項目104)
前記速効型インスリン製剤または速効型インスリンアナログ製剤が、低血中グルコースの検出に合わせて、前記インスリン注入システムによって自動的に投与される、項目1
02に記載の方法。
(項目105)
超音波、機械的マッサージ、及び/または電気泳動が、前記速効型インスリン製剤または速効型インスリンアナログ製剤の注射前及び/または注射後の少なくとも約10分間作動する、項目94〜104のいずれか1項に記載の方法。
(項目106)
超音波、機械的マッサージ、及び/または電気泳動が、前記速効型インスリン製剤もしくは速効型インスリンアナログ製剤の注射前及び/もしくは注射後の少なくとも約30分間作動するか、または前記速効型インスリンまたはアナログの注射前及び/もしくは注射後の少なくとも1時間作動する、項目105に記載の方法。
(項目107)
前記超音波、機械的マッサージ、及び/または電気泳動が、前記対象によって手動で停止されるか、または予め設定された時間作動するか、またはアルゴリズムによって設定された時間作動する、項目105または106に記載の方法。
(項目109)
前記患者が、人工膵臓システムによって制御される速効型インスリン組成物、及び基礎インスリン組成物を受け入れる、項目94〜107のいずれか1項に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【外国語明細書】
2019081773000001.pdf