【解決手段】上ガイドレール10に沿って左右方向に走行可能なフック部材50を有し、開閉扉3a、3bがフック部材50に吊り下げる態様で取り付けられる商品陳列什器1であって、開閉扉3a。3bが持ち上がるのを規制するストッパー92が上下方向に移動可能に設けられ、フック部材50または開閉扉3a、3bのいずれか一方に一体に取り付けられる開閉扉持ち上がり防止装置80を備えている。
前記ストッパーは、前記フック部材と前記開閉扉との間に設けられた取付用スペースに向けて上下方向に移動することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の商品陳列什器。
回転軸を有し、前記ストッパーが前記回転軸を中心に回動しながら上下方向に移動するように構成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の商品陳列什器。
前記開閉扉持ち上がり防止装置は、前記開閉扉が開閉する左右方向に延びるラックと、前記ラックと噛合して前記回転軸を中心に回転しながら左右方向へ移動するピニオンとを有し、前記ストッパーを前記ピニオンに取り付けて、前記ストッパーが前記ピニオンと共に回動しながら上下および左右方向に移動するように構成したことを特徴とする請求項4に記載の商品陳列什器。
前記開閉扉持ち上がり防止装置の手前側に位置する表出面を前記フック部材または前記開閉扉から表出させ、前記回転軸の左右方向の位置を前記表出面から目視可能に構成したことを特徴とする請求項5に記載の商品陳列什器。
上ガイドレールに沿って開閉方向に走行可能なフック部材を有し、開閉扉が前記フック部材に吊り下げる態様で取り付けられる商品陳列什器に取り付けられる開閉扉持ち上がり防止装置であって、
前記開閉扉が開閉する左右方向に延びるラックと、前記ラックと噛合して回転軸を中心に回転しながら左右方向へ移動するピニオンとを有し、前記開閉扉が持ち上がるのを規制するストッパーを前記ピニオンに取り付けて、前記ストッパーが前記ピニオンと共に回動しながら上下および左右方向に移動するように構成したことを特徴とする開閉扉持ち上がり防止装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態に係る食品陳列什器1(商品陳列什器)および開閉扉持ち上がり防止装置80について、図面を用いて詳細に説明する。
図1は、傾斜扉を有する食品陳列什器1の全体を示す斜視図である。また、
図2は、
図1のA−A断面図、
図3は、
図2の状態から傾斜扉3a、3bを取り外した状態を示す断面図である。さらに、
図4は、
図1のZ部の拡大図、
図5は、上部ガイドレール10の部分を拡大して示す断面図、
図6は、
図3のY部の拡大図、
図7は、
図2のX部の拡大図である。
なお、本実施の形態で使用する前後、左右、上下方向とは、
図1で示す方向をいうものとする。また、開閉扉の開閉方向とは、左右方向をいうものとする。
【0022】
食品陳列什器1は、
図1〜
図3に示すように、食品陳列什器本体2の前側に傾斜した開口部が設けられており、この開口部を覆うようにして2枚の傾斜扉3(
図1の右側に位置する前側扉3a、左側に位置する後側扉3b)が取り付けられている。より詳細には、食品陳列什器本体2の前側部分は、下側から上側に向かうに従い、後側へ斜めに傾斜するように形成されており、この傾斜面が開口している。また、傾斜扉3も同様に、食品陳列什器本体2に取り付けられた状態で、傾斜扉3の上側が下側よりも後側に位置するように傾斜した状態になる。
なお、これらの前側扉3aおよび後側扉3bは、いわゆる引き戸タイプの扉であり、左右方向に移動させることでそれぞれ開閉できるようになっている。また、この傾斜扉3はガラスなどの透明な材質で平板状に形成されており、閉じた状態で食品陳列什器本体2の内部が見えるようになっている。
【0023】
食品陳列什器本体2の内部には、商品を陳列するための棚部4a、4bが設けられている。この下側の棚部4aは、上側の棚部4bよりも手前側まで延びており、下側の棚部4aの棚面積を広く確保している。これにより、上側の棚部4bに邪魔されることなく、下側の棚部4aに陳列される商品を出し入れし易くしている。
【0024】
また、食品陳列什器本体2の天井部5には、
図1および
図4に示すように、天井部5の前側に、傾斜扉3の上部を支持するための上部ガイドレール10が取り付けられている。この上部ガイドレール10は、食品陳列什器1の左右方向の全長に亘って設けられており、この上部ガイドレール10に沿って傾斜扉3が左右方向に移動する。
【0025】
上部ガイドレール10は、
図5および
図6に示すように、下側が開口する断面略コ字形状のガイドレール本体11と、このガイドレール本体11から後側に向けて延びる取付突部11aと、このガイドレール本体11から前側に向けて延びる化粧カバー固定用突部11bとで構成されている。
【0026】
ガイドレール本体11には、断面略コ字形状の内側に向けて略水平に延びる下レール12および上レール13が設けられている。
下レール12は、ガイドレール本体11の後側面部11cおよび前側面部11dのそれぞれの下端からガイドレール本体11の内側に向けて延びており、これらの先端部同士が離間するように隙間が設けられている。
【0027】
上レール13は、下レール12の上側を覆うようにして、ガイドレール本体11の後側面部11cおよび前側面部11dのそれぞれの上下方向のほぼ中央の位置から内側に向けて延びており、下レール12と同様に、これらの先端部同士が離間するように隙間が設けられている。なお、下レール12および上レール13のそれぞれの隙間には、詳細は後述する扉体係合体30、70が挿入されるようになる。
【0028】
下レール12の上面には、下方向に円弧状に凹む態様で走行ローラー転動面12aが形成されている。一方、上レール13の下面には、上方向に円弧状に凹む姿勢制御ローラー転動面13aが形成されている。
【0029】
上レール13の上側には、この上レール13の上面によって略矩形状に画成されたクローザー取付部14が設けられており、このクローザー取付部14には、詳細は後述するクローザー60が左右方向の所定の位置に取り付けられる。
【0030】
取付突部11aは、
図6に示すように、その下面が食品陳列什器本体2の天井部5の上面に重ねられ、上側からねじ(図示せず)を締結することによって上部ガイドレール10が天井部5に固定される。また、化粧カバー20は、その後端部に設けられたフック部21aが取付突部11aの受け部に引っ掛けられ、前側下部に設けられた係止部21bが化粧カバー固定用突部11bと係合することによって着脱自在に取り付けられる。
【0031】
上部ガイドレール10の内部には、扉体係合体30、70が上部ガイドレール10の端部から挿入される。この扉体係合体30は、傾斜扉3の前側扉3aを下側に吊り下げるようにするためのものであり、扉体係合体70は、傾斜扉3の後側扉3bを下側に吊り下げるようにするためのものである。これらの扉体係合体30、70は、詳細は後述する走行ローラー34および姿勢制御ローラー35が下レール12および上レール13の転動面を転動することによって、上部ガイドレール10の左右方向に自由に移動できるようになっている。
【0032】
この扉体係合体30、70は、詳細は後述する回転軸35aの前後方向の軸長さを異ならせ、姿勢制御ローラー35の前後方向の取付位置を異ならせたものであり、使用される部材は全て同じである。より詳細には、
図5および
図6に示すように、前側の扉体係合体30(上部ガイドレール10の内部の前側を走行する)を水平方向に180度回転させ、姿勢制御ローラー35の前後方向の位置を変更したものが後側の扉体係合体70(上部ガイドレール10の内部の後側を走行する)である。そのため、以下の説明では、前側の扉体係合体30について説明し、姿勢制御ローラー35の部分以外についての後側の扉体係合体70の説明を省略する。また、扉体係合体30、70で使用される部品の機能は全て同じであるため、符号を同一にして説明する。
【0033】
図8は、扉体係合体30にフック取付部材40が取り付けられた状態を示す正面図、
図9は、
図8の平面図である。なお、
図8および
図9で示す戸開側、戸閉側の方向は、前側扉3aの開閉方向をいうものとする。
【0034】
扉体係合体30は、板金を略L字状に折り曲げた本体部31を備えており、この本体部31は、上下方向に延びる起立部31aと、前後方向に延びる水平部31bとで構成されている。
【0035】
起立部31aの左側には、上端部から上方向に突出する捕捉用突出片32が設けられている。この捕捉用突出片32の上端には、その外周を覆うようにしてゴム等の緩衝部材33が取り付けられている。
【0036】
また、起立部31aには、起立部31aの前後方向の前側に突出するように2つの回転軸34aが左右方向に間隔を空けて設けられている。これらの回転軸34aには、走行ローラー34が起立した状態(上下方向を向いた状態)で回転自在に取り付けられている。これらの回転軸34aおよび走行ローラー34は、上下方向における高さ位置が同じであり(
図8参照)、前後方向における位置も同じに(
図9参照)なるように取り付けられている。
【0037】
さらに、起立部31aには、左右2つの走行ローラーの間に、起立部31aの前後方向の前側に突出する回転軸35aが設けられている。この回転軸35aには、姿勢制御ローラー35が起立した状態で回転自在に取り付けられている。
【0038】
この回転軸35aおよび姿勢制御ローラー35は、
図8に示すように、上下方向における高さ位置(垂直方向において、前側扉3aの開閉方向と略直交する方向)が走行ローラー34よりもL1寸法だけ高くなるようにずらして配置されている。また、この回転軸35aおよび姿勢制御ローラー35は、
図9に示すように、前後方向における位置(水平方向において、前側扉3aの開閉方向と略直交する方向)が走行ローラー34よりもL2寸法だけ後側に(
図9参照)なるようにずらして配置されている。
【0039】
ここで、後側の扉体係合体70の姿勢制御ローラー35は、
図9で示す前後方向における位置が走行ローラー34よりもL2寸法だけ後側になるようにずらして配置されている。すなわち、扉体係合体70が上部ガイドレール10内に組み込まれた状態では、姿勢制御ローラー35は、前側の扉体係合体30の姿勢制御ローラー35と同様に、走行ローラー34よりも後側に位置するようになる。
【0040】
これらの走行ローラー34および姿勢制御ローラー35の外周形状は、
図9に示すように、中央部が膨らんだ円弧状に形成されている。
【0041】
また、走行ローラー34および姿勢制御ローラー35の直径は、下レール12と上レール13との間の上下方向における距離よりも小さく形成されている。より詳細には、下レール12と上レール13との間の距離は、走行ローラー34および姿勢制御ローラー35の直径に上述したL1寸法の長さを足した寸法になるようにしてある。
【0042】
水平部31bには、その下面から下方向に延びる取付ピン36が取り付けられている。この取付ピン36には、フック取り付け部材40が着脱自在に取り付けられている。また、このフック取り付け部材40は、
図5および
図6に示すように、フック部材50が取り付けられる。
【0043】
フック部材50は、
図1および
図4に示すように、前側扉3aの左右方向の長さとほぼ等しい長さを有している。また。フック部材50は、
図5および
図6に示すように、その下側に断面が略U字状のフック51が設けられている。さらに、このフック51の先端部には、断面形状が円形の円柱部52が形成されている。
【0044】
一方、前側扉3aの上部には、
図6に示すように、扉取付部材6が設けられている。この扉取付部材6には、その上部に円柱部52と係合する係合部6aが形成されている。この係合部6aは、円柱部52の直径とほぼ等しい内径を有する円弧状に形成されている。このような構造により、係合部6aを円柱部52に嵌め込むようにして係合させた状態で、前側扉3aを円柱部52の周方向に回転することができ、
図1および
図3に示すように、食品陳列什器1の開口部の傾斜に合わせて前側扉3aを傾斜した状態で取り付けることができる。また、前側扉3aを円柱部52の周方向に回転できるようにすることで、食品陳列什器1の開口部の傾斜角度が様々に異なる場合であっても、本構造で対応することができる。
【0045】
このように、前側扉3aは、上部ガイドレール10を走行する扉体係合体30に、フック取付部材40、フック部材50を介して、様々な角度に対応でき、傾斜した状態で吊り下げられて取り付けられることになる。
【0046】
なお、傾斜扉3の下側部分には、
図7に示すように、下側ローラー7が設けられている。この下側ローラー7は、棚部4aの前側先端部に配置された下側ガイドレール8の転動面に斜めに置かれており、前側扉3aを開閉させるときに下側ガイドレール8に沿って左右方向に自由に移動できるようになっている。
【0047】
一方、食品陳列什器本体2側である上部ガイドレール10のクローザー取付部14には、
図10に示すクローザー60が左右方向の所定の位置に取り付けられている。このクローザー60には、略直方体形状の本体部61の下側に、戸開側の端部から戸閉側へ向けて延びる係合体移動長穴62が形成されている。この係合体移動長穴62には、前側扉3aの閉じ際で、上述した扉体係合体30の捕捉用突出片32が入り込み(
図5および
図6参照)、本体部61内に設けられた係止体63に係合・捕捉される。この係止体63は、本体部61内に設けられた引き込み用ばね部材(図示せず)や、緩衝用ダンパー(図示せず)によって捕捉用突出片32をゆっくりと戸閉側へと強制的に引き込むように動作する。これにより、扉体係合体30に吊り下げられた前側扉3aが完全に閉じた位置まで強制的に移動するようになる。
【0048】
なお、上述したクローザー60は、開閉扉が略垂直に取り付けられる一般的な引き戸装置に用いられるものと同一のものである。このクローザー60の内部構造や取付位置、機能・作用については既知の技術であるため、これらの詳細な説明については省略する。
【0049】
図11は、フック部材50に開閉扉持ち上がり防止装置80が取り付けられた状態を正面側から見た斜視図である。また、
図12は、
図11の分解斜視図、
図13は、
図12を後側から見た分解斜視図である。さらに、
図14は、
図11の状態に、開閉扉3を吊り下げて開閉扉3aの持ち上がりを防止した状態を示す斜視図である。また、
図19は、
図14の側面図であって、(A)は動作後、(B)は動作前の状態を示すものであり、
図20は、フロントカバー83の角穴84a部分の拡大図であって、(A)は動作後、(B)は動作前の状態を示している。
【0050】
なお、フック部材50は、
図6に示すように、前側扉3aおよび後側扉3bを吊り下げるために前側と後側にそれぞれ取り付けられる。これらのフック部材50は、前側と後側で同じ構造であるため、以下の説明では前側のフック部材50について説明する。
【0051】
フック部材50の左右方向の長さは、開閉扉3aの上辺部の長さとほぼ同じであり、この左右方向の長さの一部には、
図11に示すように、開閉扉持ち上がり防止装置80が一体に取り付けられている。この開閉扉持ち上がり防止装置80は、
図14に示すように、開閉扉3aが吊り下げられた状態で、ストッパー92をその下側に向けて突出させることで、開閉扉3が上側へ持ち上がらないようにするためのものである。
【0052】
フック部材50は、アルミニウム材を押し出し成形することで長尺に形成されている。また、フック部材50は、
図11〜
図15に示すように、フック51の上側部分が断面角形中空形状に形成されており、この角形中空形状の部分に開閉扉持ち上がり防止装置80が取り付けられる。より詳細には、
図12および
図13に示すように、フック部材50の角形中空部分には、その表面50aから裏面50bまで貫通する取付穴53が設けられており、この取付穴53の後側から開閉扉持ち上がり防止装置80が嵌め込むようにして取り付けられる。
【0053】
この取付穴53は、角形中空部の上面部54が残るようにして開けられている一方、角形中空部の下面部55が残らないようにして開けられている。これにより、取り付けられた開閉扉持ち上がり防止装置80の下側は、
図11に示すように、フック51の円柱部52に臨むようになる。
【0054】
フック部材50の裏面50bには、
図13に示すように、取付穴53の左右両側にねじ穴53aが設けられている。開閉扉持ち上がり防止装置80は、取付穴82bに挿通されたねじ(図示せず)をねじ穴53aに螺合することで取り付けられる。
【0055】
開閉扉持ち上がり防止装置80が取り付けられた状態では、
図11に示すように、詳細は後述する開閉扉持ち上がり防止装置80の表出面84がフック部材50の表面50aから露出している。すなわち、
図5および
図6に示すように、フック部材50の表面50aは,食品陳列什器1の手前側から見えるようになっているので、この開閉扉持ち上がり防止装置80の表出面84についても手前側から見える位置に配置されることになる。
【0056】
図15は、開閉扉持ち上がり防止装置80を単体で示す図であって、(A)は左斜め上側から見た斜視図、(B)は左斜め下側から見た斜視図である。また、
図16は、開閉扉持ち上がり防止装置80の分解斜視図である。さらに、
図17は、開閉扉持ち上がり防止装置80の単体図であって、(A)は動作後の正面図、(B)は(A)動作前の状態を示す正面図、
図18(A)および
図18(B)は、
図17(A)および
図17(B)からフロントカバー83を取り外した状態を示す正面図である。
【0057】
開閉扉持ち上がり防止装置80は、
図16に示すように、ベース部81と、ベース部81の前側に取り付けられるフロントカバー83と、これらのベース部81およびフロントカバー83で画成される内部に組み付けられるピニオン91、回転軸93と、フロントカバー83の前側に貼られる表示シール100とで構成されている。
【0058】
ベース部81は、横長の略直方体形状に形成されている。このベース部81の後側には、左右方向に突出するようにして延びる取付面部82aが設けられている。この取付面部82aの左右の位置には、取付穴82bがそれぞれ形成されており、
図13に示すように、フック部材50の裏面50bのねじ穴53aにねじ(図示せず)によって取り付けられる。
【0059】
また、取付面部82aには、
図13に示すように、左右方向に延在する角穴82cが形成されている。この角穴82cは、取付面部82aの外側からベース部81の内部まで貫通する態様で開けられており、詳細は後述する回転軸93の後側角状部93aが挿入される。
【0060】
また、ベース部81の略直方体形状の内側は、上述したピニオン91および回転軸93が組み付けられるための空間が形成されている。このベース部81の空間の上側は、上壁部81bによって仕切られている。一方、この空間の下側は仕切られておらず、外側に解放された状態になっている。
【0061】
上壁部81bは、開閉扉持ち上がり防止装置80がフック部材50に取り付けられる際に、
図12および
図13に示すように、フック部材50の上面54と接するようにして組み立てられる。これにより、開閉扉持ち上がり防止装置80に上側へ持ち上げられる力が作用したとしても、この力を上面54で受けることができるようにしている。
【0062】
また、上壁部81bには、
図16および
図18に示すように、ベース部81の内部空間に向けて突出するラック90が設けられている。このラック90は、一般的なインボリュート歯形のものであり、開閉扉3aの開閉方向に延在し、ラック歯が下側に向くようにして配置されている。
【0063】
なお、これらのベース部81、取付面部82a、およびラック90は、樹脂材料によって一体で成型されている。また、ラック90を別体で構成し、ベース部81とは別に交換可能に構成してもよい。
【0064】
フロントカバー83は、
図16に示すように、ベース部81の前側の全体を覆うように横長に形成されている。このフロントカバー83の上面83aは、
図15aに示すように、フロントカバー83をベース部81に取り付けた状態で、上壁部81bの上面と面一になるように形成されている。
【0065】
フロントカバー83の前側の面には、
図15〜
図17に示すように、表出面84と、この表出面84の左右の両側に段差面85とが形成されている。この表出面84は、左右の段差面85に対して前側に位置するように段差状に形成されている。また、この表出面84は、
図11および
図14に示すように、フック部材50に開閉扉持ち上がり防止装置80が組み付けられた状態で、表出面84とフック部材50の表面50aとが同一面となるようにほぼ面一になっている。これにより、表出面84は、フック部材50の表面50aから手前側に表出する。
【0066】
また、表出面84には、
図15〜
図17に示すように、左右方向に長尺な角穴84aが形成されており、この角穴84aが食品陳列什器1の手前側から目視できるようになっている。
【0067】
左右の段差面85には、ねじ穴85aがそれぞれ形成されている。このねじ穴85aは、
図16に示すように、ベース部81に設けられた取付穴81aの位置に対応して配置されている。ベース部81とフロントカバー83は、取付ねじ86を取付穴81aに挿通し、ねじ穴85aに螺合することで、着脱可能に取り付けられる。
【0068】
ピニオン91は、
図16および
図18に示すように、ラック90の下側に配置され、ラック90と噛合するように組み付けられる。また、ピニオン91の回転中心には、軸挿通穴91aが前後方向に連通する態様で形成されている。この軸挿通穴91aに回転軸93を組み付けた状態では、ピニオン91は回転軸93の外周面に沿って自由に回転することができるようになっている。
【0069】
また、ピニオン91の下側には、
図16に示すように、下方向に突出するストッパー92が設けられている。また、ストッパー92の右上部分には、右方向に向けて突出する爪部92aが形成されている。このストッパー92の下面は、
図19(A)に示すように、開閉扉3の係合部6aの曲面形状に合わせて、円弧状に形成されている。開閉扉3は、上述したように傾斜した状態で取り付けられ、かつ、その角度も様々である。ストッパー92の下面の円弧状の形状は、開閉扉3が様々な角度で取り付けられたとしても、係合部6aを上から押さえることができるようにしたものである。
【0070】
回転軸93の後側端部には、角形状で後側に突出する後側角状部93aが形成されている。また、回転軸93の前側端部には、同様の形状の前側角状部93bが形成されている。この後側角状部93aは、取付面部82aの角穴82c(
図13参照)に挿入され、前側角状部93bはフロントカバー83の角穴84aに挿入される。回転軸93は、これらの角穴82c、84aに挿入された状態で、回転することなく角穴82c、84aに沿って左右方向に移動できるように案内されている。これにより、回転軸93は、ラック90とピニオン91が噛合したままの状態で、角穴82c、84aに沿って左右方向に移動できるようになっている。
【0071】
回転軸93は、
図17(A)および
図18(A)に示すように、前側角状部93bが角穴84aの右側に位置する状態で、ストッパー92がベース部81の下側に突出するようにして組み付けられる。この状態では、
図19(A)に示すように、ストッパー92が開閉扉3aの上端部の取付用スペースS(
図17(B)参照)に向けて下側に突出するようになるため、開閉扉3aが上側に持ち上がらないようになる。
【0072】
この状態から回転軸93が角穴84aの左側に移動すると、
図17(B)および
図18(B)に示すように、ピニオン91も時計回りに回転しながら左側に移動する。このとき、ストッパー92も時計回りに回転して、ベース部81の内部に収容されるとともに、爪部92aがベース部81の下側に少しだけ突出するようになる。この状態では、
図19(B)に示すように、取付用スペースSが解放され、開閉扉3aを上側に持ち上げて、自由に着脱できるようになる。
【0073】
また、フロントカバー83の角穴84aの下側には、
図15〜
図17、特に
図20に示すように、表示シール100が貼られている。この表示シール100は、開閉扉持ち上がり防止装置80の動作状態を表示するものである、詳細には、表示シール100の右側部分100aには青色を表示し、前側角状部93bがこの位置にあるときには開閉扉持ち上がり防止装置80が持ち上がりを防止している状態(ロックした状態)であることを目視で確認できるようにしている。また、表示シール100の左側部分100bには赤色を表示し、前側角状部93bがこの位置にあるときには開閉扉持ち上がり防止装置80が解除されていることを目視で確認できるようにしている。
【0074】
なお、表示シール100の表示は、上述した色分けの他に、他の色で着色することもできる。また、色の代わりに文字(例えば、ON−OFF、開−閉、Lock−Release、など)で表示するようにしてもよい。
【0075】
上述した開閉扉持ち上がり防止装置80は、ピニオン91を左右方向に移動させる動作でストッパー92を上下方向に移動させることを可能にした。この構造によって、開閉扉持ち上がり防止装置80の全体の形状を、ピニオン91が移動する方向である左右方向(開閉扉3a、3bの開閉方向)に長く形成し、上下方向の長さを左右方向と比較して短く形成することを実現した。これにより、開閉扉持ち上がり防止装置80をフック部材50に取り付ける設計において、フック部材50の上下方向の寸法をより小さく抑えることができるようになった。
【0076】
次に、本発明の実施の形態に係る食品陳列什器1および開閉扉持ち上がり防止装置80の動作・作用について詳細に説明する。
食品陳列什器1を管理する店舗の販売員(以下、作業者という)は、開閉扉3a、3bを取り外すときに、開閉扉持ち上がり防止装置80の機能を解除する。より詳細には、
図17(B)に示すように、前側角状部93bが角穴84aの左側に位置することを目視で確認した後に、開閉扉3a、3bを上側に持ち上げるようにして取り外す(
図6参照)。
【0077】
この開閉扉持ち上がり防止装置80の解除は、食品陳列什器1の手前側から開閉扉持ち上がり防止装置80を見て、下側に突出しているストッパー92を左方向に押すことで行う。このとき、棒状の治工具(例えば、ドライバーなど)をストッパー92の右側の取付用スペースSに差し込んで作業を行う。
【0078】
ストッパー92が左方向に押されたとき、開閉扉持ち上がり防止装置80内部のピニオン91は、ラック90と噛合しながら角穴82c、84aに沿って左方向に移動する。ストッパー92は、ピニオン91の回転に伴って時計回りに上側へと移動してゆき、
図18(A)および
図18(B)に示すように、ピニオン91が約90度回転したときにベース部81の内部に収容される。これにより開閉扉持ち上がり防止装置80が解除され、開閉扉3a、3bは、取付用スペースSの分だけ上側に持ち上げることができるようになる。このとき、前側角状部93bは、角穴84aの左側に位置するようになるので、作業者はこの左側に位置することを目視することで、解除されていることを容易に判別することができる。
【0079】
一方、開閉扉3a、3bを取り付けるときには、上述した作業を逆に行う。すなわち、開閉扉3a、3bを吊り下げる態様で取り付けた後(
図6参照)、開閉扉持ち上がり防止装置80を用いて開閉扉3a、3bの持ち上がりを防止する。
【0080】
その手順としては、作業者は、取付用スペースSに棒状の治工具を差し込み、下側に突出している爪部92aを右側へ押す。開閉扉持ち上がり防止装置80内部のピニオン91は、ラック90と噛合しながら角穴82c、84aに沿って右方向に移動する。ストッパー92は、ピニオン91の回転に伴って反時計回りに下側へと移動してゆき、
図18(A)および
図18(B)に示すように、ピニオン91が約90度回転したときにベース部81の下側に突出する。これにより動作が完了し、開閉扉3a、3bは、取付用スペースSの分だけ上側に持ち上げることができないようになる。このとき、前側角状部93bは、角穴84aの右側に位置するようになるので、作業者はこの右側に位置することを目視することで、持ち上がりが防止されていることを容易に判別することができる。
【0081】
このように持ち上がりが防止された状態では、開閉扉3a、3bを開閉する際に持ち上げられたとしても、ストッパー92が取付用スペースSに向けて突出しているので、開閉扉3a、3bがストッパー92に突き当たり構造的に持ち上がることがない。また、ストッパー92は、ラック90とピニオン91の噛合によって、左側へ移動させる力が作用しない限り解除位置に戻らないので、いたずらなどで開閉扉3a、3bを故意に強く持ち上げようとしても解除されることがない。一方、ストッパー92を上下方向にスライド移動させて突出させるような開閉扉持ち上がり防止装置では強い力が作用したときにストッパー92がこの力で持ち上げられて解除されてしまうおそれがあるが、これと比較してより強い力が上下方向に作用したとしても、動作した状態を維持することができる。
【0082】
また、強い力で開閉扉3a、3bを持ち上げられたときに、ストッパー92にかかる負荷は、ラック90とピニオン91を介してベース部材81に作用し、このベース部材81の上壁部81bと接するフック部材50の上面部54で受けるようになる。これにより、より強い力で上側に持ち上げられても、開閉扉持ち上がり防止装置80自体が破損し難い構造になっている。
【0083】
本発明の実施の形態に係る食品陳列什器1および開閉扉持ち上がり防止装置80によれば、上ガイドレール10に沿って左右方向に走行可能なフック部材50を有し、開閉扉3a、3bがフック部材50に吊り下げる態様で取り付けられる食品陳列什器1であって、開閉扉3a、3bが持ち上がるのを規制するストッパー92が上下方向に移動可能に設けられ、フック部材50に一体に取り付けられる開閉扉持ち上がり防止装置80を備えているので、別体で着脱するように構成されている脱落防止部材と比較して、取り外しの煩雑さがなく、取り付け忘れなどの作業ミスを引き起こすこともなくなる。そのため、構造に不慣れな店舗の販売員であっても、従来に比べて容易にロックを解除して開閉扉3a、3bを着脱することができる。
また、脱落防止部材を別体で着脱するための作業スペースを必要としないので、食品陳列什器1をより小さく構成することができる。
【0084】
また、開閉扉持ち上がり防止装置80の上下方向の寸法を、開閉扉3a、3bが開閉する左右方向の寸法よりも小さくしているので、フック部材50に開閉扉持ち上がり防止装置を取り付けるために、フック部材50の上下方向の寸法を大きくする必要がなくなる。特に、食品陳列什器1では、硝子張りの面積が広い方が商品を見やすくなるので、フック部材50の上下方向の寸法を小さく構成し、硝子面積を広く確保することができるのは非常に有用である。
【0085】
さらに、ストッパー92は、フック部材50と開閉扉3a、3bとの間に設けられた取付用スペースSに向けて上下方向に移動するようにしているので、ストッパー92を移動させるだけで、容易に開閉扉3a、3bが持ち上がるのを防止することができる。
【0086】
また、回転軸93を有し、ストッパー92が回転軸93を中心に回動しながら上下方向に移動するように構成しているので、ストッパー92を上下にスライド移動させる構造と比較して、ストッパー92に上方向に強い力が作用しても、ストッパー92が上に戻りロックが解除されることがない。そのため、いたずらなどで開閉扉3a、3bが持ち上げられたとしても、開閉扉3a、3bがロックされた状態を維持することができる。
【0087】
さらに、開閉扉持ち上がり防止装置80は、開閉扉3a、3bが開閉する左右方向に延びるラック90と、ラック90と噛合して回転軸93を中心に回転しながら左右方向へ移動するピニオン91とを有し、ストッパー92をピニオン91に取り付けて、ストッパー92がピニオン91と共に回動しながら上下および左右方向に移動するように構成しているので、ストッパー92をただ回転して突出させる構造と比較して、上方向に作用するさらに強い力が作用しても、ストッパー92が上に戻りロックが解除されることがないようにすることができる。そのため、いたずらなどで開閉扉3a、3bが持ち上げられたとしても、開閉扉3a、3bがロックされた状態を維持することができる。
【0088】
さらにまた、開閉扉持ち上がり防止装置80の手前側に位置する表出面84をフック部材50の表面50aから表出させ、回転軸93の左右方向の位置を表出面84から目視可能に構成しているので、ロック或いは解除する作業者は、この表出面84を見ることで、開閉扉持ち上がり防止装置がロックされているか(解除されているか)を目視で確認することができる。そのため、構造に不慣れな販売員であっても容易に状態を確認できるため、ロックをし忘れるなどの作業ミスを発生し難くすることができる。
【0089】
以上、本発明の実施の形態に係る食品陳列什器1について述べたが、本発明は既述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【0090】
例えば、本実施の形態では、開閉扉持ち上がり防止装置80をフック部材50側に取り付けて、ストッパー92を下側に突出させるようにしているが、開閉扉持ち上がり防止装置80を開閉扉3a、3b側に設けるようにしてもよい。この場合、開閉扉持ち上がり防止装置80のストッパー92は、開閉扉3a、3bの上側に位置する取付用スペースSに向けて突出するように構成する。この構成によっても、開閉扉持ち上がり防止装置80を用いて開閉扉3a、3bが上側に持ち上がらないようにロックすることができる。
【0091】
また、本実施の形態では、ラック90の歯形を一般的なインボリュート歯形で構成しているが、その歯形の一部に以下の変更を加えて構成することもできる。
図21は、本発明の変形例であって、(A)は開閉扉持ち上がり防止装置180のフロントカバー83を外した状態の正面図、(B)は(A)のW部の拡大図である。また、
図22は、開閉扉持ち上がり防止装置180の動作途中の状態を示す正面図である。なお、本実施形態で説明した構造と同一の部材については、同一の符号を付すことによりその詳細な説明は省略する。
【0092】
図21で示す開閉扉持ち上がり防止装置180のラック190は、本実施形態で説明したラック90の歯形を一部変形したものである。より詳細には、
図21(A)、
図21(B)に示すように、ラック190の左右方向(開閉方向)の中央部分に位置するラック歯の歯底192を、インボリュート歯形で形成された他の歯底191よりも浅く形成している。
【0093】
この構造によれば、
図22に示すように、ラック190と噛合するピニオン91は、浅い歯底192の部分で下側に押し下げられ、回転軸93の後側角状部93aおよび前側角状部93bが角穴82c、84aの縁部と摺動するようになる。これにより、ピニオン91が左右方向へ移動する動きが重くなる。すなわち、作業者が棒状の治工具を用いてストッパー92(または爪部92a)を左方向(または右方向)に押し込むときに、押し込む途中で動きが重くなる部分を通過することになる。
【0094】
これにより、作業者は、この動作が重くなったことを体感することにより、開閉扉持ち上がり防止装置180が解除(または動作)したことを認識できるようになる。すなわち、作業者は、前側角状部93bが角穴84aのどの位置にあるのかを目視で確認できるとともに、さらに、体感で開閉扉持ち上がり防止装置180の動作を確認することができる。
【0095】
なお、
図21および
図22では、1つの歯底192を浅く形成しているが、隣り合う2つ(或いは2つ以上)の歯底を浅く形成してもよい。また、少し間を開けて位置する2つの歯底を浅く形成することもできる。