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特開2019-84491担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイド、担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子触媒、及びそれらの製造方法ならびに電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-84491(P2019-84491A)
(43)【公開日】2019年6月6日
(54)【発明の名称】担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイド、担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子触媒、及びそれらの製造方法ならびに電池
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/34 20060101AFI20190517BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20190517BHJP
   B01J 35/08 20060101ALI20190517BHJP
   B01J 23/44 20060101ALI20190517BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20190517BHJP
   H01M 4/92 20060101ALI20190517BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20190517BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20190517BHJP
【FI】
   B01J37/34
   B01J37/04 102
   B01J35/08 B
   B01J23/44 M
   H01M4/86 M
   H01M4/92
   H01M8/10 101
   H01M4/88 K
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-214310(P2017-214310)
(22)【出願日】2017年11月7日
(71)【出願人】
【識別番号】591020423
【氏名又は名称】株式会社新光化学工業所
(72)【発明者】
【氏名】甲田 秀和
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 健一
(72)【発明者】
【氏名】山下 史郎
(72)【発明者】
【氏名】国上 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】国上 溥
【テーマコード(参考)】
4G169
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169AA08
4G169BA08A
4G169BA08B
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC72A
4G169BC72B
4G169BC75A
4G169BC75B
4G169CC32
4G169EA04Y
4G169EC28
4G169FA01
4G169FA02
4G169FB06
4G169FB58
4G169FC02
4G169FC04
4G169FC10
5H018AA06
5H018BB01
5H018EE03
5H018EE05
5H018HH05
5H126BB06
(57)【要約】
【課題】 担体担持パラジウムコア白金シェルのコアシェル型触媒微粒子を、コアのパラジウムの合成時からパラジウムを担体に担持させた形態で合成しようとすると、微粒子のバラツキが大きいなど、特性のバラツキが大きく、特性の揃った微粒子を安価に製造できなかった。
【解決手段】 担体共存のパラジウムの合成時から水酸化カリウムを添加すると性能が改善され、バラツキがすくなることを見出し、種々実験を行い、特性の安定に寄与する条件を見つけ、課題を解決した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコール系溶媒を含有する分散媒に担体担持パラジウム微粒子が分散しているコロイドに白金原料イオン含有溶液とアルカリ金属水酸化物溶液を加えてなる反応原料液にマイクロ波加熱により連続的に担体担持パラジウムコア粒子に白金シェルを形成する方法において、前記白金原料溶液とアルカリ金属水酸化物溶液を添加した後、遊離、配位、吸着している水酸化物イオン濃度が前記白金原料の物質量の2〜6倍になることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコロイドの製造方法において、原料成分のひとつである担体担持パラジウム微粒子が、グリコール系溶媒、担体、パラジウム原料、パラジウム原料原子の4〜7倍の物質量のアルカリ金属水酸化物を含有する反応原料液をマイクロ波加熱することで合成されるものであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、前記担体がカーボン微粒子であり、カーボン担持パラジウム微粒子の形成工程と白金シェル形成工程がひと続きの流路によりつながっているマイクロ波連続照射法により合成されることを特徴とするカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3にいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項5】
グリコール系溶媒を含有する分散媒に担体が分散している分散液に、パラジウム原料と水酸化カリウム溶液を加えて反応原料液とし、マイクロ波加熱により連続的に担体担持パラジウムナノ粒子を合成する方法において、前記パラジウム原料のパラジウム原料原子の4〜7倍の物質量の水酸化カリウムを添加することを特徴とする担体担持パラジウム微粒子コロイドの製造方法
【請求項6】
グリコール系溶媒を含有する分散媒に請求項5に記載の微粒子が分散しているコロイドを原料とし、ヘキサクロロ白金(4)酸イオン含有溶液と水酸化カリウム溶液を加えて常温または加温して担体担持パラジウムコア粒子に白金シェルを形成する方法において、前記白金原料溶液と水酸化カリウム溶液を添加した後、遊離、配位、吸着している水酸化物イオン濃度が前記白金原料の物質量の2〜6倍になることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のコロイドの製造方法において、担体がカーボン微粒子であり、カーボン担持パラジウムナノ粒子コロイドおよびそれに引き続く白金シェルの形成方法がひと続きの流路によりつながり、連続法で行うことを特徴とするカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、2−アミノエタノールが添加剤として含有されていることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜3、8のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜3、8のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物が水酸化セシウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜3、8のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物が水酸化リチウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物とともにテトラメチルグアニジンを添加することを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項13】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物とともにヘキサメチレンテトラミンを添加することを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項14】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物とともにトリエタノールアミンを添加することを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物とともにコリンを添加することを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、使用するグリコール系溶媒がエチレングリコールであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項17】
請求項1〜15のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、グリコール系溶媒にグリセリンを混合して使用することを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項18】
請求項2〜17のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、前記パラジウム原料が、塩化パラジウム(2)(PdCl)、テトラクロロパラジウム(2)酸ナトリウム(Na[PdCl])、テトラクロロパラジウム(2)酸カリウム(K[PdCl])、テトラクロロパラジウム(2)酸アンモニウム((NH)[PdCl])、酢酸パラジウム(2)(Pd(CHCOOH))、シュウ酸パラジウム(2)(PdC)、硝酸パラジウム(2)(Pd(NO)、硫酸パラジウム(2)(Pd(SO))、パラジウムアセチルアセトナート、テトラアンミンパラジウム(2)塩、ジニトロジアンミンパラジウム(2)の中から選ばれる原料を含むことを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項19】
請求項2〜18のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、前記パラジウム原料がテトラクロロパラジウム(2)酸カリウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項20】
請求項2〜18のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、前記パラジウム原料がテトラクロロパラジウム(2)酸ナトリウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項21】
請求項2〜18のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、前記パラジウム原料が酢酸パラジウム(2)であることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、担体担持パラジウムコア粒子合成産物の表面が汚染されない条件において次の白金シェル形成工程に移行することを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドにおいて、過半数の前記シェル層が5層以下であることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイド。
【請求項24】
請求項23に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドにおいて、90%以上の前記シェル層が5層以下であることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイド。
【請求項25】
請求項23または24に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドにおいて、過半数のパラジウムコア白金シェル微粒子の前記シェル層が50%以上のコア層を覆っていることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイド。
【請求項26】
請求項23または24に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドにおいて、過半数のパラジウムコア白金シェル微粒子の前記シェル層が90%以上のコア層を覆っていることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイド。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドを乾燥粉にした際、アルカリ金属イオンが乾燥粉に残存していることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法で製造した担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子を触媒として使用した固体高分子形燃料電池。
【請求項29】
0.1M過塩素酸水溶液を幅14.5cm、高さ12.5cm、300ml以上の容量を有する対流ボルタンメトリー測定用ガラス製5つ口フラスコに加え、
3L/分の窒素を30分間バブリングして酸素を追い出したものを電解液として、
白金が0.96μg含まれるように触媒インクを塗布したグラッシーカーボン部分の直径5mmのグラッシーカーボン回転電極に、
温度20℃において、
可逆水素電極を参照電極とした電位0.6Vを3秒、1.0Vを3秒の方形波を1サイクルとして電位サイクルを印可する耐久性試験を行ったとき、
0.1M過塩素酸水溶液を前記フラスコに加え、
3L/分の酸素を30分間バブリングして窒素を追い出したものを電解液として使用し、
電極の回転速度1600[回転/分]、
温度25℃、
20[mV/秒]の高電位側への走査速度、
の条件において、
可逆水素電極を参照電極とした電位0.9Vにおける酸素還元電流値を
Koutecky−Levich式より導き、溶液抵抗を補償して算出する質量活性算出法において、
37000サイクル後の酸素還元触媒としての白金質量活性、すなわち前記質量活性算出法における電流値を塗布した白金量0.96μgで除した値が耐久性試験前の質量活性の75%を維持できている
ことを特徴とするパラジウムコア白金シェル微粒子コロイド。
【請求項30】
請求項29における質量活性算出法によって算出された触媒の初期活性が600[A/g]以上であることを特徴とするパラジウムコア白金シェル微粒子コロイド。
【請求項31】
請求項1〜27のいずれか1項に記載の方法で製造したことを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子触媒。
【請求項32】
請求項29における質量活性算出法によって算出された触媒の初期活性が600[A/g]以上であることを特徴とするパラジウムコア白金シェル微粒子触媒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイド、担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子触媒、及びそれらの製造方法ならびに電池に関し、さらに具体的には、白金シェルを形成する前の担体担持パラジウムコア及び担体担持パラジウムコアを合成した後の白金シェルを形成するのに水酸化カリウム等アルカリ金属水酸化物とマイクロ波照射を利用して合成するコアシェル型微粒子に関する。なお、本発明でいう微粒子とは、一次粒子径で、パラジウムコア微粒子やパラジウムコア白金シェル微粒子を指す場合はナノ粒子を主として指す場合もあり、パラジウムコア白金シェル微粒子を担持している担体の場合は数十μm以下の粒子を主としていう場合が多い。
【0002】
さらに、本発明は、ナトリウム水酸化物とマイクロ波照射を利用して担体担持パラジウムコアを合成した後の白金シェルを形成するのにもナトリウム水酸化物とマイクロ波照射を利用して合成するコアシェル型微粒子に関する。
【背景技術】
【0003】
水素を燃料とする固体高分子形燃料電池(以下、PEFCという)は、電動輸送車両が利用可能な環境に優しいエネルギー装置と考えられている。このPEFCの電気化学触媒として、金属ナノ粒子、例えばパラジウムコア白金シュルナノ粒子のような二元金属系金属粒子は、白金のみを使用している触媒と比べて高い酸素還元活性を示すため、また、貴重な白金の使用量の低減となるため、多大な関心を集めている。
【0004】
二元金属系金属粒子を用いた金属ナノ粒子を含有する触媒は、触媒効果の最大化と導電性確保のため、活性炭、カーボンナノチューブ、グラフェンのような高い表面積を有する多孔質のカーボン材料に分散されて固定されるのが一般的である。
【0005】
近年、複数種類の金属元素からなる金属ナノ粒子は、一種類の金属のみのナノ粒子と比べて異なる特性を示すことが明らかになってきている。このため、2種類の金属を合金化させた合金ナノ粒子や、ある金属ナノ粒子を別の金属で被覆したコアシェル型ナノ粒子などが盛んに研究され、種々の提案がなされている。
【0006】
コアシェル型ナノ粒子は、外部と接触するシェル層を均一に形成することができれば、シェル金属のみのナノ粒子とは異なる触媒活性が付与されると期待されている。これは、コア粒子が下地になることにより、シェル層の電子的な性質や結晶構造の幾何学的配置が修飾を受け、より効果的に目的とする反応の活性化エネルギーを低下させるためと推察されている。
【0007】
また、触媒活性を持つ金属が非常に高価な場合は、コアシェル構造にすることで反応物と接触するシェル層に高価な金属を効果的に配置できるので経済的である。加えて、化学的に安定な貴金属をシェルとして均一に被覆することで、酸化、溶解しやすい卑金属を外部と遮蔽しつつ間接的に反応に関与させることができ、新たな触媒特性を発揮させることも可能になる。
【0008】
また、触媒活性を持つ金属が非常に高価な場合は、コアシェル構造にすることで反応物と接触するシェル層に高価な金属を効果的に配置できるので経済的である。加えて、化学的に安定な貴金属をシェルとして均一に被覆することで、酸化、溶解しやすい卑金属を外部と遮蔽しつつ間接的に反応に関与させることができ、新たな触媒特性を発揮させることも可能になる。
【0009】
少ない量の白金を効果的に使い、なるべく優れた触媒能を得ようという試みがなされており、近年では家庭用、自動車用の燃料電池の触媒のコストを下げるためにパラジウムコア白金シェル金属ナノ粒子が有効であると考えられるようにうなってきている。
【0010】
しかしながら、コアシェル型金属ナノ粒子の合成において、シェル層を均一に被覆することは非常に難しいため、合成条件は実験室における限定的なものが多く、さらに、粒子径がシングルナノメーターの小さな値になると、電子顕微鏡による詳細な観察、および電子線やX線を用いた分析も難しさを増してくるため、コアシェル構造を証明するデータも不確実さが残る場合が多かった。そのため、均一なシェル層をもつコアシェル型金属ナノ粒子を低コストで安定な品質を保ちつつ量産するプロセスはまだ実現していない。
【0011】
非特許文献1において、主に燃料電池用触媒用途に関してパラジウムコア白金シェル粒子が有望であることを示す主張がされている。
【0012】
特許文献1と2には、電極上において電位を調整することでパラジウム粒子表面に銅の単原子層を形成させ、続いて白金塩を添加することにより銅と白金を置換するアンダーポテンシャル析出法が記載されている。この方法は原理上、単原子層のシェルを形成させることができる点で優れているが、材料に均一に電子が伝達されないことや、反応物質が均一に供給されないことなどの理由から、白金によるシェル被覆が十分にされない場合がある。また、実験室で少量のコアシェル粒子を形成させて特性を分析するという目的にはかなった方法であるが、量産の際の生産性や自動化を考えた場合にはまだ難点が残る方法である。
【0013】
一方、電極を用いない無電解めっきによりシェルを形成させる方法も提案されている。特許文献3では、白金塩の種類を検討することでパラジウム粒子上に白金シェル層を形成させ、被覆率を測定しているが、満足なものではなく、シェル層が均一な厚さかどうかも確定的でない。
【0014】
コアシェル型金属微粒子を触媒として利用する場合、導電性があり、高表面積の微粒子や微粒子の連合体を担体に選び、その担体上に微粒子を目的にかなった密度で分布させることが重要であるため、粒子径はなるべく小さい方が望ましく、また、特性をそろえるために粒子径がそろっている方が望ましい。現在、触媒の調製法として用いられている含浸法では、担持された粒子が凝集しやすいこと、2種類以上の金属を均一に合金微粒子やコアシェル型微粒子にするのは困難なことなどが問題となっている。
【0015】
反応液の加熱手段として、反応液にマイクロ波を照射することが行われている。特許文献4では、半導体発振器とマイクロ波共鳴キャビティを用い、連続フロー系の反応管を電場の定在波の最も大きな位置に配置することで、急速加熱や均一性を損なうことなく化学反応のための加熱を行う試みがなされている。シングルモード加熱方式と連続フロー系を組み合わせたこの方式は、マイクロ波加熱により反応が十分に促進され、短時間で完了する場合には極めて有用である。
【0016】
液相還元法を用いてコア粒子を合成することで、シェル形成などのその後の修飾がやりやすくなるが、バッチ法を用いて生産性を上げようとすると、加熱、撹拌の不均一により核形成が不均一になりやすく、粒子径がそろわないなどの弊害があった。このため、現時点では、粒子径のそろったと称されている金属ナノ粒子のほとんどは実験室レベルであり、金属ナノ粒子を製造するにあたり、品質を犠牲にせず生産性を上げることは困難であった。
特に、パラジウムコア白金シェルナノ粒子は触媒用途として期待されているものの、均一なシェル層を安定な品質でコストを抑えて製造することは難しい。
【0017】
この点に対応した技術として特許文献5に記載の方法は、パラジウムコア粒子の合成にマイクロ波加熱を用い、水酸化物イオンを添加することでシェル形成反応を調整し、均一な白金シェル層を形成して、安定な品質および生産性向上の両立を図る技術が記載されている。
【0018】
燃料電池の酸素還元触媒用のコアシェル微粒子の製造方法として様々な方法が提案されているが、いずれの方法も、連続的に、シェル層を安定な品質でコストを抑えて製造することが困難である。例えば、特許文献5に記載の方法は、ナトリウム水酸化物イオンを添加することでシェル形成反応を調整して均一な白金シェル層の形成を目指しているが、特許文献5には安定な品質と生産性の向上の両立を図るための細部の条件は記載されていない。また、特許文献5には、ナトリウム水酸化物イオンの代わりにカリウム水酸化物イオンを添加することもコアシェル微粒子の製造に利用できることを可能性として記載しているが、可能性として記載しているだけで、詳細については全く記載がない。
【0019】
担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子の合成、特に導電性を示す担体の場合の合成条件には知られていないことが多く、効率の良い担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子の合成は極めて難しいと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2011−218278号公報
【特許文献2】特開2012−16684号公報
【特許文献3】特開2012−120949号公報
【特許文献4】特開2011−137226号公報
【特許文献5】特開2015−223535号公報
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】NEDO成果報告書:「固体高分子形燃料電池実用化推進技術開発/基盤技術開発/低白金化技術」(平成22年度〜平成24年度)平成22年度分中間報告。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の課題の1つは、カーボンのような導電性を示す担体に担持されたコアシェル型微粒子、例えば触媒用の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子を高性能で安価に提供することができる製造方法を提供することにある。
【0023】
本発明の課題の1つは、カーボンのような導電性を示す担体に担持されたコアシェル型微粒子、例えば触媒用の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子を高性能で安価に得るためのシェルの形成方法を提供することにある。
【0024】
本発明の課題の1つは、例えば高性能で安価なカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決し、係る目的を達成するため、本発明に係る発明の実施の形態は、例えば以下の構成を備える。
【0026】
課題を解決するためになされた本発明の第1の発明(以下、発明1という)は、グリコール系溶媒を含有する分散媒に担体担持パラジウム微粒子が分散しているコロイドに、白金原料イオン含有溶液とアルカリ金属水酸化物溶液を加えてなる反応原料液にマイクロ波加熱により連続的に担体担持パラジウムコア粒子に白金シェルを形成する方法において、前記白金原料溶液とアルカリ金属水酸化物溶液を添加した後、遊離、配位、吸着している水酸化物イオン濃度が前記白金原料の物質量の2〜6倍になることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0027】
発明1を展開してなされた本発明の第2の発明(以下、発明2という)は、発明1に記載のコロイドの製造方法において、原料成分のひとつである担体担持パラジウム微粒子が、グリコール系溶媒、担体、パラジウム原料、パラジウム原料原子の4〜7倍の物質量のアルカリ金属水酸化物を含有する反応原料液をマイクロ波加熱することで合成されるものであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0028】
発明1、2を展開してなされた本発明の第3の発明(以下、発明3という)は、発明1、2に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、前記担体がカーボン微粒子であり、カーボン担持パラジウム微粒子の形成工程と白金シェル形成工程がひと続きの流路によりつながっているマイクロ波連続照射法により合成されることを特徴とするカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0029】
発明1〜3を展開してなされた本発明の第4の発明(以下、発明4という)は、発明1〜3にいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0030】
課題を解決するためになされた本発明の第5の発明(以下、発明5という)は、グリコール系溶媒を含有する分散媒に担体が分散している分散液に、パラジウム原料と水酸化カリウム溶液を加えて反応原料液とし、マイクロ波加熱により連続的に担体担持パラジウムナノ粒子を合成する方法において、前記パラジウム原料のパラジウム原料原子の4〜7倍の物質量の水酸化カリウムを添加することを特徴とする担体担持パラジウム微粒子コロイドの製造方法である。
【0031】
課題を解決するためになされた本発明の第6の発明(以下、発明6という)は、グリコール系溶媒を含有する分散媒に発明5に記載の微粒子が分散しているコロイドを原料とし、ヘキサクロロ白金(4)酸イオン含有溶液と水酸化カリウム溶液を加えて常温または加温して担体担持パラジウムコア粒子に白金シェルを形成する方法において、前記白金原料溶液と水酸化カリウム溶液を添加した後、遊離、配位、吸着している水酸化物イオン濃度が前記白金原料の物質量の2〜6倍になることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0032】
発明5,6を展開してなされた本発明の第7の発明(以下、発明7という)は、発明5、6に記載のコロイドの製造方法において、担体がカーボン微粒子であり、カーボン担持パラジウムナノ粒子コロイドおよびそれに引き続く白金シェルの形成方法がひと続きの流路によりつながり、連続法で行うことを特徴とするカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0033】
発明1を展開してなされた本発明の第8の発明(以下、発明8という)は、発明1に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、2−アミノエタノールが添加剤として含有されていることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0034】
発明1〜3、8を展開してなされた本発明の第9の発明(以下、発明9という)は、発明1〜3、8のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0035】
発明1〜3、8を展開してなされた本発明の第10の発明(以下、発明10という)は、発明1〜3、8のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物が水酸化セシウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0036】
発明1〜3、8を展開してなされた本発明の第11の発明(以下、発明11という)は、発明1〜3、8のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物が水酸化リチウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0037】
発明1〜8を展開してなされた本発明の第12の発明(以下、発明12という)は、発明1〜8のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物とともにテトラメチルグアニジンを添加することを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0038】
発明1〜8を展開してなされた本発明の第13の発明(以下、発明13という)は、発明1〜8のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物とともにヘキサメチレンテトラミンを添加することを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0039】
発明1〜8を展開してなされた本発明の第14の発明(以下、発明14という)は、発明1〜8のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物とともにトリエタノールアミンを添加することを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0040】
発明1〜8を展開してなされた本発明の第15の発明(以下、発明15という)は、発明1〜8のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物とともにコリンを添加することを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0041】
発明1〜15を展開してなされた本発明の第16の発明(以下、発明16という)は、発明1〜15のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、使用するグリコール系溶媒がエチレングリコールであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0042】
発明1〜15を展開してなされた本発明の第17の発明(以下、発明17という)は、発明1〜15のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、グリコール系溶媒にグリセリンを混合して使用することを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0043】
発明2〜17を展開してなされた本発明の第18の発明(以下、発明18という)は、発明2〜17のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、前記パラジウム原料が、塩化パラジウム(2)(PdCl)、テトラクロロパラジウム(2)酸ナトリウム(Na[PdCl])、テトラクロロパラジウム(2)酸カリウム(K[PdCl])、テトラクロロパラジウム(2)酸アンモニウム((NH)[PdCl])、酢酸パラジウム(2)(Pd(CHCOOH))、シュウ酸パラジウム(2)(PdC)、硝酸パラジウム(2)(Pd(NO)、硫酸パラジウム(2)(Pd(SO))、パラジウムアセチルアセトナート、テトラアンミンパラジウム(2)塩、ジニトロジアンミンパラジウム(2)の中から選ばれる塩原料を含むことを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0044】
発明2〜18を展開してなされた本発明の第19の発明(以下、発明19という)は、発明2〜18のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、前記パラジウム原料がテトラクロロパラジウム(2)酸カリウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0045】
発明2〜18を展開してなされた本発明の第20の発明(以下、発明20という)は、発明2〜18のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、前記パラジウム原料がテトラクロロパラジウム(2)酸ナトリウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0046】
発明2〜18を展開してなされた本発明の第21の発明(以下、発明21という)は、発明2〜18のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、前記パラジウム原料が酢酸パラジウム(2)であることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0047】
発明1〜21を展開してなされた本発明の第22の発明(以下、発明22という)は、発明1〜21のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、担体担持パラジウムコア粒子合成産物の表面が汚染されない条件において次の白金シェル形成工程に移行することを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0048】
発明1〜22を展開してなされた本発明の第23の発明(以下、発明23という)は、発明1〜22のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドにおいて、過半数の前記シェル層が5層以下であることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドである。
【0049】
発明23を展開してなされた本発明の第24の発明(以下、発明24という)は、発明23に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドにおいて、90%以上の前記シェル層が5層以下であることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドである。
【0050】
発明23,24を展開してなされた本発明の第25の発明(以下、発明25という)は、発明23、24に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドにおいて、過半数のパラジウムコア白金シェル微粒子の前記シェル層が50%以上のコア層を覆っていることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドである。
【0051】
発明23,24を展開してなされた本発明の第26の発明(以下、発明26という)は、発明23、24に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドにおいて、過半数のパラジウムコア白金シェルナノ微粒子の前記シェル層が90%以上のコア層を覆っていることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドである。
【0052】
発明1〜26を展開してなされた本発明の第27の発明(以下、発明27という)は、発明1〜26のいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドを乾燥粉にした際、アルカリ金属イオンが乾燥粉に残存していることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法である。
【0053】
発明1〜27を展開してなされた本発明の第28の発明(以下、発明28という)は、発明1〜27のいずれかに記載の方法で製造した担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子を触媒として使用した固体高分子形燃料電池である。
【0054】
課題を解決するためになされた本発明の第29の発明(以下、発明29という)は、
0.1M過塩素酸水溶液を幅14.5cm、高さ12.5cm、300ml以上の容量を有する対流ボルタンメトリー測定用ガラス製5つ口フラスコに加え、
3L/分の窒素を30分間バブリングして酸素を追い出したものを電解液として、
白金が0.96μg含まれるように触媒インクを塗布したグラッシーカーボン部分の直径5mmのグラッシーカーボン回転電極に、
温度20℃において、
可逆水素電極を参照電極とした電位0.6Vを3秒、1.0Vを3秒の方形波を1サイクルとして電位サイクルを印可する耐久性試験を行ったとき、
0.1M過塩素酸水溶液を前記フラスコに加え、
3L/分の酸素を30分間バブリングして窒素を追い出したものを電解液として使用し、
電極の回転速度1600[回転/分]、
温度25℃、
20[mV/秒]の高電位側への走査速度、
の条件において、
可逆水素電極を参照電極とした電位0.9Vにおける酸素還元電流値を
Koutecky−Levich式より導き、溶液抵抗を補償して算出する質量活性算出法において、
37000サイクル後の酸素還元触媒としての白金質量活性、すなわち前記質量活性算出法における電流値を塗布した白金量0.96μgで除した値が耐久性試験前の質量活性の75%を維持できている
ことを特徴とするパラジウムコア白金シェル微粒子コロイドである。
【0055】
発明1〜27を展開してなされた本発明の第30の発明(発明30という)は、発明29における質量活性算出法において、初期活性が600[A/g]以上であることを特徴とする発明1〜27のいずれかに記載のパラジウムコア白金シェル微粒子コロイドである。
【0056】
発明1〜27を展開してなされた本発明の第31の発明(発明31という)は、発明1〜27のいずれかに記載の方法で製造したことを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子触媒である。
【0057】
発明1〜27を展開してなされた本発明の第32の発明(発明32という)は、発明29における質量活性算出法において算出された触媒の初期活性が600[A/g]以上であることを特徴とするパラジウムコア白金シェル微粒子触媒である。
【発明の効果】
【0058】
本発明の見出した方法によるカーボン担持パラジウムコア白金シェルのコアシェル型微粒子におけるカーボン担持パラジウムコア粒子の合成に水酸化カリウムなどの好適な添加剤等を用い水酸化物イオン濃度等を適切に調整すれば、前記微粒子が触媒用微粒子の場合、触媒性能が高く、耐久性の優れたカーボン担持パラジウムコア白金シェルのコアシェル型微粒子を、安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子製造方法を説明する図である。
図2】実施例の工程で作製されたカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子の透過電子顕微鏡像を説明する図である。
図3】実施例と比較例で合成された酸素還元触媒の質量活性を比べたグラフである。
図4】実施例の方法で合成されたカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子の耐久性試験における電位サイクル回数に対する質量活性の維持率の推移を説明する図である。
【符号の説明】
【0060】
1:パラジウムコア粒子の原料塩、分散剤、担体、水酸化カリウムをエチレングリコールに溶解、分散させた原料液およびそれを送液するポンプ
2:マイクロ波の電場を閉じ込める共振器構造体にマイクロ波を導入して定在波を形成させ、そこに配置した反応管内に流通させている反応液にマイクロ波を照射して加熱する反応系
3:マイクロ波加熱直後の高温の反応液を反応管外部から冷却する装置
4:白金シェル層形成の際の水酸化物イオン濃度を調整するための水酸化カリウムエチレングリコール溶液およびそれを送液するためのポンプ系
5:白金シェル層形成の原料塩を溶解させた原料液およびそれを送液するポンプ系
6a,6b:ミキサーを用いる工程
7:白金シェル形成用マイクロ波照射反応系
8:回収タンク
9:カーボン担持パラジウムコア白金シェル触媒
9a:カーボン担体
9b:パラジウムコア白金シェル触媒
10a:実施例1の負荷応答耐久性試験における初期活性を100%として表した点
10b:実施例1の負荷応答耐久性試験における5000サイクル後の質量活性の維持率を表した点
10c:実施例1の負荷応答耐久性試験における37000サイクル後の質量活性の維持率を表した点
10d:実施例2の負荷応答耐久性試験における初期活性を100%として表した点
10e:実施例2の負荷応答耐久性試験における5000サイクル後の質量活性の維持率を表した点
10f:実施例2の負荷応答耐久性試験における37000サイクル後の質量活性の維持率を表した点
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、図面を参照して本発明に係る発明の実施の形態例について詳細に説明する。なお、説明に用いる各図は本発明の例を理解できる程度に各構成成分の寸法、形状、配置関係などを概略的に示してある。また、本発明の説明の都合上、部分的に拡大率を変えて図示する場合もあり、必ずしも実施例などの実物と相似形でない場合もある。また、各図において、同様の構成には同一番号を付して重複説明を省略する。さらに、以下の説明では、誤解が生じない範囲において、金属微粒子の製造方法の説明で金属微粒子や金属微粒子の製造装置の説明を兼ねる場合があり、また、その逆の場合もある。
【0062】
触媒微粒子を例にとると、パラジウムコア白金シェル微粒子が優れた触媒効果を示すことが周知である。そこで、白金が高価であることから、白金の使用量をできるだけ少なくするとともに、触媒効果をできるだけ高め、高品質で安価な触媒にすべく、多くの当業者が多大な努力をしているのが現状である。さらに、担体に関しても、コア微粒子の合成時点から担体担持とコアの合成を同時に行えることが望まれている。
【0063】
担体共存下における液相法によるパラジウム微粒子合成過程において、カーボンブラック等の担体上の官能基や欠陥においてパラジウム微粒子の核形成が起きやすいと考えられている。そのため、担体に存在する官能基の種類、数、密度等を調整し、反応時における水素イオン濃度、水酸化物イオン濃度、パラジウム原料濃度、温度等の反応条件を適切に調整することで、担体上に目的とする粒子径と密度でパラジウム微粒子を、合成と同時に担持することができる。
【0064】
パラジウム原料として好適なものとして、塩化パラジウム(2)(PdCl)、テトラクロロパラジウム(2)酸ナトリウム(Na[PdCl])、テトラクロロパラジウム(2)酸カリウム(K[PdCl])、テトラクロロパラジウム(2)酸アンモニウム((NH)[PdCl])、酢酸パラジウム(2)(Pd(CHCOOH))、シュウ酸パラジウム(2)(PdC)、硝酸パラジウム(2)(Pd(NO)、硫酸パラジウム(2)(Pd(SO))、パラジウムアセチルアセトナート、テトラアンミンパラジウム(2)塩、ジニトロジアンミンパラジウム(2)の中から選ばれる原料を含むものを挙げることができる。
【0065】
パラジウムコア白金シェル構造が高活性、高耐久性であることは知られている。しかし、触媒微粒子の大きさは数nmであり、その数はロット内においてさえ莫大であり、それら触媒微粒子のほぼすべてにおいて上記の高活性、高耐久性の構造を有していることが要求される。このことを便宜上、触媒の品質ということにする。
【0066】
置換めっき、無電解めっきにおいて、導電性担体に担持されたコア金属粒子にシェル構造を形成させるのはさらに難易度が上がる。担体が導電性であるので電子が担体を流れ、酸化反応と還元反応が離れた位置で起こるおそれがあり、また、担体上でシェル金属の単独粒子が生成するなどの副反応が生じるおそれもある。
【0067】
均一なシェル構造を有するコアシェル金属微粒子の形成にはめっきと類似の行程が必要と思われるが、既存のめっき手法がそのまま適用できるわけではない。しかし、微粒子の表面全体にわたって、粒子内においても粒子間においても副反応なく均一にシェル層を成長させるためには、シェル原料物質の供給と反応性ができるだけ均一である必要がある。
【0068】
シェル層形成の反応性については、できるだけ、パラジウムコア粒子の表面にピンホールがなく白金シェル層が形成される反応のみを進行させ、シェル層形成完了後は反応が進行しない様に制御することが望ましい。
シェル層をできるだけ均一に形成することはコアシェル型微粒子の特性を制御する上で重要な要素という見方もある。
シェル層を均一に形成すること、シェル層を5層以下にすること、コア表面の50%以上をシェル層で覆うこと、70%以上をシェル層で覆うこと、90%以上をシェル層で覆うこと、など、用途、目的に応じて選択することも重要である。
シェル層を5層以下にすること、コア表面の50%以上をシェル層で覆うことは特性上も好ましいことであり、90%以上をシェル層で覆うことはさらに好ましいことである。
【0069】
例えば、不要な副反応経路を抑制するために、白金塩がパラジウムコア粒子、またはパラジウムコア粒子を下地とする白金シェル層表面と接触したときのみ0価の金属として析出することが必須である。つまり、下地コア粒子と接触していないのに周囲の化学種から電子を引き抜いて金属核になったり、すでに存在する白金シェル層の上に過剰なシェル層を形成するような反応は抑えなければならない。また、置換めっきにより溶媒中へ遊離したパラジウム(2)イオンが何らかのかたちで再び還元されてもいけない。
【0070】
このような反応制御を、反応液中に存在するすべてのパラジウムコア粒子と白金シェル原料塩について実現するために、添加剤を何種類も加えたりする方法は反応条件が不均一になりがちであり、とりわけ、水素を燃料とするPEFCにおいては触媒表面への有機分子の付着は活性を低下させるおそれがあり、念入りな洗浄工程が必要となってしまう。
【0071】
ここでは、液相還元法を用いてコア粒子を合成することで、シェル形成などのその後の修飾が容易になるが、バッチ法を用いて生産性を上げようとすると、加熱、撹拌の不均一により核形成が不均一になりやすく、粒子径がそろわないなどの弊害がでてくる。現在知られている粒子径のそろったと称されている金属微粒子のほとんどは実験室スケールで合成されたものであり、金属微粒子を製造するにあたり、品質を犠牲にせず生産性を上げることの難しさが証明されることにもなる。
【0072】
液相還元法における反応液の加熱手段として、特許文献5に記載された発明のように、反応液にマイクロ波を照射することが行われている。即ち、ここでは、半導体発振器とマイクロ波共鳴キャビティを用い、連続フロー系の反応管を電場の定在波の最も強度の高い位置に配置することで、急速加熱で均一性を損なうことのない化学反応のための加熱を行っている。これに狭く限定されないが、寸法と共鳴周波数を適合させたキャビティ内において単独の電磁場のモードを発生させる方式であるシングルモード加熱方式が特に好ましく、マイクロ波加熱により反応が十分に促進され、短時間で完了させる場合には極めて有用である。加えて、バッチ法で問題となる加熱、反応の不均一も著しく改善できる。
【0073】
マイクロ波照射は、反応液に照射されるマイクロ波の周波数、反応液の材料、反応液を流通させる反応管の内径、反応管の材質などによって、照射の効果が変わってくる。マイクロ波の周波数は、日本の場合、電子レンジ(周波数帯2.4〜2.5GHz)によく使われている周波数の他に、5.8GHz、0.9GHzなど、各種使うことができる。本発明の検討では2.45GHzの周波数を主として、その他に、これに狭く限定されないが、5.8GHz、0.9GHzなど他の周波数帯も用いた。
【0074】
例えば、周波数帯2.4〜2.5GHzのレンジのマイクロ波装置を用いるときは、2.4〜2.5GHzの周波数帯のいずれかの周波数でも規格内になり得る訳であることを考慮して、反応管の内径は、2.45GHzの時の最適寸法である2.9mm以内でなく、規格の範囲の最も高い周波数である2.5GHzにおいても定在波の吸収強度が所定の範囲内であるように、2.5GHzにおける反応管の内径を最適値に設定することが好ましい。この観点から、マイクロ波照射条件を特に厳密に制御するときには反応管の内径を2.9÷2.5×2.45=2.8mm以下に設定した。
【0075】
これらのことを考慮しつつ、導電性を有しており、パラジウム(Pd)を担持させる担体に適すると考えられる多くの材料と添加剤を用い、担体を選定する実験を繰り返し行った。その結果、担体をカーボンにすることで、パラジウムゴア白金シェルのコアシェル微粒子を合成し、良好な品質の触媒を実現できる可能性を見出し、以下の検討を行った。
【0076】
触媒用微粒子としてパラジウムコア白金シェルを合成する場合、微粒子を合成してから担持する方法には均一な担持が難しく貴金属微粒子のロスがあるという困難と、分散剤の除去工程が必要という困難がある。触媒微粒子を担体と混合して担持する場合、カーボン担体表面にもれなく触媒微粒子を吸着担持させるのは難しく、そうかといって、触媒微粒子を過剰に加えるとカーボン担体上で凝集が起き、有効に利用できない触媒表面が生じたり、担持されない遊離の触媒粒子が生じたりして貴金属原料が触媒として有効に機能しなくなってしまう。PEFCにおいて、電池反応に関与しない高分子分散剤や有機化合物は、触媒表面に吸着して活性サイトを塞いだり、一酸化炭素となって触媒の被毒の原因になったりして電池の不具合の原因になるので、そのような物質は極力除去しておく必要がある。しかし、高表面積のカーボンを担体とした場合、高分子分散剤や界面活性剤など疎水基を有する化合物はカーボン担体に吸着しやすく、除去しづらい。完全に除去するには念入りな洗浄の繰り返しや不活性雰囲気下での焼成等が必要であり、工程数が増えてコスト増になる。この観点から、マイクロ波加熱により貴金属微粒子をカーボン担体に担持させる方法を用いれば、金属微粒子触媒を均一に担体に担持でき、条件を整えれば貴金属原料をほぼすべて触媒として転換させることも可能であり、非常に有用であると考えられる。
【0077】
マイクロ波をよく吸収する溶媒を用いることで、ヒーターやオイルバス等の通常加熱よりも急速に且つ均一に加熱を行うことができ、短時間での反応の完結、エネルギーの有効利用等の利点を利用できる。
【0078】
グリコール系溶媒は、沸点、粘度が高く、様々な物質を溶解し、人体に対して比較的安全で、マイクロ波を吸収しやすく、弱い還元能を有するものが多く、本特許の技術に適した溶媒群である。具体的にはエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、等があるが、これらに限定されるものではない。また、上記グリコール系溶媒にグリセリン等のポリオール類や、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、グリコールエステル類等を必要に応じて加えることもできる。
【0079】
これらの観点から、これに狭く限定されないが、本発明の実施の形態例の一つでは、マイクロ波をよく吸収する代表的な溶媒であり、短時間でその沸点(196℃)近くまで加熱することができるエチレングリコールを用いることにした。
【0080】
燃料電池用アイオノマーをカーボンの分散剤として使用した場合、精製、焼成等により完全除去する必要がないことも重要である。ポリビニルピロリドン等の高分子分散剤は金属ナノ粒子の合成に広く使用されているが、これらの分散剤は金属ナノ粒子とカーボンの分散性を良好にする一方で、微粒子表面に強く吸着するので完全に除去することは難しいことがわかっており、触媒表面に残存した高分子分散剤は触媒性能を著しく害するということもわかっている。燃料電池用アイオノマーは触媒表面へのプロトンの移送のために電池作製工程で添加される電池の構成成分のひとつであるので、少量が残存しても燃料電池性能にはあまり影響しない。
【0081】
さらに、本発明の実施の形態例では、原料金属塩を還元することで金属ナノ粒子を合成している。この反応は、化学式で表現すると、
(金属イオン)+e(還元剤から供給される電子) → M(金属)・・・(1)
となる。
右項の0価の金属が数千個程度集まることで金属微粒子が構成される。
【0082】
上記の金属イオンの原料や、電子を供給するための還元剤に何を用いるかで様々な合成法が考えられるが、本発明の実施の形態例では、金属イオンとしてテトラクロロパラジウム酸ナトリウムと塩化白金酸を、還元剤としてエチレングリコールを用いた。
【0083】
エチレングリコールは加熱されると還元力をもつようになり、化学式では、
エチレングリコール → e+エチレングリコール酸化産物+水素イオン・・・(2)
と表現される。
マイクロ波で金属原料塩を含んだエチレングリコールを急速に加熱することで、エチレングリコールから急速に電子が多量に供給され、原料金属塩が急速に還元されることによって粒子径の小さい微粒子が合成できる。
【0084】
エチレングリコールのゆるやかな加熱では、金属粒子の核形成と結晶成長が穏やかになり、粒子径の大きいナノまたはミクロン粒子が生成される傾向がある。
【0085】
(2)式ではエチレングリコールからの電子の供給とともに水素イオンが放出されるが、これが蓄積すると反応速度が減少し、粒子径の小さな微粒子が形成されづらくなる。しかし、水酸化物イオンを含む化合物を添加しておくことで水素イオン濃度の増大を抑制することができて高い反応速度を維持することが可能で、結果として粒子径の小さなナノ粒子を合成することができる。
【0086】
本発明の実施の形態例では、マイクロ波加熱を用いて小さな粒子径のパラジウムコア粒子を合成し、白金のシェルについては、塩化白金酸をマイクロ波加熱または常温でゆっくりと反応させることで、白金単独の微粒子の生成を抑制し、均一な厚みのシェルを形成させている。これらの場合において、水酸化カリウムを還元反応の促進剤として用いることを特徴としている。水酸化カリウムを添加することにより、高温での還元反応はより速くなるとともに、常温でもゆるやかに反応が進行するようになり、反応性の繊細な制御が可能となる。このため、均一な厚みのシェルを形成させることができるが、特に水酸化カリウムを用いることにより、シェルをより高品質に形成することが可能となる。
【0087】
水素イオン濃度の増大を抑制する化合物としてアミン類も考えられるが、アミン類がパラジウム原料や白金原料と錯体を形成したり、生成した微粒子表面に吸着する傾向が強いため、これら原料の反応性や粒子成長の様子が複雑に変化してしまう。金属の水酸化物も水酸化物イオンの供給源として考えられるが、エチレングリコール中で十分に溶解するものでなければならない。本発明で詳述するように、本発明の発明者は多くの実験の結果、カーボン担持パラジウムコア白金シェルのコアシェル型触媒微粒子におけるパラジウムコア粒子の合成に水酸化物としての水酸化カリウムを用いることが特に好ましく、その条件を見出した。
本発明の実施の形態例では、上記の反応をカーボン担体の共存下で行っている。この場合、パラジウムナノ粒子はカーボンにくっついた状態で生成し、白金シェルもカーボン上のパラジウム微粒子の表面で成長し、カーボン担体上でコアシェル構造が形成される。
【0088】
特許文献5では、カーボン担体が共存しない環境でパラジウムコア粒子と白金シェル粒子の合成を行っているが、カーボン担体共存下では、カーボンの凝集、カーボンの反応管における閉塞、パラジウムコア粒子の担体上への不均一分布、カーボン上での白金単独粒子の生成というような触媒にとって好ましくない反応経路が生じ得ることとなる。そのため、コア粒子の合成とそのカーボンへの担持を同時に連続反応系で行い、次いで、カーボンに担持されたコア粒子に均一なシェル層の形成を行うことができる本発明の製造方法は知られていなかった。
【0089】
本発明者らは、反応における水酸化物イオンの濃度、およびその対イオンとして存在するのがカリウムイオンであることがパラジウムコア粒子、およびそれに引き続く白金シェルの形成において極めて重要であることを見出した。そして、多大な試行錯誤の結果、前記の望ましくない反応経路を抑制し、反応液を流通させながらマイクロ波を反応液に照射する連続合成法を用いて、性能の高いカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子触媒を得る工程を完成させることができた。
【0090】
担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子、例えば電池用触媒用のカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子を製造する上でとりわけ大きな課題なのが、コストの低減と性能、品質の向上である。できるだけ触媒性能が高く、耐久性に優れた性能を有し、安価に製造できる合成方法が望まれる。
【0091】
多くの実験の結果、本発明の課題の解決のための反応を効果的に進めるためには、反応のための添加物にアルカリ金属水酸化物を用いることが効果的であることを見出し、水酸化物の種類と触媒品質の関係を詳しく調べることにした。
【0092】
アルカリ金属水酸化物としては具体的に、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等を使用することができる。また、反応に関与する水酸化物イオンを増加する目的は、望まない副反応を誘導しない範囲で、アミン類、グアニジン類等の塩基性物質を添加することもできる。具体的には、アンモニア、2−アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、コリン、ブチルアミン、タウリン、グルコサミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ピリジン、トリエチルアミン、グアニジン、テトラメチルグアニジン、ヘキサメチレンテトラミン、N、N−ジイソプロピルエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン、トリエチレンジアミン等がある。
【0093】
メカニズムは定かでないが、実験の結果、反応促進のための添加剤としてのアルカリ金属水酸化物の中で、水酸化カリウムが、添加する濃度を適切に選択すれば触媒品質の改善に重要な作用をすることを見出し、詳細に調べることにした。
【0094】
反応液中における水酸化カリウム濃度の調整が重要なことより、反応系のカリウムイオンおよび水酸化物イオンが重要なはたらきをしていると考えられる。この2つの化学種を生成する物質、例えば酢酸カリウム、炭酸カリウム、リン酸カリウム等や、この2つの化学種を生成する物質の混合物、例えば水酸化ナトリウムと塩化カリウム等、でもカリウムイオンと水酸化物イオンを生成するため白金シェル形成において上記の好適な効果が生じると思われる。しかし、担体共存下においてはカリウムイオンと水酸化物イオン以外のイオンが担体の凝集等を引き起こす場合もあり、エチレングリコールを溶媒とした反応系では水酸化カリウムが最も適した添加剤であった。
【0095】
カリウムイオンはエチレングリコール中では[PtCl4]2−イオン及び/または[PtCl6]2−イオンを沈着させる効果があると考えられ、遊離の白金粒子の生成を抑制している可能性がある。また、水酸化物イオンはパラジウムコア粒子表面に吸着する一方でアルカリ金属イオンとも相互作用し、上記の[PtCl4]2−イオン及び/または[PtCl6]2−イオンを担体上ではなくパラジウム粒子上に選択的に沈着させる効果があると思われる。
【0096】
ナトリウムイオンも水酸化物イオンと強く引き付け合い、パラジウム表面に存在するが、その吸着が強固なため均一なシェル形成を阻害する傾向があること、また、Na2[PtCl6]はエチレングリコール中での溶解度が高く白金原料の沈着構造を形成しづらいこと等のため、ナトリウムイオンのみでは品質の高い白金シェルを形成するのは難しいと考えられる。対して、カリウムイオンはナトリウムイオンほど水酸化物イオンを引きつける力が強くないため、シェル形成を阻害する効果はナトリウムイオンほど強くはないと考えられる。シェル形成工程においてマイクロ波加熱を使わず、常温でゆっくりと反応させた場合、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムを使用した場合で、触媒の活性に顕著な違いが生じている。
【0097】
水酸化カリウムを使用せず、水酸化ナトリウムを使用した場合でも、共存する水酸化物イオン濃度と温度を好ましい条件に選んでマイクロ波連続加熱法を用いて白金シェルを形成すると、常温でゆっくりシェル形成させた場合よりも質量活性が大きい触媒粒子が合成できることもわかった。
【0098】
水酸化カリウム濃度を調整することで白金シェル形成工程において、担体担持パラジウムコア粒子上に塩化白金酸イオンとカリウムイオンで構成される沈着体がほどよい強さで吸着し、マイクロ波により急速に加熱されることで、パラジウムコア粒子の表面のみでシェル形成反応が進行し、これに狭く限定されないが、好ましくは均一な厚みのあるいはそれにできるだけ近い白金シェルが形成される可能性がある。
【0099】
ナノ粒子のような微粒子のシェル層は、コア粒子を完全な層状に覆っていることが好ましいが、実際の合成されたシェル層は、完璧な層状にコア粒子を覆っている場合とコア粒子の表面に部分的についている場合など多くの形態がある。また、当然のことながら、コア粒子の担体に担持されている部分にはシェル層が配置されていなくても不思議はない。コアシェル型微粒子の製造において、用途における使用目的の性能の少なくとも一部が向上しているものは本発明におけるコアシェル型微粒子という。
【0100】
マイクロ波連続加熱法を用いることにより、本発明者らはロット内での品質保持、ロット間でのばらつき抑制、工程の簡便化のトレードオフも解決するに至った。マイクロ波加熱による急速加熱はオイルバスやスチーム等を用いる通常加熱と比べて急速な加熱が可能であり、各種の有機合成、無機合成プロセスに利用されている。また、被加熱物の容積をある程度小さくすれば電場のエネルギーを集中させて加熱速度をさらに高めるとともに、溶媒のみを均一に加熱することができるため、ナノ粒子など核形成と成長のタイミングが重要な反応に適している。加えて、マイクロ波による加熱工程を、流路を用いた連続法により構成することでロット間のばらつき、生産性のトレードオフを解消することができた。バッチ法でマイクロ波加熱することもできるが、生産性を高めようと被加熱物の体積を大きくすると均一性が損なわれてロット内の品質にばらつきがでてしまう。それに対してマイクロ波連続照射法では常に同じ条件で合成産物が得られるので、自動化も容易である。さらに、トラブルが生じた場合でも流路を切り替えて不良品を分ければよいだけであり、バッチ法のように貴重な貴金属原料をタンク丸ごと無駄にするというような事態は生じない。
【0101】
加えて、パラジウム微粒子形成工程とひき続く白金シェル形成工程をひと続きの反応管でつないで連続法にすることの利点も重要である。パラジウム微粒子の表面は合成直後、共存する水酸化物イオンや塩化物イオンが吸着していると考えられるが、大気中に放置などすることによってその表面に酸化物層が形成されたり、外部から硫黄などの不純物原子が強く吸着したりして表面が汚染されてしまうと考えられる。このような表面の汚染は均一な白金被覆構造の形成を妨げると考えられており、ふたつの工程をバッチ法などで分けてしまうとバラツキが生じる原因となってしまう。そのため、パラジウム微粒子が形成されたらなるべく素早く白金原子により被覆してしまうのが理想的であり、連続法による合成はこの要件を満たしている。
【0102】
めっきの分野では、添加剤を用いて望まれない副反応や析出金属層の異常成長を抑制することは広く行われている。担体共存下においてパラジウムコア粒子に白金シェルを形成する場合にも同様の手法が適用できると考え発明者らは多大な実験を繰り返し品質の高い白金シェル層を形成することができる添加剤と反応条件を探し求めたが、すくなくとも常温における反応では有効な添加剤を見出すことができなかった。その原因の多くは添加剤がパラジウムコア粒子表面に強く吸着し、白金シェル形成を阻害するためであったと思われる。反応を進行させるために加温しても担体共存下では高温で長時間加熱すると担体上でパラジウムコア粒子が凝集してしまい、触媒の表面積が減少してしまうという問題があるため、バッチ加熱法では反応抑制的な添加剤を用いた場合の最適条件の探索に困難があった。
【0103】
しかし、反応条件を適切に選択し、マイクロ波による加熱を短時間に急速に行うことにより、反応抑制的な添加剤が共存しても品質の高い白金シェルが形成できることもあることがわかってきた。コアの合成工程とシェルの合成工程を続きの工程として双方の工程でマイクロ波を照射して加熱を行うマイクロ波連続加熱法では白金シェルの形成に必要な時間のみ原料液を均一に加熱できるため、担体上での粒子の凝集を大幅に抑えたシェル形成が可能となってきている。添加剤は金属微粒子触媒の形状や表面の凹凸、結晶面の制御に重要な役割を果たすと考えられており、二元金属種でコアシェル構造を形成する際にも重要な制御因子となる可能性がある。このため、反応抑制的な添加剤の効能のみを実現し副反応を抑制し、より高度に制御された金属微粒子触媒の製造を可能とする点でマイクロ波連続法は非常に優れた技術である。
【0104】
マイクロ波連続加熱法で2段の反応を行うにあたり、第二工程において第一工程の残渣が第二工程を阻害しないか、という問題がある。パラジウム微粒子合成工程の残渣については、白金シェル形成工程に悪影響を与えない原料と反応条件を選定し、また、水酸化カリウムの使用など残渣を沈着に利用するなどの方法で克服した。
【0105】
担体共存下でマイクロ波連続加熱法を行うにあたり、スラリーを脈動無く輸送できるポンプが必要である。モーノポンプ、精密ダイヤフラムポンプ等の適切な使用は、燃料電池触媒担体として最もよく使用されている導電性カーボン担体においても有用であることを見出すことができた。原料と担体スラリーをポンプにつなぎマイクロ波で連続的に加熱していくことで担持された高品質触媒スラリーが製造できるという理想的なプロセスを作り上げることができた。
【0106】
担体共存下においてパラジウム粒子の形成と担持の反応を行い、次いで白金シェル層形成の反応を経ることで、白金使用量低減と生産性を大幅に改善することができた。前述したように、触媒粒子の合成後、担体に吸着させる方法は担持率の悪さと担持の不均一さから実際の生産には向いていない。しかも、本発明のように貴金属を用いた触媒の場合、コアシェル構造など工程に手間がかかる微粒子触媒が合成の最後の段階で失われるという非効率なプロセスになってしまう。本発明者らは多大な実験と検討の末、最終製品に含まれない高分子、界面活性剤は一切使用せず、中途に精製工程をはさまず、担体上にパラジウム白金複合触媒を形成する方法を見出した。合成後に行うのは水洗により水溶性の塩と溶媒残渣を除去する過程のみである。分散剤を除去するためのくり返し洗浄や有機物を除去するための焼成は必要としない。
【0107】
電子顕微鏡観察によると、白金単独粒子がわずかに観察されることもあるが、合成条件を適切に選ぶことによって、その数を非常に少なくできる。
【0108】
マイクロ波連続加熱法においては、マイクロ波が均一加熱、急速加熱できる範囲においては反応管を太くしてスケールアップすることが可能である。バッチ法においてはスケールアップで大きなタンク等で反応を行う際は伝熱や撹拌等様々な検討項目があるが、マイクロ波連続法においては投入エネルギーと滞留時間を制御することで比較的簡単に生産量を増やすことができる。
【0109】
以上のような方法はパラジウム微粒子を下地とする白金シェル構造の形成だけでなく、パラジウム薄膜を下地としてその上に厚さ数nm以下の白金薄膜を均一に形成することにも応用できる。また、白金原料塩を沈着させる方法はカーボン担体だけでなく、セラミックス類をはじめとする様々な下地や、カーボンと金属、セラミックス類を複合機能化させた下地に白金薄膜を形成させる際に応用することができる。そのため、本方法はパラジウムコア白金シェル構造だけでなく、白金薄膜構造を有する白金複合微粒子、白金複合構造の形成に広く応用できる点で極めて有用である。
【0110】
以上のように、本発明の、沈着、マイクロ波連続法、担体共存下での合成という要素技術の適切な組み合わせにより、今まで存在してきた生産にまつわる種々のトレードオフを解決することができた。本発明により、品質、コスト、生産性を両立したパラジウム白金複合微粒子を製造することができ、固体高分子形燃料電池の広範な実用化に向けた大きな進展であるといえる。
【0111】
以上を踏まえた本発明の実施の形態例を以下に具体的に説明する。
【0112】
図1は、本発明の実施の形態例としてのカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子の製造装置の構成を概略的に示した図である。
【0113】
図1において、符号1はパラジウムコア粒子の原料塩、アイオノマー、カーボン担体、水酸化カリウム原料を溶媒に溶解、分散させた反応原料液及び反応原料液を送液するポンプから構成されており、具体的には、テトラクロロパラジウム(2)酸カリウム(K2PdCl4)とNafion(登録商標)とVulcan(登録商標)XC72と水酸化カリウム水溶液とEG(エチレングリコール)を混合した反応原料液を送液ポンプで次行程に送液する行程を示している。
【0114】
符号2および7はマイクロ波の電場を閉じ込めて反応管内の液体に照射して加熱するための共振器構造体であり、具体的には反応原料液作製行程で作製され送液されてくる反応液を、マイクロ波共振器構造体内を通る反応管に流通させ、反応管内を流通する反応原料液にマイクロ波を照射するキャビティなどの共振器構造体であり、マイクロ波照射系を構成している。符号3は符号2により加熱された反応液を冷却や保温をする装置であり、冷媒を流通させることができる二重管やペルティエ素子を用いることができる。
【0115】
符号4は水酸化カリウム溶液およびそれを送液するポンプから構成されており、符号6aは符号4により送液された水酸化カリウム溶液と符号2により生成し符号3によって冷却されたカーボン担持パラジウムナノ粒子分散液とをミキサーにより混合する工程を示す。
【0116】
符号5は白金シェル層形成の原料塩を溶解させた溶液およびそれを送液するポンプから構成されており、符号6bは符号5により送液された白金原料溶液と符号6aにより混合された分散液とをミキサーにより混合する工程を示す。白金原料溶液と混合されたカーボン担持パラジウム粒子分散液は符号7のキャビティにマイクロ波照射により加熱され、白金シェルが形成される。符号8は生成したカーボン担持パラジウムコア白金シェル粒子を回収するためのタンクである。白金シェル形成を常温でゆっくりと進行させる場合は符号7において加熱を行わず、符号8のタンク内でシェル形成反応を行わせるということもできる。
【0117】
以下、本発明を実施例及び比較例を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれに狭く限定されない。
【0118】
(実施例1)
水酸化カリウムを添加し、シェル形成にマイクロ波加熱を用いる場合。
Vulcan(登録商標)XC72が0.1重量パーセント、Nafion(登録商標)(DE520 CSタイプ)を0.03%になるようにエチレングリコールに混合し、超音波をかけてVulcanXC72が均一な分散液になるようにする。この分散液にテトラクロロパラジウム(2)酸カリウムを2mM,水酸化カリウムを13mMになるように加えて完全に溶解させ、これを反応原料液とした。この反応原料液をカーボン分散液を扱うことができるポンプで送液する。
【0119】
本発明者らが詳細な実験を繰り返し検討を重ねた結果、添加するテトラクロロパラジウム(2)酸カリウムの物質量の4〜7倍の水酸化カリウムを反応原料液に添加することが望ましいということを明らかにした。水酸化物イオン濃度が低いと核形成が遅くなり粒子径が大きくなってしまい、また、未反応のパラジウムイオンが残存することもある。水酸化物イオン濃度が高いと還元速度が速すぎ担持されない遊離粒子やパラジウムナノ粒子の凝集体が生じてしまう。
【0120】
反応原料液を内径2mmのPFA(Perfluoroalcoxy alkane)反応管で流速6ml/分で送液し、100℃で加熱した。反応管は内径90mm高さ10cmの円筒状の空間を有するマイクロ波キャビティの円筒中心軸に沿って配置した。TM010モードの定在波が形成される周波数のマイクロ波をキャビティに照射することで加熱を行い、反応原料液の温度は放射温度計により反応管中央の位置にて計測を行った。また、TM010モードの定在波が形成される周波数は反応原料液の温度により変化するが、その周波数に常に一致するよう、照射するマイクロ波の周波数を調整した。このときの周波数範囲は、2.45GHzであった。
【0121】
上記方法により合成されたカーボン担持パラジウム粒子分散液には、6aのミキサー(配管合流路における混合器)により、白金シェル形成反応に必要な水酸化カリウムエチレングリコール溶液が、濃度を微調整して添加されるた。本実施例においては、カリウム濃度が3mM増加するように0.5M水酸化カリウムエチレングリコール溶液を加えた。
【0122】
前記方法により合成されたカーボン担持パラジウム粒子分散液は水酸化カリウムエチレングリコール溶液を添加された後、6bのミキサーにより、混合後の液のパラジウムと白金のモル比が1:1になるように100mM塩化白金酸(4)エチレングリコール溶液と混合した。
【0123】
図1において符号4で示す工程で添加される水酸化物イオンは、符号5で示す工程で添加される白金原料から生じる水素イオンと反応するので添加した水酸化物イオンの量がすべてシェル形成反応に関与するわけではない。しかし、中和反応後になお残存する遊離の水酸化物イオン、白金イオンと錯体を形成している水酸化物イオン、パラジウム粒子表面に吸着している水酸化物イオンはシェル形成反応に関与すると考えられる。発明者らは、詳細な実験を繰り返し検討を重ねた結果、これらの水酸化物イオン濃度が原料である白金シェル形成の前駆体であるヘキサクロロ白金(4)酸イオンの物質量の2〜6倍程度になることが望ましいということを明らかにした。シェル形成反応における水酸化物濃度が低いと反応速度が遅くなり白金原料が未反応となってしまい、水酸化物濃度が高すぎると白金がシェルでなく粒子としてカーボン担体やパラジウムコア表面で生成したり、白金の遊離粒子が副生しやすくなってしまう。白金原料塩が塩化白金酸を中和した塩である場合や、パラジウムコア粒子を別の方法で形成した場合、パラジウムコア粒子をシェル形成反応の前に精製した場合は、水酸化物イオンが前記の範囲内に入るように添加する水酸化ナトリウム濃度を調整する必要がある。
【0124】
符号6bのミキサーで混合されたカーボン担持パラジウム粒子分散液と塩化白金(4)酸エチレングリコール溶液は7のマイクロ波キャビティに配置された反応管を流速7ml/minで送液され、80℃になるように加熱された。合成されたカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドは8のタンクに回収された。
【0125】
(実施例2)
水酸化カリウムを添加し、シェル形成にマイクロ波加熱を用いない場合。
実施例1と同様の方法でカーボン担持パラジウム粒子を合成し、水酸化カリウムエチレングリコール溶液、塩化白金(4)酸エチレングリコール溶液と混合した後、7で加熱せずに混合液は回収容器に集め、常温で完全反応させるため72時間室温で放置した。
【0126】
(実施例3)
水酸化ナトリウムを添加し、シェル形成にマイクロ波加熱を用いる場合。
実施例1における水酸化カリウムのかわりに水酸化ナトリウムを用い、テトラクロロパラジウム(2)酸カリウムのかわりにテトラクロロパラジウム(2)酸ナトリウムを用いてパラジウムコア粒子の合成と白金シェル形成を行った。具体的には、1の反応原料液の作製には、5M水酸化ナトリウム水溶液を13mMになるように加えた。また、4では0.5M水酸化ナトリウム水溶液をナトリウム濃度が3mM増加するように加え、6aのミキサーにより混合された。上記以外は実施例1と同様の原料濃度、加熱処理を行って生成物を回収した。
【0127】
(実施例4)
Vulcan(登録商標)XC72が0.1重量パーセント、Nafion(登録商標)(DE520CS)を0.03%になるようにエチレングリコールに混合し、超音波をかけてVulcanXC72が均一な分散液になるようにする。この分散液にテトラクロロパラジウム(2)酸カリウムを3mM,水酸化カリウムを20mM、モノエタノールアミンを6mMになるように加えて完全に溶解させ、これを反応原料液とした。実施例1と同様に反応原料液を流し、マイクロ波加熱を行った後、符号5においてヘキサクロロ白金(4)酸とモノエタノールアミンのエチレングリコール溶液を混合後の濃度が塩化白金(4)酸が2mM、モノエタノールアミンが24mMになるように符号6bで混合し、符号7において160℃で加熱した。
【0128】
(比較例1)
マイクロ波連続法でカーボン担持白金粒子を合成した場合。
比較例1として、マイクロ波連続法でカーボン担持白金触媒を合成し、酸素還元反応の触媒活性を比較した。その作製法を以下に述べる。カーボン担体としてVulcan(登録商標)XC72、分散剤としてNafion(登録商標)(DE520 CSタイプ)をエチレングリコールに混合し、超音波を十分に照射してカーボンをよく分散させた。その分散液にヘキサクロロ白金(4)酸エチレングリコール溶液と水酸化カリウムエチレングリコール溶液を加え、最終的にカーボンが0.1g/L、Nafion(登録商標)が0.03g/L、ヘキサクロロ白金(2)酸が2mM、水酸化カリウムが20mMの濃度になるようにして原料液とした。原料液は、実施例と同様に、マイクロ波キャビティの円筒中心軸に配置された内径2mmのPFA反応管を流速2ml/minで流され、原料液の温度が85℃になるように加熱された。
【0129】
(比較例2)
水酸化ナトリウムを添加し、シェル形成にマイクロ波加熱をもちいない場合。
符号7においてマイクロ波加熱処理を行わないこと以外は実施例3と同様にカーボン担持パラジウムコア粒子の合成を行い、水酸化ナトリウム水溶液、塩化白金(4)エチレングリコール溶液と混合した。回収容器内で72時間室温で放置してシェル形成反応を行わせた。
【0130】
(比較例3)
水酸化ナトリウムを添加し、マイクロ波を照射しても活性の高い触媒が得られない場合。
Vulcan(登録商標)XC72が0.1重量パーセント、Nafion(登録商標)(DE520CS)を0.03%になるようにエチレングリコールに混合し、超音波をかけてVulcanXC72が均一な分散液になるようにする。この分散液にテトラクロロパラジウム(2)酸ナトリウムを3mM,水酸化ナトリウムを20mMになるように加えて完全に溶解させ、これを反応原料液とした。この反応原料液をカーボン分散液を扱うことができるポンプで送液し、実施例1と同様に符号2のマイクロ波キャビティにおいて流速6ml/min、100℃で加熱した。続いて、符号5において100mM塩化白金酸(4)エチレングリコール溶液を混合後の液のパラジウムと白金のモル比が3:2になるように符号6bのミキサーにより、混合した。次に、符号7のマイクロ波キャビティにおいて130℃、流速7ml/分で加熱した。
【0131】
形成されたカーボン担持パラジウムコア白金シェル粒子およびカーボン担持白金粒子は、遠心分離により精製し、電子顕微鏡(日本電子製JEM−2200FS)を用いてTEM(透過型電子顕微鏡法)、STEM(走査型電子顕微鏡法)による観察とEDS(エネルギー分散型X線分析)による分析を行った。
【0132】
FCCJ(燃料電池実用化推進協議会)の提案する標準法(「固体高分形燃料電池の目標・研究開発課題と評価方法の提案」に記載の方法)を参考に酸素還元触媒活性の測定および負荷応答電位サイクル耐久試験を行い、実施例と比較例の触媒の比較を行った。
詳細な方法を以下に述べる。
【0133】
前記実施例、比較例で得られた触媒粒子を、遠心分離による精製をくり返すことでエチレングリコールと水溶性の塩等を除去し、最終的にカーボン濃度0.0123重量%、Nafion(登録商標)濃度0.0125重量%の触媒インクを作製した。触媒インクの溶媒は水とIPA(イソプロパノール)の混合溶媒(重量比3:1)を用いた。この触媒インク20mgを、研磨した直径5mmのグラッシーカーボン回転電極に塗布し、乾燥させ、電気化学測定に用いた。電解液は0.1Mの過塩素酸を用い、参照電極として可逆水素電極を用いた。3L/分の窒素をバブリングして酸素を追い出した電解槽において0.05〜1.2V(以下、可逆水素電極を基準として電位の値を表現する)の範囲の電位走査により触媒表面のクリーニングを行い、水素の吸脱着ピークの形より電気化学的活性表面積の測定を行った。続いて3L/分の酸素を用いたバブリングにより酸素を電解液に飽和するまで溶存させ、回転電極を1600rpmで回転させて対流ボルタンメトリーを行い、酸素還元活性を測定した。走査速度は低電位側から高電位側に向けて20mV/秒の速度で行い、0.9Vにおける酸素還元電流の値を記録し、Koutecky−Levich式より触媒の酸素還元活性を産出した。活性測定時の電解液の温度は25℃とした。酸素還元活性は原料として使用した白金の重量あたりの酸素還元電流(質量活性)の形で算出した。
質量活性の単位はアンペア毎グラム[A/g]を用いる。ただし、実施例4については遠心分離による精製後のEDS分析の結果より定量した白金を質量活性の計算に用いた。
前記窒素によるバブリングや酸素によるバブリングにおける窒素や酸素のガスの流量や試料の設定条件などは、試料の試験の目的などにより適宜変えて行うことは可能であるが、試験結果の目安として,例として、上記条件の下で本発明の微粒子の性能比較を行った例を示すと、本発明の微粒子の前記質量活性算出法によって算出された触媒の初期活性は500[A/g]以上であり、製造条件のより好ましい条件を設定するなどにより600[A/g]以上にでき、特に好ましい条件を設定するなどにより700[A/g]以上にできることを確認できた。
【0134】
負荷応答耐久性試験における電位サイクルは、上記電解液と回転電極を用いて0.6Vを3秒、1.0Vを3秒の方形波を1サイクルとし、電解液に窒素をバブリングして飽和させた条件で20℃において5000、37000サイクルの電位を印加し、電位サイクルの前後で上記と同様の方法で表面積と酸素還元活性を測定した。
【0135】
図2は実施例1の方法で合成したカーボン担持パラジウムコア白金シェル触媒のSTEMによる観察像である。カーボン担体9aと、そこに担持されているパラジウムコア白金シェル触媒微粒子9bが、実施例1で合成されたカーボン担持パラジウムコア白金シェル触媒を構成している。符号9bで例示されているように、3〜4nmの粒子がカーボン担体上にほぼ均一に担持されている。また、EDSの結果により、広い範囲にわたってパラジウムと白金の分布は均一で、かつ一致しており、その比も合成時の仕込み量の比とほぼ一致した。このことより、本発明者らの提案する合成法は貴金属の無駄を大幅に少なくなるように使用しており、なおかつ酸素還元触媒に必要な高い表面積も達成できているといえる。
【0136】
図3は実施例と比較例の耐久性試験前の酸素還元触媒の質量活性を比較したグラフである。実施例1,2,3、4の質量活性の数値はそれぞれ696、643、548、637[A/g]、比較例1,2、3の質量活性の数値はそれぞれ241、394、100[A/g]であった。実施例の方法で合成された触媒は比較例1のマイクロ波で合成したカーボン担持白金触媒の数倍の活性を有しており、また、シェル形成に水酸化カリウムとマイクロ波加熱を用いなかった比較例2のカーボン担持パラジウムコア白金シェル触媒よりも活性が高かった。これらのことより、実施例の方法で合成された触媒は高価で希少な白金を触媒として有効利用できていることがわかる。
【0137】
まず、マイクロ波による加熱で白金シェルを形成する効果について説明する。マイクロ波加熱で白金シェルを合成すると、常温でゆっくりとシェルを形成させる場合と比べて明らかに合成速度が速く、生産性の向上に寄与できる。さらに連続法と組み合わせることで、本発明の課題であったロット間のばらつきと工程の簡便化を達成できる。白金シェルをマイクロ波加熱により合成した触媒の品質はどうであろうか。実施例1と実施例2は、白金シェル形成にマイクロ波加熱を用いること以外は同等な条件である。図3の実施例1と実施例2の質量活性値を比較すると、実施例1は実施例2より同等かやや上の質量活性を有し、白金シェル形成時間が短くても、常温で穏やかに反応させた場合と同等以上の性能を発揮することがわかった。また、カリウムイオンが存在しない反応系である実施例3と比較例2もシェル形成におけるマイクロ波加熱処理以外は同等な条件である。実施例3は比較例2よりも高い活性を示しており、白金シェル形成におけるマイクロ波加熱の有効性が明らかとなった。
【0138】
しかし、比較例3のように、シェル形成にマイクロ波を用いても活性の高い触媒が得られない場合がある。反応温度が高く、核形成速度が速い場合は白金がシェルを形成せずに遊離の粒子となり、精製の過程で失われてしまうため活性の低い触媒となってしまう。担体共存下においてシェル形成にマイクロ波連続法を用いて生産性の向上させるためには、反応過程で共存する水酸化物イオンや対となる陽イオン、反応温度を適切に調整しなければならない。
【0139】
次に、共存するカリウムイオンの効果について説明する。実施例1の過程においてナトリウムイオンは反応系に含まれておらず、パラジウム原料と水酸化物に含まれる陽イオンはカリウムイオンである。対照的に、実施例3の過程においてカリウムイオンは反応系に含まれておらず、パラジウム原料と水酸化物に含まれる陽イオンはナトリウムイオンである。実施例1と実施例3はその他の条件については同等であり、これらを比較すると実施例1のほうが質量活性が高いことがわかる。また、実施例2と比較例2も対照的であり、実施例2にはカリウムイオンのみが、比較例2にはナトリウムイオンのみが反応系に含まれている。実施例2と比較例2を比べると実施例2のほうが質量活性が高いことがわかる。これらの結果より、反応条件が同等の場合、パラジウム原料と添加する水酸化物の対の陽イオンはナトリウムよりもカリウムのものを用いたほうが活性の高い触媒が合成できる傾向があることがわかる。
【0140】
カリウムイオンとナトリウムイオンが担体共存下におけるパラジウムコアおよび白金シェル形成過程における作用の詳細は定かではないが、現象は記載のようになる。明確な差の一つは原料金属塩の溶解度で、テトラクロロパラジウム(2)酸カリウムとヘキサクロロ白金(4)酸カリウムは対応するテトラクロロパラジウム(2)酸ナトリウムとヘキサクロロ白金(4)酸ナトリウムよりエチレングリコール溶媒中における溶解度が低い。この溶解度の差が、精製過程で失われてしまう遊離のパラジウム粒子、白金粒子の生成に関わっている可能性がある。
【0141】
もうひとつの明確な差は、水酸化物イオンによるイオン対の形成能である。ナトリウムイオンはカリウムイオンよりもイオン半径が小さく周囲の水、極性溶媒、水酸化物イオンを強く引き付ける。対してカリウムイオンはナトリウムイオンと比べてそれらを引き付ける力がナトリウムイオンよりも弱い。パラジウムナノ粒子表面は水酸化物イオン共存下では水酸化物イオンを吸着して負に帯電しているため、陽イオンをその外側にまとっていると考えられている。ナトリウムイオンはパラジウムナノ粒子表面の水酸化物イオンとカリウムイオンよりも強く相互作用すると考えられ、パラジウムナノ粒子表面に強固にナトリウムイオンが共存することがパラジウムコアナノ粒子の成長や引き続く白金シェルの形成に影響を与えている可能性がある。
【0142】
これらの過程をその場観察することは難しく、白金シェル形成におけるナトリウムイオンとカリウムイオンのはたらきの違いを直接証明することは困難である。上記のような差が影響していることは間違いないが、未知の影響があるかもしれないし、また、反応温度等のその他の因子と複雑に影響し合っているかもしれない。しかし、発明者らはこのような困難にも関わらず、ナトリウムイオンとカリウムイオンの影響を見出し、担体共存下でのパラジウムコア白金シェル微粒子触媒合成の性能および生産性の向上につなげることを達成した。
【0143】
実施例4はモノエタノールアミン存在下で担体共存下におけるパラジウムコア粒子と白金シェルの形成を行っている。モノエタノールアミン等の一級アミンやアンモニアはパラジウムや白金イオンと錯体と安定な錯体を形成するため、これらの原料の還元反応を抑制する効果がある。そのため、モノエタノールアミンを添加するとパラジウムコア粒子の粒子径はやや大きくなり、白金シェルは常温ではほとんど反応しないという結果になる。電熱ヒーターやオイルバス、スチーム等の通常の加熱手段によりバッチ法で加熱することでモノエタノールアミン存在下でも白金シェル形成反応を進行させることは可能である。しかし、均一なシェルを形成させるには反応速度を抑えてゆるやかに長時間反応させる必要があり、上述のようにバッチでは生産性を上げようとしてスケールアップすると伝熱や拡散が不均一になりがちという問題がある。このように、反応速度を抑えて粒子成長やシェル形成を制御するタイプの添加剤と通常の加熱方法は相性が悪い。
しかし、マイクロ波加熱を用いると急速に均一な加熱が可能となり、反応抑制的な添加剤存在下においても短時間で反応を進行させることができる可能性がある。また、ナノ粒子の結晶性やその表面における原料原子の拡散が重要な因子である反応の場合、高温で反応させる必要が生じるため、そのような場合にも反応抑制的な添加剤とマイクロ波を組み合わせる方法は有効である。実施例4では一級アミノ基が白金原料の数倍存在しているという条件でも、白金シェルを形成させることが可能であった。原料として添加した白金のうちいくらかは触媒に取り込まれていないことがわかったが、触媒に含まれる白金を基準とした質量活性では高い値を示した。また、実施例4は5000サイクルの負荷応答耐久性試験後でも初期活性の98%以上の質量活性を維持しており、シェル形成過程の添加剤や温度が耐久性に重要な影響を与えることがわかる。このような触媒の合成は従来のバッチ法では困難であり、マイクロ波連続加熱法の有効性が明らかとなった。
【0144】
図4は実施例1および実施例2のカーボン担持パラジウムコア白金シェル触媒の耐久性試験における電位サイクル回数に対する質量活性の維持率の推移を示したものである。ここで維持率とは、初期活性に対する耐久性試験後の活性を100分率で表したものであり、初期活性を100%として、電位サイクル回数の増加による活性の維持割合を示す指標である。実施例1の初期活性である符号10aを100%とすると、5000サイクル後の活性である符号10bは84%であり、37000サイクル後の活性である符号10cは80%であった。実施例2においては、初期活性の符号10dを100%とすると、5000サイクル後の活性である符号10eは93%であり、37000サイクル後の活性である符号10fは84%であった。このことより、本発明のカーボン担持パラジウムコア白金シェル触媒は37000サイクルの電位サイクル後においても初期活性の80%以上もの活性を維持していることがわかり、燃料電池の実用化における重要な特性である耐久性において、非常に優れていることが明らかとなった。
【0145】
以上のように、本発明のカーボン担持パラジウムコア白金シェル触媒微粒子のコアおよびシェルの担体共存下での合成において水酸化カリウムを用い、シェル形成反応にマイクロ波加熱を効果的に使用することで、触媒性能が高く、耐久試験における性能劣化が小さいカーボン担持パラジウムコア白金シェル触媒微粒子を得ることができる。
【0146】
以上、図を参照しながら、実施例、比較例を加えて本発明を説明したが、本発明はこれに狭く限定されるものではなく、本発明の技術思想に基づき多くのバリエーションを可能とするものであることは明白である。例えば、マイクロ波としては、本発明ではシングルモードマイクロ波照射に関して多く説明したが、本発明はこれに限定されず、マルチモードマイクロ波照射を利用することも含み、マイクロ波照射に関しては、被照射体に当てるマイクロ波の強度分布域に関しても、また、その当て方に関しても、被照射体への当てる目的によって決められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明における、担体共存下で、コアおよびシェルの合成に水酸化カリウムとマイクロ波加熱を用いる方法により合成されたカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子触媒は、触媒効率が高く、耐久性が優れており、化学反応や燃料電池の触媒に利用できる。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2018年3月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリコール系溶媒を含有する分散媒に担体担持パラジウム微粒子が分散しているコロイドに白金原料イオン含有溶液とアルカリ金属水酸化物溶液を加えてなる反応原料液にマイクロ波加熱により連続的に担体担持パラジウムコア粒子に白金シェルを形成する方法において、前記白金原料溶液とアルカリ金属水酸化物溶液を添加した後、遊離、配位、吸着している水酸化物イオン濃度が前記白金原料の物質量の2〜6倍になることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のコロイドの製造方法において、原料成分のひとつである担体担持パラジウム微粒子が、グリコール系溶媒、担体、パラジウム原料、パラジウム原料原子の4〜7倍の物質量のアルカリ金属水酸化物を含有する反応原料液をマイクロ波加熱することで合成されるものであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、前記担体がカーボン微粒子であり、カーボン担持パラジウム微粒子の形成工程と白金シェル形成工程がひと続きの流路によりつながっているマイクロ波連続照射法により合成されることを特徴とするカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3にいずれかに記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物が水酸化カリウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項5】
グリコール系溶媒を含有する分散媒に担体が分散している分散液に、パラジウム原料と水酸化カリウム溶液を加えて反応原料液とし、マイクロ波加熱により連続的に担体担持パラジウムナノ粒子を合成する方法において、前記パラジウム原料のパラジウム原料原子の4〜7倍の物質量の水酸化カリウムを添加することを特徴とする担体担持パラジウム微粒子コロイドの製造方法
【請求項6】
グリコール系溶媒を含有する分散媒に請求項5に記載の微粒子が分散しているコロイドを原料とし、ヘキサクロロ白金(4)酸イオン含有溶液と水酸化カリウム溶液を加えて常温または加温して担体担持パラジウムコア粒子に白金シェルを形成する方法において、前記白金原料溶液と水酸化カリウム溶液を添加した後、遊離、配位、吸着している水酸化物イオン濃度が前記白金原料の物質量の2〜6倍になることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のコロイドの製造方法において、担体がカーボン微粒子であり、カーボン担持パラジウムナノ粒子コロイドおよびそれに引き続く白金シェルの形成方法がひと続きの流路によりつながり、連続法で行うことを特徴とするカーボン担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、2−アミノエタノールが添加剤として含有されていることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項9】
請求項1〜3、8のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物が水酸化ナトリウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜3、8のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物が水酸化セシウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜3、8のいずれか1項に記載の担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法において、アルカリ金属水酸化物が水酸化リチウムであることを特徴とする担体担持パラジウムコア白金シェル微粒子コロイドの製造方法。