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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-84558(P2019-84558A)
(43)【公開日】2019年6月6日
(54)【発明の名称】レーザー加工用治具
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/10 20060101AFI20190517BHJP
【FI】
   B23K26/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-214285(P2017-214285)
(22)【出願日】2017年11月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】小室 陽平
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168AD07
4E168HA05
4E168HA09
4E168JA02
(57)【要約】
【課題】汎用性を高めることができるレーザー加工用治具を提供すること。
【解決手段】レーザー加工用治具1は、ベース台2と、そのベース台2から立設され上面にワーク5の下面が載置される複数の柱部材3と、ワーク5をベース台2に保持するワーク固定具4とが設けられる。よって、隣接する柱部材3の間の空間を、ワーク5を通過したレーザー光Lを受ける溝として機能させることができる。この場合、柱部材3がベース台2に対して着脱可能に構成されるので、例えば、柱部材3の配置を変更する、或いは、柱部材3の大きさや形状を変更することで、隣接する柱部材3の間の空間(溝)を、レーザー光による個片化形状8に対応させることができる。よって、個片化形状8が異なる場合であっても、新たにレーザー加工用治具1を製造することなく対応できる。即ち、汎用性を高めることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光により切断される被加工物を保持するレーザー加工用治具において、
ベース台と、
そのベース台から立設され上面に前記被加工物の下面が載置される複数の柱部材と、
前記被加工物を前記ベース台または前記柱部材に保持する保持手段と、を備え、
前記柱部材が前記ベース台に対して着脱可能に構成されることを特徴とするレーザー加工用治具。
【請求項2】
前記ベース台には、複数の凹部が形成され、
前記柱部材は、前記ベース台の凹部に対して着脱可能に構成されることを特徴とする請求項1記載のレーザー加工用治具。
【請求項3】
前記凹部には、貫通孔が貫通形成され、
前記柱部材の下面には、ねじが締結可能とされる締結孔が形成され、
前記凹部の貫通孔に挿通されたねじが前記柱部材の締結孔に締結されることで、前記柱部材が前記ベース台に対して着脱可能に構成されることを特徴とする請求項2記載のレーザー加工用治具。
【請求項4】
前記保持手段は、上面に前記被加工物が保持される保持部材を備え、
前記保持部材の下面には、ねじが締結可能とされる締結孔が形成され、
前記凹部には、貫通孔が貫通形成され、
前記凹部の貫通孔に挿通されたねじが前記保持部材の締結孔に締結されることで、前記保持部材が前記ベース台に対して着脱可能に構成されることを特徴とする請求項2又は3に記載のレーザー加工用治具。
【請求項5】
前記柱部材は、その上面に配設され、弾性材料から構成される保護部材を備え、
前記柱部材の上面に載置された前記被加工物の下面が前記保護部材に当接されることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のレーザー加工用治具。
【請求項6】
前記柱部材の上面には、凹部が凹設され、
その凹部に前記保護部材が配設されることを特徴とする請求項5記載のレーザー加工用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工用治具に関し、特に汎用性を高めることができるレーザー加工用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
板状の被加工物をレーザー光により切断して個片化する技術が知られている。特許文献1には、被加工物が載置される面に、レーザー光による切断予定線に沿って溝が形成された治具が開示される。この治具によれば、溝(切断予定線)に沿ってレーザー光が掃引されることで、被加工物が切断され、個片化される。この場合、被加工物を通過したレーザー光を溝により受けることができるので、溝の底面や側面にレーザー光が到達したとしても、ビーム径が広がったエネルギー密度が低い状態として、治具が損傷することを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2013/100149(段落0043,0047)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の技術では、レーザー光による切断予定線(即ち、個片化する形状)に沿って溝が形成されているため、個片化する形状が異なる場合には、新たに治具を製造する必要があり、汎用性が低いという問題点があった。
【0005】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、汎用性を高めることができるレーザー加工用治具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明のレーザー加工用治具は、レーザー光により切断される被加工物を保持するレーザー加工用治具において、ベース台と、そのベース台から立設され上面に前記被加工物の下面が載置される複数の柱部材と、前記被加工物を前記ベース台または前記柱部材に保持する保持手段と、を備え、前記柱部材が前記ベース台に対して着脱可能に構成される。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載のレーザー加工用治具によれば、ベース台と、そのベース台から立設され上面に被加工物の下面が載置される複数の柱部材と、被加工物をベース台または柱部材に保持する保持手段と、を備えるので、隣接する柱部材の間の空間を、被加工物を通過したレーザー光を受ける溝として機能させることができる。
【0008】
この場合、柱部材がベース台に対して着脱可能に構成されるので、例えば、柱部材の配置を変更する、或いは、柱部材の大きさや形状を変更することで、隣接する柱部材の間の空間(溝)を、レーザー光による切断予定線(即ち、個片化する形状)に対応させることができる。よって、個片化する形状が異なる場合であっても、新たにレーザー加工用治具を製造することなく対応できる。即ち、汎用性を高めることができる。
【0009】
また、被加工物を通過したレーザー光により柱部材またはベース台が損傷したとしても、レーザー加工用治具全体を交換する必要がなく、損傷した部品(柱部材またはベース台)のみを交換することができる。
【0010】
請求項2記載のレーザー加工用治具によれば、請求項1記載のレーザー加工用治具の奏する効果に加え、ベース台には、複数の凹部が形成され、柱部材は、その凹部に対して着脱可能に構成される。よって、凹部の位置により、ベース台上に柱部材を配置する位置を容易に認識することができる。これにより、レーザー加工用治具の構築をより容易とできる。
【0011】
請求項3記載のレーザー加工用治具によれば、請求項2記載のレーザー加工用治具の奏する効果に加え、凹部には、貫通孔が貫通形成され、柱部材の下面には、ねじが締結可能とされる締結孔が形成され、凹部の貫通孔に挿通されたねじが柱部材の締結孔に締結されることで、柱部材がベース台に対して着脱可能に構成されるので、着脱可能とするための構造を簡素化して、製品コストを低減できる。また、柱部材の交換を容易とできる。
【0012】
請求項4記載のレーザー加工用治具によれば、請求項2又は3に記載のレーザー加工用治具の奏する効果に加え、保持手段は、上面に被加工物が保持される保持部材を備え、保持部材の下面には、ねじが締結可能とされる締結孔が形成され、凹部には、貫通孔が貫通形成され、その凹部の貫通孔に挿通されたねじが保持部材の締結孔に締結されることで、保持部材がベース台に対して着脱可能に構成されるので、被加工物の大きさに応じて保持部材の配置(被加工物の保持位置)を変更することができる。よって、被加工物を適正な状態で保持できる。
【0013】
また、凹部の貫通孔を、柱部材と保持部材とで共用できるので、保持部材をベース台に対して着脱可能とするための構成を別途設けることを不要とできる。よって、その分、製品コストを低減できる。
【0014】
請求項5記載のレーザー加工用治具は、請求項1から4のいずれかに記載のレーザー加工用治具の奏する効果に加え、柱部材は、その上面に配設され、弾性材料から構成される保護部材を備え、柱部材の上面に載置された被加工物の下面が保護部材に当接されるので、被加工物の下面における所定領域(保護部材が当接された領域)に、被加工物の切断によって発生するスパッタやドロス等が付着することを抑制できる。
【0015】
請求項6記載のレーザー加工用治具によれば、請求項5記載のレーザー加工用治具の奏する効果に加え、柱部材の上面には、凹部が凹設され、その凹部に保護部材が配設されるので、保護部材の厚み寸法を確保して、被加工物の下面に密着させやすくしつつ、かかる保護部材の側面を凹部の側壁により遮蔽して、被加工物の切断によって発生するスパッタやドロス等が保護部材の側面に付着することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)は、レーザー加工用治具の上面図であり、(b)は、Ib−Ib断面線におけるレーザー加工用治具の断面図である。
図2】レーザー加工時におけるレーザー加工用治具の断面図である。
図3】ワークの切断経路を模式的に示した図である。
図4】様々な柱部材を持つレーザー加工用治具を表す図である。
図5】レーザー光の照射位置をくり抜いたレーザー加工用治具を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、本実施形態のレーザー加工用治具1の概要を説明する。図1(a)は、レーザー加工用治具1の上面図であり、図1(b)は、Ib−Ib断面線におけるレーザー加工用治具1の断面図である。
【0018】
本実施形態におけるレーザー加工用治具1は、被加工物であるステンレス製のワーク5(図2参照)を載置し、その上方からレーザー光Lを照射することでワーク5を切断し、所望の個片化形状8(図3参照)を得るための治具である。レーザー加工用治具1は、ベース台2と、複数の柱部材3と、ワーク固定具4とを有する。
【0019】
ベース台2は、後述の柱部材3及びワーク固定具4を立設するためのアルミニウム製の板状の部材である。ベース台2には、柱部材3及びワーク固定具4をねじ止めするための複数の貫通孔2a(凹部)が、縦横に対し等間隔に貫通形成される。この貫通孔2aの位置により、ベース台2上に柱部材3及びワーク固定具4を配置する位置を容易に認識することができる。
【0020】
ベース台2上に配置された柱部材3及びワーク固定具4は、貫通孔2aからねじ6でねじ止めすることによってベース台2に固定される。貫通孔2aには、ねじ6のねじ頭の高さ分の座繰加工が施されているので、ねじ頭をベース台2に埋設させるとともに、ねじ6による固定を確実に行うことができる。
【0021】
本実施形態において、ベース台2の大きさは縦120mm,横120mmが例示され、貫通孔2aの穿孔間隔は縦方向・横方向共に5mmが例示される。なお、ベース台2はアルミニウム製に限られるものではなく、鋼等、貫通孔2aの穿孔が可能で、レーザー光Lの照射によるベース台2の損傷や融解、熱変形が生じにくい材料を適宜適用しても良い。
【0022】
柱部材3は、ベース台2上に立設され、ワーク5が載置される柱状の部材である。柱部材3は、支持部材3aと、支持部材3aの上面に凹設された凹部3bと、その凹部3bに配設される保護部材3cと、支持部材3aの下面に配設され柱部材3をベース台2に締結するための締結孔3dとで構成される。
【0023】
支持部材3aは、その上面視の形状がワーク5の個片化形状8(図3参照)に準じた形状を持つ、鋼製の柱状の部材である。本実施形態におけるワーク5の個片化形状8は、矩形における4つの頂点を円弧によって切り落とした形状であり、支持部材3aの上面視の形状は、かかる個片化形状8に内接する矩形で形成される。柱部材3上に載置されたワーク5を、隣接する支持部材3aの間に対してレーザー光Lを照射して切断することで、ワーク5から個片化形状8を得る。
【0024】
また、支持部材3aの下面は平坦とされる。これにより、柱部材3をベース台2上に対して、垂直に立設させることができる。なお、支持部材3aは鋼製に限られるものではなく、セラミックやアルミニウム等、レーザー光Lによる損傷や融解、熱変形が生じにくい材料を適宜適用する構成としても良い。
【0025】
保護部材3cは、凹部3bに配設され、レーザー加工用治具1に固定されたワーク5を保護するための合成ゴム製の部材である。凹部3b及び保護部材3cの上面視における形状は、支持部材3aの上面視における形状と同一とされる。また凹部3b及び保護部材3cの上面視における大きさは、支持部材3aの上面視における大きさより小さく、なおかつワーク5の微細な加工部(具体的には、図2で後述の孔5a,5b)を塞ぐ程度とされる。これにより、詳細は後述するが、保護部材3cとワーク5の微細な加工部とが密着されるので、レーザー光Lをワーク5に照射した場合に生じる、スパッタSやドロスD等(図2参照)、ワーク5の溶解物質による汚染から、ワーク5の微細な加工部を保護することができる。
【0026】
さらに、保護部材3cの高さは、凹部3bの側面視における高さ(深さ)より大きく、なおかつワーク5をレーザー加工用治具1に取り付けた際に、保護部材3cが弾性変形しても、ワーク5が支持部材3aに当接しない程度の高さとされる。従って、保護部材3cの側面の一部は、凹部3bの側壁に遮蔽される。なお、保護部材3cは、合成ゴム製に限られるものではなく、天然ゴムやシリコン・ゲル、再利用可能な両面テープ等、弾性を持ち、ワーク5と密着するものであれば適宜適用される。
【0027】
締結孔3dは、柱部材3とベース台2とを、着脱可能にねじ止めするためのねじ穴である。柱部材3をベース台2上に配設し、貫通孔2aから挿入したねじ6を、締結孔3dにねじ止めすることで、ベース台2と柱部材3とが締結される。これにより、着脱可能とするための構造を簡素化することができるので、製品コストを低減でき、また柱部材3の交換を容易とできる。
【0028】
柱部材3の高さ、即ち支持部材3aの下面から保護部材3cの上面までの高さは、柱部材3上に載置されたワーク5上から照射されたレーザー光Lによって、ベース台2が破損しない程度の高さとされ、50mmが例示される。
【0029】
ワーク固定具4は、ベース台2上に立設され、レーザー加工用治具1にワーク5を固定するための柱状の部材であり、ワーク5に穿設された固定用孔(図示せず)と一致する位置に、それぞれ立設される。ワーク固定具4は、支持部材4aと、支持部材4aの上面に配設されるワーク固定孔4bと、支持部材4aの下面に配設される締結孔4cとで構成される。
【0030】
支持部材4aは、ベース台2にワーク5を支持するための柱状の部材である。支持部材4aの上面および下面は平坦とされる。これにより、ワーク固定具4をベース台2に対して、垂直に立設させることができ、また支持部材4a上に固定されたワーク5を、ベース台2に対して平行に支持することができる。
【0031】
ワーク固定孔4bは、レーザー加工用治具1上に載置したワーク5を、取付ねじ7(図2参照)で固定するためのねじ穴である。ワーク5の固定用孔から挿入した取付ねじ7を、ワーク固定孔4bにねじ止めすることで、ワーク5とワーク固定具4とが固定される。
【0032】
締結孔4cは、ワーク固定具4とベース台2とを、着脱可能にねじ止めするためのねじ穴である。ワーク固定具4をベース台2上に配設し、ねじ6を貫通孔2aから挿入して締結孔4cにねじ止めすることで、ベース台2とワーク固定具4とが締結される。これにより、ワーク5の大きさに応じて、ワーク固定具4の配置やワーク5の保持位置を変更することができるので、ワーク5を適正な状態で保持することができる。
【0033】
また柱部材3及びワーク固定具4の立設に際し、ベース台2の貫通孔2aを、柱部材3の締結孔3dとワーク固定具4の締結孔4cとで共用できるので、ワーク固定具4用に貫通孔を穿設したり、ねじ6を用意する必要がなく、その分製品コストを低減できる。
【0034】
ワーク固定具4の高さは、ワーク5をワーク固定具4によって固定した場合に、柱部材3の保護部材3cとワーク5の下面とが当接し、保護部材3cが弾性変形しつつも、ワーク5の下面が、柱部材3の支持部材3aの上面と当接しない程度の高さとされ、48mmが例示される。これにより、ワーク固定具4によってレーザー加工用治具1に固定されたワーク5は、支持部材3aによって損傷されることなく、ワーク5の下面をスパッタSやドロスD等から、適切に保護することができる。
【0035】
以上より、本実施形態におけるレーザー加工用治具1は、個片化形状8の位置や数またはワーク5の形状に応じて、ベース台2に柱部材3及びワーク固定具4を着脱可能にねじ止めすることで、ワーク5を切断するための「型」として構成される。よって、個片化形状8の位置や数またはワーク5の形状の個々に応じた型を作成する必要がないので、製品コストを低減できる。また、柱部材3及びワーク固定具4を、貫通孔2aにねじ止めするだけで良いので、短時間で所望の型を構成することができる。
【0036】
次に、図2を参照して、レーザー加工用治具1を用いて、レーザー光によりワーク5を個片化形状8に切断する場合について説明する。図2は、レーザー加工時におけるレーザー加工用治具1の断面図である。図2に示す通り、柱部材3をベース台2上における個片化形状8に該当する位置に配置し、ワーク固定具4をベース台2上におけるワーク5の固定用孔に該当する位置に配置し、柱部材3及びワーク固定具4をねじ6でねじ止めされて構成されたレーザー加工用治具1に対して、ワーク5を載置し、ワーク5の固定用孔と、ワーク固定具4とを取付ねじ7でねじ止めすることで、レーザー加工用治具1とワーク5とが固定される。そして、レーザー加工用治具1とワーク5とを、レーザー加工機内における、加工対象物を載置するためのステージST上に配置する。
【0037】
そして、レーザー加工用治具1及びワーク5上の加工ヘッドHから、隣接する柱部材3の間に対してレーザー光Lを照射することで、ワーク5の切断を行う。よって、隣接する柱部材3の間の空間を、ワーク5を通過したレーザー光Lを受ける「溝」として機能させることができる。
【0038】
さて、本実施形態におけるワーク5の個片化形状8のそれぞれには、微細な孔5a,5bが開孔されている。ワーク5の切断加工中には、ワーク5をレーザー光Lで照射することによって生じるスパッタSやドロスD、粉塵等がワーク5に付着してしまう。これらスパッタSやドロスD、粉塵が孔5a,5bの内部に付着してしまうと、これらを除去することは困難である。
【0039】
そこで、本実施形態におけるレーザー加工用治具1の柱部材3には、保護部材3cが設けられ、その保護部材3cは、孔5a,5bを塞ぐ位置に配設される。さらに、ワーク5をワーク固定具4によってレーザー加工用治具1に固定した場合には、ワーク5の下面と保護部材3cとが密着し、孔5a,5bが保護部材3cによって塞がれる。これにより、レーザー光Lをワーク5に照射することで生じるスパッタSやドロスD、粉塵等が孔5a,5bの内部に付着するのを抑制できる。
【0040】
また、保護部材3cは凹部3bに配設されるので、支持部材3aの高さが同一であれば、凹部3bが凹設されない場合と比較して、保護部材3cの高さ(厚さ)を大きく確保することができる。ワーク5をレーザー加工用治具1に固定した場合に、ワーク5の寸法公差や歪み、支持部材3a,4aの個体差により、ワーク5と支持部材3aとが接近することで、保護部材3cに過度の押圧がかかることがある。このような状態において、凹部3bが凹設されない場合では、保護部材3cの高さ(厚さ)が小さいので、保護部材3cの圧縮率が高くなる。従って、逆に保護部材3cからのワーク5に対する反発力が大きくなり、ワーク5が上面側に反ってしまう。これにより、かかるワーク5に対して、レーザー光により個片化形状8に切断しても、その切断後の形状が所望の形状からかけ離れたものとなったり、レーザー光による加工中に、反発力によって個片化形状8が誤って切断される等、ワーク5が破損してしまう虞がある。
【0041】
これに対して、本実施形態においては、保護部材3cが凹部3bに配設されるので、保護部材3cの高さ(厚さ)を大きく確保することができる。これにより、ワーク5と支持部材3aとが接近した場合においても、保護部材3cの圧縮率が小さくなるので、ワーク5が上面側に反ることを抑制できる。即ち、ワーク5の寸法公差や歪み、支持部材3a,4aの個体差を、保護部材3cによって吸収することができる。
【0042】
ここで、凹部3bが凹設されない場合においても、支持部材3aの高さを低くし、保護部材3cの高さを高くすることで、保護部材3cの高さ(厚さ)を確保することができる。しかし、かかる場合においては、保護部材3cが完全に外部に露出されているので、レーザー光Lをワーク5に照射した場合に生じる、スパッタSやドロスD等が保護部材3cに付着し、保護部材3cが損傷してしまう虞がある。
【0043】
これに対して、本実施形態においては、保護部材3cは凹部3bに配設されるので、保護部材3cの側面の一部が、凹部3bの側壁に遮蔽される。これにより、保護部材3cに対して、スパッタSやドロスD等が付着することが抑制できるので、保護部材3cの劣化を抑制できる。
【0044】
次に、図3を参照して、レーザー光Lによるワーク5の切断方法について説明する。図3は、ワーク5の切断経路(切断予定線)を模式的に示した図である。本実施形態においては、ワーク5上から隣接する柱部材3の間の空間に沿ってレーザー光Lを照射することで、ワーク5の切断を行う。その際に、ワーク5を個片化形状8毎に完全に切り離してしまうことも可能だが、個片化形状8毎に完全に切り離してしまうと、後の工程(例えば、洗浄や塗装等)では、切り離された個片化形状8をそれぞれ回収し、個別に処理を行わなければならないので、作業効率が著しく低下する。そこで本実施形態においては、1つの個片化形状8に対して、2箇所以上の接続点を設けることで、ワーク5を全て切り離さないようにする。
【0045】
具体的には、1つの個片化形状8に対して、少なくとも2つの切断経路を設けてレーザー光Lを照射する。本実施形態においては2つの切断経路が設けられ、1つ目は、個片化形状8の角部であって、ワーク5における個片化形状8の外側の始点S1から、柱部材3に向かい、そのまま始点S1の対角側の終点E1まで柱部材3の側面を沿う切断経路L1である。もう一つは、終点E1に隣接し、ワーク5における個片化形状8の外側の始点S2から、柱部材3に向かい、そのまま始点S2の対角側の終点E2まで柱部材3の側面を沿う切断経路L2である。なお、それぞれ隣接する始点S1と終点E2,また始点S2と終点E2とはそれぞれ異なる位置とされる。
【0046】
切断経路L1と切断経路L2とによって形成された領域が、個片化形状8となるが、始点S1と終点E2との間、および始点S2と終点E1との間の、2箇所の接続点によって、個片化形状8はワーク5に残ったままとなる。これにより、各個片化形状8は、ワーク5から完全に切り離されないので、切断加工の後の工程における作業効率が向上する。なお、本実施形態において、1つの個片化形状8に対して、接続点は2箇所に設けられる構成としたが、2箇所に限られるものではなく、1箇所でも良いし、3箇所以上でも良い。
【0047】
また、始点S1,S2はともに、ワーク5における個片化形状8の外側に設けられる。始点S1,S2をワーク5における個片化形状8の外側に設定するのは、レーザー光Lの出力開始時、特にレーザー光Lがワーク5を貫通するまでの間は、多くのスパッタSが発生し、そのスパッタSがワーク5に付着してしまうからである。そこで、始点S1,S2の位置を、ワーク5における個片化形状8の外側、即ち最終的には各個片化形状8とは切り離される位置に設定することで、各個片化形状8に対して、スパッタSの付着を抑制することができる。
【0048】
以上説明した通り、本実施形態のレーザー加工用治具1は、ベース台2と、そのベース台2から立設される複数の柱部材3と、ワーク5をベース台2又は柱部材3に保持するワーク固定具4とが設けられる。よって、隣接する柱部材3の間の空間を、ワーク5を通過したレーザー光Lを受ける溝として機能させることができる。この場合、柱部材3がベース台2に対して着脱可能に構成されるので、例えば、柱部材3の配置を変更する、或いは、柱部材3の大きさや形状を変更することで、隣接する柱部材3の間の空間(溝)を、レーザー光による個片化形状8に対応させることができる。よって、個片化形状8が異なる場合であっても、新たにレーザー加工用治具1を製造することなく対応できる。即ち、汎用性を高めることができる。
【0049】
また、ワーク5を通過したレーザー光Lにより柱部材3又はベース台2が損傷したとしても、レーザー加工用治具1を交換する必要がなく、柱部材3又はベース台2のみを交換することができる。
【0050】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0051】
上記実施形態に挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0052】
上記実施形態においては、レーザー加工用治具1をレーザー加工に用いるものとしたが、必ずしもこれに限られるものではない。NC工作機等、切断や穿孔を行う他の工作機械に対して適用しても良い。
【0053】
上記実施形態においては、柱部材3及びワーク固定具4を、ベース台2にねじ止めする構成としたが、必ずしもこれに限られるものではない。柱部材3及びワーク固定具4の底面に突起を設け、その突起をベース台2の貫通孔2aに差し込むことで、柱部材3及びワーク固定具4をベース台2上に配設する構成としても良い。また、ベース台2の貫通孔2aの代わりに、貫通形成されていない凹部を設け、柱部材3及びワーク固定具4の突起をその凹部に差し込むことで、柱部材3及びワーク固定具4をベース台2上に配設する構成としても良い。なお、この場合、突起、貫通孔2a及び凹部の断面形状は、矩形や十字型等、ベース台2上に配設された柱部材3及びワーク固定具4が回転する等、不安定な状態とならない形状とされるのが好ましい。
【0054】
上記実施形態においては、柱部材3が、凹部3bと保護部材3cとを有する構成としたが、必ずしもこれに限られるものではない。柱部材3から凹部3bと保護部材3cとを除いた構成としても良い。かかる場合においても、レーザー加工用治具1上に載置されたワーク5の孔5a,5bと、柱部材3の支持部材3aとが当接されるので、孔5a,5bへスパッタSやドロスD等が侵入するのを抑制できる。
【0055】
上記実施形態においては、ワーク5の個片化形状8を矩形における4つの頂点を円弧で切り落とした形状とし、支持部材3aの上面視の形状を個片化形状8に内接する矩形としたが、必ずしもこれに限られるものではない。ワーク5の個片化形状8は、三角形等、様々な形状として構成されても良い。図4は、様々な柱部材3を持つレーザー加工用治具1を表す図である。図4に示す通り、柱部材3の形状は、矩形以外でも、三角形や星形、丸形等、様々な形状が適用可能である。また、レーザー加工用治具1に立設される柱部材3の形状は全て同一である必要はなく、様々な形状の柱部材3を混在して構成しても良い。
【0056】
上記実施形態においては、柱部材3及びワーク固定具4の高さは、柱部材3及びワーク固定具4上から照射されたレーザー光Lによって、ベース台2が破損しない程度の高さに構成されるとした。これに加え、又はこれに代えて、柱部材3の支持部材3aと、支持部材4aとの高さを低くした上で、ベース台2における、レーザー光Lの照射位置をくり抜く構造としても良い。図5は、レーザー光Lの照射位置をくり抜いたレーザー加工用治具1を表す図である。図5に示す通り、ベース台2の柱部材3の立設位置の周囲における、貫通孔2a間に、矩形の溝2bがくり抜かれて設けられる。
【0057】
レーザー加工用治具1に載置されたワーク5上から照射されたレーザー光Lは、この溝2bを通過する。これにより、レーザー光Lに照射されるベース台2の面積が小さくなり、レーザー光Lによって損傷を受けるベース台2の面積も小さくなるので、ベース台2の劣化を抑制することができる。また、柱部材3の支持部材3aと、支持部材4aとの高さを低くした場合は、支持部材3a,4aの製造コストが低減するので、レーザー加工用治具1の製造コストも低減できる。なお溝2bは、必ずしも矩形でくり抜かれると限られるものではなく、支持部材3aの上面視の形状に応じて、様々な形状が適宜適用される。また、図3で示した切断経路L1,L2の形状に沿って、溝2bがくり抜かれる構成としても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 レーザー加工用治具
2 ベース台
2a 貫通孔(凹部)
3 柱部材
3b 凹部
3c 保護部材
3d 締結孔
4 ワーク固定具(保持手段、保持部材)
4c 締結孔
5 ワーク(被加工物)
5a,5b 孔(所定領域)
6 ねじ
L レーザー光
図1
図2
図3
図4
図5