前記水溶性粘結剤として、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体、サポニン、澱粉もしくはその誘導体、およびその他の糖類よりなる粘結剤群から選択される少なくとも一種を含有する、請求項1〜請求項5いずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
前記水溶性発泡剤として、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
請求項1〜請求項14のいずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物を金型における鋳型造型用の空間に充填する充填工程であって、前記鋳型造型用の空間への充填を射出により行う充填工程と、
充填した発泡骨材混合物の水分を蒸発させて発泡骨材混合物を固化させ、骨材鋳型を造型する鋳型造型工程と、
造型された骨材鋳型を前記鋳型造型用の空間から取り出す取出工程と、
を有し、
前記充填工程の前に、前記水溶性粘結剤及び前記金属酸化物粒子を混合した混合物と、骨材と、界面活性剤と、水とを混合して、発泡骨材混合物を調製する発泡骨材混合物調製工程をさらに有する
鋳型の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
例えば特許文献1に記載されているように、鋳型用骨材混合物(鋳物砂組成物)の流動性を改善させる方法は種々知られている。しかしながら、流動性が多少改善されたとしても、複雑形状や薄肉形状の鋳型を造形するには限界があり、さらなる流動性の向上が求められている。また、特許文献2、3においても同様に、鋳型用骨材混合物の流動性の向上が求められている。
一方で、骨材混合物を発泡させることにより、流動性が向上し、充填性が十分に確保されたものが開示されている(例えば特許文献4等)。しかしながら、このような発泡骨材混合物を使用して得られた鋳型は、その表層側(外周面側)に水溶性粘結剤が偏在する。この鋳型を利用して鋳造物を鋳造すると、水溶性粘結剤の影響により鋳造物の鋳肌へ骨材(以下、「砂」とも称する。)が付着するという現象が生じる。
そこで本発明は、複雑形状や薄肉形状を有する鋳型に対応可能な流動性を備える発泡骨材混合物において、鋳造物の鋳肌への砂付着を低減する鋳型用発泡骨材組成物、鋳型及び鋳型の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題は、以下の手段により解決される。
【0010】
<1> 骨材と、水溶性粘結剤と、水溶性発泡剤と、水と、球状の金属酸化物粒子と、を含有する鋳型用発泡骨材混合物。
<2> 前記金属酸化物粒子が、中性又はアルカリ性である、<1>に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
<3> 前記金属酸化物粒子として、アルミナ粒子及びシリカ粒子からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、<1>又は<2>に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
<4> 前記金属酸化物粒子の粒子径が、0.1μm以上5μm以下である、<1>〜<3>のいずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
<5> 前記骨材として、球状人工砂を含有する、<1>〜<4>のいずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
<6> 前記水溶性粘結剤として、アルカリ珪酸塩を含有する、<1>〜<5>のいずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
<7> 前記水溶性粘結剤として、珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、<6>に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
<8> 前記水溶性粘結剤として、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体、サポニン、澱粉もしくはその誘導体、およびその他の糖類よりなる粘結剤群から選択される少なくとも一種を含有する、<1>〜<5>のいずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
<9> 前記水溶性発泡剤として、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、及び両性界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、<1>〜<8>のいずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
<10> 前記金属酸化物粒子の含有量が、前記骨材に対し0.001質量%以上0.5質量%以下である、<1>〜<9>のいずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
<11> 前記水溶性粘結剤の含有量が、前記骨材に対し0.1質量%以上20質量%以下である、<1>〜<10>のいずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
<12> 前記水溶性発泡剤の含有量が、前記骨材に対し0.005質量%以上0.1質量%以下である、<1>〜<11>のいずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
<13> 前記水の含有量が、前記骨材に対し1.0質量%以上10質量%以下である、<1>〜<12>のいずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
<14> 粘度が0.5Pa・s以上10Pa・s以下である、<1>〜<13>のいずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物。
<15> <1>〜<14>のいずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物を含有し、
前記水溶性粘結剤及び前記金属酸化物粒子が外周面側に偏在している、
鋳型。
<16> <1>〜<14>のいずれか一項に記載の鋳型用発泡骨材混合物を金型における鋳型造型用の空間に充填する充填工程であって、前記鋳型造型用の空間への充填を射出により行う充填工程と、
充填した発泡骨材混合物の水分を蒸発させて発泡骨材混合物を固化させ、骨材鋳型を造型する鋳型造型工程と、
造型された骨材鋳型を前記鋳型造型用の空間から取り出す取出工程と、
を有し、
前記充填工程の前に、前記水溶性粘結剤及び前記金属酸化物粒子を混合した混合物と、骨材と、界面活性剤と、水とを混合して、発泡骨材混合物を調製する発泡骨材混合物調製工程をさらに有する
鋳型の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、鋳造物の鋳肌への砂付着を低減する鋳型用発泡骨材混合物、鋳型及び鋳型の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
本実施形態に係る鋳型用発泡骨材混合物(以下、単に「発泡骨材混合物」とも称す。)は、骨材と、水溶性粘結剤と、水溶性発泡剤と、水と、球状の金属酸化物粒子とを含有する。
【0015】
本実施形態に係る鋳型用発泡骨材混合物は、鋳型(骨材鋳型)の材料として用いられる組成物である。なお、本明細書において鋳型とは中子を含む意味で用いる。
【0016】
本実施形態に係る鋳型用発泡骨材混合物は、前記の構成を備えることにより、鋳造物の鋳肌への砂付着を低減することができる。
この効果が奏される理由は以下のように推測される。
【0017】
本実施形態に係る鋳型用発泡骨材混合物は、球状の金属酸化物粒子を配合している。この発泡骨材混合物を使用して鋳型(例えば、「中子」等)を造型すると、鋳型用発泡骨材混合物に含まれる水溶性粘結剤と共に、金属酸化物粒子が鋳型の表層側(外周面側)に偏在する。表層側に偏在した金属酸化物粒子は、鋳造物に対してロータス効果を発揮するため、水溶性粘結剤による鋳造物の鋳肌への砂付着を抑制することができる。
【0018】
また、本実施形態に係る発泡骨材混合物は、使用する水溶性粘結剤が低減される。
この効果が奏される理由は以下のように推測される。
【0019】
本実施形態に係る鋳型用発泡骨材混合物では、球状の金属酸化物粒子を配合することにより、造形時に金属酸化物粒子が、流動する鋳型用発泡骨材混合物の中で、流動を滑らかにするコロ(転動体)の役割をすると考えられる。この金属酸化物粒子による鋳型用発泡骨材混合物の流動を滑らかにする効果(ベアリング効果)によって、鋳型用発泡骨材混合物の充填密度を向上させることができる。
したがって、鋳型用発泡骨材混合物が金属酸化物粒子を配合していないものを使用する場合に比べ、充填密度が向上するため、得られる鋳型の強度が向上する。そのため、水溶性粘結剤の使用量を低減しても所望とする強度の鋳型を得ることができる。
【0020】
次いで、本実施形態に係る鋳型用発泡骨材混合物を構成する各成分について詳細に説明する。
【0021】
[骨材]
本実施形態における骨材としては、特に限定されず従来公知のいかなるものも用いることができる。例えば、硅砂、アルミナ砂、オリビン砂、クロマイト砂、ジルコン砂、ムライト砂等の砂が挙げられ、更には各種の人工砂(いわゆる人工骨材)を用いてもよい。
これらの中でも、骨材に対し粘結剤の添加量を低減しても十分な鋳型強度が得られ易く且つ高い骨材再生率が得られ易いとの観点で、特に人工砂が好ましい。
【0022】
本実施形態における骨材の粒子径としては、10μm以上1mm以下が好ましく、50μm以上500μm以下が更に好ましい。
粒子径が上記上限値以下であることにより流動性に優れ砂鋳型を造型する際の充填性が向上する。一方、上記下限値以上であることにより骨材鋳型として通気性が良好に保たれる。
【0023】
なお、上記骨材の粒子径は、後述の金属酸化物粒子の粒子径と同様の方法により測定することができる。
【0024】
本実施形態における骨材の粒度指数としては、JIS;631(AFS;300)以下JIS;5(AFS;3)以上が好ましく、JIS;355(AFS;200)以下JIS;31(AFS;20)以上が更に好ましい。
粒度指数が上記上限値以下であることにより流動性に優れ鋳型を造型する際の充填性が向上する。一方、上記下限値以上であることにより鋳型として通気性が良好に保たれる。
【0025】
尚、本明細書においてはJIS Z 2601−1993付属書2(鋳物砂の粒度試験方法)にて測定された粒度指数を表す。
【0026】
本実施形態における骨材の形状としては、特に限定されるものではなく、球状、丸型、角丸型、多角型、尖扁角型等、いかなる形状であってもよい。なお、流動性に優れ鋳型を造型する際の充填性が向上し、また鋳型として通気性が良好に保たれるとの観点から、球状、丸型が好ましく、球状がより好ましい。
特に、本実施形態における骨材として、球状人工砂が好ましい。
【0027】
[水溶性粘結剤]
水溶性粘結剤は、常温及び注湯される溶湯の温度域において鋳型の形状を良好に保持させるとの観点で、骨材に粘結力を付与するために含有される。
なお、水溶性とは常温(20℃)で水に可溶性であることを指し、1気圧20℃で同容量の純水との混合液が均一な外観を示すことが好ましい。
【0028】
本実施形態における水溶性粘結剤としては、特に限定されず、例えばアルカリ珪酸塩の他、従来公知のいかなるものも用いることができる。具体的には、珪酸ナトリウム(水ガラス)、珪酸カリウム(珪酸カリ)、珪酸アンモニウム、オルトリン酸塩、ピロリン酸塩、トリメタリン酸塩、ポリメタリン酸塩、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、アルキルシリケート等が挙げられ、これらは、単独ないし2種以上を用いることができる。
これらの中でも、珪酸ナトリウム(水ガラス)、珪酸カリウム(珪酸カリ)がより好ましい。
【0029】
なお、珪酸ナトリウム(水ガラス)としてはモル比(SiO
2・Na
2Oの分子比)が1.2以上3.8以下のものが好ましく、更にはモル比が2.0以上3.3以下のものがより好ましい。モル比が上記下限値以上であることにより低温での長期保管においても水ガラスの変質が抑制できるとの利点があり、一方、上記上限値以下であることにより粘結剤の粘度を調整し易いとの利点がある。
【0030】
本実施形態における水溶性粘結剤として、ポリビニルアルコールもしくはその誘導体、サポニン、澱粉もしくはその誘導体、その他の糖類等も用いることができる。
【0031】
ポリビニルアルコールの誘導体としては、例えばカチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。
【0032】
澱粉の誘導体としては、例えば酸化澱粉、酢酸澱粉、燐酸エステル化澱粉、アセチル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン化澱粉、カルバミン酸エステル化澱粉、カルボキシメチル化澱粉、カルボキシエチル化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉、デキストリン、グラフト澱粉、架橋澱粉等が挙げられる。
【0033】
その他の糖類としては、例えば、多糖類としてセルロース、フルクトース等が、四糖類としてアカルボース等が、三糖類としてラフィノース、マルトトリオース等が、二糖類としてマルトース、スクラトース、トレハロース等が、単糖類としてブドウ糖、果糖、その他オリゴ糖等が挙げられる。
【0034】
なお、水溶性粘結剤は、例えば上記に列挙されたものの中から1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0035】
本実施形態における水溶性粘結剤の骨材に対する含有量は、用いる粘結剤及び骨材の種類によってそれぞれ設定することが好ましいが、0.1質量%以上20質量%以下が好ましく、更に0.1質量%以上10質量%以下がより好ましく、特に0.2質量%以上5質量%以下が好ましい。
【0036】
[水溶性発泡剤]
また、本実施形態に係る発泡骨材混合物を用いて鋳型を造型するに際しては、水溶性発泡剤を用いて骨材、水溶性粘結剤等と共に混合し攪拌して発泡を生じさせ、発泡した骨材混合物を調製して流動性を向上した上で鋳型を造型することが好ましい。
なお、水溶性とは常温(20℃)で水に可溶性であることを指し、1気圧20℃で同容量の純水との混合液が均一な外観を示すことが好ましい。
【0037】
上記水溶性発泡剤としては、例えば界面活性剤(具体的には、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤等)等が挙げられる。
【0038】
陰イオン界面活性剤としては、例えば脂肪酸ナトリウム、モノアルキル硫酸塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、エーテル硫酸ナトリウムなどがある。
非イオン界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸ソルビタンエステル、アルキルポリグルコシドなどがある。
両性界面活性剤としては、例えばコカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどがある。
【0039】
水溶性発泡剤は、例えば上記に列挙されたものの中から1種のみを用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
本実施形態における水溶性発泡剤の骨材に対する含有量は、0.005質量%以上0.1質量%以下であることが好ましく、更に0.01質量%以上0.05質量%以下がより好ましい。
ただし、前記水溶性発泡剤の骨材に対する含有量は、用いる水溶性発泡剤及び骨材の種類によってそれぞれ設定することが好ましい。
【0041】
[水]
本実施形態に係る鋳型用発泡骨材混合物は、水を含有する。
本実施形態における水の骨材に対する含有量は、用いる水溶性粘結剤及び骨材の種類によってそれぞれ設定することが好ましいが、1質量%以上10質量%以下が好ましく、更に1.5質量%以上7.5質量%以下がより好ましい。
【0042】
[金属酸化物粒子]
本実施形態に係る鋳型用発泡骨材混合物は、球状の金属酸化物粒子を含有する。 ここで「球状」とは、下記式(A)で表されるWadellの球形化度(以下、単に「球形化度」とも称する。)が0.6以上(好ましくは0.8以上)であるものをいう。
(球形化度)=(粒子と同じ体積を有する球の表面積)/(粒子の表面積) (A)
【0043】
金属酸化物粒子としては、シリカ粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、チタニア粒子等が挙げられ、これらは単独ないし2種以上を用いることができる。これらの中でも、アルミナ粒子及びシリカ粒子の少なくとも1種が好ましい。
【0044】
また、本実施形態に係る金属酸化物粒子は、中性又はアルカリ性であるものが好ましい。ここでいう金属酸化物粒子の酸性、中性、アルカリ性とは、以下のように定義される。金属酸化物粒子10gを水100mlに分散させたとき、この分散液の液温25℃におけるpHを測定して、pHが7未満であれば酸性、pHが7であれば中性、pHが7超えであればアルカリ性と定義する。金属酸化物粒子のpHは、それぞれの粒子が中性又はアルカリ性であることが好ましいが、使用する金属酸化物粒子全体としてpHが7以上であれば足りるものであり、その一部に酸性の粒子を含んでいてもよい。
【0045】
発泡混合物に酸性の金属酸化物粒子を添加すると、発泡骨材混合物のゲル化が促進されるため、混練した発泡骨材混合物の可使時間が短くなることが生じることがある。一方、中性又はアルカリ性の金属酸化物粒子を使用することにより、発泡した骨材混合物を安定した状態で長時間使用することができる。
【0046】
金属酸化物粒子は、その製法や成分により、酸性、中性、アルカリ性、種々のpHのものが市販されている。
金属酸化物粒子の製法としてシリカ粒子を例にとると、乾式法で製造されたもの、例えば四塩化珪素を火炎熔融法により製造する方法では、残留した塩素が水溶液中で塩酸に変化するため酸性となる。また、湿式法で製造されたものは、用いる溶液のpHに依存し、例えば沈降法により製造する方法では、中性からアルカリ性のものが多く、例えばゲル法により製造する方法では、酸性から中性のものが多い傾向がある。
【0047】
また、金属酸化物粒子の製法としてアルミナ粒子を例にとると、VMC法で製造する方法では、金属粉末の爆燃現象を利用した製法で、中性となる。
【0048】
また、本実施形態に係る金属酸化物粒子の粒子径は、鋳造物の鋳肌への砂付着を低減する観点から、0.1μm以上5μm以下であることが好ましく、0.2μm以上2μm以下であることがより好ましく、0.5μm以上1μm以下であることが更に好ましい。
尚、上記の粒子径は体積平均粒子径を表し、本明細書においては以下の方法にて測定された粒子径を表す。
まず、粒子径の測定装置として株式会社島津製作所社製のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD2100を用いる。測定の条件は以下の通りとする。純水に分散剤のヘキサメタリン酸ナトリウム(キシダ化学社製、1級)5質量%を添加したものを分散液とし、金属酸化物粒子を前記分散液に入れ、装置に付属している超音波槽(発信周波数38kHz 、100W)にて5分の超音波処理を施し、これを上記のレーザー回折式粒度分布測定装置SALD2100にて、屈折率が1.70−0.20iの条件にて粒度の測定を行う。
【0049】
[その他の組成物]
また、本実施形態に係る鋳型用骨材混合物には、上記のほかにも、触媒、酸化促進剤等、従来公知の組成物を添加することができる。
【0050】
[混練方法]
本実施形態に係る鋳型用発泡骨材混合物の作製は、上述した各種成分を混合することにより行われる。添加の順番や混練の方法は特に限定されるものではない。
上記各成分を混練する際の混練装置としては、特に限定されることなく従来公知の混練装置が用いられ、例えば自転・公転ミキサー、アイリッヒ・インテンシブ・ミキサー、新東シンプソン・ミックスマラー等が用いられる。
【0051】
[骨材鋳型の製造方法]
本実施形態に係る鋳型用発泡骨材混合物を用いた鋳型(骨材鋳型)の造型は、造型機による造型であっても、また手込めによる造型であってもよい。
【0052】
ただし、上記各成分を混合し攪拌して発泡させて発泡状の骨材混合物を作り、鋳型造型用の金型における加熱した鋳型造型用空間(キャビティ)へ圧入して充填し造型することが好ましく、圧入の際に射出により充填することがより好ましい。
【0053】
より具体的には、以下のa)〜c)の工程を含む製造方法によって鋳型を造型することが好ましい。
a)骨材、水溶性粘結剤、水溶性発泡剤、水、及び球状の金属酸化物粒子を含む鋳型用発泡骨材混合物を金型における鋳型造型用の空間に充填する充填工程であって、前記鋳型造型用の空間への充填を射出により行う充填工程と、
b)充填した発泡骨材混合物の水分を蒸発させて発泡骨材混合物を固化させ、骨材鋳型を造型する鋳型造型工程と、
c)造型された骨材鋳型を前記鋳型造型用の空間から取り出す取出工程。
【0054】
また、発泡骨材混合物を均一に分散させる観点から前記充填工程の前に、以下の発泡骨材混合物調製工程を含む。
前記水溶性粘結剤及び前記金属酸化物粒子を混合した混合物と、骨材と、界面活性剤と、水とを混合して、発泡骨材混合物を調製する発泡骨材混合物調製工程。
【0055】
高温に加熱された金型の鋳型造型用空間に圧入充填された鋳型用発泡骨材混合物では、攪拌により鋳型用発泡骨材混合物中に分散した気泡と、加熱された金型の熱により発泡骨材混合物中の水分から発生する水蒸気と、が鋳型の中心部(内部)に集まる現象が起きる。そのため、内部においては骨材、水溶性粘結剤、水溶性発泡剤、及び金属酸化物粒子の充填密度(つまり固形分の密度)が低い鋳型となり、逆に表面は骨材、水溶性粘結剤、水溶性発泡剤、及び金属酸化物粒子の充填密度(固形分の密度)が高い鋳型となる。
【0056】
このように本実施形態に係る鋳型は、水溶性粘結剤及び金属酸化物粒子が外周面側(表面側)に偏在している。
鋳型の外周面側に水溶性粘結剤と共に金属酸化物粒子が偏在していることにより、この金属酸化物粒子が鋳造物の鋳肌に対してロータス効果を発揮するため、水溶性粘結剤による鋳造物の鋳肌への骨材(砂)付着の影響を低減することができる。
【0057】
鋳型の強度や表面品質に寄与する水溶性粘結剤は、鋳型の表面に存在すれば十分に足りるものであることを考慮すると、水溶性粘結剤が外周面側に偏在していない従来の鋳型と比べ、使用する水溶性粘結剤の量を抑えることができる。
【0058】
また、本実施形態では、金属酸化物粒子は鋳型の表面に存在すれば足りるものであるため、金属酸化物粒子が鋳型の強度向上のために添加されていた従来の鋳型、すなわち、金属酸化物粒子が外周面側に偏在していない従来の鋳型に比べ、使用する金属酸化物粒子の量を抑えることができる。
また、本実施形態の金属酸化物粒子は、発泡骨材混合物において、流動を滑らかにするコロ(転動体)の役割を果たすと考えられるため、発泡骨材混合物の充填密度の向上に寄与することができ、鋳型の強度向上の観点から有利である。
【0059】
本実施形態に係る鋳型において、水溶性粘結剤及び金属酸化物粒子の外周面側への偏在は、以下の方法により確認することができる。
鋳型において、水溶性粘結剤及び金属酸化物粒子の鋳型の外周面側への偏在は、水溶性粘結剤及び金属酸化物粒子の濃度を測定することにより確認することができる。
具体的には、水溶性粘結剤及び金属酸化物粒子の濃度の測定方法として、まず、鋳型の表面と内部のサンプルを採取する。サンプルの採取方法は、鋳型の表面側と内部側のそれぞれから同体積の切片を採取する。得られた表面側及び内部側のそれぞれの切片における水溶性粘結剤及び金属酸化物粒子の濃度を測定することで、水溶性粘結剤及び金属酸化物粒子が鋳型の外周面側に偏在しているか否かを確認することができる
【0060】
また、鋳型において、内部の固形分の密度が表面の固形分の密度より小さいか否かを確認するには、鋳型の断面において、表面および内部のそれぞれの固形分(骨材、水溶性粘結剤、水溶性発泡剤、及び金属酸化物粒子)の詰まり具合を目視で確認することで判別できる。
【0061】
鋳型用発泡骨材混合物は鋳型造型用空間への充填性を向上させるため、及び上記充填密度向上のために、ホイップクリーム状となるまで攪拌して発泡しておくことが好ましい。より具体的には、前記鋳型用発泡骨材混合物(つまり攪拌後の鋳型用骨材混合物)の粘度が0.5Pa・s以上10Pa・s以下であることが好ましく、該粘度は更に0.5Pa・s以上8Pa・s以下がより好ましい。
なお、鋳型用発泡骨材混合物(つまり攪拌後の鋳型用骨材混合物)の粘度の測定は以下のようにして行われる。
−測定方法−
底部に直径6mmの細孔を有する内径42mmの円筒容器に鋳型用発泡骨材混合物を投入し、重量1kg、直径40mmの円柱状おもりにて、おもりの自重で加圧することで細孔より鋳型用発泡骨材混合物が排出される。この時、おもりが50mm移動するのに要した時間を計測し、下記数式にて粘度を求める。なお、粘度測定時の温度は25℃とする。
式 μ=πD
4P
pt/128L
1L
2S
μ:粘度[Pa・s]
D:底部細孔の直径[m]
P
p:おもりの加圧力[Pa]
t:おもりが50mm移動するのに要した時間[s]
L
1:おもりの移動距離(=50mm)
L
2:底部細孔の板厚[m]
S:円柱状おもりの底部の面積と円筒の内部の中空領域(つまり内径部分)の断面積との平均値[m
2]
【0062】
また、鋳型用発泡骨材混合物の鋳型造型用空間(キャビティ)への充填方法としては、シリンダ内におけるピストンによる直接加圧、シリンダ内に圧縮空気を供給することによる充填、スクリュー等による圧送、流し込みなどがあるが、充填スピードや発泡骨材混合物への均一加圧による充填安定性から、ピストンによる直接加圧及び圧縮空気による充填が好ましい。
【0063】
鋳型造型用空間(キャビティ)に充填した鋳型用発泡骨材混合物の水分の蒸発は、例えば加熱された金型からの熱、鋳型造型用空間(キャビティ)への加熱された空気の流動、この両者の併用等の方法によって行われる。
【0064】
〔鋳型を用いた鋳物の製造〕
本実施形態に係る鋳型用発泡骨材混合物を用いた鋳型は各種金属又は合金の鋳造に用いられる。鋳造に用いられる溶湯の材料としては例えば以下のものが挙げられる。なお、下記注湯温度とは、下記の材料が注湯するのに適当な程度に溶解する温度を表す。
アルミニウム又はアルミニウム合金(注湯温度:670℃〜700℃)
鉄又は鉄合金(注湯温度:1300℃〜1400℃)
青銅(注湯温度:1100℃〜1250℃)
黄銅(注湯温度:950℃〜1100℃)
【0065】
鋳造は、上記に列挙するような材料による溶湯を鋳型(中子)及び金型中の空間に注湯し、その後冷却して鋳型を除去することにより行われる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例によって本実施形態をより詳細に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下において「部」とは、特に断りのない限り「質量部」を表す。
【0067】
<実施例1>
表1に示す組成の材料を、混合機(愛工舎製作所製、卓上ミキサ)を用いて約200rpmで約5分間攪拌混合して発泡させて、発泡骨材混合物を調製した。
【0068】
【表1】
【0069】
次いで、この発泡骨材混合物を、射出装置にて250℃に加熱した金型に、ゲート速度1m/sec、シリンダ面圧0.4MPaで射出した。この金型は、曲げ試験用造型金型の金型で、容量約80cm
3の空間(キャビティ)を有している。
加熱された金型に充填された発泡骨材混合物を2分間放置して、金型の熱により水分を蒸発させ、発泡骨材混合物を固化させた。
その後、金型のキャビティから鋳型(中子)を取り出した。
【0070】
この鋳型により、10mm×10mm×70mmの曲げ試験片を作製し、これらの試験片の質量(重量)、曲げ強度を測定した。曲げ強度の測定はJACT試験法SM−1、曲げ強さ試験法に準拠して行った。
また、この鋳型を使用して鋳造物を作製し、砂落とし後の鋳造物の鋳肌への砂付着量を測定した。測定結果を
図1A〜
図1Cに示す。
【0071】
<比較例1>
表1に示す組成において、金属酸化物粒子(球状アルミナ粒子)を含まない組成の材料を用いた以外は、実施例1と同様にして鋳型を得て、同様の試験を行った。測定結果を
図1A〜
図1Cに示す。
【0072】
図1Aに示すように、試験片の重量測定の結果、球状アルミナ粒子が無しの場合に比べ、実施例1で得られた試験片の重量は約1割向上した。
また、
図1Bに示すように、試験片の曲げ強度測定の結果、球状アルミナ粒子が無しの場合に比べ、実施例1で得られた試験片の曲げ強度は約1.5倍に向上した。
また、
図1Cに示すように、鋳造し砂落としをした後の鋳造物の鋳肌の砂の残量を測定した結果、球状アルミナ無しの場合は砂の残量が12gであったが、実施例1で得られた試験片の場合は砂の残量が0gになった。
なお、既述の方法に従って、鋳型の表面と内部のそれぞれから同体積の切片を採取し、各切片における水溶性粘結剤及び金属酸化物粒子(球状アルミナ粒子)の濃度を測定したところ、表面側から採取した切片の方が、内部側から採取した切片よりも、水溶性粘結剤及び金属酸化物粒子(球状アルミナ粒子)の濃度が高かった。
【0073】
<実施例2>
表2に示す組成の材料を用いた以外は、実施例1と同様にして鋳型を得て、同様の試験を行った。測定結果を
図2A〜
図2Cに示す。
【0074】
【表2】
【0075】
<比較例2>
表2に示す組成において、金属酸化物粒子(球状シリカ粒子)を含まない組成の材料を用いた以外は、実施例2と同様にして鋳型を得て、同様の試験を行った。測定結果を
図2A〜
図2Cに示す。
【0076】
図2Aに示すように、試験片の重量測定の結果、球状シリカ粒子が無しの場合に比べ、実施例2で得られた試験片の重量は約1割向上した。
また、
図2Bに示すように、試験片の曲げ強度測定の結果、球状アルミナ粒子が無しの場合に比べ、実施例2で得られた試験片の曲げ強度は約1.5倍に向上した。
また、
図2Cに示すように、鋳造し砂落としをした後の鋳造物の鋳肌の砂の残量を測定した結果、球状シリカ無しの場合は砂の残量が2gであったが、実施例2で得られた試験片の場合は砂の残量が0gになった。
なお、既述の方法に従って、鋳型の表面と内部のそれぞれから同体積の切片を採取し、各切片における水溶性粘結剤及び金属酸化物粒子(球状シリカ粒子)の濃度を測定したところ、表面側から採取した切片の方が、内部側から採取した切片よりも、水溶性粘結剤及び金属酸化物粒子(球状シリカ粒子)の濃度が高かった。