(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-85280(P2019-85280A)
(43)【公開日】2019年6月6日
(54)【発明の名称】高炉スラグ含有セメントスラリー組成物及びこれを用いたソイルセメントスラリーの調製方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/04 20060101AFI20190517BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20190517BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20190517BHJP
C04B 24/26 20060101ALI20190517BHJP
C08F 220/06 20060101ALI20190517BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20190517BHJP
C09K 17/10 20060101ALI20190517BHJP
C09K 17/44 20060101ALI20190517BHJP
C09K 17/48 20060101ALI20190517BHJP
C09K 17/42 20060101ALI20190517BHJP
C09K 17/02 20060101ALI20190517BHJP
【FI】
C04B28/04
C04B18/14 A
C04B22/14 B
C04B24/26 E
C04B24/26 B
C08F220/06
C08F220/28
C09K17/10 P
C09K17/44 P
C09K17/48 P
C09K17/42 P
C09K17/02 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-212717(P2017-212717)
(22)【出願日】2017年11月2日
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(71)【出願人】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100198856
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 聡
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴穂
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 宰
(72)【発明者】
【氏名】方田 公章
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】玉木 伸二
【テーマコード(参考)】
4G112
4H026
4J100
【Fターム(参考)】
4G112MB23
4G112MD02
4G112MD03
4G112MD04
4G112MD05
4G112MD07
4G112PA29
4G112PB11
4G112PB29
4G112PB31
4H026CA01
4H026CA05
4H026CB08
4H026CC05
4J100AJ02P
4J100AK03P
4J100AK08P
4J100AL08Q
4J100BA08Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA38
4J100EA01
4J100EA03
4J100FA03
4J100FA04
4J100FA19
4J100HA31
4J100HB39
4J100HE05
4J100HE12
4J100JA05
4J100JA67
(57)【要約】
【課題】地盤改良工事においてソイルセメントスラリーとして良好な施工性や硬化後の得られる地盤改良体が十分な強度を有し、更にはソイルセメントスラリーの土単位体積当たりの注入量を抑制するために、水/結合材の質量比を低減し得る高炉スラグ含有セメントスラリー組成物及びこれを用いたソイルセメントスラリーの調製方法を提供する。
【解決手段】特定の結合材、混和剤及び水を含有してなる地盤改良用の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物であって、水/結合材の質量比が30〜60%、且つ結合材100質量部に対し特定の混和剤を0.01〜3質量部の割合で用いた。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の結合材、混和剤及び水を含有してなる地盤改良用の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物であって、水/結合材の質量比が30〜60%、且つ結合材100質量部に対し下記の混和剤を0.01〜3質量部の割合で含有してなることを特徴とする高炉スラグ含有セメントスラリー組成物。
結合材:粉末度が2000〜11000cm
2/gの高炉スラグ微粉末を18〜77質量%、ポルトランドセメントを23〜82質量%及び石膏を0〜20質量%の割合で含有して成るもの。
混和剤:下記の水溶性ビニル共重合体からなるもの。
水溶性ビニル共重合体:分子中に下記の化1から形成された構成単位Lを50〜95質量%及び(メタ)アクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位Mを50〜5質量%の割合で有する質量平均分子量1000〜1000000からなるもの。
【化1】
(化1において、
R
1:炭素数3又は4の不飽和アシル基
R
2:水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基
AO:炭素数2〜4のオキシアルキレン基
n:AOの平均付加モル数であり、5〜200の数)
【請求項2】
構成単位Lを60〜90質量%及び(メタ)アクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位Mを40〜10質量%の割合で有し、構成単位Lにおけるnが10〜50の数で構成されたポリオキシアルキレン基であり、質量平均分子量10000〜500000の水溶性ビニル共重合体である請求項1記載の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物。
【請求項3】
構成単位Lを65〜80質量%及び(メタ)アクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位Mを35〜20質量%の割合で有し、構成単位Lにおけるnが15〜30の数で構成されたポリオキシアルキレン基であり、質量平均分子量40000〜100000の水溶性ビニル共重合体である請求項1記載の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物。
【請求項4】
高炉スラグ微粉末が、粉末度が3000〜7000cm2/gのものである請求項1〜3のいずれか一つの項記載の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物。
【請求項5】
結合材が、高炉スラグ微粉末を32〜67質量%、ポルトランドセメントを28〜65質量%及び石膏を2〜15質量%の割合で含有するものである請求項1〜4のいずれか一つの項記載の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物。
【請求項6】
石膏が、無水石膏からなる請求項1〜5のいずれか一つの項記載の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物。
【請求項7】
水/結合材の質量比が33〜52%である請求項1〜6のいずれか一つの項記載の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一つの項記載の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物を地盤に注入して用いることを特徴とするソイルセメントスラリーの調製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結合材として高炉スラグ微粉末を含有する高炉スラグ含有セメントスラリー組成物及びこれを用いたソイルセメントスラリーの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ソイルセメントにより杭等の地盤改良体を構築する場合には、地盤中にセメント系固化材と水とを混合したセメントスラリーを土壌に注入し、削孔混練機械を用いて原位置で撹拌混合するのが一般的である。またその際の水/結合材の質量比はセメントスラリーを圧送するグラウトポンプ等への負荷も考慮し、60%以上であることが一般的である(例えば非特許文献1参照)。しかし、セメントスラリーの水/セメントの質量比を高くすると、所望の強度を得るために注入率を上げざるを得ず、建設汚泥である土壌とセメントスラリーの混合物であるソイルセメントスラリーの排出量が増加し、処理費用や環境への負荷が増大する。更には、セメントスラリーの材料分離抵抗性が低下し、品質の安定性に問題が生じる。材料分離性の向上を必要とする場合、一般的にはベントナイトやセルロース系等の増粘剤を用いて、セメントスラリーの粘性を向上させる手法が取られている(例えば特許文献1及び2参照)。
【0003】
また低い水/結合材の質量比でセメントミルクの粘性を低減するために、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物やメラミンスルホン酸ホルムアルデヒド高縮合物と、ポリアクリル酸ナトリウム等粘性土の分散に効果のある分散剤を併用した分散剤が提案されている(例えば特許文献3及び4参照)。しかし、これらの分散剤はセメントに対する分散性が低く、水/結合材の質量比を十分に低減できないという問題がある。
【0004】
セメントに対する分散性が高い分散剤としては、メタクリル酸やポリエーテルエステル化物を主成分として重合した重合物も知られている(例えば特許文献5参照)。しかし、この分散剤は水/結合材の質量比の低い領域及び粉末度の大きい分級セメントのような特殊なセメントを用いないセメントスラリー組成物において、粘稠な沈殿物が発生しやすく、これにより配管の閉塞を招いたり、セメントスラリーの均一性が失われ、品質の低下を引き起こしたりするという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−256056号公報
【特許文献2】特開平8−12971号公報
【特許文献3】特開平4−367548号公報
【特許文献4】特開平4−338144号公報
【特許文献5】国際公開WO2011/027890号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「セメント系固化材による地盤改良マニュアル(第3版)」、社団法人セメント協会、2003年、113頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、地盤改良工事においてソイルセメントスラリーとして良好な施工性や硬化後の得られる地盤改良体が十分な強度を有し、更にはソイルセメントスラリーの土単位体積当たりの注入量を抑制するために、水/結合材の質量比を低減し得る高炉スラグ含有セメントスラリー組成物及びこれを用いたソイルセメントスラリーの調製方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
しかして本発明者らは、前記の課題を解決するべく研究した結果、結合材として特定の成分を特定割合で含有する高炉スラグ含有セメントを用い、また水/結合材の質量比を特定範囲に調製し、更に結合材に対し特定の混和剤を特定割合で含有してなる高炉スラグ含有セメントスラリー組成物及びこれを用いたソイルセメントスラリーの調製方法が正しく好適であることを見出した。
【0009】
すなわち本発明は、下記の結合材、混和剤及び水を含有してなる地盤改良用の高炉スラグ含有セメントスラリー組成物であって、水/結合材の質量比が30〜60%、且つ結合材100質量部に対し下記の混和剤を0.01〜3質量部の割合で含有してなることを特徴とする高炉スラグ含有セメントスラリー組成物に係る。また本発明はかかる高炉スラグ含有セメントスラリー組成物を用いたソイルセメントスラリーの調製方法に係る。
【0010】
結合材:粉末度が2000〜11000cm
2/gの高炉スラグ微粉末を18〜77質量%、ポルトランドセメントを23〜82質量% 及び石膏を0〜20質量%の割合で含有して成るもの。
【0011】
混和剤:下記の水溶性ビニル共重合体からなるもの。
【0012】
水溶性ビニル共重合体:分子中に下記の化1から形成された構成単位Lを50〜95質量%及び(メタ)アクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位Mを50〜5質量%の割合で有する質量平均分子量1000〜1000000からなるもの。
【0013】
【化1】
【0014】
化1において、
R
1:炭素数3又は4の不飽和アシル基
R
2:水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基
AO:炭素数2〜4のオキシアルキレン基
n:AOの平均付加モル数であり、5〜200の数
【0015】
先ず本発明に係る高炉スラグ含有セメントスラリー組成物(以下、本発明のスラリー組成物という)について説明する。本発明のスラリー組成物は結合材と混和剤及び水を含有して成るものである。
【0016】
本発明のスラリー組成物に供する混和剤は前記の水溶性ビニル共重合体である。
【0017】
水溶性ビニル共重合体の構成単位Lを形成することとなる化1で示される化合物において、化1中のR
1は炭素数3又は4の不飽和アシル基であり、アクリロイル基、メタクリロイル基等が挙げられる。
【0018】
水溶性ビニル共重合体の構成単位Lを形成することとなる化1で示される化合物において、化1中のR
2は水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。
【0019】
化1において、AOにおけるオキシアルキレン基はオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられる。またAOの平均付加モル数nは5〜200の数である。
【0020】
かかる化1で示される化合物の具体例としては、ヒドロキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレンポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレンポリブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。尚、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基は二種類以上用いる場合、ブロック結合でもランダム結合でもよい。
【0021】
水溶性ビニル共重合体の構成単位Mは、アクリル酸、メタクリル酸及び/又はその塩である。かかる構成単位Mを形成する単量体の塩としては、特に制限するものではないが、例えばナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩、カルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩やトリエタノールアミン塩等のアミン塩等が挙げられる。
【0022】
水溶性ビニル共重合体は、構成単位Lを50〜95質量%及び(メタ)アクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位Mを50〜5質量%の割合で有し、構成単位Lにおけるnが5〜200の数で構成されたポリオキシアルキレン基であり、質量平均分子量1000〜1000000の水溶性ビニル共重合体であるが、好ましくは、構成単位Lを60〜90質量%及び(メタ)アクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位Mを40〜10質量%の割合で有し、構成単位Lにおけるnが10〜50の数で構成されたポリオキシアルキレン基であり、質量平均分子量10000〜500000の水溶性ビニル共重合体である。更に好ましくは、構成単位Lを65〜80質量%及び(メタ)アクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位Mを35〜20質量%の割合で有し、構成単位Lにおけるnが15〜30の数で構成されたポリオキシアルキレン基であり、質量平均分子量40000〜100000の水溶性ビニル共重合体である。
【0023】
水溶性ビニル共重合体に用いる分子量調整剤としては、例えば2−メルカプトエタノール、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、1−チオグリセロール、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸等が挙げられる。上記化合物は、2種以上を併用してもよい。
【0024】
水溶性ビニル共重合体に用いる重合開始剤は、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過酸化物、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ系化合物のように、重合反応温度下において分解し、ラジカル発生するものであればその種類は特に制限されない。上記化合物は、2種以上を併用してもよい。また重合開始剤の分解促進剤として、亜硫酸水素ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等の還元剤や、エチレンジアミン、グリシン等のアミン化合物も併用することができる。
【0025】
水溶性ビニル共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の単量体を共重合させたものとすることができるが、その共重合割合は20質量%以下とするのが好ましく、10質量%以下とするのがより好ましい。
【0026】
本発明のスラリー組成物に供する混和剤は、結合材100質量部に対し0.01〜3質量部の割合で使用するが、好ましくは結合材100質量部に対し0.05〜1質量部の割合で使用し、更に好ましくは結合材100質量部に対し0.07〜0.5質量部の割合で使用する。該混和剤の使用量が0.01〜3質量部の割合を外れると、所望する粘性低減効果や沈殿の抑制効果が不足したり、ソイルセメントスラリーの強度発現性が低下したりする。
【0027】
本発明のスラリー組成物に供する結合材は、高炉スラグ微粉末を18〜77質量%、ポルトランドセメントを23〜82質量%及び石膏を0〜20質量%の割合で含有して成るものであるが、好ましくは高炉スラグ微粉末を32〜67質量%、ポルトランドセメントを28〜65質量%及び石膏を2〜15質量%の割合で含有するものである。
【0028】
本発明のスラリー組成物に供する結合材に使用する高炉スラグ微粉末は、粉末度が2000〜11000cm
2/gのものであるが、好ましくは粉末度が3000〜7000cm
2/gのものである。尚、本発明における粉末度はJIS R 5201が規定する比表面積試験に準拠して測定した比表面積で表したものである。
【0029】
本発明のスラリー組成物に供する結合材に使用するポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等の各種ポルトランドセメントを使用することができる。
【0030】
本発明のスラリー組成物に供する結合材に使用する石膏としては、無水石膏、半水石膏、二水石膏等が挙げられるが、なかでも無水石膏が好ましい。無水石膏としては、天然無水石膏や副産無水石膏等が挙げられるが、いずれにおいても90質量%以上の純度で含有するものが好ましい。無水石膏の粉末度は、2500〜8000cm
2/gのものが好ましく、3000〜6500cm
2/gのものがより好ましい。
【0031】
本発明のスラリー組成物に供する結合材は、セメント工場でのプレミックス品でも施工現場にて各所定量計量したものいずれでも使用することができる。
【0032】
本発明のスラリー組成物の水/結合材の質量比は30〜60%であるが、好ましくは33〜52%である。水/結合材の質量比が30〜60%を外れると、グラウトポンプでの圧送が可能となる所望の粘性が得られなくなったり、所望の強度を得るために注入率を上げざるを得ず、建設汚泥である土壌とセメントスラリーの混合物であるソイルセメントスラリーの排出量が増加し、処理費用や環境への負荷が増大するばかりでなく、処理に関する工数が増加し施工性の低下に繋がったりする。
【0033】
本発明のスラリー組成物は、公知の方法で調製することができる。例えば、結合材と混和剤及び水を各所定量ミキサーに投入して練り混ぜる方法で調製することができる。
【0034】
本発明のスラリー組成物は、本発明の効果を損なわない範囲内で、必要に応じてベントナイト、石灰石微粉末、フライアッシュ、ドロマイト微粉末、例えばポリアルキレンアルキルエーテルのような消泡剤、例えばオキシカルボン酸のような凝結遅延剤、例えばアミン類のような硬化促進剤、例えばポリプロピレン繊維のような繊維等を添加することもできる。
【0035】
本発明に係るソイルセメントスラリーの調製方法は、本発明のスラリー組成物を用い、原位置土と撹拌混合する調製方法である。本発明のスラリー組成物の組成、原位置土1m
3あたりの注入量はソイルセメントスラリーに要求される流動性、得られる硬化体に要求される強度、混合される原位置土の性状に応じて、適宜選択することができる。また、混合方法は特に限定されるものではないが、本発明のスラリー組成物を直接地盤に注入しながら混合攪拌するCDM(Cement Deep Mixing)工法、高圧噴射撹拌工法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によると、地盤改良工事において、結合材として特定の成分を特定割合で含有する高炉スラグ含有セメントを用い、また水/結合材の質量比を特定範囲に調製し、更に結合材に対し特定の混和剤を特定割合で含有することにより、セメントスラリー組成物の粘性を低減しつつ、これまで問題となっていた沈殿を制御することが可能となる。それにより、原位置地盤へセメントスラリー組成物の注入量を低減させ、廃棄物である建築汚泥の発生量を低減できるという効果があり、また従来工法と同様の施工方法で、水/結合材の質量比の低下及び結合材の注入量の増加を達成できるため、ソイルセメントスラリー硬化後の地盤改良体の高強度化を実現することも可能であるという効果がある。
【0037】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明が該実施例等に限定されるものではない。尚、以下の実施例等において、別に記載しない限り、%は質量%を、また部は質量部を意味する。
【実施例】
【0038】
試験区分1(水溶性ビニル共重合体の調製)
・水溶性ビニル共重合体(P−1)の合成
水423.3g、メトキシポリ(平均付加モル数23モル)エチレングリコールモノメタクリレート284.0g、メタクリル酸94.7g及び3−メルカプトプロピオン酸3.8gを反応容器に仕込み、反応容器内を窒素置換した後、撹拌しながら徐々に加温した。反応系の温度を温水浴にて65℃に保ち、過硫酸ナトリウムの10%水溶液37.9gを投入してラジカル重合反応を開始した。2時間経過後、更に過硫酸ナトリウムの10%水溶液18.9gを投入し、ラジカル重合反応を2時間継続して反応させた。得られた共重合物に30%水酸化ナトリウム水溶液83.7g、水58.7gを加え、水溶性ビニル共重合体(P−1)の40%水溶液を得た。この水溶性ビニル共重合体を分析したところ、質量平均分子量66000(GPC法、プルラン換算)の水溶性ビニル共重合体であった。
【0039】
・水溶性ビニル共重合体(P−2)〜(P−7)及び(Q−1)の合成
水溶性ビニル共重合体(P−1)の合成と同様にして、水溶性ビニル共重合体(P−2)〜(P−7)及び(Q−1)を合成した。
【0040】
・水溶性ビニル共重合体(Q−2)の合成
α−アリル−ω−メトキシ−ポリ(平均付加モル数33モル)エチレングリコール292.8g及び無水マレイン酸34.5gを反応容器に仕込み、反応容器内の雰囲気を窒素置換した後、徐々に加温して撹拌しながら均一に溶解した。反応系の温度を温水浴にて80℃に保ち、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)2.9gを投入してラジカル重合反応を開始した。2時間経過後、更に2,2’−(アゾビスイソブチロニトリル)2.0gを投入し、ラジカル重合反応を6時間継続して反応させた。得られた共重合体に水587.2gを加えて、その後、30%水酸化ナトリウム水溶液85.6gを投入して中和し、水溶性ビニル共重合体(Q−2)の35%水溶液を得た。この水溶性ビニル共重合体を分析したところ、質量平均分子量71000(GPC法、プルラン換算)の水溶性ビニル共重合体であった。以上で合成した水溶性ビニル共重合体の内容を表1にまとめて示した。
【0041】
【表1】
【0042】
表1において、
質量平均分子量:GPC法、プルラン換算
L―1:メトキシポリ(平均付加モル数23モル)エチレングリコールモノメタクリレートから形成された構成単位
L―2:メトキシポリ(平均付加モル数45モル)エチレングリコールモノメタクリレートから形成された構成単位
L―3:メトキシポリ(平均付加モル数68モル)エチレングリコールモノメタクリレートから形成された構成単位
L―4:メトキシポリ(平均付加モル数9モル)エチレングリコールモノメタクリレートから形成された構成単位
M―1:メタクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位
M―2:アクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位
R―1:α−アリル−ω−メトキシ−ポリ(平均付加モル数33モル)エチレングリコールから形成された構成単位
S―1:マレイン酸及び/又はその塩から形成された構成単位
【0043】
試験区分2(結合材の調製)
表2に記載の調合条件で、高炉スラグ微粉末、ポルトランドセメント及び石膏を用いて結合材(S−1)〜(S−15)を調製した。
【0044】
【表2】
【0045】
表2において、
sg−1:粉末度が4120cm
2/gの高炉スラグ微粉末
sg−2:粉末度が5940cm
2/gの高炉スラグ微粉末
sg−3:粉末度が2470cm
2/gの高炉スラグ微粉末
sg−4:粉末度が8110cm
2/gの高炉スラグ微粉末
sg−5:粉末度が10300cm
2/gの高炉スラグ微粉末
N:普通ポルトランドセメント
H:早強ポルトランドセメント
gp−1:粉末度が3920cm
2/gの無水石膏
gp−2:粉末度が4050cm
2/gの半水石膏
gp−3:粉末度が3480cm
2/gの二水石膏
【0046】
試験区分3(セメントスラリー組成物の調製及び評価)
・実施例1〜26及び比較例1〜7
・セメントスラリー組成物の調製
表3に記載の配合条件で、ホバートミキサーに、表2に記載の結合材(S−1)〜(S−15)を練混ぜ水及び表1に記載の水溶性ビニル共重合体を所定量投入して練り混ぜ、表3に記載した実施例1〜26のセメントスラリー組成物(SL−1)〜(SL−26)及び比較例1〜7のセメントスラリー組成物(SLR−1)〜(SLR−7)を調製した。表3中の混和剤使用量は混和剤中の水溶性ビニル共重合体量で示した。かかる練り混ぜ及び以下の試験は材料温度を20±3℃、室温を20±3℃、湿度を60%以上にて行った。
【0047】
【表3】
【0048】
表3において、
SL−1〜SL−26,SLR−1〜SLR−7:試験区分3で調製したセメントスラリー組成物
S−1〜S−15:表2に記載の結合材
P−1〜P−7、Q−1,Q−2:表1に記載の水溶性ビニル共重合体
Q−3:グルコン酸ナトリウム(試薬)
Q−4:リグニンスルホン酸ナトリウム(試薬)
【0049】
・セメントスラリー組成物の評価
セメントスラリー組成物調製後、練上がり時間を0分として、下記に示す方法でPロートの流下時間を測定し、セメントスラリー組成物の粘性を評価した。また同様に下記に示す方法でセメントスラリー組成物の沈殿率の評価を行い、結果を表4にまとめて示した。
【0050】
・粘性の評価
土木学会コンクリート標準示方書「プレパックドコンクリートの注入モルタルの流動性試験方法(Pロートによる方法)」(JSCE−F−521−1999)に準じて、次の基準で評価した。
【0051】
粘性の評価基準
◎:15.0秒未満
○:15.0秒以上20.0秒未満
△:20.0秒以上25.0秒未満
×:25.0秒以上
【0052】
・沈殿率の評価
土木学会コンクリート標準示方書「プレパックドコンクリートの注入モルタルのブリーディング率 及び膨張率試験方法(ポリエチレン袋方法)」(JSCE−F−522−2013)に使用されるポリエチレン袋を使用し、セメントスラリー組成物の底部に観測される粘調な沈殿物の容積率を測定して、沈殿率(容積%)を次の基準で評価した。
【0053】
沈殿率の評価基準
◎:0.0%以上3.0%未満
○:3.0%以上6.0%未満
△:6.0%以上12.0%未満
×:12.0%以上
【0054】
【表4】
【0055】
表4において、
SL−1〜SL−26,SLR−1〜SLR−7:試験区分3で調製したセメントスラリー組成物
粘性の評価:30分におけるPロート流下時間(秒)
沈殿率の評価:120分における沈殿率(容積%)
*1:沈殿は少量であるが、上層にブリーディング水が多い
*2:粘性が高すぎて測定できなかった。
【0056】
試験区分4(ソイルセメントスラリー組成物の調製及び評価)
・実施例27〜52及び比較例8〜14
・ソイルセメントスラリー組成物の調製
表3に記載のセメントスラリー組成物(SL−1)〜(SL−26)及び(SLR−1)〜(SLR−7)を用い、ソイルセメント単位容積あたりの結合材量が同等となるようセメントスラリー組成物の注入量を設定し、ソイルセメントスラリー組成物を調製した。調製はホバートミキサーに所定量のセメントスラリー組成物を投入した後、表5に記載の物性値を有する混合土を加えて撹拌混合し、実施例27〜52のソイルセメントスラリー組成物(SL−27)〜(SL−52)及び比較例8〜14のソイルセメントスラリー組成物(SLR−8)〜(SLR−14)を調製した。各例で調製したソイルセメントスラリー組成物の内容を表6にまとめて示した。かかる練り混ぜ及び以下の試験は材料温度を20±3℃、室温を20±3℃、湿度を60%以上にて行った。
【0057】
【表5】
【0058】
・ソイルセメントスラリー組成物の物性評価
調製した各例のソイルセメントスラリーについて、下記に示す方法で練混ぜ直後のフロー及び得られた硬化体の一軸圧縮強さを測定し、評価した。結果を表6にまとめて示した。
【0059】
・フローによる流動性評価
JIS R 5201に準拠し、練混ぜ直後にフロー試験を行い、15回落下後のフローを測定した。
【0060】
・一軸圧縮試験による強度発現性評価
JIS A 1216に準拠し、直径50mm×高さ100mmの供試体を作製し、材齢7日と材齢28日の一軸圧縮強度を測定した。
【0061】
【表6】
【0062】
表6において、
SL−27〜SL−52,SLR−8〜SLR−14:試験区分4で調製したソイルセメントスラリー組成物
セメントスラリー組成物の注入量:混合土1m
3当たりに注入したセメントスラリー組成物の容積(m
3)
【0063】
表4の結果から明らかなように、各実施例で調製した本発明のスラリー組成物を用いることにより、通常使用されるセメントスラリーの水/結合材の質量比から粘性を増加させることなく水/結合材の質量比を低減し、且つ沈殿物の発生を抑制できる。また表6の結果から明らかなように、各実施例で調製した本発明のスラリー組成物を使用したソイルセメントスラリー組成物では、地盤改良において原位置地盤に注入するソイルセメントスラリーの量を低減しつつ、施工に十分耐え得る流動性及び同等以上の強度を発現させる得ることが確認された。本発明により、従来課題とされてきた建設廃棄物の削減を達成することができ、更には地盤改良体の高強度化を実現することができる。