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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-85609(P2019-85609A)
(43)【公開日】2019年6月6日
(54)【発明の名称】減圧精錬槽用バーナ
(51)【国際特許分類】
   C21C 7/10 20060101AFI20190517BHJP
【FI】
   C21C7/10 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-214120(P2017-214120)
(22)【出願日】2017年11月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000211123
【氏名又は名称】中外炉工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100118625
【弁理士】
【氏名又は名称】大畠 康
(74)【代理人】
【識別番号】100144200
【弁理士】
【氏名又は名称】奥西 祐之
(72)【発明者】
【氏名】谷山 公勇
(72)【発明者】
【氏名】丁 驍騰
(72)【発明者】
【氏名】藤井 勇輔
(72)【発明者】
【氏名】中井 由枝
【テーマコード(参考)】
4K013
【Fターム(参考)】
4K013CA12
4K013CA16
4K013CB04
4K013CD08
4K013CE04
(57)【要約】
【課題】低圧空間においても燃焼を安定させることができる減圧精錬槽用バーナを提供する。
【解決手段】減圧精錬槽に設けられる減圧精錬槽用バーナ10であって、添加物及び/又は気体を噴射する添加物ノズル2と、添加物ノズル2の外周側に形成され、減圧精錬槽用バーナ10の減圧精錬槽への開口部から減圧精錬槽用バーナ10の内方側へ凹む凹部3と、凹部3に燃料開口部41を有し、燃料を噴射する1以上の燃料ノズル4と、凹部3に支燃ガス開口部51を有し、支燃ガスを噴射する1以上の支燃ガスノズル5と、を備えており、燃料ノズル4は、燃料開口部41に向かって、支燃ガス開口部51に近接するよう傾斜しており、及び/又は、支燃ガスノズル5は、支燃ガス開口部51に向かって、燃料開口部41に近接するよう傾斜していることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
減圧精錬槽に設けられる減圧精錬槽用バーナであって、
添加物及び/又は気体を噴射する添加物ノズルと、
前記添加物ノズルの外周側に形成され、前記減圧精錬槽用バーナの前記減圧精錬槽への開口部から前記減圧精錬槽用バーナの内方側へ凹む凹部と、
前記凹部に燃料開口部を有し、燃料を噴射する1以上の燃料ノズルと、
前記凹部に支燃ガス開口部を有し、支燃ガスを噴射する1以上の支燃ガスノズルと、を備えており、
前記燃料ノズルは、前記燃料開口部に向かって、前記支燃ガス開口部に近接するよう傾斜しており、及び/又は、前記支燃ガスノズルは、前記支燃ガス開口部に向かって、前記燃料開口部に近接するよう傾斜していることを特徴とする、減圧精錬槽用バーナ。
【請求項2】
前記凹部は、前記添加物ノズルを囲む環状形状を有し、
前記燃料ノズルと前記支燃ガスノズルとは、一対となるよう設けられ、
前記燃料ノズルは、前記燃料開口部に向かって、対となる前記支燃ガスノズルの前記支燃ガス開口部に近接するよう、円周方向及び径方向に傾斜している、請求項1記載の減圧精錬槽用バーナ。
【請求項3】
前記凹部は、前記添加物ノズルを囲む環状形状を有し、
前記燃料ノズルと前記支燃ガスノズルとは、一対となるよう設けられ、
前記支燃ガスノズルは、前記支燃ガス開口部に向かって、対となる前記燃料ノズルの前記燃料開口部に近接するよう、円周方向及び径方向に傾斜している、請求項1記載の減圧精錬槽用バーナ。
【請求項4】
前記凹部は、前記添加物ノズルを囲む環状形状を有し、
前記燃料ノズルと前記支燃ガスノズルとは、一対となるよう設けられ、
一方のノズルは、その開口部に向かって、対となる他方のノズルの開口部に近接するよう、円周方向に傾斜し、
他方のノズルは、その開口部に向かって、対となる一方のノズルの開口部に近接するよう、径方向に傾斜している、請求項1記載の減圧精錬槽用バーナ。
【請求項5】
前記燃料ノズルの燃料開口部は、前記減圧精錬槽用バーナの軸心を中心とする同心円上に均等に設けられ、
前記支燃ガスノズルの支燃ガス開口部は、前記減圧精錬槽用バーナの軸心に対して前記燃料開口部の外周側又は内周側に、前記減圧精錬槽用バーナの軸心を中心とする同心円上に均等に設けられている、請求項2〜4のいずれか1つに記載の減圧精錬槽用バーナ。
【請求項6】
前記凹部の幅(W)と前記凹部の深さ(L)との関係は、
1.5<L/W<2.0
となっている、請求項1〜5のいずれか1つに記載の減圧精錬槽用バーナ。
【請求項7】
前記燃料開口部の径(DG)、前記支燃ガス開口部の径(DA)及び前記凹部の幅(W)の関係は、
1.5<W/(DG+DA)<2.0
となっている、請求項1〜6のいずれか1つに記載の減圧精錬槽用バーナ。
【請求項8】
前記支燃ガスノズルは、酸素を噴射するようになっている、請求項1〜7のいずれか1つに記載の減圧精錬槽用バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶鋼環流式真空脱ガス装置(略称:RH)や減圧下取鍋脱炭精錬装置(略称:VOD)に代表される精錬設備の減圧精錬槽に設けられる減圧精錬槽用バーナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、溶鋼の減圧精錬槽では、気圧の低い空間(低圧空間)で燃料と空気や酸素等の支燃ガスとを噴射して火炎を形成しており、その減圧精錬槽用バーナとしては、特許文献1〜3に示されるようなものが使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−292411号公報
【特許文献2】特開平6−81023号公報
【特許文献3】特開平6−73433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記に示されたような減圧精錬槽用バーナは、火炎を棒状に勢いよく噴射するようになっているので、燃料と支燃ガスとが混合しにくく、炉内圧力を低くすることが難しい。また、低圧空間において燃料と支燃ガスとが拡散するため、火炎はバーナノズル先端からリフトし、溶鋼の表面の高温部分で燃えているという状態になりやすく、燃焼が安定しにくいという課題がある。
【0005】
そこで、本発明では、低圧空間においても燃焼を安定させることができる減圧精錬槽用バーナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
減圧精錬槽に設けられる減圧精錬槽用バーナであって、
添加物及び/又は気体を噴射する添加物ノズルと、
前記添加物ノズルの外周側に形成され、前記減圧精錬槽用バーナの前記減圧精錬槽への開口部から前記減圧精錬槽用バーナの内方側へ凹む凹部と、
前記凹部に燃料開口部を有し、燃料を噴射する1以上の燃料ノズルと、
前記凹部に支燃ガス開口部を有し、支燃ガスを噴射する1以上の支燃ガスノズルと、を備えており、
前記燃料ノズルは、前記燃料開口部に向かって、前記支燃ガス開口部に近接するよう傾斜しており、及び/又は、前記支燃ガスノズルは、前記支燃ガス開口部に向かって、前記燃料開口部に近接するよう傾斜していることを特徴とする。
【0007】
前記構成によれば、燃料ノズル及び支燃ガスノズルは凹部に開口しており、燃料ノズル及び支燃ガスノズルは、一方が他方に対して近接するように傾斜しているので、凹部において火炎を保持することが容易となり、低圧空間においても、燃焼を安定させることができる。
【0008】
本発明は、さらに、次のような構成を備えるのが好ましい。
(1)前記凹部は、前記添加物ノズルを囲む環状形状を有し、
前記燃料ノズルと前記支燃ガスノズルとは、一対となるよう設けられ、
前記燃料ノズルは、前記燃料開口部に向かって、対となる前記支燃ガスノズルの前記支燃ガス開口部に近接するよう、円周方向及び径方向に傾斜している。
(2)前記凹部は、前記添加物ノズルを囲む環状形状を有し、
前記燃料ノズルと前記支燃ガスノズルとは、一対となるよう設けられ、
前記支燃ガスノズルは、前記支燃ガス開口部に向かって、対となる前記燃料ノズルの前記燃料開口部に近接するよう、円周方向及び径方向に傾斜している。
(3)前記凹部は、前記添加物ノズルを囲む環状形状を有し、
前記燃料ノズルと前記支燃ガスノズルとは、一対となるよう設けられ、
一方のノズルは、その開口部に向かって、対となる他方のノズルの開口部に近接するよう、円周方向に傾斜し、
他方のノズルは、その開口部に向かって、対となる一方のノズルの開口部に近接するよう、径方向に傾斜している。
(4)前記構成(1)〜(3)のいずれか1つにおいて、前記燃料ノズルの燃料開口部は、前記減圧精錬槽用バーナの軸心を中心とする同心円上に均等に設けられ、
前記支燃ガスノズルの支燃ガス開口部は、前記減圧精錬槽用バーナの軸心に対して前記燃料開口部の外周側又は内周側に、前記減圧精錬槽用バーナの軸心を中心とする同心円上に均等に設けられている。
(5)前記凹部の幅(W)と前記凹部の深さ(L)との関係は、
1.5<L/W<2.0
となっている。
(6)前記燃料開口部の径(DG)、前記支燃ガス開口部の径(DA)及び前記凹部の幅(W)の関係は、
1.5<W/(DG+DA)<2.0
となっている。
(7)前記支燃ガスノズルは、酸素を噴射するようになっている。
【0009】
前記構成(1)によれば、燃料ノズルと支燃ガスノズルとを一対として設け、燃料ノズルを円周方向及び径方向に傾斜させることによって、燃料と支燃ガスとの混合を促進させ、槽内が真空(低圧)でも、火炎の維持をより容易に行うことができる。
【0010】
前記構成(2)によれば、燃料ノズルと支燃ガスノズルとを一対として設け、支燃ガスノズルを円周方向及び径方向に傾斜させることによって、燃料と支燃ガスとの混合を促進させ、槽内が真空(低圧)でも、火炎の維持をより容易に行うことができる。
【0011】
前記構成(3)によれば、燃料ノズルと支燃ガスノズルとを一対として設け、一方のノズルを円周方向に傾斜させ、他方のノズルを径方向に傾斜させることによって、燃料と支燃ガスとの混合を促進させ、槽内が真空(低圧)でも、火炎の維持をより容易に行うことができる。
【0012】
前記構成(4)によれば、燃料ノズルの燃料開口部を同心円上に均等に設け、支燃ガスノズルの支燃ガス開口部を燃料開口部の外周側又は内周側に同心円上に均等に設けることによって、添加物ノズルの外周側に均等な火炎を形成することができる。
【0013】
前記構成(5)によれば、凹部の形状を所定の関係に設定することによって、凹部における火炎の保持をより容易に行うことができる。
【0014】
前記構成(6)によれば、凹部、燃料開口部及び支燃ガス開口部の大きさを所定の関係に設定することによって、凹部における火炎の保持をより容易に行うことができる。
【0015】
前記構成(7)によれば、支燃ガスノズルが酸素を噴射するようになっているので、凹部における火炎の形成を容易に行うことができる。また、高温で排気にNOxを含まない火炎を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
要するに、本発明によると、低圧空間においても燃焼を安定させることができる減圧精錬槽用バーナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る減圧精錬槽用バーナの炉側から見た正面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3図1のIII-III断面図である。
図4】本発明の別の実施形態に係る減圧精錬槽用バーナの炉側から見た正面図である。
図5図4のV-V断面図である。
図6図4のVI-VI断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、本発明の実施形態(実施例1)に係る減圧精錬槽用バーナの炉側から見た正面図であり、図2は、図1のII-II断面図である。図1及び図2に示されるように、減圧精錬槽用バーナ10は、添加物及び/又は気体を噴射する添加物ノズル2と、添加物ノズル2の外周側に形成され、減圧精錬槽用バーナ10の減圧精錬槽への開口部11から減圧精錬槽用バーナ10の内方側へ凹む凹部3と、凹部3に燃料開口部41を有し、燃料を噴射する1以上の燃料ノズル4と、凹部3に支燃ガス開口部51を有し、支燃ガスを噴射する1以上の支燃ガスノズル5と、を備えている。なお、減圧精錬槽用バーナ10には、スパークプラグ等の火炎の着火源が設けられるが、図示及びその説明は省略する。
【0019】
添加物ノズル2は、添加物として、減圧精錬槽に供給する精錬剤、例えば酸化物粉体を噴射するようになっており、また、気体として、例えば酸素ガスを噴射するようになっている。精錬剤は、真空脱ガスが行われる溶鋼の成分を調整するのに使用される。また、酸素ガスは、溶鋼中の炭素(不純物)を酸化させて除去するのに使用される。
【0020】
添加物ノズル2は、ラバール構造を備えている。
【0021】
燃料ノズル4は、火炎を形成するための燃料として、例えば燃料ガスを噴射するようになっている。
【0022】
支燃ガスノズル5は、燃料ノズル4から噴射される燃料ガスと混合させるための支燃ガスとして、例えば酸素ガスを噴射するようになっている。
【0023】
凹部3は、添加物ノズル2を囲む環状形状を有している。凹部3は、径方向に幅Wを有し、減圧精錬槽用バーナ10の減圧精錬槽への開口部11から減圧精錬槽用バーナ10の内方側へ深さLだけ凹んでいる。凹部3の幅W、すなわち径方向の長さと、凹部3の深さL、すなわち軸方向長さとの関係は、低圧空間に適した燃焼をさせるために、下記式(1)のとおりとするのがよい。
【0024】
【数1】
【0025】
ここで、L/Wが1.5以下となると、凹部3の中で火炎を保持しにくくなり、L/Wが2.0以上となると、凹部3の内部で燃焼するため、減圧精錬槽用バーナ10の先端が溶損する恐れが生じる。
【0026】
また、燃料開口部41の径DG、支燃ガス開口部51の径DA及び凹部3の幅Wの関係は、低圧空間に適した燃焼をさせるために、下記式(2)のとおりとするのがよい。
【0027】
【数2】
【0028】
ここで、W/(DG+DA)が1.5以下となると、凹部3の内部で燃焼するため、減圧精錬槽用バーナ10の先端が溶損する恐れが生じ、W/(DG+DA)が2.0以上となると、凹部3の中で火炎を保持しにくくなる。
【0029】
燃料開口部41の径DGは、支燃ガス開口部51の径DAより小さくなっている。
【0030】
燃料ノズル4と支燃ガスノズル5とは、一対となるよう設けられ、燃料ノズル4は、燃料開口部41に向かって、対となる支燃ガスノズル5の支燃ガス開口部51に近接するよう、円周方向及び径方向に傾斜している。燃料ノズル4は、円周方向に5度〜45度(図3のθ2)、径方向に5度〜45度(図2のθ1)だけ傾斜している。燃料ノズル4の傾斜角度は、5度より小さいと、燃料と支燃ガスとの混合がしにくくなり、45度より大きいと、火炎が直進しにくくなる。
【0031】
燃料ノズル4の燃料開口部41は、減圧精錬槽用バーナ10の軸心を中心とする同心円上に均等に、本実施形態では、一例として12個設けられている。
【0032】
支燃ガスノズル5の支燃ガス開口部51は、減圧精錬槽用バーナ10の軸心に対して燃料開口部41の外周側に、減圧精錬槽用バーナ10の軸心を中心とする同心円上に均等に、12個設けられている。燃料開口部41と支燃ガス開口部51とは、一対となるよう設けられ、支燃ガス開口部51は、対となる燃料開口部41の径方向外側に位置している。
【0033】
凹部3の外周側には、凹部3を冷却する冷却部6が設けられている。冷却部6は、炉側から見て環状形状を有しており、冷却媒体、例えば冷却水が循環するようになっている。冷却部6は、減圧精錬槽用バーナ10の開口部11において開放されておらず、冷却部6の軸方向端部は、凹部3の軸方向中間部に位置している。冷却部6によって、減圧精錬槽用バーナ10全体の熱による変形や、特に火炎によって高温となる凹部3の熱による損傷を防止できる。
【0034】
前記構成の減圧精錬槽用バーナ10によれば、次のような効果を発揮できる。
【0035】
(1)燃料ノズル4及び支燃ガスノズル5は凹部3に開口しており、燃料ノズル4は、燃料開口部41に向かって、支燃ガスノズル5の支燃ガス開口部51に近接するように傾斜しているので、凹部3において火炎を保持することが容易となり、低圧空間においても、燃焼を安定させることができる。
【0036】
(2)燃料ノズル4と支燃ガスノズル5とが一対として設けられ、燃料ノズル4は、燃料開口部41に向かって、対となる支燃ガスノズル5の支燃ガス開口部51に近接するように円周方向及び径方向に傾斜しているので、凹部3において燃料と酸素との混合を促進させ、槽内が低圧でも、火炎の維持をより容易に行うことができる。
【0037】
(3)燃料ノズル4の燃料開口部41は同心円上に均等に設けられ、支燃ガスノズル5の支燃ガス開口部51は燃料開口部41の外周側に同心円上に均等に設けられているので、添加物ノズル2の外周側に均等な火炎を形成することができる。
【0038】
(4)凹部3の形状は、凹部3の幅W、すなわち径方向の長さと、凹部3の深さL、すなわち軸方向長さとの関係が、式(1)のとおりのときがよい。すなわち、凹部3の深さLは、凹部3の幅Wより所定量だけ大きくなっているので、凹部3における火炎の保持をより容易に行うことができる。
【0039】
(5)凹部3、燃料開口部41及び支燃ガス開口部51の大きさの関係が、式(2)のとおりのときがよい。すなわち、凹部3の幅Wは、燃料開口部41の径DGと支燃ガス開口部51の径DAとの合計より所定量だけ大きくなっているので、凹部3における火炎の保持をより容易に行うことができる。
【0040】
(6)支燃ガスノズル5が酸素を噴射するようになっているので、凹部3における火炎の形成を容易に行うことができる。また、高温で排気にNOxを含まない火炎を形成することができる。
【0041】
(7)冷却部6は、凹部3を冷却するようになっているので、減圧精錬槽用バーナ10全体の熱による変形や、特に火炎によって高温となる凹部3の熱による損傷を防止できる。
【0042】
(8)添加物ノズル2は、ラバール構造を備えているので、添加物ノズル2から噴射される添加物の流速をより速くすることができる。
【0043】
(9)支燃ガスノズル5を燃料ノズル4の外周に設けることによって、燃料の拡散を抑制し、燃料の全量を完全燃焼させることができる。
【0044】
上記実施形態では、燃料開口部41と支燃ガス開口部51とは、一対となるようそれぞれ12個設けられているが、それぞれ1以上設けられればよい。なお、燃料開口部41及び支燃ガス開口部51は、減圧精錬槽用バーナ10の軸心を中心とする同心円上に均等に設けられることが好ましく、より好ましくは、燃料開口部41及び支燃ガス開口部51は、それぞれ8個以上設けられる。
【0045】
上記実施形態では、支燃ガス開口部51は、対となる燃料開口部41の径方向外側に位置しているが、対となる燃料開口部41の径方向内側に位置していてもよい。また、支燃ガス開口部51は、対となる燃料開口部41に対して、円周方向にずれて位置していてもよい。
【0046】
上記実施形態では、燃料開口部41と支燃ガス開口部51とは、一対となるよう設けられているが、一対とならないように設けられてもよい。この場合、径方向外側に位置する開口部が、径方向内側に位置する開口部よりも多く設けられる。
【0047】
上記実施形態では、内側の燃料ノズル4が円周方向及び径方向に傾斜しているが、外側の支燃ガスノズル5が円周方向及び径方向に傾斜してもよく、燃料ノズル4又は支燃ガスノズル5の一方が円周方向にのみ傾斜し、燃料ノズル4又は支燃ガスノズル5の他方が径方向にのみ傾斜してもよい。
【0048】
上記実施形態では、燃料ノズル4が支燃ガスノズル5の内側に位置しているが、燃料ノズルが支燃ガスノズルの外側に位置してもよい。
【0049】
図4は、本発明の別の実施形態(実施例2)に係る、内側の燃料ノズル4が径方向に傾斜し、外側の支燃ガスノズル5が円周方向に傾斜する場合の炉側から見た正面図であり、図5は、図4のV-V断面図であり、図6は、図4のVI-VI断面図である。図4図6に示されるように、燃料ノズル4と支燃ガスノズル5とは、一対となるよう設けられている。燃料ノズル4は、燃料開口部41に向かって、対となる支燃ガスノズル5の支燃ガス開口部51に近接するよう、径方向に角度θ3だけ傾斜している。また、支燃ガスノズル5は、支燃ガス開口部51に向かって、対となる燃料ノズル4の燃料開口部41に近接するよう、周方向に角度θ4だけ傾斜している。ここで、角度θ3及び角度θ4は、燃料ノズル4及び支燃ガスノズル5の個数、孔の大きさ又はピッチ寸法に影響されるが、ノズルの流路が重ならない配置とすることが必要である。
【0050】
通常、支燃ガスノズル5から噴射される支燃ガスの量は、燃料ノズル4から噴射される燃料ガスの量よりも多くなるため、支燃ガスノズル5を傾斜させることによって、支燃ガスの旋回効果を高めたほうが、支燃ガスと燃料ガスとの混合をより促進させることができる。そして、支燃ガスノズルを円周方向に傾斜させることによって、支燃ガスの旋回効果をさらに高めることができる。
【0051】
(実施例)
減圧精錬は、溶鋼を気圧の低い空間で精錬し、中に含まれている不純物を蒸発させる目的で行われる(真空脱ガスともいう)ため、減圧精錬中の溶鋼の温度補償のためにバーナを用いる場合には、低い圧力で酸素の少ない空間でも、火炎が吹き消えせず安定して形成され、より高温の火炎が得られることが好ましい。
【0052】
減圧精錬槽内で圧力を変化させてバーナを燃焼させた場合の実施例を表1に示す。「比較例」は、減圧精錬槽で用いられる従来のバーナを用いており、従来のバーナは、ラバール構造を備える添加物ノズルに燃料ノズルが途中で合流する構造を有する。そして、添加物ノズルから添加物及び支燃ガスが供給され、燃料ノズルから燃料が供給される。また、「実施例1」は上述の図1、「実施例2」は上述の図4のバーナを用いている。
【0053】
燃料としてプロパンガス、支燃ガスとして酸素を用い、それぞれの流量を、プロパンガス:20NL/min、酸素:100NL/minとして、各バーナを燃焼させた。そして、燃焼時の槽内圧力を、40kPa、20kPa、6.7kPaに設定した。火炎温度は、サイトホールから消耗型光ファイバー式放射温度計を用いて測定した。なお、本実施例では、添加物を供給しない条件で、比較例、実施例1、実施例2を比較した。
【0054】
【表1】
【0055】
火炎の状態の判定は、バーナの先端から20mm以内で火炎が形成された場合、燃焼が安定しているとして「○」と表記し、バーナの先端から20mmより離れて火炎が形成された場合、火炎が吹き消えるおそれがあるとして「×」と表記した。
【0056】
表1に示されるように、比較例では、槽内圧力が40kPaよりも下がると燃焼が不安定になり、火炎の最高温度は1243℃であった。一方、燃料ノズル4を径方向(θ1)及び円周方向(θ2)に傾斜させた実施例1では、20kPaでも燃焼は安定し、火炎の最高温度は1872℃であり、比較例に比べて低い槽内圧力でより高温の火炎が得られた。
【0057】
また、燃料ノズル4を径方向(θ3)に傾斜させ、支燃ガスノズル5を円周方向(θ4)に傾斜させた実施例2では、6.7kPaでも燃焼は安定し、火炎の最高温度は2018℃であり、実施例1に比べてさらによい結果が得られた。実施例1及び実施例2では、比較例と比べて、プロパンガスと支燃ガスとがよく混合された結果、保炎能力が高く、温度の高い火炎が得られたと考えられる。
【0058】
特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、各種変形及び変更を行うことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明では、低圧空間においても燃焼を安定させることができる減圧精錬槽用バーナを提供することができるので、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0060】
2 添加物ノズル
3 凹部
4 燃料ノズル
41 燃料開口部
5 支燃ガスノズル
51 支燃ガス開口部
6 冷却部
10 減圧精錬槽用バーナ
11 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6