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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-85728(P2019-85728A)
(43)【公開日】2019年6月6日
(54)【発明の名称】阻集器およびトラップ槽
(51)【国際特許分類】
   E03F 5/16 20060101AFI20190517BHJP
【FI】
   E03F5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-212927(P2017-212927)
(22)【出願日】2017年11月2日
(71)【出願人】
【識別番号】501482732
【氏名又は名称】下田エコテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(72)【発明者】
【氏名】水摩 堅一
(72)【発明者】
【氏名】田渕 寛
(72)【発明者】
【氏名】池田 哲也
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063DB08
(57)【要約】
【課題】サイフォン現象の発生を確実に防ぐトラップを得る。
【解決手段】排水導入部、夾雑物を分離する分離室および排水口を有する本体槽と、排水口から逆流する臭気を封水によって遮断するトラップ槽とを備えた阻集器で、トラップ槽は、分離室の底面部の排水がトラップ槽内に流入するように下端部に形成した排水流入口と、排水流入口から流入した排水を堰き止めて越流を生じさせる越流部を備えた越流室と、越流室と連通して流入する排水を貯留し水封を行う水封室と、水封室内の排水を排水口へ流出させる排水流出口とを備え、越流室と水封室との連通部を、排水流出口の下端位置より低位置に形成して封水深を確保し、トラップ槽内が負圧となったときに外気の流入を可能とする吸気開口を越流室に備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水を導入する排水導入部と、当該排水導入部を通じて導入された排水に含まれる夾雑物を分離する分離室と、当該分離室で夾雑物が除去された排水を排出する排水口と、を有する阻集器本体槽と、
前記分離室と前記排水口との間に介在されるように前記阻集器本体槽内に備えられて前記排水口から逆流する臭気を封水によって遮断するトラップ手段と
を備えた阻集器であって、
前記トラップ手段は、トラップ槽からなり、
当該トラップ槽は、
前記分離室の底面部の排水が当該トラップ槽内に流入するように下端部に形成した排水流入口と、
当該排水流入口から流入した排水を堰き止めて越流を生じさせる越流部を備えた越流室と、
当該越流室と連通して当該越流室から流入する排水を貯留し水封を行う水封室と、
当該水封室内の排水を前記排水口へ流出させる排水流出口と
を備え、
前記越流室と前記水封室との連通部を、前記排水流出口の下端位置より低い位置に形成することにより封水深を確保する一方、
当該トラップ槽内が負圧となったときに外部から空気が流入することを可能とする吸気開口を前記越流室に備えた
ことを特徴とする阻集器。
【請求項2】
前記トラップ槽内で水平方向に隣り合うように前記越流室と前記水封室を配置し、
これら越流室と水封室とを仕切る仕切板を当該越流室と水封室との間に備え、
当該仕切板を、前記水封室の底面より上方で且つ前記排水流出口の下端位置より低い位置まで立ち下げ、これにより、前記水封を形成しつつ当該仕切板の下方に前記連通部を備えた
請求項1に記載の阻集器。
【請求項3】
前記越流室は、
前記排水流入口と連通する前室と、
当該前室と水平方向に隣り合うように配置され前記水封室と連通する後室と
を含み、
前記越流部は、前記排水流入口から前記前室へ流入した排水を堰き止めて前記前室から前記後室への越流を生じさせるように前記前室と前記後室とを仕切る堰板を含む
請求項1または2に記載の阻集器。
【請求項4】
前記前室を取り囲んでトラップ槽の外周面を形成する周板を備え、
当該周板のうち前記排水流入口の上部の周板が、前記排水流入口に向けて下方へ向かうにつれ外方へ広がる傾斜部を有し、
当該傾斜部の下縁部に前記排水流入口が形成されている
請求項3に記載の阻集器。
【請求項5】
前記越流室の上面に前記吸気開口を備えた
請求項1から4のいずれか一項に記載の阻集器。
【請求項6】
前記阻集器本体槽の一端部に前記排水導入部を配置することにより当該一端部を阻集器内の排水の流れの上流とする一方、
前記阻集器本体槽の他端部に前記排水口および前記トラップ槽を配置することにより当該他端部を阻集器内の排水の流れの下流とし、
前記排水導入部と前記トラップ槽との間に前記分離室を配置した
阻集器であって、
前記下流に配置されたトラップ槽の上流に面する側を当該トラップ槽の正面としたときに、
前記排水流入口が、前記トラップ槽の側面および背面のうちのいずれか一方または双方に備えられている
請求項1から5のいずれか一項に記載の阻集器。
【請求項7】
前記阻集器本体槽の一端部に前記排水導入部を配置することにより当該一端部を阻集器内の排水の流れの上流とする一方、
前記阻集器本体槽の他端部に前記排水口および前記トラップ槽を配置することにより当該他端部を阻集器内の排水の流れの下流とし、
前記排水導入部と前記トラップ槽との間に前記分離室を配置した
阻集器であって、
前記下流に配置されたトラップ槽の上流に面する側を当該トラップ槽の正面としたときに、
前記トラップ槽の幅が前記阻集器本体槽の両側壁間の距離より小さく、これにより、前記トラップ槽の左側面と前記阻集器本体槽の左側壁との間、および、前記トラップ槽の右側面と前記阻集器本体槽の右側壁との間、のいずれか一方または双方にまで前記分離室が形成されている
請求項1から6のいずれか一項に記載の阻集器。
【請求項8】
前記トラップ槽は、前記越流室を取り囲んで当該トラップ槽の外周面を形成する筐体を備え、
当該筐体により、前記分離室内の排水表面に浮遊する夾雑物を堰き止め、前記トラップ槽内への当該夾雑物の侵入を阻止可能とした
請求項7に記載の阻集器。
【請求項9】
前記トラップ槽が、前記阻集器の底板上に据え置くことが可能な一つのまとまりある独立したユニットとして構成されている
請求項1から8のいずれか一項に記載の阻集器。
【請求項10】
前記排水流出口は、前記阻集器の排水口に対して着脱自在に接続することができ、
これにより前記トラップ槽が前記阻集器に対して着脱可能である
請求項9に記載の阻集器。
【請求項11】
前記水封室の内部を掃除することを可能とする開口を当該水封室の上面に備えるとともに、
当該開口から臭気が外部に漏れることを防ぐ蓋体を開閉可能に当該開口に備えた
請求項1から10のいずれか一項に記載の阻集器。
【請求項12】
前記阻集器本体槽の一端部に前記排水導入部を配置することにより当該一端部を阻集器内の排水の流れの上流とする一方、
前記阻集器本体槽の他端部に前記排水口および前記トラップ槽を配置することにより当該他端部を阻集器内の排水の流れの下流とし、
前記排水導入部と前記トラップ槽との間に前記分離室を配置した
阻集器であって、
前記下流に配置されたトラップ槽の上流に面する側を当該トラップ槽の正面としたときに、
水平方向に隣り合うように且つ上流側に越流室が位置し下流側に水封室が位置するように前記越流室と前記水封室とを前記トラップ槽内に形成し、
前記水封室の背面、左側面および右側面のいずれかに前記排水流出口を備えた
請求項1から11のいずれか一項に記載の阻集器。
【請求項13】
排水から夾雑物を除去する阻集器に備えられ、当該阻集器内に収容された排水を封水として利用して臭気の逆流を防ぐトラップ槽であって、
阻集器の底面部の排水が流入できるよう下端部に形成した排水流入口と、
当該排水流入口から流入した排水を堰き止めて越流を生じさせる越流部を備えた越流室と、
当該越流室と連通して当該越流室から流入する排水を貯留し水封を行う水封室と、
当該水封室から排水を流出させる排水流出口と
を備え、
前記越流室と前記水封室との連通部を、前記排水流出口の下端位置より低い位置に形成することにより封水深を確保する一方、
前記トラップ槽内が負圧となったときに外部から空気が流入することを可能とする吸気開口を前記越流室に備えた
ことを特徴とするトラップ槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、阻集器およびトラップ槽に係り、特に油脂や固形物などの夾雑物が含まれる排水から夾雑物を分離除去するグリース阻集器に備えるトラップの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道への油の流出を防ぐため業務用の厨房では阻集器の設置が義務付けられている。この阻集器はグリーストラップとも称され、一般に、排水を貯留可能な分離室と、バスケット(受け籠)と、トラップ管とを備え、排水はバスケットを通して分離室に流入する。バスケットでは食べ物カスのような比較的大きな固形状のゴミが捕捉され、バスケットを通過した排水は分離室に溜められる。分離室では排水に含まれる油脂が比重差によって水に浮いて上部に集まり、底面部の水だけがトラップ管を経由して下水に排出される。
【0003】
トラップ管は、下水からの臭気の逆流や昆虫・小動物の侵入を分離室内に溜められる排水を利用して遮断するとともに、バスケットによって取りきれずに排水に沈んだ小さな固形物や汚泥が下水に流出することを防ぐ機能を果たす。
【0004】
また、このような阻集器を開示するものとして、下記特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−311083号公報
【特許文献2】実用新案登録第3056258号公報
【特許文献3】特開2004−257081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の阻集器は、阻集器内に流入する排水の量が急激に増大した場合にトラップ管が水没して管内が負圧となることでサイフォン現象が発生し、これにより分離室内に溜められた油脂や底面部に沈殿した固形物や汚泥が吸い出されて下水へ流出することがあった。
【0007】
そこで、このようなトラブルを防ぐ方法として、トラップ管内に外気を引き込む通気管を設け、あるいは、管内が負圧になったときに自動的に開放される通気弁をトラップ管に備えることが考えられる(例えば特許文献1参照)。
【0008】
ところが、床下に設置した阻集器から通気管を立ち上げることはスペースの点から設置が困難な場合が少なくない。また通気弁は、正常に動作するか定期的に点検が必要となるうえに、排水に含まれる油脂が付着して動作不良を起こす可能性がある。
【0009】
一方、このような問題を解消するため、前記特許文献2,3に記載の発明では、トラップ管の角度を従来とは異なる特定の角度に設定することでサイフォン現象の発生を抑制する。
【0010】
しかしながらこれら文献2,3記載の発明によっても、トラップ管が密閉された管であることには変わりはなく、想定以上の排水の流入があったり予想外の原因で下水道への配管内が大幅に負圧となった場合にサイフォン現象の発生を完全に排除できるとは限らない。また当該発明では、例えば80度のエルボ継手(特許文献3参照)のように、通常規格(90度や45度)ではない特殊な継手を使用する必要があるうえ、トラップ管の角度設定が複雑になる分、阻集器の設計が煩雑となる面がある。
【0011】
したがって、本発明の目的は、設置スペース上の問題や動作不良の発生のおそれがなく、特殊な継手や複雑な設計を要することなくサイフォン現象の発生をより確実に防ぐことが出来る新たなトラップ構造を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る阻集器は、阻集器本体槽とトラップ手段とを備え、阻集器本体槽(以下単に「本体槽」と言うことがある)は、排水を導入する排水導入部と、排水導入部を通じて導入された排水に含まれる夾雑物を分離する分離室と、分離室で夾雑物が除去された排水を排出する排水口を有する。またトラップ手段は、分離室と排水口との間に介在されるように本体槽内に備えられ、排水口から逆流する臭気を封水(排水)によって遮断する。
【0013】
従来の阻集器でも封水によって臭気の逆流を防ぐトラップ手段が備えられているが、本発明の阻集器が備えるトラップ手段は、従来のようなトラップ管ではなく、次のような特徴的な構造を有するトラップ槽である。
【0014】
すなわち当該トラップ槽は、分離室の底面部の排水が当該トラップ槽内に流入するように下端部に形成した排水流入口と、排水流入口から流入した排水を堰き止めて越流を生じさせる越流部を有する越流室と、越流室と連通して当該越流室から流入する排水を一時的に貯留し水封を行う水封室と、水封室内の排水を前記排水口へ流出させる排水流出口とを備える。そして、越流室と水封室との連通部を、排水流出口の下端位置より低い位置に形成することにより封水深を確保する一方、当該トラップ槽内が負圧となったときに外部から空気が流入できるようにする吸気開口を越流室に備えた。このような阻集器における排水の流れは、次のとおりである。
【0015】
処理すべき排水は、排水導入部から阻集器本体槽に導入され、分離室内で油脂及びバスケットを通過した固形物(以下「汚泥」と言う)が水との比重差を利用して分離室上部及び底部に集められることにより分離される。油脂及び汚泥が取り除かれた分離室底面部の排水は、トラップ槽の下端部に形成した前記排水流入口からトラップ槽(越流室)内に流入する。
【0016】
越流室には、流入する排水を堰き止めて越流を生じさせる越流部を備えてあり、排水は越流部を乗り越えて水封室との連通部に向かう。なお、本体槽内の排水の水位は、当該越流部によって決定され、当該越流部の高さと略等しくなる。
【0017】
上記連通部を通過した排水は、水封室内に浸入し、排水流出口へと流れていく。排水流出口は、本体槽の排水口に接続してあり、これら排水流出口と排水口を通じて阻集器の外部(例えば下水道)へと排水が排出される。
【0018】
また上記連通部は、排水流出口の下端位置より低位置に形成してある。したがって、水封室内に溜まった排水によって当該連通部は水没状態にあり、連通部を通って越流室に臭気が逆流することはない。また、水封室は、後に述べるように掃除用の開口を備えることはあるが、当該開口を備えた場合にも阻集器の運転状態では蓋体によって当該開口は閉塞され、臭気が外部に漏れないように密閉されている。
【0019】
一方、多量の排水が急激に本体槽およびトラップ槽内に流入するなどして、密閉されている水封室内が負圧となった場合には、サイフォン現象が発生することにより連通部を通じて越流室内の排水が水封室へと引き込まれることがある。しかしながら、越流室は吸気開口を備え、この吸気開口は少なくとも阻集器の運転中は常に開放されているから、当該吸気開口を通じて外部の空気が越流室内に吸い込まれる。したがって、越流部を既に乗り越えて越流室内に溜まっている排水が水封室にすべて吸い込まれると、これに続いて吸気開口から吸い込まれた外気が連通部を通って水封室へ流れ込むことになり、水封室の負圧(サイフォン現象)は一気に解消されることとなる。
【0020】
また本発明のトラップ槽では、吸気開口を備えることで外気に開放された(密閉されていない)越流室が、浮上分離した油脂及び重力沈降した汚泥を溜め置く分離室と、排水口に連通する水封室との間に介在され、越流室によって分離室と水封室とが遮断されている。したがって、たとえサイフォン現象が発生したとしても、あるいは排水口と下水道を接続する排水配管に何らかの原因で持続的に負圧状態が生じても、吸気開口から吸入される外気が排水口から下水道に向けて吸引されるだけで済み、分離室内に留め置かれた油脂や汚泥が下水道へ吸い出されることがない。
【0021】
このようにトラップ槽を備える本発明の阻集器によれば、吸気開口の作用によりたとえサイフォン現象が発生したとしても直ちにこれを解消することができるうえに、浮上油脂及び汚泥が貯留されている分離室と下水道に通じる水封室とが越流室によって遮断・分離されているから、阻集器内の浮上油脂や汚泥が下水道へ流出するアクシデントが生じることをより確実に防ぐことが出来る。
【0022】
なお、上記のような越流室内の排水とこれに続く吸気開口からの外気の吸引によって水封室の水封状態が一時的に(一瞬)破られることがあったとしても、空気の流れは排水の流れと同じ方向(越流室から水封室に向けた方向)となっており、水封室内の臭気は逆方向(水封室から越流室に向けた方向)へは逆流し難い。また阻集器は運転中であり、越流部を乗り越えて直ぐに排水が連通部および水封室へ流入してくるから、負圧状態(サイフォン現象)が解消されれば連通部は水没して直ちに水封室の水封機能は回復する。したがって、阻集器外部(屋内側)への臭気漏れの問題も生じない。
【0023】
以下、このような本発明の阻集器の好ましい態様について述べる。
【0024】
本発明の阻集器では、トラップ槽内で水平方向に隣り合うように越流室と水封室を配置し、これら越流室と水封室とを仕切る仕切板を越流室と水封室との間に備えることがある。この場合、当該仕切板を、水封室の底面より上方で且つ排水流出口の下端位置より低い位置まで立ち下げ、これにより水封を確保しつつ当該仕切板の下方に前記連通部を形成する。
【0025】
また越流室は、排水流入口と連通する前室と、この前室と水平方向に隣り合うように配置され水封室と連通する後室とを含み、越流部が、排水流入口から前室へ流入した排水を堰き止めて前室から後室への越流を生じさせるように前室と後室とを仕切る堰板を含む場合がある。
【0026】
さらに、越流室の前室を取り囲んでトラップ槽の外周面を形成する周板を備え、当該周板のうち排水流入口の上部の周板が排水流入口に向けて下方へ向かうにつれ外方へ広がる傾斜部を有し(言い換えれば、前室の水平断面積が下方に向かうに従って大きくなるように排水流入口の上部の周板に傾斜部を備え)、当該傾斜部の下縁部に排水流入口が形成されていることがある。
【0027】
排水をスムーズにトラップ槽内に流入させ、越流部に導くためである。すなわち、本体槽内の排水は、分離室底面部から排水流入口を通ってトラップ槽内に流れ込み、越流部を乗り越えるために越流室前室内を上昇するが、排水流入口上部の周板に上記のような傾斜部を備えれば、トラップ槽内に流入する排水が水平に前室に浸入した後に垂直に向きを変えて上昇するのではなく、分離室底面部から斜め上方に向け進行しつつ、排水流入口を通って越流室前室へ流入するようになり、トラップ槽内に流入する排水をスムーズに越流部へと導き入れることが出来る。
【0028】
前記吸気開口は、越流室の上面に備えることが好ましい。多量の排水が阻集器に流入したときにも水没することなく確実に吸気がなされるようにするためである。
【0029】
また、典型的な配置として本発明の阻集器では、阻集器本体槽の一端部に排水導入部を配置することにより当該一端部を阻集器内の排水の流れの「上流」とする一方、阻集器本体槽の他端部に排水口およびトラップ槽を配置することにより当該他端部を阻集器内の排水の流れの「下流」とし、排水導入部とトラップ槽との間に分離室を配置する。また排水導入部には、比較的大きな固形物を捕捉するバスケット(受け籠)を備え、このバスケットを通して本体槽に排水を導入するようにしても良い。
【0030】
さらに当該典型的な配置例においては、下流に配置されたトラップ槽の上流に面する(上流に向いた)側をトラップ槽の「正面」としたときに、排水流入口を、トラップ槽の正面ではなく、側面および背面のうちのいずれか一方または双方に備えることが好ましい。分離室内に留めるべき浮上油脂が流入口からトラップ槽内に吸い込まれることを防ぐためである。このような態様によれば、側面や背面側に回り込むようにして排水がトラップ槽に取り入れるようになることで浮上油脂がトラップ槽内に入り込み難くすることができ、上流から下流に向かって本体槽内を流れる排水に乗ってダイレクトに(真っ直ぐに)浮上油脂が排水流入口に進入することを防ぐことが出来る。
【0031】
また上記典型的な配置構造を備える阻集器では、トラップ槽の幅が阻集器本体槽の両側壁間の距離より小さく、これにより、トラップ槽の左側面と阻集器本体槽の左側壁との間、および、トラップ槽の右側面と阻集器本体槽の右側壁との間、のいずれか一方または双方にまで前記分離室が形成されていることがある。
【0032】
従来の阻集器では、本体槽の中間部を、上流側と下流側にそれぞれ備えた一対のバッフル(邪魔板)(スライド板とも言う)で仕切って分離室とし、これらバッフルの間に水面に浮いた油脂を堰き止めて貯留している(前記特許文献1の図1図2、特許文献2の図1図4、特許文献3の図10参照)。これに対して上記配置構造を備える本発明の阻集器によれば、本体槽の下流側端部まで一つの分離室を形成して従来に比べ多くの油脂を溜めることができ、グリース阻集効率を上げることが出来る。
【0033】
さらに前記トラップ槽は、越流室を取り囲んでトラップ槽の外周面を形成する筐体を備え、この筐体により分離室内の排水表面に浮遊する浮上油脂を堰き止め、トラップ槽内への浮上油脂の侵入を阻止することがある。
【0034】
このような態様によれば、トラップ槽の筐体により分離室に浮いた油脂を堰き止めることができ、従来備えられていた下流側のバッフルが不要となるから、前述のように多くの油脂を溜めることが可能となるうえに阻集器の構造を簡素化することが出来る。
【0035】
またトラップ槽は、阻集器内部の底板上に据え置くことが可能な一つのまとまりある独立したユニットとして構成することがある。本発明に係るトラップ槽の阻集器への適用を容易にし、阻集器の設計や製造(トラップ槽の設置)、メンテナンス(トラップ槽の交換修理等)を簡便にできるようにするためである。
【0036】
また前記排水流出口を阻集器の排水口に対して着脱可能に接続することにより、トラップ槽を阻集器に対して着脱自在に構成することも出来る。このような態様によれば、阻集器やトラップ槽のメンテナンス(本体槽やトラップ槽の掃除)を行い易くすることが出来る。
【0037】
さらに、水封室の内部を掃除することを可能とする開口を水封室の上面に備えても良い。この場合、当該開口から臭気が外部に漏れることを防ぐ蓋体を開閉可能に当該開口に備える。
【0038】
また、本体槽の一端部(上流)に排水導入部を、他端部(下流)にトラップ槽を、それらの間に分離室をそれぞれ配置した前述の典型的な配置例において、トラップ槽の上流に面する側をトラップ槽の正面としたとき、水平方向に隣り合うように且つ上流側に越流室が位置し下流側に水封室が位置するように越流室と水封室とをトラップ槽内に形成するとともに、越流室の背面、左側面および右側面のいずれかに排水流出口を備えるようにしても良い。
【0039】
後に述べる実施形態では本体槽の排水口の位置に対応して越流室の背面に排水流出口を備えたが、背面のほか、当該排水口が本体槽の左側壁にある場合には左側面に、あるいは、右側壁にある場合には右側面に排水流出口を備えることにより、排水口の位置の異なる、様々な現場に柔軟に対応可能な阻集器を構成することが出来る。
【0040】
さらに、背面、左側面および右側面のうちの2以上またはすべてに排水流出口を予め備えておいても良く、この場合、排水口の位置が異なる複数種類の阻集器に使用可能な、排水口の位置について汎用性の高いトラップ槽とすることが出来る。なお、使用しない(本体槽の排水口と接続しない)排水流出口は、蓋体によって閉塞すれば良い。
【0041】
また、本発明の阻集器に備えた前記トラップ槽は、トラップ槽単体として提供しても良い。トラップ槽を単体で提供することで、例えば、既設の阻集器に対して本発明を適用できるようになるからである。つまり、現在すでに設置され使用されている阻集器においてトラップ管を上記トラップ槽と交換すれば、本発明に係る前記阻集器と同様の阻集器を構成することができ、これを利用することが可能となる。
【0042】
当該本発明のトラップ槽は、排水から夾雑物を除去する阻集器に備えられ、阻集器内に収容された排水を封水として利用して臭気の逆流を防ぐトラップ槽であって、阻集器の底面部の排水が流入できるよう下端部に形成した排水流入口と、排水流入口から流入した排水を堰き止めて越流を生じさせる越流部を備えた越流室と、越流室と連通して当該越流室から流入する排水を貯留し水封を行う水封室と、水封室から排水を流出させる排水流出口とを備え、越流室と水封室との連通部を、排水流出口の下端位置より低い位置に形成することにより封水深を確保し、トラップ槽内が負圧となったときに外部から空気が流入することを可能とする吸気開口を越流室に備える。
【0043】
なお、単体で提供するこのトラップ槽についても、前記本発明の阻集器に備えたトラップ槽に関する様々な態様を採用することが可能である。
【発明の効果】
【0044】
本発明の阻集器ないしトラップ槽によれば、設置スペース上の問題や動作不良のおそれがなく、特殊な継手や複雑な設計を要することなくサイフォン現象の発生をより確実に防止して夾雑物の流出を防ぐことが出来る。
【0045】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面を参照して述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、各図中、同一の符号は同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る阻集器と当該阻集器に備えたトラップ槽の内部構造を示す側面図である。
図2図2は、前記実施形態に係る阻集器を示す平面図(上蓋を開けた状態)である。
図3図3は、前記実施形態に係る阻集器の内部構造を示す背面図である。
図4図4は、前記実施形態の阻集器に備えたトラップ槽を示す斜視図である。
図5図5は、前記トラップ槽を切り欠いて内部構造(図2のX−X線で切り欠いた状態)を示す斜視図である。
図6図6は、前記実施形態の阻集器に備えたトラップ槽の変形例を示す斜視図(図4とは反対に上流側/正面側から見た状態)である。
図7図7は、前記変形例に係るトラップ槽を切り欠いて内部構造(図2のX−X線で切り欠いた状態であるが、図5とは反対に上流側/正面側から見た状態)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1から図5に示すように本発明の一実施形態に係る阻集器11は、排水から油脂や固形物などの夾雑物を取り除いて下水道へ排出するもので、排水を受け入れて浮上油脂及び汚泥を分離し留める本体槽(阻集器本体槽)12と、下水道からの臭気の逆流を防ぐトラップ槽41とを備えている。本体槽12は、排水を導入する排水導入部21を一端部に、夾雑物を取り除いた後の排水を下水道へ向け排出する排水口14を他端部にそれぞれ備え、これら排水導入部21と排水口14との間に分離室31を形成した。
【0048】
なお、排水は、排水導入部21から分離室31へ流入し、分離室31内を排水口14に向け流れてトラップ槽41を介して排水口14から排出されるから、この排水の流れに基づいて排水導入部21側を「上流」、排水口14側を「下流」と称する。また上流側から下流側を見た場合に、上流側を「前」または「正面」、下流側を「後」または「背面」とする。さらに、左右(「左」「左側面」「右」「右側面」等)についても同様に、上流側から下流側を見た状態を基準とする。
【0049】
本体槽12は、上流側の端部(排水導入部21を備える前記一端部)に位置する前壁12aと、下流側の端部(排水口14を備える前記他端部)に位置する後壁12bと、左側壁12cと、右側壁12dと、底板12eとを備えた直方体の全体形状を有し、天面は、バスケット内に溜まった夾雑物や槽内に溜まった浮上油脂及び沈降汚泥を取り出して清掃しあるいはメンテナンスを行うため開口とし、当該開口を開閉可能な上蓋16によって閉塞する。
【0050】
排水導入部21には、排水を通過させることにより食べ物カスのような比較的大きな固形物を捕捉するバスケット22を備える。排水導入部21と分離室31とはスライド板(バッフル)13によって仕切り、当該スライド板13の下方(スライド板13の下端と本体槽底板12eとの間)に隙間を作ることにより排水がスライド板13の下を潜って(排水導入部21と分離室31との連通部23を通って)排水導入部21から分離室31へと流れ込むようにしてある。
【0051】
本体槽12内のスライド板13より下流側、すなわち、本体槽12の左側壁12cと右側壁12dと後壁12bとスライド板13とによって囲まれた領域は分離室31とする。この分離室31は浮遊性の油脂と沈降性汚泥を留める部屋で、スライド板13の下を潜って排水導入部21から流入した排水に含まれる油脂は比重差によって水面に浮き、水と分離されて分離室31の水面付近に溜め置かれ、汚泥は底板12e上に沈降堆積する。なお、図中符号W1は、本体槽12内に溜まる排水の水面(水位)を示している。
【0052】
分離室31の底面部には、排水導入部21と分離室31との連通部23に対向するように分離室31の底面(本体槽12の底板12e)から立ち上がる分離室の堰板32を備える。この分離室の堰板32は、当該連通部23から分離室31へと本体槽12の底板12eに沿って流入する排水がそのまま本体槽12の底板12eに沿ってトラップ槽41内に進行することを防ぎ、当該排水の流れを水面に向け上方に変えるもので、この堰板32の作用により、比重差による浮力に加えて排水に含まれる油脂が分離室31の水面上に浮きやすくなる。
【0053】
さらに、本実施形態の阻集器11では、分離室31が本体槽12の下流側の端部(後壁12bの位置)まで形成されているから、従来の阻集器より分離室31が広く、より多くの油脂を本体槽12内に溜めることが可能である。したがって、阻集器11のグリース阻集効率を向上させることが出来る。
【0054】
本体槽12の後壁12bの左右方向の中央位置には排水口14を備え、この排水口14に接続するようにトラップ槽41を分離室31内に設置する。トラップ槽41は、当該トラップ槽41の外周面を構成する正面板42、背面板43、左側板44および右側板45からなる箱状の筐体を備えて鉛直方向に長い直方体状の全体形状を有するとともに、本体槽12の底板12eの上面から本体槽12の天面付近まで本体槽12の後壁12bに沿うように立ち上がり、本体槽12の深さと略同一の高さを有する。
【0055】
また、トラップ槽41の正面板42および背面板43は本体槽12の底板12eに接しているが、左側板44および右側板45はそれらの下端と本体槽12の底板12eとの間に隙間が形成されるように備えてあり、これらの隙間がトラップ槽41内に排水を流入させる排水流入口60となっている。
【0056】
一方、背面板43には上記筐体の内部から排水を流出させる排水流出口55を備える。この排水流出口55は、本体槽12の後壁12bに備えた排水口14と接続する。
【0057】
また上記筐体の内部には、筐体内部を前後に仕切って前側部分に越流室61を、後側部分に水封室62をそれぞれ形成する仕切板50を備える。この仕切板50は、両側板44,45(左側板44および右側板45)を繋ぐように両側板44,45の間に広がり、前記筐体の天面から、排水流出口55の下端より低位置で且つ両側板44,45の下端(後述する底板49)より高い位置まで、正面板42および背面板43と平行に鉛直方向に立ち下がる。仕切板50の前側(上流側)、すなわち仕切板50と正面板42と左側板44と右側板45とにより囲まれた内部空間は越流室61となり、仕切板50の後側(下流側)、すなわち仕切板50と背面板43と左側板44と右側板45とにより囲まれた内部空間は水封室62となる。
【0058】
さらに、水封室62の天面を塞ぐように前記筐体の天面の下流側半分に天板46を備える。この天板46には清掃用の開口47を設けるが、水封室62内の臭気が外部へ漏れることがないように当該開口47を開閉可能な蓋体48で閉塞する。また、当該天板46によって覆われていない前記筐体の天面部分は越流室61の天面部分で開口54となっているが、当該開口54は越流室61内に外気を流入させる吸気開口である。
【0059】
他方、左側板44の下端と右側板45の下端を繋ぐように水平に広がる底板49を備える。この底板49は、左右方向へは両側板44,45の間に亘って延在するが、前後方向に関しては背面板43の前面から前方へ水平に延び、堰板52まで達する。なお、この底板49は、前記仕切板50の下端と本体槽12の底板12eとの間を通るように備えられており、当該底板49と仕切板50の下端との間には、越流室61と水封室62とを接続する連通孔51が形成される。一方、当該底板49と本体槽12の底板12eとの間の隙間(空間)は、両側板44,45の下に形成された前記排水流入口60から越流室61に浸入するための排水の流入路となっている。
【0060】
越流室61は、正面板42と仕切板50に平行に且つこれらの間に挟まれるように配置した堰板52により、前後に分けられている。この堰板52は、前記仕切板50と同様に両側板44,45を繋ぐように両側板44,45の間に広がり、前記底板49の前端から鉛直上方に立ち上がり、前記筐体の天面まで延びる。この堰板52の前側、すなわち堰板52と正面板42と左側板44と右側板45とにより囲まれた内部空間を前室61aとし、当該堰板52の後側、すなわち堰板52と仕切板50と左側板44と右側板45とにより囲まれた内部空間を後室61bとする。
【0061】
そして、堰板52の上部位置には、トラップ槽41内に流入した排水に越流を生じさせるための開口(この開口を「越流孔」と言う)53を形成し、排水流入口60から上記前室61aに浸入した排水が当該越流孔53から上記後室61bに流れ込むようにした。本体槽12(排水導入部21および分離室31)内の排水の水位W1は、この越流孔53の高さによって決定される。なお、この越流孔53の本体槽の底板12eからの高さは、前記排水流出口55および排水口14の下端の高さより高い。また、越流室前室61a内の水位は、本体槽12(排水導入部21および分離室31)内の水位と同じW1である。
【0062】
なお、図面では越流室前室61a内および本体槽12内の水位W1を越流孔53の下端位置に一致するように描いているが、運転中は当該位置より水位は高くなる(次に述べる水封室62内の水位W2についても同様に運転中は排水流出口55および排水口14の下端高さより高くなる)。
【0063】
一方、越流孔53を越えて後室61bに流れ落ちた排水は、当該後室61bに溜まり、また仕切板50の下の前記連通孔51を通って水封室62に浸入して水封室62内に溜まる。また、これら後室61bおよび水封室62内に溜まった排水は排水流出口55および排水口14を通じて下水道へ自然に流れ出すから、越流室61の後室61bおよび水封室62内の排水の水位W2は、排水流出口55および排水口14の高さ(下端の高さ)となる。そして、前記仕切板50は、当該排水流出口55および排水口14の高さより低い位置まで立ち下がっているから、水封室62内に溜まった排水によって水封状態が確保される。すなわち、越流室61と水封室62とを接続する前記連通孔51は水封室62内の排水中に水没しているから、排水口14および排水流入口55を通じて下水道から逆流してくる臭気は、越流室61側に漏れることはなく、水封室62内に閉じ込められる。
【0064】
本実施形態の阻集器11における排水の流れ、ならびにトラップ槽41の機能は、次のとおりである。
【0065】
処理すべき排水は、まずバスケット22を通過し、この間に食べ物カスのような比較的大きな固形物がバスケット22の中に捕捉され除去される。バスケット22を通過した排水は、スライド板13の下を潜って分離室31に浸入する。分離室31では、油脂のような浮遊性の夾雑物が水との比重差を利用して上部に集められる。また、バスケットを通過した食べ物カスの比較的小さな固形物は重力沈降し、汚泥となり本体槽底面に堆積し、排水から分離される。そして、油脂及び汚泥が取り除かれた分離室31の底面部の排水は、トラップ槽41の両側板44,45の下に形成した排水流入口60からトラップ槽41(越流室61の前室61a)内に流入する。
【0066】
前室61aに浸入した排水(図5の矢印付太線f1参照)は、堰板52に沿って上昇し(図5の矢印付太線f2参照)、越流孔53を通って後室61bに流れ込む(図5の矢印付太線f3参照)。
【0067】
そして、越流孔53を通過し後室61bに流れ下った排水は、連通孔51を通って水封室62の中へ流れ込み、排水流出口55および排水口14を通って阻集器11の外部へ流れ出し、下水道へ通じる配管15を通って下水道へと流れていく(図5の矢印付太線f4参照)。
【0068】
一方、例えば多量の排水が急激に本体槽12の中へ流入したり下水道への配管15の内部が負圧となることにより、密閉されている水封室62の内部が負圧となってサイフォン現象が発生した場合には、連通孔51を通じて越流室後室61b内の排水が水封室62へと引き込まれ、越流室後室61b内の排水の水位が低下していく。しかしながらこのとき同時に、越流室61の上面に備えた吸気開口54から、より詳しくは、越流室前室61aの上面の吸気開口54aおよび越流孔53、ならびに越流室後室61bの上面の吸気開口54bを通じて外気(空気)が越流室後室61bへ吸い込まれ、後室61bの水位が連通孔51の上端より低下した途端に、当該吸気開口54から吸い込まれた外気が連通孔51を通って水封室62へ流れ込み、水封室62の負圧(サイフォン現象)は直ちに解消される。
【0069】
またこのとき、水封室62内に引き込まれるのは越流室後室61b内の排水だけであり、吸気開口54から外気が吸入されるから、越流室前室61a内の排水や分離室31内の排水や浮上分離された油脂や沈降分離された汚泥が強制的に水封室62へ吸引されることがなく、これらの夾雑物が排水流出口55から下水道へ流れ出すことがない。
【0070】
このようにトラップ槽41を備える本実施形態の阻集器11によれば、吸気開口54の作用によりたとえサイフォン現象が発生したとしても直ちにこれを解消することができるうえに、夾雑物が貯留されている分離室31と下水道に通じる水封室62とが、吸気開口54を備えた越流室61によって遮断・分離されているから、阻集器11内の油脂や汚泥が下水道へ流出するアクシデントが生じることをより確実に防ぐことが出来る。
【0071】
なお、上記のような越流室後室61b内の排水とこれに続く吸気開口54からの外気の吸引によって水封室62の水封状態が一時的に(一瞬)破られることがあったとしても、空気の流れは越流室61から水封室62に向けた方向となっており、水封室62内の臭気がこれとは逆の方向(水封室62から越流室61に向けた方向)へ流れることはない。また阻集器11は運転中であり、越流孔53を乗り越えて直ぐに排水が連通孔51および水封室62へ流入してくるから、負圧状態(サイフォン現象)が解消されれば連通孔51は水没して直ちに水封室62の水封機能は回復する。したがって、阻集器外部(屋内側)への臭気漏れの問題も生じない。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。
【0073】
例えば、前記実施形態では、排水口14を本体槽12の後壁12bに備え、これに合わせてトラップ槽41の排水流出口55を背面板43に設けたが、本体槽12の左側壁12c(または右側壁12d)に排水口14を備えても良く、この場合、当該排水口14の設置位置に合わせてトラップ槽41の排水流出口55は、左側板44(排水口14を右側壁12dに備えた場合には右側板45/以下同様)に備える。またこの場合、トラップ槽41の設置位置を、本体槽12の排水口14の位置に近づけるように左側方(または右側方)へずらして、本体槽12内の左後方角部(または右後方角部)に配置するようにしても良い。
【0074】
また、前記トラップ槽41を本体槽12に対して着脱可能に設置しても良い。この場合、本体槽12の排水口14に対してトラップ槽41の排水流出口55を着脱可能に接続するとともに、トラップ槽41の筐体を適当な金具やボルト止め等によって本体槽12の底板12eに着脱可能に固定すれば良い。
【0075】
さらに、前記実施形態では排水流入口60をトラップ槽41の側面に設けたが、これに代え又はこれに加えて背面側に排水流入口60を設けることも可能である。背面側に排水流入口60を設ける方法としては、例えば、前記実施形態の側板44,45と同様に背面板43と本体槽底板12eとの間に隙間を形成しても良いし、背面板43の下端部にスリット状の孔を形成することにより行うことも可能である。
【0076】
また、本体槽12内には、図示した例以外にも排水や夾雑物の流れを制御する様々な仕切板や分離室の堰板等を適宜備えても良く、バスケット22の有無やスライド板13をどのように配置するかなども含め、本体槽12の構造について本発明は特に限定されない。
【0077】
さらに、前記トラップ槽41の変形例として、トラップ槽41への排水の流入を円滑にするため、図6図7に示すように越流室前室を取り囲んで排水流入口60の上部に位置する左側板前部44aと右側板前部45aについて、それらの下端部に傾斜部を備えても良い。
【0078】
より詳しくは、図6に示すように排水流入口60の上部に位置して越流室前室の左側面を覆う左側板44の前側(上流側)部分(左側板前部)44aについて、その上部を、トラップ槽41の筐体天面(越流室前室の天面)から鉛直下方に立ち下がる垂直部とする一方、当該左側板前部44aの下部は、下方に向かうにつれ外方(左方)へ広がる傾斜部とする。なお、左側板44の後側(下流側)部分44bは、前記実施形態(図4等参照)と同様に、越流室後室と水封室を垂直に覆うようにする。また、右側板45についても左側板44と同様に、右側板前部45aの下部に傾斜部を備える。
【0079】
このような傾斜部を備えた構造とすれば、排水は左側板前部44aおよび右側板前部45aの各傾斜部下縁の各排水流入口60から越流室前室に流れ込んで各傾斜部の内面に沿って斜め上方へ上昇し(図7の符号f1〜f2参照)、越流室内を越流孔53に向けてスムーズに流れ進むこととなる。なお、傾斜部と垂直部のなす角度(優角)αを大きくするほどトラップ槽41内へ排水を流入させやすくすることが出来る。
【符号の説明】
【0080】
11 阻集器
12 阻集器本体槽
12a 本体槽の前壁
12b 本体槽の後壁
12c 本体槽の左側壁
12d 本体槽の右側壁
12e 本体槽の底板
13 スライド板(バッフル)
14 排水口
15 下水道への配管
16 本体槽の上蓋
21 排水導入部
22 バスケット(受け籠)
23 排水導入部と分離室との連通部
31 分離室
32 分離室の堰板
41 トラップ槽
42 トラップ槽の正面板
43 トラップ槽の背面板
44 トラップ槽の左側板
44a トラップ槽の左側板前部
44b トラップ槽の左側板後部
45 トラップ槽の右側板
45a トラップ槽の右側板前部
45b トラップ槽の右側板後部
46 トラップ槽(水封室)の天板
47 清掃用開口
48 蓋体
49 トラップ槽(水封室および越流室後室)の底板
50 仕切板
51 越流室後室と水封室との間の連通孔
52 堰板
53 越流孔
54,54a,54b 吸気開口
55 排水流出口
60 排水流入口
61 越流室
61a 越流室の前室
61b 越流室の後室
62 水封室
f1,f2,f3,f4 トラップ槽内における排水の流れ
W1 本体槽(排水導入部および分離室)内の排水の水位
W2 越流室後室および水封室内の排水の水位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7