(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-85770(P2019-85770A)
(43)【公開日】2019年6月6日
(54)【発明の名称】可動支柱、ワイヤロープ式防護柵及び橋梁
(51)【国際特許分類】
E01F 15/06 20060101AFI20190517BHJP
E01D 19/10 20060101ALI20190517BHJP
【FI】
E01F15/06 A
E01D19/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-214720(P2017-214720)
(22)【出願日】2017年11月7日
(71)【出願人】
【識別番号】507194017
【氏名又は名称】株式会社高速道路総合技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000192615
【氏名又は名称】神鋼建材工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006839
【氏名又は名称】日鐵住金建材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003528
【氏名又は名称】東京製綱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100098268
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100166420
【弁理士】
【氏名又は名称】福川 晋矢
(74)【代理人】
【識別番号】100150865
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 司
(72)【発明者】
【氏名】村松 忠久
(72)【発明者】
【氏名】石川 昌克
(72)【発明者】
【氏名】大森 伯万
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 義悟
(72)【発明者】
【氏名】市川 隆
【テーマコード(参考)】
2D059
2D101
【Fターム(参考)】
2D059AA24
2D059GG29
2D101CA06
2D101DA04
2D101EA02
2D101FA11
2D101FA24
2D101FB04
2D101FB12
2D101GA17
(57)【要約】
【課題】ワイヤロープ式防護柵において、中間支柱を設けることが難しいような場合においても、ワイヤロープがたわんで柵高が低くなることを抑止することができる可動支柱、当該可動支柱を使用したワイヤロープ式防護柵、当該ワイヤロープ式防護柵を備える橋梁の提供。
【解決手段】ワイヤロープ式防護柵の各ワイヤロープを受け入れて保持するロープ受け入れ部111を有するロープ間隔保持部11と、ロープ間隔保持部11からワイヤロープ式防護柵の設置面までの間の間隔を保持するロープ高保持部12と、を備え、設置面に対して滑動可能である可動支柱。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤロープ式防護柵の各ワイヤロープを受け入れて保持するロープ受け入れ部を有するロープ間隔保持部と、
前記ロープ間隔保持部からワイヤロープ式防護柵の設置面までの間の間隔を保持するロープ高保持部と、
を備え、
前記設置面に対して滑動可能であることを特徴とする可動支柱。
【請求項2】
前記ロープ高保持部の下端部に、ワイヤロープ式防護柵の設置面に固定されずに接触する設置面接触部を有することを特徴とする請求項1に記載の可動支柱。
【請求項3】
前記設置面接触部が、摩擦低減部を備えることを特徴とする請求項2に記載の可動支柱。
【請求項4】
前記摩擦低減部が球面形状によって構成され、その下端部に水抜き孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の可動支柱。
【請求項5】
前記ロープ間隔保持部または前記ロープ高保持部に、上下に分割される分割部を備えることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の可動支柱。
【請求項6】
前記ロープ間隔保持部と前記ロープ高保持部が上下に分割される分割構造を備えることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の可動支柱。
【請求項7】
前記ロープ受け入れ部のうち、前記ワイヤロープ式防護柵の上段側の一本または複数本のワイヤロープを受け入れる前記ロープ受け入れ部が、ワイヤロープが外れるワイヤロープ抜け構造を有することを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の可動支柱。
【請求項8】
請求項1から7の何れかに記載の可動支柱を備えることを特徴とするワイヤロープ式防護柵。
【請求項9】
請求項8に記載のワイヤロープ式防護柵を備えることを特徴とする橋梁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動支柱、当該可動支柱を使用したワイヤロープ式防護柵、当該ワイヤロープ式防護柵を備える橋梁に関する。
【背景技術】
【0002】
道路の交通安全対策としてガードケーブルなどのワイヤロープ式の道路防護柵が汎用されている。
ワイヤロープ式防護柵は、通常、数百mを1スパンとして、複数のワイヤロープを一定長延展し、両端末を索端金具を介して端末支柱に繋止して張力を与えると共に、端末支柱間に所定の間隔で中間支柱を設置し、ワイヤロープの中間部を支持する構造になっている。
ワイヤロープ式の防護柵では、ワイヤロープの柔軟性を利用して車両への衝撃を緩和するようにしているが、ワイヤロープの柔軟性ゆえに、車両衝突時に、所定の間隔を有する複数本のワイヤロープがバラバラに上下に動き、ワイヤロープ間の間隔が押し広げられる場合がある。
ワイヤロープ間の間隔が押し広げられると、そこからの飛び出し(突破事故)等が生じる危険性が高くなるため、ワイヤロープ間隔の拡大を抑止するため等の目的で、各支柱(端末支柱及び中間支柱)の間に、ワイヤロープの上下間隔を保持するための間隔保持材を設けることが行われている。ワイヤロープ間隔が保持されることにより、衝突車両を面として受け止めることができる。
このような間隔保持材に関する従来技術が、特許文献1によって開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−270467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のごとく、ワイヤロープ式防護柵は、数百mを1スパンとして、各ワイヤロープを端末支柱に繋止して張力を与えると共に、端末支柱間に所定の間隔で中間支柱を設置し、ワイヤロープの中間部を支持する構造である。
しかし、ワイヤロープ式防護柵の設置環境によっては、中間支柱を設けることが難しい場合もある。例えば、橋梁等において、所定長さのアンカーボルトを打設することができない場合があり、その場合、従来の中間支柱を設けることができない。このような場合においても、間隔保持材を用いることにより、ワイヤロープ間の間隔が押し広げられることによる飛び出し(突破事故)を抑止することはできる。しかし、従来の間隔保持材は、中間支柱とは違い、ワイヤロープの設置高さ(柵高)を維持することができない。従って、中間支柱を設けることができず、間隔保持材のみとなる場合、ワイヤロープがたわんでしまい、中間部にて柵高が低くなってしまう。柵高が低くなれば、所定の飛び出し(突破事故)防止機能が得られなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑み、ワイヤロープ式防護柵において、中間支柱を設けることが難しいような場合においても、ワイヤロープがたわんで柵高が低くなることを抑止することができる可動支柱、当該可動支柱を使用したワイヤロープ式防護柵、当該ワイヤロープ式防護柵を備える橋梁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(構成1)
ワイヤロープ式防護柵の各ワイヤロープを受け入れて保持するロープ受け入れ部を有するロープ間隔保持部と、前記ロープ間隔保持部からワイヤロープ式防護柵の設置面までの間の間隔を保持するロープ高保持部と、を備え、前記設置面に対して滑動可能であることを特徴とする可動支柱。
【0007】
(構成2)
前記ロープ高保持部の下端部に、ワイヤロープ式防護柵の設置面に固定されずに接触する設置面接触部を有することを特徴とする構成1に記載の可動支柱。
【0008】
(構成3)
前記設置面接触部が、摩擦低減部を備えることを特徴とする構成2に記載の可動支柱。
【0009】
(構成4)
前記摩擦低減部が球面形状によって構成され、その下端部に水抜き孔が形成されていることを特徴とする構成3に記載の可動支柱。
【0010】
(構成5)
前記ロープ間隔保持部または前記ロープ高保持部に、上下に分割される分割部を備えることを特徴とする構成1から4の何れかに記載の可動支柱。
【0011】
(構成6)
前記ロープ間隔保持部と前記ロープ高保持部が上下に分割される分割構造を備えることを特徴とする構成1から5の何れかに記載の可動支柱。
【0012】
(構成7)
前記ロープ受け入れ部のうち、前記ワイヤロープ式防護柵の上段側の一本または複数本のワイヤロープを受け入れる前記ロープ受け入れ部が、ワイヤロープが外れるワイヤロープ抜け構造を有することを特徴とする構成1から4の何れかに記載の可動支柱。
【0013】
(構成8)
構成1から7の何れかに記載の可動支柱を備えることを特徴とするワイヤロープ式防護柵。
【0014】
(構成9)
構成8に記載のワイヤロープ式防護柵を備えることを特徴とする橋梁。
【発明の効果】
【0015】
本発明の可動支柱によれば、ロープ間隔保持部からワイヤロープ式防護柵の設置面までの間の間隔を保持するロープ高保持部を備えることにより、中間支柱を設けることが難しい場合においても、ワイヤロープ式防護柵のワイヤロープがたわんで柵高が低くなることを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る実施形態1の可動支柱を示す平面図
【
図3】ワイヤロープに可動支柱を取り付けた部分を示す図
【
図4】可動支柱を取り付けたワイヤロープ式防護柵を示す図
【
図5】ワイヤロープ式防護柵に車両が衝突する様子を示した概略図
【
図6】ワイヤロープ式防護柵の使用状態を説明する図
【
図11】ワイヤロープ式防護柵の使用状態を説明する図
【
図12】従来の間隔保持材を取り付けたワイヤロープ式防護柵の使用状態を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施態様について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施態様は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0018】
<実施形態1>
図1は、本発明に係る実施形態1の可動支柱を示す図であり、
図1(a):正面図、
図1(b):側面図、
図1(c):上面図、
図1(d):底面図である。
本実施形態の可動支柱1は、ワイヤロープ式防護柵に使用する支柱(設置面に対して滑動可能な支柱)であり、丸パイプ(鋼管)を用いて形成されている。
可動支柱1は、ワイヤロープ式防護柵の各ワイヤロープを受け入れて保持するロープ受け入れ部111を有するロープ間隔保持部11と、ロープ間隔保持部11からワイヤロープ式防護柵の設置面までの間の間隔を保持するロープ高保持部12と、を備える。
【0019】
ロープ間隔保持部11は、各ロープ受け入れ部111にワイヤロープ式防護柵の各ワイヤロープを受け入れることで、ワイヤロープの間隔を保持するものである。即ち、可動支柱1は、間隔保持部材としての機能を有している。
ロープ受け入れ部111は、
図1に示されるように、丸パイプである可動支柱1の側面を切り欠いて形成され、ワイヤロープ式防護柵のロープ間隔に応じて複数設けられる。
本実施形態の可動支柱1では、最上段のロープ受け入れ部111aが、可動支柱1の上端部側から切り欠いて形成され、これにより、ワイヤロープ式防護柵のワイヤロープが上に外れるワイヤロープ抜け構造を有する。
【0020】
図2は、各ロープ受け入れ部111に入れ込んだワイヤロープが外れないようにするためのピン部材13を示す図であり、
図1(a):正面図、
図1(b):側面図、
図1(c):上面図である。
図2に示されるように、ピン部材13は、細長い板部材(鋼板)の上端部分を折り曲げたものである。
ピン部材13は、丸パイプである可動支柱1の内部に挿通されるものであり、各ロープ受け入れ部111に入れ込んだワイヤロープに対して外側となる位置に挿通される。
図3は、可動支柱1をワイヤロープ式防護柵に取り付けた状態における、上端側のワイヤロープ2本分を示す図である。
図3に示されるように、ピン部材13は、ロープ受け入れ部111aに入る最上段のワイヤロープWRに対しては設けられず、2段目のワイヤロープWRに対して、ピン部材13の上端の折り曲げ部をひっかけるようにして設置される。ピン部材13は、少なくとも4本分のロープ受け入れ部111の設置間隔以上の長さを有することにより、2段目以降の各ロープ受け入れ部111に受け入れられる4本分のワイヤロープWRが外れないように保持する。
【0021】
ロープ高保持部12は、ロープ間隔保持部11からワイヤロープ式防護柵の設置面までの間の間隔を保持するものであり、これにより、ワイヤロープの設置高さ(ワイヤロープ式防護柵の柵高)を維持するものである。
なお、“ワイヤロープ式防護柵の設置面”とは、ワイヤロープ式防護柵が設置される構造物(例えば橋梁)における設置面や、路面等である。
本実施形態の可動支柱1では、1本の丸パイプによってロープ間隔保持部11とロープ高保持部12が一体的に構成されている。
ロープ高保持部12の下端部には、ワイヤロープ式防護柵の設置面に対して、固定されずに接触する設置面接触部121が備えられる。本実施形態における設置面接触部121は、樹脂で形成された半球キャップであり、その下端部に水抜き孔121hが形成されている。
【0022】
図4は、本実施形態の可動支柱1を取り付けたワイヤロープ式防護柵2を示す図である。
ワイヤロープ式防護柵2は、複数(本実施形態では5本)のワイヤロープの両端末を、索端金具を介して端末支柱21に繋止して張力を与える構造であり、所定間隔ごとに、上記説明した可動支柱1が取り付けられている。ワイヤロープ式防護柵2は、例えば、橋梁等において、所定長さのアンカーボルトを打設することができず、中間支柱を設けることができない場合において、本実施形態の可動支柱1が所定間隔ごとに取り付けられているものである。なお、“所定間隔”は、設計思想や安全基準、これらに基づく仕様等に応じて適宜定めればよい。
【0023】
一方、
図12は、同様に、中間支柱を設けることができないワイヤロープ式防護柵に対して、従来の間隔保持材110を取り付けたものを示す概略図である。このような従来の間隔保持材110では、ワイヤロープの設置高さを維持することができない。従って、
図12(a)に示されるように、ワイヤロープWRがたわんでしまい、中間部ではたるみsの分だけ柵高が低くなってしまう。柵高が低くなれば、所定の飛び出し(突破事故)防止能力が得られなくなるおそれがある。ワイヤロープ式防護柵のスパンLが長くなればなるほど、この問題は大きくなる。
【0024】
これに対し、本実施形態の可動支柱1は、ロープ高保持部12を備えることにより、
図4に示されるように、ワイヤロープ式防護柵のワイヤロープがたわんで柵高が低くなることが抑止されるため、非常に好適である。
【0025】
図5は、ワイヤロープ式防護柵に車両が衝突する様子を示した概略図である。
車両がワイヤロープ式防護柵に接触すると、状況によって、ワイヤロープが下に押し下げられる力が働く場合がある。例えば、
図5に示されるように、大型車のタイヤTが接触した際、タイヤTの回転に巻き込まれる形で、下段のワイヤロープWRを下に押し下げる力が作用する。このような場合、従来の間隔保持材であると、タイヤTが接触していない上段のワイヤロープWRも、下段のワイヤロープWRに引っ張られる間隔保持材によって、下に押し下げられてしまう結果となる。また、車両の衝突によって間隔保持材が押し倒されるような場合にも、間隔保持材が倒れるのに伴って全てのワイヤロープWRが押し下げられる。これらにより、
図12(b)に示されるように、ワイヤロープ全体が下に押し下げられ、結果、ワイヤロープWRを乗り越えた飛び出し(突破事故)が生じる危険性が高くなってしまうこともあり得る。
【0026】
これに対し、本実施形態の可動支柱1は、最上段のロープ受け入れ部111aが、可動支柱1の上端部側から切り欠いて形成され、これにより、ワイヤロープ式防護柵のワイヤロープが上に外れるワイヤロープ抜け構造を有している。これにより、
図6に示されるように、最上段のワイヤロープWRは、可動支柱1に引っ張られて押し下げられることがなく、これによって車両を捕捉し、飛び出し(突破事故)が生じる危険性を低減できるという非常に優れた効果を奏する。
また、本実施形態の可動支柱1は、設置面(路面等)に固定されず、且つ、球面形状の設置面接触部121を備えることにより、設置面との間の摩擦が低減される。即ち、球面形状の設置面接触部121によって摩擦低減部が構成されている。当該摩擦低減部により、車両衝突時等に可動支柱1が比較的スムーズに滑動し、可動支柱1が倒されることが抑止されるため、より好適である。これにより、本実施形態の可動支柱1を利用したワイヤロープ式防護柵2は、支柱が設置面に対して滑動する支柱滑動システムとして構成される。
また、球面形状の設置面接触部121の下端部には、水抜き孔121hが形成されているため、雨水等が可動支柱1の内部に溜まってしまい、これによる腐食が生じてしまうこと等が抑止される。
【0027】
なお、本実施形態では、ワイヤロープ抜け構造が、最上段の1本に対してのみ設けられているものを例としたが、これに限るものではなく、ワイヤロープ式防護柵の上段側の複数本のワイヤロープに対して、ワイヤロープ抜け構造を設けるものとしてもよい。
また、本実施形態では、ワイヤロープ抜け構造が、可動支柱の上端部側から切り欠いて形成されており、ワイヤロープがフリーに抜けるものを例としているが、これに限るものではなく、仮止め部材を設けること等により、一定以上の力が作用した場合にのみワイヤロープが抜けるようにしてもよい。
【0028】
また、本実施形態では、ピン部材として、2段目のワイヤロープに対して引っかけられる構造のものを例としたが、これに限るものではない。例えば、
図7に示したように、可動支柱1内の略上端から略下端まで至る長さを有する、細長い部材(板状や棒状などの部材)となるピン部材13´を用いるもの等であってもよい。
【0029】
<実施形態2>
図8は、本発明に係る実施形態2の可動支柱を示す図であり、
図8(a):正面図、
図8(b):側面視における断面図である。なお、実施形態1と同様の概念となるものについては実施形態1と同一の符号を使用し、ここでの説明を省略若しくは簡略化する。
本実施形態の可動支柱1´は、ロープ間隔保持部11´において、上下に分割される分割部を備えており、最上段のロープ受け入れ部が他のロープ受け入れ部と同様の構成である点、及びピン部材の構成が実施形態1と異なる。
【0030】
本実施形態の可動支柱1´は、実施形態1と同様に丸パイプ(鋼管)を用いて形成されているが、ロープ間隔保持部11´において上下に分割されており、これを接続するための接続部材15を備える。
接続部材15は、可動支柱1´を構成する丸パイプの内径に嵌合する外径を有する丸パイプで形成されている。また、接続部材15は、
図8に示されるように、分割されたロープ間隔保持部11´の上側の部材に対して、略半分入れ込む形で嵌合、固定(溶接等)されている。分割されたロープ間隔保持部11´の上側の部材から、略半分突出した接続部材15を、分割されたロープ間隔保持部11´の下側の部材に対して嵌めこむ(固着はせずに、スライドして入れ込む)ことで、
図10に示されるように、可動支柱1´が一体化される。
【0031】
図9は、本実施形態のピン部材を示す図である。
図9(a)〜(c)が、上側ピン部材13aを示す各平面図であり、
図9(d)〜(f)が、下側ピン部材13bを示す各平面図である。
図9に示されるように、ピン部材13a、bは、何れも実施形態1と同様に、細長い板部材(若しくは棒部材)の上端部分を折り曲げたものである。上側ピン部材13aは、2本分のロープ受け入れ部111の設置間隔分の長さを有し、下側ピン部材13bは、3本分のロープ受け入れ部111の設置間隔分の長さを有する。
図10に示されるように、上側ピン部材13aは、最上段のワイヤロープWRに対して、その上端の折り曲げ部をひっかけるようにして設置され、同様に、下側ピン部材13bは、3段目のワイヤロープWRに対して、その上端の折り曲げ部をひっかけるようにして設置される。これにより、分割部分の上下でそれぞれ独立して、各ロープ受け入れ部111に受け入れられるワイヤロープWRが外れないように保持される。
【0032】
図11は、本実施形態の可動支柱1´を取り付けたワイヤロープ式防護柵2において、車両の衝突によって、可動支柱1´が押し倒され、若しくは、ワイヤロープWRがタイヤに巻き込まれた状態を示す概略図である。
同図から理解されるように、下段側のワイヤロープWRがタイヤに巻き込まれて引っ張られたり、可動支柱1´が押し倒されたりしても、可動支柱1´が上下に分割されるため、分割される上側2本分のワイヤロープWRは、柵高及びその間隔が保持される。従って、これによって車両を捕捉し、飛び出し(突破事故)が生じる危険性を低減できるという非常に優れた効果を奏する。
【0033】
本実施形態では、分割部が、ロープ間隔保持部に形成されるものを例としたが、ロープ高保持部に分割部が形成されるものであってもよい。
また、ロープ間隔保持部とロープ高保持部が上下に分割される分割構造を備えるものであってもよく、これらの組み合わせ(複数個所で分割されるもの)であっても構わない。
【0034】
上記各実施形態では、可動支柱が丸パイプで形成されるものを例としたが、これに限られるものではなく、各種の断面形状のパイプであってよく、その他の鋼材等(丸棒やH型鋼等)であっても構わない。それぞれ選択した部材に合わせて適宜ワイヤロープを受け入れて保持するロープ受け入れ部を形成すればよい。
【0035】
また、上記各実施形態では、設置面接触部が球面状に形成されるものを例としているが、球面形状に限るものではなく、下側に凸の曲面部にて構成されるもの等により、設置面との接触面積を低減し、摩擦を低減させるものや、設置面接触部に、設置面に対して摩擦係数の小さい部材を用いるもの等であってよい。
【0036】
上記各実施形態では、本発明に係る可動支柱を使用するワイヤロープ式防護柵として、中間支柱を設置できない場合を例としているが、中間支柱を設置するワイヤロープ式防護柵に対して、本発明に係る可動支柱を使用するものであっても勿論良い。
【符号の説明】
【0037】
1、1´...可動支柱
11、11´...ロープ間隔保持部
111...ロープ受け入れ部
12...ロープ高保持部
121...設置面接触部
13...ピン部材
2...ワイヤロープ式防護柵
WR...ワイヤロープ