(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-86080(P2019-86080A)
(43)【公開日】2019年6月6日
(54)【発明の名称】電動弁及び冷凍サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20190517BHJP
F16K 27/00 20060101ALI20190517BHJP
F25B 41/06 20060101ALI20190517BHJP
【FI】
F16K31/04 A
F16K27/00 B
F25B41/06 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-214298(P2017-214298)
(22)【出願日】2017年11月7日
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】中川 大樹
(72)【発明者】
【氏名】土井 琢郎
【テーマコード(参考)】
3H051
3H062
【Fターム(参考)】
3H051BB02
3H051CC13
3H051CC14
3H051DD02
3H051FF01
3H051FF08
3H062BB30
3H062BB31
3H062CC02
3H062GG06
3H062HH04
3H062HH08
(57)【要約】
【課題】マグネットロータ22を収容するキャン40を弁本体30に組み付けた弁装置に対してステータ21を取り付けるようにした電動弁において、ステータ21とキャン40とを確実に接地する。
【解決手段】ステータ21の弁本体30側にブラケット1を取り付ける。ブラケット1を板状基部11と弾性片12とで構成する。弾性片12に凸部12aと接触部12bを設ける。板状基部11をステータ21の裏蓋21a1に固定する。弾性片12の凸部12aによりキャン40の凹部40aに係合させる。弾性片12の接触部12bをステータ21の継鉄21cに接触させる。弾性片12の弾性力により、凸部12aをキャン40の凹部40aに押圧するとともに、接触部12bを継鉄21cに圧接する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ部の駆動により作動する弁本体に対して前記モータ部のマグネットロータを収容した略円筒形状のキャンを組み付けてなる弁装置と、前記モータ部を構成するとともに前記キャンを嵌め込む円柱形状の嵌挿孔を有するステータと、を備え、前記嵌挿孔に前記キャンが嵌め込まれて前記ステータが前記弁装置に装着された電動弁であって、
前記ステータに設けられて、該ステータに固定される基部と、該基部から前記嵌挿孔の軸線側に延在された弾性片とを有する弾性部材を備え、
前記弾性部材の前記弾性片は、その一部が前記ステータの継鉄に対する接触部として構成されるとともに前記軸線側に突出、又は、突出と反対側に凹んだ第一係合部を有し、前記キャンは外周に前記第一係合部に係合する第二係合部を有し、
前記弾性片の前記第一係合部が前記キャンの前記第二係合部に係合された状態で、前記弾性片の一部が自己の弾性力により前記接触部が前記継鉄に圧接されている
ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記弾性片における前記第一係合部と前記接触部とは、前記第一係合部が前記弾性片に沿って前記接触部よりも前記基部側に位置し、前記接触部が前記弾性片の前記基部とは反対側の自由端側に位置するよう、配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記弾性片における前記第一係合部と前記接触部とは、前記第一係合部が前記弾性片の前記基部とは反対側の自由端側に位置し、前記接触部が前記弾性片に沿って前記第一係合部よりも前記基部側に位置するよう、配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【請求項4】
前記弾性片の弾性力は、前記基部と前記第一係合部との間の部分の弾性力と、前記第一係合部と前記接触部との間の部分の弾性力であることを特徴とする請求項2に記載の電動弁。
【請求項5】
前記弾性片の弾性力は、前記基部と前記接触部との間の部分の弾性力と、前記接触部と前記第一係合部との間の部分の弾性力であることを特徴とする請求項3に記載の電動弁。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記弾性片の弾性力により、前記第一係合部を前記キャンの前記第二係合部に対して前記軸線側に押圧するとともに、前記接触部を、前記軸線に対する直交平面となる前記継鉄に対して前記軸線方向に圧接していることを特徴とする請求項4または5に記載の電動弁。
【請求項7】
前記弾性片における前記第一係合部は、前記軸線側に突出する凸部であり、前記キャンの外周の前記第二係合部は、前記凸部に係合する凹部であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電動弁。
【請求項8】
圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられている
ことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機等の冷凍サイクルシステムなどに使用する電動弁及びそれを備えた冷凍サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電動弁として、モータ部のマグネットロータの回転により弁本体を作動させるものがある。このような電動弁では流体の流路を密閉する必要があり、弁本体と共に密閉構造をなす円筒形状のキャン内に、モータ部のマグネットロータを収容している。そして、モータ部のステータはキャンの外周に配置する構造となっている。また、この種の電動弁では、ステータの継鉄(ヨーク)とキャンとの間の電気的ノイズを防止するために、ステータの継鉄を弁本体側に電気的に接続するようにしている。例えば特許第4490063号公報(特許文献1)、特許第4515045号公報(特許文献2)及び特開2016−14453号公報(特許文献3)に同様な電動弁が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4490063号公報
【特許文献2】特許第4515045号公報
【特許文献3】特開2016−14453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1乃至3には、ステータの継鉄を弁本体側に電気的に接続する構造が開示されている。特許文献1のものでは、ステータをキャンに固定するための回り止め部材を設け、この回り止め部材を弁本体側の継手管(流体導出管)に接触させるとともに、、回り止め部材と継鉄とを、導電性弾性体等で接続するようにしている。また、特許文献2のものでは、導電性回り止め部材とヨークを導電性固定ピンで接続しするとともに、導電性回り止め部材を継手管に接している。さらに、特許文献3のものでは、導通ばねをヨークに弾発的に圧接し、ヨークと回り止め部材とを導通ばねを介して電気的に接続している。このように、従来のものでは、いずれの構造も部品点数が増加したり、構造が複雑となるなどの問題がある。
【0005】
本発明は、マグネットロータを収容するキャンを弁本体に組み付けた弁装置に対してステータを取り付けるようにした電動弁において、ステータをキャンに固定するためのブラケットを利用して、簡単な構成でステータの継鉄とキャンとを確実に接地できる電動弁を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の電動弁は、モータ部の駆動により作動する弁本体に対して前記モータ部のマグネットロータを収容した略円筒形状のキャンを組み付けてなる弁装置と、前記モータ部を構成するとともに前記キャンを嵌め込む円柱形状の嵌挿孔を有するステータと、を備え、前記嵌挿孔に前記キャンが嵌め込まれて前記ステータが前記弁装置に装着された電動弁であって、前記ステータに設けられて、該ステータに固定される基部と、該基部から前記嵌挿孔の軸線側に延在された弾性片とを有する弾性部材を備え、前記弾性部材の前記弾性片は、その一部が前記ステータの継鉄に対する接触部として構成されるとともに前記軸線側に突出、又は、突出と反対側に凹んだ第一係合部を有し、前記キャンは外周に前記第一係合部に係合する第二係合部を有し、前記弾性片の前記第一係合部が前記キャンの前記第二係合部に係合された状態で、前記弾性片の一部が自己の弾性力により前記接触部が前記継鉄に圧接されていることを特徴とする。
【0007】
請求項2の電動弁は、請求項1に記載の電動弁であって、前記弾性片における前記第一係合部と前記接触部とは、前記第一係合部が前記弾性片に沿って前記接触部よりも前記基部側に位置し、前記接触部が前記弾性片の前記基部とは反対側の自由端側に位置するよう、配置されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の電動弁は、請求項1に記載の電動弁であって、前記弾性片における前記第一係合部と前記接触部とは、前記第一係合部が前記弾性片の前記基部とは反対側の自由端側に位置し、前記接触部が前記弾性片に沿って前記第一係合部よりも前記基部側に位置するよう、配置されていることを特徴とする。
【0009】
請求項4の電動弁は、請求項2に記載の電動弁であって、前記弾性片の弾性力は、前記基部と前記第一係合部との間の部分の弾性力と、前記第一係合部と前記接触部との間の部分の弾性力であることを特徴とする。
【0010】
請求項5の電動弁は、請求項3に記載の電動弁であって、前記弾性片の弾性力は、前記基部と前記接触部との間の部分の弾性力と、前記接触部と前記第一係合部との間の部分の弾性力であることを特徴とする。
【0011】
請求項6の電動弁は、請求項4または5に記載の電動弁であって、前記弾性部材は、前記弾性片の弾性力により、前記第一係合部を前記キャンの前記第二係合部に対して前記軸線側に押圧するとともに、前記接触部を、前記軸線に対する直交平面となる前記継鉄に対して前記軸線方向に圧接していることを特徴とする。
【0012】
請求項7の電動弁は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電動弁であって、前記弾性片における前記第一係合部は、前記軸線側に突出する凸部であり、前記キャンの外周の前記第二係合部は、前記凸部に係合する凹部であることを特徴とする。
【0013】
請求項8の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電動弁が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1乃至7の電動弁によれば、ステータをキャンに固定するための弾性部材の弾性片にキャンに対する第一係合部とステータの継鉄に接触する接触部とを設け、この弾性片の弾性力により第一係合部を介してキャンに固定するとともに、ステータの継鉄に確実に接触させるようにしたので、簡単な構成で継鉄とキャンとを確実に接地することができる。
【0015】
請求項8の冷凍サイクルシステムによれば、請求項1乃至7と同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1実施形態の電動弁の一部断面側面図である。
【
図2】第1実施形態の電動弁におけるステータの要部底面図である。
【
図3】第1実施形態の電動弁におけるステータ及びブラケットの要部底面図である。
【
図4】第1実施形態の電動弁におけるステータ及びブラケットの断面図である。
【
図6】本発明の第2実施形態の電動弁の一部断面側面図である。
【
図7】第2実施形態の電動弁におけるステータ及びブラケットの断面図である。
【
図8】実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の電動弁の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は第1実施形態の電動弁の一部断面側面図であり、
図3のA−A断面に対応する。
図2は第1実施形態の電動弁におけるステータの要部底面図、
図3は第1実施形態の電動弁におけるステータ及びブラケットの要部底面図、
図4は第1実施形態の電動弁におけるステータ及びブラケットの断面図、
図5は
図3のB−B断面図及び分解図である。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1の図面における上下に対応する。
【0018】
図1に示すように、この電動弁は、「弾性部材」としてのブラケット1と、「モータ部」としてのステッピングモータ20と、弁本体30と、非磁性体からなる円筒形状のキャン40とを備えている。ステッピングモータ20は、キャン40の外周に取り付けられたステータ21と、キャン40の内部に回転可能に配設されたマグネットロータ22とで構成されている。なお、マグネットロータ22の外周面とキャン40の内周面との間には所定の隙間が設けられている。
【0019】
弁本体30はステンレス等のハウジング310を有し、このハウジング310の内部に弁部材等を内蔵している。そして、この弁本体30はステッピングモータ20の駆動(マグネットロータ22の回転)により作動し、第1継手管31から第2継手管32へ流れる流体の流量、または第2継手管32から第1継手管31へ流れる流体の流量を制御する。
【0020】
弁本体30のハウジング310の上端には、キャン40が溶接等によって気密に組み付けられ、これにより、弁本体30及びキャン40は「弁装置」を構成している。
【0021】
ステータ21は、樹脂製のボビン21aにコイル21b,21bを巻装することで、軸線L方向に一対のコイル部を積層して構成されている。また、ボビン21aには、磁極歯21dを持つ継鉄(ヨーク)21cがモールド成形により一体に組み付けられている。さらに、ステータ21は、中央に軸線Lを中心とする円柱形状の嵌挿孔21Hを有しており、この嵌挿孔21Hの内周面の一部に継鉄21cの磁極歯21dが配置されている。そして、この磁極歯21dはキャン40の外周面に対向配置されている。
【0022】
以上の構成により、ステッピングモータ20では、コイル21bへのパルス出力の印加によりコイル21bが磁力線を発生する。これにより、磁極歯21dに磁極(N、S極)が交互に変化し、マグネットロータ22に対して磁気吸引力及び磁気反発力を発生し、マグネットロータ22が回転する。これにより弁本体30内部の弁部材が作動し弁口の開度が可変に制御されることで、前記のように第1継手管31から第2継手管32へ、あるいは第2継手管32から第1継手管31へ流れる冷媒の流量が制御される。
【0023】
ステータ21の弁本体30側の底部には、嵌挿孔21Hの開口部21H1から弁本体30側に拡径された袴部21Kを有している。また、キャン40は軸線Lを中心軸とし、マグネットロータ22の外周に対向する小径部40Aと、小径部40Aから弁本体30側に拡径された大径部40Bとから構成されている。そして、ステータ21の嵌挿孔21H内にキャン40の小径部40Aが嵌め込まれるとともに、キャン40の大径部40Bが嵌挿孔21Hの開口部21H1の弁本体30側に位置する状態で、ステータ21の袴部21K内に大径部40Bの一部が収容されている。これにより、ステータ21が弁装置に装着されている。
【0024】
ステータ21の底部で嵌挿孔21Hの開口部21H1の周囲の1箇所には、「弾性部材」としてのブラケット1が取り付けられている。ブラケット1は、「基部」としての板状基部11と、板状基部11から嵌挿孔21Hの軸線L側に延在された弾性片12とを有している。弾性片12とは、キャン40に固定する時に弾性変形することで、ステータ21を固定する部位の事である。弾性片12は、この弾性片12と一体に形成された「第一係合部」としての凸部12aと、弾性片12の板状基部11とは反対側の端部を折り曲げることで形成された接触部12bと、を有している。弾性片12は、板状基部11から袴部21Kの端部を跨いでこの袴部21K内に屈曲され、さらに袴部21K内において、弁本体30側から嵌挿孔21Hの開口部21H1を臨むように延在されている。また、弾性片12は、板状基部11側のC部から接触部12bの折り曲げ部E部までは板幅が
図3の様に一定(W1)であるが、曲げ部Eから接触部12bの先端までの板幅W2(図示せず)はW1より狭くなっており、
図2の継鉄21cのエリアに納まる寸法となっている。凸部12aは、弾性片12の接触部12bよりも板状基部11側に位置しており、ステータ21の袴部21Kの中心側(軸線L側)に突出している。そして、キャン40は大径部40Bの外周に、ブラケット1の凸部12aに係合する形状をした「第二係合部」としての凹部40aが複数形成されている。
【0025】
ステータ21のボビン21aは、このステータ21の軸線Lと直交するようにボビン21aの下側のフランジに形成されてリード線の固定機能を兼ねた裏蓋21a1を有している。そして、ブラケット1は、板状基部11を裏蓋21a1の底面、すなわちステータ21の軸線Lに対する直交平面に対向配置させ、裏蓋21a1に固定されている。
【0026】
さらに詳細には、
図5に示すように、ブラケット1において、板状基部11は、長方形の両端部を直角に折り曲げた側板11aと、この側板11aから切り出された爪11bとを有している。そして、ステータ21の裏蓋21a1の両側部を側板11a,11aで挟持するとともに、裏蓋21a1の上面に爪11b,11bを係止させることで、ブラケット1が裏蓋21a1に固定されている。このとき、裏蓋21a1の側部のテーパ面21a2の部分で板状基部11は弾性変形することで、爪11b,11bと板状基部11の弾性力により裏蓋21a1に固定されている。
【0027】
このように、この実施形態では、ブラケット1は、ステータ21に対して、側板11aと爪11bとを係合するだけでよいので、ステータ21に対して簡単に固定することができる。また、ブラケット1は、その板状基板11の弾性力によりステータ21に対して確実に堅牢に固定することができる。
【0028】
以上のようにステータ21にブラケット1が設けられていることにより、ステータ21がキャン40に固定されるとともに、ステータ21とキャン40とが電気的に接続される。すなわち、
図1に示すように、ブラケット1の凸部12aとキャン40の凹部40aとは、ステータ21が弁装置に組み付けた状態で係合する。これにより、キャン40に対して、ステータ21の軸線L回りの位置決めがなされるとともに、ステータ21は軸線L方向の抜け防止をされた状態でキャン40に取り付けられている。
【0029】
このとき、ブラケット1の弾性片12は、
図4の自由状態に復帰しようとする弾性力を、主に板状基部11側の屈曲部Dを支点としてキャン40側に作用させ、凸部12aをキャン40の凹部40aに押圧する。また、ブラケット1の接触部12bが継鉄21cに接触している。このとき、凸部12aが凹部40aに押圧して固定されることにより、接触部12bは、主にこの凸部12aを支点として作用する弾性片12の弾性力により継鉄21cに圧接される。すなわち、弾性片12は、凸部12aと接触部12bとの間の部分の弾性力により、凸部12aを凹部40aに押圧するとともに、接触部12bを継鉄21cに圧接している。
【0030】
このようにブラケット1は、弾性片12の弾性力により、凸部12aをキャン40の側面の凹部40aに対して軸線L側に押圧するとともに、接触部12bを、軸線Lに対する直交平面となる継鉄21cに対して軸線L方向に圧接する。ステータ21を弁装置のキャン40に取付け前のステータ及びブラケットの状態(
図4)でも、接触部12bの先端は継鉄21cにある程度接触しているが、確実ではない。しかし、
図1の様にキャン40に取付けることによる前記圧接力(弾性力)により、より確実に接触できる。
【0031】
これにより、ブラケット1は。凸部12a及び凹部40aを介してキャン40と電気的に接地されるとともに、接触部12bを介して継鉄21cと電気的に接地される。このように、ブラケット1の弾性片12の弾性力により、継鉄21cとキャン40とがそれぞれ確実に接地され、この継鉄21cとキャン40との間の電気的ノイズを防止することができる。
【0032】
図6は本発明の第2実施形態の電動弁の一部断面側面図、
図7は第2実施形態の電動弁におけるステータ及びブラケットの断面図であり、第1実施形態と同様な要素には
図1乃至
図5と同符号を付記して重複する説明は適宜省略する。この第2実施形態と第1実施形態との違いはブラケット1′の形状であり、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0033】
この第2実施形態におけるブラケット1′は、第1実施形態と同様な板状基部11と、この板状基部11と、板状基部11から嵌挿孔21Hの軸線L側に延在された弾性片13とを有している。弾性片13は、この弾性片13と一体に形成された凸部13aと、弾性片13の凸部13aより板状基部11側の一部の屈曲部として形成された接触部13bと、を有している。弾性片13は、板状基部11から袴部21Kの端部を跨いでこの袴部21Kの内面に沿って接触部13bに至り、さらに接触部13bから凸部13aを介して弁本体30側まで延在されている。なお、このブラケット1′は、第1実施形態と同様な構成により板状基部11を介して裏蓋21a1の底面に固定されている。
【0034】
この第2実施形態でも、ステータ21にブラケット1′が設けられていることにより、ステータ21がキャン40に固定されるとともに、ブラケット1′の接触部13bが継鉄21cに接触している。このとき、ブラケット1′の弾性片13は、
図7の自由状態に復帰しようとする弾性力を、主に接触部13bを支点としてキャン40側に作用させ、凸部13aをキャン40の凹部40aに押圧する。このように、凸部13aが凹部40aを押圧する力により、ステータ21に対してキャン40の軸線L方向の位置が固定される。また、この時、接触部13bは、ステータ21をキャン40に固定したことに伴う板状基部11と接触部13bとの間の部分の弾性力により継鉄21cに圧接されている。具体的には、板状基部11と接触部13bとの間の部分とは、主に板状基部から立ち上がる第一折り曲げ部Fと第二折り曲げ部Gの部分の弾性力により継鉄21cに圧接されている。
【0035】
このようにブラケット1′は、弾性片13の弾性力により、凸部13aをキャン40の側面の凹部40aに対して軸線L側に押圧するとともに、接触部13bを、軸線Lに対する直交平面となる継鉄21cに対して軸線L方向に圧接する。
【0036】
これにより、第1実施形態と同様に、ブラケット1′の弾性片13の弾性力により、継鉄21cとキャン40とがそれぞれ確実に接地され、この継鉄21cとキャン40との間の電気的ノイズを防止することができる。
【0037】
図8は実施形態の冷凍サイクルシステムを示す図である。図において、符号100は膨張弁を構成する本発明の実施形態の電動弁、200は室外ユニットに搭載された室外熱交換器、300は室内ユニットに搭載された室内熱交換器、400は四方弁を構成する流路切換弁、500は圧縮機である。電動弁100、室外熱交換器200、室内熱交換器300、流路切換弁400、及び圧縮機500は、それぞれ導管によって図示のように接続され、ヒートポンプ式の冷凍サイクルを構成している。なお、アキュムレータ、圧力センサ、温度センサ等は図示を省略してある。
【0038】
冷凍サイクルの流路は、流路切換弁400により冷房運転時の流路と暖房運転時の流路の2通りに切換えられる。冷房運転時には、図に実線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室外熱交換器200に流入され、この室外熱交換器200は凝縮器として機能し、室外熱交換器200から流出された冷媒液は電動弁100を介して室内熱交換器300に流入され、この室内熱交換器300は蒸発器として機能する。
【0039】
一方、暖房運転時には、図に破線の矢印で示したように、圧縮機500で圧縮された冷媒は流路切換弁400から室内熱交換器300、電動弁100、室外熱交換器200、流路切換弁400、そして、圧縮機500の順に循環され、室内熱交換器300が凝縮器として機能し、室外内熱交換器200が蒸発器として機能する。電動弁100は、冷房運転時に室外熱交換器200から流入する冷媒液、または暖房運転時に室内熱交換器300から流入する冷媒液を、それぞれ減圧膨張し、さらにその冷媒の流量を制御する。
【0040】
なお、弾性片と一体に成形された第一係合部は、前記軸線側に突出する前記凸部に限ることはなく、前記凸部の突出に対し、軸線側と反対側に凹んだ凹部であってもよい。また、キャンの第二係合部は、キャンの外周の前記軸線側に凹んだ複数箇所の凹部に限ることはなく、キャンの外周の外径から外側方向に突出した複数箇所の凸部であってもよい。なお、弾性片の第一係合部が凹部の場合、キャン側の第二係合部は凸部となり、第一係合部と第二係合部が確実に係合する関係の組み合わせとなる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
1 ブラケット(弾性部材)
11 板状基部(基部)
12 弾性片
12a 凸部(第一係合部)
12b 接触部
20 ステッピングモータ(モータ部)
21 ステータ
21H 嵌挿孔
21H1 開口部
21a ボビン
21b コイル
21c 継鉄
L ステータの軸線
22 マグネットロータ
30 弁本体
31 第1継手管
32 第2継手管
310 ハウジング
40 キャン
40A 小径部
40B 大径部
40a 凹部(第二係合部)
1′ ブラケット(弾性部材)
13 弾性片
13a 凸部(第一係合部)
13b 接触部
100 電動弁
200 室外熱交換器
300 室内熱交換器
400 流路切換弁
500 圧縮機