【解決手段】 アウターケーシング5は、被覆部11とライナー7とを繋ぐように当該被覆部11及び当該ライナー7と一体化している樹脂製の架橋部12を備える。これにより、必要な強度を確保したまま金属製のストランド9の本数を削減できる。延いては、当該提供者は、軽量化が可能なアウターケーシング5を得ることが可能となる。さらに、コントロールケーブルの曲げ剛性が過度に大きくなることが抑制される。延いては、当該コントロールケーブルの車両等への配索作業性が向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願は、特許文献1と異なる構成にて、軽量化が可能なコントロールケーブル又はアウターケーシングの一例、及び当該アウターケーシングの製造方法の一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
コントロールケーブルのアウターケーシングは、被覆部(11)とライナー(7)とを繋ぐように当該被覆部(11)及び当該ライナー(7)と一体化している樹脂製の架橋部(12)であって、ストランド(9)に沿って当該ストランド(9)と平行に延びる架橋部(12)を備える。
【0006】
被覆部(11)とライナー(7)とが架橋部(12)を介して繋がっているので、アウターケーシング又はコントロールケーブルを提供する者は、必要な強度を確保したまま金属製のストランド(9)の本数を削減できる。延いては、当該提供者は、軽量化が可能なコントロールケーブル又はアウターケーシングを得ることが可能となる。
【0007】
なお、特許文献1に記載の発明では、被覆部は、樹脂製のストランドより低い融点の樹脂にて構成され、かつ、被覆部と樹脂製のストランドとの相溶性は低いので、被覆部と樹脂製のストランドとは一体化して繋がっていない。
【0008】
当該アウターケーシングの製造方法においては、被覆部(11)を構成する樹脂の融点と同一温度の融点又は当該融点より低い融点を有する樹脂にて構成された索状体(13)、及び複数のストランド(9)をライナー(7)の外周面に配置する配置工程と、配置工程が終了したワークの周囲に溶融状態の樹脂を供給して被覆部(11)を生成する被覆生成工程とを備えることが望ましい。
【0009】
これにより、被覆生成工程において、被覆部(11)を構成する溶融状態の樹脂により、索状体(13)の温度が上昇するので、当該索状体(13)が被覆部(11)及びライナー(7)と一体化して架橋部(12)が成形される。
【0010】
このとき、索状体(13)とライナー(7)とは、両者が相溶して一体化する場合、及びインサート成形法のごとく、両者が相溶することなく一体化する場合のいずれであってもよい。さらに、界面の有無は不問である。なお、索状体(13)と被覆部(11)との関係も索状体(13)とライナー(7)と同じである。
【0011】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本発明は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の「発明の実施形態」は、本願発明の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されるものではない。
【0014】
なお、各図に付された方向を示す矢印等は、各図相互の関係を理解し易くするために記載されたものである。本発明は、各図に付された方向に限定されるものではない。
少なくとも符号を付して説明した部材又は部位は、「1つの」等の断りがある場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。
【0015】
(第1実施形態)
1.コントロールケーブルの構成
1.1 コントロールケーブルの概要
本実施形態に係るコントロールケーブルは、自動車用のコントロールケーブルに適用されたものである。当該コントロールケーブル1は、
図1に示されるように、インナーケーブル3及びアウターケーシング5等を少なくとも有して構成されている。
【0016】
インナーケーブル3は、硬鋼線、ステンレス線若しくはオイルテンパー線等の素線を多数本撚って形成されたワイヤロープ又は単線である。アウターケーシング5は、インナーケーブル3が収納された可撓性を有するチューブ状のケーシングである。
【0017】
1.2 アウターケーシングの構成
アウターケーシング5は、ライナー7、複数のストランド9及び被覆部11等を少なくとも有して構成されている。
【0018】
ライナー7は、丸チューブ(円筒)状の部材であって、インナーケーブル3が内部に摺動可能に挿入されている。当該ライナー7は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリアミド又はポリアセタール等の樹脂製である。
【0019】
各ストランド9は、同一の直径寸法を有する索状の部材である。各ストランド9は、インナーケーブル3の素線を構成する材質と同一又は異なる金属製である。そして、各ストランド9は、ライナー7の外周面に等間隔で配置された状態で、ライナー7の外周面に螺旋状に巻かれている(
図1参照)。
【0020】
なお、各ストランド9がライナー7に巻き付けられる際の各ストランド9に付与される張力は、コントロールケーブル1に求められる仕様等に基づいて適宜決定される。つまり、張力が殆ど付与されていない状態や所定以上の張力が付与された状態等があり得る。
【0021】
被覆部11は、
図2に示されるように、複数のストランド9及びライナー7を覆う部位である。被覆部11は、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリアミド等の樹脂(本実施形ではポリプロピレン)製である。
【0022】
なお、被覆部11は、最外周を示す実線と二点鎖線との間の丸チューブ(円筒)状の部材である。そして、
図3に示されるように、ライナー7の円周方向に沿って隣り合うストランド9とストランド9との間には、架橋部12(
図3の粗い網掛け部分)が設けられている。
【0023】
架橋部12は、被覆部11とライナー7とを繋ぐように当該被覆部11及び当該ライナー7と一体化している樹脂製の部分である。当該架橋部12は、ストランド9に沿って当該ストランド9と平行に延びている(
図4参照)。
【0024】
「架橋部12が被覆部11及びライナー7と一体化している」とは、(a)架橋部12と被覆部11及びライナー7とが相溶して一体化した構成、又は(b)インサート成形法のごとく、架橋部12と被覆部11及びライナー7とが相溶することなく一体化した構成である。
【0025】
なお、本実施形態では、
図3に示されるように、架橋部12と被覆部11とは、互いに相溶して一体化しているため、界面が殆ど存在していない。架橋部12とライナー7とは、互いに相溶することなく一体化しているため、界面が明確に存在している。
【0026】
2.アウターケーシングの製造方法
アウターケーシング5は、
図5に示されるように、少なくとも2つの工程を経て製造される。第1の工程S1は配置工程である。当該配置工程では、
図6に示されるように、複数の索状体13、及び複数のストランド9が、ライナー7の円周方向に沿って交互に当該ライナー7の外周面に配置される。
【0027】
索状体13は、被覆部11を構成する樹脂の融点と同一温度の融点又は当該融点より低い融点を有する樹脂にて構成された索体状の部材である。なお、本実施形態では、索状体13はポリプロピレンである。
【0028】
つまり、本実施形態では、ライナー7の融点Mp1、被覆部11の融点Mp2及び索状体13の融点Mp3それぞれの融点の関係は、Mp1<Mp2=Mp3である。
第2の工程S2である被覆成形工程は、配置工程終了後に実施される工程である(
図5参照)。当該被覆生成工程では、配置工程が終了したワーク(
図6に示されるもの)の周囲に溶融状態の樹脂が供給されて被覆部11が生成される。
【0029】
なお、被覆部11は、以下のようにして成形される。すなわち、上記ワークが略円筒状の成形用金型(図示せず。)内を通過する。この通過の際に、成形用金型の内周面から当該ワークの外周面に向けて溶融状態の樹脂が射出注入される。そして、当該樹脂が硬化して被覆部11が成形される。
【0030】
被覆生成工程において、溶融状態の樹脂が射出注入されると、その溶融状態の樹脂により、索状体13の温度が上昇する。このため、当該索状体13が被覆部11及びライナー7と一体化して架橋部12(
図2参照)が成形される。つまり、被覆生成工程において、索状体13が被覆部11及びライナー7と一体化することにより、当該索状体13が架橋部12となる。
【0031】
なお、索状体13は、被覆生成工程時にストランド9の周囲に流れ込む。このため、架橋部12は、被覆部11、ライナー7及び複数のストランド9、つまりアウターケーシング5全体を一体化する。
【0032】
3.本実施形態に係るアウターケーシング及びその製造方法の特徴
アウターケーシング5は、被覆部11とライナー7とを繋ぐように当該被覆部11及び当該ライナー7と一体化している樹脂製の架橋部12を備える。
【0033】
被覆部11とライナー7とが架橋部12を介して繋がっているので、アウターケーシング5又はコントロールケーブル1を提供する者は、必要な強度を確保したまま金属製のストランド9の本数を削減できる。延いては、当該提供者は、軽量化が可能なコントロールケーブル1又はアウターケーシング5を得ることが可能となる。
【0034】
金属製のストランド9の本数が削減されたアウターケーシング5、つまりコントロールケーブル1では、当該コントロールケーブル1の曲げ剛性が過度に大きくなることが抑制される。延いては、当該コントロールケーブル1の車両等への配索作業性が向上する。
【0035】
上記アウターケーシング5の製造方法においては、被覆部11を構成する樹脂の融点と同一温度の融点又は当該融点より低い融点を有する樹脂にて構成された索状体13が配置された状態で、溶融状態の樹脂が供給されて被覆部11が生成される。
【0036】
これにより、被覆生成工程において、被覆部11を構成する溶融状態の樹脂により、索状体13の温度が上昇するので、当該索状体13が被覆部11及びライナー7と一体化して架橋部12が成形される。
【0037】
なお、被覆生成工程の実施前に索状体13を加熱する加熱工程を設けてもよい。これにより、被覆工程時に索状体13の温度が確実に上昇するので、少なくとも架橋部12と被覆部11とが確実に一体化する。
【0038】
(その他の実施形態)
上述の実施形態に係るコントロールケーブル1は、車両用であった。しかし、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、窓開閉装置、二輪車及び農機具等にも適用可能である。
【0039】
上述の実施形態で示されたアウターケーシング5の製造方法は例示であって、本願明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。すなわち、例えば、被覆部11、ライナー7及び架橋部12を押し出し成形又は引き抜き成形等により成形された後、ストランド9が挿入されたアウターケーシング5であってもよい。
【0040】
上述の実施形態では、架橋部12と被覆部11とは互いに相溶して一体化して界面が殆ど存在しておらず、かつ、架橋部12とライナー7との間には界面が明確に存在していた。しかし、本明細書に開示された発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
すなわち、(a)架橋部12とライナー7とが互いに相溶して一体化して界面が殆ど存在しておらず、かつ、架橋部12と被覆部11との間には界面が明確に存在した構成、又は(b)架橋部12とライナー7及び被覆部11とが互いに相溶して一体化して界面が殆ど存在していない構成であってもよい。
【0042】
上述の実施形態では、架橋部12(配置工程にあっては、索状体13)がストランド9と平行に螺旋状に配置されていた。しかし、本明細書に開示された発明はこれに限定され
るものではない。すなわち、架橋部12(索状体13)及びストランド9がライナー7の中心軸線と平行に配置されていてもよい。
【0043】
さらに、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態を組み合わせてもよい。