【解決手段】タッチパネル用積層体10は、ポリ乳酸系圧電フィルム1の両面にそれぞれ絶縁性接着層2を介して電極層3を有する。ポリ乳酸系圧電フィルム1は、30μm以下の厚みを有し、かつ前記絶縁性接着層2の少なくとも1つが、10μm未満の厚みを有する。
ポリ乳酸系圧電フィルムの両面にそれぞれ絶縁性接着層を介して電極層を有するタッチパネル用積層体であって、前記ポリ乳酸系圧電フィルムが、30μm以下の厚みを有し、かつ前記絶縁性接着層の少なくとも1つが、10μm未満の厚みを有する、タッチパネル用積層体。
前記ポリ乳酸系圧電フィルムが延伸されており、前記ポリ乳酸系圧電フィルムの延伸方向がタッチパネルの短手方向に対して実質的に0°の角度を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体。
少なくとも一方の前記絶縁性接着層が、酢酸ビニル樹脂系接着剤、エチレン酢酸ビニル樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、合成ゴム系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、及びこれらの組み合わせから選択される接着剤の層である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層体。
前記ポリ乳酸系圧電フィルムが、10μm以下の厚みを有し、前記それぞれの絶縁性接着層が10μm未満の厚みを有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層体。
請求項1〜9のいずれか一項に記載の積層体と、前記それぞれの電極層に接続し、前記積層体が発生する検出信号から押圧の位置及び強度を検出する演算回路モジュールとを含む、タッチパネル構造体。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルは、構造が比較的簡単であり、安価であり、かつ利便性が良いことから市場が拡大しつつある。タッチパネルの方式として、抵抗膜式、静電容量式、光学式等の種々の方式が提案されているが、これらのなかでも抵抗膜式及び静電容量式が主流となっている。
【0003】
抵抗膜式は、電極が形成された2枚のフィルムが使用される。この方式では、指、棒等による押圧によって、それらの2枚のフィルムの電極が互いに接触することによって、その位置を感知することができる。この電極としては、例えばインジウム錫酸化物(ITO)の透明蒸着膜が挙げられ、フィルムとしては、例えばPETフィルムが挙げられる。従来の抵抗膜式においては、ITO膜の電気抵抗の大きさ及び製造技術の点から、大型画面のタッチパネルの製造が困難であるため、専ら小型から中型のタッチパネルが利用されている。
【0004】
静電容量式においては、パターン化された電極を有するフィルムが使用され、このパターンによって静電容量の変化を検出してタッチ位置を得ることができる。通常は、パターン化された電極を有する2枚のフィルムで絶縁層を挟持した構造とすることによって、一方の電極でX方向の位置を検出し、他方の電極でY方向の位置を検出する。この方式では、押圧の強さにかかわらず、電気的に位置を検出できる特徴がある一方で、押圧の強さに依存した信号検出が不得意であるという課題がある。また、従来の静電容量式においても一般的にはITO膜を使用するため、大型画面のタッチパネルの製造が困難であり、専ら小型から中型のタッチパネルが利用されている。
【0005】
特許文献1は、2つのITO電極によって、誘電体層である圧電フィルムが挟持され、圧電フィルムと電極との間に接着剤層が存在する、静電容量式のタッチパネルを開示している。この方式では、押圧する強さに応じて、圧電フィルムの圧電効果によって信号が発生するため、静電容量式でありながらも押圧の強さを感知することができる。
【0006】
静電容量式タッチパネルの電極に関して、特許文献2及び3は、導電性金属の微細線を透明フィルムの表面に多数配列して形成した電極を開示している。このような電極であれば、ITO膜を使用する場合の上記の課題が存在しないため、大型画面の静電容量式のタッチパネルを提供することができる。特許文献2及び3では、2つの電極の間に、誘電体層として50μm〜300μmの絶縁性の透明接着剤層を形成させている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の発明においては、十分な検出感度を得るために圧電フィルムを40μm以上にしていた。また、特許文献1の発明においては、接着層の厚みを10μm以上にすることによって、電極と圧電フィルムの剥がれ等の発生を抑制していた。
【0009】
しかし、近年は、タッチパネル構造体のより一層の薄型化が求められており、特にタッチパネル構造体をフレキシブル化しようとした場合に、特許文献1に記載のタッチパネル構造体では、厚さが大きすぎる場合があった。
【0010】
そこで、本発明は、従来のタッチパネル構造体よりも薄型化が可能で、さらに高い検出感度を有しており、かつ電極と圧電フィルムの剥がれ等の発生が少ないタッチパネル用積層体及びそれを含むタッチパネル構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、以下の態様を有する本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
《態様1》
ポリ乳酸系圧電フィルムの両面にそれぞれ絶縁性接着層を介して電極層を有するタッチパネル用積層体であって、前記ポリ乳酸系圧電フィルムが、30μm以下の厚みを有し、かつ前記絶縁性接着層の少なくとも1つが、10μm未満の厚みを有する、タッチパネル用積層体。
《態様2》
少なくとも一方の前記電極層が、基材層上に形成されている、態様1に記載の積層体。
《態様3》
少なくとも一方の前記電極層が、導電性金属の複数の微細線で構成されている、態様1又は2に記載の積層体。
《態様4》
前記複数の微細線が、互いに実質的に平行で、かつ実質的に等間隔で配置されている、態様3に記載の積層体。
《態様5》
前記ポリ乳酸系圧電フィルムが延伸されており、前記ポリ乳酸系圧電フィルムの延伸方向がタッチパネルの短手方向に対して実質的に0°の角度を有する、態様1〜4のいずれか一項に記載の積層体。
《態様6》
少なくとも一方の前記絶縁性接着層が、酢酸ビニル樹脂系接着剤、エチレン酢酸ビニル樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、合成ゴム系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、及びこれらの組み合わせから選択される接着剤の層である、態様1〜5のいずれか一項に記載の積層体。
《態様7》
前記ポリ乳酸系圧電フィルムが、10μm以下の厚みを有し、前記それぞれの絶縁性接着層が10μm未満の厚みを有する、態様1〜6のいずれか一項に記載の積層体。
《態様8》
前記ポリ乳酸系圧電フィルム、前記絶縁性接着層、及び前記電極層の全てが透明である、態様1〜7のいずれか一項に記載の積層体。
《態様9》
少なくとも一方の前記電極層の前記ポリ乳酸系圧電フィルムとは反対側に、保護層をさらに含む、態様1〜8のいずれか一項に記載の積層体。
《態様10》
態様1〜9のいずれか一項に記載の積層体と、前記それぞれの電極層に接続し、前記積層体が発生する検出信号から押圧の位置及び強度を検出する演算回路モジュールとを含む、タッチパネル構造体。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《タッチパネル用積層体》
本発明のタッチパネル用積層体は、ポリ乳酸系圧電フィルム(1)の両面にそれぞれ絶縁性接着層(2)を介して電極層(3)を有する。すなわち、本発明のタッチパネル用積層体は、2つの電極層と、2つの電極層の間に位置するポリ乳酸系圧電フィルムと、ポリ乳酸系圧電フィルムと2つの電極層との間にそれぞれ位置する2つの絶縁性接着層とを有する。ここで、ポリ乳酸系圧電フィルムは、30μm以下の厚みを有し、かつ絶縁性接着層の少なくとも1つが、10μm未満の厚みを有する。
【0014】
本発明者らは、ポリ乳酸系圧電フィルムの厚みを小さくすると押圧によって発生する電圧が小さくなるものの、絶縁性接着層の厚みも小さくすれば、検出感度が非常に高くなること、そして同時に、ポリ乳酸系圧電フィルムの厚みが小さい場合には、フィルムのコシがなくなることで、絶縁性接着層の厚みが小さかったとしても、電極層とポリ乳酸系圧電フィルムの剥がれ等の発生が抑制できることを見出した。特許文献1においては、圧電フィルムも接着層もある程度の厚みがないと有用なタッチパネルが得られないことが示唆されていたにも関わらず、ポリ乳酸系圧電フィルムと絶縁性接着層とを同時に薄くすることで、有用なタッチパネルが得られるという点は予想外であった。
【0015】
例えば、本発明のタッチパネル用積層体は、
図1に例示される層構成を有する。本発明のタッチパネル用積層体(10)は、ポリ乳酸系圧電フィルム(1)の両面にそれぞれ絶縁性接着層(2)を介して電極層(3)を有する。電極層(3)は、基材層(4)上に形成されていてもよい。また、本発明のタッチパネル用積層体は、一方の電極層(3)のポリ乳酸系圧電フィルム(1)とは反対側に、保護層(5)をさらに具備していてもよい。なお、図示されていないが、基材層(4)と保護層(5)との間にも接着剤層が存在している。
【0016】
ポリ乳酸系圧電フィルム(1)は好ましくは延伸されており、ポリ乳酸系圧電フィルム(1)の延伸方向が、タッチパネルの短手方向に対して実質的に0°の角度を有することが好ましい。なお、実質的に0°とは、0°から時計回り、又は、反時計回りに15°の角度をなす範囲を意味し、より好ましくは5°の角度をなす範囲である。すなわち、ポリ乳酸系圧電フィルム(1)の延伸方向と、タッチパネルの短手方向とは、−15°〜15°の角度、又は−5°〜5°の角度をなすことが好ましい。なお、タッチパネルは、通常10インチ等のサイズを有し、短手方向と長手方向とを有する。
【0017】
本発明のタッチパネル用積層体の厚さは、基材層を含みかつ保護層を含まない場合、10μm以上、20μ以上、30μm以上、又は50μm以上であってもよく、300μm以下、200μm以下、150μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、又は50μm以下であってもよい。
【0018】
本発明のタッチパネル用積層体は、その用途に応じて、透明性が高いことが好ましく、例えば本発明の積層体の全光線透過率は、60%以上、70%以上、80%以上、85%以上、又は90%以上であることが好ましい。本発明の積層体の全光線透過率は、95%以下、93%以下、91%以下、90%以下、85%以下、又は80%以下であってもよい。したがって、この場合、ポリ乳酸系圧電フィルム、絶縁性接着層、及び電極層の全てが透明であることが好ましく、それにより積層体が上記のような全光線透過率を有することが好ましい。一方で、タッチパネルには、透明性を必要としない用途も存在しており、その場合には、本発明のタッチパネル用積層体は、透明性が高い必要はない。
【0019】
本発明のタッチパネル用積層体は、平らであってもよく、湾曲していてもよい。本発明の積層体が湾曲している場合、ミリメートル単位での曲率半径は、50R以上、100R以上、200R以上、300R以上、400R以上、500R以上、又は1000R以上であってもよく、2000R以下、1000R以下、800R以下、500R以下、又は300R以下であってもよい。
【0020】
本発明のタッチパネル用積層体は、大画面化が容易であり、例えば5インチ以上、7インチ以上、8インチ以上、10インチ以上、12インチ以上、15インチ以上、18インチ以上、20インチ以上、24インチ以上、28インチ以上、30インチ以上、又は33インチ以上のディスプレイと共に用いられてもよい。
【0021】
本明細書において、タッチパネルとは、第1の態様として、表示面を押さえることで必要な処理を実行できるものであり、第2の態様として、表示面のどこを押さえるかによって必要な処理を変更できるもので、第3の態様としては、表示面の押さえるかによって表示面の表示を変更できるものが挙げられる。本明細書において、タッチパネルは、必ずしも透明である必要はないが、透明であれば第1〜3の態様を全て兼ね備えることができるため好ましい。
【0022】
〈ポリ乳酸系圧電フィルム〉
本発明で用いられるポリ乳酸系圧電フィルムは、30μm以下の厚みを有する。このような比較的薄いフィルムを用いると、コシが弱くなり、比較的高い可撓性を有することになる。
【0023】
理論に拘束されないが、本発明の積層体に曲げ等の力が加わった場合でも、ポリ乳酸系圧電フィルムが高い可撓性を有しているため、電極層とポリ乳酸系圧電フィルムとの間に応力がかかりにくくなり、絶縁性接着剤層の厚みが薄くても、電極層とポリ乳酸系圧電フィルムの剥がれ等の発生が抑制でき、さらに、ポリ乳酸系圧電フィルムの追随性が高く、荷重をかけた場所の認識性(S/N比)に優れると考えられる。
【0024】
本発明で用いられるポリ乳酸系圧電フィルムの厚さは、3μm以上、4μm以上、5μ以上、8μm以上、又は10μm以上であってもよく、25μm以下、20μm以下、15μm以下、10μm以下、又は8μm以下であってもよい。
【0025】
本発明で用いられるポリ乳酸系圧電フィルムは、厚さ以外の点については、上記の特許文献1又は特開2014−27038号公報に開示されているような圧電フィルムであってもよい。
【0026】
例えば、本発明で用いられるポリ乳酸系圧電フィルムは、光学純度が80モル%以上のポリL−乳酸(PLLAと省略する場合がある)もしくはポリD−乳酸(PDLAと省略する場合がある)を用いることが好ましい。光学純度が下限未満では、圧電特性が低く、本発明の効果が発現され難い。ポリ乳酸の光学純度は、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上である。実質的にL−乳酸単位のみから構成されるポリL−乳酸もしくはD−乳酸単位のみから構成されるポリD−乳酸が特に好ましい。
【0027】
ポリ乳酸系圧電フィルムは、延伸されて結晶化することにより、圧電性を発現するが、延伸は一軸延伸であってもよく、延伸後に熱処理を行うことによって、結晶化を促進してもよい。
【0028】
ポリ乳酸系圧電フィルムは、単一のフィルムであってもよく、複数のフィルムを重ね合せた積層体のフィルムであってもよい。
【0029】
〈絶縁性接着層〉
本発明で用いられる少なくとも一方の絶縁性接着層の厚さは、10μm未満の厚みを有する。本発明者らは、このような比較的薄い絶縁性接着層を用いると、ポリ乳酸系圧電フィルムの厚みが薄くても、検出感度が非常に高くなることを見出した。
【0030】
本発明で用いられる絶縁性接着層の厚さは、1μm以上、3μm以上、5μm以上、6μm以上、又は8μm以上であってもよく、10μm未満、8μm以下、6μm以下、又は5μm以下であってもよい。
【0031】
本発明で用いられる絶縁性接着層は、厚さ以外の点については、上記の特許文献2及び3に開示されているような接着層であってもよい。例えば、少なくとも一方の絶縁性接着層は、酢酸ビニル樹脂系接着剤、エチレン酢酸ビニル樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、合成ゴム系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、及びこれらの組み合わせから選択される接着剤の層であってもよく、一般的にOCA(optical clear adhesive)と呼ばれる接着剤が有利に使用できる。
【0032】
ポリ乳酸系圧電フィルムの厚さd
1に対する少なくとも一方の絶縁性接着層の厚みd
2の比(d
1/d
2)は、0.50以上、0.80以上、1.0以上、又は1.2以上であってもよく、10.0以下、8.0以下、6.0以下、5.0以下、3.0以下、2.0以下、1.5以下、又は1.0以下であってもよい。
【0033】
〈電極層〉
本発明で用いられる電極層は、従来から周知の電極を用いることができる。例えば、本発明で用いられる少なくとも一方の電極層は、上記の特許文献1に開示されているような電極であってもよい。
【0034】
例えば、本発明で用いられる電極層は、ITO、ZnO、銀ナノワイヤ等の無機系材料を用いた透明又は不透明の電極層であってもよく、ポリチオフェン、ポリアニリン等を含む有機系材料を用いた透明又は不透明の電極層であってもよい。
【0035】
また、本発明で用いられる少なくとも一方の電極層は、上記の特許文献2及び3に開示されているような導電性金属の複数の微細線で構成されていることが好ましい。このような電極層では、タッチパネルの大画面化が容易であり、かつポリ乳酸系圧電フィルムの厚みが小さくても非常に高い検出感度を得ることができる。それにより、本発明のタッチパネル用積層体を使用したタッチパネル構造体は、大画面であっても、指等で表面を軽くタッチすることで、その位置を正確に認知することができる。また、複数の指等がタッチした場合にも、また同時に押圧しても安定して、その位置及び押圧を感知することができる。
【0036】
これに関して、本発明で用いられる電極層として、導電性金属の複数の微細線を用いた場合には、導電性が高いことによって、ポリ乳酸系圧電フィルムが30μmよりもさらに薄くても、非常に高い検出感度が得られることが分かった。
【0037】
よって、本発明で用いられる少なくとも一方の電極層は、導電性金属の複数の微細線で構成されていることが好ましく、またこの複数の微細線が、互いに実質的に平行で、かつ実質的に等間隔で配置されていることが好ましい。一方の電極層と、他方の電極層とは、その微細線が延びる方向が実質的に直交していることが好ましい。
【0038】
ここで、「実質的に平行」とは、複数の微細線が直線である形態に限定することを意図しておらず、複数の微細線が全体として同じ1つの方向に延びている態様を含む。例えば、特許文献3に記載のように、波形であってもよく、また複数の微細線が、互いにわずかに角度を有していながら直線状に延びていてもよい。
【0039】
一方の電極層と他方の電極層との微細線が実質的に直交している場合において、一方の電極層の微細線と、タッチパネルの短手方向とは、25°〜35°の間の角度をなすことが好ましく、他方の電極層と、タッチパネルの短手方向とは、55°〜65°の間の角度をなすことが好ましい。
【0040】
複数の微細線は、その線幅が1μm以上、2μm以上、3μm以上、5μm以上、8μm以上、又は10μm以上であってもよく、20μm以下、15μm以下、10μm以下、8μm以下、6μm以下、又は5μm以下であってもよい。また、その厚みは、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、0.5μm以上、0.8μm以上、又は1μm以上であってもよく、10μm以下、8μm以下、5μm以下、3μm以下、2μm以下、又は1μm以下であってもよい。
【0041】
複数の微細線は、互いに一定の間隔を開けて存在していてもよく、その平均の間隔は、例えば0.4mm以上、0.6mm以上、0.8mm以上、1mm以上、1.5mm以上、又は2mm以上であってもよく、20mm以下、15mm以下、10mm以下、8mm以下、6mm以下、5mm以下、3mm以下、又は2.5mm以下であってもよい。
【0042】
複数の微細線には、導電性金属材料が使用されることが好ましく、具体的にはCu、Ni、Al、Ag、Cr、これら金属の2種以上よりなる合金、又はこれら金属の複層で積層された構造で形成されたものが挙げられる。これらの中でも特に、Cu及びAgが好ましく、特にCuは加工性及び価格の点で有利である。
【0043】
複数の微細線は、特許文献2及び3に記載のように、複数の微細線が1組の導電ラインを形成し、その1組の導電ラインが複数存在している形体であってもよい。この場合、その組を形成している微細線が互いに電気的に接続して、1つの導電ラインとなっていることが好ましい。また、1組の導電ラインと、他の組の導電ラインとは、それらを構成する微細線が互いに電気的に接続していないことが好ましい。
【0044】
その1組の導電ラインと、他の組の導電ラインとの間隔は、例えば1mm以上、1.5mm以上、2mm以上、3mm以上、5mm以上、又は8mm以上であってもよく、20mm以下、15mm以下、10mm以下、8mm以下、6mm以下、5mm以下、3mm以下、又は2.0mm以下であってもよい。
【0045】
〈基材層〉
電極層は、基材層上に形成されていてもよい。この場合、電極層は、基材層の片面にフォトレジスト加工、フォトエッチング加工等により形成することができる。
【0046】
基材層としては、特に限定されず、例えば透明フィルムを挙げることができる。透明フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリオレフィンフィルム、又はポリシクロオレフィンフィルムなどが例示できるが、好ましくはポリエステルフィルムである。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリエチレン−2.6−ナフタレート(PEN)フィルム等を挙げることができ、特に好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。これら透明フィルムは、延伸されていても、延伸されていなくてもよい。これらの透明フィルムが着色された不透明なフィルムを用いてもよい。
【0047】
基材層の厚さは、5μm以上、10μm以上、20μm以上、30μ以上、50μm以上、60μm以上、又は80μm以上であってもよく、200μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、50μm以下、30μm以下、又は20μm以下であってもよい。
【0048】
〈保護層〉
本発明のタッチパネル用積層体は、少なくとも一方の電極層のポリ乳酸系圧電フィルムとは反対側に、さらに保護層を有していてもよい。この場合、保護層は、フィルム、ガラス板等の基材であれば特に限定されない。保護層と電極層または基材層とは、接着剤を用いて接着されていてもよく、この場合、その接着剤は、上記の絶縁性接着層として用いられる接着剤と同様の接着剤でよい。
【0049】
例えば、フィルムとしては、ポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリオレフィンフィルム、又はポリシクロオレフィンフィルムなどが例示できるが、好ましくはポリエステルフィルムである。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、ポリエチレン−2.6−ナフタレート(PEN)フィルム等を挙げることができ、特に好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。これらフィルムは、延伸されていても、延伸されていなくてもよい。
【0050】
保護層の厚さは、30μm以上、50μm以上、80μ以上、100μm以上、300μm以上、又は500μm以上であってもよく、1000μm以下、800μm以下、500μm以下、300μm以下、200μm以下、100μm以下、80μm以下、60μm以下、又は50μm以下であってもよい。
【0051】
《タッチパネル構造体》
本発明のタッチパネル構造体は、上記のタッチパネル用積層体と、上記の電極層に接続し上記のタッチパネル用積層体が発生する検出信号から押圧の位置及び強度を検出する演算回路モジュールとを含む。演算回路モジュールとしては、本分野で周知のモジュールを使用することができる。また、タッチパネル構造体の構成として知られている周知の構成を、本発明のタッチパネル構造体にも使用することができる。
【0052】
例えば、本発明のタッチパネル構造体は、液晶画面、有機EL画面等の周知のディスプレイと共に使用することができる。
【0053】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
[参考例1]ポリL−乳酸(PLLA)の合成
真空配管、窒素ガス配管、触媒添加配管、L−ラクチド溶液添加配管、アルコール開始剤添加配管を具備したフルゾーン翼具備縦型攪拌槽(40L)を窒素置換した。その後、L−ラクチド30Kg、ステアリルアルコール0.90kg(0.030モル/kg)、オクチル酸スズ6.14g(5.05×10−4モル/1kg)を仕込み、窒素圧106.4kPaの雰囲気下、150℃に昇温した。内容物が溶解した時点で、攪拌を開始、内温をさらに190℃に昇温した。内温が180℃を超えると反応が始まるため、冷却しながら内温を185℃から190℃に保持し1時間反応を継続した。さらに攪拌しつつ、窒素圧106.4kPa、内温200℃から210℃で1時間反応を行なった後、攪拌を停止しリン系の触媒失活剤を添加した。
【0055】
さらに20分間静置して気泡除去をおこなった後、内圧を窒素圧で2から3気圧に昇圧し、プレポリマーをチップカッターに押し出し、重量平均分子量13万、分子量分散1.8のプレポリマーをペレット化した。
【0056】
さらに、ペレットを押出機で溶解させ、無軸籠型反応装置に15kg/hrで投入し、10.13kPaに減圧して残留するラクチドを低減処理し、それを再度チップ化した。得られたポリL−乳酸(PLLA)は、ガラス転移点温度(Tg)55℃、融点(Tm)175℃、重量平均分子量12万、分子量分散1.8、ラクチド含有量0.005質量%であった。
【0057】
〈実施例1〉
厚み50μmのPETフィルム上に、5.9mmの間隔でCuの複数の微細線を平行に直線状に形成した。この微細線の高さは2μmであった。このCuの微細線及びPETフィルムを上下の2つの透明電極層及び基材層として使用した。この2つの透明電極層の間に参考例1で製造したポリL乳酸を延伸倍率4.5倍で一軸延伸した6μmの厚みのポリ乳酸系透明圧電フィルムを、延伸方向がタッチパネルの短手方向に対して0°になるように位置させて、透明絶縁性接着剤(パナック(株)社製 PDS1)をその両面に適用することによって、これらを積層させた。その透明絶縁性接着層の厚みは、両側共に5μmであった。そして、8インチ(124mm×165mm)の大きさの実施例1のタッチパネル用積層体を得た。
【0058】
この際に、タッチパネルの短手方向と、Cuの複数の微細線の伸びる方向との角度は、一方の透明電極層では60°であり、他方の透明電極層では30°であった。なお、上側の透明電極層のCuの複数の微細線の伸びる方向と、下側の透明電極層のCuの複数の微細線の伸びる方向とは、互いに直交させた。
【0059】
〈実施例2〉
ポリ乳酸系透明圧電フィルムの延伸方向と、タッチパネルの短手方向との成す角度を45°にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2のタッチパネル用積層体を得た。
【0060】
〈実施例3〉
保護層として厚さ0.7mmのガラス基材を、上記の透明絶縁性接着剤を用いて、実施例1の積層体の一方のPETフィルム上に積層させた。このガラス基材とPETフィルムとの間の接着剤層の厚みは、5μmであった。
【0061】
〈比較例1〉
50μmの厚みを有するポリ乳酸系透明圧電フィルムを使用したこと以外は実施例1と同様にして、比較例1のタッチパネル用積層体を得た。
【0062】
〈比較例2〉
透明絶縁性接着層の厚みを共に10μmにしたこと以外は比較例1と同様にして、比較例2のタッチパネル用積層体を得た。
【0063】
〈比較例3〉
透明絶縁性接着層の厚みを共に25μmにしたこと以外は比較例1と同様にして、比較例3のタッチパネル用積層体を得た。
【0064】
〈参考例1〉
透明絶縁性接着層の厚みを共に10μmにしたこと以外は実施例2と同様にして、参考例1のタッチパネル用積層体を得た。
【0065】
《評価》
市販のミシンを改造して、一定に荷重をかけることができる押圧装置を作製した。これを用いて各例のタッチパネル用積層体の微細線上に0.5kgの荷重(押圧部分;5mmφ、3Rのゴム製)をかけることで、各例の出力電圧(Vp−p)の比較を検討した。この際に、荷重をかけた位置の出力電圧と同時に、その隣接する位置の微細線から検出される出力電圧も複数点で測定することで、荷重をかけた位置の識別性を評価した。これをタッチパネル用積層体の3つの位置(n1〜n3)で行い、位置の差による出力電圧のバラツキも評価した。
【0066】
《結果》
結果を以下の表1に示す。
【0067】
【表1】
【0068】
実施例1及び2と参考例1とを比較すると、接着剤層の厚さが小さい実施例1及び2の方が高い検出感度を得ることができた。また、実施例1及び2の方が、押圧位置の平均出力電圧(S)と隣接する位置の平均出力電圧(N)との間での出力電圧の比(S/N比)が大きかったため、実施例1及び2の方が荷重をかけた場所の識別性に優れていることが分かった。
【0069】
また、実施例1及び実施例2を比較すると、ポリ乳酸系透明圧電フィルムの延伸方向がタッチパネルの短手方向に対して0°の角度である実施例1の方が、出力電圧のバラツキ(最大値と最小値の差)が小さいかったため、実施例1の方が安定的に出力電圧を得られることが分かった。
【0070】
実施例1及び2と比較例1とを比較すると、薄い圧電フィルムを使用した実施例1及び2の方が高い検出感度を与えることができた。また、実施例1及び2の方が、比較例1よりも、荷重をかけた場所の識別性(S/N比)に優れていることが分かった。これは、比較例1では、ポリ乳酸系透明圧電フィルムの厚さが厚くフィルムのコシが強いため、フィルムの追随が起こりづらかったことによるものと考えられる。また、比較例2及び3については、接着剤層の厚みが厚く検出感度が低くなったものと考えられる。
【0071】
本発明の積層体に保護層を設けた実施例3は、実施例1よりは出力電圧が低下しているものの、タッチパネルとして機能することを示している。