【解決手段】バリ取り装置3は、打抜部材9(電磁鋼板W)の積層体10の積層方向に交差する軸線Ax2まわりに回転可能であり、打抜部材9A(最外層の電磁鋼板W)の外周縁9tに接するように配置された第一ブラシ32と、軸線Ax2まわりに第一ブラシ32を回転させる第一回転駆動部34と、積層方向に沿って打抜部材9を通る軸線Ax1まわりに、積層体10と当該第一ブラシ32とを相対的に回転させる第二回転駆動部35と、外周縁9tに接する部分が積層体10の内層側に動く方向に第一ブラシ32を回転させるように第一回転駆動部34を制御することを実行するコントローラ100と、を備える。
前記制御部は、前記積層体と前記第一ブラシとの相対的な回転方向を逆転させるように前記第二回転駆動部を制御することをさらに実行する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のバリ取り装置。
前記制御部は、前記第一ブラシに作用するトルクが所定値以上となったときに、前記第一ブラシの回転を停止させるように前記第一回転駆動部を制御することをさらに実行する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のバリ取り装置。
前記第二軸線まわりに前記積層体と前記第一ブラシとを相対的に回転させることは、前記第二軸線まわりに前記積層体を回転させることを含む、請求項10に記載の積層鉄心の製造方法。
前記外周縁に接する部分が前記積層体の内層側に動く方向に前記第一ブラシが回転し、前記最外層の電磁鋼板の表面の外周部分に第二ブラシが接触した状態で、前記第二軸線まわりに前記積層体を回転させる、請求項11に記載の積層鉄心の製造方法。
前記第二軸線まわりに、前記積層体と前記第一ブラシとを相対的に回転させた後に、前記積層体と前記第一ブラシとの相対的な回転方向を逆転させることを更に含む、請求項10〜12のいずれか一項に記載の積層鉄心の製造方法。
前記第一ブラシを前記外周縁に接するように配置することは、前記第一軸線が前記積層方向において前記最外層の電磁鋼板よりも外側に位置するように、前記第一ブラシを配置することを含む、請求項10〜13のいずれか一項に記載の積層鉄心の製造方法。
前記第一ブラシに作用するトルクが所定値以上となったときに、前記第一ブラシの回転を停止させることを更に含む、請求項10〜15のいずれか一項に記載の積層鉄心の製造方法。
前記第一ブラシが接する前記最外層の電磁鋼板の表面のうち当該第一ブラシ側の部分に向かうように開口する第一ノズルと、当該第一ブラシが接する前記積層体の外周面のうち当該第一ブラシ側の部分に向かうように開口する第二ノズルと、を有するバキューム装置が作動した状態で、前記外周縁に接する部分が前記積層体の内層側に動く方向に前記第一ブラシを回転させる、請求項10〜17のいずれか一項に記載の積層鉄心の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図面の説明においては、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。本実施形態に係るバリ取り装置は、モータコアを製造する際、モータコアの積層体からバリ等の異物を除去するための装置である。
【0011】
〔モータコアの構成〕
まず、
図1及び
図2を参照して、モータコア1(積層鉄心)の構成について説明する。モータコア1は、モータ(電動機)のロータ(回転子)用のコアである。ロータは、モータコア1と、モータコア1に挿入されるシャフト(不図示)とを有する。
図1及び
図2に示されるように、モータコア1は、積層体10と、複数の永久磁石12と、複数の樹脂材14と、を備えている。
【0012】
積層体10は、電磁鋼板Wの積層体である。積層体10は、電磁鋼板Wから所定形状(例えば円形)に打ち抜かれた打抜部材9の積層体であり、円柱状の外形を呈している。積層体10の最外層の打抜部材9の表面9s(隣接する打抜部材9の逆側の面)は、積層体10の端面(図示の上面及び下面)を構成している。以下では、最外層の打抜部材9のうち、図示上側の打抜部材を「打抜部材9A」といい、図示下側の打抜部材を「打抜部材9B」という。
【0013】
打抜部材9の積層方向(以下、単に「積層方向」という。)において隣り合う打抜部材9同士は、カシメ部10aにおいて互いに接合(締結)されている。なお、打抜部材9同士の接合手法は、かしめに限られない。例えば、複数の打抜部材9同士は、接着剤又は樹脂材を用いて互いに接合されていてもよいし、溶接によって互いに接合されていてもよい。
【0014】
積層体10は、積層方向に沿う貫通孔10bと、複数(例えば、6つ)の貫通孔10cとを有する。貫通孔10bは、シャフトを挿入するための孔であり、積層体10の中心部に位置している。貫通孔10bの内面には、周方向に並ぶ複数(例えば、3つ)の凸部10dが設けられている。凸部10dは、シャフトに設けられた溝(不図示)に嵌まり込む。これにより、シャフトと積層体10との相対的な回転が防止される。
【0015】
複数の貫通孔10cは、複数の永久磁石12をそれぞれ挿入するための孔であり、貫通孔10bを取り囲むように配置されている。各貫通孔10cは、積層方向から見て、積層体10の中心側に膨らむように湾曲した形状を呈している。隣り合う貫通孔10c同士の境界の壁部10eは、積層体10の外周面10sに沿う壁部10fとT字状に交わっている。
【0016】
永久磁石12は、貫通孔10cに挿入されている。貫通孔10cには、一つの永久磁石12が挿入されていてもよいし、複数の永久磁石12が挿入されていてもよい。
【0017】
樹脂材14は、永久磁石12が挿入された状態の貫通孔10c内に充填されており、永久磁石12を貫通孔10c内に固定する。樹脂材14としては、例えば熱硬化性樹脂が挙げられる。熱硬化性樹脂の具体例としては、例えば、フィラーと、エポキシ樹脂と、硬化促進剤と、添加剤とを含む樹脂組成物が挙げられる。添加剤としては、離型剤、難燃剤、応力低下剤等が挙げられる。なお、樹脂材14としては、貫通孔10c内に充填可能であればいかなる樹脂材であってもよいので、例えば熱可塑性樹脂であってもよい。
【0018】
〔モータコアの製造方法〕
上述したモータコア1は、次のように製造される。まず、プレス装置(不図示)を用いて電磁鋼板Wから打ち抜いた複数の打抜部材9を積層して積層体10を形成する。このときに、カシメ部10aを形成して複数の打抜部材9同士を接合してもよい。次に、積層体10の貫通孔10cに永久磁石12を挿入する。その後、例えば、
図3に示されるように、積層体10の端面にカルプレート11を接触させ、モールド装置2を用いて貫通孔10c内に樹脂材14を充填する。
【0019】
モールド装置2は、カルプレート11を端面に接触させた積層体10を積層方向に挟持(圧締め)するモールドプレス21と、複数のプランジャ(不図示)とを備えている。モールドプレス21は、上型21a及び下型21bを備えている。上型21aには、当該積層体10の貫通孔10cに注入するための樹脂材14を収容する複数の樹脂溜めポット(不図示)が設けられている。複数の樹脂溜めポットは、それぞれ、カルプレート11に形成されたランナ(不図示)を介して積層体10の貫通孔10cに連通する。複数のプランジャは、各樹脂溜めポット内に配置された樹脂材14を貫通孔10cに向けて押し出す。
【0020】
モールド装置2を用いて貫通孔10c内に樹脂材14を充填する場合、まず、加熱された状態のモールドプレス21(上型21a及び下型21b)によって、積層体10を挟持する。次に、各樹脂溜めポット内の樹脂材14を貫通孔10cに向けて押し出す。これにより、加熱されて溶融状態となった樹脂材14がカルプレート11のランナを介して貫通孔10cに注入される。以上により、モータコア1が製造される。
【0021】
〔バリ取り装置〕
上述したモータコア1の製造工程においては、貫通孔10cに沿って押し出された樹脂材14がカルプレート11と打抜部材9Aとの間、又は下型21bと打抜部材9Bとの間に浸入し、バリ状の異物(以下、「樹脂バリ」という。)となって積層体10の端面に残留する場合がある。以下、
図4〜
図8を参照して、樹脂バリを除去するためのバリ取り装置について説明する。
図4に示されるように、バリ取り装置3は、装置本体部30と、装置本体部30を制御するコントローラ100(制御部)と、モニタ200と、を備えている。
【0022】
装置本体部30は、積層体10を保持する保持部31と、当該積層体10の打抜部材9A又は打抜部材9Bの外周縁9tに接するように配置された第一ブラシ32と、打抜部材9A又は打抜部材9Bの表面9sの外周部分に接するように配置された第二ブラシ33と、第一ブラシ32を回転させる第一回転駆動部34と、積層体10と第一ブラシ32とを相対的に回転させる第二回転駆動部35と、を備えている。
【0023】
図4〜
図6に示されるように、保持部31は、積層方向に沿って打抜部材9を通る軸線Ax1(第二軸線)まわりに回転可能となるように、積層体10を保持している。軸線Ax1は、例えば、打抜部材9の中心を通り、積層体10の中心軸線Ax0(
図1及び
図2参照)と一致している。保持部31は、積層方向において積層体10を挟む上部ユニット31a及び下部ユニット31bを有している。
【0024】
上部ユニット31aは、可動部61と、ベース部62とを含む。
図6に示されるように、可動部61は、積層体10の上側の端面(打抜部材9Aの表面9s)の中央部に接する。ベース部62は、軸線Ax1まわりに回転自在となるように、例えばベアリング等の軸受部材を介して可動部61を保持する。
【0025】
下部ユニット31bは、可動部63と、ベース部64とを含む。可動部63は、積層体10の下側の端面(打抜部材9Bの表面9s)の中央部に接する。可動部63は、上方に突出した凸部63aを有する。凸部63aは、積層体10の貫通孔10bに嵌合する凸部63aを有する。凸部63aの外周には、複数の凸部10dにそれぞれ対応する複数の溝部が形成されている。複数の溝部にそれぞれ凸部10dが嵌まり込むことによって、可動部63から積層体10に回転を伝達することが可能となっている。ベース部64は、軸線Ax1まわりに回転自在となるように、例えばベアリング等の軸受部材を介して可動部63を保持する。
【0026】
第一ブラシ32は、
図4、
図5及び
図7(a)に示されるように、積層方向に交差する第一軸線(例えば水平な軸線Ax2)まわりに回転可能であり、上述したように、積層体10の打抜部材9A又は打抜部材9Bの外周縁9tに接するように配置されている。以下、第一ブラシ32が接する打抜部材9A又は打抜部材9Bを、「ブラッシング対象の打抜部材9」という場合がある。
【0027】
第一ブラシ32は、軸部32aと、ブラシ本体部32bとを有している。軸部32aは、軸線Ax2に沿った状態で軸線Ax2まわりに回転可能となるように保持部31に保持されている。例えばブラシ本体部32bは、軸部32aの外周から放射状に延びた多数の毛状体により形成されている。毛状体は、例えばアクリル等の樹脂材料によって構成されている。
【0028】
第一ブラシ32は、ブラシ本体部32bの外周(ブラシ本体部32bを形成する毛状体の先端部)が、ブラッシング対象の打抜部材9の外周縁9tに接するように配置されている。例えば第一ブラシ32は、ブラシ本体部32bの外周が外周縁9tに接する際よりも、所定距離(例えば
図7(a)中の距離L1)だけ軸線Ax2を積層体10の回転中心側にシフトさせた位置に配置されている。軸線Ax2は、積層方向から見て、ブラッシング対象の打抜部材9の外周縁9tよりも外側に位置している。また、軸線Ax2は、積層方向において、ブラッシング対象の打抜部材9よりも外側に位置している。
【0029】
装置本体部30は、複数の第一ブラシ32を備えていてもよい。
図4及び
図5に示されるように、本実施形態において、装置本体部30は、4個の第一ブラシ32を備えている。以下では、4個の第一ブラシ32を第一ブラシ32A,32B,32C,32Dとして区別する場合がある。
【0030】
第一ブラシ32A,32Bは、ブラシ本体部32bが打抜部材9Aの外周縁9tに接するように配置されている。軸線Ax2は、打抜部材9Aよりも所定距離(例えば
図7(a)中の距離L2)だけ上方に位置している。第一ブラシ32A,32Bは、打抜部材9Aの外周縁9tに沿って並んでいる。例えば第一ブラシ32A,32Bは、打抜部材9Aの外周縁9tを二等分するように配置されている。第一ブラシ32A,32Bは、ベース部62の下方において、可動部61の周りに配置されており、それぞれの軸部32aは、軸線Ax2まわりに回転可能となるようにベース部62に保持されている。
【0031】
第一ブラシ32C,32Dは、ブラシ本体部32bが打抜部材9Bの外周縁9tに接するように配置されている。軸線Ax2は、打抜部材9Bよりも所定距離(例えば、
図7(a)中の距離L2と同じ距離)だけ下方に位置している。第一ブラシ32C,32Dは、ブラシ本体部32bが打抜部材9Bの外周縁9tに沿って並んでいる。例えば第一ブラシ32C,32Dは、打抜部材9Bの外周縁9tを二等分するように配置されている。第一ブラシ32C,32Dは、ベース部64の上方において、可動部63の周りに配置されており、それぞれの軸部32aは、軸線Ax2まわりに回転可能となるようにベース部64に保持されている。
【0032】
なお、第一ブラシ32C,32Dは、積層方向から見て、第一ブラシ32A,32Bと重ならない位置に配置されていてもよい。例えば第一ブラシ32C,32Dは、軸線Ax1まわりで第一ブラシ32A,32Bと90°ずれた位置に配置されている。
【0033】
第二ブラシ33は、ブラッシング対象の打抜部材9の表面9sの外周部分に接するように配置されている。外周部分とは、表面9sにおいて外周縁9tに接する環状部分である。第二ブラシ33は、ブラシベース33aと、ブラシ本体部33bとを有している。ブラシベース33aは、表面9sに対向した状態で保持部31に保持されている。ブラシ本体部33bは、ブラシベース33aから表面9s側に延びた多数の毛状体を有している。毛状体は、例えばアクリル等の樹脂材料によって構成されている。第二ブラシ33は、ブラシ本体部33bの先端部(ブラシ本体部33bを形成する毛状体の先端部)が、ブラッシング対象の打抜部材9の表面9sの外周部分に接するように配置されている。
【0034】
装置本体部30は、複数の第二ブラシ33を備えていてもよい。
図4及び
図5に示されるように、本実施形態において、装置本体部30は、4個の第二ブラシ33を備えている。以下では、4個の第一ブラシ32を第二ブラシ33A,33B,33C,33Dとして区別する場合がある。
【0035】
第二ブラシ33A,33Bは、ブラシ本体部33bが打抜部材9Aの表面9sの外周部分に接するように配置されている。第二ブラシ33A,33Bは、打抜部材9Aの外周縁9tに沿って並んでいる。例えば第二ブラシ33A,33Bは、打抜部材9Aの表面9sの外周部分を、第一ブラシ32A,32Bの間で二等分するように配置されている。第二ブラシ33A,33Bは、ベース部62の下方において、可動部61の周りに配置されており、それぞれのブラシベース33aはベース部62に保持されている。
【0036】
第二ブラシ33C,33Dは、ブラシ本体部33bが打抜部材9Bの表面9sの外周部分に接するように配置されている。第二ブラシ33C,33Dは、打抜部材9Bの外周縁9tに沿って並んでいる。例えば第二ブラシ33C,33Dは、打抜部材9Bの表面9sの外周部分を、第一ブラシ32C,32Dの間で二等分するように配置されている。第二ブラシ33C,33Dは、ベース部64の上方において、可動部63の周りに配置されており、それぞれのブラシベース33aはベース部62に固定されている。
【0037】
なお、第二ブラシ33C,33Dは、積層方向から見て、第二ブラシ33A,33Bと重ならない位置に配置されていてもよい。例えば第二ブラシ33C,33Dは、軸線Ax1まわりで第二ブラシ33A,33Bと90°ずれた位置に配置されている。
【0038】
第一回転駆動部34は、軸線Ax2まわりに第一ブラシ32を回転させる。第一回転駆動部34は、例えば、動力源として電動モータ(不図示)を含む。第一回転駆動部34は、動力源と第一ブラシ32との間を切り離し可能なクラッチ34aをさらに含んでいてもよい。
【0039】
上述のように装置本体部30が複数の第一ブラシ32を備える場合、装置本体部30は、複数の第一ブラシ32にそれぞれ対応する複数の第一回転駆動部34を備えていてもよい。
【0040】
第二回転駆動部35は、軸線Ax1まわりに、積層体10と第一ブラシ32とを相対的に回転させる。例えば、第二回転駆動部35は、可動部63を回転させるように下部ユニット31bに設けられており、可動部63を介して積層体10を回転させる。第二回転駆動部35は、例えば、動力源として電動モータを含み、積層体10の回転方向を切り替え可能に構成されている。以下では、
図5における時計まわりの回転を正回転といい、反時計まわりの回転を逆回転という場合がある。
【0041】
第一回転駆動部34が軸線Ax2まわりに第一ブラシ32を回転させ、第二回転駆動部35が軸線Ax1まわりに積層体10を回転させることにより、積層体10のブラッシング対象部分(第一ブラシ32が接する部分)の第一ブラシ32に対する相対的な移動軌跡kは、軸線Ax2に沿う方向に対して傾斜した状態となる(
図7(b)参照)。移動軌跡kの勾配の大きさは、第一ブラシ32の回転速度V1を積層体10の回転速度V2で除した無次元の係数値(以下、「勾配係数値」という。)で表すことが可能である。勾配係数値は、5〜104であり、30〜104であってもよく、70〜104であってもよい。例えば、勾配係数値を104以下にすることで、ブラッシングに要する時間が過度に長くなることを抑制できる。また、勾配係数値を5以上にすることで、積層方向に沿った動作による第一ブラシ32の剥離力を樹脂バリにしっかりと作用させることができる。
【0042】
装置本体部30は、バキューム装置36を備えていてもよい。バキューム装置36は、少なくとも第一回転駆動部34が第一ブラシ32を回転させる際に作動する。バキューム装置36は、第一ブラシ32と並んで配置された第一ノズル36a及び第二ノズル36bを有している。
【0043】
第一ノズル36a及び第二ノズル36bは、積層体10の周方向において第一ブラシ32の近傍に配置されている。第二回転駆動部35が積層体10を一方向のみに回転させる場合、第一ノズル36a及び第二ノズル36bは、第一ブラシ32に対し、当該第一ブラシ32のブラッシング対象部分の移動方向における下流側に位置するように配置されていてもよい。また、第二回転駆動部35が積層体10の回転方向を切り替える場合、第一ノズル36a及び第二ノズル36bは、最初の回転方向において上記下流側に位置するように配置されていてもよい。
【0044】
上述のように装置本体部30が複数の第一ブラシ32を備える場合、装置本体部30は、複数の第一ブラシ32にそれぞれ対応する複数のバキューム装置36を備えていてもよい。第二回転駆動部35が積層体10の回転方向を切り替える場合、複数のバキューム装置36は、それぞれの回転方向において、いずれかの第一ノズル36a及び第二ノズル36bが上記下流側に位置するように配置されていてもよい。例えば、複数のバキューム装置36は、第一ブラシ32A,32Cの近傍に配置された第一ノズル36a及び第二ノズル36bが、積層体10の正回転において上記下流側に位置し、第一ブラシ32B,32Dの近傍に配置された第一ノズル36a及び第二ノズル36bが、積層体10の逆回転において上記下流側に位置するように配置されていてもよい。
【0045】
また、
図4及び
図7(a)に示されるように、第一ノズル36aは、当該第一ブラシ32が接する打抜部材9Aの表面9sのうち当該第一ブラシ32側の部分に向かうように開口している。換言すると、第一ノズル36aは、当該第一ブラシ32のブラッシング対象部分の近傍のうち表面9s側に開口している。第一ブラシ32(例えば、第一ブラシ32A)の近傍に配置された第二ノズル36bは、当該第一ブラシ32が接する積層体10の外周面10sのうち当該第一ブラシ32側の部分に向かうように開口している。換言すると、第二ノズル36bは、当該第一ブラシ32のブラッシング対象部分の近傍のうち外周面10s側に開口している。
【0046】
装置本体部30は、昇降駆動部37をさらに備えていてもよい。昇降駆動部37は、保持部31への積層体10の配置に際して、上部ユニット31aを昇降させる。昇降駆動部37は、例えば動力源としてエアシリンダを含み、積層体10の保持力(保持部31を下方に押し付ける力)を調整可能であってもよい。
【0047】
装置本体部30は、第一ブラシ32の位置を調節する位置調節部38をさらに備えていてもよい。位置調節部38は、例えば動力源として電動モータを含み、軸線Ax2と積層体10との間の距離を変化させるように第一ブラシ32を移動させる。例えば、位置調節部38は、打抜部材9の表面9sに平行な方向に沿って第一ブラシ32を移動させる。ブラシ本体部32bの外周が外周縁9tに接する際における軸線Ax2と積層体10との距離を基準として(以下、この距離を「基準距離」という。)、位置調節部38による第一ブラシ32の可動範囲は、軸線Ax2と積層体10との距離を基準距離未満から基準距離超の範囲で変化させ得るように設定されている。
【0048】
上述のように装置本体部30が複数の第一ブラシ32を備える場合、装置本体部30は、複数の第一ブラシ32にそれぞれ対応する複数の位置調節部38を備えていてもよい。
【0049】
また、装置本体部30は、センサ40(第二センサ)を備えていてもよい。
図4及び
図8(a)に示されるように、センサ40は、表面9sの外周部分と対向する位置に配置され、表面9sの外周部分までの距離を検出する。この検出値の変化に基づいて、積層方向における外周縁9tの変位を検出することが可能である。
【0050】
バリ取り装置3は、設定用治具50をさらに備えていてもよい。設定用治具50は、上述した位置調節部38による位置調節に用いられる。設定用治具50は、ダミーコア51と、ダミーコア51に設けられたセンサ52(第一センサ)と、を備えている。ダミーコア51は、積層体10と同じ寸法形状に構成されている。センサ52は、例えばロードセルであり、ダミーコア51の端面の外周縁に作用する力の変化を検出し得るように配置されている。この構成により、センサ52の検出値に基づいて、ダミーコア51の端面の外周縁に対する第一ブラシ32の接触を検出することが可能である。
【0051】
モニタ200は、例えば液晶モニタ等を含み、ユーザに対する情報表示に用いられる。モニタ200は、コントローラ100と一体化されていてもよい。
【0052】
コントローラ100は、外周縁9tに接する部分が積層体10の内層側に動く方向に第一ブラシ32を回転させるように第一回転駆動部34を制御することを実行するように構成されている。また、コントローラ100は、積層体10と第一ブラシ32との相対的な回転方向を逆転させるように第二回転駆動部35を制御することをさらに実行するように構成されていてもよい。コントローラ100は、センサ52が外周縁9tの位置への第一ブラシ32の到達を検出したときよりも、第一ブラシ32の回転中心を積層体10に近づけるように位置調節部38を制御することをさらに実行するように構成されていてもよい。コントローラ100は、第一ブラシ32に作用するトルクが所定値以上となったときに、第一ブラシ32の回転を停止させるように第一回転駆動部34を制御することをさらに実行するように構成されていてもよい。
【0053】
例えば
図9に示されるように、コントローラ100は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、基準探索制御部101と、第一ブラシ位置設定部102と、昇降制御部103と、第一ブラシ位置制御部104と、第一ブラシ回転制御部105と、第一ブラシトルク監視部106と、積層体回転制御部107と、積層体高さ情報評価部108とを有している。
【0054】
基準探索制御部101は、外周縁9tに到達する際の第一ブラシ32の位置を探索する。例えば基準探索制御部101は、設定用治具50が保持部31に保持された状態にて第一ブラシ32の位置を探索する。例えば、基準探索制御部101は、第一ブラシ32をダミーコア51に近づける方向に移動させるように位置調節部38を制御し、ダミーコア51の端面の外周縁に第一ブラシ32が到達したか否かを示す情報をセンサ52から取得し、ダミーコア51の端面の外周縁に第一ブラシ32が到達した際の第一ブラシ32の位置を取得する。以下、この位置を「到達位置」という。
【0055】
第一ブラシ位置設定部102は、積層体10をブラッシングする際の第一ブラシ32の位置(以下、「ブラッシング時の位置」という。)を設定する。例えば、第一ブラシ位置設定部102は、第一ブラシ32が上記到達位置にあるときよりも、軸線Ax2を積層体10に近づけるようにブラッシング時の位置を設定する。より具体的に、第一ブラシ位置設定部102は、第一ブラシ32が上記到達位置にあるときに比較して、所定距離(例えば
図7(a)中の距離L1)だけ軸線Ax2を積層体10の回転中心側にシフトさせた位置をブラッシング時の位置として設定し、記憶部109に書き込む。
【0056】
昇降制御部103は、保持部31に積層体10又はダミーコア51を配置する際に、保持部31(上部ユニット31aのベース部62)を昇降させるように昇降駆動部37を制御する。また、昇降制御部103は、保持部31が所定の保持力によって積層体10を保持するように昇降駆動部37を制御する。所定の保持力は、例えば、積層体10の強度上の許容範囲内にて、積層体10の回転、又は第一ブラシ32及び第二ブラシ33との接触による積層体10の傾動(軸線Ax1に対する中心軸線Ax0の傾動)を防ぐように、事前の条件出しにより最適化されている。
【0057】
第一ブラシ位置制御部104は、第一ブラシ32をブラッシング時の位置に配置するように位置調節部38を制御することと、第一ブラシ32をブラッシング時の位置から退避させるように位置調節部38を制御することとを実行する。
【0058】
第一ブラシ回転制御部105は、外周縁9tに接する部分が積層体10の内層側に動く方向に第一ブラシ32を回転させるように第一回転駆動部34を制御することと、第一ブラシ32の回転を停止させるように第一回転駆動部34を制御することとを実行する。
【0059】
第一ブラシトルク監視部106は、第一ブラシ32に作用するトルクが所定値以内であるか否かを監視し、第一ブラシ32に作用するトルクが所定値以上となったときに、第一ブラシ32の回転を停止させるための指令信号を第一ブラシ回転制御部105に送信する。第一ブラシ32に作用するトルクは、第一回転駆動部34の電動モータへの出力電流等に基づいて検出可能である。
【0060】
積層体回転制御部107は、軸線Ax1まわりに、積層体10と第一ブラシ32とを相対的に回転させるように第二回転駆動部35を制御することと、積層体10と第一ブラシ32との相対的な回転方向を逆転させるように第二回転駆動部35を制御することと、積層体10と第一ブラシ32との相対的な回転を停止させるように第二回転駆動部35を制御することと、を実行する。
【0061】
積層体高さ情報評価部108は、積層体10の打抜部材9Aの外周縁9tの変位に関する情報を取得する。例えば、積層体高さ情報評価部108は、ブラッシング前及びブラッシング後の積層体10の高さをそれぞれセンサ40から取得する。より具体的に、積層体高さ情報評価部108は、積層体10の回転の位相情報(所定の状態を基準にした回転角度情報)を積層体回転制御部107から取得し、ブラッシング前及びブラッシング後のいずれにおいても、所定位相に対応する測定位置P(
図8参照)における外周縁9tの高さをセンサ40から取得する。また、積層体高さ情報評価部108は、ブラッシング前後の積層体10の高さの変位が所定値以内であるか評価し、所定値以上である場合には、その旨をユーザに報知するためのデータをモニタ200に出力する。
【0062】
コントローラ100は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成されている。例えば、
図10に示されるように、コントローラ100は、回路91を有している。回路91は、一つ又は複数のプロセッサ92と、メモリ93と、ストレージ94と、入出力ポート95と、タイマー96とを有している。入出力ポート95は、第一回転駆動部34と、第二回転駆動部35と、昇降駆動部37と、位置調節部38と、センサ40等との間で電気信号の入出力を行う。タイマー96は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。
【0063】
ストレージ94は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有している。記憶媒体は、各機能モジュールを構成するためのプログラムを記録している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ93は、ストレージ94の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ92による演算結果を一時的に記録する。プロセッサ92は、メモリ93と協働して上記プログラムを実行することで、各機能モジュールを構成する。
【0064】
なお、コントローラ100のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えばコントローラ100の各機能モジュールは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0065】
〔バリ取り方法〕
次に、バリ取り方法の一例として、
図11及び
図12を参照して、コントローラ100の制御に応じてバリ取り装置3が実行する各処理手順を説明する。
【0066】
(ブラッシング位置設定処理)
図11は、第一ブラシ32のブラッシング時の位置を設定する処理を示すフローチャートである。この手順は、設定用治具50が保持部31に保持された状態で実行される。コントローラ100は、まずステップS01,S02を順に実行する。ステップS01では、基準探索制御部101が、第一ブラシ32のダミーコア51に近づける方向への移動を開始させるように位置調節部38を制御する。ステップS02では、ダミーコア51の端面の外周縁に到達したことがセンサ52により検出されるのを基準探索制御部101が待機する。
【0067】
次に、コントローラ100は、ステップS03,S04,S05を順に実行する。ステップS03では、第一ブラシ位置設定部102が、基準探索制御部101から上記到達位置の情報を取得する。ステップS04では、基準探索制御部101が、第一ブラシ32の移動を停止させるように位置調節部38を制御する。ステップS05では、第一ブラシ位置設定部102が、第一ブラシ32が上記到達位置にあるときに比較して、所定距離(例えば
図7(a)の距離L1)だけ軸線Ax2を積層体10の回転中心側にシフトさせた位置をブラッシング時の位置として設定し、記憶部109に書き込む。以上により、ブラッシング位置設定処理が完了する。
【0068】
なお、ブラッシング位置設定処理は、次に説明するブラッシング処理の前に行われる。コントローラ100は、積層体10ごとにブラッシング位置設定処理を実行してもよいし、複数の積層体10ごとにブラッシング位置設定処理を実行してもよい。また、コントローラ100は、ブラッシング対象の積層体10の寸法形状が変わるときにブラッシング位置設定処理を実行し、ブラッシング対象の積層体10の寸法形状が更に変わるまではブラッシング位置設定処理を省略してもよい。
【0069】
(ブラッシング処理)
図12は、積層体10に対するブラッシング処理を示すフローチャートである。
図12に示されるように、コントローラ100は、まず、ステップS11を実行する。ステップS11では、下部ユニット31b上に積層体10が配置された状態にて、上部ユニット31aのベース部62を下降させるように、昇降制御部103が昇降駆動部37を制御する。これにより、第二ブラシ33が打抜部材9の表面9sの外周部分に接触する。
【0070】
次に、コントローラ100は、ステップS12を実行する。ステップS12では、積層体回転制御部107が、軸線Ax1まわりの積層体10と第一ブラシ32との相対的な回転を開始させるように第二回転駆動部35を制御する。例えば、積層体回転制御部107は、軸線Ax2まわりの積層体10の正回転を開始させるように第二回転駆動部35を制御する。以後、積層体回転制御部107は、継続して積層体10を正回転させるように第二回転駆動部35を制御する。
【0071】
次に、コントローラ100は、ステップS13を実行する。ステップS13では、積層体高さ情報評価部108が、積層体10の回転の位相情報を積層体回転制御部107から取得し、所定位相に対応する測定位置Pにおける外周縁9tの高さをセンサ40から取得する。積層体高さ情報評価部108は、外周縁9tに沿って並ぶ複数の測定位置Pにおける外周縁9tの高さを取得してもよい(
図8参照)。
【0072】
次に、コントローラ100は、ステップS14を実行する。ステップS14では、第一ブラシ回転制御部105が、軸線Ax2まわりの第一ブラシ32の回転を開始させるように第一回転駆動部34を制御する。この際に、第一ブラシ回転制御部105は、外周縁9tに接する部分が積層体10の内層側に動く方向に第一ブラシ32を回転させるように第一回転駆動部34を制御する。以後、第一ブラシ回転制御部105は、継続して同一方向に第一ブラシ32を回転させるように第一回転駆動部34を制御する。
【0073】
なお、コントローラ100は、次に説明するステップS15よりも前にステップS14を実行すればよく、例えば、ステップS12,S13よりも前にステップS14を実行してもよい。
【0074】
続けて、コントローラ100は、ステップS15を実行する。ステップS15では、第一ブラシ位置制御部104が、第一ブラシ32を記憶部109に記憶されたブラッシング時の位置に配置するように位置調節部38を制御する。これにより、第一ブラシ32が外周縁9tに接触し、ブラッシングが開始される。以後、外周縁9tに接する部分が積層体10の内層側に動く方向に第一ブラシ32が回転し、打抜部材9A,9Bの表面9sの外周部分に第二ブラシ33が接触した状態で、軸線Ax1まわりに積層体10が回転する。
【0075】
ブラッシングの開始後、コントローラ100は、ステップS16を実行する。ステップS16では、第一ブラシトルク監視部106が、回転中の第一ブラシ32のトルクが所定値以内であるか否かを判定する。
【0076】
ステップS16において第一ブラシ32に作用するトルクが所定値以上であると判定された場合、コントローラ100は、ステップS25,S26,S27を実行してブラッシング処理手順を完了させる。ステップS25では、第一ブラシ位置制御部104が、第一ブラシ32をブラッシング時の位置から退避させるように位置調節部38を制御する。ステップS26では、第一ブラシ回転制御部105が第一ブラシ32の回転を停止させるように第一回転駆動部34を制御する。ステップS27では、積層体回転制御部107が積層体10の回転を停止させるように第二回転駆動部35を制御する。以上により、コントローラ100は、ブラッシング処理用の制御を完了する。
【0077】
ステップS16において第一ブラシ32に作用するトルクが所定値以内であると判定された場合、コントローラ100は、ステップS17を実行する。ステップS17では、積層体回転制御部107が、積層体10の一回転が完了したか否かを確認する。積層体10の一回転が完了していないと判定した場合、コントローラ100は、処理をステップS16に戻す。以後、積層体10の一回転が完了するまでは、トルクを監視しながら同一方向の積層体10の回転が継続される。
【0078】
ステップS17において、一回転が完了したと判定された場合、コントローラ100はステップS18を実行する。ステップS18では、予め設定された全サイクルの積層体10の回転が完了したか否かを積層体回転制御部107が判定する。例えば、全サイクルは、2回転(正回転1回及び逆回転1回)に設定されていてもよいし、より多回転に設定されていてもよい。
【0079】
ステップS18において積層体10の回転が全サイクル完了していないと判定された場合、コントローラ100は、ステップS19を実行する。ステップS19では、積層体回転制御部107が、積層体10と第一ブラシ32との相対的な回転方向を逆転させるように第二回転駆動部35を制御する。例えば、積層体回転制御部107は、積層体10の回転を正回転から逆回転あるいは逆回転から正回転に切り替えるように第二回転駆動部35を制御する。以後、全サイクルの積層体10の回転が完了するまでは、回転方向を切り替えながら、ブラッシングが継続される。
【0080】
ステップS18において積層体10の回転が全サイクル完了したと判定された場合、コントローラ100は、ステップS20を実行する。ステップS20では、第一ブラシ位置制御部104が、積層体回転制御部107から積層体10の回転が全サイクル完了した旨の信号を取得し、第一ブラシ32を退避させるように位置調節部38を制御する。
【0081】
次に、コントローラ100は、ステップS21を実行する。ステップS21では、第一ブラシ回転制御部105が、第一ブラシ32の回転を停止させるように第一回転駆動部34を制御する。
【0082】
なお、コントローラ100は、ステップS20よりも後にステップS21を実行すればよく、例えば、次に説明するステップS22,S23よりも後にステップS21を実行してもよい。
【0083】
次に、コントローラ100は、ステップS22を実行する。ステップS22では、積層体高さ情報評価部108が、積層体10の回転の位相情報を積層体回転制御部107から取得するとともに、所定位相に対応する測定位置Pにおける外周縁9tの高さをセンサ40から取得する。所定位相は、ステップS13と同じ値に設定されている。このため、S22においては、ステップS13での測定位置Pと同じ測定位置において外周縁9tの高さが取得される。
【0084】
続けて、コントローラ100は、ステップS23を実行する。ステップS23では、積層体回転制御部107が、積層体10と第一ブラシ32との相対的な回転を停止させるように第二回転駆動部35を制御する。例えば、積層体回転制御部107は、積層体10の回転を停止させるように第二回転駆動部35を制御する。
【0085】
次に、コントローラ100は、ステップS24を実行する。ステップS24では、積層体高さ情報評価部108が、ステップS13,S22で取得した外周縁9tの高さに基づいて、ブラッシング前後の積層体10の高さの変位(例えば、ステップS13で取得された高さとステップS22で取得された高さとの差)が所定値以内であるか否かを判定する。ステップS24において、ブラッシング前後の積層体10の高さの変位が所定値以内である場合、コントローラ100は、ブラッシング処理用の制御を完了する。
【0086】
ステップS24において、ブラッシング前後の積層体10の高さの変位が所定値以上である場合には、コントローラ100は、ステップS28を実行する。ステップS28では、積層体高さ情報評価部108が、積層体10の高さの変位が所定値以上であることをユーザに報知するためのデータをモニタ200に出力する。その後、コントローラ100は、ブラッシング処理用の制御を完了する。
【0087】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、本実施形態に係るバリ取り装置3は、打抜部材9(電磁鋼板W)の積層体10の積層方向に交差する軸線Ax2まわりに回転可能であり、打抜部材9Aの外周縁9tに接するように配置された第一ブラシ32と、軸線Ax2まわりに第一ブラシ32を回転させる第一回転駆動部34と、積層方向に沿って打抜部材9を通る軸線Ax1まわりに、積層体10と第一ブラシ32とを相対的に回転させる第二回転駆動部35と、外周縁9tに接する部分が積層体10の内層側に動く方向に第一ブラシ32を回転させるように第一回転駆動部34を制御することを実行するコントローラ100と、を備えている。
【0088】
上述した樹脂バリは、積層体10における外周縁9tに発生し易い傾向がある。また、外周縁9tに発生した樹脂バリは、例えばモータコア1の回転等によって脱落し易い傾向がある。本実施形態に係るバリ取り装置3によれば、第一ブラシ32が外周縁に接した状態にて、積層方向に沿って打抜部材9を通る軸線Ax1まわりに、積層体10と第一ブラシ32とを相対的に回転させることができる。これにより、外周縁全体に第一ブラシ32を万遍なく接触させ、外周縁に発生した樹脂バリを効率よく除去することができる。また、第一ブラシ32は、外周縁9tに接する部分が積層方向に沿って動くように回転するので、表面9sに付着するように形成された樹脂バリに対して剥離力を付加し易くなる。このため、外周縁9tの樹脂バリをより効果的に除去することが可能となる。さらに、第一ブラシ32は、外周縁9tに接する部分が積層体10の内層側に動くように回転するので、例えば打抜部材9(電磁鋼板W)の剥離等、ブラッシングに伴う不良発生が抑制される。したがって、本実施形態に係るバリ取り装置3は、電磁鋼板Wの積層体10から樹脂バリを除去するのに有用である。
【0089】
本実施形態に係るバリ取り装置3は、複数の第一ブラシ32を備え、複数の第一ブラシ32は、積層方向における積層体10の一方側(例えば、上側の打抜部材9A)の外周縁9tに接する第一ブラシ32(第一ブラシ32A又は第一ブラシ32B)と、積層方向における積層体10の他方側(例えば、下側の打抜部材9B)の外周縁9tに接する第一ブラシ32(第一ブラシ32C又は第一ブラシ32D)とを含んでいてもよい。これにより、積層方向における積層体10の一方側(上側の打抜部材9A)及び他方側(下側の打抜部材9B)の両方の外周縁9tに対して一度にブラッシングを行うことができる。
【0090】
また、複数の第一ブラシ32は、積層方向における積層体10の一方側(打抜部材9A又は打抜部材9B)の外周縁9tに接する複数の第一ブラシ32(第一ブラシ32A,32B、又は第一ブラシ32C,32D)を含んでいてもよい。これにより、積層体10の周方向の複数個所でブラッシングを同時に進行させることが可能となる。したがって、効率よく樹脂バリを除去することができる。
【0091】
第二回転駆動部35は、軸線Ax1まわりに積層体10を回転させてもよい。この構成によれば、第一回転駆動部34により駆動される第一ブラシ32をさらに軸線Ax1まわりに回転させるのに比べ、装置構成を簡素化することができる。
【0092】
また、積層体10のブラッシング対象部分の第一ブラシ32に対する相対的な移動軌跡kの勾配係数値は、5〜104であってもよい。勾配係数値を104以下にすることで、ブラッシングに要する時間が過度に長くなることを抑制できる。また、勾配係数値を5以上にすることで、積層方向に沿った動作による第一ブラシ32からの剥離力を樹脂バリにしっかり作用させることができる。
【0093】
バリ取り装置3は、打抜部材9Aの表面9sの外周部分に接するように配置された第二ブラシ33をさらに備えていてもよい。例えば、樹脂バリの一部が、剥離しかけた状態で表面9sの外周部分に残留する場合がある。第二ブラシ33によれば、このように表面9sの外周部分において剥離しかけた樹脂バリの残留部分を効果的に除去することができる。
【0094】
コントローラ100は、積層体10と第一ブラシ32との相対的な回転方向を逆転させるように第二回転駆動部35を制御することをさらに実行してもよい。樹脂バリの状態によっては、積層体10の周方向の一方側から第一ブラシ32を接触させる場合と、積層体10の周方向の他方側から第一ブラシ32を接触させる場合とで、除去し易さに差が生じる場合がある。積層体10と第一ブラシ32との相対的な回転方向を逆転させることにより、積層体10の周方向の一方側及び他方側から外周縁9tに第一ブラシ32を接触させることができる。そのため、樹脂バリの状態によらず、より確実に樹脂バリを除去することが可能となる。
【0095】
軸線Ax2は、積層方向において打抜部材9A及び打抜部材9Bよりも外側に位置していてもよい。これにより、第一ブラシ32(毛状体の先端)の反力のベクトルと、打抜部材9の境界面との方向とが一致し難くなる。これにより、打抜部材9の境界面に毛状体の先端が入り込みにくくなる。
【0096】
バリ取り装置3は、第一ブラシ32の位置を調整する位置調節部38と、外周縁9tの位置への第一ブラシ32の到達を検出するためのセンサ52と、をさらに備え、コントローラ100は、センサ52が外周縁9tの位置への第一ブラシ32の到達を検出したときよりも、第一ブラシ32の回転中心を積層体10に近づけるように位置調節部38を制御することをさらに実行してもよい。これにより、外周縁9tに第一ブラシ32がしっかりと押し当てられ、より確実なブラッシングが可能となる。また、センサ52によって検出された位置を基準にするので、第一ブラシ32の押し当て力が過大となることを抑制することができる。
【0097】
コントローラ100は、第一ブラシ32に作用するトルクが所定値以上となったときに、第一ブラシ32の回転を停止させるように第一回転駆動部34を制御することをさらに実行してもよい。これにより、例えば第一ブラシ32の損傷等に起因して積層体10に過剰な力が作用することを抑制することができる。
【0098】
バリ取り装置3は、積層方向における外周縁9tの変位を検出するセンサ40をさらに備えていてもよい。本実施形態における積層体10の構造及び第一ブラシ32の構成から、積層体10に不具合が発生する場合、打抜部材9A,9Bの周縁部に浮きが発生している可能性が高い。このような周縁部の浮きは、積層方向における外周縁9tの変位に基づいて検出することが可能である。したがって、積層方向における外周縁9tの変位を検出する構成によれば、積層体10に発生する不具合の多くを高い信頼性で検知することができる。
【0099】
バリ取り装置3は、第一ブラシ32と並んで配置された第一ノズル36a及び第二ノズル36bを有するバキューム装置36をさらに備え、第一ノズル36aは、当該第一ブラシ32が接する積層体10の打抜部材9Aの表面9sのうち当該第一ブラシ32側の部分に向かうように開口しており、第二ノズル36bは、当該第一ブラシ32が接する積層体10の外周面10sのうち当該第一ブラシ32側の部分に向かうように開口していてもよい。この場合、ブラッシング方向(第一ブラシ32又は第二ブラシ33との接触部の移動方向)において、接触部を挟む両側に第一ノズル36aの開口及び第二ノズル36bの開口をそれぞれ向けられる。ブラッシングによって積層体10から樹脂バリが脱落する場合、当該樹脂バリは、ブラッシング方向において、接触部を挟む両側に遊離することが考えられる。このため、ブラッシング方向において接触部を挟む両側に第一ノズル36aの開口及び第二ノズル36bの開口をそれぞれ向けておくことにより、積層体10から遊離した樹脂バリの再付着をより確実に抑制することができる。
【0100】
以上、実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、バリ取り装置3は、電磁鋼板の積層体であればいかなる物に対する異物の除去にも適用可能である。例えば、ロータ用のコアの積層体のみでなく、ステータ用のコアの積層体の異物の除去にも適用可能である。第二回転駆動部35は、積層体10を回転させるのに代えて、軸線Ax1まわりに第一ブラシ32を回転させるように構成されていてもよい。