【実施例】
【0022】
例1 浸漬発芽
1−1 浸漬温度及び浸漬時間によるアミノ酸含有量の推移
ソバ種子を一定の温度及び時間にて水に浸漬させることにより、アミノ酸含有量にどのような変化が生じるか調査した。
【0023】
バットに水を2Lいれ、これを恒温恒湿機(エスペック、PR−4J)の庫内に設置した。浸漬液に酸素を供給するため、浸漬エアーポンプを恒温恒湿機外に置き、チューブをケーブル孔に通しバットの溶液中にエアーポンプとストーンを入れた。恒温恒湿機を4℃、10℃及び16℃の温度にそれぞれ設定し、浸漬溶液が目標温度に到達するまで放置した。2015年産栃木県烏山産在来種のソバ種子(丸抜き)を700g秤量し、種籾消毒袋に入れ口を縛り、これを浸漬溶液へ投入した。一定時間(24時間、48時間、72時間及び96時間)放置後、ソバ種子を取り出し液体窒素により瞬間凍結させた。これを50mL容のコニカルチューブに入れ、後日遊離アミノ酸20種の測定を行った。
【0024】
[遊離アミノ酸の測定]
検体5gをホモジナイザーカップへ秤量し、0.1%メルカプトエタノール溶液を22mL加えた。これを10000回転で1分間ホモジナイズした。50mLチューブに移し、氷上に置き4℃で3時間放置した。3時間後、遠心分離とろ過を行い、ろ液1mLに対して1N NaOHを70μL加えた。さらに、1st緩衝液を3mL加えよく攪拌した。これをろ過し、高速アミノ酸分析計(日本電子、JLC−500/v2)で測定した。
【0025】
遊離アミノ酸総量については、4℃、10℃、16℃いずれの浸漬温度においても、浸漬時間が長くなるにつれゆるやかに微増した(
図1A)。GABAについては24時間までに増加し、その後ゆるやかに減少した(
図1B)。
【0026】
2016年産益子産常陸秋そばの種子(丸抜き及び殻あり)を試料として、浸漬時間72時間及び浸漬温度4℃又は16℃にて、上記と同様に試験を行った。遊離アミノ酸の測定結果を
図2に示す。丸抜きと殻ありでは、丸抜きのほうが高い値を示した。
【0027】
1−2 浸漬温度及び浸漬時間による食味変化
実験1−1の結果で成分増加に優れた条件において生産した、2015年産益子産常陸秋そばの種子(殻あり)を原料としたそば麺で官能評価を行い、食味や製麺性にどのような変化があるか調査した。
【0028】
バットに水を2Lいれ、これを恒温恒湿機(エスペック、PR−4J)の庫内に設置した。浸漬液に酸素を供給するため、浸漬エアーポンプを恒温恒湿機外に置き、チューブをケーブル孔に通しバットの溶液中にエアーポンプとストーンを入れた。恒温恒湿機を4℃又は16℃の温度に設定し、浸漬溶液が目標温度に到達するまで放置した。2015年産益子産常陸秋そばの種子(殻あり)を700g秤量し、種籾消毒袋に入れ口を縛り、これを浸漬溶液へ投入した。一定時間(48時間、72時間、96時間)放置後、ソバ種子を取り出しマイクロモルティングシステム(フェニックス社)で60℃一定で攪拌しながら水分が14%になるまで乾燥させた。
【0029】
[官能評価]
そばの官能評価は評価のための訓練を受けた社員4名、そば専門家2名の計6名をパネルとし、そばぎりに対する評価で行った。発芽していない原そばを0点とした比較法で、5段階評価で行い平均点及び各評価項目へのコメントにより評価した。上記で得られたソバ発芽種子試料を自動篩のついた粉砕機(丸七製作所、3号製粉機及び自動篩MF3S)で粉砕し、20メッシュ篩下のものを40目の手篩でふるい、60メッシュ篩下とあわせ混合したものをそば粉とした。そば粉と小麦粉の比率を7対3とし、粉の全体重量に対し45−50%の水を加えそば麺を作成し、1分間ゆでた後冷水でしめたものを官能試験に供した。各浸漬温度及び浸漬時間に対応するそば試料を表1に示す。
【表1】
【0030】
評価結果を表2に示す。表2よりわかるとおり、そば1は他の水準と比べ硬さ及び弾力について良い評価を得た。そば2については、色、香り、味が原そばとかなり異なるが、白く透明感のあるそばとなった。そば3もそば2のようにやや白く透明感のあるそば麺となった。
【表2】
【0031】
例2 断水発芽
2−1 断水工程の導入による成分及び香味の変化、ならびにL−グルタミン酸ナトリウム一水和物水溶液浸漬による遊離アミノ酸及びGABA含有量の変化
<前実験>
断水発芽を導入するにあたり、2015年産益子産常陸秋そばの種子(丸抜き及び殻あり)を試料として、下記のとおり、1)ソバ種子を水へ浸漬させた際の経時的な含水率の挙動、2)発芽する最低の含水率を把握するために前実験を行った。
【0032】
1)含水率の経時推移
ビーカーに水を1Lいれ、これを恒温恒湿機(エスペック、PR−4J)の庫内に設置した。恒温恒湿機を10℃に設定し、ビーカー内の水温が目標温度に到達するまで放置した。丸抜き及び殻ありの試料を20gずつ秤量し、ネットの袋に入れた。これを一斉にビーカーに入れ、完全に沈ませておき、浸漬開始から一時間後まで10分おきにネットをひとつ取り出し、ソバ種子に付着した水分をふきとり重量を測定した。60分から150分までは20分おきに、その後180分後、240分後にサンプリングを行った。同様の実験を、丸抜きのみで6℃と16℃でも行った。測定した重量から含水率を求め、
図3に示した。
【0033】
2)各含水率での発芽率
試料について、殻ありについては3.2g、丸抜きについては3.0gそれぞれ秤量した。プラスチックの80mL容容器に水を10mL程度いれ、3分間浸漬させた後、容器にメッシュをかぶせ勢いよくさかさまにして振り、よく水気を切った。シャーレにろ紙を2枚敷き、蒸留水を3.0mLいれ、これに浸漬させた試料を均等に置いた。シャーレにふたをし、目標含水率に到達するまで、10℃、98%rhで放置した。目標含水率に到達した時点で取り出し、新たなシャーレにろ紙を敷かず、直接試料を置いてこれを20度の恒温機に入れた。72時間放置し、発根及び発芽の確認を行い発芽率を求めた。
【0034】
各含水率における発芽率を
図4に示した。本結果より、丸抜きソバにおいて6〜7割の発芽が見込める含水率35%を「低含水率」とした。一方、
図3の結果より、ソバ種子の含水率が増加しなくなった37%を「高含水率」とした。
【0035】
<本実験>
麦芽製造においては、浸漬時の種子内の水の拡散時間の違いがタンパク質分解に影響することがわかっている。2015年産益子産常陸秋そばの種子(丸抜き)を試料として、このような現象がソバ種子においても適用されるのかを試行した。前実験で求めた発芽する最低の含水率及び吸水する最大の含水率で実験を行った。低含水率条件では、最初の含水率を抑制した状態で発芽させることにより、発芽中に緩慢に水を拡散させることを目的とした。高含水率条件では、浸漬時急速に水を拡散させることを目的とした。これらの水の拡散状況の違いにより、種子内のタンパク質分解に影響があるのかを検証した。また、代謝においてGABAを生成する原料となるL−グルタミン酸となる、L−グルタミン酸ナトリウム一水和物水溶液に浸漬させることにより、発芽そば内のL−グルタミン酸及びGABA含有量が増強されるかを試行した。
【0036】
バットに水を2Lいれ、それを恒温恒湿機(エスペック、PR−4J)の庫内に設置した。浸漬液に酸素を供給するため、浸漬エアーポンプを恒温恒湿機外に置き、チューブをケーブル孔に通しバットの溶液中にエアーポンプとストーンを入れた。恒温恒湿機を表3の温度に設定し、浸漬溶液が目標温度に到達するまで放置した。2015年産益子産常陸秋そばの種子(丸抜き)を700g秤量し、種籾消毒袋に入れ口を縛り、これを浸漬溶液へ投入した。一定時間放置後(表3)、バットから取り出し、かるく水気を切り、恒温恒湿機内の網棚の上に表3の発芽時間分放置した。表3の発芽(断水)時間後、ソバ種子を取り出し液体窒素を十分量かけ瞬間凍結させた。これを50mL容のコニカルチューブに入れ、後日遊離アミノ酸20種の測定を行った。また、成分増加のあった水準に絞り、官能評価を行った。
【表3】
【0037】
[遊離アミノ酸の測定]
検体5gをホモジナイザーカップへ秤量し、0.1%メルカプトエタノール溶液を22mL加えた。これを10000回転で1分間ホモジナイズした。50mLチューブに移し、氷上に置き4℃で3時間放置した。3時間後、遠心分離とろ過を行い、ろ液1mLに対して1N NaOHを70μL加えた。さらに、1st緩衝液を3mL加えよく攪拌した。これをろ過し、高速アミノ酸分析計(日本電子、JLC−500/v2)で測定した。
【0038】
[官能評価]
そばの官能評価は評価のための訓練を受けた社員4名、そば専門家2名の計6名をパネルとし、そばぎりに対する評価で行った。発芽していない原そばを3点とした比較法で、5段階評価で行い平均点及び各評価項目へのコメントにより評価した。試料を自動篩のついた粉砕機(丸七製作所、3号製粉機及び自動篩MF3S)で粉砕し、20メッシュ篩下のものを40目の手篩でふるい、60メッシュ篩下とあわせ混合したものをそば粉とした。そば粉と小麦粉の比率を7対3とし、粉の全体重量に対し45−50%の水を加えそば麺を作成し、1分間ゆでた後冷水でしめたものを官能試験に供した。
【0039】
各条件における遊離アミノ酸総量を
図5に示す。便宜上、発芽温度と含水率の組み合わせで分類し、たとえば発芽温度6℃、高含水率(含水率37%以上まで浸漬)の条件群については「6℃ 高含水率」のような呼称をつけた。
図5より、発芽温度6℃では、含水率にかかわらず遊離アミノ酸の増加は無かった。発芽温度16℃では、経時的に遊離アミノ酸が増加し、低含水率よりも高含水率のほうが増加が大きいことがわかった。また、L−グルタミン酸ナトリウム一水和物水溶液に浸漬した水準では、試薬の添加濃度に応じて遊離アミノ酸総量が増えた。
【0040】
遊離アミノ酸総量の結果より、「6℃高含水率 発芽70H」、「16℃高含水率 発芽22H<MSG3%浸漬液>」、「16℃高含水率 発芽46H」、「16℃高含水率 発芽70H」の4水準について官能評価を行った。このときの評価点数の平均値、及び評価点数基準を
図6に示す。また、これに対するコメントを表4にまとめた。「16℃ 高含水率」群では、発芽46Hと発芽70Hが同じような点数配分となっており、特に点数としては色について他の水準とは異なり、赤色・茶色が発現した。また、コメントではネガティブな臭いがあったとの記述があり、ほかの項目についてもネガティブな表記が多くなった。対して、「16℃ 高含水率」の22H MSG添加については、総合評価がもっとも高く、各評価項目でも高い点数となった。
【表4】
【0041】
発芽温度に関しては、6℃では含水率や発芽時間を変えても増加が見られず、16℃のほうが成分の増加には有効であることがわかった。発芽温度16℃の中でも、低含水率よりは高含水率のほうが増加量が大きいことが分かり、最初の浸漬時に最大限の水分量を含水させる方法がそばの遊離アミノ酸の増加により効果的であることが分かった。成分の増加が大きかった「16℃ 高含水率」で官能を行ったが、なかでも有意的な増加のあった発芽時間46H、70Hでは、発芽が進行しすぎたことにより、そば特有の食感や香味が失われた。よって、成分が増加し、なおかつネガティブな香味のないバランスを見極める必要がある。
【0042】
2−2 香味付与と遊離アミノ酸の増加が両立する発芽条件の検討
実験2−1での食味評価結果を受けて、2015年産益子産常陸秋そばの種子(丸抜き)を試料として、さらに成分と味の両面で発芽による効果を付与できる条件を追究した。
【0043】
発芽温度、発芽時間を主に試験区とした。水準の一覧を表5に示す。表5には、各水準の目的も合わせて記載した。表5中の「断水中湿度保持処理」とは、断水期間中に装置内の湿度が低下することにより、断水中のそばから水分が減少していくのを防ぐため、庫内に湿ったタオルや吸水タオルをいれこの期間中の装置内の湿度を維持するものである。各水準について、以下のように実験を行った。
【表5】
【0044】
バットに水を2Lいれ、これを恒温恒湿機(エスペック、PR−4J)の庫内に設置した。浸漬液に酸素を供給するため、浸漬エアーポンプを恒温恒湿機外に置き、チューブをケーブル孔に通しバットの溶液中にエアーポンプとストーンを入れた。恒温恒湿機を表5の温度に設定し、浸漬溶液が目標温度に到達するまで放置した。2015年産益子産常陸秋そばの種子(丸抜き)を700g秤量し、種籾消毒袋に入れ口を縛り、これを浸漬溶液へ投入した。一定時間放置後、バットから取り出し、かるく水気を切り、恒温恒湿機内の網棚の上に表5の発芽(断水)時間分放置した。「断水中湿度保持処理」を行う水準については、この間に、試料を置いている網棚の上下に網棚を設置し、この上に、水道水でぬらし水滴がたれない程度に絞ったタオルを敷き詰め、この上に同様にぬらした吸水タオルを敷いた。8時間おきにタオルを回収し、ぬらして再び敷いた。表5の断水時間後、ソバ種子を取り出し液体窒素を十分量かけ瞬間凍結させた。これを50mL容のコニカルチューブに入れ、後日遊離アミノ酸20種の測定を行った。また、一部の水準について、官能評価を行った。
【0045】
[遊離アミノ酸の測定]
検体5gをホモジナイザーカップへ秤量し、0.1%メルカプトエタノール溶液を22mL加えた。これを10000回転で1分間ホモジナイズした。50mLチューブに移し、氷上に置き4℃で3時間放置した。3時間後、遠心分離とろ過を行い、ろ液1mLに対して1N NaOHを70μL加えた。さらに、1st緩衝液を3mL加えよく攪拌した。これをろ過し、高速アミノ酸分析計(日本電子、JLC−500/v2)で測定した。
【0046】
[官能評価]
そばの官能評価は評価のための訓練を受けた社員4名をパネルとし、そばぎりに対する評価で行った。発芽していない原そばを基準とし、各評価項目へのコメントにより評価した。試料を自動篩のついた粉砕機(丸七製作所、3号製粉機及び自動篩MF3S)で粉砕し、20メッシュ篩下のものを40目の手篩でふるい、60メッシュ篩下とあわせ混合したものをそば粉とした。そば粉と小麦粉の比率を8対2とし、粉の全体重量に対し45−50%の水を加えそば麺を作成し、1分間ゆでた後冷水でしめたものを官能試験に供した。
【0047】
条件1の各温度帯における、遊離アミノ酸含量の変化を
図7に示した。参考として、条件2及び条件3の測定結果も合わせて記載した。
図7より、発芽温度6℃では遊離アミノ酸量の増加は見られないが、発芽温度16℃以上では経時的な増加があり、温度が高くなるにつれその増加度合いが増す結果となった。GABAについては、どの発芽温度においても0時間から12時間の間に一定の増加があり、発芽温度6℃については12時間以降の増加は無かった。発芽温度16℃と20℃では、折れ線の傾向としてはほぼ変わらないが、16℃のほうが含有量が高いという結果になった。発芽温度25℃と30℃では、発芽時間12時間から16時間で一度横ばいもしくは減少があり、22時間で再び増えるという挙動を示した。
【0048】
条件1の各温度帯の22時間発芽について、官能評価により比較をおこなった。このときのコメントをまとめたものを表6に示す。表6より、発芽温後20℃においてもっともよい結果となった。
【表6】
【0049】
条件2の遊離アミノ酸測定の結果を
図8にまとめた。なお、
図8中のドットの縦棒は、参考として前回実験の結果を示したものである。これより、発芽温度16℃において、遊離アミノ酸では経時的な増加がみられ、3日目で527[mg/100g]程度まで増加した。GABAについては、発芽後12時間で40[mg/100g]まで上昇し、その後22時間から48時間まではゆるやかに増加、70時間では72[mg/100g]に達した。
【0050】
条件3の遊離アミノ酸測定の結果を
図9にまとめた。なお、
図9中のドットの縦棒は、参考として前回実験の結果を示したものである。
図9より、「断水中湿度保持処理」を施すことにより、断水中の含水率の減少は低減された。遊離アミノ酸総量については、前回実験と今回実験で、成分量に違いはなく、118時間まで成分の増加は無かったが発芽142時間の時点でわずかに増加した。GABAについては、前回実験と今回実験で、成分量に違いはなく、94時間では70時間での含量と比べ増加が見られた。「断水中湿度保持処理」では発芽時間94時間以降GABA含有量は停滞、減少していった。
【0051】
以上の結果より、6℃では166時間までの間、発芽による遊離アミノ酸の大きな増加は見られなかったが、発芽温度16℃以上であれば、発芽時間及び温度に応じて成分が増加していくことがわかった。6℃での発芽において、断水中の含水率を維持したとしても、維持しかなった場合と比べ遊離アミノ酸総量に変化は無かった。GABAについては、発芽時間70時間から94時間の間で含有量が増加した。条件1の結果より、発芽温度20℃での22時間目において、ネガティブな香味や色の発現がなく、なおかつ遊離アミノ酸総量が増加し、当初の目的であった香味と成分のバランスが取れるポイントを見つけることに成功した。
【0052】
条件2については、条件1で目的の条件を達成できたため、官能評価を実施しなかった。また、条件3では、発芽時間70時間までについては含水率を維持する処理を行っても成分の含有量に違いが出ず、70時間以降についても、GABAは長時間の発芽によって増加が見られたが、遊離アミノ酸総量としては増加がなかったことから、官能評価を実施しなかった。
【0053】
<補足実験>
原料のソバの品種・産地等が変わったときに、発芽そば製造の最適条件が変わるのか検討するため、産地、品種、原料TNがそれぞれ異なる以下の3種のソバ種子を試料として用意し、これらの違いにより、発芽による成分変化の挙動が異なるのか実験を行った。
(A)2015年産栃木産 常陸秋そば(丸抜き)
(B)2015年産茨城産 常陸秋そば(丸抜き)
(C)2015年産福島産 会津のかおり(丸抜き)
【0054】
バットに水を3Lいれ、濃度が2wt%となるようにL−グルタミン酸ナトリウム一水和物を添加した。よく攪拌し、これを恒温恒湿機(エスペック、PR−4J)の庫内に設置した。浸漬液に酸素を供給するため、浸漬エアーポンプを恒温恒湿機外に置き、チューブをケーブル孔に通しバットの溶液中にエアーポンプとストーンを入れた。恒温恒湿機を表7の温度に設定し、浸漬溶液が目標温度に到達するまで放置した。ソバ種子を1000g秤量し、種籾消毒袋に入れ口を縛り、これを浸漬溶液へ投入した。一定時間放置後、バットから取り出し、かるく水気を切り、恒温恒湿機内の網棚の上に表7の発芽(断水)時間分放置した。表7の断水時間後、ソバ種子を取り出し液体窒素を十分量かけ瞬間凍結させた。これを50mL容のコニカルチューブに入れ、後日遊離アミノ酸20種の測定を行った。
【表7】
【0055】
[遊離アミノ酸の測定]
検体5gをホモジナイザーカップへ秤量し、0.1%メルカプトエタノール溶液を22mL加えた。これを10000回転で1分間ホモジナイズした。50mLチューブに移し、氷上に置き4℃で3時間放置した。3時間後、遠心分離とろ過を行い、ろ液1mLに対して1N NaOHを70μL加えた。さらに、1st緩衝液を3mL加えよく攪拌した。これをろ過し、高速アミノ酸分析計(日本電子、JLC−500/v2)で測定した。
【0056】
各条件における遊離アミノ酸総量を
図10に示した。
図10より原料の違いにかかわらず、3種すべてにおいて、発芽時間0時間〜48時間において同様なアミノ酸の増加傾向を示した。(A)と(B)ではほぼ同様な増加量、勾配となった。(C)は、発芽24時間目、48時間目において他より50〜100[mg/100g]程度、遊離アミノ酸総量が多くなったが、(A)及び(B)とほぼ同様な勾配であった。
【0057】
品種、産地、TNがそれぞれ異なる3つの原料において、製造条件を統一した場合、同様なアミノ酸の増加傾向を示した。よって、原料の産地、品種、TNが変化しても、発芽時間0時間〜48時間においては、発芽による遊離アミノ酸の増加傾向に大きな違いは無く、最適条件は大きくは変わらないものと考えられる。発芽24時間目、48時間目での遊離アミノ酸量が(C)の福島県産会津のみ他より50〜100[mg/100g]程度大きく、(A)及び(B)はほぼ同一であった。(A)、(B)は産地は異なるがどちらも「常陸秋そば」であることから、品種の差によって生成する遊離アミノ酸量が異なる可能性を示唆した。