【解決手段】 黒ショウガ成分を含有する粒子を芯材として、ナタネ油を含むコート剤にて被覆した組成物である。本発明によれば、ポリフェノールの生体内への吸収性を高めることができるうえ、摂取前の黒ショウガ成分の酸化を防止して保存安定性も高めることができる。
【背景技術】
【0002】
黒ショウガは学名をケンプフェリア・パルビフローラ(Kaempferia parviflora)といい、黒ウコンあるいはクラチャイダムの別名を有する。東南アジアに分布し、ショウガ科(Zingiberaceae)ケンプフェリア(Kaempferia)属の植物の一種である。タイやラオス等の伝承医学においては健康食品として知られており、精力増進、滋養強壮等の効果があると言われている。
【0003】
黒ショウガに含まれる有効成分としては、セレン、アミノ酸のほか、例えば、クルクミンやポリフェノールがあり、これらが抗ガン作用や活性酸素除去作用を有するため、動脈硬化等を抑制する効果があると言われている。さらに、ポリフェノールの一種であるアントシアニンやアントシアニジンが豊富に含まれていることから、疲れ目、視力低下、眼精疲労等の低減にも効果があるとの報告や、同じくポリフェノールの一種のメトキシフラボノイドが、痛風や高尿酸血症の原因となる尿酸産生を抑える等の働きがあるとの報告がある(特許文献1)。
【0004】
ところで、一般に、人体にとって有用な機能成分が含まれる飲食品等の中には、腸管透過吸収が悪く、その本来の機能が十分発揮されないものも多い。そのため、こういった薬剤や機能性食品成分等の腸管透過吸収を安全に促進する物質が求められている。ポリフェノールを含有する素材においても、一般に摂取されたポリフェノールの生体内に取り込まれる量は極めて少ないことが知られている。特に、ポリフェノールの生体内への吸収の機序もポリフェノールの種類により様々で、カテキン、プロアントシアニジン、ケルセチン等の水溶性ポリフェノールは、特に人や動物の腸管から吸収されにくいという欠点があった。
【0005】
これらの吸収を促進するため、従来、例えば、プロアントシアニジン、アントシアニン、カテキン、フラボノイド等について、透過吸収を助ける吸収促進剤との併用が提案されている(特許文献2、3)。また、分子量の大きいプロアントシアニジンについて、生体の腸管から容易に吸収できる程度までに低分子化する方法が示されている(特許文献4)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
本発明の組成物は、黒ショウガ成分を含有する粒子と、その表面の一部又は全部を被覆した油脂を含むコート層と、を含む。本発明の組成物は、経口で摂取した場合においても、黒ショウガ成分の体内への吸収性が高い。そのため、黒ショウガ成分の有する作用を利用し、抗酸化作用、冷え症改善作用、体重増加軽減作用、内臓脂肪及び皮下脂肪重量低減作用等の効用を目的に使用することができる。
【0015】
黒ショウガ成分を含有する粒子とは、黒ショウガに由来する成分を含む粒子のことを言い、黒ショウガに由来する成分を含み、かつ粉末化、粒子化、顆粒化等されていれば、黒ショウガの加工方法について特に制限はない。例えば、黒ショウガの乾燥粉末、黒ショウガ抽出物を粉末化したもの、黒ショウガ中の成分を任意の方法で分画して粉末化したもの等が該当する。また、この粒子は固体である必要は無く、リポソームやマイクロカプセル等液体でも良い。
【0016】
上記黒ショウガの乾燥粉末としては、例えば、洗浄後、スライスした黒ショウガを天日、あるいは乾燥機を用いて乾燥後、そのままあるいは適当な形状又は大きさに裁断して得た加工品を、粉砕装置を用いて粉砕することで得ることができる。粉砕装置としては通常使用されるものがひろく使用できるが、例えば、原料ホッパー、粉砕機、分級機及び製品ホルダー等から構成される粉砕機を用いることができる。
【0017】
上記黒ショウガ抽出物を粉末化したものとしては、例えば、黒ショウガの抽出物をそのままあるいは濃縮して、液状物、濃縮物、ペースト状で、あるいは、さらにこれらを乾燥した乾燥物の形状で用いることができる。乾燥は、噴霧乾燥、凍結乾燥、減圧乾燥、流動乾燥等の当業者が通常用いる方法により行われる。
【0018】
上記黒ショウガの抽出物は、黒ショウガ又はその加工物を適切な溶媒で抽出することによって得られる。抽出に使用される溶媒としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール、酢酸エチル、酢酸メチル等の低級エステル、アセトン、及びこれらと水との混合物が挙げられる。中でも、本発明の組成物はヒトが摂取することを想定しているものであることから、エタノール単独又は水との混合物(いわゆる含水エタノール)、あるいは熱水を使用するのが好ましい。
【0019】
溶媒として混合物を使用する場合は、例えば、アセトン/水(2/8〜8/2、体積比)混合物、エタノール/水(2/8〜8/2、体積比)混合物等を用いることができる。エタノール/水の場合、黒ショウガの根茎に対して、その質量の2〜20倍質量の溶媒を加え、室温又は加熱下で10分〜48時間程度抽出するのが好ましい。
【0020】
また、黒ショウガを細切りしたものを95〜100℃の温度で熱水抽出し、最高濃度に達した抽出液を濾過した後、噴霧乾燥する等の方法で抽出物を得ることも可能である。
【0021】
これら用いる抽出方法に特に制限はないが、安全性及び利便性の観点から、できるだけ緩やかな条件で行うことが好ましい。例えば、原料植物部位又はその乾燥物を粉砕、破砕又は細断し、これに2〜20倍質量の溶媒を加え、0℃〜溶媒の還流温度の範囲で10分〜48時間、静置、振盪、撹拌あるいは還流等の任意の条件下にて抽出を行う。抽出作業後、濾過、遠心分離等の分離操作を行い、不溶物を除去する。これに、必要に応じて希釈、濃縮操作を行うことにより、抽出液を得る。さらに、不溶物についても同じ操作を繰り返して抽出し、その抽出液を先の抽出液と合わせて用いてもよい。これらの抽出物は、当業者が通常用いる精製方法により、さらに精製して使用してもよい。
【0022】
また、黒ショウガ成分を含有する粒子としては、上記の黒ショウガの乾燥粉末、黒ショウガ抽出物を粉末化したもの、黒ショウガ中の成分を任意の方法で分画して粉末化したもの等をそのまま使用しても良いし、適切な結合剤や賦形剤等を添加の上、公知の湿式、乾式等の顆粒造粒法によって顆粒に成形したものを用いても良い。
【0023】
上記黒ショウガ中の成分を任意の方法で分画して得られるものとしては、例えば、クルクミン、メトキシフラボン類、アントシアニジン等がある。これらは、粉末化した1種を用いてもよいし、2種以上を混合して使用することもできる。
【0024】
黒ショウガ成分を含有する粒子の粒子径としては、特に制限されるものではなく、目的に応じて粉末、粒子、顆粒等を適宜選択することができる。また、黒ショウガ成分を含有する粒子の粒度としては、特に制限されるものではなく、目的に応じて粉末、粒子、顆粒等を適宜選択することができる。
【0025】
上記した黒ショウガ成分を含有する粒子を得るための黒ショウガの使用部位は樹皮、根、葉、又は枝等が使用し得る。なかでも、好ましいのは、根茎である。
【0026】
上記黒ショウガ成分を含有する粒子表面の一部又は全部を、油脂を含むコート剤にて被覆することにより、経口で摂取した場合においても、特に黒ショウガ成分に含まれるポリフェノール類の体内への吸収性が高まる。
【0027】
さらに、上記油脂コートを行うことにより、ポリフェノール類を含め黒ショウガ成分の酸化を防止し、製品の保存安定性を高めることができる。また、黒ショウガの成分は有機溶剤による抽出にも耐えられるほど丈夫で、胃液等への暴露によっても変性しにくいものであるが、油脂を用いてコートすることによって、より変性防止効果を得ることができる。
【0028】
油脂の具体例を以下に示すが、これらに限定するものではない。例えば、大豆、米、ナタネ、カカオ、椰子、ごま、べにばな、パーム、棉、落花生、アボガド、カポック、ケシ、ごぼう、小麦、月見草、つばき、とうもろこし、ひまわり等から得られる一般的な植物性油脂及びこれらの硬化物及び牛、乳、豚、いわし、さば、さめ、さんま、たら等から得られる動物性油脂及びこれらの硬化物等が挙げられ、これらの油脂は1種又は2種以上の混合物が使用できる。
【0029】
コート剤には、リン脂質、ステロール類、ワックス類等が共存しても一向に差し支えない。コート剤の被膜性能向上のために、その他の可塑剤を用いることも望ましい。可塑剤として、中鎖トリグリセリド、グリセリン、遊離脂肪酸、蒸留酢酸モノグリセリド等が例示される。
【0030】
コート剤を構成する可塑剤として使用される物質は、特に限定されることなく、ツェイン、グルテン等の蛋白質、寒天、ジェランガム、カラギーナン等のゲル化剤等が例示される。これらを、1種単独で使用してもよいし、あるいは、2種以上を併用して使用してもよい。可塑剤の使用量に特に制限はなく、使用する油脂や芯材となる黒ショウガ成分を含有する粒子に応じて、適宜調整することができる。
【0031】
また、コート剤には、賦形剤が共存しても一向に差し支えない。賦形剤の使用量に特に制限はなく、使用する油脂や芯材となる黒ショウガ成分を含有する粒子に応じて、適宜調整することができる。
【0032】
コート剤による被覆は、特に限定されることなく公知の方法を適用することが可能である。例えば、油脂単独で、あるいは、上記の水難溶性を示す物質と油脂を混合後に、常温もしくは加温しながら、適切な溶媒に撹拌して溶解させてコーティング液を作成し、このコーティング液を黒ショウガ成分含有コアにノズル又はアトマイザー等の公知の噴霧器により吹き付けて行うことができる。このときの溶媒として、アルコール溶液、酢酸等の酸性溶液等が例示される。使用量は、油脂あるいは水難溶性を示す物質が溶解すればよく、特に限定されないが、通常、これらの物質が5〜50重量%となるように調製したコーティング液を用いることができる。
【0033】
コート剤の被覆量は、油脂の含有量に応じて適宜調整することができ、特に制限されることはないが、黒ショウガ成分を含有する粒子100重量部に対し、1〜50重量部とすることが好ましい。
【0034】
本発明の組成物の摂取方法、摂取量、摂取回数、摂取時期、及び摂取対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが可能である。前記摂取量としては、摂取対象個体の年齢、体重、体質等、様々な要因を考慮して適宜選択できる。また、前記摂取対象となる動物種としては、主としてヒトに対して好適に適用されるものであるが、その作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、スナネズミ、フェレット、ウサギ、トリ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ブタ、サル、爬虫類等に対して適用することも可能である。
【0035】
本発明の組成物は、主に経口用として用いるが、その形態としては、飲食品、製剤等を適宜選択することができる。前記飲食品としては、前記組成物をそのまま使用してもよく、単に水(精製水等)で溶解乃至分散して用いてもよい。
【0036】
また、前記組成物の効果を損なわない範囲内で、種々の栄養成分を加えて、食用に適した形態、例えば、粉末状、粒状、顆粒状、液状、ペースト状、クリーム状、タブレット状、カプセル状、カプレット状、ソフトカプセル状、棒状、板状、ブロック状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、飴状、チュアブル状、シロップ状、スティック状等に成形して食品素材として提供することもできる。
【0037】
これらの適用飲食品の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品;種々の形態の健康食品、栄養補助食品等が挙げられる。
【0038】
本発明の飲食品に含まれる前記組成物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0039】
さらに、製剤としては、薬理学的に許容される担体を含んでいてよく、例えば、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル等がある。カプセル化して、内臓にそのまま到達させる量を増やすことが好ましい。さらに、本発明の一剤は、錠剤、散剤、カプセル等の剤形状を有するもののほか、ドリンク剤、シロップ剤、ゼリーの形で供給され得る。
【0040】
カプセル剤の製造方法としては、内容物として本発明の組成物を用いること以外は、従来公知のソフトカプセルの製造方法に従えばよい。そのような製造法としては、カプセル皮膜シートを用いて、ロータリー式充填機で内容物を封入し、カプセル製剤を成型する方法、又は滴下法によりシームレスカプセルを製造する方法等が挙げられる。
【0041】
また、錠剤については、本発明の組成物に、適切な結合剤、賦形剤、崩壊剤及び必要に応じて滑沢剤を添加し、公知の打錠法により調製することができる。顆粒剤については、公知の各種湿式、乾式等の造粒法が適用でき、適切な結合剤及び賦形剤と共に成形する。さらに、ドリンク剤、シロップ剤、ゼリー等については、適切な糖、酸、香料等を添加して香味を調製し、公知の製法により調製することができる。
【0042】
本発明の組成物は、黒ショウガに含有される有効成分の奏する効果を利用した用途であれば、特に限定無く適用することができる。例えば、本発明の組成物を、主に経口で使用される食品、薬剤等であって、抗酸化作用、冷え症改善作用、体重増加軽減作用、内臓脂肪及び皮下脂肪重量低減作用等の効用を目的に使用することが可能である。
【実施例】
【0043】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0044】
(ポリフェノール吸収性増進効果)
被験物質の調製は以下のようにして行った。
【0045】
<実施例1>
パーム油でコートした黒ショウガの根茎の乾燥粉末(黒ショウガ原末)をコーン油と混合して150mg/mLに調製し、ボルテックスを用いて懸濁した。
【0046】
<実施例2>
黒ショウガ原末をナタネ油でコートした以外は、実施例1と同様にして被験物質を得た。
【0047】
<比較例1>
黒ショウガ原末をコーン油と混合して150mg/mLに調製し、ボルテックスを用いて懸濁した。
【0048】
上記被験物質を用いて、下記の要領にて経口で黒ショウガを摂取した際の投与1、4、8時間後(コントロールはブランクとして投与1時間後のみ)に採血して、血中の総ポリフェノール量を測定した。その結果を
図1に示す。
【0049】
(1)実験動物及び飼育方法
6週齢のSD雄性ラットを用意し、5日以上の馴化期間をおいた後、実験に使用した。群分けは、試験直前にランダムに行った。馴化期間の飼料は、市販のMF固形飼料を自由摂取させた。また、試験当日は試験終了まで絶食のままとした。
【0050】
(2)被験物質の投与方法
16時間以上絶食した後、被験物質溶液を10mL/kgとなるように、ゾンデで強制経口投与した。表1に、採血時間、被験物質及びこれを投与した各群の個体数を示す。
【0051】
【表1】
【0052】
(血清前処理方法)
Waters社製の固相抽出カートリッジHLB(60mg)にメタノール(5mL)、水(5mL)、0.1moL/L塩酸(1mL)を順次通液し、プレコンディショニングとした。つづいて、マウス血清1mLに水(1mL)、0.1moL/L塩酸(1mL)を加え混合し、前述のカートリッジへ通液し非吸着画分を廃棄した。さらに1.5moL/Lのギ酸水溶液(2mL)、メタノール水溶液(5体積%)(2mL)を通液し洗浄した。その後0.1%ギ酸メタノール(3mL)を通液し、溶出した画分を15mLの遠沈管に回収した。得られた画分を、遠心エバポレーター(加熱無し)で一晩減圧濃縮して完全に乾固し、そこに水(200μL)を加え超音波で溶解した。遠心分離後(15,000rpm、5分)、上澄を1.5mLエッペンに回収し、総ポリフェノール量測定の検体とした。
【0053】
(総ポリフェノール測定方法)
各検体100μLを1.5mLエッペンチューブに測り取り、10%(w/w)炭酸ナトリウム(100μL)を加えて10分放置した。さらにFolin−Ciocalteu試薬(100μL)を加え、1時間室温で発色させた。発色したサンプルを遠心分離(15,000rpm、5分)後、上清(200μL)を96−weLLマイクロプレートに移し、730nmの吸光度を測定した。定量用標準には、カテキン一水和物を用いた。250μg/mLの水溶液を調製し、それを適宜希釈して125、100、75、50、25、12.5μg/mLの標準溶液を調製した。これらを各検体と同様に処理し、測定結果から検量線を作成した。その結果を血清サンプルのデータに適用し、定量結果とした。
【0054】
図1から明らかなように、実施例1、2の油脂コートを行った黒ショウガ原末を摂取した群の血中ポリフェノール量は、いずれも黒ショウガ原末を摂取させたものに比べて高い値を示している。特に、ナタネ油でコートを行った実施例2は、血中にとりこまれるポリフェノール量が多く、また、それが長時間にわたり持続することが分かった。
【0055】
(体重増加軽減及び体脂肪重量低減作用)
続いて、本発明のポリフェノールの吸収性増進の生体へ及ぼす具体的な効用として体重増加軽減及び体脂肪重量低減作用に注目し、その評価を行った。
【0056】
(1)被験物質の投与方法及び評価方法
4週齢のC57BL/6J雄性マウスを、MF飼料で5日間馴化した。次いで、1群あたりの平均体重が均一となるように1群6匹の3群に群分けを行った。そして、表2に示すように、この内の1群には、コントロール群として、何も添加していない高脂肪食のみを自由摂取させ、それ以外の2群には、高脂肪食にそれぞれ表に示す被験物質を1%で添加した飼料を69日間自由摂取させた。各群の自由摂取開始から、定期的に体重及び摂食量の測定を行った。また、試験開始(0日目)から69日目に麻酔下にて採血及び剖検を行い、内臓及び皮下白色脂肪組織重量を測定した。
【0057】
(2)被験物質
本試験で使用した、高脂肪食の配合組成を表3に示す。ここで、コントロール群は被験物質を0とし、その分をα−ポテトスターチで置換したものを摂取させた。黒ショウガ原末及びナタネ油でコートした黒ショウガ原末は、上記実施例2で使用したものと、それぞれ同様である。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
(3)体重増加軽減作用評価結果
図2に各群の体重変化を示す。なお、各群の間の摂取量には優位な差異がなかった。体重推移は、コントロールに比べて、ナタネ油でコートした黒ショウガ原末が42日目(6週目)に有意差が認められ、最後に黒ショウガ原末が57日目(8週目)に有意差が認められた。以上の検討より、体重増加軽減作用は、ナタネ油コート黒ショウガ原末>黒ショウガ原末の順に高い。
【0061】
続いて、
図3及び
図4に各群の内臓及び皮下白色脂肪組織重量を示す。黒ショウガ原末を与えたマウスは内臓及び皮下白色脂肪においてコントロールと比べて脂肪組織重量が優位に低減した(*及び**はコントロールに対し、それぞれ、p<0.05、0.01で有意差があることを示す。)。そして、ナタネ油コート黒ショウガ原末>黒ショウガ原末の順に組織重量の軽減作用が高かった。
【0062】
以上の結果から、黒ショウガ原末よりも、本発明のナタネ油でコートした黒ショウガ原末の方が、より高い体重増加軽減・内臓脂肪及び皮下脂肪重量低減作用の効果を示すことがわかった。
【0063】
上記結果は、前試験で示されたナタネ油コートによるポリフェノールの吸収性増進が、体重増加軽減作用となって現れることを示すものである。
【0064】
続いて、本発明の黒ショウガ成分を含有する粒子を、経口剤に適用した例を示す。
(黒ショウガ搾汁粉末コート品の製造)
黒ショウガ500gを洗浄後、破砕し、圧搾して搾汁液を得た。これを遠心分離・ろ過後、得られた搾汁液を減圧濃縮し、濃縮物を得た。得られた濃縮物を凍結乾燥して、黒ショウガ搾汁粉末を得た。得られた黒ショウガ搾汁粉末をナタネ油にてコートし、黒ショウガ搾汁粉末コート品を得た。
【0065】
(黒ショウガエキス粉末コート品の製造)
黒ショウガ500gを洗浄後、乾燥・粉砕し、エタノール中1000mLにて25℃で24時間撹拌抽出した。抽出液をろ過してろ液を得た後、エタノールを減圧留去し、濃縮物を得た。得られた濃縮物を凍結乾燥により乾固させ、黒ショウガエキス粉末を得た。得えられた黒ショウガエキス粉末をナタネ油にてコートし、黒ショウガエキス粉末コート品を得た。
【0066】
<実施例3(液剤の製造)>
表4の配合割合で各成分を配合し、液剤とした。
【0067】
【表4】
【0068】
<実施例4(顆粒1の製造)>
表5に従い、スクラロース0.5kg、クエン酸5kg、還元麦芽糖水飴64.5kg、難消化性デキストリン67.2kg、カンゾウ抽出物0.5kg、黒ショウガ粉砕物16.8kg,シクロデキストリン8.4kg、ショウヤク5kgを流動層造粒機に投入し、数分間気流で混合する。これに、水60Lを1分間に2000mL噴霧することにより造粒を行った。つづいて、得られた造粒物を30メッシュの篩いにて篩別し顆粒剤とした。
【0069】
【表5】
【0070】
<実施例5(顆粒2の製造)>
実施例4と同様にして、表6の成分を配合し顆粒剤とした。
【0071】
【表6】
【0072】
<実施例6(ソフトカプセル1の製造)>
表7の配合割合で配合した内容液を調製し、表8の配合割合で配合したカプセル皮膜に充填することでソフトカプセルとした。カプセル化は、カプセル皮膜液を流延しフィルム化すると共に、内部に内容液を充填しヒートシールし、成形されたソフトカプセルを乾燥させて行った。
【0073】
【表7】
【0074】
【表8】
【0075】
<実施例7(ソフトカプセル2の製造)>
表9の配合割合で配合した内容液を調製し、表10の配合割合で配合したカプセル皮膜に充填し、実施例6と同様にしてソフトカプセルとした。
【0076】
【表9】
【0077】
【表10】
【0078】
<実施例8〜12>
黒ショウガ搾汁粉末コート品に換えて、黒ショウガエキス粉末コート品を用いた以外は、上記実施例3〜7と同様にして、それぞれ実施例8〜12を作成した。
【0079】
<実施例13〜17>
黒ショウガ搾汁粉末コート品に換えて、黒ショウガの根茎の乾燥粉末のコート品を用いた以外は、上記実施例3〜7と同様にして、それぞれ実施例13〜17を作成した。