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  • 特開2019088768-歯科インプラント用アバットメント 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-88768(P2019-88768A)
(43)【公開日】2019年6月13日
(54)【発明の名称】歯科インプラント用アバットメント
(51)【国際特許分類】
   A61C 8/00 20060101AFI20190524BHJP
【FI】
   A61C8/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-157402(P2018-157402)
(22)【出願日】2018年8月24日
(31)【優先権主張番号】特願2017-220086(P2017-220086)
(32)【優先日】2017年11月15日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517399701
【氏名又は名称】小林 健一郎
(71)【出願人】
【識別番号】502278024
【氏名又は名称】株式会社プラトンジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】小林 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 薫
【テーマコード(参考)】
4C159
【Fターム(参考)】
4C159AA43
4C159AA48
(57)【要約】
【課題】 顎骨等に対する外部からの感染リスクを小さくする。
【解決手段】 歯科インプラント用アバットメント1は、一方の端部においてフィクスチャと嵌合されると共に他方の端部に人工歯が取り付けられる柱状の本体部10と、本体部の側面に当該本体部の周方向に亘って設けられる張り出し部20とを備える。張り出し部20は、フィクスチャと嵌合される側に突き出る凸部20aであって、本体部10の側面を囲むと共に当該本体部10との間に環状の凹状部を形成するように設けられる凸部20aを有する。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部においてフィクスチャと嵌合されると共に他方の端部に人工歯が取り付けられる柱状の本体部と、
前記本体部の側面に当該本体部の周方向に亘って設けられる張り出し部と、を備え、
前記張り出し部は、フィクスチャと嵌合される側に突き出る凸部であって、前記本体部の側面を囲むと共に当該本体部との間に環状の凹状部を形成するように設けられる凸部を有する歯科インプラント用アバットメント。
【請求項2】
前記凸部の先端は、面取りされている請求項1に記載の歯科インプラント用アバットメント。
【請求項3】
前記凸部の先端と根元との間は、凹んだ面によって構成される請求項1又は2に記載の歯科インプラント用アバットメント。
【請求項4】
前記張り出し部の環状の凹状部を構成する部分、及び、前記本体部の側面のうち当該凹状部に続くと共に当該凹状部の近傍である部分、の少なくとも一部が粗面化されている請求項1〜3の何れか一項に記載の歯科インプラント用アバットメント。
【請求項5】
前記張り出し部の環状の凹状部を構成する部分、及び、前記本体部の側面のうち当該凹状部に続くと共に当該凹状部の近傍である部分、の少なくとも一部に親水性を向上させる処理が施されている請求項1〜4の何れか一項に記載の歯科インプラント用アバットメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歯科インプラント用アバットメントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、歯科治療において、インプラント治療が知られている(例えば、特許文献1参照)。インプラント治療の方法としては、例えば、歯肉の切開剥離手術が二回必要な二回法、一回で済ませる一回法、歯肉の切開、剥離及び縫合を必要としないフラップレス法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−136944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一回法では、フィクスチャ又はヒーリングキャップの一部が歯肉から露出した状態で骨の治癒を待つため、術後から骨が治癒するまでの間に口腔内の雑菌(細菌)がフィクスチャ又はヒーリングキャップと歯肉との隙間を通って骨まで達する可能性がある。そのため一回法では、顎骨に対する外部からの感染リスクが高い。フラップレス法でも、一回法と同じ理由で感染リスクが高い。
【0005】
一方、二回法では、フィクスチャを埋め込んだ後、その部分を歯肉で完全に覆った状態で骨の治癒を待つため、感染リスクが小さい。そのため、現状では、感染リスクを恐れて二回法を選択する歯科医師が多い。しかし、二回法では、外科手術を二回行うため、患者の身体的負担が大きいという深刻な問題がある。そこで、患者の身体的負担が少ない一回法及びフラップレス法においても、感染リスクを小さくすることが望まれていた。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、顎骨等に対する外部からの感染リスクを小さくすることができる歯科インプラント用アバットメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る歯科インプラント用アバットメントは、一方の端部においてフィクスチャと嵌合されると共に他方の端部に人工歯が取り付けられる柱状の本体部と、本体部の側面に当該本体部の周方向に亘って設けられる張り出し部と、を備え、張り出し部は、フィクスチャと嵌合される側に突き出る凸部であって、本体部の側面を囲むと共に当該本体部との間に環状の凹状部を形成するように設けられる凸部を有する。
【0008】
本発明に係る歯科インプラント用アバットメントが患者の口腔内に装着されると凸部によって歯肉が押圧される。凸部によって本体部側に押し出された歯肉は凹状部のスペースにみっしりと充填される。これにより、従来のアバットメントに比べて、アバットメントと歯肉との密着度が高くなるため、雑菌が侵入する隙間ができにくくなる。また、歯肉表面から顎骨に至るまでの雑菌の侵入経路が、凸部を設けることによって複雑かつ長くなる。これにより、本発明に係る歯科インプラント用アバットメントによれば、顎骨等に対する外部からの感染リスクを小さくすることができる。
【0009】
凸部の先端は、面取りされていることとしてもよい。この構成によれば、本発明に係る歯科インプラント用アバットメントを患者の歯肉に傷をつけることなく安全に装着させやすくすることができる。
【0010】
凸部の先端と根元との間は、凹んだ面によって構成されることとしてもよい。この構成によれば、患者の歯肉とアバットメントとをより密着させることができ、更に感染リスクを小さくすることができる。
【0011】
張り出し部の環状の凹状部を構成する部分、及び、本体部の側面のうち当該凹状部に続くと共に当該凹状部の近傍である部分、の少なくとも一部が粗面化されていてもよい。この構成によれば、凸部が患者の顎骨に位置するようにアバットメントが患者の口腔内に装着された際に、顎骨とアバットメントとが互いに強く結合される。
【0012】
張り出し部の環状の凹状部を構成する部分、及び、本体部の側面のうち当該凹状部に続くと共に当該凹状部の近傍である部分の、少なくとも一部に親水性を向上させる処理が施されていてもよい。この構成によれば、凸部が患者の顎骨に位置するようにアバットメントが患者の口腔内に装着された際に、顎骨とアバットメントとが互いに強く結合される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る歯科インプラント用アバットメントによれば、雑菌が侵入する隙間ができにくくなり、また、外部からの感染経路を従来のアバットメントと比べて長くすることができる。これにより、本発明に係る歯科インプラント用アバットメントによれば、顎骨等に対する外部からの感染リスクを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係る歯科インプラント用アバットメントの斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る歯科インプラント用アバットメントの上面図及び断面図である。
図3】患者の口腔内に装着された、本発明の実施形態に係る歯科インプラント用アバットメントを示す断面図である。
図4】患者の口腔内に装着された、従来のアバットメントを示す断面図である。
図5】患者の口腔内に装着された、本発明の実施形態に係る歯科インプラント用アバットメント及び従来のアバットメントを示す断面図である。
図6】患者の口腔内に装着された、本発明の実施形態に係る歯科インプラント用アバットメントを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面と共に本発明に係る歯科インプラント用アバットメントの実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る歯科インプラント用アバットメント1の底面側(フィクスチャに装着される側)からの斜視図である。以下、本実施形態に係る歯科インプラント用アバットメント1をアバットメント1と呼ぶ。図2(a)は、アバットメント1の上面図、図2(b)は、アバットメント1の図2(a)のA−A線断面図(アバットメント1の軸線を通る断面での断面図)である。なお、以下の説明において、上下は図2(b)に示す状態を基準とする。図1及び図2に示すように、アバットメント1は、柱状の本体部10と、本体部の側面に当該本体部の周方向に亘って設けられる張り出し部20とを備えて構成されている。
【0017】
本体部10は、概ね円柱状の形状である。本体部10は、フィクスチャと嵌合(締結)される側の端部である基底部11と、人工歯が取り付けられる側の端部である頭部12と、基底部11と頭部12との間に位置する胴部13とに分けられる。なお、アバットメント1に取り付けられる人工歯は、1本の人工歯でもよく、複数の人工歯を含むインプラントパーシャルデンチャー又はインプラントオーバーデンチャーでもよい。
【0018】
基底部11には、患者の顎骨に形成されたインプラント窩に埋植(埋設)されたフィクスチャと嵌合するための溝が設けられている。頭部12には、その端面12aから胴部13の内部にかけて穴10aが設けられている。穴10aは、人工歯を本体部10に固定するためのアタッチメントがねじ込まれる部分であり、当該アタッチメントと嵌合可能な溝が設けられている。穴10aの開口部は、端面12aの中心に設けられており、穴10aの軸線は本体部10の軸線と一致している。なお、本体部10は、必ずしも上記の構成を取る必要はなく、従来のアバットメントに準じた任意の形状を取ることができる。
【0019】
張り出し部20は、本体部10の胴部13から円形に広がる形状となっている。即ち、上方から見た際の張り出し部20の形状が円形になっている。張り出し部20は、例えば4〜5mm程度の直径を有し、2mm程度の厚さ(軸方向の長さ)を有する。張り出し部20は、軸方向において頭部12の下、換言すると、胴部13における頭部12側の端部に設けられる。張り出し部20の下側の面は、患者の口腔内に装着された際、即ち、患者のインプラント窩に埋植されたフィクスチャと嵌合された際に患者の歯肉と密着する。
【0020】
張り出し部20は、フィクスチャと嵌合される側、即ち、下側に突き出る凸部20aを有している。上記の通り、張り出し部20の下側の面は患者の歯肉と密着するため、凸部20aは患者の歯肉に食い込むことになる。凸部20aは、張り出し部20の外縁部分に設けられており、本体部10の胴部13の側面を囲む環状(リングドーナツ状)の形状となっている。凸部20aは、本体部10の胴部13とは離れており、凸部20aと本体部10の胴部13との間に環状の凹み(窪み)である凹状部が形成される。張り出し部20のうち凸部20aの厚さ(張り出し部20の軸方向の長さ)及び凹状部の深さは、0.数mm程度である。
【0021】
図2に示すように、患者の歯肉に食い込む凸部20aの先端は、患者の歯肉を傷つけず、また、より密着できるように、面取りされていることとしてもよい。凸部20aの外側の面を含む張り出し部20の外側の側面は、患者の歯肉への凸部20aの食い込みを考慮して、図2(b)に示すように下に向かうにつれてわずかに径が小さくなっていてもよい。但し、当該側面は、下に向かうにつれて径が大きくなっていても、あるいは、径が一定であってもよい。
【0022】
凸部20aの先端と根元との間、即ち、凸部20aの外側及び内側の側面は、凹んだ面によって構成されてもよい。当該側面を凹んだ面で構成することで、凸部20aと患者の歯肉とをより密着させることができる。但し、当該側面を平面、あるいは、盛り上がった面で構成することとしてもよい。
【0023】
本体部10と張り出し部20とは、一体形成されていてもよい。本体部10と張り出し部20とは、例えば、従来のアバットメントと同様にチタン製であることとしてもよい。あるいは、患者の歯肉と接する本体部10の上部及び張り出し部20を、患者の歯肉への影響が少ないジルコニアセラミック製とし、フィクスチャと嵌合される本体部10の下部を、チタン製とすることとしてもよい。以上が、本実施形態に係るアバットメント1の構成である。
【0024】
本実施形態に係るアバットメント1は、インプラント治療において従来のアバットメントと同様に使用される。例えば、一回法又はフラップレス法によって、患者の顎骨にインプラント窩が形成されて、インプラント窩にフィクスチャが埋植される。インプラント窩に埋植されたフィクスチャにアバットメント1が装着される。なお、一回法又はフラップレス法以外の方法によって、患者の口腔内にアバットメント1が装着されてもよい。
【0025】
図3は、患者の口腔内に装着された本実施形態に係るアバットメント1の断面を示す。図3では、人工歯である義歯Tをアバットメント1に固定するためのアタッチメントCが穴10aにねじ込まれ、このアタッチメントCに、義歯Tに取り付けられたアタッチメントAが連結されている。図3に示すように、アバットメント1がフィクスチャFに装着されると、凸部20aによって患者の歯肉Gが押圧される。凸部20aによって本体部10側に押し出された歯肉Gは、凸部20aと本体部10とに挟まれた環状の凹状部のスペースにみっしりと充填される。これにより、従来のアバットメントに比べて、アバットメント1と歯肉Gとの密着度が高くなる。このため、雑菌及びその他の異物が侵入する隙間ができにくくなる。
【0026】
また、アバットメント1と歯肉Gとの隙間に雑菌が入ったとしても、凸部20aを迂回して奥に入り込んでいくことになる。即ち、図3に示す感染経路Rとなる。感染経路Rの比較のため、図4に患者の口腔内に装着された、張り出し部20に凸部が設けられていない従来のアバットメント100の断面を示す。図3及び図4に示すように、本実施形態に係るアバットメント1によれば、歯肉G表面から顎骨Bに至るまでの雑菌の侵入経路を、凸部20aを設けることによって従来のアバットメント100と比べて複雑かつ長くすることができる。
【0027】
これにより、本実施形態に係るアバットメント1によれば、一回法又はフラップレス法を用いた場合であっても、顎骨B等に対する外部からの感染リスクを小さくすることができる。
【0028】
また、上述したように、凸部20aの先端は、面取りされていることとしてもよい。この構成によれば、アバットメント1を患者の歯肉に傷をつけることなく安全に装着させやすくすることができる。また、上述したように、凸部20aの先端と根元との間は、凹んだ面によって構成されることとしてもよい。この構成によれば、患者の歯肉とアバットメント1とをより密着させることができ、更に感染リスクを小さくすることができる。
【0029】
ところで、図5(a)に示すように、本実施形態に係るアバットメント1と比べて張り出し部の厚さが薄い従来のアバットメント100を用いる場合、フィクスチャFと嵌合されたときの顎骨Bから張り出し部の上面までの長さL1と、顎骨Bのインプラント窩の上端から歯肉Gの上面までの長さである歯肉厚L2とがあったものを用いる必要がある。例えば、歯肉厚L2が約3.0mmの患者には、長さL1が3.0mmとなるアバットメントを用いる必要があった。
【0030】
これらの長さL1,L2があっていないアバットメントを用いた場合、例えば、歯肉厚L2に比べて長さL1が長い場合には、図5(b)に示すように、張り出し部が歯肉Gから浮いてしまう。具体的には、歯肉厚L2が約2.5mmであり、長さL1が3.0mmとなるアバットメントを用いた場合、張り出し部が歯肉Gから0.数mm浮いてしまう。そのため、この隙間に汚れがたまったり、雑菌が入り込みやすくなったりする。患者毎に異なる歯肉Gの厚さに対応するため、従来のアバットメントを用いる場合、施術時、長さが異なるものを複数、準備しておく必要があった。例えば、上記の例のように、歯肉厚L2の差が0.5mm程度ある場合には、歯肉厚L2毎の複数のアバットメントを用意しなくてはならなかった。
【0031】
一方で、本実施形態に係るアバットメント1を用いる場合、張り出し部20を従来と比べて厚くしているため、一種類のアバットメント1で異なる歯肉厚L2の患者に対しても対応することができる。例えば、上記の長さL1が3.0mm、張り出し部20の上面から凸部20a先端までの長さL3が2.0mmの本実施形態に係るアバットメント1を用いる場合、図5(c)に示すように歯肉厚L2が約3.0mmの患者にも、図5(d)に示すように歯肉厚L2が約2.5mmの患者にも、対応することができる。このように、本実施形態に係るアバットメント1を用いる場合、歯肉厚L2が約3.0mmの患者にも約2.5mmの患者にも対応可能である。その結果、用意すべきアバットメントのバリエーションを従来と比べて減らすことができる。
【0032】
なお、上記の歯肉厚の相違は、一人の患者についての経時的変化によっても生じ得る。本実施形態に係るアバットメント1は、患者の歯肉厚に経時的変化が生じた場合であっても、アバットメント1を取り換えることなく、使用し続けることができる。但し、歯肉厚の相違を考慮する必要がない場合、本発明に係るアバットメントは、必ずしも張り出し部の厚さを歯肉厚の相違をカバーできるものとする必要はない。
【0033】
上述したアバットメント1が患者の口腔内に装着された例では、アバットメント1の凸部20aは、患者の歯肉G部分に位置していた。また、凸部20aによって形成される環状の凹状部には、歯肉Gが充填されていた。当該装着例とは異なり、本実施形態に係るアバットメント1は、図6に示すように、凸部20aが患者の歯肉Gより奥の顎骨Bに位置するように患者の口腔内に装着されてもよい。なお、図6に示すアバットメント1の各部分は、図3に示すアバットメントと同様のサイズで描かれているが、凸部20aが顎骨Bにまで至るように図3に示すアバットメントとは異なるサイズになっていてもよい。
【0034】
上記のように、凸部20aが顎骨Bにまで至るようにアバットメント1が患者の口腔内に装着されると、アバットメント1の凸部20a、胴部13の側面及びフィクスチャFに囲まれた環状のスペースSには顎骨Bが位置することになる。当該スペースSの顎骨Bは、フィクスチャFを顎骨Bに埋植する際にはインプラント窩として削られる。アバットメント1が患者の口腔内に装着された際の当該部分の顎骨Bは、アバットメント1が患者の口腔内に装着された後に時間をかけて再生されたものである。
【0035】
当該部分の顎骨Bとアバットメント1とが、互いに強く結合(骨結合、オッセオインテグレーション)されるようにアバットメント1の当該部分が粗面化されていてもよい。即ち、アバットメント1の張り出し部20の環状の凹状部を構成する部分、及び、胴部13の側面のうち当該凹状部に続くと共に当該凹状部の近傍である部分(図6では、破線で示す部分)30が粗面化されていてもよい。なお、上記の胴部13の側面のうち当該凹状部に続くと共に当該凹状部の近傍である部分は、フィクスチャFから露出した部分であって、胴部13の側面のうち図6に示すようにアバットメント1が患者の口腔内に装着された後、再生した顎骨Bに接し得る部分である。
【0036】
粗面化(粗面加工)は、例えば、サンドブラスト及び酸エッチング、又はこれらの何れかによって行われる。また、上記以外の方法で粗面化が行われてもよい。アバットメント1の顎骨Bが入り込む上記の部分30が粗面化されていることで、当該部分30の表面積が大きくなり、顎骨Bが再生して窪み部分に入り込んだ際に顎骨Bとアバットメント1とが互いに強く結合される。この結合が強くなることで患者の口腔内においてアバットメント1が長期間、適切に固定される。なお、粗面化される部分は、必ずしも上記の部分30全体である必要はなく、当該部分30の少なくとも一部であってもよい。
【0037】
また、粗面化に代えて、あるいは、粗面化に加えて、当該部分30に親水性を向上させる処理が施されていてもよい。親水性を向上させる処理としては、例えば、当該部分に親水性を向上させるDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング処理がある。また、それ以外の方法で親水性を向上させる処理が施されていてもよい。当該部分30の親水性が向上されていることで、顎骨Bが再生して窪み部分に入り込んだ際に顎骨Bとアバットメント1とが互いに強く結合される。粗面化と同様に、親水性を向上させる処理は、必ずしも上記の部分30全体に対して施される必要はなく、当該部分30の少なくとも一部に対して施されてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1…歯科インプラント用アバットメント、10…本体部、11…基底部、12…頭部、13…胴部、20…張り出し部、20a…凸部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6