特開2019-89890(P2019-89890A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-89890(P2019-89890A)
(43)【公開日】2019年6月13日
(54)【発明の名称】衝撃緩衝材
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20190524BHJP
   A63B 71/10 20060101ALN20190524BHJP
   A63B 63/00 20060101ALN20190524BHJP
【FI】
   C08J9/04 101
   C08J9/04CFF
   A63B71/10 Z
   A63B63/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-217971(P2017-217971)
(22)【出願日】2017年11月13日
(71)【出願人】
【識別番号】596179070
【氏名又は名称】関 則雄
(74)【代理人】
【識別番号】100083633
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏
(72)【発明者】
【氏名】関 則雄
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA72
4F074AA78
4F074AE04
4F074BA00
4F074DA33
4F074DA36
4F074DA40
(57)【要約】
【課題】本発明は、軽量で柔軟性,耐衝撃性,高強度,耐熱性を有し、広範囲の用途が期待できる衝撃緩衝材を提供することを目的とする。
【解決手段】低反発素材1と、引張力強化繊維2と、から構成する。また引張力強化繊維2を低反発素材1に設ける場合、芯材として埋設させたもの,引張力強化繊維2を低反発素材1の少なくとも片面に貼着したもの,引張力強化繊維2を低反発素材1に芯材として複数埋設して積層構造に形成させたものとしても良く、又、低反発素材1として、軟質ウレタンフォームの気泡を連通させた低反発弾性フォームを用いるのが好ましい。更に引張力強化繊維2として、アラミド繊維,炭素繊維,セルロースナノファイバーを用い、低反発素材1の主成分がポリオールとポリイソシアネートであり、それに、発泡剤と、整泡材と、触媒と、を少なくとも撹拌混合して発泡させたものとしても良い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低反発素材(1)と、引張力強化繊維(2)と、から構成したことを特徴とする衝撃緩衝材。
【請求項2】
前記引張力強化繊維(2)が、前記低反発素材(1)に芯材として埋設された請求項1記載の衝撃緩衝材。
【請求項3】
前記引張力強化繊維(2)が、前記低反発素材(1)の少なくとも片面に貼着された請求項1又は2記載の衝撃緩衝材。
【請求項4】
前記引張力強化繊維(2)が、前記低反発素材(1)に芯材として複数埋設され、全体が積層構造に構成された請求項1、2又は3記載の衝撃緩衝材。
【請求項5】
前記低反発素材(1)が、軟質ウレタンフォームの気泡を連通させた低反発弾性フォームである請求項1、2、3又は4記載の衝撃緩衝材。
【請求項6】
前記引張力強化繊維(2)が、アラミド繊維である請求項1、2、3又は4記載の衝撃緩衝材。
【請求項7】
前記引張力強化繊維(2)が、炭素繊維或いはセルロースナノファイバーである請求項1、2、3又は4記載の衝撃緩衝材。
【請求項8】
前記低反発素材(1)の主成分がポリオールとポリイソシアネートであり、それに、発泡剤と、整泡材と、触媒と、を少なくとも撹拌混合して発泡させた請求項1、2、3又は4記載の衝撃緩衝材。
【請求項9】
低反発素材(1)と、引張力強化繊維(2)と、から少なくとも構成すると共に、シート状に形成したことを特徴とする衝撃緩衝材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軽量で柔軟性,耐衝撃性,高強度,耐熱性を有した衝撃緩衝材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軽量な衝撃吸収材として、特開2016−83076が提案されている。この構造は、ゲル状素材に、粒径0.5〜3mmの樹脂製発泡ビーズを1〜7%重量分散させたものである。この目的は、ゲル状素材を軽くし、低反発性を有し、野球やソフトボール等の捕手や審判が装着するプロテクターなどに、ボール等が衝突した際の衝撃力を低減させ、ボールが衝突して跳ね返った際に、ボールの跳ね返りを抑えて、次のプレーを迅速に行えるものとなり、更には、特開2016−83076がボクシングミットやチャイルドシート等の衝撃吸収材として好適なものにすることである。
【0003】
しかしながら、特開2016−83076は、衝撃力をある程度吸収するが、衝撃力が大きくなると、全体が破壊されてしまう。又、先の尖った物体が落下や飛来すると、容易に衝撃吸収材が貫通されて破壊する。このため、火災現場、地震、台風等の災害時には、ガラスの破片や、棒状のもの、硬くて小さなもの、凹凸のある物体などが落下或いは飛来してくるので、特開2016−83076の衝撃吸収材が用いられた災害用保護具を使用すると、身体を守ることが出来なくなる恐れがあった。このように特開2016−83076には、全体の強度が低いので、用途範囲が限定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−83076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、軽量で柔軟性,耐衝撃性,高強度,耐熱性を有し、広範囲の用途が期待できる衝撃緩衝材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記現状に鑑みて成されたものであり、つまり、低反発素材と、引張力強化繊維と、から構成する。また前記引張力強化繊維を低反発素材に芯材として埋設させたもの、引張力強化繊維を低反発素材の少なくとも片面に貼着したもの、前記引張力強化繊維を低反発素材に芯材として複数埋設して積層構造に形成させたものとしても良く、又、前記低反発素材として、軟質ウレタンフォームの気泡を連通させた低反発弾性フォームを用いるのが好ましく、また低反発素材の主成分がポリオールとポリイソシアネートであり、それに、発泡剤と、整泡材と、触媒と、を少なくとも撹拌混合して発泡させたものとしても良い。更に前記引張力強化繊維として、アラミド繊維,炭素繊維,セルロースナノファイバーを用いても良い。又、全体をシート状に形成するのが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
請求項1のように低反発素材(1)と、引張力強化繊維(2)と、から構成することにより、引張力強化繊維(2)によって全体の強度が高められるので、低反発素材(1)を薄くすることができ、軽量で柔軟性,耐衝撃性,高強度,耐熱性が得られ、広範囲の用途が期待できる。
【0008】
請求項2のように引張力強化繊維(2)を低反発素材(1)に芯材として埋設させることにより、表面に衝突する衝撃力が低反発素材(1)によって低減され、その力が引張力強化繊維(2)に加わるため、全体の強度が高められ、より丈夫な材料となる。
【0009】
請求項3に示すように引張力強化繊維(2)を、低反発素材(1)の少なくとも片面に貼着させることにより、全体の強度が高められて丈夫な材料となるため、低反発素材(1)の厚さを薄くしても、衝撃力の吸収が確実に行える。また引張力強化繊維(2)によって、衝撃力が分散され、その分散された力が低反発素材(1)で効率良く吸収できると共に材料全体の柔軟性が良好になる。
【0010】
請求項4に示すように引張力強化繊維(2)を低反発素材(1)に芯材として複数埋設させて積層構造に形成することにより、耐衝撃性,高強度,耐熱性が高性能となるため、より広範囲の用途が期待できる。
【0011】
請求項5のように低反発素材(1)として、軟質ウレタンフォームの気泡を連通させた低反発弾性フォームを用いることにより、特に本発明を身体保護部材として使用すると、飛来した物体が身体に当る事故に遭遇しても、飛来物の衝撃力を効率良く吸収し、且つ、身体に飛来物が直接に接触することはなく、身体に与える衝撃力が極めて小さなものとなるため、身体が負傷する恐れが殆どなくなる。
【0012】
請求項6のように引張力強化繊維(2)として、アラミド繊維を用いることにより、球体の飛来物などが表側の低反発素材(1)に食い込んでも、芯材である引張力強化繊維(2)によってそれ以上深く食い込みにくくなると共に、飛来物の衝撃力が引張力強化繊維(2)によって分散されるため、飛来物が低反発素材(1)を貫通する心配はなくなる。
【0013】
請求項7に示すように引張力強化繊維(2)として、炭素繊維やセルロースナノファイバーを用いることにより、請求項6と同様な効果が得られる。
【0014】
請求項8に示すように低反発素材(1)の主成分がポリオールとポリイソシアネートであり、それに、発泡剤と、整泡材と、触媒と、を少なくとも撹拌混合して発泡させることにより、請求項5と同様な効果が得られる。
【0015】
請求項9のように低反発素材(1)と、引張力強化繊維(2)と、から少なくとも構成すると共に、シート状に形成することにより、低反発素材(1)と、引張力強化繊維(2)の厚みや広さ或いは引張力強化繊維(2)の積層数等の多数の種類を用意して置けば、顧客の要望に応える商品が提供出来るものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態を示す説明図である。
図2】本発明の他実施形態を示す説明図である。
図3】本実施形態に於ける積層構造を示す説明図である。
図4】本発明の作用を示す説明図である。
図5】本発明をシート状に形成した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を図1に基づいて説明する。(1)は低反発素材であり、該低反発素材(1)としては、軟質ウレタンフォームの気泡を連通させた低反発弾性フォームや、ポリオールとポリイソシアネートを主成分とし、それに、発泡剤と、整泡材と、触媒と、を少なくとも撹拌混合して発泡させたもの、最近話題になっているタフポリマーなどを用いる。
【0018】
尚、前記軟質ウレタンフォームは、バネのような弾性と、粘土やガムのような粘性を持つ「粘弾性フォーム」であり、弾性を押え、粘性を上げたフォームで、気泡が連通し、ゆっくりと元に戻る性質がある。これは反発弾性が15%程度以下(TISK6400−3)と非常に小さく、局部的な圧迫が少なく、衝撃力が全体に分散されるため、衝撃吸収性能が高いものである。
又、ポリオールとポリイソシアネートを主成分とし、その中に発泡剤と、整泡材と、触媒と、を少なくとも撹拌混合して発泡させた低反発弾性フォームは、圧縮後、ゆっくりとした復元性を持ち、エネルギー吸収性能を高めるために、粘弾性的にポリウレタン樹脂組成を変性している。
更にタフポリマーは、従来のポリマーよりも100倍の強度を有したゲル状のポリロタキサンと言われている。これは東京大学大学院新領域創成科学研究所 伊藤耕三教授によって製作されたもので、その構造は、シクロデキストリン(輪の部分)と、ポリエチレングリコール(軸の部分)と、アダマンタン(軸の両端に固着する大きな分子)とからなり、ネックレス状の分子に形成されることで、強い材料になっている。
【0019】
(2)は引張力強化繊維であり、該引張力強化繊維として、アラミド繊維,炭素繊維,セルロースナノファイバー(CNF)を用いると良い。この引張力強化繊維(2)の設け方としては、図1に示すように低反発素材(1)の中間に芯材として埋設させる方法、図2に示すように低反発素材(1)の少なくとも片面に貼着させる方法、図3のように低反発素材(1)の複数の中間に芯材として埋設させて積層構造に形成させる方法などがある。又、前記引張力強化繊維(2)は、埋設させずに、2枚の低反発素材(1)の間に挟んで接着して設けたものとしても良い。また前記引張力強化繊維(2)を低反発素材(1)の片面に貼着させる場合は、低反発素材(1)の表面に貼着するのが好ましい。
【0020】
尚、前記アラミド繊維は軽量で耐衝撃性に優れており、引張強度が鋼鉄の5倍前後であると言われている。この時、アラミド繊維の全ての中で最高の引張強度を持つと考えられているケブラー(デュポン社製、登録商標)を用いると良い。このケブラーは、芳香族ポリアミド系樹脂であり、パラフェニレンジアミンとテレフタル酸クロリドの重合によって得られ、分子構造が剛直で直鎖状の骨格を持つため、高強度・高耐熱性を持つものである。
前記炭素繊維は、引張強度を比重で割った比強度が鉄の約10倍と言われている。
前記セルロースナノファイバー(CNF)は、植物原料の新素材であり、このCNFは鋼鉄の1/5の重量であり、鋼鉄の5倍の強度を持つと言われている。
【0021】
(3)は低反発素材(1)に貼着した表布であり(図3参照)、該表布(3)としては、防水性を有した素材、例えば、ポリエステル系樹脂などの布地を用いる。尚、前記表布(3)の素材は上記のものに限定されるものではない。(4)は低反発素材(1)に貼着した裏布であり、該裏布(4)としては、ポリアミド系樹脂等のメッシュ布地を用いる。尚、前記表布(3)と裏布(4)は、樹脂等のメッシュ布地に限定されるものではない。又、前記表布(3)と裏布(4)は、必要に応じて用いる。
【0022】
次に本発明の作用を図4に基づいて説明する。先ず始めに本発明を図5のように、シート状に形成したものを床に置き、上方から重い球体を落下させる。すると、球体が図4(a)のように低反発素材(1)に食い込まれ、図中に示す矢印の如く衝撃力は、表側(上側)の低反発素材(1)によって吸収されて緩和されるが、衝撃力が大きい場合は、充分に吸収されずに引張力強化繊維(2)まで球体が達する。この時の衝撃力は引張力強化繊維(2)によって、球体の食い込みを防ぎながら図4(b)の図中の矢印のように衝撃力を分散させる。分散された衝撃力は、裏側(床側)の低反発素材(1)によって効率良く吸収されて緩和する。この時、球体は、図4(c)に示すように、引張力強化繊維(2)で球体が床に接触しないで手前で止まる。この場合、球体の衝撃力は、3段階に吸収,分散,吸収を経て緩和されるため、球体が本発明品を貫通して床面に達することが殆どない。
【0023】
尚、上記の場合には、球体等の予想される大きさの衝撃力(用途に応じた最大衝撃力)が略完全に吸収できるように、低反発素材(1)の厚さや引張力強化繊維(2)の芯材としての枚数などを調整しておく。又、図2のように引張力強化繊維(2)を低反発素材(1)の表面に貼着させた場合は、球体が落下すると、引張力強化繊維(2)によって、衝撃力が図4(b)のように分散されて吸収されるので、低反発素材(1)の厚さを薄くすることが可能である。この時、引張力強化繊維(2)によって、衝撃力が分散され、その分散された力が低反発素材(1)で効率良く吸収されることにより、激突した球体の跳ね返りが、低反発素材(1)だけの時よりも小さくなり、より広い用途、例えば、球技用のプロテクターなどの最適な材料になる。
【0024】
このように本発明は、引張力強化繊維(2)の引張力強度の向上効果と、低反発素材(1)の衝撃吸収効果とが相俟った効果が得られる。このため、本発明を防災用具として用いれば、飛来物或いは落下物に対して、略完全に身体が保護できることが可能になる。しかも低反発素材(1)や引張力強化繊維(2)には断熱効果も有しているので、火災時に重宝なものになる。又、本発明は柔軟であるので、折畳むことが可能であり、持ち運びが便利で、携帯に適した商品として提供可能である。
【0025】
又、本発明を頭部に被るゴルフ用品として使用すると、ゴルフボールが頭部に当たる事故に遭遇しても、頭部が殆ど負傷せずに保護することが可能になる。また本発明を頭部に被る防災用品として使用すれば、頭部にガラスや先端が尖った落下物や飛来物に当っても頭部が殆ど負傷せずに保護することが可能になると共に転んだ際に、凹凸のある岩石,釘,枝等にぶつかっても、殆ど怪我することなく頭部等を守ることが出来る。
【0026】
また本発明を、ヘルメットの代りに帽子状の物品として使用すれば、軽量となり、長時間被っても負担が少なく、着用性に優れているため、低学年の児童が通学時に被る黄色のヘルメット代り、黄色の安全帽子とすれば、普通の帽子とあまり変わらず、着用し易いものとなる。一方、工場や作業場などでヘルメットの代りに、安全帽子として用いることが出来る。又、野球選手の全員が、安全帽子を被ってプレーをしても、安全帽子全体は軟らかいので、選手同士が激突した場合、頭部を強打し、或いは、頭部が相手の部位に強打しても怪我の恐れが殆どないものとなる。
【0027】
更に、本発明をゴルフボールや野球などの球技スポーツの練習用具、例えば、打撃用の的として使用すると、長期間に渡って使用できる的になると共に、軽いので移動が簡単なものとなる。しかも本発明を帽子に使用した際は、引張力強化繊維(2)としてアラミド繊維を用いても、低反発素材(1)の中間にアラミド繊維が芯材として設けておけば、アラミド繊維の紫外線による劣化が防止できる。
【符号の説明】
【0028】
1 低反発素材
2 引張力強化繊維
図1
図2
図3
図4
図5