)と発泡樹脂部分の厚さ(f)の総厚(2s+f)が1.5〜4.0mmであり、総厚(2s+f)に対するスキン層の合計厚さ(2s)の比率(2s/(2s+f)×100)が20〜70%であることを特徴とする発泡成形体、並びにその製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の発泡成形体は、表面がスキン層により被覆された発泡樹脂部分を有する。片面のスキン層の厚さ(s
1)と反対面のスキン層の厚さ(s
2)の平均厚さ(s=(s
1+s
2)/2)は250〜600μmであり、好ましくは280〜600μm、より好ましくは300〜600μmである。片面及び反対面のスキン層の合計厚さ(2s=s
1+s
2)と発泡樹脂部分の厚さ(f)の総厚(2s+f)は1.5〜4.0mmであり、好ましくは2.0〜4.0mm、より好ましくは2.4〜4.0mmである。総厚(2s+f)に対するスキン層の合計厚さ(2s)の比率(以下「スキン層比率」ともいう)(2s/(2s+f)×100)は20〜70%であり、好ましくは22〜60%、より好ましくは25〜55%である。このような層構成によって耐衝撃性に優れる発泡成形体が得られる。
【0021】
また、発泡樹脂部分の発泡前の初期厚さ(f')は好ましくは0.7〜2.0mm、より好ましくは1.0〜1.8mmであり、発泡倍率は好ましくは1.3〜3.0倍、より好ましくは1.5〜2.8倍である。
【0022】
本発明の発泡成形体が板状の成形体の場合、スキン層の平均厚さ(s)は板の片面と反対面の両スキン層の平均厚さであり、総厚(2s+f)は板全体の厚さであり、スキン層比率(2s/(2s+f)×100)は板全体の厚さに対するスキン層の合計厚さの比率である。ただし、本発明の発泡成形体の形状は板状に限定されない。例えば、湾曲された形状であってもよいし、部分的に凸部や凹部を有する形状でもよい。部分的に厚さが異なる形状の場合は、その発泡成形体の少なくとも一部(好ましくは主要部)が、本発明のスキン層の厚さ、総厚、スキン層比率の関係を満たせばよい。
【0023】
本発明の発泡成形体はポリプロピレン系樹脂組成物からなることが好ましい。さらに、そのポリプロピレン系樹脂組成物は、以下のプロピレン・エチレン系ブロック共重合体(A)、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)及び必要に応じて無機充填剤(C)を含有することが好ましい。
【0024】
<プロピレン・エチレン系ブロック共重合体(A)>
プロピレン・エチレン系ブロック共重合体(A)は、プロピレン単位とエチレン単位を含むブロック共重合体であれば良い。特に、23℃におけるn−デカン不溶部(Dinsol)70〜95質量%(より好ましくは75〜93質量%)と23℃におけるn−デカン可溶部(Dsol)5〜30質量%(より好ましくは7〜25質量%)を含むプロピレン・エチレン系ブロック共重合体が好ましい。n−デカン溶媒による可溶部と不溶部との分別は、後述する実施例の欄に記載する。
【0025】
n−デカン不溶部は、主にプロピレン単独重合体から構成されているが、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下の他のα−オレフィンモノマーから導かれる構造単位をコモノマーとして含有していてもよい。そのようなα−オレフィンの具体例としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセンが挙げられる。
【0026】
n−デカン不溶部は、ASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定したメルトフローレート(MFR)値が、好ましくは50〜250g/10分、より好ましくは100〜220g/10分である。このような性状の不溶部は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)に優れた流動性を付与する。
【0027】
n−デカン不溶部は、
13C−NMRで測定されるアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)が、好ましくは97%以上である。ここでアイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は、プロピレン重合体の立体規則性の指標になる値であって、この値が大きいほど立体規則性が高いことを示し、そのような不溶部を含むプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は高い結晶性を示す。
【0028】
アイソタクチックペンタッド分率(mmmm分率)は、プロピレン重合体分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖の存在割合を示しており、具体的には、プロピレンモノマー単位で5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の
13C−NMRスペクトルの吸収ピークを、メチル炭素領域の全吸収ピークに対する割合として求められる値である。
【0029】
一方、n−デカン可溶部は、主としてプロピレン・エチレンランダム共重合体から構成されており、その他に高分子量プロピレン単独重合体や低分子量プロピレン単独重合体の一部、あるいは他のα−オレフィンをコモノマーとする共重合体の一部、さらにはブロック共重合体製造時に生じる副生物などが含まれていてもよい。
【0030】
n−デカン可溶部は、エチレン含有量が、好ましくは20〜50モル%、より好ましくは23〜45モル%、プロピレン含有量が、好ましくは50〜80モル%、より好ましくは55〜77モル%である。n−デカン可溶部の135℃、デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]は、好ましくは5〜10dl/g、より好ましくは7〜10dl/gである。このような性状の可溶部は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)に優れた発泡性を付与する。
【0031】
n−デカン不溶部と可溶部とを含むプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、ASTM D−1238に準拠し、230℃、2.16kg荷重下で測定されるそのメルトフローレート(MFR)値が好ましくは40〜200g/10分、より好ましくは50〜150g/10分である。MFR値がこの範囲にあると、樹脂組成物に良好な成形性と高い機械的強度を付与する。
【0032】
プロピレン・エチレン系ブロック共重合体(A)の製造方法としては、例えば、公知のチーグラーナッタ触媒あるいはメタロセン触媒の存在下に、以下に示す二つの工程([工程i]及び[工程ii])を連続的に実施する方法がある。
【0033】
[工程i]は、重合温度0〜100℃、重合圧力常圧〜5MPaゲージ圧で、プロピレン単独重合、又は必要に応じてエチレンと、プロピレンとを共重合させる工程である。[工程i]では、プロピレン単独重合とするか、プロピレンに対するエチレンのフィード量を少量とすることによって、[工程i]で製造される重合体がn−デカン不溶部の主成分となるように調整することができる。
【0034】
[工程ii]は、重合温度0〜100℃、重合圧力常圧〜5MPaゲージ圧で、プロピレンと、エチレンとを共重合させる工程である。[工程ii]では、プロピレンに対するエチレンのフィード量を[工程i]のときよりも多くすることによって、[工程ii]で製造される重合体がn−デカン可溶部の主成分となるように調整することができる。
【0035】
[工程ii]で、重合系内のプロピレンに対するエチレンのフィード量を制御することにより、可溶部中のエチレン含有量を制御することができる。重合終了後、必要に応じて公知の触媒失活処理工程、触媒残渣除去工程、乾燥工程等の後処理工程を行うことにより、プロピレン・エチレン系ブロック共重合体(A)がパウダーとして得られる。
【0036】
<エチレン・α−オレフィン共重合体(B)>
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、エチレンとα−オレフィンとの共重合体である。α−オレフィンの炭素原子数は3〜10が好ましい。α−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセンが挙げられる。中でも、1−ブテン、1−オクテンが好ましい。
【0037】
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)のASTM D−1238に準拠し、190℃、荷重2.16kgの条件下で測定したそのメルトフローレート(MFR)は、好ましくは1〜50g/10分、より好ましくは4〜40g/10分である。
【0038】
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の密度は、好ましくは0.86〜0.92g/cm
3、より好ましくは0.86〜0.89g/cm
3である。
【0039】
<無機充填剤(C)>
必要に応じて用いる無機充填剤(C)としては、タルク、クレー、炭酸カルシウム、マイカ、けい酸塩類、炭酸塩類、ガラス繊維等のプラスチック用配合材として利用されている無機物を使用できる。中でもタルクが好ましい。無機充填剤(C)の平均粒径は、好ましくは1〜10μm、より好ましくは2〜7μmである。
【0040】
<ポリプロピレン系樹脂組成物>
ポリプロピレン系樹脂組成物は、以上説明したプロピレン・エチレン系ブロック共重合体(A)、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)及び必要に応じて無機充填剤(C)を含有することが好ましい。成分(A)、成分(B)及び成分(C)の合計を100質量部とした場合、プロピレン・エチレン系ブロック共重合体(A)の含有量は、好ましくは65〜85質量部、より好ましくは67〜83質量部である。エチレン・α−オレフィン共重合体(B)の含有量は、好ましくは15〜30質量部、より好ましくは17〜28質量部である。無機充填材(C)の含有量は、好ましくは0〜5質量部、より好ましくは0〜3質量部である。
【0041】
ポリプロピレン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲内で、ポリプロピレン以外の各種の重合体や添加剤を含有してもよい。重合体の具体例としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン・不飽和カルボン酸エステル共重合体、カルボン酸変成ポリオレフィンが挙げられる。添加剤の具体例としては、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、老化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、核剤、滑剤、難燃剤、顔料、染料、有機充填剤が挙げられる。
【0042】
各成分及びその他の添加剤は、その所定量を、ヘンシェルミキサー、V−ブレンダー、リボンブレンダーあるいはタンブラーブレンダー等を用いて均一に混合し、次いで押出機を用いて通常ペレット状に加工すると、射出成形に適した樹脂組成物として利用することができる。
【0043】
<発泡成形体>
本発明の発泡成形体は、原料となる樹脂組成物に発泡剤を加え、発泡成形することにより得ることができる。
【0044】
発泡剤の種類は特に制限されない。溶剤型発泡剤であっても、分解型発泡剤であってもよく、また窒素、二酸化炭素、アルゴン、空気等の気体状発泡剤、熱膨張タイプのマイクロカプセル状発泡剤であってもよい。
【0045】
溶剤型発泡剤は、射出成形機のホッパーあるいはシリンダー部分から注入して溶融原料樹脂に吸収ないし溶解させ、その後射出成形金型中で蒸発して発泡剤として機能する物質である。具体例としては、プロパン、ブタン、ネオペンタン、ヘプタン、イソヘキサン、ヘキサン、イソヘプタン、ヘプタン等の低沸点脂肪族炭化水素や、フロンガスで代表される低沸点のフッ素含有炭化水素が挙げられる。熱膨張タイプのマイクロカプセルは、この溶剤型発泡剤を、アクリロニトリルやメタアクリロニトリル、塩化ビニリデン等のマイクロカプセルに閉じ込めたものであり、カプセル内部で気化させることでカプセルを膨張させ発泡させるものである。
【0046】
分解型発泡剤は、原料樹脂組成物に予め配合されてから射出成形機へと供給され、射出成形機のシリンダー温度条件下で発泡剤が分解して炭酸ガス、窒素ガス等の気体を発生する化合物である。それは、無機系の発泡剤であってもよいし有機系の発泡剤であってもよく、また気体の発生を促すクエン酸のような有機酸やクエン酸ナトリウムのような有機酸金属塩等を発泡助剤として併用添加してもよい。
【0047】
分解型発泡剤には、無機発泡剤と有機系発泡剤がある。無機発泡剤の具体例としては、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムが挙げられる。有機発泡剤の具体例としては、N,N'−ジニトロソテレフタルアミド、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のN−ニトロソ化合物:アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロヘキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、バリウムアゾジカルボキシレート等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド、トルエンスルフォニルヒドラジド、p,p'−オキシビス(ベンゼンスルフェニルヒドラジド)、ジフェニルスルフォン−3,3'−ジスルフォニルヒドラジド等のスルフォニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4'−ジフェニルジスルフォニルアジド、p−トルエンスルフォニルアジド等のアジド化合物が挙げられる。
【0048】
発泡剤は、樹脂組成物に予め配合してもよいし、射出成形する際に配合したり、シリンダーの途中から注入してもよい。気体状発泡剤は、超臨界状態で用いてもよい。また、発泡剤や発泡助剤等を予め重合体に配合してマスターバッチを作っておき、それを射出成形する際に樹脂組成物に配合してもよい。
【0049】
発泡剤の(実成分の)添加量は、発泡成形体の要求物性、発泡剤からの発生ガス量、発泡倍率等を考慮して選択されるが、樹脂組成物100質量部に対して、通常0.1〜6質量部である。
【0050】
本発明の発泡成形体は、例えば、射出成形機を用いて、上述した樹脂組成物を射出発泡成形することにより得られる射出発泡成形体であることが好ましい。
【0051】
射出発泡成形は、例えば、樹脂組成物を射出成形機から金型のキャビティへ射出充填し、冷却に伴う収縮を発泡により補う方法(微発泡成形もしくはヒケ防止発泡成形)により行うこともできるし、射出充填後にキャビティの容積を増大させて樹脂組成物を発泡させる方法(容積拡大発泡法もしくはコアバック発泡法)により行うこともできる。この射出発泡成形に用いる成形金型は、固定型と可動型とから構成され、これらは樹脂組成物の射出充填時には型締状態にあることが好ましい。また、キャビティの容積の拡大方法としては、可動型を後退(コアバック)させてキャビティを拡開させることが一般的であるが、金型の一部を移動させることにより増大させることもできる。特に射出充填後、適度な時間を置いて可動型を移動させてキャビティ容積を増大させることが好ましい。
【0052】
可動型の初期位置は、固定型と可動型とが最も接近し、型締め力が付加された型締め状態にある時の位置である。1回の成形に使用する樹脂組成物の溶融体が未発泡の状態で充填される容積とほぼ同等な容積になる場所であって、製品形状に近いキャビティが形成されている。
【0053】
金型のキャビティへの樹脂組成物の射出速度については成形機サイズおよび成形体のサイズや板厚により異なるが、好ましくは射出時間が0.5〜10秒になるように、それに対応した射出速度を適用する。射出完了後に好ましくは0〜4秒の遅延時間を設け、スキン層を成長させ、その後に可動型を後退(コアバック)させて、キャビティ容積を拡大する。スキン層の厚さは、射出速度や遅延時間等の条件によって制御することができる。遅延時間を長くする又は射出速度を遅くするとスキン層を厚くすることができる。
【0054】
スキン層の厚さは、射出する際の固定型及び可動型の金型温度によっても制御できる。金型温度を低くするとスキン層を厚くすることができる。金型温度は結露等を起こさない範囲で、好ましくは20〜70℃である。
【0055】
コアバック時のコア(もしくは可動型)の移動速度は、成形体の厚み、樹脂の種類、発泡剤の種類、金型温度、樹脂温度により異なるが、例えば、1.0〜100mm/秒程度が好ましい。また、コアバックは、数段階に分けて行うことや可動型移動速度を変化させながら行うことも可能であり、それによりセル構造や端部形状を制御した発泡成形体が得られる。なお、この可動型移動速度はトグル式射出成形機では一般に一定速度とならないため直接設定できないことが多く(トグルを駆動するボールネジ部速度で設定することが多い)、トグル特性曲線や移動速度の実測により、平均移動速度等として得ることができる。
【0056】
射出する樹脂組成物の温度は、成形体の厚み、樹脂の種類、発泡剤の種類・添加量等により異なるが、樹脂組成物の成形に通常用いられる温度で十分であり、製品厚みが薄いもの、発泡倍率が高いものを得る場合は、通常の金型温度より高めに設定するとよい。具体的には、射出する樹脂組成物の温度は、好ましくは170〜250℃である。
【0057】
また、金型内への樹脂組成物の充填における射出成形機の射出率は、好ましくは90〜2000cm
3/秒である。また、このときの射出成形機の射出圧力は、好ましくは50〜200MPaである。
【0058】
本発明においては、キャビティに一度に樹脂組成物を充填し、スキン層厚を成長させた後、発泡させることにより、金型と接する部分の樹脂が内部の樹脂に比べて早く固化し、表面がスキン層により被覆された発泡樹脂部分を有する発泡成形体が得られる。この発泡成形体は、高剛性でありながら、軽量で、発泡成形体の内部のセル形状、セル密度、発泡倍率に多少の分布が発生しても、スキン層の平滑性と剛性により外観が良好で、耐衝撃性に優れる。
【0059】
発泡終了後はそのまま冷却して発泡成形体を取り出すこともできるし、僅かに型締めすることにより発泡成形体と金型の接触状態を制御して冷却を促進することで成形サイクルを短縮しつつ、凹みやセル形状の良好な発泡成形体を得ることもできる。
【0060】
本発明の発泡成形体の製造方法では、例えば、厚みが1.5〜4.0mm程度の発泡成形体を好適に得ることができる。この発泡成形体が独立気泡を有する場合、その平均セル径は、0.05〜1.0mm程度であるが、成形体形状や用途によっては、数mmのセル径であっても、そのセルの一部が連通したものが一部存在してもよい。特に、発泡倍率が高くなると、複数のセルは共に会合し連通化し、発泡成形体の内部は中空状態になるが、この空洞中に樹脂の支柱が形成されるため、発泡成形体は、高度に軽量化され、強固な剛性を有する。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
<測定方法>
実施例・比較例において、各物性の測定は以下の各方法により行った。
【0063】
[流動性(メルトフローレート:MFR)]
発泡剤を含有しない状態で、ASTM D−1238法に基づき190℃又は230℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0064】
[プロピレン・エチレン系ブロック共重合体中のn−デカン不溶部(a1)及びn−デカン可溶部(a2)の含有量]
ガラス製の測定容器に、プロピレン・エチレン系ブロック共重合体約3g(10
−4gの単位まで測定した。また、この質量を、下記の式においてb(g)と表した。)、n−デカン500mL、及びn−デカンに可溶な耐熱安定剤を少量投入し、窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間で150℃に昇温してプロピレン・エチレン系ブロック共重合体をn−デカンに溶解させた。次いで、150℃で2時間保持した後、8時間かけて23℃まで徐冷した。得られたプロピレン・エチレン系ブロック共重合体の析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G−4規格のグラスフィルターで減圧ろ過した。ろ液の100mLを採取し、これを減圧乾燥して上記成分(a2)の一部を得た。この質量を10
−4gの単位まで測定した(この質量を、下記の式においてa(g)と表した)。次いで、プロピレン・エチレン系ブロック共重合体中の成分(a1)及び(a2)の含有量を以下の式により求めた。
成分(a2)の含有量 [質量%]=100×5a/b
成分(a1)の含有量 [質量%]=100−成分(a2)の含有量
【0065】
[極限粘度([η]:dl/g)]
デカリン溶媒を用いて、135℃で測定した。
【0066】
[密度]
ISO 1183(JIS K7112)に準じて測定した。
【0067】
〔スキン層の厚さ(s)の測定〕
スキン層の厚さ(s)は以下の方法で測定した。まず、セルを破壊しないように射出発泡成形体断面を鋭利な刃物で切断し、その断面写真を撮影した。その断面写真から全体の板厚に対する表層部のソリッド状のスキン層(第一のスキン層と第二のスキン層)の厚みをmm単位で計測し、その平均をスキン層厚(s)とした。
【0068】
<射出成形用の原料樹脂組成物>
実施例及び比較例において、使用した各成分は次の通りである。
【0069】
[プロピレン・エチレン系ブロック共重合体(A)]
「B−PP1」:プロピレン・エチレン系ブロック共重合体(n−デカン可溶部=11質量%、エチレン含量=41モル%、極限粘度[η]=8dl/g、MFR(230℃、2.16kg)=85g/10分)
「B−PP2」:プロピレン・エチレン系ブロック共重合体(n−デカン可溶部=10質量%、エチレン含量=40モル%、極限粘度[η]=4dl/g、MFR(230℃、2.16kg)=95g/10分)
【0070】
[エチレン・α−オレフィン共重合体(B)]
「EOR」:エチレン・1−オクテン共重合体(ザ・ダウケミカル・カンパニー製、商品名EG8407、MFR(190℃、2.16kg)=30g/10分、密度=0.87kg/m
3)
「EBR1」:エチレン・1−ブテン共重合体(三井化学(株)製、商品名A−35070S、MFR(190℃、2.16kg)=35g/10分、密度=0.87kg/m
3)
「EBR2」:エチレン・1−ブテン共重合体(三井化学(株)製、商品名A−6050、MFR(190℃、2.16kg)=6g/10分、密度=0.86kg/m
3)
【0071】
[無機充填剤(C)]
「TALC」:タルク(浅田製粉(株)製、商品名JM209、平均粒径4.0μm)
【0072】
<実施例1>
ポリプロピレン系樹脂組成物に対して無機系化学発泡剤を含む発泡剤マスターバッチ(永和化成工業(株)製、商品名EE65C)を、樹脂100質量部当りマスターバッチとして4質量部(無機系化学発泡剤の実成分量では約1.6質量部)になる量で配合した。得られたポリプロピレン系樹脂組成物の組成を表1に示す。そして、射出成形機(宇部興産機械(株)製、装置名MD350S−III)を用いて、以下の条件でコアバック射出発泡成形を行い、表面がスキン層により被覆された板状発泡成形体を得た。
キャビティサイズ:縦400mm、横200mm、厚さ1.4mm
ゲート:キャビティ中央1点ダイレクトゲート
射出温度:210℃
金型表面温度:45℃
発泡工程終了後の成形型クリアランス:2.8mm
成形機の可動型移動速度設定:200mm/s(設定値はボールネジ部の速度であり、実際の可動型移動速度は約20mm/s)
射出時金型キャビティクリアランス(L0):1.4mm
発泡倍率:2.0倍
遅延時間:1.5秒
射出速度:140mm/s
発泡前の初期厚さ(f’):1.4mm
【0073】
得られた板状発泡成形体の厚さ(2s+f)は2.8mm、スキン層の厚さ(s)は346μm、スキン層の比率(2s/(2s+f)×100)は25%であった。
【0074】
<実施例2>
遅延時間を1.9秒に変更したこと以外は、実施例1と同様にして板状発泡成形体を得た。この板状発泡成形体の厚さ(2s+f)は2.8mm、スキン層の厚さ(s)は404μm、スキン層の比率(2s/(2s+f)×100)は29%であった。
【0075】
<実施例3>
初期厚(f’)を1.0mm、遅延時間を0.5秒に変更したこと以外は、実施例1と同様にして板状発泡成形体を得た。この板状発泡成形体の厚さ(2s+f)は2.0mm、スキン層の厚さ(s)は281μm、スキン層の比率(2s/(2s+f)×100)は28%であった。
【0076】
<実施例4>
発泡倍率を1.9倍、遅延時間を1.9秒、射出速度を160mm/sに変更したこと以外は、実施例1と同様にして板状発泡成形体を得た。この板状発泡成形体の厚さ(2s+f)は2.7mm、スキン層の厚さ(s)は402μm、スキン層の比率(2s/(2s+f)×100)は30%であった。
【0077】
<実施例5>
発泡倍率を1.9倍、遅延時間を1.9秒に変更したこと以外は、実施例1と同様にして板状発泡成形体を得た。この板状発泡成形体の厚さ(2s+f)は2.7mm、スキン層の厚さ(s)は389μm、スキン層の比率(2s/(2s+f)×100)は29%であった。
【0078】
<実施例6>
発泡倍率を1.9倍、遅延時間を1.7秒、射出速度を100mm/sに変更したこと以外は、実施例1と同様にして板状発泡成形体を得た。この板状発泡成形体の厚さ(2s+f)は2.7mm、スキン層の厚さ(s)は396μm、スキン層の比率(2s/(2s+f)×100)は29%であった。
【0079】
<実施例7>
発泡倍率を1.9倍、射出速度を60mm/sに変更したこと以外は、実施例1と同様にして板状発泡成形体を得た。この板状発泡成形体の厚さ(2s+f)は2.7mm、スキン層の厚さ(s)は393μm、スキン層の比率(2s/(2s+f)×100)は29%であった。
【0080】
<実施例8>
樹脂組成物の成分配合割合を表1に記載の割合(タルク配合)に変更し、発泡倍率を2.1倍、遅延時間を2.0秒に変更したこと以外は、実施例1と同様にして板状発泡成形体を得た。この板状発泡成形体の厚さ(2s+f)は3.0mm、スキン層の厚さ(s)は419μm、スキン層の比率(2s/(2s+f)×100)は28%であった。
【0081】
<比較例1>
遅延時間を0秒に変更したこと以外は、実施例1と同様にして板状発泡成形体を得た。この板状発泡成形体の厚さ(2s+f)は2.8mm、スキン層の厚さ(s)は233μm、スキン層の比率(2s/(2s+f)×100)は17%であった。
【0082】
<比較例2>
初期厚(f’)を1.6mm、遅延時間を0.5秒に変更したこと以外は、実施例1と同様にして板状発泡成形体を得た。この板状発泡成形体の厚さ(2s+f)は3.2mm、スキン層の厚さ(s)は272μm、スキン層の比率(2s/(2s+f)×100)は17%であった。
【0083】
<比較例3>
発泡倍率を2.2倍、遅延時間を0.5秒に変更したこと以外は、実施例1と同様にして板状発泡成形体を得た。この板状発泡成形体の厚さ(2s+f)は3.1mm、スキン層の厚さ(s)は255μm、スキン層の比率(2s/(2s+f)×100)は16%であった。
【0084】
<比較例4>
発泡倍率を2.3倍、遅延時間を0秒に変更したこと以外は、実施例8と同様にして板状発泡成形体を得た。この板状発泡成形体の厚さ(2s+f)は3.2mm、スキン層の厚さ(s)は246μm、スキン層の比率(2s/(2s+f)×100)は15%であった。
【0085】
<比較例5>
樹脂組成物の成分配合割合を表1に記載の割合に変更し、遅延時間を0秒に変更したこと以外は、実施例1と同様にして板状発泡成形体を得た。この板状発泡成形体の厚さ(2s+f)は2.8mm、スキン層の厚さ(s)は242μm、スキン層の比率(2s/(2s+f)×100)は17%であった。
【0086】
<比較例6>
遅延時間を0.5秒に変更したこと以外は、実施例1と同様にして板状発泡成形体を得た。この板状発泡成形体の厚さ(2s+f)は2.8mm、スキン層の厚さ(s)は264μm、スキン層の比率(2s/(2s+f)×100)は19%であった。
【0087】
<耐衝撃性の評価>
成形体の耐衝撃性の評価方法としては、一般にシャルピー衝撃試験、アイゾット衝撃試験、落球試験、パンクチャー衝撃試験が一般的であるが、基本的に伸びの大きな材料が衝撃性が高いことは一般に知られているので、今回は引張試験の破断伸びをその評価指標とした。すなわち、以上の実施例及び比較例で得た発泡成形体のJIS K7162に準じた引張破断呼び歪を、以下の条件で測定した。結果を表1及び2に示す。また、樹脂組成物が同じである実施例1〜7と比較例1〜3、及び実施例8と比較例4におけるスキン層の合計厚さの比率と引張破断呼び歪との関係を示すグラフをグラフにして
図1に示す。
試験片:JIS K7139 タイプA2、ダンベル(打抜き)
ダンベル全長170mm、平行部の幅10mm×長さ60mm×成形体厚
引張速度:50mm/分
チャック間距離:115mm
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
表1及び2に示すとおり、スキン層の合計厚さ(2s)の比率(2s/(2s+f)×100)が20%である実施例1〜8の発泡成形体は、引張破断呼び歪が高く、耐衝撃性に優れる発泡成形体であった。一方、その比率が20%未満である比較例1〜6の発泡成形体は、引張破断呼び歪が低かった。特に
図1のグラフから、その比率が20%以上になると引張破断呼び歪が急激に高くなることを理解できる。