【課題】シフトレバーに対するギヤ系の振動が伝達してしまうのを抑制することができるとともに、シフトレバーのシフト操作時における操作性を維持することができる変速操作装置を提供する。
【解決手段】シフトアーム2と一体的に回動可能な回動部3と、ニュートラル位置と所定の変速位置との間で移動可能なシフトフォークシャフト(h1〜h3)と、嵌合溝Kが形成されたシフトピース(m1〜m3)とを具備し、シフト操作時、回動部3が嵌合溝Kの壁面Kaを押圧し、シフトピース(m1〜m3)を介してシフトフォークシャフト(h1〜h3)を移動可能とされた変速操作装置において、回動部3は、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるときよりも変速位置にあるときの方が、嵌合溝Kの壁面(Ka、Kb)との間のクリアランスが大きくなる形状とされたものである。
前記切欠き部は、前記回動部の中心より上部、当該回動部の中心より下部、又は当該回動部の中心に対して上部及び下部に設けられたことを特徴とする請求項2記載の変速操作装置。
少なくとも前記回動部の中心より下部に前記切欠き部が設けられ、且つ、前記シフトフォークは、前記シフトフォークシャフトが前記ニュートラル位置から前記変速位置に移動する際、スリーブ及びシンクロリングを任意の変速段のギヤに向かって移動させ得るとともに、前記回動部は、前記シフトフォークが前記シンクロリングを作動開始させる作動開始位置まで前記押圧部が延設されたことを特徴とする請求項3記載の変速操作装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の変速操作装置においては、以下の如き問題があった。
シフトレバーをシフト操作し、シフトフォークシャフトが所定の変速位置にあるとき、そのシフト操作により選択された任意変速段のギヤやシフトフォークを介して、エンジンの駆動力の伝達に伴う振動(以下、ギヤ系の振動ともいう)がシフトアームに伝わってしまい、シフトレバーを不用意に振動させてしまう虞があった。このようなシフトレバーに振動が生じてしまうと、不快な異音等が生じてしまうとともに、操作フィーリングを損なう虞がある。なお、かかるシフトレバーの振動は、ギヤ系の振動が伝達されて生じることから、シフトフォークシャフトがニュートラル位置にあるときは生じることはない。
【0006】
一方、シフトピースに形成された嵌合溝の壁面と回動部との間のクリアランスを大きく設定し、シフトフォークシャフトが所定の変速位置にあるとき、当該回動部と嵌合溝の壁面とが接触しないようにすれば、ギヤ系の振動が伝達されてシフトレバーを振動させてしまう問題を解消させることができると考えられるものの、その場合、シフトフォークシャフトがニュートラル位置にあるときも嵌合溝の壁面と回動部との間に大きな寸法のクリアランスが生じてしまい、シフトレバーをシフト操作する際、大きなクリアランスにより空走感が生じて操作フィーリングを損なう虞があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、シフトレバーに対するギヤ系の振動が伝達してしまうのを抑制することができるとともに、シフトレバーのシフト操作時における操作フィーリングを維持することができる変速操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、シフトレバーに対するシフト操作に伴って回動可能なシフトアームと、前記シフトアームの先端部に形成され、当該シフトアームと一体的に回動可能な回動部と、任意の位置にシフトフォークが形成されるとともに、ニュートラル位置と所定の変速位置との間で移動可能なシフトフォークシャフトと、前記シフトフォークシャフトに一体的に形成され、前記回動部を嵌合し得る嵌合溝が形成されたシフトピースとを具備し、前記シフトアームに対してシフト操作が行われると、前記回動部が前記嵌合溝の壁面を押圧し、前記シフトピースを介して前記シフトフォークシャフトを移動可能とされた変速操作装置において、前記回動部は、前記シフトフォークシャフトが前記ニュートラル位置にあるときよりも前記変速位置にあるときの方が、前記嵌合溝の前記壁面との間のクリアランスが大きくなる形状とされたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の変速操作装置において、前記回動部は、前記シフトアームの回動に伴って前記嵌合溝の前記壁面を押圧して前記シフトフォークシャフトを前記ニュートラル位置から前記変速位置まで移動させる押圧部と、前記シフトフォークシャフトが前記変速位置にある状態で前記嵌合溝の一方の前記壁面又は他方の前記壁面と対峙し、当該壁面との間にクリアランスを形成する切欠き部とを具備したことを特徴とする。
【0010】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の変速操作装置において、前記切欠き部は、前記回動部の中心より上部、当該回動部の中心より下部、又は当該回動部の中心に対して上部及び下部に設けられたことを特徴とする。
【0011】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の変速操作装置において、少なくとも前記回動部の中心より下部に前記切欠き部が設けられ、且つ、前記シフトフォークは、前記シフトフォークシャフトが前記ニュートラル位置から前記変速位置に移動する際、スリーブ及びシンクロリングを任意の変速段のギヤに向かって移動させ得るとともに、前記回動部は、前記シフトフォークが前記シンクロリングを作動開始させる作動開始位置まで前記押圧部が延設されたことを特徴とする。
【0012】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4の何れか1つに記載の変速操作装置を有することを特徴とする自動車である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、回動部は、シフトフォークシャフトがニュートラル位置にあるときよりも変速位置にあるときの方が、嵌合溝の壁面との間のクリアランスが大きくなる形状とされたので、シフトレバーに対するギヤ系の振動が伝達してしまうのを抑制することができるとともに、シフトレバーのシフト操作時における操作フィーリングを維持することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、回動部は、シフトアームの回動に伴って嵌合溝の壁面を押圧してシフトフォークシャフトをニュートラル位置から変速位置まで移動させる押圧部と、シフトフォークシャフトが変速位置にある状態で嵌合溝の一方の壁面又は他方の壁面と対峙し、当該壁面との間にクリアランスを形成する切欠き部とを具備したので、回動部と嵌合溝の壁面との間のクリアランスを、ニュートラル位置では当該壁面と押圧部との間の比較的小さな寸法とし、変速位置では当該壁面と切欠き部との間の比較的大きな寸法とすることができる。したがって、シフトフォークシャフトがニュートラル位置にあるときよりも変速位置にあるときの方が、回動部と嵌合溝の壁面との間のクリアランスを確実且つ容易に大きく設定することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、切欠き部は、回動部の中心より上部、当該回動部の中心より下部、又は当該回動部の中心に対して上部及び下部に設けられたので、シフトアームの形状や回動部の取付角度、或いはシフトピースの嵌合溝の形状等に応じて切欠き部を適宜形成することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、少なくとも回動部の中心より下部に切欠き部が設けられ、且つ、シフトフォークは、シフトフォークシャフトがニュートラル位置から変速位置に移動する際、スリーブ及びシンクロリングを任意の変速段のギヤに向かって移動させ得るとともに、回動部は、シフトフォークがシンクロリングを作動開始させる作動開始位置まで押圧部が延設されたので、シフトレバーのシフト操作時、シフトフォークシャフトを確実にニュートラル位置から所定の変速位置まで移動させることができ、且つ、シンクロリングを確実に作動させることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、請求項1〜4の効果を奏する自動車を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る変速操作装置は、マニュアルトランスミッション(MT)等、車両のトランスミッションに配設されるとともに、当該トランスミッションが具備する複数のシフトフォークのうち特定のシフトフォークを選択するセレクト操作と、選択された特定のシフトフォークを作動させるシフト操作とにより、所定の変速段への変速を行わせるためのものである。また、本実施形態に係る変速操作装置は、自動車に取り付けられている。自動車とは、乗用車の他、バス、トラック又は重機等の大型車両も含む。
【0020】
かかる変速操作装置が適用されるトランスミッションは、
図1に示すように、エンジン側と連結されたメインシャフトSa及び駆動輪側と連結されたカウンタシャフトSbが互いに略平行な状態で回転可能に配設されており、当該メインシャフトSaには、1速用ドライブギヤG1a、2速用ドライブギヤG2a、3速用ドライブギヤG3a、4速用ドライブギヤG4a、5速用ドライブギヤG5a、6速用ドライブギヤG6aがそれぞれ取り付けられるとともに、当該カウンタシャフトSbには、1速用ドリブンギヤG1b、2速用ドリブンギヤG2b、3速用ドリブンギヤG3b、4速用ドリブンギヤG4b、5速用ドリブンギヤG5b、6速用ドリブンギヤG6bがそれぞれ取り付けられている。
【0021】
また、本実施形態に適用されるトランスミッションは、動力伝達用のギヤ(ドライブギヤ及びドリブンギヤ)が常に噛み合った状態で変速可能とされた常時噛み合い式とされており、1速用ドリブンギヤG1bと2速用ドリブンギヤG2bとの間、3速用ドライブギヤG3aと4速用ドライブギヤG4aとの間、5速用ドライブギヤG5aと6速用ドライブギヤG6aとの間には、それぞれ連結機構H1〜H3が設けられている。例えば、1速用ドリブンギヤG1bと2速用ドリブンギヤG2bとの間に設けられた連結機構H1には、スリーブSが配設されており、スリーブSを
図1中右側に移動させると、1速用ドリブンギヤG1bがカウンタシャフトSbと一体的に結合して変速段を1速とする一方、スリーブSを同図中左側に移動させると、2速用ドリブンギヤG2bがカウンタシャフトSbと一体的に結合して変速段を2速とするよう構成されている。
【0022】
さらに、カウンタシャフトSbの所定位置には、ドライブギヤGaが形成されており、かかるドライブギヤGaにドリブンギヤGbが噛み合って配設されている。このドリブンギヤGbには、差動機構Dを介して駆動輪に連結されるドライブシャフト(不図示)が取り付けられており、メインシャフトSaから入力されたエンジンの駆動力が、所定の変速段のドライブギヤ(G1a〜G6a)及びドリブンギヤ(G1b〜G6b)を経た後、カウンタシャフトSb、ドライブギヤGa及びドリブンギヤGb、並びにドライブシャフトを介して駆動輪に伝達されるようになっている。
【0023】
一方、連結機構H2、H3には、上記の連結機構H1と同様のスリーブSが配設されているとともに、各連結機構H1〜H3におけるスリーブSには、シフトフォーク(f1、f2、f3)がそれぞれ嵌め込まれている。これらシフトフォーク(f1、f2、f3)は、シフトフォークシャフト(h1〜h3)を介してシフトピース(m1〜m3)とそれぞれ連結されており、変速操作装置におけるシフトレバー1の操作によってシフトフォーク(f1、f2、f3)の何れかを選択的に作動させることにより、任意の変速段への変速を行わせ得るようになっている。
【0024】
すなわち、変速操作装置におけるシフトレバー1によって、特定のシフトピース(m1〜m3)が選択されるとともに、選択された特定のシフトピース(m1〜m3)を所定方向に作動することにより、そのシフトピース(m1〜m3)と連結したシフトフォークシャフト(h1〜h3)及びシフトフォーク(f1〜f3)を所定方向に作動させることで、所定の変速段への変速が可能とされているのである。
【0025】
しかるに、スリーブSは、メインシャフトSa又はカウンタシャフトSbに取り付けられ、これらメインシャフトSa又はカウンタシャフトSbと同一回転速度で回転し得るよう構成されている。そして、シフトフォークシャフト(h1〜f3)がマニュアル位置から変速位置まで移動してシフトフォークf1が同移動に移動すると、スリーブSがメインシャフトSa又はカウンタシャフトSbに沿って移動するとともに、そのスリーブSの移動に伴って動作するクラッチハブ(不図示)がドライブギヤの側面又はドリブンギヤの側面の噛み合い歯(スプライン)に噛み合うことで、メインシャフトSa又はカウンタシャフトSbとドライブギヤ又はドリブンギヤとが一体的に回転可能とされている。
【0026】
さらに、本実施形態に係る連結機構H1〜H3には、シフトフォーク(f1、f2、f3)の移動に伴い、スリーブSと共に移動し得るシンクロリング(Q1、Q2)が設けられている。かかるシンクロリング(Q1、Q2)は、シンクロナイザ(同期)機構を構成するもので、スリーブSに押圧されて動作し、ドライブギヤ又はドリブンギヤとの間で摩擦を生じさせることにより、当該ドライブギヤ又はドリブンギヤの回転速度とスリーブSの回転速度とを同期させ得るものである。
【0027】
例えば、連結機構H1において、スリーブSを
図1中右側に移動させると、シンクロリングQ1が1速用ドリブンギヤG1b側に移動し、当該ドリブンギヤG1bとの間で摩擦を生じさせることにより、スリーブSの回転速度と1速用ドリブンギヤG1bの回転速度とを同期させるとともに、1速用ドリブンギヤG1bがカウンタシャフトSbと一体的に結合して変速段を1速とする。また、スリーブSを同図中左側に移動させると、シンクロリングQ2が2速用ドリブンギヤG2b側に移動し、当該ドリブンギヤG2bとの間で摩擦を生じさせることにより、スリーブSの回転速度と2速用ドリブンギヤG2bの回転速度とを同期させるとともに、2速用ドリブンギヤG2bがカウンタシャフトSbと一体的に結合して変速段を2速とする。なお、他の連結機構H2、H3についても同様のシンクロナイザ(同期)機構を有している。
【0028】
本実施形態に係る変速操作装置は、
図2、3に示すように、シフトレバー1に対するシフト操作に伴って回動可能なシフトアーム2と、シフトアーム2の先端部に形成され、当該シフトアーム2と一体的に回動可能な回動部3と、任意の位置にシフトフォーク(f1〜f3)が形成されるとともに、ニュートラル位置と所定の変速位置との間で移動可能なシフトフォークシャフト(h1〜h3)と、シフトフォークシャフト(h1〜h3)のそれぞれに一体的に形成され、回動部3を嵌合し得る嵌合溝Kが形成されたシフトピース(m1〜m3)とを具備している。
【0029】
シフトレバー1は、運転者が把持しつつ操作可能なシフトノブnを具備したもので、任意タイミングで揺動することによりシフト操作可能とされている。このシフトレバー1は、シフトアーム2と操作ワイヤWによって連結されており、シフトレバー1に対するシフト操作が行われると、当該シフトアーム2が中心軸Nを中心として回動可能とされている。回動部3は、シフトアーム2の先端部に一体形成されたもので、シフトアーム2が回動するのに伴って嵌合溝K内(一方の壁面Kaと他方の壁面Kbとの間)にて回動するよう構成されている。
【0030】
そして、本実施形態においては、シフトレバー1に対してシフト操作が行われると、シフトアーム2が中心軸Nを中心として回動するとともに、回動部3が嵌合溝Kの一方の壁面Kaを押圧し、その押圧力がシフトピース(m1〜m3)を介してシフトフォークシャフト(h1〜h3)に伝達されて、
図6に示すように、ニュートラル位置から所定の変速位置まで移動して変速(ギヤイン)可能とされている。反対に、シフトレバー1を元の位置に戻すと、回動部3が嵌合溝Kの他方の壁面Kbを押圧し、その押圧力がシフトピース(m1〜m3)を介してシフトフォークシャフト(h1〜h3)に伝達されて、
図5に示すように、所定の変速位置からニュートラル位置まで移動可能とされている。
【0031】
またさらに、本実施形態に係る変速操作装置は、
図2、3に示すように、シフトフォークシャフト(h1〜h3)の所定位置に複数の凹部eがそれぞれ軸方向に並んで形成されているとともに、これらシフトフォークシャフト(h1〜h3)の軸方向に対する位置決め及び当該軸方向に移動する際の節度を付与し得る節度手段4が配設されている。かかる節度手段4は、同図に示すように、シフトフォークシャフト(h1〜h3)に形成された複数の凹部eのうち何れかに嵌合して当該シフトフォークシャフト(h1〜h3)の軸方向に対する位置決めが可能なスチールボール4a(位置決め手段)と、該スチールボール4aをシフトフォークシャフト(h1〜h3)に向かって常時付勢するコイルスプリング4b(付勢手段)とを有して構成されている。
【0032】
しかして、シフトフォークシャフト(h1〜h3)に形成された凹部eにスチールボール4aがコイルスプリング4bにて付勢されつつ嵌合することにより、その位置でシフトフォークシャフト(h1〜h3)の位置決めをそれぞれ行うことができるとともに、シフトフォークシャフト(h1〜h3)が軸方向に移動する際、コイルスプリング4bの付勢力が付与されつつスチールボール4aが凹部eを乗り越えるので、節度が付与されることとなる。
【0033】
ここで、第1の実施形態に係る回動部3は、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるとき(
図5参照)よりも変速位置にあるとき(
図6参照)の方が、嵌合溝Kの壁面(Ka、Kb)との間のクリアランスが大きくなる形状とされている。すなわち、例えば嵌合溝Kの一方の壁面Kaと他方の壁面Kbとの間の寸法をuとするとともに、
図5に示すように、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるとき、回動部材3における一方の壁面Ka及び他方の壁面Kbに対して直交する方向の寸法(以下、「ニュートラル時の幅寸法」と称する。)をt1、
図6に示すように、シフトフォークシャフト(h1〜h3)が変速位置にあるとき、回動部材3における一方の壁面Ka及び他方の壁面Kbに対して直交する方向の寸法(以下、「変速時の幅寸法」と称する。)をt2とすると、(u−t1)<(u−t2)となるよう回動部3の形状が設定されているのである。
【0034】
より具体的には、本実施形態に係る回動部3は、
図4に示すように、シフトアーム2の回動に伴って嵌合溝Kの一方の壁面Kaを押圧してシフトフォークシャフト(h1〜h3)をニュートラル位置から変速位置まで移動させる押圧部3aと、シフトフォークシャフト(h1〜h3)が変速位置にある状態で嵌合溝Kの他方の壁面Kbと対峙し、当該壁面(他方の壁面Kb)との間にクリアランスを形成する切欠き部3bとを具備し、特に、切欠き部3bが回動部3の中心より上部に形成されたものとされている。また、同図において、右側の押圧部3aと左側の押圧部3aとの間の寸法をt1とし、左側の切欠き部3bと右側の押圧部3aとの間の寸法をt2とすると、t1>t2となっている。
【0035】
しかして、
図5に示すように、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるとき、回動部3の押圧部3aは、嵌合溝Kの一方の壁面Ka及び他方の壁面Kbと対峙し、ニュートラル時の幅寸法がt1とされるとともに、シフトアーム2に対してシフト操作が行われると、回動部3が回動し、その押圧部3aが一方の壁面Kaを押圧してシフトフォークシャフト(h1〜h3)を変速位置に向かって移動させる。そして、シフトフォークシャフト(h1〜h3)が変速位置まで移動すると、
図6に示すように、嵌合溝Kの一方の壁面Kaが押圧部3aと対峙する状態が維持されるとともに、他方の壁面Kbが切欠き部3bと対峙することとなり、変速時の幅寸法がt2となる。
【0036】
本実施形態に係る回動部3は、ニュートラル時の幅寸法t1が変速時の幅寸法t2より大きく設定されているので、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるときよりも変速位置にあるときの方が、嵌合溝Kの壁面(一方の壁面Ka及び他方の壁面Kb)との間のクリアランス(離間寸法)が大きくなっており、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置及び変速位置の何れにあるときも、回動部3及びシフトアーム2を介してシフトレバー1にギヤ系の振動が伝達されるのを抑制することができる。
【0037】
次に、本発明の第2の実施形態に係る変速操作装置について説明する。なお、適用されるトランスミッションについては、第1の実施形態と同様であり、その詳細な説明について省略する。また、本実施形態においても第1の実施形態と同様、スチールボール4a及びコイルスプリング4bを有した節度手段4(不図示)を具備している。
本実施形態に係る回動部3は、先の実施形態と同様、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるとき(
図8参照)よりも変速位置にあるとき(
図9参照)の方が、嵌合溝Kの壁面(Ka、Kb)との間のクリアランスが大きくなる形状とされている。すなわち、例えば嵌合溝Kの一方の壁面Kaと他方の壁面Kbとの間の寸法をuとするとともに、
図8に示すように、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるとき、ニュートラル時の幅寸法をt1、
図9に示すように、シフトフォークシャフト(h1〜h3)が変速位置にあるとき、変速時の幅寸法をt3とすると、(u−t1)<(u−t3)となるよう回動部3の形状が設定されているのである。
【0038】
より具体的には、本実施形態に係る回動部3は、
図7に示すように、シフトアーム2の回動に伴って嵌合溝Kの一方の壁面Kaを押圧してシフトフォークシャフト(h1〜h3)をニュートラル位置から変速位置まで移動させる押圧部3aと、シフトフォークシャフト(h1〜h3)が変速位置にある状態で嵌合溝Kの一方の壁面Ka及び他方の壁面Kbと対峙し、当該壁面(一方の壁面Ka及び他方の壁面Kb)との間にそれぞれクリアランスを形成する切欠き部3bとを具備し、特に、切欠き部3bが回動部3の中心に対して上部及び下部に形成されたものとされている。また、同図において、右側の押圧部3aと左側の押圧部3aとの間の寸法をt1とし、右側上部の切欠き部3bと左側下部の切欠き部3bとの間の寸法をt3とすると、t1>t3となっている。
【0039】
しかして、
図8に示すように、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるとき、回動部3の押圧部3aは、嵌合溝Kの一方の壁面Ka及び他方の壁面Kbと対峙し、ニュートラル時の幅寸法がt1とされるとともに、シフトアーム2に対してシフト操作が行われると、回動部3が回動し、その押圧部3aが一方の壁面Kaを押圧してシフトフォークシャフト(h1〜h3)を変速位置に向かって移動させる。そして、シフトフォークシャフト(h1〜h3)が変速位置まで移動すると、
図9に示すように、嵌合溝Kの一方の壁面Ka及び他方の壁面Kbがそれぞれ切欠き部3bと対峙することとなり、変速時の幅寸法がt3となる。
【0040】
本実施形態に係る回動部3は、ニュートラル時の幅寸法t1が変速時の幅寸法t3より大きく設定されているので、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるときよりも変速位置にあるときの方が、嵌合溝Kの壁面(一方の壁面Ka及び他方の壁面Kb)との間のクリアランス(離間寸法)が大きくなっており、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置及び変速位置の何れにあるときも、回動部3及びシフトアーム2を介してシフトレバー1にギヤ系の振動が伝達されるのを抑制することができる。
【0041】
次に、本発明の第3の実施形態に係る変速操作装置について説明する。なお、適用されるトランスミッションについては、第1の実施形態と同様であり、その詳細な説明について省略する。また、本実施形態においても第1の実施形態と同様、スチールボール4a及びコイルスプリング4bを有した節度手段4(不図示)を具備している。
本実施形態に係る回動部3は、先の実施形態と同様、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるとき(
図11参照)よりも変速位置にあるとき(
図12参照)の方が、嵌合溝Kの壁面(Ka、Kb)との間のクリアランスが大きくなる形状とされている。すなわち、例えば嵌合溝Kの一方の壁面Kaと他方の壁面Kbとの間の寸法をuとするとともに、
図11に示すように、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるとき、ニュートラル時の幅寸法をt1、
図12に示すように、シフトフォークシャフト(h1〜h3)が変速位置にあるとき、変速時の幅寸法をt2とすると、(u−t1)<(u−t2)となるよう回動部3の形状が設定されているのである。
【0042】
より具体的には、本実施形態に係る回動部3は、
図10に示すように、シフトアーム2の回動に伴って嵌合溝Kの一方の壁面Kaを押圧してシフトフォークシャフト(h1〜h3)をニュートラル位置から変速位置まで移動させる押圧部3aと、シフトフォークシャフト(h1〜h3)が変速位置にある状態で嵌合溝Kの他方の壁面Kbと対峙し、当該壁面(他方の壁面Kb)との間にクリアランスを形成する切欠き部3bとを具備し、特に、切欠き部3bが回動部3の中心より下部に形成されたものとされている。また、同図において、右側の押圧部3aと左側の押圧部3aとの間の寸法をt1とし、左側の押圧部3aと右側の切欠き部3bとの間の寸法をt2とすると、t1>t2となっている。
【0043】
しかして、
図11に示すように、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるとき、回動部3の押圧部3aは、嵌合溝Kの一方の壁面Ka及び他方の壁面Kbと対峙し、ニュートラル時の幅寸法がt1とされるとともに、シフトアーム2に対してシフト操作が行われると、回動部3が回動し、その押圧部3aが一方の壁面Kaを押圧してシフトフォークシャフト(h1〜h3)を変速位置に向かって移動させる。そして、シフトフォークシャフト(h1〜h3)が変速位置まで移動すると、
図12に示すように、嵌合溝Kの一方の壁面Kaが切欠き部3bと対峙するとともに、他方の壁面Kbが押圧部3aと対峙することとなり、変速時の幅寸法がt2となる。
【0044】
本実施形態に係る回動部3は、ニュートラル時の幅寸法t1が変速時の幅寸法t2より大きく設定されているので、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるときよりも変速位置にあるときの方が、嵌合溝Kの壁面(一方の壁面Ka及び他方の壁面Kb)との間のクリアランス(離間寸法)が大きくなっており、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置及び変速位置の何れにあるときも、回動部3及びシフトアーム2を介してシフトレバー1にギヤ系の振動が伝達されるのを抑制することができる。
【0045】
特に、本実施形態においては、少なくとも回動部3の中心より下部に切欠き部3bが設けられ、且つ、シフトフォーク(f1〜f3)は、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置から変速位置に移動する際、スリーブS及びシンクロリング(Q1、Q2)を任意の変速段のギヤに向かって移動させ得るとともに、回動部3は、
図13に示すように、シフトフォーク(f1〜f3)がシンクロリング(Q1、Q2)を作動開始させる作動開始位置Pまで押圧部3aが延設されている。
【0046】
すなわち、本実施形態の如く切欠き部3bを回動部の中心より下部に設けた場合、その切欠き部3bは、シフトフォーク(f1〜f3)がシンクロリング(Q1、Q2)を作動開始させる作動開始位置Pまでの範囲内には設けず、当該作動開始位置Pまで押圧部3aを延設させるよう構成されているのである。しかして、作動開始位置Pを境として、上部に押圧部3a、下部に切欠き部3bがそれぞれ形成されている。
【0047】
このように、シフトアーム2がシフト操作によって回動する際、嵌合溝Kにおける一方の壁面Kaを押圧するための押圧部3aは、シフトフォーク(f1〜f3)がシンクロリング(Q1、Q2)を作動開始させる作動開始位置Pまで延びているので、シンクロリング(Q1、Q2)を作動させるまでは、作動開始位置Pまで延びた押圧部3aによって嵌合溝Kの一方の壁面Kaを確実に押圧させることができるとともに、シンクロリング(Q1、Q2)を作動させた後は、切欠き部3bを嵌合溝Kaの一方の壁面Kaに対峙させることにより、回動部3と一方の壁面Kaとの間のクリアランスを大きくすることができる。
【0048】
したがって、本実施形態によれば、シフトレバー1のシフト操作時、シフトフォーク(f1〜f3)がシンクロリング(Q1、Q2)を作動開始させる作動開始位置Pまで押圧部3aが延設されているので、ニュートラル位置から所定の変速位置に移動させる過程において、シフトフォークシャフト(h1〜h3)を移動するのに最も操作力を必要とする作動開始位置Pまでの間に切欠き部3bを設けてしまうのを回避できる。これにより、シフトフォークシャフト(h1〜h3)を確実にニュートラル位置から所定の変速位置まで移動させることができ、且つ、シンクロリング(Q1、Q2)を確実に作動させることができる。
【0049】
上記第1〜第3の実施形態によれば、回動部3は、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるときよりも変速位置にあるときの方が、嵌合溝Kの壁面(Ka、Kb)との間のクリアランスが大きくなる形状とされたので、シフトレバー1に対するギヤ系の振動が伝達してしまうのを抑制することができるとともに、シフトレバー1のシフト操作時における操作フィーリングを維持することができる。
【0050】
また、本実施形態に係る回動部3は、シフトアーム2の回動に伴って嵌合溝Kの壁面(一方の壁面Ka)を押圧してシフトフォークシャフト(h1〜h3)をニュートラル位置から変速位置まで移動させる押圧部3aと、シフトフォークシャフト(h1〜h3)が変速位置にある状態で嵌合溝Kの一方の壁面Ka又は他方の壁面Kbと対峙し、当該壁面(Ka、Kb)との間にクリアランスを形成する切欠き部3bとを具備したので、回動部3と嵌合溝Kの壁面(Ka、Kb)との間のクリアランスを、ニュートラル位置では当該壁面(Ka、Kb)と押圧部3aとの間の比較的小さな寸法とし、変速位置では当該壁面(Ka、Kb)と切欠き部3bとの間の比較的大きな寸法とすることができる。したがって、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるときよりも変速位置にあるときの方が、回動部3と嵌合溝Kの壁面(Ka、Kb)との間のクリアランスを確実且つ容易に大きく設定することができる。
【0051】
特に、第1〜第3の実施形態に係る切欠き部3bは、回動部3の中心より上部(第1の実施形態)、当該回動部3の中心より下部(第3の実施形態)、又は当該回動部3の中心に対して上部及び下部(第2の実施形態)に設けられたので、シフトアーム2の形状や回動部3の取付角度、或いはシフトピース(m1〜m3)の嵌合溝Kの形状等に応じて切欠き部3bを適宜形成することができる。また、本実施形態に係る変速操作装置は、自動車に取り付けられるため、上記効果を奏する自動車を提供することができる。
【0052】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば回動部3について、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるときよりも変速位置にあるときの方が、嵌合溝Kの壁面(Ka、Kb)との間のクリアランスが大きくなる形状であれば、楕円形状や多角形状など他の形状であってもよい。また、適用されるトランスミッションは、シフトレバー1に対するシフト操作に伴って回動可能なシフトアーム2と、シフトアーム2の先端部に形成され、当該シフトアーム2と一体的に回動可能な回動部3と、任意の位置にシフトフォーク(f1〜f3)が形成されるとともに、ニュートラル位置と所定の変速位置との間で移動可能なシフトフォークシャフト(h1〜h3)と、シフトフォークシャフト(h1〜h3)に一体的に形成され、回動部3を嵌合し得る嵌合溝Kが形成されたシフトピース(m1〜m3)とを有したものであれば、他の形態のものでもよい。
【0053】
さらに、上記実施形態においては、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)用の変速操作装置に適用されているが、
図14に示すように、FR(フロントエンジン・リアドライブ)用の変速操作装置に適用してもよい。かかる変速操作装置は、同図に示すように、シフトピース(m1〜m3)が形成された第1シフトフォークシャフト(h1a〜h3a)と、シフトフォーク(f1〜f3)が形成された第2シフトフォークシャフト(h1b〜h3b)とを連結部Rにて連結させてシフトフォークシャフト(h1〜h3)が構成されるとともに、回動部3は、上記実施形態と同様、シフトフォークシャフト(h1〜h3)がニュートラル位置にあるときよりも変速位置にあるときの方が、嵌合溝Kの壁面(Ka、Kb)との間のクリアランスが大きくなる形状とされている。なお、本実施形態(FR(フロントエンジン・リアドライブ)用の変速操作装置)においても第1の実施形態と同様、スチールボール4a及びコイルスプリング4bを有した節度手段4を具備している。