【解決手段】弁本体11にはバーリング部27が形成され、高圧側導管13の一端部131がバーリング部27の内側に挿入される。バーリング部27に段差部275が形成されることにより、高圧側導管13の過挿入が規制され、高圧側導管13のバーリング部27への挿入深さのバラツキを抑制することができる。
筒状の弁本体の側面部に継手部材が接続され、前記側面部における前記継手部材の反対側に一又は複数の開口部が形成されるとともに、前記開口部の一部又は全部を覆うようにスライドする弁部材が前記弁本体に収容されるスライド式切換弁であって、
前記弁本体には、前記側面部から外側に向かって突出するとともに開口したバーリング部が形成され、
前記継手部材は、一端部が前記バーリング部の内側に挿入され、
前記継手部材の一端部の外周面には、前記バーリング部によって係止されることで当該継手部材が過挿入されることを規制する規制部が設けられ、
前記バーリング部の基端部の内周面には、前記側面部の内周面に連続する曲面部が形成され、
前記規制部は、前記一端部が前記曲面部を超えないように過挿入を規制することを特徴とするスライド式切換弁。
前記継手部材の一端部の外周面には、前記バーリング部の内径以下の外径を有する小径部と、前記バーリング部の内径よりも大きい外径を有する大径部と、前記小径部と前記大径部との間の段差部と、が形成され、
前記段差部が前記規制部として機能することを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
前記規制部は、前記継手部材の一端部の端面が前記側面部の外周面よりも外側に位置するように過挿入を規制することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスライド式切換弁。
前記一端部の端面が、前記バーリング部の突出方向において、該バーリング部の中央部よりも基端側に位置することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスライド式切換弁。
流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、請求項1〜5のいずれか1項に記載のスライド式切換弁と、を備えたことを特徴とする冷凍サイクルシステム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたように周囲が突出した接続口に吐出管を挿入する際、挿入深さが深くなると、吐出管の先端が弁本体内の部材(例えば弁部材)に接近することから、吐出管から弁本体内に流れ込む流体の流量が低下してしまう。一方、挿入深さが浅くなると、流量は増大するものの接合強度が低下してしまう。従って、挿入深さのバラツキは、吐出管から弁本体内に流れ込む流体の流量や、接合強度にバラツキが生じる原因となっていた。
【0005】
このような四方切換弁において、例えば治具によって弁本体および吐出管を保持しつつこれらを接合する方法が考えられるが、これらの相対位置の精度には、吐出管そのものの部品精度に加え、治具における吐出管を保持する部位の精度も影響するため、弁本体と吐出管との相対位置を高い精度で位置決めし、所望の挿入深さを得ることは困難であった。さらに、ろう付けのように加熱を伴う作業によって弁本体と吐出管とを接合する際、熱容量の大きい治具を充分に加熱する必要があることから、治具に熱膨張が生じ、弁本体と吐出管との相対位置が変化して挿入深さにバラツキが生じる可能性があった。
【0006】
本発明の目的は、弁本体に形成されたバーリング部への継手部材の挿入深さのバラツキを抑制することができるスライド式切換弁および冷凍サイクルシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスライド式切換弁は、筒状の弁本体の側面部に継手部材が接続され、前記側面部における前記継手部材の反対側に一又は複数の開口部が形成されるとともに、前記開口部の一部又は全部を覆うようにスライドする弁部材が前記弁本体に収容されるスライド式切換弁であって、前記弁本体には、前記側面部から外側に向かって突出するとともに開口したバーリング部が形成され、前記継手部材は、一端部が前記バーリング部の内側に挿入され、前記継手部材の一端部の外周面には、前記バーリング部によって係止されることで当該継手部材が過挿入されることを規制する規制部が設けられ、前記バーリング部の基端部の内周面には、前記側面部の内周面に連続する曲面部が形成され、前記規制部は、前記一端部が前記曲面部を超えないように過挿入を規制することを特徴とする。
【0008】
このような本発明によれば、弁本体の継手部材の一端部に規制部が設けられて継手部材の過挿入が規制されていることで、継手部材のバーリング部への挿入深さのバラツキを抑制することができる。また、過挿入する方向の力によって継手部材を弁本体に対して押し付けつつ接合することにより、弁本体と継手部材との相対位置がずれにくく、容易に所望の挿入深さを得ることができる。また、弁本体と継手部材とを保持する治具が不要になる。
【0009】
また、バーリング部の基端部の内周面に曲面部が形成されていることから、基端部の内径が基端側に向かうにしたがって拡大されていく。
【0010】
また、本発明のスライド式切換弁では、前記側面部からの前記バーリング部の突出寸法は、前記継手部材の外径の10%〜35%であることが好ましい。このような構成によれば、バーリング部の突出寸法を継手部材の外径の10%以上とすることにより、弁本体と継手部材との接合強度を向上させることができ、35%以下とすることにより、バーリング部の形成性が損なわれることを抑制することができる。
【0011】
本発明の冷凍サイクルシステムは、流体である冷媒を圧縮する圧縮機と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器と、前記第一熱交換器と前記第二熱交換器との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段と、上記のスライド式切換弁と、を備えたことを特徴とする。このような本発明によれば、スライド式切換弁において、バーリング部への継手部材の挿入深さのバラツキを抑制することができる。これにより、弁本体と継手部材との間の流量のバラツキを抑制し、冷凍サイクルシステムの運転効率のバラツキを抑制することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のスライド式切換弁によれば、継手部材の一端部に、継手部材の過挿入を規制する規制部が設けられていることで、バーリング部への継手部材の挿入深さのバラツキを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の四方切換弁(スライド式切換弁)10は、例えば冷凍サイクル1に設けられるものである。冷凍サイクル1は、ルームエアコン等の空気調和機に利用されるものであって、流体としての冷媒を圧縮する圧縮機2と、冷却モード時に凝縮器として機能する第一熱交換器としての室外熱交換器3と、冷却モード時に蒸発器として機能する第二熱交換器としての室内熱交換器4と、室外熱交換器3と室内熱交換器4との間にて冷媒を膨張させて減圧する膨張手段としての膨張弁5と、四方切換弁10と、四方切換弁10の流路を切換え制御するパイロット電磁弁6と、を備え、これらが冷媒配管によって連結されている。なお、膨張手段としては、膨張弁5に限らず、キャピラリでもよい。
【0015】
この冷凍サイクル1は、
図1に示す冷却モード(冷房運転)において、圧縮機2、四方切換弁10、室外熱交換器3、膨張弁5、室内熱交換器4、四方切換弁10及び圧縮機2の順に冷媒が流れる冷房サイクルを構成する。一方、加温モード(暖房運転)において、圧縮機2、四方切換弁10、室内熱交換器4、膨張弁5、室外熱交換器3、四方切換弁10及び圧縮機2の順に冷媒が流れる暖房サイクルを構成する。この暖房サイクルと冷房サイクルとの切換えは、パイロット電磁弁6による四方切換弁10の切換え動作によって行われる。
【0016】
本発明の実施形態に係る四方切換弁10は、
図2にも示すように、円筒状の弁本体11と、この弁本体11の内部にスライド自在に設けられた弁体12と、圧縮機2の吐出口に連通する継手部材としての高圧側導管(D継手)13と、圧縮機2の吸込口に連通する低圧側導管(S継手)14と、室内熱交換器4に連通する室内側導管(E継手)15と、室外熱交換器3に連通する室外側導管(C継手)16と、を備えて構成されている。
【0017】
円筒状の弁本体11は、その軸方向両端部を塞ぐ栓体17,18と、弁本体11の内部に固定された弁座19と、を有し、全体に密閉されたシリンダーとして構成されている。栓体17,18には、それぞれパイロット電磁弁6に連通された導管17A,18Aが接続されている。弁座19には、低圧側導管14、室内側導管15、及び室外側導管16のそれぞれの先端が挿入されるとともに、後述する第一、二ポート11C,11D及び流出ポート11Bを構成する開口が設けられている。弁座19の内面19Aは、弁体12をスライド案内する案内面となっている。
【0018】
弁本体11には、その側面部111に開口した複数のポート11A,11B,11C,11Dが形成されている。すなわち、高圧側導管13が接続されて弁本体11の内部に冷媒を流入させる流入ポート11Aと、流入ポート11Aに対して弁本体11の側面部111の径方向反対側にて弁座19に開口する開口部としての第一ポート11C、第二ポート11D及び流出ポート11Bと、が設けられている。流出ポート11Bは、弁本体11の軸方向略中央に設けられ、第一ポート11Cは、弁本体11の軸方向に沿って流出ポート11Bの一方側(
図2の左側)に隣り合って設けられ、第二ポート11Dは、弁本体11の軸方向に沿って流出ポート11Bの他方側(
図2の右側)に設けられている。
【0019】
流出ポート11Bには、低圧側導管14が接続され、第一ポート11Cに室内側導管15が接続されることで、当該第一ポート11Cが室内側ポートを構成し、第二ポート11Dに室外側導管16が接続されることで、当該第二ポート11Dが室外側ポートを構成している。低圧側導管14、室内側導管15及び室外側導管16は、それぞれ流出ポート11B、第一、二ポート11C,11D周辺の弁本体11及び弁座19にろう付け固定されている。
【0020】
弁体12は、弁本体11の内周面に摺接する左右一対のピストン体21,22と、一対のピストン体21,22を連結して弁本体11の軸方向に沿って延びる連結部材23と、連結部材23に支持される弁部材24と、を有して構成されている。弁本体11の内部空間は、一対のピストン体21,22間に形成される高圧室R1と、一方のピストン体21と栓体17との間に形成される第一作動室R2と、他方のピストン体22と栓体18との間に形成される第二作動室R3と、に仕切られている。
【0021】
連結部材23は、金属板材からなり、弁本体11の軸方向に沿って延び弁座19の内面19Aと平行に設けられる連結板部23Aと、連結板部23Aの一方側端部が折り曲げられてピストン体21に固定される固定片部23Bと、連結板部23Aの他方側端部が折り曲げられてピストン体22に固定される固定片部23Cと、を有して形成されている。連結板部23Aには、弁部材24を保持する保持孔23Dと、冷媒を流通させる2箇所の貫通孔23Eと、が形成されている。
【0022】
弁部材24は、合成樹脂製の一体成形部材であって、弁座19に向かって凹状に開口した椀部25と、この椀部25の開口縁から外方に延びるフランジ部26と、を有して形成されている。椀部25は、平面視で長円形状を有したドーム状に形成され、連結部材23の保持孔23Dに挿入されている。椀部25の内部には、流出ポート11Bと第一ポート11Cとを連通させて第二ポート11Dを連通させないか、又は、流出ポート11Bと第二ポート11Dとを連通させて第一ポート11Cを連通させないような連通空間R4が形成されている。
【0023】
フランジ部26は、弁座19の内面19Aと摺接する摺接面26Aと、この摺接面26Aに開口して椀部25の内部に連通する開口部25Aと、を有している。このフランジ部26は、弁座19と連結部材23との間に配置される。そして、弁部材24に作用する高圧と低圧の圧力差により摺接面26Aが弁座19の内面19Aに密接され、椀部25の連通空間R4が弁座19に対して閉じられるようになっている。
【0024】
以上の四方切換弁10では、パイロット電磁弁6及び導管18Aを介して第二作動室R3に高圧冷媒が導入されると、
図1、2に示すように、ピストン体22が押圧されて弁体12が弁本体11の軸方向一方側(
図1、2の左側)にスライドされ、第一位置に移動される。また、パイロット電磁弁6及び導管17Aを介して第一作動室R2に圧縮機2から吐出された高圧冷媒が導入されると、ピストン体21が押圧されて弁体12が弁本体11の軸方向他方側(
図1、2の右側)にスライドされ、第二位置に移動される。
【0025】
弁体12が第二位置にある状態において、弁部材24の椀部25は、その連通空間R4によって流出ポート11Bと第二ポート11Dとを連通させる。また、椀部25が第一ポート11Cよりも他方側に位置することから、この第一ポート11Cは、弁本体11の内部(高圧室R1)を介して流入ポート11Aと連通される。すなわち、弁体12が第二位置にある状態は、流入ポート11Aと第一ポート11Cとが連通され、流出ポート11Bと第二ポート11Dとが連通された加温モード(暖房運転)となる。
【0026】
この加温モードでは、圧縮機2から吐出された高圧冷媒Hが高圧側導管13及び流入ポート11Aを介して高圧室R1に導入され、この高圧室R1を通過した高圧冷媒Hが第一ポート11C及び室内側導管15を介して室内熱交換器4に供給される。また、室外熱交換器3から室外側導管16及び第二ポート11Dを介して低圧冷媒Lが椀部25の連通空間R4に導入され、この連通空間R4を通過した低圧冷媒Lが流出ポート11B及び低圧側導管14を介して圧縮機2に還流される。
【0027】
一方、弁体12が第一位置にある状態において、弁部材24の椀部25は、その連通空間R4によって流出ポート11Bと第一ポート11Cとを連通させる。即ち、また、椀部25が第二ポート11Dよりも一方側に位置することから、この第二ポート11Dは、弁本体11の内部(高圧室R1)を介して流入ポート11Aと連通される。すなわち、弁体12が第一位置にある状態は、流入ポート11Aと第二ポート11Dとが連通され、流出ポート11Bと第一ポート11Cとが連通された冷却モード(冷房運転)となる。
【0028】
以上のような四方切換弁10における弁本体11と高圧側導管13との接続構造の詳細について、
図3に基づいて説明する。弁本体11の流入ポート11Aの周囲には、弁本体11の側面部111から外側に向かって突出したバーリング部27が形成されている。バーリング部27は、側面部111にバーリング加工を施すことによって形成されており、側面部111に対して屈曲した基端部271と、基端部271に連続する円筒部272と、を有する。基端部271の内周面は、側面部111の内周面111Aに連続する断面円弧状の曲面部271Aとなっている。この曲面部271Aの曲率半径は、側面部111の厚さに略等しい。
【0029】
また、バーリング部27には、その開口(流入ポート11A)にザグリ加工が施されることにより、大径部273が形成されている。このザグリ穴の深さは、バーリング部27の側面部111からの突出寸法Lよりも若干小さく、円筒部272にのみザグリ穴が形成され、曲面部271Aまでザグリ穴が到達しないようになっている。バーリング部27の内周面におけるザグリ穴が形成されていない部分のうち
図3中の上端部が小径部274となる。大径部273と小径部274との間には、
図3における上方側(高圧側導管13側)を向いた面である段差部275が形成されている。即ち、段差部275は、曲面部271Aよりもバーリング部27における先端側に形成されている。
【0030】
大径部273の内径D1は、大径部273内に高圧側導管13を容易に挿入できるように、高圧側導管13の外径D2と同程度または若干大きく、小径部274の内径D3は、大径部273の内径D1及び高圧側導管13(一端部131)の外径D2よりも小さい。従って、バーリング部27の内側に高圧側導管13の一端部(下端)131を挿入すると、一端部131の端面131Aが段差部275に当接し、段差部275は、高圧側導管13の過挿入を規制する規制部として機能する。また、段差部275の幅は高圧側導管13の肉厚よりも狭く形成されており、小径部274の内径D3は、高圧側導管13の内径D4よりも大きく、バーリング部27の内側に高圧側導管13を挿入した状態において、小径部274の方が高圧側導管13よりも大きく開口している。即ち、規制部を設けても流体の流れが阻害されないようになっている。また、バーリング部27の突出寸法Lは、高圧側導管13の外径D2の10%〜35%となっている。尚、高圧側導管13の内径D4は、その長手方向において略一定であるものとする。
【0031】
ここで、高圧側導管13をバーリング部27に挿入する深さと、高圧側導管13から弁本体11内に流れ込む流体(冷媒)の流量と、の関係について
図4に基づいて説明する。ここで、高圧側導管13の端面131Aと弁部材24の上面との間隔をX(
図2参照)とし、間隔Xを適宜な基準値X0で除した値を継手高さX/X0とする。即ち、継手高さX/X0が大きいほど高圧側導管13の挿入深さが浅く、継手高さX/X0が小さいほど高圧側導管13の挿入深さが深い。
【0032】
継手高さX/X0を変化させた際の高圧側導管13から弁本体11内に流れ込む流体の流量Fを
図4に示す。継手高さX/X0が大きく(挿入深さが浅く)なるほど流量Fが増大する。しかしながら、継手高さX/X0が大きくなりすぎる(例えば1.7よりも大きくなる)と、後述するようにバーリング部27に高圧側導管13をろう付けによって固定した際に、充分な接合強度が得られない。一方、継手高さX/X0が小さくなりすぎる(例えば0.2未満となる)と、流量Fが小さくなりすぎるとともに、高圧側導管13の一端部131と弁部材24とが干渉してしまうことがある。本実施形態では、継手高さX/X0を適宜な値(例えば1.2〜1.6)に設定している。
【0033】
以下、弁本体11の側面部111に高圧側導管13を接続する方法の一例について
図5に基づいて説明する。この接続に用いられる治具100は、支持台101と、導管14〜16の下端に挿入される棒状の導管支持部材102と、高圧側導管13の上端に挿入される棒状の押圧部材103と、を備える。支持台101は、導管支持部材102の下端が挿入される挿入孔101Aが形成された下段支持部101Bと、弁本体11が載置される中段支持部101Cと、押圧部材103が挿通される挿通孔101Dが形成された案内板101Eと、を有する。
【0034】
治具100は、中段支持部101Cによって弁本体11を支持するとともに、下段支持部101B及び導管支持部材102によって、弁本体11に固定されていない導管14〜16が弁本体11から脱落しないように支持する。このように弁本体11及び導管14〜16が支持された状態において、押圧部材103によって高圧側導管13を弁本体11に押し付けるように下方側に押圧する。
【0035】
このとき、上方を向いた面である段差部275と、高圧側導管13の端面131Aと、が互いに重なり合うとともに、段差部275が周方向全体に亘って形成されていることにより、弁本体11に対して高圧側導管13が傾いた(互いの軸方向が略直交しない)状態で接合されることが抑制される。このような押圧部材103による押圧を維持した状態において、バーリング部27と高圧側導管13の一端部131とをろう付けにより固定する。このとき、弁本体11と高圧側導管13との位置決めのために、バーリング部27及び一端部131の近傍を支持する必要がなく、治具100の熱容量を小さくすることができるため、ろう付けを行う際の加熱時間を短くすることができる。これにより、ろう付け時の熱によって治具100に熱膨張(変形)が生じにくい。また、多少の変形が生じても、押圧部材103によって高圧側導管13を適宜な力で押圧すれば、上記と同様に、適宜な挿 入深さが得られるとともに、弁本体11に対する高圧側導管13の傾斜が抑制される。
【0036】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、弁本体11のバーリング部27に形成された段差部275によって高圧側導管13の過挿入が規制されていることで、高圧側導管13のバーリング部27への挿入深さのバラツキを抑制することができる。
【0037】
また、ろう付け時に高圧側導管13が熱膨張することがあるが、段差部275が設けられていることにより、高圧側導管13が熱膨張によって軸方向に伸びたとしても過挿入されないようになっている。即ち、熱膨張によっても挿入深さにバラツキが生じにくい。
【0038】
さらに、バーリング部27の内周面に規制部としての段差部275が形成され、高圧側導管13の端面131Aが当接することで、高圧側導管13をバーリング部27の内側に挿入した際に、バーリング部27の先端面(
図3における上端面)27が露出する。従って、バーリング部27と高圧側導管13とをろう付け固定する際に、バーリング部27の先端面27Aと、高圧側導管13の外周面と、の間にろう材が溜まりやすく、弁本体11と高圧側導管13との気密性を向上させることができる。
【0039】
また、バーリング部27において段差部275が曲面部271Aよりも先端側に形成されていることで、高圧側導管13の一端部131が曲面部271Aを越えて挿入されない。また、バーリング部27に曲面部271Aが形成されていることにより、基端部271の内径が基端側に向かうにしたがって拡大されていく。従って、高圧側導管13から弁本体11内に流体が流れ込む場合に、内径が拡大された部分を流体が通過することができ、通過可能面積を増大させることができる。
【0040】
また、バーリング部27の突出寸法Lが高圧側導管13の外径D2の10%〜35%となっていることで、弁本体11と高圧側導管13との接合強度を向上させつつも、バーリング部27の形成性が損なわれることを抑制することができる。
【0041】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0042】
例えば、前記実施形態では、高圧側導管13の内径D4がその長手方向において略一定であるものとしたが、
図6に第1の変形例として示すように、高圧側導管13の一端部131の内周面に、テーパー面131Bが形成されていてもよい。第1の変形例におけるバーリング部27は、前記実施例と同様の形状及び寸法を有する。テーパー面131Bは、高圧側導管13の一端部131の開口寸法がバーリング部27の小径部274の内径D3と略等しくなるように形成されている。即ち、テーパー面131Bは、バーリング部27の内周面(小径部274の内周面)と連続するように形成されている。
【0043】
このような第1の変形例によれば、高圧側導管13から弁本体11内に流体が流れ込む際に、高圧側導管13の内周面とバーリング部27と内周面との境界部分において流体の流れが乱れにくく、流量を増大させることができる。
【0044】
また、前記実施形態では、バーリング部27の内周面に形成された段差部275が規制部として機能するものとしたが、バーリング部27の内周面にその他の規制部が設けられていてもよい。
【0045】
例えば、第2の変形例として
図7に示すように、バーリング部27に規制部として別体のリング部材28が取り付けられてもよい。即ち、バーリング部27の内周面に溝部276を形成してリング部材28を嵌め込むことにより、高圧側導管13の一端部131の端面131Aがリング部材28に当接し、高圧側導管13の過挿入が規制される。
【0046】
また、第3の変形例として
図8に示すように、規制部として、バーリング部27の内周面から突出した突出部277を形成してもよい。突出部277は、例えば、バーリング部27のうち先端から適宜な寸法だけ離れた部分を外周面側から押圧し、周方向全体に亘ってくびれさせることで形成されればよい。また、第4の変形例として
図9に示すように、周方向の一部において内周面から突出した複数の点状の突出部278としてもよい。高圧側導管13の一端部131の端面131Aが突出部277、278に当接することで高圧側導管13の過挿入が規制される。
【0047】
前記実施形態や第1〜3の変形例のように、バーリング部27の内周面に規制部が設けられている構成においては、ろう付け時において、バーリング部27の内周面と、高圧側導管13の一端部131の外周面と、の間から、ろう材が弁本体11内の高圧室R1に侵入することが、規制部によって抑制される。さらに、弁本体11に対する高圧側導管13の傾きが抑制されることにより、バーリング部27の内周面と高圧側導管13の外周面との間に大きな隙間が生じにくく、ろう材の侵入をさらに抑制することができる。特に、規制部がバーリング部27の内周面において周方向全体に亘って設けられている構成(前記実施形態および第1、2の変形例)においては、高圧室R1へのろう材の侵入をさらに抑制することができる。
【0048】
また、前記実施形態では、バーリング部27の内周面に規制部が設けられ、高圧側導管13の端面131Aが当接するものとしたが、高圧側導管13の一端部131の外周面に規制部が設けられ、バーリング部27の先端面27Aが当接することで高圧側導管13の過挿入が規制されてもよい。
【0049】
例えば、第5の変形例として
図10に示すように、高圧側導管13の一端部131の外周面に、バーリング部27の内径D5と同程度または若干大きい(バーリング部27に容易に挿入できるような)外径D6を有する小径部132と、バーリング部27の内径D5よりも大きい外径D7を有する大径部133と、小径部132と大径部133との間の段差部134と、が形成され、段差部134が規制部として機能するものとしてもよい。即ち、高圧側導管13の一端部131を所定の範囲において外周面側から切削加工等の加工を施して薄肉にすることで、小径部132を形成し、一端部131のうち加工されていない部分を大径部133とする。バーリング部27側(下方側)を向いた面である段差部134がバーリング部27の先端面27Aに当接することで、高圧側導管13の過挿入が規制される。
【0050】
また、第6の変形例として
図11に示すように、規制部として、高圧側導管13の外周面から突出した突出部135を形成してもよい。突出部135は、例えば、高圧側導管13の一端部131のうち先端から適宜な寸法だけ離れた部分を内周面側から押圧し、周方向全体に亘って突出させることで形成されればよい。また、第7の変形例として
図12に示すように、周方向の一部において外周面から突出した複数の点状の突出部136としてもよい。突出部135、136がバーリング部27の先端面27Aに当接することで高圧側導管13の過挿入が規制される。
【0051】
また、前記実施形態では、バーリング部27の突出寸法Lが高圧側導管13の外径D2の10%〜35%であるものとしたが、必要な接合強度やバーリング部の形成条件に応じ、高圧側導管13の外径D2に対して適宜な突出寸法を有するバーリング部を形成すればよい。
【0052】
また、前記実施形態では、バーリング部および規制部が設けられるスライド式切換弁として四方切換弁10を例示したが、スライド式切換弁は四方切換弁に限定されず、三方弁や二方弁等、他の方式のスライド式切換弁であってもよい。
【0053】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。