【課題】環状であるトロイダル型のリアクトルを製造可能とし、電気的特性を向上させることが可能なエッジワイズコイル、容量の大きなリアクトル及びリアクトル製造方法を提供する。
【解決手段】リアクトル1は、螺旋状に巻回されたエッジワイズコイル3を備える。エッジワイズコイル3は、小径部3Xと、小径部3Xから外方にはみ出た大径部3Yと、を有して、複数回巻回されて、全体として環を成すように形成されている。環の径方向内側において、大径部3Yは、小径部3Xよりも環の中心軸側であって小径部に重ならない位置に配置されている。
前記巻回工程では、前記環の径方向に垂直な方向において、前記大径部が前記小径部よりも外方であって前記小径部に重ならない位置となるように、前記エッジワイズコイルを巻回する請求項1に記載のリアクトル製造方法。
前記巻回工程では、前記環の径方向外側において、前記小径部及び前記大径部における前記環の中心軸からの距離が一致するように前記エッジワイズコイルを巻回する請求項1又は2に記載のリアクトル製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、以下に説明する部材の形状、寸法、配置等については、本発明の趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、すべての図面において、同様の構成要素には同様の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0015】
<<リアクトルの構成について>>
まず、
図1〜
図5を主に参照して、本実施形態に係るリアクトル1の構成を説明する。
図1は、本実施形態に係るリアクトル1の斜視図、
図2は、
図1のII−II線に沿った断面図、
図3は、トロイダルコア2を構成する一組の分割コア22の斜視図である。
図4は、リアクトル1の平面図、
図5は、エッジワイズコイル3を構成する部品の位置関係を説明する説明図、
図6は、トロイダル状にする前の状態(当初状態)のエッジワイズコイル3を示す斜視図である。
本実施形態に係るリアクトル1は、螺旋状に巻回されたエッジワイズコイル3と、エッジワイズコイル3の内部に組み込まれた環状のトロイダルコア2と、を備える。
【0016】
<トロイダルコアについて>
環状のトロイダルコア2は、
図3に示すように、円筒状のコアユニット21を5個、管軸方向に重ねて接着固定したものを、管軸方向に沿う平面で切断して周方向に2分割された一組の分割コア22から構成されている。ここで、管軸方向は、リアクトル1の中心軸CA(
図5参照)の方向と同一方向である。コアユニット21は、フェライト等の磁性材料からなる円筒状の部材で、周囲に絶縁皮膜が形成されている。
分割コア22とは、環状のトロイダルコア2が周方向に複数個に分割された形状をなしている。分割コア22の断面形状は、
図2に示すように、管軸方向と平行な平面における断面形状が矩形となっている。分割コア22を2分割した際に形成される端面23からは内部の磁性材料が露出した状態となっている。
トロイダルコア2が一組の分割コア22であることで、螺旋状に巻回したエッジワイズコイル3内側に分割コア22を挿入することができる。そして、後述のように、エッジワイズコイル3内でトロイダルコア2が動くことが防止され、トロイダルコア2の衝突によるエッジワイズコイル3の破損を防止することができる。
【0017】
なお、本発明においては、コアユニット21の積み重ねの数は5個に限られず、トロイダルコア2の管軸方向の長さはコアユニット21の数を増減することで任意に調節することができる。また、分割コア22の分割態様を変え、例えば3分割して3つで一組の分割コア22としてもよく、それ以上の数の分割コア22に分割したものを用いてもよい。また一組の分割コア22の分割態様も等分とする必要は無く、不等分としてもよい。
【0018】
さらには、本実施形態においては複数の円環状のコアユニット21を積み重ねて固定したものを2分割することで分割コア22を形成しているが、本発明においてはこれに限られない。例えば、円孤状の部分環状の部材として予め個別に成形したものを分割コア22としてもよい。この場合、分割コア22の端面23は絶縁皮膜で覆われていてもよく、あるいは本実施形態のように内部の磁性材料が露出した状態であってもよい。ただし、コアユニット21を積み重ねた環状の構造体を切断して分割コア22を作成した方が安価に製造できる。
【0019】
また、トロイダルコア2は、管軸方向と平行な平面における断面形状が矩形であったが、本発明においてはこれに限らず、円形や楕円形等、他の形状であってもよい。この場合エッジワイズコイル3についてもトロイダルコア2の形状に合わせて、トロイダルコア2の管軸方向と平行な平面における断面形状が円管状や楕円管状等の形状とすることが好ましい。これによりトロイダルコア2とエッジワイズコイル3との間隙を小さくすることができ、エッジワイズコイル3とトロイダルコア2との当接状態を保つことができる。したがって、エッジワイズコイル3内でトロイダルコア2が動いてしまいエッジワイズコイル3が破損してしまうことを防止することができる。
【0020】
<エッジワイズコイルについて>
エッジワイズコイル3は表面に絶縁被覆が形成された導線である平角線を、略矩形にエッジワイズ巻きして、複数回巻回された巻線34から形成されたコイルである。
エッジワイズコイル3は、小径部3Xと、小径部3Xから外方にはみ出た大径部3Yと、を有して、複数回巻回されて、トロイダルコア2に沿うように全体として環を成すようにトロイダル型に形成されている。
【0021】
エッジワイズコイル3をトロイダル型にすると、平面視においてトロイダル型を成す環の内側にあるエッジワイズコイル3によって、巻数が定まることとなる。環の内側の方が、その外側よりも周方向長さが短いためである。
また、
図4に示すように、平面視においてエッジワイズコイル3の小径部3X(内周部3Xb)の内側が密集しており、リアクトル1の中心軸CAから小径部3Xが離れていれば、環の内側に内側空間1aが存在することとなる。一方で、リアクトル1の外周の長さは内周よりも長くなるため、小径部3Xにおける外周部3Xaは、間隔を空けて配置されることとなる。
このため、本実施形態に係るリアクトル1においては、大径部3Yの外周部3Yaが、小径部3Xにおける外周部3Xaの間に配置されるようにし、内周部3Ybが、内周部3Xbよりも環の内側にある内側空間1aに配置されるよう構成されている。
【0022】
具体的には、大径部3Yは、
図5に示すように、環の径方向内側(エッジワイズコイル3の巻軸方向に垂直な方向における一側)において、小径部3Xよりも環の中心軸CA側であって小径部3Xに重ならない位置に配置されている。より具体的には、大径部3Yの内周部3Ybは全幅に亘って、小径部3Xの内周部3Xbよりも内方にある。
また、
図4及び
図5に示すように、小径部3Xにおける環の中心軸CA側にある内周部3Xbは、大径部3Yの内側の空間である内側空間3Yeに配置されている。
また、環の径方向に垂直な方向(
図5における上下方向)において、大径部3Yの端部(下部3Yc及び上部3Yd)は、小径部3Xの端部(下部3Xc及び上部3Xd)に重ならない位置にある。具体的には、大径部3Yの下部3Ycは、小径部3Xの下部3Xcよりも下方にあり、大径部3Yの上部3Ydは、小径部3Xの上部3Xdよりも上方にある。
小径部3Xと大径部3Yは、環の径方向外側(一側に対する逆側)において一致する位置に形成されている。具体的には、大径部3Yの外周部3Yaは、
図5における左右方向において、小径部3Xの外周部3Xaと一致する位置、外周部3Yaの外周面と外周部3Xaの外周面における中心軸CAからの径方向の距離が同じ距離Rとなる位置にある。
なお、本発明に係る「一致」とは、厳密に一致しているものに限られず、略一致を含む概念である。例えば、小径部3X又は大径部3Yのいずれかの線幅の半分以上が重なっているものも「一致」に含む。
【0023】
上記のように構成されたエッジワイズコイル3においては、環の径方向内側において大径部3Yと小径部3Xとが周方向に重なり合うことを避けることができる。したがって、環の径方向内側にある内側空間1a(
図5参照)に、エッジワイズコイル3を効果的に配置して、当該空間を有効利用して、コイルの巻数を増やすことができ、電気的特性を向上させることができる。
小径部3Xにおける環の中心側にある内周部3Xbが大径部3Yの内側空間3Yeに配置されていることで、環の中心側において小径部3Xを密集させることが可能となり、電気的特性を向上させることができる。
さらに、エッジワイズコイル3の発熱を抑制するために、エッジワイズコイル3の全体の断面積を大きくなるように外周部3Xaを環の径方向に大きくすれば、隣接する外周部3Xa間の距離が大きくなる。このため、より多くの大径部3Yの外周部3Yaを外周部3Xaの間に配設することが可能となる。
【0024】
また、上記のように、大径部3Yが、環の径方向内側に加えて、径方向に垂直な方向においても、小径部3Xと重ならない位置にある。このため、エッジワイズコイル3をトロイダル型に変形させる際に、大径部3Yの一部が小径部3Xに当接せず動きやすくなり、その変形が容易となる。
さらに、環の径方向外側において小径部3Xと大径部3Yとが一致する位置に形成されているため、コンパクトなリアクトル1を得ることができる。つまり、環の径方向外側においては、環の周方向の長さが長くなるため、環の径方向内側よりも小径部3Xの間隔が広いため、その間に大径部3Yを配置することが可能である。
【0025】
エッジワイズコイル3は、当初状態において、空芯コイル(
図6参照)であり、巻線34に囲まれた内側に内部空間35が形成されている。エッジワイズコイル3の内部空間35には、後述のように一組の分割コア22が挿入される。そして、巻線34の外周部3Xa、3Yaの間隔を略等間隔に広げつつ分割コア22に被せ曲げていくことでエッジワイズコイル3の環状の形状が形成される。
エッジワイズコイル3の小径部3Xは、トロイダルコア2の内周面に対して、環の径方向の外向きに弾力的に付勢された状態で当接している。
【0026】
エッジワイズコイル3の両端部には必要に応じて端子31が形成されており、両端部に至る直線部分にも必要に応じて絶縁チューブ33が取り付けられている。
エッジワイズコイル3に絶縁チューブ33が取り付けられていることで、エッジワイズコイル3の両端部の距離が近接した場合でも当該端部間の短絡の発生を防止することができる。
【0027】
なお、上述した実施形態に係るリアクトル1におけるエッジワイズコイル3は平角線から形成されていたが、本発明においてはこれに限らず、長円形断面の平線など、他の平線を用いて形成されるものでもよい。
【0028】
なお、リアクトル1は、トロイダルコア2の内周側の面とエッジワイズコイル3との間に保護シート6を備えていてもよい(
図7参照)。保護シート6を備えることでこれがガイドとなり、リアクトル1の製造時に、エッジワイズコイル3の小径部3Xと大径部3Yとによって凹凸の空間として画定された内部空間35に分割コア22を挿入しやすくなる。また、当該挿入時に分割コア22の端面23に形成される角部がエッジワイズコイル3(小径部3X)の内周面36に衝突しエッジワイズコイル3を摩損することを効果的に防止することが可能となる。
【0029】
こうした保護シート6として、絶縁シートが用いられることが好ましい。エッジワイズコイル3の絶縁被覆が摩損し内部の導線が露出した部分が生じた場合、当該露出部位同士や、露出部と分割コア22の切断面との間で短絡を生じる恐れがある。しかし絶縁シートである保護シート6を介在させることで、こうした短絡の発生を防止することができる。
一方で、本発明に係るリアクトルは、保護シート6を備えるものに限定されない。つまり、トロイダルコア2のガイドする機能、及び絶縁皮膜としての機能が不要であり、エッジワイズコイル3の摩損の問題が生じないのであれば、保護シート6は必ずしも必須の構成ではない。
【0030】
<その他の構成について>
リアクトル1には、
図1に示すようにリアクトル1の下部を覆うケース4が取り付けられている。ケース4は樹脂や金属等により形成されている。ケース4の形状は様々なものを採用することができるが、本実施形態においてはリアクトル1の外径よりも大きな内径を有しリアクトル1を収容可能な筒状部41と、筒状部41の下端側を閉塞する平面視が矩形の平板部42とを備えて構成されている。平板部42の四隅にはそれぞれ貫通孔43が設けられている。これらの貫通孔43はリアクトル1を螺子等により所定の箇所に固定する際に用いられる。
【0031】
<<リアクトル1の製造方法について>>
次に、
図6〜
図10を主に参照して、リアクトル1の製造方法について説明する。
図6は、トロイダル状にする前の状態(当初状態)のエッジワイズコイル3を示す斜視図、
図7は、当初状態のエッジワイズコイル3に結束バンド5と保護シート6が挿入された状態を示す斜視図である。
図8は、
図7の状態のエッジワイズコイル3に一組の分割コア22を挿入した状態を示す斜視図である。
図9は、一組の分割コア22を互いに締め付けて環状に組み付けるとともにエッジワイズコイル3の巻線間隔を広げることで環状となった一組の分割コア22の周囲にエッジワイズコイル3を配置していく状態を示す斜視図である。
図10は、分割コア22が締め付けられてトロイダルコア2となるとともにトロイダルコア2の周囲にエッジワイズコイル3が配置された状態を示す斜視図である。
【0032】
リアクトル1の製造方法は、螺旋状に巻回されたエッジワイズコイル3によって構成され、全体として環を成すトロイダル型のリアクトル1を製造するものであり、エッジワイズコイル3を螺旋状に巻く巻回工程を備える。
なお、本発明に係る巻回工程は、直接トロイダル状にエッジワイズコイル3を巻回するものでもよい。一方で本発明の巻回工程には、任意の工程として、一組の分割コア22をエッジワイズコイル3に組み込む組込工程と、一組の分割コア22の周囲にエッジワイズコイル3を配置する配置工程とが含まれていてもよい。逆にいえば、本発明に係るリアクトルの製造方法は、トロイダルコア2を組み込む工程を備えずに空芯コイルから成るリアクトルを形成するものも含まれる。
【0033】
さらに、エッジワイズコイル3の作成後にエッジワイズコイル3に保護シート6を挿入する工程を有してもよい。この工程は、一組の分割コア22をエッジワイズコイル3に組み込む前に、一組の分割コア22の内周面24側に保護シート6を配置するものである。以下に説明する本実施形態に係るリアクトル1の製造方法はこの工程も含むものである。
【0034】
また、本発明においては任意の工程として、一組の分割コア22の周囲にエッジワイズコイル3を配置した後、エッジワイズコイル3を仮固定する工程を有してもよい。さらに、エッジワイズコイル3が仮固定された状態でエッジワイズコイル3とトロイダルコア2とをケース4内に収容する工程を有してもよい。さらには、ケース4内に充填材を注入させるとともに充填材を硬化させエッジワイズコイル3を固定する工程を有してもよい。以下に説明する本実施形態に係るリアクトル1の製造方法はこれらの工程も含むものである。
【0035】
巻回工程において、
図6に示すように、小径部3Xと、小径部3Xから外方にはみ出て大径部3Yとを平角線に形成するように、折り曲げ位置を所定間隔で変更してエッジワイズコイル3を形成する。このエッジワイズコイル3の作成は、角柱状の芯材の周囲にエッジワイズコイル3を巻き回すことで行われる。芯材はエッジワイズコイル3の完成後に取り外される。
この巻回工程において、小径部3Xと大径部3Yとをそれぞれ一定の巻数毎に交互に連続して巻回する。小径部3Xと大径部3Yを交互ではなく連続的に巻回する場合よりも、小径部3Xと大径部3Yとの形成の際に、互いに干渉することを抑制できるので、容易に巻回することができる。なお、等間隔でなくてもいいが、製造プログラム等の関係上、等間隔にすると好適である。
【0036】
具体的には、エッジワイズコイル3の巻軸方向に垂直な方向における一側(
図6における紙面の手前側)において、大径部3Yの内周部3Ybを、小径部3Xの内周部3Xbよりも手前側であって小径部3Xに重ならない位置となるように形成する。一方で、小径部3Xと大径部3Yとを、一側に対する逆側(
図6における紙面の奥側)において一致する位置となるように形成する。
【0037】
全体として環を成すリアクトル1を基準として換言すると、環の径方向内側において、大径部3Yは、小径部3Xよりも環の中心軸CA側であって小径部3Xに重ならない位置となるように、エッジワイズコイル3を巻回する。
【0038】
エッジワイズコイル3の環の径方向に垂直な方向において、大径部3Yが小径部3Xよりも外方であって小径部3Xに重ならない位置となるように、エッジワイズコイル3を巻回する。大径部3Yが、環の径方向内側に加えて、径方向に垂直な方向においても、小径部3Xと重ならない位置にあることで、エッジワイズコイル3をトロイダル型に変形する際に、大径部3Yの一部が小径部3Xに当接せず動きやすくなり、その変形が容易となる。
【0039】
次に、
図7に示すように、エッジワイズコイル3の内部空間35内に結束バンド5と保護シート6が挿入される。なおこの工程は必須ではなく、分割コア22の締め付けを結束バンド5以外の手段を用いて行う場合や、保護シート6を用いない場合には省略することが可能である。結束バンド5と保護シート6は上下に重ね合わされるとともに、それぞれの端部がエッジワイズコイル3から突出した状態となっている。保護シート6は、エッジワイズコイル3の巻軸方向の長さよりも長いとよい。
【0040】
次に、
図8に示すように、組込工程において、トロイダルコア2が周方向に複数個(2個)に分割された形状の一組の分割コア22を、エッジワイズコイル3の内部空間35に組み込む。結束バンド5と保護シート6を用いる場合には、分割コア22は分割コア22の内周面24側に保護シート6が位置し、外周面25側に結束バンド5が位置するように挿入される。
特に、組込工程において、トロイダルコア2の内周面側が、エッジワイズコイル3の大径部3Yにおける小径部3Xからはみ出た側に位置するように、分割コア22をエッジワイズコイル3内に組み込む。このように組み込むことで、エッジワイズコイル3の環の内側とトロイダルコア2の内周面側が一致するように、分割コア22によってエッジワイズコイル3を環状に形成することができる。
【0041】
次に、配置工程において、
図9に示すように、一組の分割コア22を互いに締め付けて環状に組み付ける。そして、エッジワイズコイル3の巻線34の外周部3Xa、3Yaの間隔を広げることで、環状となった一組の分割コア22の周囲にエッジワイズコイル3を配置する。
【0042】
一組の分割コア22及びエッジワイズコイル3が環状に維持されるように締付部材(結束バンド5)を用いて一組の分割コア22を締め付ける。結束バンド5は一組の分割コア22の端面23同士が当接し締め付けが完了した後、すなわちトロイダルコア2が完成した後も一組の分割コア22に取り付けられたままとなる。なお、結束バンド5に代えて、帯状の面ファスナーを用いてもよい。
【0043】
そして、結束バンド5により一組の分割コア22の締め付けを行いつつ、エッジワイズコイル3において、トロイダルコア2の全周を覆うまで巻線34の外周部3Xa、3Yaの間隔を広げる。このとき、エッジワイズコイル3の巻線34の外周部3Xa、3Yaの間隔が略等間隔となる。
そして、
図10に示すように、エッジワイズコイル3がトロイダルコア2の全周を覆い、エッジワイズコイル3の両端部32が近接又は当接した状態となる。
【0044】
上述した手順により本発明に係るリアクトル1が完成する。完成したリアクトル1において、エッジワイズコイル3は、鋼線により形成されたばね状部材でもあるため弾性復元力を有しており、環状に曲げられたエッジワイズコイル3は当初の角管状の状態に戻ろうとする。この復元力によりエッジワイズコイル3はその端部がトロイダルコア2の内周面24に対して、径方向の外向きに弾力的に付勢された状態で当接する。
このようにエッジワイズコイル3がトロイダルコア2に弾性的に付勢された状態で当接することにより、エッジワイズコイル3内でトロイダルコア2が固定された状態となる。そしてエッジワイズコイル3内でトロイダルコア2が動くことが防止され、トロイダルコア2の衝突によるエッジワイズコイル3の破損を防止することができる。
【0045】
上述した手順により本発明に係るリアクトル1が完成するが、本実施形態においては更に以下の工程を行うものとする。
まず、エッジワイズコイル3が環状に維持されるように、エッジワイズコイル3の両端部32同士の仮固定手段としての結束バンド7により仮固定する。なお、仮固定手段は結束バンド7に限らず、クリップ等を用いてもよい。
次に、エッジワイズコイル3が結束バンド7により仮固定された状態で、リアクトル1がケース4内に収容される。
【0046】
次に、リアクトル1を収容するケース4内に充填材を注入するとともに充填材を硬化させエッジワイズコイル3を固定する。これにより結束バンド7を外してもエッジワイズコイル3がケース4内で固定された状態を保つことができる(
図1参照)。また、トロイダルコア2も充填材によりケース4内で固定されることから、エッジワイズコイル3内でトロイダルコア2が動くことが防止され、エッジワイズコイル3が破損することを効果的に防止することができる。
【0047】
上述した実施形態に係るリアクトル1の製造方法によると、エッジワイズコイル3は当初直管状に形成されるが、直管状にエッジワイズコイル3を形成することは円環状に形成することよりも容易かつ加工精度よく行うことができる。そしてこの直管状のエッジワイズコイル3を分割コア22の締め付けを行いつつその周囲に被せていくようにして配置する。こうした配置はエッジワイズコイル3の巻線34の外周部3Xa、3Yaの間隔を広げるだけで容易かつ精度よく行うことができる。そのため環状のトロイダルコア2であってもエッジワイズコイル3を容易かつ加工精度よく巻き回すことが可能である。
【0048】
本実施形態においては、環状となり近接したエッジワイズコイル3の両端部を結束バンド7により仮固定して(
図10参照)ケース4内に収めてケース4内に充填材を注入して硬化させた後、結束バンド7を取り外す。このような工程を含むことで、エッジワイズコイル3の環状の形状が充填材を用いない場合よりも更に強固に保たれている。
具体的には、リアクトル1がケース4内に載置された状態において、筒状部41の内部にエポキシ系樹脂等の硬化性の充填材が注入される。そして充填材がケース4内に配置されたリアクトル1の下端部分に注入されて硬化することでリアクトル1の下端部分がケース4内で固定される。これにより、エッジワイズコイル3内でトロイダルコア2が振動することが防止され、エッジワイズコイル3の破損を防止することができる。充填材の硬化後は、結束バンド7を取り外した状態でもエッジワイズコイル3を環状の形状に保つことができる。
【0049】
上記のように、環を成すトロイダル状に直接エッジワイズコイル3を巻回する場合には、巻回工程において、大径部3Yが、環の径方向内側において、小径部3Xよりも環の中心軸側であって小径部3Xに重ならない位置となるように、エッジワイズコイル3を巻回すればよい。巻回工程では、環の径方向外側において、小径部3X及び大径部3Yにおける環の中心軸CAからの距離が一致するようにエッジワイズコイル3を巻回する。このように巻回することで、環の径方向外側への張り出しを抑制して、全体の大きさをコンパクトにすることができる。
【0050】
上記実施形態においては、小径部3Xと大径部3Yとが連続して形成されたエッジワイズコイル3について説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されない。つまり、エッジワイズコイル3において、小径部3Xよりも環の内側に大径部3Yの一部が配設されていればよく、小径部3Xと大径部3Yとが別のエッジワイズコイルからなるものであってもよい。このようなコイルは、耐圧の問題が生じければ、コモンモードチョークコイル等の4端子のフィルタ、空芯トランス等の多条のエッジワイズコイルからなるリーケージトランス等に採用可能である。
【0051】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)螺旋状に巻回されたエッジワイズコイルによって構成され、全体として環を成すトロイダル型のリアクトルを製造するリアクトル製造方法であって、
前記エッジワイズコイルを螺旋状に巻く巻回工程を備え、
該巻回工程において、小径部と、該小径部から外方にはみ出る大径部とを形成し、前記環の径方向内側において、前記大径部は、前記小径部よりも前記環の中心軸側であって前記小径部に重ならない位置となるように、前記エッジワイズコイルを巻回することを特徴とするリアクトル製造方法。
(2)前記巻回工程では、前記環の径方向に垂直な方向において、前記大径部が前記小径部よりも外方であって前記小径部に重ならない位置となるように、前記エッジワイズコイルを巻回する(1)に記載のリアクトル製造方法。
(3)前記巻回工程では、前記環の径方向外側において、前記小径部及び前記大径部における前記環の中心軸からの距離が一致するように前記エッジワイズコイルを巻回する(1)又は(2)に記載のリアクトル製造方法。
(4)前記巻回工程において、前記小径部と前記大径部とをそれぞれ一定の巻数毎に交互に連続して巻回する(1)から(3)のいずれか一項に記載のリアクトル製造方法。
(5)前記巻回工程は、トロイダルコアが周方向に複数個に分割された形状の一組の分割コアを、前記エッジワイズコイル内に組み込む組込工程と、
前記一組の分割コアを互いに締め付けて環状に組み付けるとともに、前記エッジワイズコイルの巻線の間隔を広げることで、環状となった前記一組の分割コアの周囲に前記エッジワイズコイルを配置する配置工程と、を含み、
前記組込工程において、前記トロイダルコアの内周面側が、前記エッジワイズコイルの前記大径部における前記小径部からはみ出た側に位置するように、前記分割コアを前記エッジワイズコイル内に組み込む(1)から(4)のいずれか一項に記載のリアクトル製造方法。
(6)螺旋状に巻回されたエッジワイズコイルを備え、
該エッジワイズコイルは、小径部と、該小径部から外方にはみ出た大径部と、を有して、複数回巻回されて、全体として環を成すようにトロイダル型に形成されており、
前記環の径方向内側において、前記大径部は、前記小径部よりも前記環の中心軸側であって前記小径部に重ならない位置に配置されている、ことを特徴とするリアクトル。
(7)前記環の径方向に垂直な方向において、前記大径部の端部は、前記小径部の端部に重ならない位置にある(6)に記載のリアクトル。
(8)前記環の径方向外側において、前記小径部及び前記大径部とは重なっており、
前記小径部における前記環の中心軸側の部位は、前記大径部の内側の空間に配置されている(6)又は(7)に記載のリアクトル。
(9)前記エッジワイズコイルの内部に組み込まれた環状のトロイダルコアを更に備え、
該環状のトロイダルコアは、周方向に複数個に分割された形状の一組の分割コアから構成されており、
前記エッジワイズコイルが前記トロイダルコアの内周面に対して、前記環の径方向の外向きに弾力的に付勢された状態で当接している(6)から(8)のいずれか一項に記載のリアクトル。
(10)前記一組の分割コア及び前記エッジワイズコイルが環状に維持されるように前記一組の分割コアを締め付ける締付部材を更に備える(9)に記載のリアクトル。
(11)螺旋状に巻回されたエッジワイズコイルであって、
小径部と、該小径部から外方にはみ出た大径部と、を有して複数回巻回されており、
該大径部は、前記エッジワイズコイルの巻軸方向に垂直な方向における一側において前記小径部に重ならないように形成されており、
前記小径部と前記大径部は、前記一側に対する逆側において一致する位置に形成されている、ことを特徴とするエッジワイズコイル。