(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-91666(P2019-91666A)
(43)【公開日】2019年6月13日
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 6/00 20060101AFI20190524BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20190524BHJP
F21V 1/00 20060101ALI20190524BHJP
F21V 1/18 20060101ALI20190524BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20190524BHJP
F21Y 115/15 20160101ALN20190524BHJP
【FI】
F21S6/00 500
F21V8/00 282
F21V1/00 200
F21V1/00 300
F21V1/18
F21Y115:10
F21Y115:15
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-221392(P2017-221392)
(22)【出願日】2017年11月17日
(71)【出願人】
【識別番号】591146734
【氏名又は名称】清水 忠男
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】清水 忠男
【テーマコード(参考)】
3K243
【Fターム(参考)】
3K243MA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】装飾性の高い照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置100は、光を発する発光部と、発光部を覆う略全面に孔を有する和紙で形成された外包体130とを備える。外包体130は、湿っている状態の漉いた地紙に、水を噴霧状に落とすことにより孔が形成される。発光部は、複数の光ファイバを編製することにより形成され、複数の光ファイバの湾曲部が発光箇所として機能する光ファイバ編製体110とする。可視光を光ファイバ編製体110に入射させる光源部120をさらに備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発する発光部と、
前記発光部を覆う略全面に孔を有する和紙で形成された外包体と
を備える照明装置。
【請求項2】
前記外包体は、湿っている状態の漉いた地紙に、水を噴霧状に落とすことにより前記孔が形成されることを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記発光部は、平面的な形状内に複数の発光箇所を備え、可撓性を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記発光部は、複数の光ファイバを編製することにより形成され、前記複数の光ファイバの湾曲部が前記発光箇所として機能する光ファイバ編製体であり、
可視光を前記光ファイバ編製体に入射させる光源部をさらに備えることを特徴とする、請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記光ファイバ編製体は、結びの手法を用いて編製されることを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記外包体は、前記発光部に近接又は接触して前記発光部を包むことを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭などで用いられる照明装置では、装飾性を持たせたり照射態様を制御したりするために、光源に傘を掛けたり覆いなどの外包体が設けられたりすることが多い。通常、外包体としては、和紙等の紙類や透光性を有する樹脂等が用いられる。外包体として和紙を用いる場合、いわゆるランプ紙といわれる略均一な厚みを有する和紙が用いられる。
【0003】
ところで、照明装置に用いる光源としては、電球や蛍光灯が一般的であるが、光源から光ファイバに入射した光を利用することも可能である。光ファイバに入射した光を利用する照明装置の一例として、光ファイバ編製体の光ファイバ側面からの漏光を利用したものが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−191733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された照明装置では、光ファイバ編製体を和紙の外包体で包み、外包体の内面で漏光を反射させることにより、外包体が無い場合よりも明るい照明を得ている。
【0006】
しかしながら、一般的な略均一な厚みを有する和紙で外包体を形成した場合には、外包体内で光が略均一に拡散されることにより、照明装置全体として光量の均一性は高まるものの、柔らかく落ち着いた雰囲気を醸し出すという観点や光ファイバ編製体や外包体の模様による装飾性の観点では十分とは言えなかった。
【0007】
上記の課題に鑑み、本発明の目的は、装飾性の高い照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成すべく、本発明の一実施形態に係る照明装置は、光を発する発光部と、発光部を覆う略全面に孔を有する和紙で形成された外包体とを備える。
【0009】
本発明では、外包体は、湿っている状態の漉いた地紙に、水を噴霧状に落とすことにより孔が形成されるとよい。
【0010】
本発明では、発光部は、平面的な形状内に複数の発光箇所を備え、可撓性を有するとよい。
【0011】
本発明では、発光部は、複数の光ファイバを編製することにより形成され、複数の光ファイバの湾曲部が発光箇所として機能する光ファイバ編製体とするとよく、可視光を光ファイバ編製体に入射させる光源部をさらに備えるとよい。
【0012】
本発明では、光ファイバ編製体は、結びの手法を用いて編製されるとよい。
【0013】
本発明では、外包体は、発光部に近接又は接触して発光部を包むとよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】照明装置100の構成の一例を示す模式図である。
【
図2】光ファイバ編製体110における結び目Kを示す模式図である。
【
図4】外包体130における孔Hを示す模式図である。
【
図5】光ファイバからの漏光への外包体130による影響を示す模式図である。
【
図6】照明装置100を点灯させた状態で撮影した写真である。
【
図7】照明装置100の使用状態の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態に係る照明装置100を説明する。
図1(a)に示すように、照明装置100は、光ファイバ編製体110と、光源部120と、外包体130と、を備える。光ファイバ編製体110は、本発明における発光部の一例である。
図1(b)に示すように、外包体130は、光ファイバ編製体110を覆うように装着して用いられる。
【0016】
光ファイバ編製体110は、複数の光ファイバを編製しこれにより形成された複数の湾曲部を備える光ファイバの編製体である。編製、すなわち編むという製法は、繊維に曲げを加えて複数の繊維を絡ませることで複数の繊維を一体化する技術である。広義の繊維の一種である光ファイバを編製する場合、光ファイバの物理的強度の範囲で比較的緩やかに編製されるため、光ファイバ編製体110は縦横の伸縮、曲げや捻りに対する自由度が比較的大きい。そのため、例えば光ファイバ編製体110を
図1に示すように平面的に編製することで、照明装置100の使用形状を、
図6に示したアーチ形状のほか、平坦な平面状、波型の形状といった任意の形状に柔軟に変化させて使用することができる。
【0017】
編製に用いる光ファイバは、本発明では曲げを積極的に利用するため、可撓性が高いプラスラック光ファイバが好ましい。ガラス系の光ファイバを用いても構わないが、一般に可撓性が高くないため湾曲部を形成する際に破損しやすく、接続や取り扱いも容易ではない。光ファイバの外径は、形成する光ファイバ編製体110の大きさや湾曲部の形成態様に応じ任意に決定してよい。光ファイバの損失特性については、光源部120からの発光強度、光源部120から漏光させる所定の湾曲部までの距離、所望の漏光強度などに応じ任意に決定してよい。
【0018】
光源部120から光ファイバ内に入射された可視光は、光ファイバの中心部にあるコアとコアの周囲にあり屈折率がコアより低いクラッドとの境界面で全反射を繰り返しつつ伝搬していくが、光ファイバを湾曲させることで光の境界面への入射角が小さくなり、ある曲率半径以上に湾曲させると全反射する入射角の条件を満たさなくなって光ファイバ外に漏れ出す。湾曲部からの漏光の量は、光源部120から光ファイバを経て湾曲部に到達した光の強度が大きいほど、また、湾曲部の曲率半径が小さいほど大きくなる。そのため、同じ仕様の光ファイバに同じ強度の光を入射しても、湾曲部の曲率半径を相違させることで、漏光の明るさを相違させることができる。
【0019】
湾曲部は、例えば光ファイバを結びの手法により編製して形成するとよい。
図2に示したように、光ファイバの結び目Kの位置が湾曲部となり、漏光が生じる。結びの手法で編製することにより、結びの形状に応じて漏光の明るさを調整できるとともに、湾曲部の形状が保持され安定した発光状態を維持することができる。結びの手法は、装飾性の高さからマクラメ結びが好適であり、例えば線状の発光を形成したい場合はねじり結びや平結びなどを、また、光ファイバ編製体110を平面的に構成した場合など面状の発光を形成したい場合は七宝結びなどを採用するとよい。また、マクラメ結びの他の結びやマクラメ結び以外の結びの手法を用いても構わない。
【0020】
光ファイバ編製体110の形成に際し、必要に応じた組数の光ファイバ組を用いることにより、所望の箇所に所望の発光強度を有する発光を呈することができる。1組を構成する光ファイバの本数は2本に限らず、3本以上でも構わない。
【0021】
また、複数の湾曲部が設けられた或る光ファイバに注目したとき、当該光ファイバに光を入射すると湾曲部を経るごとに漏光により入射光が減衰していくため、設けることができる湾曲部の数には自ずと限界がある。そのため、広範囲に発光を形成したい場合には、異なる光ファイバ組によりそれぞれ編製された単位発光箇所を順次連結することにより光ファイバ編製体110を形成するとよい。以上で説明した構成により、光ファイバ編製体110は、本発明における発光部として、結び目Kから光を発する。
【0022】
光源部120は可視光源を備え、当該可視光源に光ファイバ編製体110を構成する各光ファイバが接続されて、各光ファイバに可視光が入射される。可視光源の種類及び各光ファイバへの光の入射方法は任意である。光源部120と光ファイバとの間にカラーフィルタを配置して、色彩のある光を光ファイバに入射するようにしてもよい。このとき、個々の光ファイバに入射される光の色を異ならせてもよい。光源部120には商用電源などから電源コード121を介して給電される。なお、光源部120は蓄電池により駆動してもよく、このときには電源コード121は不要であり、代わりに蓄電池を備えればよい。
【0023】
外包体130としては、和紙を封筒状に形成したものを用いる。
図3は、本実施形態の外包体130に用いる和紙を、黒い紙を背景に撮影した写真であり、
図4は外包体130により光ファイバ編製体110を覆う様子をその一部拡大図とともに示す図である。外包体130に用いる和紙は、略全面に直径2〜5ミリメートル程度の細かな孔H(和紙の繊維が粗になっている領域)が設けられている。このような和紙は落水紙と呼ばれることもある。
【0024】
上述のような、和紙の略全面に設けられる無数の細かな孔Hは、漉いた薄い地紙がまだ湿っているときに、水を噴霧状に落とすことにより形成することができる。特に、水の噴霧を複数回行うことが好ましい。水を複数回噴霧することで、広範囲に孔Hを形成できるとともに、孔Hの形状やサイズを不均一にすることができる。
【0025】
図5は、光ファイバからの漏光への外包体130による影響を模式的に示している。
図5(a)に示したように、外包体130は、光ファイバ編製体110に近接又は接触して光ファイバ編製体110を包む。光ファイバの結び目Kからの漏光は、外包体130の内面に照射されたり、光ファイバ編製体110自身に照射されたりする。外包体130の内面に照射される光の一部は、外包体130を透過して外部から視認可能となる。この直接透過する漏光が、照明装置100の照明光の主要部となる。
【0026】
外包体130の内面に照射される光の他の部分は、外包体130の内面で反射される。このとき、孔Hが形成されている影響により、孔H以外の部分の厚みや繊維の方向等が不均一となっているため、外包体130の内面での反射は乱反射となり、光が様々な方向に拡散されることになる。拡散された光は、光ファイバからの漏光と同様、外包体130の内面に照射されたり、光ファイバ編製体110に照射されたりする。
【0027】
光ファイバ編製体110(例えば光ファイバーの非発光部分など)に照射される光は、光ファイバの外面で反射され、その結果、直接の漏光よりは暗いものの、光ファイバ自体が発光しているかのように見える。この反射光は、光ファイバからの漏光と同様に、外包体130の内面に照射されたり、光ファイバ編製体110自身に照射されたりする。
【0028】
照明装置100の照明光は、以上で説明したような複雑な反射・拡散を経て外包体130を透過して外部に出射される。照明光は、漏光が直接透過してくる部分は比較的明るく、拡散された光や光ファイバの外面での反射光が透過してくる部分は比較的暗い光量となる。漏光が生じる湾曲部が光ファイバ編製体110の所々に分散して配置されているため、全体としては考量の明暗がまだら模様に分散され、いわば水彩画のように光がにじんだような柔らかく落ち着いた雰囲気を醸し出すことができる照明が実現できる。また、光ファイバの外面での反射光により、光ファイバ編製体に表現される装飾性ある模様がうっすらと視認でき、装飾性の高い照明が実現できる。
【0029】
本実施形態における外包体130とは対照的に、均一な厚みの和紙を外包体として用いた場合には、
図5(b)に示したように外包体の内面で反射の比率が高まる。このため、光量の均一性は高まるものの、柔らかく落ち着いた雰囲気を醸し出すという観点や光ファイバ編製体や外包体の模様による装飾性の観点で本実施形態の構成のような効果が得られない。
【0030】
図6は、本実施形態の照明装置100を点灯させた状態で撮影した写真である。光ファイバの結び目Kの位置が最も明るい輝点となるとともに、その周囲に光が染み出したように拡がり、光ファイバにおける結び目K以外の部分が照らされて薄っすらと視認できる様子がわかる。また、外包体130の孔Hの不規則な配置も照明の装飾性に寄与していることがわかる。
【0031】
図7は、照明装置100の使用状態の一例を示している。
図6に示した構成において、照明装置100は、外包体130に覆われた光ファイバ編製体110における光源部120側の端を、固定台200に設けられたスリット210で保持し、重力によって光ファイバ編製体110がアーチ形状を成すように配置される。光源部120は固定台の内部に収容される。なお、照明装置100の保持方法はこれに限定されるものではない。
【0032】
例えば、光ファイバ編製体110の両端を、その位置や向きを変更可能な支持手段によって支持し、光ファイバ編製体110の可撓性を活かして任意の形状に変形させた状態で支持させて使用してもよい。あるいは、例えば、照明装置100は、天井などの高所から吊り下げて使用してもよい。あるいは、光ファイバ編製体をアーチ形状、円形、捩じった形状等の任意の形状としつつその両端を固定してもよい。
【0033】
本発明は、上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上記実施形態において発光部として、光ファイバ編製体を用いる場合を例に説明したが、発光部はこれに限定されない。例えば、発光部として、平面的な形状内に複数の発光箇所を備え、可撓性を有するものとするとよい。より具体的には、平坦で可撓性のある基材の上にLED、有機EL等を複数配置したものを発光部として用いてもよい。ただし、光ファイバ編製体は漏光を発生する光ファイバの湾曲部が発熱することがないため、外包体としての和紙を発光部に密接させて用いる構成において安全性の観点で、LEDや有機EL等を用いる構成と比べて優れている。
【0034】
また上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の発明を形成できる。また例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除した構成も考えられる。さらに、異なる実施形態に記載した構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0035】
100…照明装置
110…光ファイバ編製体
120…光源部
130…外包体
K…結び目
H…孔