【解決手段】一実施の形態によれば、固体撮像素子は、半導体基板100と、半導体基板100の表面に形成されたPN接合型のフォトダイオードPD1と、フォトダイオードPD1の形成面上を含む半導体基板100の表面上に形成された絶縁膜106と、絶縁膜106上に積層された複数の配線層のうち、フォトダイオードPD1に隣接する第1配線層よりも上位階層の配線層に形成され、かつ、負電圧が印加されたメタル電極MTLと、を備える。
前記複数の配線層のうち前記第1配線層よりも上位階層の配線層において、平面視上、前記フォトダイオードの形成領域の一部と重なるように形成され、かつ、前記第1メタル電極と電気的に接続された第2メタル電極をさらに備えた、
請求項1〜4の何れか一項に記載の固体撮像素子。
前記第1配線層において、平面視上、前記フォトダイオードの形成領域の外周を囲むように形成され、かつ、前記第1メタル電極と電気的に分離して形成されたメタル配線をさらに備えた、
請求項1〜12の何れか一項に記載の固体撮像素子。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0013】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0014】
<発明者らによる事前検討>
実施の形態1にかかるCMOSイメージセンサ(固体撮像素子)について説明する前に、まず、一般的な表面照射型CMOSイメージセンサに設けられた埋め込みフォトダイオードについて説明する。
【0015】
図10は、埋め込みフォトダイオードの断面模式図である。
図10に示すように、シリコン基板に形成されたPウェルの表面には、N型拡散領域(N
−領域)が形成されている。このN型拡散領域は、Pウェルの表面にN型不純物をドーピングすることにより形成されている。ここで、PウェルとN型拡散領域とによってPN接合型のフォトダイオードが構成されている。
【0016】
また、Pウェルの表面には、N型拡散領域と間隔を空けて、素子分離領域(STI;Shallow Trench Isolation)が形成されている。また、N型拡散領域の表面を含む、素子分離領域に囲まれた活性領域の表面には、P型のピニング層が形成されている。このピニング層は、素子分離領域に囲まれた活性領域の表面にP型不純物をドーピングすることにより形成されている。さらに、その表面には、SiO
2絶縁膜(PMD;Pre Metal Dielectric)が形成されている。
【0017】
なお、通常のフォトダイオードは、
図10に示す埋め込みフォトダイオードのうち、ピニング層を持たず、N型拡散領域の表面が直接PMDで覆われた構造を有している。
【0018】
固体撮像素子に用いられるフォトダイオードでは、通常、光信号によって励起された信号電子に加えて、熱励起による暗電流電子が生成される。この暗電流電子の出力は0に近いほどよく、暗電流の増大は、画質の劣化を生じさせる。
【0019】
例えば、ピニング層を持たない通常のフォトダイオードの場合、N型拡散領域とPMDとの界面にダングリングボンドや結晶欠陥が多数存在するため、バンド構造の禁制帯領域に欠陥準位が生じてしまう。その結果、熱励起によって生成される暗電流電子が増加して、暗電流が増大してしまう。それに対し、ピニング層を持つ埋め込みフォトダイオードの場合、熱励起によって生成された暗電流電子は、P型のピニング層及びPウェルを伝搬してグランドに掃引される。それにより、暗電流の増大が抑制されるため、画像の品質劣化は抑制される。
【0020】
なお、ピニング層は、活性領域の表面にP型不純物のドーピングすることにより形成される場合に限られない。ピニング層は、例えば、特許文献1に開示されているように、基板上に形成されたITO透明導電層から感光領域(活性領域)に対して負電圧を印加することにより形成されることもある。
【0021】
続いて、
図11を用いて、
図10に示す埋め込みフォトダイオードが宇宙空間、原子力施設、放射線施設内等で用いられた場合の課題について説明する。
【0022】
図11に示すように、ガンマ線等の放射線が埋め込みフォトダイオードに照射された場合、放射線の照射によって発生するトータルドーズ効果の電離作用により、絶縁体であるPMD中に電荷が生成される。この電荷のうち、負電荷である電子は、移動度が高いため、比較的短い時間で電極側に掃引され、電極において消滅する。それに対し、正電荷である正孔は、負電荷よりも移動度が低いため、PMD中に取り残されてしまう。この正電荷は、徐々にPMD外に掃引されるが、その過程において、PMDとシリコン基板との界面近傍に存在する欠陥にトラップされ、固定正電荷となる。このように、PMDとシリコン基板との界面近傍に固定正電荷が発生すると、埋め込みフォトダイオードの表面に形成されたP型のピニング層がN型に反転してしまう可能性がある。その場合、ピニング層による暗電流抑制の効果が無くなってしまう可能性がある。
【0023】
そこで、発明者らは、ピニング層の機能を失わせることなく、放射線の照射に起因して生じる画質の劣化を防ぐことが可能な、実施の形態1にかかるCMOSイメージセンサ(固体撮像素子)を見出した。
【0024】
<実施の形態1>
まず、
図1、
図2及び
図3を用いて、表面照射型CMOSイメージセンサ(固体撮像素子)の画素部の基本構成を説明する。
【0025】
(CMOSイメージセンサの画素部1の基本的な回路構成)
図1は、実施の形態1に係るCMOSイメージセンサに用いられる画素部の基本的な回路構成を示す図である。
図1に示すCMOSイメージセンサの画素部1は、所謂、APS(Active Pixel Sensor)とも呼ばれる典型的な4トランジスタ型CMOSイメージセンサの画素部である。
【0026】
図1に示すように、画素部1は、4つのNチャネルMOSトランジスタTR1〜TR4と、フォトダイオードPD1と、を備える。以下、4つのNチャネルMOSトランジスタTR1〜TR4を、それぞれ、トランスファトランジスタTR1、リセットトランジスタTR2、増幅トランジスタTR3、及び、行選択トランジスタTR4とも称す。
【0027】
フォトダイオードPD1のアノードは、接地電圧線GNDに接続され、フォトダイオードPD1のカソードは、トランスファトランジスタTR1のソースに接続されている。トランスファトランジスタTR1では、ドレイン(TR1_D)がノードN1に接続され、ゲート(TR1_G)が、転送ゲート駆動信号φTGの伝搬する転送ゲート駆動ライン4に接続されている。
【0028】
リセットトランジスタTR2では、ソース(TR2_S)がノードN1に接続され、ドレイン(TR2_D)が電源電圧線VDDに接続され、ゲート(TR2_G)が、リセット信号φRの伝搬するリセット信号線5に接続されている。
【0029】
増幅トランジスタTR3では、ソース(TR3_S)がノードN2に接続され、ドレイン(TR3_D)が電源電圧線VDDに接続され、ゲート(TR3_G)がノードN1に接続されている。つまり、トランスファトランジスタTR1のドレイン、リセットトランジスタTR2のソース、及び、増幅トランジスタTR3のゲートは、ノードN1において互いに接続されている。また、ノードN1には、浮遊拡散層容量FD1が形成されている。
【0030】
行選択トランジスタTR4では、ソース(TR4_S)が、列方向に設けられた他の複数の画素とともに出力信号線VOUTに接続され、ドレインがノードN2に接続され、ゲート(TR4_G)が、行選択信号φSELの伝搬する行選択信号線6に接続されている。
【0031】
フォトダイオードPD1は、受光した光信号を電気信号に変換する。トランスファトランジスタTR1は、転送ゲート駆動信号φTGがアクティブになった場合にオンし、フォトダイオードPD1によって光信号から変換された電気信号をノードN1に転送する。それにより、ノードN1に形成された浮遊拡散層容量FD1には、フォトダイオードPD1からの電気信号に応じた電荷が蓄積される。増幅トランジスタTR3は、ノードN1の電圧をドライブしてノードN2に出力する。行選択トランジスタTR4は、行選択信号φSELがアクティブになった場合にオンし、ノードN2の電圧(即ち、フォトダイオードPD1によって光信号から変換された電気信号)を、出力信号線VOUTに出力する。
【0032】
(画素部1の基本的部分の平面レイアウト図及び断面模式図)
図2は、
図1に示す画素部1の基本的部分を画素部1Bとして示す平面レイアウト図である。
図3は、
図2に示す平面レイアウト図のA−A’部分の断面模式図である。
【0033】
図2に示すように、平面視上、画素部1Bの大部分を占める領域に、矩形状のフォトダイオードPD1が形成され、その外周を囲むようにして、転送ゲート駆動ライン4のメタルが形成されている。
【0034】
また、平面視上、矩形状のフォトダイオードPD1の一辺側の周辺領域(
図2の紙面の上部)には、4つのトランジスタTR1〜TR4が形成されている。さらに、平面視上、フォトダイオードPD1及びトランジスタTR1〜TR4を挟むようにして、接地電圧線GNDと、電源電圧線VDD及び出力信号線VOUTと、が並行に配置されている。
【0035】
図3に示すように、半導体基板100に形成されたPウェル101の表面には、N型拡散領域103が形成されている。このN型拡散領域103は、Pウェル101の表面にN型不純物をドーピングすることにより形成されている。ここで、Pウェル101とN型拡散領域103とによってPN接合型のフォトダイオードPD1が構成されている。
【0036】
また、Pウェル101の表面には、N型拡散領域103と間隔を空けて、素子分離領域(STI)102が形成されている。N型拡散領域103の表面を含む、素子分離領域102に囲まれた活性領域の表面には、P型のピニング層104が形成されている。このピニング層104は、素子分離領域102に囲まれた活性領域の表面にP型不純物をドーピングすることにより形成されている。
【0037】
なお、N型拡散領域103の外周辺(換言すると、フォトダイオードPD1の外周辺)は、
図2において一点鎖線11で示されている。また、素子分離領域102とそれに囲まれた活性領域との境界線は、
図2において実線10で示されている。ただし、素子分離領域102とそれに囲まれた活性領域との境界線のうち、配線層に隠れている境界線については、破線10で示されている。
【0038】
また、Pウェル101の表面には、N型拡散領域103と分離してP型拡散領域105が形成されている。このP型拡散領域105は、Pウェル101の表面にP型不純物をドーピングすることにより形成される。
【0039】
さらに、半導体基板100の表面には、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、SiO
2等の透明の絶縁膜106(不図示)が形成されている。
【0040】
この絶縁膜上に積層された複数の配線層のうち、半導体基板100に隣接する(最も近接する)第1配線層には、前述した転送ゲート駆動ライン4のメタルが、平面視上、フォトダイオードPD1の外周(N型拡散領域103の外周)を囲むようにして形成されている。それにより、周辺からフォトダイオードPD1に迷光が入り込むのを防ぐことができる。
【0041】
また、第2配線層には、前述した、接地電圧線GNDと、電源電圧線VDD及び出力信号線VOUTとが、平面視上、フォトダイオードPD1及びトランジスタTR1〜TR4を挟むようにして並列に配置されている。なお、第2配線層に配置された接地電圧線GND、電源電圧線VDD及び出力信号線VOUTを、それぞれ、接地電圧線GND_2、電源電圧線VDD_2及び出力信号線VOUT_2とも称す。
図3の例では、第2配線層に配置された接地電圧線GND_2は、ビアV1を介して、第1配線層に配置された接地電圧線GND_1に接続されている。そして、第1配線層に配置された接地電圧線GND_1は、コンタクトCT1を介して、P型拡散領域105に接続されている。
【0042】
(本発明の特徴部分が追加された画素部1の平面レイアウト図及び断面模式図)
図4及び
図5は、
図2に示す画素部1の基本的部分に対し、本発明の特徴の一つを追加した構成の平面レイアウト図である。なお、
図4では、複数の配線層のうち第1及び第2配線層のみが示されており、
図5では、複数の配線層のうち第3配線層のみが示されている。
図6は、
図4及び
図5に示す平面レイアウト図のB−B’部分の断面模式図である。
【0043】
図4〜
図6に示すように、画素部1は、
図2に示す画素部1Bと比較して、複数の配線層のうち、第1配線層より上位階層の配線層において、メタル電極MTLがさらに形成されている。本例では、第2及び第3配線層のそれぞれにメタル電極MTL_2,MTL_3が形成され、それらがビアV2によって電気的に接続されている。これらメタル電極MTL_2,MTL_3及びビアV2によってメタル電極MTLが構成されている。
【0044】
メタル電極MTL_2は、第2配線層において、平面視上、フォトダイオードPD1の外周(N型拡散領域103の外周)を囲むようにしてリング状に形成されている。また、メタル電極MTL_3は、第3配線層において、平面視上、フォトダイオードPD1の外周(N型拡散領域103の外周)を囲むようにして形成されている。そのため、フォトダイオードPD1の受ける光がメタル電極MTL_2,MTL_3によって遮られることはない。
【0045】
ここで、メタル電極MTL(メタル電極MTL_2,MTL_3)には、負電圧が印加されている。そのため、ガンマ線等の放射線の照射によって発生するトータルドーズ効果の電離作用によって、絶縁膜106に固定正電荷が蓄積された場合でも、メタル電極MTLの負電圧を用いてフォトダイオードPD1に電界を生じさせることにより、ピニング層104が受ける固定正電荷の影響を相殺させることができる。それにより、ピニング層104の機能が維持されるため、N型拡散領域103と絶縁膜106との界面において熱励起により発生した暗電流は、ピニング層104を経由してグランドに掃引される。その結果、画素部1によって表示される画像の品質劣化が抑制される。
【0046】
なお、仮に、MOSトランジスタのゲート電極等に用いられるポリシリコンや、第1配線層に形成されるメタルを、メタル電極MTLとして採用した場合、メタル電極MTLとフォトダイオードPD1と間の距離が近づきすぎてしまう。この場合、平面視上、フォトダイオードPD1の形成領域のうち、メタル電極MTLに近い周辺部近傍には電界が生成されるが、中央部に電界がほとんど生成されない。そのため、フォトダイオードPD1の中央部では、ピニング層104が受ける固定正電荷の影響を十分に相殺することができない。この問題は、フォトダイオードPD1の形成領域が大きくなるほど顕著になる。
【0047】
それに対し、本実施の形態にかかるCMOSイメージセンサの画素部1では、第1配線層より上位階層の配線層に形成されるメタルを、メタル電極MTLとして採用している。それにより、メタル電極MTLとフォトダイオードPD1との間の距離が適度に離れるため、平面視上、フォトダイオードPD1の周辺部のみならず中央部にも比較的均一に電界が生成される。そのため、フォトダイオードPD1では、全面にわたって、ピニング層104が受ける固定正電荷の影響を相殺することができる。それにより、本実施の形態にかかるCMOSイメージセンサの画素部1は、ピニング層104を精度良く機能させることができるため、暗電流の増大を抑制することができ、その結果、画質の劣化を抑制することができる。
【0048】
このように、実施の形態1に係るCMOSイメージセンサの画素部1では、第1配線層よりも上位階層において、平面視上、フォトダイオードPD1の形成領域の外周を囲むようにして、負電圧の印加されたメタル電極MTLが形成されている。それにより、画素部1は、放射線の照射によって発生するトータルドーズ効果の電離作用によって絶縁膜106に固定正電荷が蓄積された場合でも、メタル電極MTLの負電圧を用いてフォトダイオードPD1に電界を生じさせることにより、ピニング層104が受ける固定正電荷の影響を相殺させることができる。それにより、本実施の形態にかかるCMOSイメージセンサの画素部1は、ピニング層104を精度良く機能させることができるため、暗電流の増大を抑制することができ、その結果、画質の劣化を抑制することができる。
【0049】
なお、本実施の形態にかかるCMOSイメージセンサの画素部1では、配線層にメタル電極MTLを形成しているため、特許文献1に開示されているようにITO透明導電層を形成する場合と異なり、特殊な製造プロセスは不要である。そのため、製造上の問題やITO透明電極追加に伴うプロセスコストの増大を抑制することができる。
【0050】
本実施の形態では、フォトダイオードPD1が、ピニング層104で予め覆われた埋め込み型の構造である場合を例に説明したが、これに限られない。フォトダイオードPD1は、ピニング層104で予め覆われていない構造であってもよい。この場合、メタル電極MTLに印加される負電圧を大きくすることによって、N型拡散領域103の表面に、ピニング層104に相当するP型拡散領域を形成することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、メタル電極MTLが2つの配線層に跨って形成された場合を例に説明したが、これに限られない。メタル電極MTLは、第1配線層より上位階層の一つの配線層にのみ形成されてもよいし、第1配線層より上位階層の3つ以上の配線層に跨って形成されてもよい。
【0052】
<実施の形態2>
図7及び
図8は、実施の形態2に係る表面照射型CMOSイメージセンサの画素部2の平面レイアウト図である。なお、
図7では、複数の配線層のうち第1及び第2配線層のみが示されており、
図8では、複数の配線層のうち第3配線層のみが示されている。
図9は、
図7及び
図8に示す平面レイアウト図のC−C’部分の断面模式図である。
【0053】
図7〜
図9に示すように、画素部2は、画素部1と比較して、メタル電極MTL_2aをさらに備える。メタル電極MTL_2aは、第2配線層において、平面視上、フォトダイオードPD1の形成領域の一部と重なるように形成されている。本例では、メタル電極MTL_2aは、第2配線層において、平面視上、フォトダイオードPD1の形成領域の中央部と重なるように、メタル電極MTL2の一辺から対向する他辺にかけて帯状に形成されている。また、メタル電極MTL_2aは、メタル電極MTL_2と電気的に接続されている。そのため、メタル電極MTL_2aにも負電圧が印加されている。
【0054】
画素部2のその他の構造については、画素部1の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0055】
このように、実施の形態2に係るCMOSイメージセンサの画素部2では、第1配線層よりも上位階層において、平面視上、フォトダイオードPD1の形成領域の外周を囲むようにして、負電圧の印加されたメタル電極MTLが形成されている。それにより、画素部2は、放射線の照射によって発生するトータルドーズ効果の電離作用によって絶縁膜106に固定正電荷が蓄積された場合でも、メタル電極MTLの負電圧を用いてフォトダイオードPD1に電界を生じさせることにより、ピニング層104が受ける固定正電荷の影響を相殺させることができる。それにより、本実施の形態にかかるCMOSイメージセンサの画素部2は、ピニング層104を精度良く機能させることができるため、暗電流の増大を抑制することができ、その結果、画質の劣化を抑制することができる。
【0056】
さらに、本実施の形態にかかるCMOSイメージセンサの画素部2では、第1配線層よりも上位階層において、平面視上、フォトダイオードPD1の形成領域の一部(特に中央部)と重なるようにして、負電圧の印加されたメタル電極MTL_2aが形成されている。それにより、画素部2は、フォトダイオードPD1上面の周辺部のみならず中央部にも強い電界を生じさせることができる。つまり、画素部2は、フォトダイオードPD1上面の全面にわたってより均一に電界を生じさせることができる。それにより、画素部2は、ピニング層104が受ける固定正電荷の影響をより高精度に相殺させることができる。それにより、本実施の形態にかかるCMOSイメージセンサの画素部2は、ピニング層104をより精度良く機能させることができるため、暗電流の増大をさらに抑制することができ、その結果、画質の劣化をさらに抑制することができる。
【0057】
なお、本実施の形態では、メタル電極MTLとして、メタル電極MTL_2,MTL_3に加えてメタル電極MTL_2aが設けられている場合について説明したが、これに限られない。メタル電極MTLとして、メタル電極MTL_2a単体が設けられていてもよい。その場合でも、メタル電極MTL_2aを、第1配線層よりも上位階層の配線層に形成することにより、メタル電極MTL_2aとフォトダイオードPD1との間の距離を適度に離すことができるため、フォトダイオードPD1上面の全面にわたって比較的均一に電界を生じさせることができる。
【0058】
また、本実施の形態では、平面視上、メタル電極MTL_2aがフォトダイオードPD1の形成領域の一部と重なるように形成されているが、メタル電極MTL_2aの幅を、他の最も細い配線幅を有するメタル配線の配線幅に対応する幅とすることにより(具体的には、プロセスルール上の最小寸法とすることにより)、遮光によるフォトダイオードPD1の感度低下の影響は最小限に抑えられる。
【0059】
また、本実施の形態では、平面視上、メタル電極MTL_2aが矩形状のフォトダイオードPD1の形成領域の一辺から対向する他辺にかけて帯状に形成されているが、これに限られない。メタル電極MTL_2aは、フォトダイオードPD1上面の全面にわたって均一に電界を生じさせることができ、かつ、遮光によるフォトダイオードPD1の感度低下を許容範囲に抑えられるのであれば、どのような形状であってもよい。また、メタル電極MTL_2aは、第1配線層よりも上位階層であればどの配線層に配置されてもよい。
【0060】
さらに、本実施の形態では、フォトダイオードPD1が、ピニング層104で予め覆われた埋め込み型の構造である場合を例に説明したが、これに限られない。フォトダイオードPD1は、ピニング層104で予め覆われていない構造であってもよい。この場合、メタル電極MTLに印加された負電圧を大きくすることによって、N型拡散領域103の表面に、ピニング層104に相当するP型拡散領域を形成することができる。
【0061】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。例えば、各MOSトランジスタの導電型は、P型からN型、N型からP型にそれぞれ置き換えられてもよい。