【解決手段】第1高電源線61および第1低電源線60を有する第1ドメインと、前記第1高電源線から分離した第2高電源線63および、前記第1低電源線から分離した第2低電源線62を有する第2ドメインと、前記第1ドメインからの信号が入力され、前記第2ドメインに信号を出力する第1中継回路71と、を有し、前記第1中継回路は、前記第1低電源線および前記第2高電源線に接続する第1差動回路を有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施形態について説明する前に、複数ドメインを有する半導体装置、およびESD保護について説明する。
【0017】
図1は、複数のドメインを有する例示の半導体装置の上面図である。
半導体装置(デバイス)1は、4辺に沿って配置された複数の端子2と、低(VSS)電源線3と、複数のドメイン6A−6Dと、を有する。複数の端子2は、ドメイン6Aの高電源線に電源を供給する3個の端子2Aと、ドメイン6Bの高電源線に電源を供給する2個の端子2Bと、ドメイン6Cおよび6Dの高電源線に電源を供給するそれぞれ1個の端子2Cおよび2Dと、を含む。
【0018】
ドメイン6A−6Dは、内部に低電源線、高電源線および回路部分をそれぞれ有し、各ドメインの低電源線は、低電源線3に接続される。したがって、
図1の例示の半導体デバイスでは、ドメイン6A−6Dの低(VSS)電源線は相互に接続されている。ドメイン6A−6Dの高(VDD)電源線は、分離している。ドメイン6Aの高電源線には、3個の端子2Aから電源供給ライン4Aを通してVDD1が供給され、ドメイン6Bの高電源線には、2個の端子2Bから電源供給ライン4Bを通してVDD2が供給される。ドメイン6Cの高電源線には、1個の端子2Cから電源供給ライン4Cを通してVDD3が供給され、ドメイン6Cの高電源線には、1個の端子2Dから電源供給ライン4Dを通してVDD4が供給される。電源供給ライン4A−4Dと低(VSS)電源線3の間に電源クランプ回路5が接続される。電源クランプ回路5は、外部静電気帯電物体による放電の影響から半導体デバイスを保護する回路であり、例えば、後述するPRC(Power Rail Clamp)回路などで実現される。
【0019】
なお、図示していないが、低(VSS)電源線3は、複数の端子2の残りの端子のいくつかに接続され、それらの端子には低電源VSSが供給される。さらに、複数の端子2のさらに残りの端子は、外部との入出力信号端子として利用され、その信号線と低電源線3または高電源線との間にはESD保護回路(CDM保護回路)が設けられる。
【0020】
図2は、半導体デバイスに設ける複数のドメインの例を示す図である。
半導体デバイス1は、コア部(Core Logic Area)11と、アナログ(Analog)部12と、入出力規格に対応した動作を行うための複数のIF部分(SATA, USB3.0, MIPI, PCI-Express)13、15、16、17と、を有する。さらに、半導体デバイス1は、外部クロックとの同期を行うためのPLL部14と、複数の端子18と、を有する。アナログ部12、複数のIF部分(SATA, USB3.0, MIPI, PCI-Express)13、15、16、17およびPLL部14は、設計時に機能マクロとして提供される。複数の部分(SATA, USB3.0, MIPI, PCI-Express)13、15、16、17、アナログ部12およびPLL部14は、コア部11との間で信号の入出力を行う。
【0021】
コア部11は、前述のASVにより電源電圧が設定され、複数の部分(SATA, USB3.0, MIPI, PCI-Express)13、15、16、17は、規格に応じた電源電圧で信号の入出力を行う。また、アナログ部12およびPLL部14は、所定の電源電圧で動作する。そのため、複数の部分13、15、16、17、アナログ部12およびPLL部14の電源は、少なくともコア回路11と異なる電圧に設定可能であることが求められ、コア回路11の間で異なる電源電圧での信号の入出力を行うクロスドメイン部が設けられる。
【0022】
以下、コア部11とアナログ部12との間のクロスドメイン部を例として説明を行うが、同様の説明がコア部11と他の部分との間でも有効である。
図3は、コア部11とアナログ部12との間のクロスドメイン部の一般的な構成を示す図である。
【0023】
コア部11は、低(電位)電源線(VSS_core)50と、コア用高(電位)電源線(VDD_core(ASV)51と、コア(core)回路21と、コアクロスドメインインターフェース(CCDIF)22と、コアパワーレールクランプ(CPRC)23と、を有する。アナログ部12は、低電源線(VSS_IP)50と、アナログ用高電源線(VDD_IP)52と、アナログ(Analog)回路31と、アナログクロスドメインインターフェース(ACDIF)32と、アナログパワーレールクランプ(APRC)33と、を有する。このように、コア部11の低電源線(VSS_core)とアナログ部12の低電源線(VSS_IP)は、共通である。低電源線の電圧は0Vであり、コア用高電源線(VDD_core(ASV)51の電圧はプロセスに応じて設定される。パワーレールクランプは、広く知られた回路であり、詳細は後述する。一般に、コア回路21は回路規模の大きな回路であり、アナログ回路31はコア回路31に比べて回路規模が小さく、コア部11の電源間容量は、アナログ部12の電源間容量に比べて大きくなっている。
【0024】
クロスドメイン部は、CCDIF22からのACDIF32に出力されるデジタル信号のレベルを変換する第1レベルシフタ41と、ACD32からCCD22に出力されるデジタル信号のレベルを変換する第2レベルシフタ42と、を有する。第1レベルシフタ41および第2レベルシフタ42は、低電源線50、コア用高電源線(VDD_core(ASV))51およびアナログ用高電源線(VDD_IP)52に接続される。
【0025】
CCDIF22は、コア回路21がアナログ回路31を制御するデジタル信号を出力すると共に、レベル変換されたアナログ処理の結果を示すデジタル信号を受けてコア回路21に出力する。ADCIF32は、レベル変換されたアナログ回路31を制御するデジタル信号を受けてアナログ回路31に出力すると共に、アナログ回路31が出力するアナログ処理の結果を示すデジタル信号を出力する。このように、CCDIF22およびADCIF32は、デジタル回路である。アナログ回路31は、アナログ回路31を制御するデジタル信号を受けて動作し、アナログ処理の結果を示すデジタル信号を出力する。アナログ回路31、必要に応じて、アナログコンパレータ、D/A変換器、A/D変換器等を有する。
【0026】
図4は、
図3のクロスドメイン部のトランジスタレベルの回路構成例を示す図である。
CCDIF22は、コア回路21からアナログ回路31に出力される信号S1を駆動するドライバ24と、アナログ回路31からコア回路21に出力される信号を受けて信号S4を出力するレシーバ25と、を有する。ACDIF32は、コア回路21からアナログ回路31に出力される信号を受けて信号S2を出力するレシーバ34と、アナログ回路31からコア回路21に出力される信号S3を駆動するドライバ35と、を有する。ここでは、ドライバ24、35およびレシーバ34、25は、インバータで形成される。
【0027】
レベルシフタ41は、信号S1を反転した信号を受ける直列2段に接続された2個のインバータと、差動増幅回路と、を有する。2個のインバータは、コア用高電源線51と低電源線50との間に接続され、差動増幅回路は、アナログ用高電源線52と低電源線50との間に接続される。したがって、2個のインバータの出力信号は、コア用高電源線(VDD_core(ASV))51の電圧を電源電圧とする信号である。差動増幅回路は、アナログ用高電源線(VDD IP)52の電圧を電源電圧とする回路であるが、コア用高電源線(VDD_core(ASV))51の電圧を電源電圧とする信号に応じて動作する。レベルシフタ42は、レベルシフタ41に類似の回路構成を有する。レベルシフタ41および42の回路構成は、広く知られており、これ以上の説明は省略する。なお、前述のように、ASVはプロセスバラツキに応じて、コア部の電源電圧を、所定値以下の値に適宜設定する。以下の説明では、アナログ部は所定の電源電圧(例えば、1.8V)で設計され、コア部の電源電圧は、1.8V以下で、所望の性能が得られる電圧に設定される。そのため、コア部、アナログ部およびそのクロスドメイン部に配置されるトランジスタとの耐圧は、所定の電圧値以上であるように設定される。これは、以下の説明でも同様である。
【0028】
図3のクロスドメイン部の構成例では、レベルシフタを設けたが、コア部とアナログ部の電源電圧が同じかまたは差が小さい場合には、レベルシフタを設けず、CCDIF22とACDIF32の間で直接信号の入出力を行う。
【0029】
図5は、
図3のクロスドメイン部にレベルシフタを設けず、CCDIF22とACDIF32の間で直接信号の入出力を行う場合のクロスドメイン部の構成例を示す図である。
図5の(A)がコア回路21からアナログ回路31への信号に関係する部分を、
図5の(B)がアナログ回路31からコア回路21への信号に関係する部分を示す。
図5の(A)および(B)における低電源線50、コア用高電源線(VDD_core(ASV))51およびアナログ用高電源線(VDD IP)52は、
図4に示すように接続されるが、図示を容易にするために
図5のように示している。以下の説明でも、説明無しに
図5の表示方法が使用される。
【0030】
図5の(A)に示すコア回路21からアナログ回路31への信号に関係するクロスドメイン部の回路は、レベルシフタを設けず、CCDIF22のドライバ24の出力が、ACDIF32のレシーバ34に直接入力することが
図4と異なる。
図5の(B)に示すアナログ回路31からコア回路21への信号に関係する部分は、レベルシフタを設けず、ACD32のドライバ35の出力が、CCDIF22のレシーバ25に直接入力することが
図4と異なる。
【0031】
アナログ回路のような雑音の影響を受けやすい回路の場合、高電源線だけでなく、低電源線も分離し、低電源線および高電源線を介した雑音の影響を低減することが望ましい。低電源線を分離するには、あるドメインの低電源線を他のドメインの低電源線に接続せず、各ドメインの低電源線を端子に接続し、端子を通して0Vを供給する。なお、各ドメインの低電源線および高電源線の間にはESD保護回路が接続される。
【0032】
また、分離した低電源線を、双方向ダイオードを介して接続することにより、低電源線の電位の安定性を向上することが行われる。一般に、双方向ダイオードを介して接続した低電源線も、分離した低電源線と称され、ここで説明する実施形態でも同様である。
【0033】
図6は、
図3の構成例において、低電源線を分離し、双方向ダイオードで接続した場合の構成を示す図である。
図6に示すように、
図3の低電源線50は、コア部の低電源線(VSS_core)53と、アナログ部の低電源線(VSS_IP)54と、に分離され、双方向ダイオード55を介して接続される。上記のように、双方向ダイオード55を設けない場合もあり得る。
【0034】
レベルシフタ61および62は、
図3のレベルシフタ41および42に対応するが、コア部の高電源線51と低電源線53、およびアナログ部の高電源線52と低電源線54に接続されることが異なる。
【0035】
前述のように、クロスドメイン部の信号経路はESDの影響を受け、信号経路の素子が損傷するという問題がある。上記のように双方向ダイオード55を設けない場合には、ESDの影響を強く受ける。双方向ダイオード55を設ければ、2本の低電源線それぞれの電位をダイオードのオン電圧程度に抑えることができるが、依然ESDの影響を受け、信号経路の素子が損傷するという問題がある。以下、この問題について説明する。
【0036】
図7から
図9は、分離した低電源線を双方向ダイオードで接続しても、クロスドメイン部の信号経路の素子が損傷するという問題を説明する図である。
図7から
図9は、
図5の(A)のレベルシフタを設けない場合の構成を例としている。
【0037】
一般に、コア部の回路素子数はアナログ部の回路素子数より多く、コア部の電源間容量はアナログ部の電源間容量より大きい。
図7では、このことを、コア部の電源間容量に相当する容量C1がコア部の高電源線51と低電源線53の間に接続され、アナログ部の電源間容量に相当する容量C2がアナログ部の高電源線52と低電源線54の間に接続される形で示している。
【0038】
図7に示すように、半導体デバイスがプラス帯電し、高電源線および低電源線等に正電荷が蓄積されているとする。この状態で、アナログ部の低電源線54が接続される端子がグランドに設置されたと仮定する。これにより、
図8に示すように、半導体デバイスに帯電している正電荷が、アナログ部の低電源線54を介してグランドに流れ出す。最終的に半導体デバイスに帯電している正電荷は、すべてグランドに流れ出し、半導体デバイスの電位は0Vになるが、それに至る途中の段階で、電源間容量の差に応じて正電荷の分布に差が生じる。コア部の正電荷は、高電源線51と低電源線53間に接続された保護回路を介してコア部の低電源線53に流れ、さらに双方向ダイオード55を介してアナログ部の低電源線54に流れる。この時、容量C1が容量C2よりも大きいために放電に要する時間の差が発生し、コア部の電位がアナログ部の電位に比べて高い状態が発生する。そのため、コア部の高電源線51の電位は、アナログ部の低電源線54の電位より高い状態になる。これにより、
図9に示すように、ドライバ24のPMOSトランジスタPTr1がオンし、レシーバ34のNMOSトランジスタNTr2のゲートに高電圧が印加され、NTr2のゲート破壊が発生する。
【0039】
以上の説明は、低電源線を双方向ダイオードで接続した場合であるが、双方向ダイオードで接続しない場合には、端子が接地されないドメインの電荷は基板を介して放電されるため、放電に長時間を要し、電圧差がより大きくなりやすい。そのため、素子の破壊が一層発生しやすい。
また、
図7から
図9の説明は、
図5の(A)のレベルシフタを設けない場合の構成を例としているが、レベルシフタを設ける場合も同様である。
【0040】
図10は、
図6の構成例におけるレベルシフタ61の構成例を示す図である。
図10に示すように、レベルシフタ61は、ドライバ24からの信号を受ける直列2段に接続された2個のインバータと、差動増幅回路と、を有する。2個のインバータは、コア用高電源線51と低電源線53との間に接続され、差動増幅回路は、アナログ用高電源線52と低電源線54との間に接続される。したがって、2個のインバータのPMOSトランジスタと差動増幅回路の受信部のNMOSトランジスタTrAおよびTrXAは、
図7から
図9で説明したPtr1とNTr2と同じ関係にあり、ゲート破壊の問題が発生する。
【0041】
上記のゲート破壊からトランジスタを保護する回路として、NMOSトランジスタのゲートへの信号線に、抵抗と放電用トランジスタからなる放電クランプ回路を設けることが知られている。これは、CDMに対応するESDから回路を保護するため、CDM保護回路と称される。
【0042】
図11は、
図6のレベルシフタにCDM保護回路を設けた例を示す図であり、(A)がコア回路からアナログ回路への信号のレベルシフタ61を、(B)がアナログ回路からコア回路への信号のレベルシフタ62を示す。
【0043】
図11の(A)に示すように、レベルシフタ61は、差動増幅回路を有し、その受信部の2個のNMOSトランジスタのゲート信号の経路にそれぞれ保護回路を設ける。具体的には、2個のインバータの出力から2個のNMOSトランジスタのゲートに至る2つの信号経路に、抵抗R11とNMOSトランジスタNTr11からなる保護回路と、抵抗R12とNMOSトランジスタNTr12からなる保護回路と、を設ける。R11およびR12はそれぞれ信号経路に直列に接続される。NTr11とNTr12は、R11およびR12と差動増幅回路の2個のNMOSトランジスタのゲートの間の経路と、アナログ部の低電源線54との間に接続される。
【0044】
同様に、
図11の(B)に示すように、レベルシフタ62では、抵抗R21とNMOSトランジスタNTr21からなる保護回路と、抵抗R22とNMOSトランジスタNTr22からなる保護回路と、が設けられる。R21およびR22はそれぞれ信号経路に直列に接続される。NTr21とNTr22は、R21およびR22と差動増幅回路の2個のNMOSトランジスタのゲートの間の経路と、コア部の低電源線53との間に接続される。
【0045】
図11に示すように、クロスドメイン部の各信号について、差動信号の場合には2個のCDM保護回路が必要であり、信号数が増加すればそれに応じてCDM保護回路の個数も増加する。CDM保護回路は高速の放電に対応する必要があり、伝送される信号を遅延しないことが求められるため、大きな面積の回路であり、個数が増加すると、回路面積が大きな問題になる。また、
図11のレベルシフタは、内部の双方向ダイオード55を有しており、このために回路面積が一層増加する。発明者は、以上のような理由で、設計システムで、レベルシフタをスタンダードセルとして提供するのが難しいという問題を見出した。さらに、発明者は、シミュレーションにおいても、クロスドメイン部のCDM保護回路を考慮する必要があり、シミュレーションが複雑になり、工数の増加を招くという問題も見出した。以上の通り、発明者は、クロスドメイン部において、信号経路ごとにCDM保護回路を設けることは好ましくなく、実際の適用が難しいことを見出した。
【0046】
なお、
図6に示すような構成例において、レベルシフタを設けず、一方のドメインの高電源線と他方のドメインの高電源線の間、および一方のドメインの低電源線と他方のドメインの低電源線の間に、パワーレールクランプを設けることが行われる。パワーレールクランプは、面積の大きな回路であり、回路面積の低減が望まれている。
【0047】
以下に説明する実施形態の半導体装置では、クロスドメイン部でのESD保護のための保護回路を、小さな規模(面積)で実現する。
【0048】
図12は、第1実施形態の半導体装置(デバイス)におけるコア部とアナログ部との間のクロスドメイン部の構成を示す図である。
第1実施形態の半導体デバイスは、
図1に示したような複数のドメインを有し、複数のドメインには、コア部とアナログ部が含まれる。コア部の電源電圧は、製造プロセスの変動に応じて、アナログ部の電源電圧以下に適宜設定される。ただし、複数のドメインは、コア部およびアナログ部に限定されず、コア部およびアナログ部は、説明のための例示に過ぎない。
【0049】
図12に示すように、コア部は、コア用低(電位)電源線(VSS_core)60と、コア用高(電位)電源線(VDD_core(ASV)61と、コア(core)回路64と、コアクロスドメインインターフェース(CCDIF)65と、コアパワーレールクランプ(CPRC)66と、を有する。アナログ部は、アナログ用低電源線(VSS_IP)62と、アナログ用高電源線(VDD_IP)63と、アナログ(Analog)回路67と、アナログクロスドメインインターフェース(ACDIF)68と、アナログパワーレールクランプ(APRC)69と、を有する。以上の要素は、
図3を参照して説明したものに対応するので、説明は省略する。なお、CPRC66およびAPRC69は、1個に限定されず、複数個が低電源線と高電源線間に適宜配置される。
【0050】
クロスドメイン部には、CCDIF65からの出力をACDIF68に中継する第1中継回路71と、ACDIF69からの出力をCCDIF65に中継する第2中継回路72と、拡張パワーレールクランプ(EPRC)70と、が設けられる。
【0051】
コア部の低電源線(VSS_core)60とアナログ部の低電源線(VSS_IP)62は、分離されている。第1中継回路71および第2中継回路72は、アナログ用高電源線(VDD_IP)63とコア用低電源線(VSS_core)60の間に接続され、それぞれバッファを有する。EPRC70は、アナログ用高電源線(VDD_IP)63とコア用低電源線(VSS_core)60の間に接続される。CPRC66からEPRC70に至るコア用低電源線60を含む配線(Yで示す)の抵抗は少なくとも1Ω以下であり、できるだけ低いことが望ましい。同様に、APRC69からEPRC70に至るアナログ用高電源線63を含む配線(Xで示す)の抵抗は少なくとも1Ω以下であり、できるだけ低いことが望ましい。このため、第1中継回路71および第2中継回路72は、アナログ用高電源線63およびコア用低電源線60のEPRC70が接続されるノードの近傍に接続される。なお、X及びYで示す配線を半導体素子の多層配線構造の金属配線(例えば銅やアルミニウム)により形成することで、X及びYで示す配線の低抵抗化を図ってもよい。
【0052】
図13は、CPRC66、CPRC69およびEPRC70の構成例を示す図であり、(A)が時間MOSFET型パワーレールクランプ(Timed MOSFET Type Power Rail Clamp: PRC)を、(B)が寄生バイポーラ型パワーレールクランプの例を示す。
【0053】
時間MOSFET型パワーレールクランプは、現在広く使用されているもので、抵抗・容量タイマ105と、インバータ105と、大面積NMOS106と、を有する。抵抗・容量タイマ105は、グランドライン103と電源ライン104間に直列に接続された容量Cおよび抵抗Rを有する。端子101または102を介してグランドライン103または電源ライン104に発生したサージ電圧は、抵抗Rと容量Cにより変化が鈍る。そのため、通常動作時の小さなサージ電圧の場合にはインバータ105の出力を変化せず、大面積NMOS106のTr1が導通することは無い。これに対して、ESDに起因するサージ電圧が発生すると、抵抗Rと容量Cによる変化の鈍りがあっても、インバータ105の入力レベルが閾値を超えて、インバータ105の出力が変化し、大面積NMOS106のTr1が導通する。これにより、電源ライン104のサージ電圧は、Tr1を通してグランドライン103に流れるため、他の回路を保護する。
【0054】
寄生バイポーラ型パワーレールクランプは、グランドライン113と電源ライン114間に直列に接続されたNMOSTr2およびシリサイドブロック116と、電源ライン114を入力とし、出力がTr2のゲートに接続されるインバータ117と、を有する。電源ライン114にサージ電圧が発生すると、Tr2に寄生バイポーラトランジスタが形成され、ESDサージをグランドライン113に流す。Tr2は、フィンガー回路で形成されるが、ESD時に並列に動作せずある保護回路に電流が集中するという問題があった。この問題を回避するためにバラスト抵抗が使用されるが、
図13の(B)の回路では、バラスト抵抗としてしりサイドブロック116を使用している。
【0055】
図13のパワーレールクランプは、広く知られている回路であり、詳細な説明は省略する。また、実施形態で使用されるパワーレールクランプは、
図13に例示した回路に限定されない。
【0056】
図14は、第1中継回路71および第2中継回路72の構成を示す図であり、(A)は第1中継回路71を、(B)は第2中継回路72を示す。
【0057】
図14の(A)に示すように、第1中継回路71は、直列に2段接続されたインバータを有する。2個のインバータは、アナログ用高電源線(VDD_IP)63とコア用低電源線(VSS_core)60の間に接続され、アナログ用高電源線63およびコア用低電源線60から電源供給を受けて動作する。
【0058】
図14の(B)に示すように、第2中継回路72は、直列に2段接続されたインバータを有する。2個のインバータは、アナログ用高電源線(VDD_IP)63とコア用低電源線(VSS_core)60の間に接続され、アナログ用高電源線63およびコア用低電源線60から電源供給を受けて動作する。
【0059】
なお、
図14の(A)および(B)では図示していないが、
図12に示すように、コア用高電源線61とコア用低電源線60の間にはCPRC66が接続され、アナログ用高電源線63とアナログ用低電源線62の間にはAPRC69が接続されている。さらに、アナログ用高電源線63とコア用低電源線60の間にはEPRC70が接続されている。
【0060】
図14の構成では、コア用低電源線60、コア用高電源線61、アナログ用低電源線62およびアナログ用高電源線63の何れかが接地されても、トランジスタのゲートに高電圧が印加されることが抑制されるため、ESDに起因するゲート破壊を抑制できる。例えば、コア用低電源線60が接地された場合、コア回路64およびドライバ74は、CPRC66により保護されており、アナログ部から直接信号を受けないので、トランジスタの破壊を抑制できる。さらに、コア用高電源線61の電荷はCPRC66を介して放電されるので、ドライバ74が高電圧を出力することも抑制される。
【0061】
第1中継回路71のバッファは、アナログ用高電源線63とコア用低電源線60に接続されているが、その間にはEPRC70が接続されているため保護される。また、インバータを形成するゲートに印加される信号は、ドライバ74からの出力であり、高電圧にならないので、ゲートに高電圧が印加されることは抑制される。アナログ用高電源線63の電荷は、EPRC70を介して放電されるため、第1中継回路71のバッファが高電圧を出力することも抑制される。レシーバ75のトランジスタのゲートには第1中継回路71のバッファの出力が印加されるが、
図12のXで示す配線の抵抗が低いことにより(例えば1Ω以下)、バッファの出力が高電圧になることは抑制されるため、素子(トランジスタ)の破壊を抑制できる。
【0062】
さらに、
図12のXで示す配線の抵抗が低いことにより(例えば1Ω以下)、アナログ用高電源線63の電荷はEPRC70を介して放電されるため、ドライバ76から高電圧が出力されることは抑制され、第2中継回路72のバッファのトランジスタの破壊を抑制できる。同様に、
図12のYで示す配線の抵抗が低いことにより(例えば1Ω以下)、第2中継回路72のバッファが高電圧を出力することも抑制されるため、レシーバ77のトランジスタの破壊を抑制できる。
【0063】
以上説明したように、第1実施形態では、ESDによりトランジスタのゲートに高電圧が印加されることを抑制するため、素子の破壊を抑制できる。
【0064】
図12に示すように、第1実施形態では、CPRC66およびAPRC69に加えて、EPRC70をアナログ用高電源線63とコア用低電源線60の間に接続しているが、コア用高電源線61とアナログ用低電源線62の間にはパワーレールクランプを接続していない。したがって、面積の大きなパワーレールクランプの増加数を1/2にできる。また、クロスドメイン部の信号線ごとに保護回路を設ける場合に比べて大幅に回路面積を低減できる。
【0065】
図15は、第2実施形態の半導体デバイスにおけるコア部とアナログ部との間のクロスドメイン部の構成を示す図である。
第2実施形態は、コア用低電源線60とアナログ用低電源線62の間に双方向ダイオード90を接続したことが第1実施形態と異なり、他は同じである。第2実施形態では、第1実施形態と同様の効果が得られ、さらに双方向ダイオード90が設けられているために、第1コア用低電源線60とアナログ用低電源線62の安定性が向上する。
【0066】
図16は、第3実施形態の半導体デバイスにおけるコア部とアナログ部との間のクロスドメイン部の構成を示す図である。
【0067】
第3実施形態は、第1中継回路71および第2中継回路72の代わりに、第1レベルシフタ81および第2レベルシフタ82を設けたことが第1実施形態と異なり、他は同じである。
【0068】
第1レベルシフタ81および第2レベルシフタ82は、コア用高(電位)電源線(VDD_core(ASV)61、アナログ用高電源線(VDD_IP)63およびコア用低電源線(VSS_core)60に接続され、それらから電源供給を受けて動作する。
【0069】
図17は、第1レベルシフタ81および第2レベルシフタ82の構成を示す図であり、(A)は第1レベルシフタ81を、(B)は第2レベルシフタ82を示す。
【0070】
図17の(A)に示すように、第1レベルシフタ81は、直列に2段接続されたインバータと、差動増幅回路と、を有する。2個のインバータは、コア用高(電位)電源線(VDD_core(ASV)61とコア用低電源線(VSS_core)60の間に接続され、コア用高電源線61およびコア用低電源線60から電源供給を受けて動作する。差動増幅回路は、アナログ用高電源線(VDD_IP)63とコア用低電源線(VSS_core)60の間に接続され、アナログ用高電源線63およびコア用低電源線60から電源供給を受けて動作する。
【0071】
図17の(B)に示すように、第2レベルシフタ82は、直列に2段接続されたインバータと、差動増幅回路と、を有する。2個のインバータは、アナログ用高電源線(VDD_IP)62とコア用低電源線(VSS_core)60の間に接続され、アナログ用高電源線63およびコア用低電源線60から電源供給を受けて動作する。差動増幅回路は、コア用高(電位)電源線(VDD_core(ASV)61とコア用低電源線(VSS_core)60の間に接続され、コア用高電源線61およびコア用低電源線60から電源供給を受けて動作する。
【0072】
なお、図示していないが、
図16に示すように、コア用高電源線61とコア用低電源線60の間にはCPRC66が接続され、アナログ用高電源線63とアナログ用低電源線62の間にはAPRC69が接続されている。さらに、アナログ用高電源線63とコア用低電源線60の間にはEPRC70が接続されている。
【0073】
図17の構成では、コア用低電源線60、コア用高電源線61、アナログ用低電源線62およびアナログ用高電源線63の何れが接地されても、トランジスタのゲートに高電圧が印加されることが抑制されるため、ESDに起因するゲート破壊を抑制できる。これは、第1実施形態で説明したのと同様であり、第4実施形態で再度説明するので、詳細な説明は省略する。
【0074】
図18は、第4実施形態の半導体デバイスにおけるコア部とアナログ部との間のクロスドメイン部の構成を示す図である。
【0075】
第4実施形態は、コア用低電源線60とアナログ用低電源線62の間に双方向ダイオード90を接続したことが第3実施形態と異なり、他は同じである。第4実施形態では、双方向ダイオード90が設けられているために、第3実施形態より第1コア用低電源線60とアナログ用低電源線62の安定性が向上する。
【0076】
図19は、第1レベルシフタ81および第2レベルシフタ82の構成を示す図であり、(A)は第1レベルシフタ81を、(B)は第2レベルシフタ82を示す。
図19は、コア用低電源線60とアナログ用低電源線62の間に双方向ダイオード90を接続したことが
図17と異なる。
【0077】
図20は、第4実施形態において、コア用低電源線60を接地した時のESDによる電荷の流れを説明する図であり、(A)がコア部および第1レベルシフタにおける電荷の流れを、(B)がアナログ部および第2レベルシフタにおける電荷の流れを示す。
【0078】
まずCPRC66、APRC69およびEPRC70が無い場合を考える。この場合、コア用低電源線60のノードN1を接地すると、
図20の(A)において破線で示すように、コア用高電源線61側の電荷は、コア部を形成する回路のトランジスタを通して放電する。そのうち、第1レベルシフタ81のInv1およびInv2を通して放電する電荷は、第1レベルシフタ81の差動増幅回路の受信部のNMOSトランジスタNTr31およびNMOSトランジスタNTr32を介してコア用低電源線60に流れる。その場合、NTr31およびNTr32のゲートに高電圧が印加されることになる。そのため、CPRC66を設けて、コア用低電源線60のノードN1を接地した時に、コア用高電源線61側の電荷がコア部を形成する回路のトランジスタを通さずに、CPRC66を介して放電するようにする。アナログ用低電源線62を接地した場合を考えれば、同様にAPRC69も必要である。このように、各ドメインに設けられるパワーレールクランプは、各ドメインにおける放電がドメイン内の回路のトランジスタを通して放電しないようにするために必要である。
【0079】
次に、CPRC66およびAPRC69が設けられ、EPRC70が無い場合を考える。この場合、コア用低電源線60のノードN1を接地すると、
図20の(B)において破線で示すように、アナログ用高電源線63側の電荷は、アナログ部を形成する回路のトランジスタ及び第2レベルシフタのInv3を通して放電する。これだけでなく、アナログ用高電源線63側の電荷は、第2レベルシフタのInv3およびInv4を通して差動増幅回路の受信部のNMOSトランジスタのゲートに印加され、ゲートを破壊する。EPRC70を設ければ、アナログ用高電源線63側の電荷は、EPRC70を通して放電するため、トランジスタの破壊を抑制できる。
【0080】
図21は、第4実施形態において、アナログ用高電源線63を接地した時のESDによるアナログ部および第2レベルシフタにおける電荷の流れを説明する図である。
【0081】
コア用低電源線60はEPRC70を介してアナログ用高電源線63に接続され、コア用高電源線61は、CPRC66、コア用低電源線60およびEPRC70を介してアナログ用高電源線63に接続される。また、
図18のYで示す配線の抵抗が低い(例えば1Ω以下)。そのため、コア用低電源線60側の電荷およびコア用高電源線61側の電荷は、EPRC70およびCPRC66を介して放電され、トランジスタのゲートに高電圧が印加されることが抑制されるため、トランジスタの破壊を抑制できる。
【0082】
APRC69が無い場合、アナログ用低電源線60側の電荷は、ドライバ76のNMOSトランジスタ、第2レベルシフタ82のInv3を介してアナログ用高電源線63に至る経路で流れる場合がある。しかし、APRC69を設け、
図18のXで示す配線の抵抗を低くすることにより(例えば1Ω以下)、アナログ用低電源線60側の電荷は、APRC69を介してアナログ用高電源線63に流れ、回路を形成するトランジスタの破壊を抑制できる。
【0083】
図22は、第4実施形態の変形例の半導体デバイスにおけるコア部とアナログ部との間のクロスドメイン部の構成を示す図であり、(A)が第1レベルシフタの構成を、(B)が第2中継回路の構成を示す。
【0084】
図22に示す変形例は、第4実施形態において、第2レベルシフタ82を、第2実施形態の第2中継回路72に置き換えたもので、第1レベルシフタ81はそのままとしている。このような組み合わせもあり得る。詳細な説明は省略する。
【0085】
以上、コア部とアナログ部の2つのドメインを例とし、ドメインの低電源線と高電源線の両方が分離され(双方向ダイオードで接続される場合も含めて)、バッファまたはレベルシフタでクロスドメイン部の信号を伝送する場合の実施形態を説明した。本発明は、これに限定されず、どのようなドメインの組み合わせでも、適用可能である。
【0086】
以上、実施形態を説明したが、ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものである。特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではなく、明細書のそのような例の構成は発明の利点および欠点を示すものではない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。