【解決手段】冷麦汁の最終発酵度の測定方法であって、第一麦汁を用意するステップと、第一麦汁中の酵素を失活させるステップと、第一麦汁のエキス濃度と、酵素を失活させた第一麦汁の仮性最終エキス濃度を測定するステップと、測定されたエキス濃度及び仮性最終エキス濃度に基づき、冷麦汁の最終発酵度を算出するステップと、を含む、方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ビールテイスト飲料(例えば、ビール、発泡酒)を製造する際、所望のスペックを実現させたものを得るためには、冷麦汁の最終発酵度の測定値を早期にフィードバックすることが望ましい。ところが、現状、冷麦汁の最終発酵度の測定には、糖化、麦汁ろ過、煮沸、冷却等の工程を経て得られる冷麦汁そのものが用いられていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、より早い段階での測定が可能な冷麦汁の最終発酵度の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、冷麦汁の最終発酵度の測定方法であって、第一麦汁を用意するステップと、 第一麦汁中の酵素を失活させるステップと、第一麦汁のエキス濃度と、酵素を失活させた第一麦汁の仮性最終エキス濃度を測定するステップと、測定されたエキス濃度及び仮性最終エキス濃度に基づき、冷麦汁の最終発酵度を算出するステップと、を含む、測定方法を提供する。本発明は、冷麦汁の最終発酵度の測定に第一麦汁を用いるため、より早い段階で、冷麦汁の最終発酵度の測定が可能となる。
【0007】
本発明は、冷麦汁の最終発酵度を精度よく予測できることから、冷麦汁の最終発酵度の予測方法と捉えることもできる。
【0008】
本発明の測定方法において、第一麦汁は、原料の糖化液のろ過開始後60分以内に採取されたものであってよい。
【0009】
算出するステップにおいて、冷麦汁の仮性最終発酵度を下記式(1)によって算出してもよい。
冷麦汁の仮性最終発酵度(%)=100×{(E−Es-end)/E} (1)
[式(1)中、Eは、第一麦汁のエキス濃度を示し、Es-endは、酵素を失活させた第一麦汁の仮性最終エキス濃度を示す。]
【発明の効果】
【0010】
本発明は、より早い段階での測定が可能な冷麦汁の最終発酵度の測定方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
[冷麦汁の最終発酵度の測定方法]
本実施形態に係る冷麦汁の最終発酵度の測定方法は、第一麦汁を用意するステップ(用意ステップ)と、第一麦汁中の酵素を失活させるステップ(酵素失活ステップ)と、第一麦汁のエキス濃度と、酵素を失活させた第一麦汁の仮性(外観)最終エキス濃度を測定するステップ(測定ステップ)と、測定されたエキス濃度及び仮性最終エキス濃度に基づき、冷麦汁の最終発酵度を算出するステップ(算出ステップ)と、を含む。
【0013】
麦汁とは、麦芽等を含む原料の糖化を経て得られる液体であり、未発酵のものである。つまり、本明細書における麦汁は、後述する第一麦汁、第二麦汁及び冷麦汁を含む。本明細書において、第一麦汁は、原料の糖化液をろ過(第一濾過)して得られるもの(マイシェ(醪)をそのまま濾過して得られるもの)である。また、本明細書において、第二麦汁は、第一濾過で分離された残渣中のエキスを抽出して得られるものである。本明細書において、冷麦汁は、麦芽等を含む原料の糖化液に、濾過(麦汁濾過)、必要に応じてホップの添加、煮沸、冷却等を行って得られる液体であり、酵母を加えて発酵させる前のもの(発酵前液)である。冷麦汁は、ホップの添加、煮沸、冷却等を、第一麦汁に対して行って得たものであってもよく、第一麦汁及び第二麦汁を含む液(混合液)に対して、行って得たものであってもよい。
【0014】
従来の測定に使用されていた冷麦汁は、一般的に次の方法で得ることができる。まず、麦芽等を含む原料と水とを混合し、常法により原料を糖化させて糖化液を得る。ろ過槽で糖化液を用いて第一ろ過を行い、第一麦汁を回収する。第一ろ過で分離された、ろ過槽上の穀皮中に残るエキスを抽出して第二麦汁を得る。その後、第一麦汁及び第二麦汁を煮沸釜に移送し、必要に応じてホップを添加し、常法により、煮沸、沈殿物の分離及び除去を実施してから、冷却して、冷麦汁を得る。
【0015】
本実施形態に係る冷麦汁の最終発酵度の測定方法では、冷麦汁の代わりに第一麦汁を用いるため、より早期に冷麦汁の最終発酵度を測定することが可能となる。
【0016】
用意ステップでは、原料の糖化液をろ過して得られる第一麦汁を用意する。
【0017】
本明細書において、原料とは、麦汁の製造に用いられる全ての材料のうち、水(醸造用水)以外のものを指す。原料としては、例えば、大麦、小麦、オート麦、ライ麦、ハト麦等の麦原料が挙げられる。麦原料は、麦であってよく、麦芽であってもよい。麦原料は大麦、麦芽又はこれらの両方を含むことが好ましい。麦原料以外の原料(副原料)としては、コーン、コーンスターチ、コーングリッツ、米、こうりゃん等の澱粉原料、液糖、砂糖等の糖質原料が挙げられる。
【0018】
原料の糖化液は、常法により、原料を糖化して得ることができる。例えば、原料の糖化は、糖化される原料と水と必要に応じて酵素とを混合することにより行うことができる。原料の糖化は、例えば40〜70℃で0.1〜5時間程度行われる。
【0019】
糖化液のろ過では、糖化液に含まれている穀皮等の固形物が分離される。糖化液のろ過は、穀皮等の固形物を分離できる方法であれば制限されず、常法により行うことができる。ろ過は、例えば、ロイター式等のろ過槽を使用する方法であってもよく、ろ紙、ろ布等のフィルターを使用する方法であってもよい。
【0020】
第一麦汁は、原料の糖化液のろ過開始後90分以内、70分以内、又は60分以内に採取されたものであってよく、原料の糖化液のろ過開始5分後60分以内に採取されたものであってもよく、30分後60分以内に採取されたものであってもよい。採取時の第一麦汁の温度は70℃以上であることが望ましい。
【0021】
第一麦汁は、原料に含まれる酵素及び/又は別途添加した酵素を含んでいてもよい。酵素は、耐熱性酵素を含んでいてもよい。
【0022】
酵素失活ステップでは、第一麦汁中の酵素を失活させる。酵素を失活させる方法としては、例えば、加熱処理により失活させる方法を挙げることができる。また、第一麦汁のpHを低下又は上昇させ、酵素の至適pH範囲から外すことにより、第一麦汁中の酵素を失活させてもよい。
【0023】
加熱処理の条件は、第一麦汁中の酵素の種類等に応じて、適宜設定するものであってよい。加熱処理は、例えば、80〜200℃の条件で、1〜120分行うものであってもよい。
【0024】
酵素失活ステップでは、第一麦汁中の酵素を必ずしも完全に失活させる必要はなく、冷麦汁の最終発酵度の測定に実質的に影響を与えない範囲で失活させるものであってよい。冷麦汁の最終発酵度測定の精度をより一層高める観点から、例えば、第一麦汁中の酵素の残存活性は、50%以下、10%以下、又は0%であってもよい。ここで、酵素の残存活性とは、失活処理前の酵素の活性に対する失活処理後の酵素の活性の比率を意味する。
【0025】
測定ステップでは、第一麦汁のエキス濃度及び酵素を失活させた第一麦汁の仮性(外観)最終エキス濃度を測定する。すなわち、測定ステップは、第一麦汁のエキス濃度を測定するステップと、酵素を失活させた第一麦汁の仮性最終エキス濃度を測定するステップと、を含んでいる。測定ステップは、改訂BCOJビール分析法(ビール酒造組合、国際技術委員会〔分析委員会〕編、2013年増補改訂)の8.11最終発酵度に記載の方法に準じて、実施することができる。
【0026】
第一麦汁のエキス濃度は、原料の糖化液をろ過して得られる第一麦汁の比重を測定することにより求めることができる。より具体的には、例えば、「改訂BCOJビール分析法」、7.2 エキス、ビール酒造組合、国際技術委員会〔分析委員会〕編」に従い測定することができる。
【0027】
酵素を失活させた第一麦汁の仮性最終エキス濃度を測定するステップは、酵素を失活させた第一麦汁を酵母で発酵させ、発酵後の液をろ過して被測定試料を得るステップと、被測定試料の仮性エキス濃度を測定するステップとを含む。ここで、仮性エキス濃度とは、アルコール分を除かず、そのままの液について測定したエキス濃度をいう。
【0028】
被測定試料を得るステップにおいて、より具体的には、次の方法で、被測定試料を得ることができる。酵素を失活させた第一麦汁に圧縮酵母を添加し、よく撹拌して酵母を第一麦汁に十分に懸濁させる。得られる懸濁液を20℃又は25℃に設定した恒温器内で18〜30時間、振とう器によって撹拌して発酵させる。発酵期間中、酵母が懸濁状態に保たれるようにする。発酵終了後の試料を濾紙で透明になるようにろ過し、被測定試料を得る。
【0029】
第一麦汁の仮性最終エキス濃度は、被測定試料の仮性エキス濃度を測定することにより求めることができる。つまり、第一麦汁の仮性最終エキス濃度(Es-end)は、改訂BCOJビール分析法(ビール酒造組合、国際技術委員会〔分析委員会〕編、2013年増補改訂)の7.3及び8.11最終発酵度に記載の方法において、冷麦汁を第一麦汁に代えること以外は同様の方法で測定することができる。第一麦汁は約20℃に冷却してから測定することが好ましい。
【0030】
算出ステップでは、測定されたエキス濃度及び仮性最終エキス濃度に基づき、冷麦汁の最終発酵度を算出する。より具体的には、第一麦汁のエキス濃度と、酵素を失活させた第一麦汁の仮性最終エキス濃度と、に基づいて冷麦汁の最終発酵度(仮性最終発酵度又は真正(性)最終発酵度)を算出する。
【0031】
算出するステップでは、冷麦汁の仮性最終発酵度を下記式(1)によって算出することができる。
冷麦汁の仮性最終発酵度(%)=100×{(E−Es-end)/E} (1)
式(1)中、Eは、第一麦汁のエキス濃度を示し、Es-endは、酵素を失活させた第一麦汁の仮性最終エキス濃度を示す。
【0032】
冷麦汁の真正(性)最終発酵度は、例えば、仮性最終発酵度に0.81を乗じて算出することができる。
【0033】
[冷麦汁の最終発酵度の予測方法]
本実施形態に係る測定方法は、第一麦汁を用いることにより、冷麦汁の最終発酵度の測定を可能とすることから、冷麦汁の最終発酵度の予測方法と捉えることもできる。すなわち、本発明は、一実施形態として、第一麦汁を用意するステップ(用意ステップ)と、第一麦汁中の酵素を失活させるステップ(酵素失活ステップ)と、第一麦汁のエキス濃度と、酵素を失活させた第一麦汁の仮性最終エキス濃度を測定するステップ(測定ステップ)と、測定されたエキス濃度及び仮性最終エキス濃度に基づき、冷麦汁の最終発酵度を算出するステップ(算出ステップ)と、を含む、方法が提供される。上記各ステップは、上記の冷麦汁の測定方法で述べたものと同様であってよい。本実施形態に係る冷麦汁の最終発酵度の予測方法によれば、冷麦汁の最終発酵度を良好な精度で予測することができる。
【0034】
[冷麦汁の仮性最終エキス濃度の予測方法]
本発明は、一実施形態として、第一麦汁を用いた冷麦汁の仮性最終エキス濃度の予測方法と捉えることもできる。すなわち、一実施形態として、第一麦汁を用意するステップと、第一麦汁中の酵素を失活させるステップと、第一麦汁のエキス濃度と、酵素を失活させた第一麦汁の仮性最終エキス濃度を測定するステップと、測定されたエキス濃度及び仮性最終エキス濃度に基づき、冷麦汁の最終発酵度を算出するステップと、を含む、冷麦汁の仮性最終エキス濃度の予測方法が提供される。本実施形態に係る冷麦汁の仮性最終エキス濃度の予測方法によれば、冷麦汁の仮性最終エキス濃度を良好な精度で予測することができる。
【0035】
本実施形態に係る冷麦汁の仮性最終エキスの予測方法では、第一麦汁及び/又は酵素を失活させた第一麦汁に水を添加して、濃度調整を行うことを含んでいてもよい。濃度調整は、冷麦汁のエキス濃度と予想される濃度となるように行うものであってよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により限定されるものではない。
【0037】
[第一麦汁及び冷麦汁の用意]
仕込槽において、所定の原料と水とを混合し、常法により原料を糖化させて糖化液を得た。得られた糖化液をロイターろ過槽を用いて第一ろ過を行い、第一麦汁を中間槽に回収した。第一ろ過で分離された、ロイターろ過槽上の穀皮に湯をかけ、穀皮中に残るエキスを抽出して第二麦汁を得た。その後、第一麦汁及び第二麦汁を煮沸釜に移送してホップを添加し、常法により、煮沸、沈殿物の分離及び除去を実施してから、冷却して、麦汁(冷麦汁)を得た。
【0038】
第一麦汁及び冷麦汁の仮性最終エキス(Es-end)を測定した。これらの測定値を比較することにより、第一麦汁Es-endによる冷麦汁Es-endの予測可能性を検討した。第一麦汁のEs-endの測定では、以下の試験用サンプルを用いた。
【0039】
(試験用サンプルの調製)
第一ろ過開始から10分後、又は60分後に採取した第一麦汁を用意した。第一麦汁は、場合により、酵素の失活及び殺菌を目的として、加熱処理行った。酵素を失活させた第一麦汁を蒸留水によって2倍希釈し、20℃程度になるまで冷却した。冷却後の試料を、試験用サンプルとして、仮性最終エキス(第一麦汁Es-end)測定に供した。加熱処理は、第一麦汁の採取後すぐに、電子レンジを用いた加熱(300W,3−4分程度、沸騰するまで加熱)により実施した。以下の実施例では、特に言及の無い限り、試験用サンプルは加熱処理されたものである。
【0040】
なお、第一麦汁及び冷麦汁のエキス濃度及びEs-endの測定は、「改訂BCOJビール分析法」、7.3 最終発酵度、ビール酒造組合、国際技術委員会〔分析委員会〕編」に従い、測定した。第一麦汁は20℃に冷却してから分析に供した。
【0041】
[第一麦汁Es-endと冷麦汁Es-endとの比較]
(試験例1:ビール品種での検討)
2種のビール品種(品種A及びB)について、第一麦汁及び冷麦汁のEs-end(エキス換算値)の比較を行った。結果を表1に示す。表1中、ΔE(w/w%)は、下記式に基づいて算出した値である。ΔEは、エキス換算値のEs-endに基づいて算出した。なお、本実施例において、ΔEは、エキス10w/w%に換算した場合のEs−endの差である。
ΔE(w/w%)=第一麦汁のEs-end(w/w%)−冷麦汁のEs-end(w/w%)
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示すとおり、ビール品種では2品種共に、第一麦汁Es-endは、冷麦汁Es-endと比較して0.05w/w%程度の差(ΔE)であることがわかった。ΔEは、冷麦汁Es-endの予測に用いるには無視できるほど小さい値であると考えられる。したがって、ビール品種においては第一麦汁Es-endを測定することにより、冷麦汁Es-endを予測することが可能といえる。
【0044】
表1に示す結果から、冷麦汁の代わりに第一麦汁を用いた場合であっても、冷麦汁の最終発酵度が測定可能(及び予測可能)であることが示された。
【0045】
(試験例2:発泡酒品種での検討)
発泡酒品種(品種C)について、第一麦汁及び冷麦汁のEs-endの比較を行った。結果を表2に示す。なお、Es−endの測定は、同品種に対し、2回実施した(品種C−1、C−2)。
【0046】
【表2】
【0047】
表2に示すとおり、発泡酒品種においても、ΔEは充分に小さかった。つまり、発泡酒品種においても、第一麦汁Es-endから冷麦汁Es-endを予測可能であることが示された。また、発泡酒品種では、ΔEは0.10w/w%程度とビール品種よりは大きいことが分かった。この差が生じる理由は、原料として大麦を使用していること、及び糖化条件(糖化時間、酵素使用の有無)に起因している可能性が考えられる。したがって、発泡酒品種においては事前に冷麦汁Es-endとのおおよその差を把握しておくことで、第一麦汁Es-endから冷麦汁Es-endをより精度よく、予測することが可能になると考えられる。新商品の場合においても、例えば、類似品種の原料における値(ΔE)を参考にすることにより、より精度の高いEs-endの予測が可能になると考えられる。
【0048】
[測定方法の検討]
(試験例3:第一麦汁の採取タイミングの検討)
次いで、Es-end値が、第一麦汁を採取するタイミングに依存するか否かを検討した。ビール品種(品種A又はB)を用いた場合における、ろ過開始から10分後又は60分後に採取した第一麦汁のEs−end測定結果を表3に示す。
【0049】
【表3】
【0050】
表3に示すとおり、ビール品種では2品種共に採取タイミングが異なることによるEs-end値の変動は小さいことが示された。ろ過開始60分時点で採取した第一麦汁を用いた場合の方が、冷麦汁を用いた場合により近いことがわかった。
【0051】
(試験例4:耐熱性酵素による影響)
発泡酒品種(品種C、D、E及びF)を用いて、原料が耐熱性酵素(至適温度95℃、安定温度90℃以下(pH5.5))を含有する(第一麦汁が耐熱性酵素を含有する)場合におけるΔEについて比較検討を実施した。結果を表4及び5に示す。
【0052】
【表4】
【0053】
【表5】
【0054】
第一麦汁が耐熱性酵素を含有する場合であっても、第一麦汁及び冷麦汁の仮性最終エキスの差は十分に小さいものであった。
【0055】
(試験例5:加熱処理の必要性の確認)
耐熱性酵素(至適温度95℃、安定温度90℃以下(pH5.5))を使用した発泡酒品種において、第一麦汁のEs-end測定前に加熱処理を行った場合と行わなかった場合についての比較検討を実施した。結果を表6に示す。
【0056】
【表6】
【0057】
表6に示すとおり、加熱処理なしの場合の第一麦汁Es-endは加熱処理ありの場合と比較して0.3w/w%程度低いことが分かった。加熱処理ありの場合、第一麦汁Es-endは、冷麦汁Es-endと比べても0.14w/w%低い値となった。採取タイミングの検討の際にも述べたが、この差は耐熱性酵素を使用していることに起因していると考えられる。加熱処理なしの場合では、採取した第一麦汁には失活していない耐熱性酵素が含まれており、採取後もサンプル内でその酵素による糖化が進むことで結果的にEs-endが低くなると予想される。したがって、第一麦汁は酵素を失活させΔEを安定化させることを目的として、採取後に速やかに加熱処理を行うことが望ましい。