【課題】従来必要とされていた多くの処理工程を省略可能であり、これにより触媒の製造コストを大幅に低減可能な、触媒用スラリー組成物及びその製造方法、並びに、これらを用いた触媒及びその製造方法等を提供する。
O・zCuO(但し、Tは、4級アンモニウムカチオンであり、x,y及びzは、10≦x≦40、0.1≦y<2.0、0.1≦z<2.0を満たす数である。)で表される組成を有する触媒用スラリー組成物を準備する工程、この触媒用スラリー組成物を支持体の少なくとも一方の面に塗布する塗布工程、及び塗布後の触媒用スラリー組成物を350℃以上で熱処理して触媒層を形成する焼成工程を少なくとも有することを特徴とする、触媒の製造方法。
前記スラリーを調製する工程では、前記Cu含有アルミノケイ酸0.1〜89質量%、バインダー0.1〜40質量%、及び前記水10〜90質量%を少なくとも含有するスラリーを調製する
請求項6に記載の触媒用スラリー組成物の製造方法。
シリカアルミナ比が2以上15未満のアルミノケイ酸塩であって、2価CuをCu/Al比が0.1以上1.0未満で含有するCu含有アルミノケイ酸塩を少なくとも含むSi−Al−Cu元素源、Si元素源(但し、前記のSi−Al−Cu元素源に該当するものは除く。)、4級アンモニウムカチオンを含み且つ実質的にポリアミンを含まない有機構造指向剤、及び水を少なくとも含む原料組成物を準備する工程、並びに
前記原料組成物を水熱処理し、酸化物換算のモル比でAl2 O3 ・xSiO2 ・yT2 O・zCuO(但し、Tは、4級アンモニウムカチオンであり、x,y及びzは、10≦x≦40、0.1≦y<2.0、0.1≦z<2.0を満たす数である。)で表される組成を有するCu含有ゼオライトを合成する水熱処理工程を少なくとも有する
ことを特徴とする、Cu含有ゼオライトの製造方法。
前記Cu含有アルミノケイ酸塩が、非晶質アルミノケイ酸塩、並びに、GIS構造、FAU構造、CHA構造、LTL構造、PHI構造、MER構造、及びERI構造の結晶構造を有するアルミノケイ酸塩よりなる群から選択される少なくとも1種を含む
請求項13又は14に記載のCu含有ゼオライトの製造方法。
前記Si元素源は、沈降シリカ、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム、及びアルコキシシランよりなる群から選択される少なくとも1種である
請求項13〜15のいずれか一項に記載のCu含有ゼオライトの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の実施の形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することができる。なお、本明細書において、「〜」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いる。例えば「1〜100」との数値範囲の表記は、その上限値「1」及び下限値「100」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0026】
[触媒用スラリー組成物、及びその製造方法]
本実施形態の触媒用スラリー組成物は、アルミノケイ酸塩と、Cuと、水とを少なくとも含有し、固形分濃度が0.1質量%〜90質量%であり、触媒用成分が酸化物換算のモル比でAl
2 O
3 ・xSiO
2 ・yT
2 O・zCuO(但し、Tは、4級アンモニウムカチオンであり、x,y及びzは、10≦x≦40、0.1≦y<2.0、0.1≦z<2.0を満たす数である。)で表される組成を有することを特徴とする。
【0027】
図1に示すように、本実施形態の触媒用スラリー組成物は、Cu含有アルミノケイ酸塩を調製する工程(S11)、及び、特定組成のスラリーを調製する工程(S21)を経て得ることができる。以下、詳述する。
【0028】
<Cu含有アルミノケイ酸塩の調製(S11)>
この調製工程(S11)では、Cuを所定量含むCu含有アルミノケイ酸塩を調整する。かかるCu含有アルミノケイ酸塩は、例えばアルミノケイ酸塩とCuイオンとを所定割合で混合することにより得ることができ、その調製方法は特に限定されない。好ましいCu含有アルミノケイ酸塩としては、アルミノケイ酸塩(Si−Al元素源)に2価CuをCu/Al比0.1以上1.0未満で含有させたCu含有アルミノケイ酸塩(Si−Al元素源)が挙げられる。
【0029】
(Si−Al元素源)
Si−Al元素源としては、特に限定されないが、シリカアルミナ比(SiO
2 /Al
2 O
3 モル比、以降において「SAR」と称することがある。)が2以上15未満のアルミノ珪酸塩が好ましく用いられる。SARが2以上15未満のアルミノ珪酸塩は、公知のものを特に制限なく用いることができ、その種類は特に限定されない。なお、アルミノ珪酸塩は、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。ここで、アルミノ珪酸塩とは、ケイ酸塩中のケイ素原子の一部がアルミニウム原子に置き換えられた構造を有するものである。また、シリカアルミナ比は、5以上13未満が好ましく、より好ましくは7以上11未満である。なお、本明細書において、シリカアルミナ比は、蛍光X線分析から求められる値を意味する。具体的には、蛍光X線分析は、装置としてAxios (スペクトリス株式会社 パナリィティカル事業部)を用いた。測定試料5gを塩化ビニル製リングに入れて20tの加重で加圧成型して、測定に供した。解析ソフトはUniQuant5を使用し、Al
2 O
3 及びSiO
2 の質量%を定量し、この結果からSARを算出した。
【0030】
このようなアルミノ珪酸塩としては、下記一般式(I)で表されるアルミノケイ酸塩が好ましく用いられる。
xM
2 O・Al
2 O
3 ・mSiO
2 ・nH
2 O ・・・(I)
(前記式(I)中、Mはアルカリ金属元素を表し、xは0≦x≦0.6、mは2≦m<15、nは5≦n≦15をそれぞれ満たす数である。)
【0031】
前記一般式(I)中、アルカリ金属元素としては、Li、Na、Ka、Rb、Cs等が挙げられ、これらの中でもNa及びKが一般的に用いられ、好ましくはNaである。なお、上記のアルミノ珪酸塩は、Si及びAl以外に、他の元素、例えばGa、Fe、B、Ti、Zr,Sn、Zn等の元素を含んでいてもよい。
また、前記一般式(I)中、0≦x≦0.2が好ましく、より好ましくは0≦x≦0.1である。
一方、前記一般式(I)中、mは5≦m<13が好ましく、より好ましくは7≦m<11である。
また、前記一般式(I)中、nは6≦n≦15が好ましく、より好ましくは7≦n≦15である。
【0032】
SARが2以上15未満のアルミノ珪酸塩の中でも、取扱性や分散性等の観点から、常温常圧(25℃、1atm)で固体粉末状のアルミノ珪酸塩が好ましく用いられる。ここで本明細書において、粉末状とは、粉末(一次粒子、及び/又は一次粒子が凝集した凝集体(二次粒子)を含む粉)、一次粒子乃至二次粒子を造粒した顆粒を含む概念である。なお、粉末状のアルミノ珪酸塩の各粒子の形状は、特に限定されず、例えば球状、楕円体状、破砕状、扁平形状、不定形状等いずれであっても構わない。
【0033】
なお、粉末状のアルミノ珪酸塩の平均粒子径(D
50)は、特に限定されないが、1〜500μmであることが好ましく、より好ましくは20〜350μmである。なお、本明細書において、平均粒子径D
50は、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社製、レーザー回折式粒度分布測定装置SALD−3100等)で測定されるメディアン径を意味する。
【0034】
また、SARが2以上15未満のアルミノ珪酸塩としては、粉末X線回折法による結晶構造が非晶質のアルミノ珪酸塩、GIS構造、FAU構造、CHA構造、LTL構造、PHI構造、MER構造、又はERI構造の結晶構造を有するアルミノケイ酸塩が好ましく用いられる。ここで、粉末X線回折法による結晶構造が非晶質であることは、X線回折図において特定の面指数を示す明瞭なピークが存在しないことを意味する。このような非晶質のアルミノ珪酸塩としては、市販の合成珪酸アルミニウムを用いることができる。なお、各種ゼオライトの骨格構造は、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association,以降では「IZA」と略称することがある。)においてデータベース化されており、これらの構造は、Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites, Fifth revised edition (2007) に記載の粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)パターン、又は、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza-structure.org/databases/のZeolite Framework Typesに記載のXRDパターンのいずれかと比較することで、同定することができる。
【0035】
SARが2以上15未満のアルミノ珪酸塩は、当業界で公知の方法により合成することができる。例えば、水溶性珪酸塩と水溶性アルミニウム塩とを、水溶性珪酸塩中の珪素原子と水溶性アルミニウム塩中のアルミニウム原子との比(Si/Al)が1.0〜5.5(好ましくは2.5〜5.4)、液温20〜90℃(好ましくは40〜70℃)、pH3.8〜5.0(好ましくは4.0〜4.7)、反応液濃度(SiO
2 +Al
2 O
3 )が70〜250g/L(好ましくは100〜180g/L)、さらに反応方式が連続反応である条件下で反応し、得られた反応液から珪酸アルミニウムを固液分離し、洗浄及び乾燥することにより、SARが2以上15未満のアルミノ珪酸塩を得ることができる。このとき、水溶性アルミニウム塩としては、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム等が好ましく用いられる。また、水溶性珪酸塩としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸アルカリ金属塩が好ましく用いられる。ここで珪酸ナトリウムとして、珪酸ソーダ1号、2号、3号、4号又はメタ珪酸ソーダやオルソ珪酸ソーダ等が好ましく用いられる。なお、Si−Al元素源となるシリカアルミナ比が2以上15未満のアルミノ珪酸塩は、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0036】
(Si−Al−Cu元素源)
上述したSi−Al元素源に2価Cuを含有させることで、Si−Al−Cu元素源として機能するCu含有アルミノケイ酸塩を得ることができる。ここでCuの含有量は、Cu/Al比で、0.1以上1.0未満が好ましく、0.15以上0.7以下が好ましく、0.15以上0.5以下がより好ましい。
【0037】
Si−Al元素源への2価Cuの含有方法は、特に限定されず、公知の手法を適用でき、特に限定されない。Si−Al元素源のアルミノケイ酸塩とCuイオンとを所定割合で混合することで、Cu含有アルミノケイ酸塩を得ることができる。具体的には、上述したSi−Al元素源を、硝酸銅(II)水溶液、硫酸銅(II)水溶液、塩化銅(II)水溶液、酢酸銅(II)水溶液等の2価Cu含有溶液に浸漬することで行うことができる。このとき、必要に応じて、例えばアンモニア水やNaOH等を用いてpHの調整を行うことができる。なお、2価Cu含有溶液の浸漬処理の条件は、特に限定されないが、通常は室温〜60℃、0.1時間〜48時間が好ましい。その後、必要に応じて、固液分離処理、水洗処理、例えば大気中50〜150℃程度の温度で水分を除去する乾燥処理等を常法にしたがって行ってもよい。
【0038】
(アンモニウム源)
ここで、Si−Al源またはSi−Al−Cu元素源に、アンモニウム(NH
4 +)を添加することで、NH
4 型のアルミノケイ酸塩にイオン交換させておくこともできる。このように予めイオン交換しておけば、Cu含有アルミノケイ酸塩を水熱処理後にNH
4 型の結晶性アルミノケイ酸塩(ゼオライト)を直接得ることができる。アンモニウム源としては、例えば硝酸アンモニウム水溶液や塩化アンモニウム水溶液等が挙げられるが、これらに特に限定されない。アンモニウム源の使用量は、所望性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、Si−Al−Cu元素源となるアルミノケイ酸塩に対して、1〜6倍質量相当のアンモニウム塩を用いることで、アンモニウム型に変換することができる。
【0039】
なお、Cu含有アルミノケイ酸塩のシリカアルミナ比は、特に限定されないが、2以上15未満が好ましく、5以上13未満が好ましく、より好ましくは7以上11未満である。また、Si−Al−Cu元素源は、アルカリ金属元素であるNaの含有割合が少ないものが好ましく、具体的には、Na/Al比で、0以上0.1未満が好ましく、0.00001以上0.05以下が好ましく、0.0005以上0.01以下がより好ましい。
【0040】
<触媒用スラリー組成物の調製工程(S21)>
この調製工程(S21)では、まず、上記のCu含有アルミノケイ酸塩に、4級アンモニウムカチオンを含む有機構造指向剤(Organic Structure Directing Agent、以降において「OSDA」と略称することがある。)及び水、必要に応じて任意成分、例えば各種添加物やSi元素源等を混合して、原料組成物(混合物)を調製する。
【0041】
(有機構造指向剤)
ここで用いる有機構造指向剤としては、4級アンモニウムカチオンの塩が好適に用いられる。具体的には、N,N,N−トリアルキルアダマンタアンモニウム等のアダマンタンアミン誘導体をカチオンとする、水酸化物塩、ハロゲン化物、炭酸塩、硫酸塩、メチルカーボネート塩及び硫酸塩;N,N,N−トリアルキルベンジルアンモニウムイオン等のベンジルアミン誘導体、N,N,N−トリアルキルシクロヘキシルアンモニウムイオンやN,N,N−メチルジエチルシクロヘキシルアンモニウムイオン等のシクロヘキシルアミン誘導体、N−アルキル−3−キヌクリジノールイオン等のキヌクリジノール誘導体、又はN,N,N−トリアルキルエキソアミノノルボルナン等のアミノノルボルナン誘導体、テトラメチルアンモニウムイオン、エチルトリメチルアンモニウムイオン、ジエチルジメチルアンモニウムイオン、トリエチルメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン等の炭素数1〜2のアルキルアミン誘導体をカチオンとする、水酸化物塩、ハロゲン化物、炭酸塩、メチルカーボネート塩及び硫酸塩;等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、有機構造指向剤は、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0042】
これらの中でも、有機構造指向剤としては、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物(以降において、「TMAdaOH」と略記する場合がある。)、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムハロゲン化物、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム炭酸塩、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウムメチルカーボネート塩、N,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム塩酸塩、及びN,N,N−トリメチルアダマンタンアンモニウム硫酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種が好ましい。
【0043】
有機構造指向剤は、ゼオライト結晶構造の形成に害を及ぼさないアニオンを伴っていてもよい。かかるアニオンとしては、Cl
-、Br
-、I
-等のハロゲンイオン、水酸化物イオン、酢酸塩、硫酸塩、カルボン酸塩等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、水酸化物イオンが好ましく用いられる。
【0044】
また、有機構造指向剤は、実質的に反応液中に銅イオンを溶出させず、反応容器内壁への銅析出を抑制する等の観点から、実質的にポリアミンを含まないものが好ましく用いられる。ここで、実質的に含有しないとは、ポリアミンの総量が、有機構造指向剤の総量に対して、0〜1.0質量%の範囲内にあることを意味し、より好ましくは0〜0.5質量%、さらに好ましくは0〜0.3質量%である。
【0045】
(水)
原料組成物中に含まれる水としては、水道水、RO水(逆浸透膜処理水)、脱イオン水、蒸留水、工業用水、純水、超純水等からを所望性能に応じたものを使用すればよい。
【0046】
(Si元素源)
原料組成物は、必要に応じて、上述したSi−Al−Cu元素源以外のSi元素源を含有していてもよい。このようにSi−Al−Cu元素源とSi元素源とを併用することで、Si−Al元素源のアルミノ珪酸塩中の化学結合状態を比較的に維持したまま、ハイシリカ(すなわち、シリカアルミナ比が15以上40以下)のゼオライト結晶構造が得られ易い傾向にある。かかるSi元素源としては、沈降シリカ、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウム(メタケイ酸ナトリウム、オルソ珪酸ナトリウム、珪酸ソーダ1号、2号、3号、4号等)、テトラエトキシシラン(TEOS)やトリメチルエトキシシラン(TMEOS)等のアルコキシシラン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、Si元素源は、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。ここで、本明細書において、上述したSi−Al−Cu元素源に該当するものは、このSi元素源には含まれないものとする。
【0047】
(各種ゼオライトのシード結晶)
また、上述した原料組成物は、後述する水熱合成時のゼオライトの結晶化の促進等の観点から、各種アルミノ珪酸塩のシード結晶(種晶)をさらに含有していてもよい。シード結晶を配合することにより、所望する結晶構造の結晶化が促進され、高品質な結晶性ゼオライトが得られ易い傾向にある。例えばCHA型ゼオライトを合成するには、シード結晶としてCHA型アルミノ珪酸塩の結晶を用いればよい。
【0048】
なお、シード結晶のカチオンタイプは特に限定されず、例えばナトリウム型、カリウム型、アンモニウム型、プロトン型等を用いることができるが、アンモニウム型またはプロトン型が望ましい。また、シード結晶のシリカアルミナ比は任意であるが、原料組成物のシリカアルミナ比と同一又は同程度であることが好ましく、かかる観点からは、シード結晶のシリカアルミナ比は、5以上50以下が好ましく、より好ましくは8以上40未満、さらに好ましくは10以上30未満である。
【0049】
ここで用いるシード結晶の粒子径(D
50)は、特に限定されないが、所望する結晶構造の結晶化を促進する観点からは、比較的に小さい方が望ましく、通常0.5nm以上5μm以下、好ましくは1nm以上3μm以下、より好ましくは2nm以上1μm以下である。なお、シード結晶の配合量は、所望する結晶性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、原料組成物中のSiO
2 の質量を基準として、0.05〜30質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは0.5〜10質量%である。
【0050】
(原料組成物の調製)
原料組成物の調製の際には、必要に応じて、各種公知の分散機、攪拌機、混練機、例えばボールミル、ビーズミル、媒体撹拌ミル、ホモジナイザー等を用いて湿式混合することができる。このとき、必要に応じて、当業界で公知の添加剤、例えば非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の分散安定化剤、pH調整剤、粘度調整剤等を配合してもよい。これらの添加剤の使用割合は、特に限定されないが、総量に対して合計で0.01〜20質量%が好ましく、合計で0.05〜10質量%がより好ましく、合計で0.1〜8質量%がさらに好ましい。なお、攪拌を行う場合、通常30〜2000rpm程度の回転数で行うことが好ましく、より好ましくは50〜1000rpmである。
【0051】
ここで、原料組成物中の水の含有量は、反応性や取扱性等を考慮して適宜設定することができ、特に限定されないが、原料組成物の水シリカ比(H
2 O/SiO
2 モル比)が、通常5以上100以下であり、好ましくは6以上50以下、より好ましくは7以上40以下である。水シリカ比が上記好ましい範囲内にあることで、原料組成物の調製時或いは水熱合成による結晶化中の撹拌が容易となり、取扱性が高められるとともに、副生物や不純物結晶の生成が抑制されて高い収率が得られ易い傾向にある。また、原料組成物に対する水の配合方法は、上述した各成分とは別に配合してもよく、或いは、各成分と予め混合しておき、各成分の水溶液或いは分散液として配合してもよい。
【0052】
また、原料組成物のシリカアルミナ比(SiO
2 /Al
2 O
3 モル比)も、適宜設定することができ、特に限定されないが、通常5以上50以下であり、好ましくは8以上45未満、さらに好ましくは10以上40未満である。シリカアルミナ比が上記の好ましい範囲内にあることで、緻密な結晶が得られ易く、高温環境下或いは高温曝露後において熱的な耐久性に優れる結晶性ゼオライトが得られ易い傾向にある。
【0053】
一方、原料組成物中の水酸化物イオン/シリカ比(OH
-/SiO
2 モル比)についても、適宜設定することができ、特に限定されないが、通常0.10以上0.90以下であり、好ましくは0.15以上0.50以下、さらに好ましくは0.20以上0.40以下である。水酸化物イオン/シリカ比が上記の好ましい範囲内にあることで、結晶化が進行し易く、高温環境下或いは高温曝露後において熱的な耐久性に優れる結晶性ゼオライトが得られ易い傾向にある。
【0054】
他方、原料組成物中の有機構造指向剤/シリカ比(有機構造指向剤/SiO
2 モル比)についても、適宜設定することができ、特に限定されないが、通常0.05以上0.40以下であり、好ましくは0.07以上0.38以下、さらに好ましくは0.09以上0.35以下である。有機構造指向剤/シリカ比が上記の好ましい範囲内にあることで、結晶化が進行し易く、高温環境下或いは高温曝露後において熱的な耐久性に優れる結晶性ゼオライトが低コストで得られ易い傾向にある。
【0055】
なお、原料組成物の固形分濃度は、要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、通常0.1質量%〜90質量%であり、好ましくは5質量%〜50質量%、より好ましくは10質量%〜20質量%である。
【0056】
(原料組成物の水熱処理)
上記の原料組成物を水熱処理することにより、結晶化したCu含有アルミノケイ酸塩(すなわちCu含有ゼオライト)を得ることができる。かかる水熱処理は、通常、反応容器中で行う。この水熱処理の際に用いる反応容器は、水熱合成に用い得る密閉式の耐圧容器であれば公知のものを適宜用いることができ、その種類は特に限定されない。例えば、攪拌装置、熱源、圧力計、及び安全弁を備えるオートクレーブ等の密閉式の耐熱耐圧容器が好ましく用いられる。
【0057】
なお、水熱処理は、上述した原料組成物を静置した状態で行ってもよいが、得られるゼオライトの均一性を高める観点から、上述した原料組成物を攪拌混合した状態で行うことが好ましい。このとき、通常30〜2000rpm程度の回転数で行うことが好ましく、より好ましくは50〜1000rpmである。
【0058】
水熱処理時の処理温度(反応温度)は、特に限定されないが、得られるゼオライトの結晶性や経済性等の観点から、
通常100℃以上200℃以下、好ましくは120℃以上190℃以下、より好ましくは150℃以上180℃以下である。また、処理時間(反応時間)は、十分な時間をかけて結晶化させればよく、特に限定されないが、得られるゼオライトの結晶性や経済性等の観点から、通常1時間以上20日間以下、好ましくは4時間以上10日以下、より好ましくは12時間以上8日以下である。なお、水熱処理時の処理圧力は、特に限定されず、反応容器内に投入した原料組成物を上記温度範囲に加熱したときに生じる自生圧力で十分である。このとき、必要に応じて、窒素やアルゴン等の不活性ガスを容器内に導入してもよい。
【0059】
上記の水熱処理後に、結晶化したCu含有アルミノケイ酸塩(Cu含有ゼオライト)を得ることができる。このとき、必要に応じて、固液分離処理、水洗処理、例えば大気中50〜150℃程度の温度で水分を除去する乾燥処理等を常法にしたがって行ってもよい。乾燥処理の際の雰囲気は、大気中、真空中、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気中のいずれでもよい。なお、乾燥の前後に、さらに必要に応じて粉砕処理や分級処理等を行ってもよい。
【0060】
(Cu含有ゼオライト)
ここで得られるCu含有ゼオライトには、細孔内等に有機構造指向剤が含まれている。従来においては、有機構造指向剤を除去してCuを担持するまでの間に、例えば350℃以上1000℃以下の焼成処理等を行い、その後NH
4+型へのイオン交換を実施し、再焼成によってH
+型とし、さらにCuを担持してCu含有ゼオライトとして触媒調製に供していた。しかしながら、本実施形態においては、後述する一体構造型ハニカム触媒の作製時に焼成処理を行えばよいため、ここでの焼成処理・イオン交換処理・再焼成処理・Cu担持処理は必要とされない。すなわち、本実施形態のCu含有ゼオライト及びこれを含む触媒用スラリー組成物は、上述した水熱処理工程以降に、350℃以上1000℃以下で熱処理する焼成工程は不要である。換言すれば、未焼成のCu含有ゼオライト及び有機構造指向剤(有機構造指向剤のカチオン性残基)を含有する触媒形成用の塗布液(触媒用スラリー組成物)として用いることにより、触媒形成の際に従来必要とされてきた多くの処理工程を省略することができ、これにより触媒の製造コストが大幅に低減可能となる。
【0061】
Cu含有ゼオライトの組成は、使用する原料やその配合割合等によって異なり、特に限定されないが、酸化物換算のモル比でAl
2 O
3 ・xSiO
2 ・yT
2 O・zCuO(但し、Tは、4級アンモニウムカチオンであり、x,y及びzは、10≦x≦40、0.1≦y<2.0、0.1≦z<2.0を満たす数である。)で表される組成を有することが好ましい。また、上記組成において、x,y及びzは、特に限定されないが、12≦x≦30、0.2≦y<1.8、0.2≦z<1.5を満たす数であることが好ましく、15≦x≦25、0.3≦y<1.5、0.3≦z<1.2を満たす数であることがより好ましい。
【0062】
なお、前記Tは、使用する有機構造指向剤に対応する構造を有するものであり、有機構造指向剤由来の4級アンモニウムカチオン(有機構造指向剤のカチオン残基)である限り特に限定されないが、一般式R
1 N(R
2 )
3 で表されるものが好ましい。上記式中、R
1 は、炭素数1以上12以下の直鎖状、分枝状或いは環状の炭化水素基を表し、該炭化水素基は、ヘテロ原子を含有していてもよく、置換基を有していてもよく、R
2 は、炭素数1以上4以下の直鎖状或いは分枝状のアルキル基を表し、それぞれのR
2 は、同一であっても異なっていてもよい。有機構造指向剤としてのテンプレート性能等の観点から、R
1 は、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ベンジル基、キヌクリジノール基、エキソアミノノルボルナン基が特に好ましく、R
2 は、メチル基又はエチル基が特に好ましい。
【0063】
ここで、Cu含有ゼオライトは、Cu含有NH
4 + 型ゼオライト、Cu含有H
+ 型ゼオライト、Cu含有Na
+ 型ゼオライト等のイオン交換型を採り得るが、触媒活性等の観点からは、Cu含有NH
4 + 型ゼオライトが好ましい。
【0064】
また、Cu含有ゼオライトの結晶構造は、特に限定されないが、耐熱性や触媒活性等の観点からは、CHA型が好ましい。CHA型ゼオライトは、IZAにおいてCHAの構造コードで分類されるチャバザイトと同等の結晶構造を有する、結晶性アルミノシリケートである。このCHA型ゼオライトは、主な骨格金属原子がアルミニウム(Al)及びケイ素(Si)であり、これらと酸素(O)のネットワークからなる構造を有する。そして、その構造は、上述したとおり、X線回折データにより特徴付けられる。CHA型Cu含有ゼオライトの粒子径は、合成条件等により変動し得るため特に限定されないが、表面積や取扱性等の観点から、これらの平均粒子径(D
50)は0.01μm〜500μmが好ましく、0.02〜20μmがより好ましい。
【0065】
(触媒用スラリー組成物)
上述したCu含有ゼオライトと水と所定割合で混合し、必要に応じて任意成分、例えば各種添加物やバインダー等を混合することにより、本実施形態の触媒用スラリー組成物を得ることができる。本実施形態の触媒用スラリー組成物の組成は、固形分濃度が0.1質量%〜90質量%であり、触媒用成分が酸化物換算のモル比でAl
2 O
3 ・xSiO
2 ・yT
2 O・zCuO(但し、Tは、4級アンモニウムカチオンであり、x,y及びzは、10≦x≦40、0.1≦y<2.0、0.1≦z<2.0を満たす数である。)で表される組成を有することが好ましい。
【0066】
ここで、上記組成において、x,y及びzは、特に限定されないが、12≦x≦30、0.2≦y<1.8、0.2≦z<1.5を満たす数であることが好ましく、15≦x≦25、0.3≦y<1.5、0.3≦z<1.2を満たす数であることがより好ましい。また、前記Tは、有機構造指向剤由来の4級アンモニウムカチオン(有機構造指向剤のカチオン残基)であり、その具体例及び好適例はCu含有ゼオライトの項において述べたとおりであり、ここでの重複した説明は省略する。
【0067】
なお、本明細書において、Al
2 O
3、SiO
2、T
2 O、及びCuOの含有割合は、以下の方法で測定された値を意味する。
Al
2 O
3、SiO
2、及びSiO
2は蛍光X線分析から求めた。この蛍光X線分析に
おいては、装置としてAxios (スペクトリス株式会社 パナリィティカル事業部)を用い、測定試料5gを塩化ビニル製リングに入れて20tの加重で加圧成型して、測定に供した。なお、解析ソフトはUniQuant5を使用した。
T
2 Oは、有機元素分析から求めた。この有機元素分析においては、装置としてFLASH EA1112 Series(Thermo Fisher Scientific)を用いた。試料2〜10mgを秤取し、2mgのスルファニルアミドを標準物質として用いて炭素含有率を測定した。なお、水素の分析値は水の影響を受けることにより、また、窒素の分析値は原料由来のアンモニウムの影響を受けることにより、それぞれ誤差が大きくなるため炭素の分析値のみを採用した。
【0068】
Cu含有ゼオライトと水と混合比率は、要求性能等に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、取扱性や塗布性等の観点から、Cu含有ゼオライト0.1〜90質量%及び水10〜99質量%が好ましく、Cu含有ゼオライト2〜85質量%及び水15〜98質量%がより好ましく、Cu含有ゼオライト3〜80質量%及び水20〜97質量%がさらに好ましい。
【0069】
(バインダー)
また、本実施形態の触媒用スラリー組成物は、必要に応じて、バインダーを含有していてもよい。バインダーを配合することで、得られる触媒層の被膜強度やハニカム構造体等の支持体への密着性等が高められる傾向にある。ここでバインダーとしては、当業界で公知のバインダーを用いることができ、その種類は特に限定されない。バインダーとしては、ベーマイト、コロイダルアルミナ、アルミナゾル、チタニアゾル、シリカゾル、ジルコニアゾル等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、硝酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、硝酸チタン、酢酸チタン、硝酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム等の可溶性の塩もバインダーとして使用することができる。その他、酢酸、硝酸、塩酸、硫酸等の酸も、バインダーとして使用することができる。なお、バインダーは、1種を単独で、又は2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。ここで、本明細書において、上述したSi−Al−Cu元素源やSi元素源に該当するものは、このバインダーには含まれないものとする。
【0070】
バインダーの使用量は、特に限定されず、触媒層の被膜強度や密着性の維持に必要な程度の量であれば構わない。具体的には、バインダーの含有量は、触媒用スラリー組成物の総量に対して、0.1〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜35質量%であり、さらに好ましくは2〜30質量%である。
【0071】
この触媒用スラリー組成物は、ハニカム構造体等の支持体に直接塗布して触媒層を形成するための塗布液(触媒層形成用塗布液)として使用でき、これを塗布液として用いることで、触媒形成時に従来必要とされてきた数多くの処理工程を省略することが可能となる。そのため、350℃以上1000℃以下で熱処理する焼成工程を行っていない触媒用スラリー組成物、換言すれば、未焼成のCu含有ゼオライト及び有機構造指向剤(有機構造指向剤のカチオン性残基)を含有する触媒形成用の塗布液(触媒用スラリー組成物)として用いることにより、触媒形成の際に従来必要とされてきた多くの処理工程を省略することができ、これにより触媒の製造コストが大幅に低減可能となる。
【0072】
なお、触媒用スラリー組成物の調製時には、必要に応じて、各種公知の分散機、攪拌機、混練機、例えばボールミル、ビーズミル、媒体撹拌ミル、ホモジナイザー等を用いて湿式混合することができる。このとき、必要に応じて、当業界で公知の添加剤、例えば非イオン系界面活性剤やアニオン系界面活性剤等の分散安定化剤、pH調整剤、粘度調整剤等を配合してもよい。これらの添加剤の使用割合は、特に限定されないが、総量に対して合計で0.01〜20質量%が好ましく、合計で0.05〜10質量%がより好ましく、合計で0.1〜8質量%がさらに好ましい。なお、攪拌を行う場合、通常30〜2000rpm程度の回転数で行うことが好ましく、より好ましくは50〜1000rpmである。
【0073】
[一体構造型ハニカム触媒、及びその製造方法]
<ハニカム塗布工程(S31)>
触媒用スラリー組成物の調製工程(S21)の後に、上述した触媒用スラリー組成物を支持体の少なくとも一方の面側に塗布する。触媒用スラリー組成物の塗工層は、支持体の一面のみに設けられていても、複数の面(例えば、一方の主面及び他方の主面等)に設けられていてもよい。さらに、触媒用スラリー組成物の塗工層は、支持体の一面側に複数設けられていてもよい。
【0074】
ここで用いる支持体としては、触媒用スラリー組成物から形成される触媒層を支持可能なものである限り、その種類は特に限定されない。例えば、金属、合金、プラスチック、セラミックス、紙、合成紙、不織布、これらを組み合わせた積層体等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、支持体の形状、平面形状、厚さ等も、用途や要求性能等に応じて適宜設定すればよい。また、例えば自動車排ガス用途における支持体として、コージェライト、シリコンカーバイド、窒化珪素等のセラミックモノリス担体、ステンレス製等のメタルハニカム担体、ステンレス製等のワイヤメッシュ担体、スチールウール状のニットワイヤ担体等、当業界で公知のものを用いることができる。また、その形状としては、例えば角柱状、円筒状、球状、ハニカム状、シート状等の任意の形状のものが選択可能である。これらは、1種を単独で、又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。支持体としてハニカム構造担体等の支持部材を用いることで、ガス流中に設置する適用が容易となる。
【0075】
ハニカム構造担体等の支持体のサイズは、用途や要求性能に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、例えば数ミリから数センチの直径(長さ)のものが使用できる。ハニカム構造担体等の支持体としては、さらに開口部の孔数について、処理すべき排気ガスの種類、ガス流量、圧力損失或いは除去効率等を考慮して適当な孔数を設定すればよい。そのセル密度は、特に限定されないが、ガス流に対する表面積を高く維持し圧力損失の増大を抑制する等の観点から、通常100〜900セル/inch
2 (15.5〜139.5セル/cm
2 )が好ましく、200〜600セル/inch
2 (31〜93セル/cm
2 )がより好ましい。なお、セル密度とは、ハニカム構造担体等の支持体を気体流路に対して直角に切断した際の断面における単位面積あたりのセル数のことを意味する。
【0076】
また、自動車排ガス用途のハニカム構造担体としては、気体流路が連通しているフロースルー型構造体と、気体流路の一部端面が目封じされ且つ気体流路の壁面を通して気体が流通可能になっているウォールフロー型構造体とが広く知られている。本実施形態では、いずれも適用可能であるが、空気抵抗が少なく且つ排気ガスの圧力損失が少ないフロースルー型構造体が好ましく用いられる。
【0077】
支持体への触媒用スラリー組成物の付与方法は、常法にしたがって行えばよく、特に限定されない。各種公知のコーティング法、ウォッシュコート法、ゾーンコート法を適用することができる。
【0078】
触媒用スラリー組成物の塗布量(被覆量)は、要求性能に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、NOx吸着性能又は触媒性能、及び圧損のバランス等の観点から、前述した触媒用スラリー組成物の組成換算で(Cu含有ゼオライト換算で)で、0.1〜500g/Lが好ましく、10〜400g/Lがより好ましく、20〜300g/Lがさらに好ましい。
【0079】
なお、必要に応じて、プラチナ、パラジウム、ロジウム、イリジウム等の白金族元素(PGM:Platinum Group Metal)やCuやFeやWやCe等の遷移金属を触媒用スラリー組成物中に配合しておき、Cu含有ゼオライトに担持させてもよい。これらの担持方法は、公知の手法を適用でき、特に限定されない。例えば、白金族元素や遷移金属元素を含む塩の溶液を調製し、触媒用スラリー組成物にこの含塩溶液を含浸させ、その後に焼成することにより、白金族元素や遷移金属元素の担持を行うことができる。白金族元素や遷移金属元素は、例えば硝酸塩水溶液、ジニトロジアンミン硝酸塩溶液、塩化物水溶液、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、酸化物、複合酸化物、及び錯塩等として供給することができるが、これらに特に限定されない。
【0080】
また、触媒用スラリー組成物の塗布後は、常法にしたがい、次の焼成工程の前に、真空乾燥機等を用いた減圧乾燥を行い、約50℃〜200℃で約1〜48時間程度の乾燥処理を行うことができる。
【0081】
<焼成工程(S41)>
この工程では、支持体の少なくとも一方の面側に塗布された触媒用スラリー組成物を350℃以上で熱処理して、触媒層を形成する。これにより、支持体及びこの支持体の少なくとも一方の面側に設けられた触媒層を少なくとも備える積層構造の触媒部材(一体構造型ハニカム触媒)が得られる。ここで、本明細書において、「支持体の少なくとも一方の面側に設けられた」とは、支持体の一方の面と触媒層との間に任意の他の層(例えばプライマー層、接着層等)が介在した態様を包含する意味である。すなわち、本明細書において、「一方の面側に設ける」とは、支持体と触媒層とが直接載置された態様、支持体と触媒層とが任意の他の層を介して離間して配置された態様の双方を含む意味で用いている。また、触媒層は、支持体の一面のみに設けられていても、複数の面(例えば、一方の主面及び他方の主面等)に設けられていてもよいことを意味する。このとき、ハニカム構造担体等の支持体を用い、ガス流が通過する流路内にこの一体構造型ハニカム触媒を設置し、ハニカム構造担体のセル内にガス流を通過させることで、高効率に排ガス浄化を行うことができる。
【0082】
このときの焼成温度(処理温度)は、使用原料等に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、結晶性を維持するとともに有機構造指向剤等の残存割合を低減する等の観点から、通常300℃以上1000℃以下、好ましくは400℃以上900℃以下、より好ましくは430℃以上800℃以下、さらに好ましくは450℃以上750℃以下である。なお、焼成処理は、酸素含有雰囲気で行うことが好ましく、例えば大気雰囲気で行えばよい。また、加熱手段としては、特に限定されず、例えば電気炉やガス炉等、当業界で公知のものを用いることができる。
【0083】
焼成処理における処理時間(焼成時間)は、処理温度及び経済性等に応じて適宜設定でき、特に限定されないが、通常0.1時間以上72時間以下、好ましくは0.2時間以上48時間以下、より好ましくは0.5時間以上40時間以下である。
【0084】
なお、一体構造型ハニカム触媒において、触媒層の層構成は、単層、複層のいずれでもよいが、自動車排ガス用途の場合には、排気ガス規制の強化の趨勢等を考慮すると、触媒層を二層以上の積層構造と触媒性能を高めることが好ましい。このとき、上述した触媒層の被覆量は、特に限定されないが、触媒性能や圧損のバランス等の観点から、Cu含有ゼオライトの固形分換算で0.1〜500g/Lが好ましく、10〜400g/Lがより好ましく、20〜300g/Lがさらに好ましい。
【0085】
[用途]
かくして得られる一体構造型ハニカム触媒は、例えばディーゼル自動車、ガソリン自動車、ジェットエンジン、ボイラー、ガスタービン等の排ガスを浄化する排ガス浄化用触媒として用いることができ、とりわけ、アンモニア、尿素、有機アミン類等を還元剤として用いる選択的還元触媒(Selective Catalytic Reduction触媒、SCR触媒)として好適に用いられる。このとき、SCR触媒において従来公知の技術手段、例えば触媒種、助触媒種、各成分の配合割合、触媒積層構造等を、上述した一体型構造型触媒に適用することもできる。選択還元触媒材料としては、ゼオライトやゼオライト類似の化合物(結晶金属アルミノリン酸塩)の他、バナジウム酸化物、チタニア、ジルコニア、酸化タングステン等の遷移金属酸化物、セリア、ランタン、プラセオジム、サマリウム、ガドリニウム、ネオジム等の希土類酸化物、酸化銅、酸化鉄、酸化ガリウム、酸化スズ等の卑金属酸化物、またはこれらの複合酸化物等の各種無機材料が挙げられる。また、アルミナやシリカ、及び希土類、アルカリ金属、アルカリ土類等で修飾されたアルミナやシリカと上記酸化物との混合物や複合化物等も挙げられる。また、銅や鉄等の卑金属をゼオライトやゼオライト類似の化合物等にイオン交換した無機材料等も挙げられる。
【0086】
特に好適な自動車排ガス用途において、上述した一体構造型ハニカム触媒は、各種エンジンの排気系に配置することができる。その設置個数及び設置箇所は、排ガス規制に応じて適宜設計できる。例えば、排ガスの規制が厳しい場合には、設置箇所を2以上とし、設置箇所は排気系の直下触媒の後方の床下位置に配置することができる。そして、本実施形態の一体構造型ハニカム触媒は、従来必要とされていた多くの処理工程を省略可能であり、従来に比して低コストに作製可能であり、しかも、溶液処理や熱処理を繰り返し行うことによるゼオライトの結晶性の低下が抑制されているため、高温環境下においてもCO、HC、NOxの浄化反応に優れた効果を発揮することができる。
【0087】
そして、本実施形態の一体構造型ハニカム触媒においては、支持体上に触媒用スラリー組成物を塗布した後に350℃以上の熱処理(焼成処理)を1回行うだけで、触媒層が形成されている。そのため、有機構造指向剤の除去、イオン交換後の熱処理、性能安定化のためのエージング処理、触媒層形成のための焼成処理等、高温の熱処理を複数回行っていた従来の製造プロセスに比して、製造工程が極めて簡略化されており、その結果、極めて低コストで一体構造型ハニカム触媒が製造可能である。これにより、高温の熱処理の処理回数ないしは合計処理時間を大きく低減させることができ、水熱合成後のゼオライトの結晶性の低下にともなう、触媒の高温性能の低下も抑制され、例えば400℃以上600℃以下の高温域においても窒素酸化物の高い還元率を維持可能である。
【実施例】
【0088】
以下に試験例、実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらによりなんら限定されるものではない。すなわち、以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更することができる。また、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における好ましい上限値又は好ましい下限値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0089】
(合成例1)
<原料組成物の調製>
28%アンモニア水(和光純薬工業社特級)174.9gと純水1026.9gを撹拌混合し、50%硝酸銅2水和物水溶液(関西触媒化学社製、CuO換算:16.5%)217.7gを少しずつ加えて、テトラアンミン銅(II)硝酸塩溶液1419.5gを得た。
次に、固体粉末状の非晶質合成ケイ酸アルミニウム(協和化学社製、合成ケイ酸アルミニウム、商品名:キョーワード(登録商標)700SEN−S、シリカアルミナ比:9.1、Na/Al=0.05)1000.0gを、硝酸アンモニウム(和光純薬工業社製1級)1000.0gを水10Lに溶解した溶液に投入し、常温で一晩撹拌した。ろ過・洗浄後、120℃で乾燥して、低Na(Na/Al=0.001)のアルミノケイ酸塩を得た。
この低Naアルミノケイ酸塩350.0gを、前もって調製したテトラアンミン銅(II)硝酸塩溶液1,100.0gと水300.0gを混合した溶液に投入し、室温で一晩撹拌した。ろ過・洗浄後、120℃で乾燥して、合成例1のNH
4 +型の銅含有アルミノケイ酸塩を得た。蛍光X線分析を行ったところ、シリカアルミナ比:10.2、Cu/Al=0.36であった。
【0090】
N,N,N−トリメチルアダマンタアンモニウム水酸化物25%水溶液(これ以降「TMAdaOH25%水溶液」とする。セイケム社製)910.0gに、純水90.0g、Si−Al−Cu元素源として上記の合成例1のNH
4 +型の銅含有アルミノケイ酸塩140.0g、H型チャバサイト種結晶(シリカアルミナ比27)5.0g、及びSi元素源としてコロイダルシリカ(日産化学工業社製、商品名:スノーテックスN−40、SiO
2 :39.7%)285.0gを加えよく混合し、合成例1の原料組成物(混合物)を得た。得られた原料組成物の触媒用成分の組成は仕込んだ原料組成から算出して、SiO
2 ・0.045Al
2 O
3・0.303TMAdaOH・0.032CuO・15.2H
2 Oであった(原料組成物の固形分濃度:16.7質量%)。
【0091】
合成例1の原料組成物を1,200ccのステンレス製オートクレーブ内に投入して密閉した後、300rpmで回転させながら、160℃まで昇温し144時間保持した。熱水処理後の生成物を固液分離し、得られた固相を十分量の水で洗浄し105℃で乾燥して、合成例1の生成物を得た。粉末X線回折分析を行ったところ、得られた生成物は純粋なチャバサイト型ゼオライト、すなわち、銅含有CHA型ゼオライトの単相であることが確認された。また、有機元素分析と蛍光X線分析及び加熱減量分析を行ったところ、合成例1の銅含有CHA型ゼオライトの組成は、酸化物換算のモル比で、Al
2 O
3 ・20.4SiO
2 ・1.04(TMAda)
2 O・0.66CuO・5.2H
2 Oであった。
なお、蛍光X線分析においては、装置としてAxios (スペクトリス株式会社 パナリィティカル事業部)を用いた。測定試料5gを塩化ビニル製リングに入れて20tの加重で加圧成型して、測定に供した。解析ソフトはUniQuant5を使用した。
また、有機元素分析は、装置としてFLASH EA1112 Series(Thermo Fisher Scientific)を用いた。試料2〜10mgを秤取し、2mgのスルファニルアミドを標準物質として用いて炭素含有率を測定した。なお、水素の分析値は水の影響を受けることにより、また、窒素の分析値は原料由来のアンモニウムの影響を受けることにより、それぞれ誤差が大きくなるため炭素の分析値のみを採用した。
一方、加熱減量分析は、測定試料5gを1000℃で2時間以上焼成し250〜350℃の温度範囲内に冷却した時の質量を測定し、初期質量との差から下記式に基づいて加熱減量率を求めた。
(加熱減量率)=[(初期質量)−(加熱後質量)]/(初期質量)
他方、粉末X線回折分析は、装置としてX’Pert Pro(スペクトリス株式会社製)を用いた。粉末測定試料を溝のあるガラス試料板容器に充填し測定に供した。なお、X線源はCuKα線、管電圧は45kV、管電流は40mAにて測定を行った。
【0092】
<触媒用スラリー組成物の調製>
合成例1の銅含有CHA型ゼオライト191gを、水66.7gに分散し、バインダーとしてベーマイト(サソール社製、商品名:ディスペラルP3)1.1g及びコロイダルアルミナ(多木化学社製、商品名:バイラールAl−L7、Al
2 O
3 :7%)93gを加えてよく撹拌し、合成例1の銅含有CHA型ゼオライトを52質量%含有する、合成例1の触媒用スラリー組成物を得た(スラリー全体の固形分濃度:42質量%)。
【0093】
(実施例1)
<一体構造型ハニカム触媒の作製>
合成例1の触媒用スラリー組成物を、支持体として円柱状のハニカム構造体(直径25.4mm、長さ50mm)上にウェット塗布し120℃で乾燥して、ハニカム構造体上に、銅含有CHA型ゼオライトを含有する塗工層を形成した。触媒用スラリー組成物の塗布量は、ハニカム構造体1Lあたりの銅含有CHA型ゼオライトの担持率は、235g/Lとした。
その後、一体構造型ハニカム触媒を500℃で焼成することで、塗工層を触媒化して触媒層を形成することにより、ハニカム構造体上に銅含有CHA型ゼオライトを含有する触媒層を備える、実施例1の一体構造型ハニカム触媒を得た。実施例1の一体構造型ハニカム触媒において、酸化物換算のモル比でAl
2 O
3 ・20.4SiO
2 ・0.66CuOで表される組成に相当する銅含有CHA型ゼオライト固形分のハニカム構造体1Lあたりの担持量は、180g/Lであった。
【0094】
〔NOx浄化率の測定〕
実施例1の一体構造型ハニカム触媒を触媒評価装置(商品名SIGU−2000、株式会社堀場製作所製)にセットし、210ppmのNO、40ppmのNO
2 、250ppmのNH
3 、4%のH
2 O,10%のO
2 、及び残部N
2 でバランスした組成を有するモデルガス(ガス混合物)の定常気流中における、窒素酸化物還元効率を測定した。測定は、170℃〜500℃の温度範囲で行い、空間速度SV=59,000h
-1で行い、ガス分析は、自動車排ガス測定装置(商品名MEXA−6000FT,株式会社堀場製作所製)を用いて行った。NOx浄化率の測定結果を、
図2に示す。
【0095】
(合成例2)
<原料組成物の調製>
NH
4 型ゼオライトP(エヌ・イ− ケムキャット社製、シリカアルミナ比:3.4)170gに、50%硝酸銅2水和物水溶液(関西触媒化学社製、CuO換算:16.5%)850gを少しずつ加えて、室温で一晩撹拌した。遠心分離で固液分離後、固相部分に再び50%硝酸銅2水和物水溶液(関西触媒化学社製、CuO換算:16.5%)850gを少しずつ加えて、室温で一晩撹拌した。遠心分離で固液分離後、水で洗浄し、120℃で乾燥して、合成例2のGIS構造を有するNH
4 +型の銅含有アルミノケイ酸塩を得た。蛍光X線分析を行ったところ、シリカアルミナ比:3.6、Cu/Al=0.36であった。
【0096】
TMAdaOH25%水溶液(セイケム社製)630.0gに、エチルトリメチルアンモニウム水酸化物20%水溶液(これ以降「ETMAOH20%水溶液」とする。セイケム社製)190.0g、純水70.0g、Si−Al−Cu元素源として上記の合成例2のGIS構造を有するNH
4 +型の銅含有アルミノケイ酸塩77.0g、H型チャバサイト種結晶(シリカアルミナ比27)5.0g、及びSi元素源としてコロイダルシリカ(日産化学工業製、商品名:スノーテックスN−40、SiO
2 :39.7%)440.0gを加えよく混合し、合成例2の原料組成物(混合物)を得た。得られた原料組成物の触媒用成分の組成は仕込んだ原料組成から算出して、酸化物換算のモル比で、SiO
2 ・0.048Al
2 O
3・0.207TMAdaOH・0.100ETMAOH・0.034CuO:15.1H
2 Oであった(原料組成物の固形分濃度:17.2質量%)。
【0097】
合成例2の原料組成物を1,200ccのステンレス製オートクレーブ内に投入して密封した後、300rpmで回転させながら、160℃まで昇温し144時間保持した。熱水処理後の生成物を固液分離し、得られた固相を十分量の水で洗浄し105℃で乾燥して、合成例2の生成物を得た。粉末X線回折分析を行ったところ、得られた生成物は純粋なチャバサイト型ゼオライト、すなわち、銅含有CHA型ゼオライトの単相であることが確認された。また、有機元素分析と蛍光X線分析及び加熱減量分析を行ったところ、合成例2の銅含有CHA型ゼオライトの組成は、酸化物換算のモル比で、Al
2 O
3 ・19.4SiO
2 ・0.69〜0.86(TMAda)
2 O・0.57CuO・0〜0.91(ETMA)
2 O・0〜5.8H
2 Oであった。
【0098】
<触媒用スラリー組成物の調製>
合成例2の銅含有CHA型ゼオライト120gを、水72.2gに分散し、バインダーとしてベーマイト(サソール社製、商品名:ディスペラルP3)0.9g及びコロイダルアルミナ(多木化学社製、商品名:バイラールAl−L7、Al
2 O
3 :7%)69gを加えてよく撹拌し、合成例2の銅含有CHA型ゼオライトを43〜46質量%含有する、合成例2の触媒用スラリー組成物を得た(スラリー全体の固形分濃度:36質量%)。
【0099】
(実施例2)
<一体構造型ハニカム触媒の作製>
合成例2の触媒用スラリー組成物を、支持体として円柱状のハニカム構造体(直径25.4mm、長さ50mm)上にウェット塗布し120℃で乾燥して、ハニカム構造体上に、銅含有CHA型ゼオライトを含有する塗工層を形成した。このとき、触媒用スラリー組成物の塗布量は、ハニカム構造体1Lあたりの銅含有CHA型ゼオライトの担持率は、228〜242g/Lとした。
その後、一体構造型ハニカム触媒を500℃で焼成することで、塗工層を触媒化して触媒層を形成することにより、ハニカム構造体上に銅含有CHA型ゼオライトを含有する触媒層を備える、実施例2の一体構造型ハニカム触媒を得た。実施例2の一体構造型ハニカム触媒において、モル比でAl
2 O
3 ・19.4SiO
2 ・0.57CuOで表される組成に相当する銅含有CHA型ゼオライト固形分のハニカム構造体1Lあたりの担持量は、180g/Lであった。
【0100】
〔NOx浄化率の測定〕
実施例1と同様に、実施例2の一体構造型ハニカム触媒の窒素酸化物還元効率を測定した。NOx浄化率の測定結果を、
図2に示す。
【0101】
(比較合成例1)
<原料組成物及びゼオライトの調製>
TMAdaOH25%水溶液330.0gに、純水2,800g、Al源及びアルカリ金属源としてアルミン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)45.0g、Si元素源として沈降シリカ(東ソー・シリカ社製、商品名:Nipsil(登録商標)ER)220.0g、Si元素源及びアルカリ金属源としてJケイ酸ナトリウム3号(日本化学工業社製、SiO
2 含量29質量%、Na
2 O含量9.5質量%)60.0g、並びにチャバザイト種結晶(シリカアルミナ比13)20gを加え、十分に混合して、比較合成例1の原料組成物を得た。得られた原料組成物の組成は仕込んだ原料組成から算出して、酸化物換算のモル比で、SiO
2・0.065Al
2 O
3 ・0.104TMAdaOH:0.100Na
2 O・44.4H
2 Oであった。
得られた比較合成例1の原料組成物を5,000ccのステンレス製オートクレーブ内に投入して密閉した後、300rpmで回転させながら、160℃まで昇温し48時間保持した。熱水処理後の生成物を固液分離し、得られた固相を十分量の水で洗浄し105℃で乾燥して、比較合成例1の生成物を得た。粉末X線回折分析を行ったところ、得られた生成物は純粋なチャバサイト型ゼオライト、すなわち、CHA型ゼオライトの単相であることが確認された。また、蛍光X線分析を行ったところ、比較合成例1のCHA型ゼオライトのシリカアルミナ比は13.4であった。
【0102】
<焼成・アンモニウム型イオン交換>
比較合成例1のCHA型ゼオライトを600℃で焼成後、これと同量の硝酸アンモニウム及び10倍量の水を含む硝酸アンモニウム水溶液を用いてイオン交換を3回繰り返し、十分量の純水で洗浄し、120℃で乾燥して、比較合成例1のNH
4+型のCHA型ゼオライトを得た。
【0103】
<銅の担持>
比較合成例1のNH
4+型のCHA型ゼオライト160gに25%硝酸銅3水和物水溶液84gを含浸させた後、500℃で焼成して、比較合成例1の銅担持CHA型ゼオライトを得た。蛍光X線分析及び加熱減量分析を行ったところ、比較合成例1の銅担持CHA型ゼオライトの組成は、Al
2 O
3 ・13.4SiO
2 ・0.72CuO・6.5H
2 Oであった。
【0104】
<触媒用スラリー組成物の調製>
比較合成例1の銅担持CHA型ゼオライト155gを、水76.2gに分散し、バインダーとしてベーマイト(サソール製、商品名:ディスペラルP3)1.0g及びコロイダルアルミナ(多木化学製、商品名:バイラールAl−L7、Al
2 O
3 :7%)89gを加えてよく撹拌し、比較合成例1の触媒用スラリー組成物を得た(スラリー全体の固形分濃度:45質量%)。この触媒用スラリー組成物は、触媒用成分が酸化物換算のモル比で、Al
2 O
3 ・13.4SiO
2 ・y(TMAda)
2 O・0.72CuOで表され且つyが実質的に0である組成を有する銅担持CHA型ゼオライトを、スラリー全体に対して43質量%含有するものであった。
【0105】
(比較例1)
<一体構造型ハニカム触媒の作製>
合成例1の触媒用スラリー組成物に代えて、比較合成例1の触媒用スラリー組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行って、ハニカム構造体上に銅担持CHA型ゼオライトを含有する触媒層を備える、比較例1の一体構造型ハニカム触媒を得た。比較例1の一体構造型ハニカム触媒において、Al
2 O
3 ・13.4SiO
2 ・y(TMAda)
2 O・0.72CuOで表され且つyが実質的に0である銅担持CHA型ゼオライト固形分のハニカム構造体1Lあたりの担持量は、180g/Lであった。
【0106】
〔NOx浄化率の測定〕
実施例1と同様に、比較例1の一体構造型ハニカム触媒の窒素酸化物還元効率を測定した。NOx浄化率の測定結果を、
図2に示す。
【0107】
(比較合成例2)
<原料組成物及びゼオライトの調製>
TMAdaOH25%水溶液560.0gに、純水3,7352g、Si元素源及びアルカリ金属源としてJケイ酸ナトリウム3号(日本化学工業社製、SiO
2 含量29質量%、Na
2 O含量9.5質量%)109.0g、Al源及びアルカリ金属源としてアルミン酸ナトリウム(和光純薬工業社製)52.0g、Si元素源としてニップシールER(東ソー・シリカ社製、沈降シリカ)305.0g、チャバサイト種結晶(シリカアルミナ比15)10gを加え、十分に混合して、比較合成例1の原料組成物(混合物)を得た。得られた原料組成物の触媒用成分の組成は仕込んだ原料組成から算出して、酸化物換算のモル比で、SiO
2 :0.053・Al
2 O
3・0.123TMAdaOH・0.095Na
2 O・44.0H
2 Oであった。
得られた比較合成例2の原料組成物から85質量%に相当する4,085gを採取し、これを5,000ccのステンレス製オートクレーブ内に投入して密閉した後、300rpmで回転させながら、160℃まで昇温し96時間保持した。熱水処理後の生成物を固液分離し、得られた固相を十分量の水で洗浄し105℃で乾燥して、比較合成例2の生成物を得た。粉末X線回折分析を行ったところ、得られた生成物は純粋なチャバサイト型ゼオライト、すなわち、CHA型ゼオライトの単相であることが確認された。また、蛍光X線分析を行ったところ、比較合成例2のCHA型ゼオライトのシリカアルミナ比は16.3であった。
【0108】
<焼成・アンモニウム型イオン交換>
比較合成例1のCHA型ゼオライトに代えて、比較合成例2のCHA型ゼオライトを用いる以外は、比較合成例1と同様に焼成処理及びイオン交換処理を行い、比較合成例2のNH
4+型のCHA型ゼオライトを得た。
【0109】
<銅の担持>
比較合成例2のNH
4+型のCHA型ゼオライト160gに25%硝酸銅3水和物水溶液84gを含浸させた後、500℃で焼成して、比較合成例2の銅担持CHA型ゼオライトを得た。蛍光X線分析及び加熱減量分析を行ったところ、比較合成例2の銅担持CHA型ゼオライトの組成は、Al
2 O
3 ・16.3SiO
2 ・0.69CuO・9.0H
2 Oであった。
【0110】
<触媒用スラリー組成物の調製>
比較合成例2の銅担持CHA型ゼオライト155gを、水76.2gに分散し、バインダーとしてベーマイト(サソール製、商品名:ディスペラルP3)1.0g及びコロイダルアルミナ(多木化学製、商品名:バイラールAl−L7、Al
2 O
3 :7%)89gを加えてよく撹拌し、比較合成例2の触媒用スラリー組成物を得た(スラリー全体の固形分濃度:44質量%)。この触媒用スラリー組成物は、酸化物換算のモル比で、Al
2 O
3 ・16.3SiO
2 ・y(TMAda)
2 O・0.69CuOで表され且つyが実質的に0である銅担持CHA型ゼオライトの固形分を、スラリー全体に対して42質量%含有するものであった。
【0111】
(比較例2)
<一体構造型ハニカム触媒の作製>
合成例1の触媒用スラリー組成物に代えて、比較合成例2の触媒用スラリー組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行って、ハニカム構造体上に銅担持CHA型ゼオライトを含有する触媒層を備える、比較例2の一体構造型ハニカム触媒を得た。比較例2の一体構造型ハニカム触媒において、Al
2 O
3 ・16.3SiO
2 ・y(TMAda)
2 O・0.69CuOで表され且つyが実質的に0である銅担持CHA型ゼオライトのハニカム構造体1Lあたりの担持量は、180g/Lであった。
【0112】
〔NOx浄化率の測定〕
実施例1と同様に、比較例2の一体構造型ハニカム触媒の窒素酸化物還元効率を測定した。NOx浄化率の測定結果を、
図2に示す。
【0113】
(合成例3)
<Cu含有アルミノケイ酸塩の調製>
NH
4 型ゼオライトP(エヌ・イ− ケムキャット社製、シリカアルミナ比:3.4)100gに、50%硝酸銅2水和物水溶液(関西触媒化学社製、CuO換算:16.5%)500gを少しずつ加えて、40℃で3時間撹拌した。遠心分離で固液分離後、固相部分に再び50%硝酸銅2水和物水溶液(関西触媒化学社製、CuO換算:16.5%)500gを少しずつ加えて、40℃で3時間撹拌した。遠心分離で固液分離後、水で洗浄し、120℃で乾燥して、合成例3のGIS構造を有するNH
4 +型の銅含有アルミノケイ酸塩を得た。蛍光X線分析を行ったところ、シリカアルミナ比:3.6、Cu/Al=0.40であった。
【0114】
<原料組成物の調製>
TMAdaOH25%水溶液(セイケム社製)920.0gに、純水20.0g、Si−Al−Cu元素源として上記の合成例3のGIS構造を有するNH
4 +型の銅含有アルミノケイ酸塩95.0g、H型チャバサイト種結晶(シリカアルミナ比27)5.0g、及びSi元素源としてコロイダルシリカ(日産化学工業製。商品名:スノーテックスN−40、SiO
2 :39.7%)420.0gを加えよく混合し、合成例3の原料組成物(混合物)を得た。得られた原料組成物の触媒用成分の組成は仕込んだ原料組成から算出して、SiO
2 ・0.058Al
2 O
3・0.303TMAdaOH・0.046CuO:15.2H
2 Oであった(原料組成物の固形分濃度:17.2質量%)。
【0115】
<Cu含有未焼成ゼオライトの調製>
合成例3の原料組成物を1,200ccのステンレス製オートクレーブ内に投入して密閉した後、300rpmで回転させながら、160℃まで昇温し144時間保持した。熱水処理後の生成物を固液分離し、得られた固相を十分量の水で洗浄し105℃で乾燥して、合成例3の生成物を得た。粉末X線回折分析を行ったところ、得られた生成物は純粋なチャバサイト型ゼオライト、すなわち、銅含有CHA型ゼオライトの単相であることが確認された。また、有機元素分析と蛍光X線分析及び加熱減量分析を行ったところ、合成例3の銅含有CHA型ゼオライトの組成は、酸化物換算のモル比で、Al
2 O
3 ・15.1SiO
2 ・0.77(TMAda)
2 O・0.78CuO・6.4H
2 Oであった。
【0116】
(比較合成例3)
<焼成済Cu含有ゼオライトの調製>
次いで、合成例3の銅含有CHA型ゼオライトを600℃で焼成し、比較合成例3の生成物(焼成済Cu含有ゼオライト)を得た。蛍光X線分析及び加熱減量分析を行ったところ、比較合成例3の焼成済銅担持CHA型ゼオライトの組成は、Al
2 O
3 ・15.1SiO
2 ・0.78CuO・8.1H
2 Oであった。
【0117】
<触媒用スラリー組成物の調製>
比較合成例3の焼成済銅担持CHA型ゼオライト155gを、水76.2gに分散し、バインダーとしてベーマイト(サソール製、商品名:ディスペラルP3)1.0g及びコロイダルアルミナ(多木化学製、商品名:バイラールAl−L7、Al
2 O
3 :7%)89gを加えてよく撹拌し、比較合成例3の触媒用スラリー組成物を得た(スラリー全体の固形分濃度:45質量%)。この触媒用スラリー組成物は、酸化物換算のモル比で、Al
2 O
3 ・15.1SiO
2 ・y(TMAda)
2 O・0.78CuOで表され且つyが実質的に0である組成を有する焼成済銅担持CHA型ゼオライトを、スラリー全体に対して43質量%含有するものであった。
【0118】
(参考例1)
<一体構造型ハニカム触媒の作製>
合成例1の触媒用スラリー組成物に代えて、比較合成例3の触媒用スラリー組成物を用いる以外は、実施例1と同様に行って、ハニカム構造体上に銅担持CHA型ゼオライトを含有する触媒層を備える、参考例1の一体構造型ハニカム触媒を得た。参考例1の一体構造型ハニカム触媒において、Al
2 O
3 ・15.1SiO
2 ・y(TMAda)
2 O・0.78CuOで表され且つyが実質的に0である銅担持CHA型ゼオライトのハニカム構造体1Lあたりの担持量は、180g/Lであった。
【0119】
〔NOx浄化率の測定〕
実施例1と同様に、参考例1の一体構造型ハニカム触媒の窒素酸化物還元効率を測定した。NOx浄化率の測定結果を、
図2に示す。
【0120】
図2から明らかなとおり、実施例1及び2は、溶液処理や熱処理を繰り返し行って作製された比較例1及び2に比して、400℃以上600℃以下の高温域においても高い触媒性能を維持していることがわかる。このことから、本発明の製造方法により得られる触媒は、ゼオライトの結晶性の低下が抑制されていることが示唆される。また、本発明の製造方法では、原料組成物の調製、触媒用スラリー組成物の調製、及び一体構造型ハニカム触媒の作製という3プロセスのみで一体構造型ハニカム触媒を作製できるため、従来に比して製造プロセスが大幅に簡略化されたものであるため、製造コストを大幅に低減することができる。
また、実施例2は、触媒用スラリー組成物の調製時において既に焼成処理を行った参考例1と同程度の触媒性能を有することがわかる。このことから、本発明の製造方法は、従来に比して製造プロセスを大幅に簡略化していながらも、従来と同等程度の触媒性能を有する触媒を作製できるものであることが裏付けられ、製造プロセスの簡略化によって、得られる触媒の低コスト化が図られることがわかる。