特開2019-93383(P2019-93383A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-93383(P2019-93383A)
(43)【公開日】2019年6月20日
(54)【発明の名称】乳化分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 13/00 20060101AFI20190530BHJP
   B01F 3/08 20060101ALI20190530BHJP
   B01F 7/00 20060101ALI20190530BHJP
【FI】
   B01J13/00 A
   B01F3/08 A
   B01F7/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-201950(P2018-201950)
(22)【出願日】2018年10月26日
(31)【優先権主張番号】特願2017-226023(P2017-226023)
(32)【優先日】2017年11月24日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】399034220
【氏名又は名称】日本エイアンドエル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 貴
【テーマコード(参考)】
4G035
4G065
4G078
【Fターム(参考)】
4G035AB38
4G035AB40
4G035AE17
4G065AA01
4G065AB12Y
4G065AB18Y
4G065BA01
4G065BA03
4G065BA11
4G065BA14
4G065BB03
4G065CA03
4G065EA01
4G065EA03
4G065EA04
4G065EA10
4G065FA01
4G065GA01
4G078AA13
4G078AB05
4G078DA01
4G078DA19
4G078DA21
4G078EA13
(57)【要約】
【課題】
平均粒子径が微細であり、且つ粗大粒子の少ない脂肪酸アミドの乳化分散液を、簡便かつ安全性にも配慮した方法で得ることができる、脂肪酸アミドの乳化分散液を提供すること。
【解決手段】
下記式(1)で求まる分散率が85%以上、かつ動的光散乱法による平均粒子径が1.5μm以下の脂肪酸アミドの乳化分散液を湿式分散法により得る、乳化分散液の製造方法。
分散率(%)=(線径0.10mmのステンレス鋼線よりなる100メッシュの平織金網(JIS G3555−2004に準拠)を通過した乳化分散液の固形分濃度)/(理論固形分濃度)×100・・・式(1)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で求まる分散率が85%以上、かつ動的光散乱法による平均粒子径が1.5μm以下の脂肪酸アミドの乳化分散液を湿式分散法により得る、乳化分散液の製造方法。
分散率(%)=(線径0.10mmのステンレス鋼線よりなる100メッシュの平織金網(JIS G3555−2004に準拠)を通過した乳化分散液の固形分濃度)/(理論固形分濃度)×100・・・式(1)
【請求項2】
分散率が90%以上、かつ動的光散乱法による平均粒子径が1μm以下である、請求項1に記載の乳化分散液の製造方法。
【請求項3】
湿式分散法が、脂肪族アミド粉末、界面活性剤及び水を含む混合物を、分散メディアの存在下、湿式分散装置で攪拌することにより行われ、
界面活性剤の使用量が、脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、固形分換算で6質量部以上20質量部以下である、請求項1又は2に記載の乳化分散液の製造方法。
【請求項4】
分散メディアの直径が0.5mm以上3.0mm以下である、請求項3に記載の乳化分散液の製造方法。
【請求項5】
水の使用量が、脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、100質量部以上500質量部以下である、請求項3又は4に記載の乳化分散液の製造方法。
【請求項6】
分散メディアの使用量が、脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、200質量部以上600質量部以下である、請求項3〜5の何れか一項に記載の乳化分散液の製造方法。
【請求項7】
湿式分散装置の容器全容量における分散メディアの充填率が30体積%未満である、請求項3〜6の何れか一項に記載の乳化分散液の製造方法。
【請求項8】
脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、0.05質量部以上0.5質量部以下の消泡剤を添加する、請求項3〜7の何れか一項に記載の乳化分散液の製造方法。
【請求項9】
脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、0.05質量部以上0.3質量部以下の防腐剤を添加する、請求項3〜8の何れか一項に記載の乳化分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪酸アミドの乳化分散液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脂肪酸アミドの乳化分散液は、各種分野に用いられ、高機能化を目的に平均粒子径の小さいものが求められる傾向にある。脂肪酸アミドを水に分散させる方法として、例えば特許文献1には、加圧下で脂肪酸アミドの融解温度以上でホモジナイザーなどを用いて高剪断力で乳化分散させる方法が挙げられている。このような方法では、平均粒子径が1μm以下の微細な脂肪酸アミドの乳化分散液を製造できるものの、加圧容器を用いるため装置が大型化する傾向にある。また、高温加圧下で製造するため安全性に配慮しなければならない傾向にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−18254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、平均粒子径が微細であり、且つ粗大粒子の少ない脂肪酸アミドの乳化分散液を、簡便かつ安全性にも配慮した方法で得ることができる、脂肪酸アミドの乳化分散液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の[1]〜[9]に記載の発明を完成するに至った。
【0006】
[1] 下記式(1)で求まる分散率が85%以上、かつ動的光散乱法による平均粒子径が1.5μm以下の脂肪酸アミドの乳化分散液を湿式分散法により得る、乳化分散液の製造方法。
分散率(%)=(線径0.10mmのステンレス鋼線よりなる100メッシュの平織金網(JIS G3555−2004に準拠)を通過した乳化分散液の固形分濃度)/(理論固形分濃度)×100・・・式(1)
[2] 分散率が90%以上、かつ動的光散乱法による平均粒子径が1μm以下である、[1]に記載の乳化分散液の製造方法。
[3] 湿式分散法が、脂肪族アミド粉末、界面活性剤及び水を含む混合物を、分散メディアの存在下、湿式分散装置で攪拌することにより行われ、
界面活性剤の使用量が、脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、固形分換算で6質量部以上20質量部以下である、[1]又は[2]に記載の乳化分散液の製造方法。
[4] 分散メディアの直径が0.5mm以上3.0mm以下である、[3]に記載の乳化分散液の製造方法。
[5] 水の使用量が、脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、100質量部以上500質量部以下である、[3]又は[4]に記載の乳化分散液の製造方法。
[6] 分散メディアの使用量が、脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、200質量部以上600質量部以下である、[3]〜[5]の何れかに記載の乳化分散液の製造方法。
[7] 湿式分散装置の容器全容量における分散メディアの充填率が30体積%未満である、[3]〜[6]の何れかに記載の乳化分散液の製造方法。
[8] 脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、0.05質量部以上0.5質量部以下の消泡剤を添加する、[3]〜[7]の何れかに記載の乳化分散液の製造方法。
[9] 脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、0.05質量部以上0.3質量部以下の防腐剤を添加する、[3]〜[8]の何れかに記載の乳化分散液の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加圧容器を必要とせず、常温常圧下で安全に乳化分散液を製造することができる。さらに、得られる乳化分散液は、平均粒子径1.5μm以下と微細であり、粗大粒子の少ないものであるため、各種分野で高機能化を付与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0009】
本発明に使用できる脂肪酸アミド粉末としては、例えば、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド等の不飽和脂肪酸モノアミド類;N‐ステアリルステアリン酸アミド、N‐オレイルオレイン酸アミド、N‐ステアリルオレイン酸アミド、N‐オレイルステアリン酸アミド、N‐ステアリルエルカ酸アミド、N‐オレイルパルミチン酸アミド等の置換アミド類;メチロールステアリン酸アミド、メチロールベヘン酸アミド等のメチロールアミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’‐ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’‐ジステアリルセバシン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’‐ジオレイルアジピン酸アミド等の不飽和脂肪族ビスアミド類;m‐キシリレンビスステアリン酸アミド等の芳香族系ビスアミド類等が挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。
【0010】
本発明に使用できる界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、脂肪族カルボン酸塩、デヒドロアビエチン酸塩、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、非イオン性界面活性剤の硫酸エステル塩等のアニオン性界面活性剤、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、及びアルキルエーテル型等のノニオン性界面活性剤などが挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0011】
また、界面活性剤の使用量は、脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、6質量部以上20質量部以下が好ましく、下限としては7質量部以上がより好ましく、8質量部以上が更に好ましい。一方、上限としては15質量部以下がより好ましく、13質量部以下が更に好ましく、11質量部以下が特に好ましい。界面活性剤の使用量が上記範囲であることで、分散時の起泡を抑制する事ができ、オープン型の分散機でも生産が容易になり、かつ分散後の乳化分散液の長期間の貯蔵安定性を確保することができる。
【0012】
本発明の水の使用量としては、脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、100質量部以上500質量部以下が好ましく、下限としては120質量部以上がより好ましく、130質量部以上が更に好ましい。一方、上限としては350質量部以下がより好ましく、250質量部以下が更に好ましい。水の使用量が上記範囲であることで、分散時から分散後の乳化分散液の粘度が工業生産上好ましいものとなり、工業用途に適した脂肪酸アミド含有量を確保できる。
【0013】
本発明の乳化分散液は、上記脂肪酸アミド粉末、界面活性剤及び水を原料として含み、湿式分散法を用いて製造されるものである。
【0014】
本発明の湿式分散法に用いる湿式分散装置としては、分散メディアを撹拌できる装置であれば特に限定されず、例えば、容器が自転する装置や容器は自転せず撹拌翼を備えた装置等が挙げられる。中でも、分散メディアの摩耗や破損の抑制、騒音低減を考慮すると、容器が自転せず撹拌翼を備えた装置が好ましい。容器の材質としては、特に限定されないが、SUS製が好ましい。
【0015】
本発明に使用できる湿式分散装置として撹拌翼を備える場合、撹拌翼としては、プロペラ型、パドル型、フラットパドル型、タービン型、プレート型、コーン型などが挙げられる。容器の形状、容積に応じて、1種または2種以上を用いる事ができる。撹拌翼の材質としては、特に限定されないが、SUS製が好ましい。
【0016】
本発明に使用できる分散メディアとしては、ソーダガラスビーズ、無アルカリガラスビーズなどの硬質ガラスビーズ;ポリメタクリレートなどの硬質プラスチックビーズ;クロームビーズ、ステンレスビーズなどの金属ビーズ;ジルコニア、ジルコン、チタニアなどの金属化合物ビーズ;セラミックスビーズが挙げられ、これらを1種または2種以上用いることができる。分散メディアの形状は、特に限定されないが、球状であると好ましい。
分散メディアの直径は、0.5mm以上3mm以下が好ましく、下限としては0.75mm以上がより好ましく、0.8mm以上が更に好ましい。一方、上限としては2.5mm以下がより好ましく、1.5mm以下が更に好ましい。分散メディアの直径が上記範囲であることで、得られる乳化分散液のサブミクロン微粒化が効率よく進行し、かつ分散メディア同士の衝突による摩砕を抑制することができる。
【0017】
また、分散メディアの使用量は、脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、200質量部以上600質量部以下が好ましく、上限としては400質量部以下がより好ましく、300質量部以下が更に好ましい。分散メディアの使用量が上記範囲であることで、工業化に適した生産性を確保することができ、かつ分散メディアによる湿式分散装置の内壁や撹拌翼の摩耗を低減することができる。
【0018】
さらに、湿式分散装置の容器全容量における分散メディアの充填率は30体積%未満であることが好ましい。充填率を30体積%未満にすることで、分散メディアを入れ替える頻度が少なくなるため生産性が良好になる傾向にある。
【0019】
さらには、必要に応じて酸素補足剤、キレート剤、分散剤、消泡剤、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤などの公知の添加剤を用いることも差し支えなく、目的に応じて適宜適量使用することが出来る。中でも、消泡剤や防腐剤を添加することが好ましい。消泡剤の添加量は、脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、0.05質量部以上0.5質量部以下が好ましい。消泡剤を上記範囲で添加すると、泡立ちが抑えられ生産安定性が向上し、乳化分散液の濾過性が向上する傾向にある。防腐剤の添加量は、脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、0.05質量部以上0.3質量部以下が好ましい。防腐剤を上記範囲で添加すると、乳化分散液を取り出した後の湿式分散装置内に残留する有機物の腐敗が抑制でき、湿式分散装置のメンテナンス性が向上する傾向にある。
【0020】
消泡剤としては、例えば、ポリグリコール、脂肪酸エステル、リン酸エステル、シリコーンオイル、シリカ等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。
【0021】
防腐剤としては、例えば、ブチルパラベン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、p−クロロ−m−キシレノ−ル、1,2−ベンゾイソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン等が挙げられ、1種または2種以上用いることができる。
【0022】
本発明の好ましい実施形態は、脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、界面活性剤(固形分)6質量部以上15質量部以下、水100質量部以上500質量部以下、直径0.5mm以上3.0mm以下の分散メディア150質量部以上600質量部以下を湿式分散装置で5時間以上30時間以下撹拌させることで乳化分散液を製造することである。
【0023】
撹拌時間は、3時間以上30時間以下が好ましく、下限としては5時間以上がより好ましく、8時間以上が更に好ましく、10時間以上が特に好ましい。一方、上限としては25時間以下がより好ましく、20時間以下が最も好ましい。攪拌時間が上記範囲であることで、乳化分散液中の脂肪酸アミドをより分散させることができる。
【0024】
本発明の製造方法で得られる乳化分散液の平均粒子径は、1.5μm以下であり、1μm以下であることが好ましい。平均粒子径は、動的光散乱法により測定され、解析方法を光子相関法とするものである。乳化分散液の平均粒子径が1.5μm以下であることで、長時間保管した際の固液分離を抑制する事ができる。
【0025】
本発明の製造方法で得られる乳化分散液の下記式(1)より求められる分散率は、85%以上であり、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。分散率が85%以上であることで、粗大粒子が少なく、さらに原料ロスを抑えることができ、乳化分散液中の脂肪酸アミド含有量を安定的にコントロールする事ができる。
分散率(%)=(線径0.10mmのステンレス鋼線よりなる100メッシュの平織金網(JIS G3555−2004に準拠)を通過した乳化分散液の固形分濃度)/(理論固形分濃度)×100・・・式(1)
【0026】
本発明の製造方法で得られる乳化分散液のpHは、7.5以上13以下が好ましく、下限としては8.5以上がより好ましい。一方、上限としては12以下がより好ましい。
【0027】
また、本発明の製造方法で得られる乳化分散液の粘度は、600mPa・s以下であることが好ましい。粘度は、線径0.10mmのステンレス鋼線よりなる100メッシュの平織金網(JIS G3555−2004に準拠)に通過させた後、B型粘度計を用いて液温25℃で測定するものである。粘度が600mPa・s以下であることで、乳化分散液を配管送液する際の取り扱い性が良好となる。
【0028】
本実施形態の製造方法は、脂肪族アミド粉末、界面活性剤及び水を含む混合物を、分散メディアの存在下、湿式分散装置で攪拌することを特徴とする乳化分散液の製造方法であって、界面活性剤の使用量が、脂肪酸アミド粉末100質量部に対して、固形分換算で6質量部以上20質量部以下であり、分散メディアの直径が0.5mm以上3.0mm以下である製造方法であってもよい。かかる製造方法における各構成要件としては、上記と同様のものを適用することができる。
【実施例】
【0029】
以下に実施例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0030】
<平均粒子径の測定方法>
得られた乳化分散液の平均粒子径は、線径0.10mmのステンレス鋼線よりなる100メッシュの平織金網(JIS G3555−2004に準拠)に通過させた後、FPAR−1000(大塚電子製)を用いて、動的光散乱法により測定し、光子相関法により算出した。
【0031】
<分散率の測定方法>
得られた乳化分散液を線径0.10mmのステンレス鋼線よりなる100メッシュの平織金網(JIS G3555−2004に準拠)に通過させた後、平織金網を通過した乳化分散液における固形分濃度を測定し、下記式(1)より求めた。
分散率(%)=(線径0.10mmのステンレス鋼線よりなる100メッシュの平織金網(JIS G3555−2004に準拠)を通過した乳化分散液の固形分濃度)/(理論固形分濃度)×100・・・(1)
【0032】
なお、平織金網を通過した乳化分散液の固形分濃度は、以下のようにして測定した。すなわち、秤量済みのアルミカップに乳化分散液を約2g精秤し、乳化分散液の乾燥前重量Xgとした。これをオーブン140℃で60分乾燥させ、乾燥後重量からアルミカップ重量を減じて、乳化分散液の乾燥後重量Ygとした。下記式(2)より乳化分散液の固形分濃度を計算した。
固形分濃度(%)=Y/X×100・・・(2)
【0033】
また、理論固形分濃度は、下記式(3)より算出した。
理論固形分濃度(%)=(水成分以外の仕込み原料の重量)/(水成分を含む全仕込み原料の重量)×100・・・(3)
【0034】
<粘度の測定方法>
得られた乳化分散液を線径0.10mmのステンレス鋼線よりなる100メッシュの平織金網(JIS G3555−2004に準拠)に通過させた後、B型粘度計を用い、JIS K7117−1に準拠し、液温25℃で測定した。
【0035】
(実施例1)
直径90mm、高さ200mmのSUS製容器に直径70mm、厚み10mm、径15mmの孔4つを備えたSUS製プレートタイプ翼を備えた分散装置に対しエチレンビスステアリン酸アミド粉末80g、ステアリン酸カリウム5.2g、イオン交換水120g、直径1.2mmの硬質ガラスビーズ200gを入れ(分散メディアの充填率:19.8体積%)、1000rpmで8時間分散を行った。得られた乳化分散液の平均粒子径は560nm、分散率は93.4%、粘度は120mPa・sであった。
【0036】
(実施例2)
ステアリン酸カリウムを10.4g、分散時間を15時間とした以外は実施例1と同じ条件で分散を行った。得られた乳化分散液の平均粒子径は510nm、分散率は99.8%、粘度は580mPa・sであった。
【0037】
(実施例3)
ステアリン酸カリウムを14.0g、分散時間を10時間とした以外は実施例1と同じ条件で分散を行った。得られた乳化分散液の平均粒子径は490nm、分散率は97.6%、粘度は730mPa・sであった。また、実施例2よりステアリン酸カリウム量が多いため粘度が高いものであった。
【0038】
(実施例4)
実施例1と同じ分散装置を用い、エチレンビスラウリン酸アミド粉末40g、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム4.0g、イオン交換水192g、直径1.2mmの硬質ガラスビーズ220gを入れ(分散メディアの充填率:21.7体積%)、1000rpmで8時間分散を行った。得られた乳化分散液の平均粒子径は910nm、分散率は99.7%、粘度は10mPa・sであった。
【0039】
(実施例5)
実施例1と同じ分散装置を用い、エチレンビスステアリン酸アミド粉末80g、オレイン酸カリウム7.2g、イオン交換水120g、直径2.5mmのステンレスビーズ400gを入れ(分散メディアの充填率:12.6%)、1000rpmで15時間分散を行った。得られた乳化分散液の平均粒子径は1370nm、分散率は97.9%、粘度は260mPa・sであった。
【0040】
(実施例6)
実施例1と同じ分散装置を用い、エチレンビスステアリン酸アミド粉末80g、オレイン酸カリウム7.2g、イオン交換水120g、直径1.2mmの硬質ガラスビーズ200gを入れ(分散メディアの充填率:19.8%)、1000rpmで10時間分散を行った。得られた乳化分散液の平均粒子径は530nm、分散率は97.8%、粘度は470mPa・sであった。
【0041】
(実施例7)
分散時間を35時間とした以外は実施例6と同じ条件で分散を行った。得られた乳化分散液の平均粒子径は680nm、分散率は99.8%、粘度は140mPa・sであった。また、実施例6よりも分散時間が長いにも関わらず、平均粒子径は小さくならず、むしろ大きくなるものであった。
【0042】
(実施例8)
消泡剤(商品名「SH5507」東レ・ダウコーニング株式会社製、シリコーン系消泡剤)0.16gを加え、分散時間を20時間とした以外は実施例6と同条件で分散を行った。得られた乳化分散液の平均粒子径は460nm、分散率は99.7%、粘度は260mPa・sであった。
【0043】
(実施例9)
イオン交換水を104g、消泡剤(商品名「SH5507」東レ・ダウコーニング株式会社製、シリコーン系消泡剤)0.24gを加え、分散時間を20時間とした以外は実施例6と同条件で分散を行った。得られた乳化分散液の平均粒子径は500nm、分散率は99.4%、粘度は540mPa・sであった。
【0044】
(実施例10)
防腐剤(商品名「レバナックスBX‐150」昌栄化学株式会社製、イソチアゾリン系防腐剤)0.08gを加える他は実施例8と同条件で分散を行った。得られた乳化分散液の平均粒子径は480nm、分散率は99.6%、粘度は250mPa・sであった。
【0045】
(実施例11)
防腐剤(商品名「レバナックスBX‐150」昌栄化学株式会社製、イソチアゾリン系防腐剤)0.08gを加える他は実施例9と同条件で分散を行った。得られた乳化分散液の平均粒子径は560nm、分散率は99.7%、粘度は560mPa・sであった。
【0046】
(実施例12)
分散時間を4時間とした以外は実施例6と同じ条件で分散を行った。得られた乳化分散液の平均粒子径は530nm、分散率は87.5%、粘度は100mPa・sであった。
【0047】
(比較例1)
ステアリン酸カリウムを3.6g、分散時間を10時間とした以外は実施例1と同じ条件で分散を行った。得られた乳化分散液の平均粒子径は2100nm、分散率は86.3%、粘度は90mPa・sであった。
【0048】
(比較例2)
直径3.5mmのステンレスビーズ(分散メディアの充填率:12.6%)とした以外は実施例5と同じ条件で分散を行った。得られた乳化分散液の平均粒子径は1830nm、分散率は97.1%、粘度は110mPa・sであった。
【0049】
実施例1〜12及び比較例1、2をまとめたものを表1〜3に示す。尚、各成分は脂肪酸アミド100質量部に対する部数で示している。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
実施例1〜12の製造方法は、簡便かつ安全性に配慮されたものであり、表1、2に示すとおり、得られた脂肪酸アミド乳化分散液は、平均粒子径1.5μm以下、粗大粒子が少なく、さらに、取り扱い性に優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
上記のとおり、本発明により、簡便かつ安全性にも配慮した脂肪酸アミドの乳化分散液の製造方法を提供することができる。そのため、脂肪酸アミドの乳化分散液の製造を導入するのに好適であり、さらに、各種分野で高機能化を付与する添加剤として適している。