【実施例1】
【0011】
以下、本発明に係るワーク加工システム及びワーク加工方法を図に基づいて説明する。
図1乃至
図4に示すように、ワーク加工システム1は、ワーク5を位置決め状態で保持(支持)するワーク支持装置3、該ワーク支持装置3の図示する後方に配置され、保持されたワーク5にバリ取り加工、穿設加工等の各種加工を実行する少なくとも1台の産業ロボット7(図は1台を配置した例を示す。)、ワーク支持装置3から加工済みのワーク5を上方へ持ち上げて次に加工されるワーク5をセット可能にする持上げ装置9から構成される。
【0012】
上記ワーク支持装置3は、樹脂成形品である車両用パネルや車両用バンパー等の各種ワーク5を位置決めした状態で保持するもので、ワーク支持装置3は、以下のように構成される。
【0013】
ワーク支持装置3における本体フレーム11の図示する前方の左右方向両側には図示する前後方向へ延出する第1及び第2前後フレーム13・15がそれぞれ設けられ、各前後フレーム13・15には第1及び第2前後可動体17・19が前後方向へ移動可能に支持される。これら第1及び第2前後可動体17・19は対応する前後フレーム13・15に設けられた数値制御可能なサーボモータ等の第1及び第2電動モータ21・23に駆動連結された直動手段(図示せず)によりそれぞれ個別に前後方向へ往復移動される。
【0014】
各第1及び第2前後可動体17・19には図示する左右方向へ延出する第1及び第2左右フレーム25・27の左右方向中間部が固定され、第1及び第2左右フレーム25・27には第1及び第2左右可動体29・31が左右方向へ移動可能に支持される。第1及び第2左右可動体29・31は第1及び第2左右フレーム25・27に設けられた数値制御可能なサーボモータ等の第3及び第4電動モータ33・35に駆動連結された直動手段(図示せず)によりそれぞれ個別に左右方向へ往復移動される。
【0015】
上記第1及び第2左右可動体29・31には第1及び第2上下フレーム37・39がそれぞれ設けられ、第1及び第2上下フレーム37・39には第1及び第2上下可動体41・43が上下方向へ移動可能に支持される。第1及び第2上下可動体41・43は第1及び第2上下フレーム37・39にそれぞれ設けられた数値制御可能なサーボモータ等の第5及び第6電動モータ45・47に駆動連結された直動手段(図示せず)により個別に上下方向へ移動される。
【0016】
第1及び第2上下可動体41・43には第1及び第2取付けアーム49・51がそれぞれ設けられ、第1及び第2取付けアーム49・51の上部には加工処理されるワーク5の裏面に当接して弾性的に支持する弾性部材や負圧発生装置(図示せず)に接続されて吸着して保持する吸着部材、裏面に一体成形された突片(図示せず)把持する把持部材等の保持部材53・55がそれぞれ設けられる。
【0017】
本体フレーム11の図示する後方には図示する左右方向へ延出する第3左右フレーム57が設けられ、第3左右フレーム57には第3及び第4左右可動体61・63がそれぞれ左右方向へ個別に移動可能に支持される。そして第3及び第4左右可動体61・63には第3及び第4左右フレーム57・59に設けられた数値制御可能なサーボモータ等の第7及び第8電動モータ65・67に駆動連結された直動手段(図示せず)により個別に左右方向へ往復移動される。
【0018】
上記第3及び第4左右可動体61・63には第3及び第4上下フレーム69・71がそれぞれ設けられ、第3及び第4上下フレーム69・71には第3及び第4上下可動体73・75がそれぞれ上下方向へ移動可能に支持される。上記第3及び第4上下可動体73・75は第3及び第4上下フレーム69・71に設けられた数値制御可能なサーボモータ等の第9及び第10電動モータ77・79に駆動連結された直動手段(図示せず)によりそれぞれ個別に上下方向へ移動される。
【0019】
上記第3及び第4上下可動体73・75には第3及び第4取付けアーム81・83がそれぞれ設けられ、第3及び第4取付けアーム81・83の上部には加工処理されるワーク5の裏面に当接して弾性的に支持する弾性部材や負圧発生装置(図示せず)に接続されて吸着して保持する吸着部材、裏面に一体成形された突片(図示せず)把持する把持部材等の他方端側支持部材を構成する保持部材85・87がそれぞれ設けられる。
【0020】
本体フレーム11の中央部には図示する前後方向へ延出する第3前後フレーム89が固定され、該第3前後フレーム89には第3前後可動体91が前後方向へ移動可能に支持される。そして第3前後可動体91は第3前後フレーム89に設けられた数値制御可能なサーボモータ等の第11電動モータ93に駆動連結された直動手段(図示せず)により前後方向へ往復移動される。
【0021】
上記第3前後可動体91には第5取付けアーム95が設けられ、該第5取付けアーム95の上部には加工処理されるワーク5の裏面に当接して弾性的に支持する弾性部材や負圧発生装置(図示せず)に接続されて吸着して保持する吸着部材、裏面に一体成形された突片(図示せず)把持する把持部材等の基準支持部材を構成する保持部材97が設けられる。
【0022】
なお、上記した各直動手段としては送りねじ及びナット機構、送りベルト機構等の公知の往復移動機構であればよく、またこれら電動モータの代わりにリニアサーボにより往復移動機構を構成してもよい。また、ワーク支持装置3としては、特許第5766156号公報、特許第5808768号公報、特許第5943499号公報等に開示されたものであってもよい。
【0023】
ワーク支持装置3の図示する後方の長手方向一方側には産業ロボット7が配置され、該産業ロボット7は、例えば連結された複数本のアーム99をそれぞれ回動及び搖動して所定の加工動作を実行する従来公知の多関節型ロボットにより構成され、先端側のアーム99先端部には電動モータの回転軸に連結されたエンドミル、ドリル等のワーク加工部材101が取り付けられる。
【0024】
本例においては、ワーク支持装置3の図示する後方の長手方向一方側に1台の産業ロボット7を配置したワーク加工システム1を図示するが、ワーク支持装置3の図示する後方の長手方向両側に2台の産業ロボット7を配置した構成であってもよい。
【0025】
なお、産業ロボット7による加工態様はエンドミルによるバリ取り加工やドリルによる穿孔加工に限定されるものではなく、例えばワークの外縁から突出した突片を切削除去するトリミング加工等のようにワーク5に応じて適宜選択されるワーク加工部材101により実行される。
【0026】
図5及び
図6に示すようにワーク支持装置3の図示する後方の長手方向中央部には、持上げ装置9がワーク支持装置3に保持されたワーク5に対して非干渉となるように配置される。該持上げ装置9は、昇降機構部103及び水平機構部105から構成される。該昇降機構部103の上下フレーム107はワーク支持装置3により最下方に位置した状態で保持されたワーク5の裏面に対して若干の間隔をおく高さで、上下可動体109が昇降可能に支持される。該上下可動体109は、上下方向に軸線を有して上下フレーム107に回転可能に軸支され、サーボモータ等の数値制御可能な第12電動モータ111に連結された上下送りねじ(図示せず)が噛合され、第12電動モータ111の駆動に伴って回転する上下送りねじにより上下フレーム107の高さに応じて昇降される。
【0027】
上下可動体109には、上下フレーム107の高さに対応する上下長さからなる水平機構取付け体113の下端部が昇降可能に支持される。該水平機構取付け体113は、上下可動体109と同程度の上下長さからなる。
【0028】
上下可動体109の上下端部には回転体(図示せず)がそれぞれ回転可能に軸支され、回転体間には、ベルト部材としてのタイミングベルト115が掛渡されている。該タイミングベルト115の一部は、上記上下フレーム107に、また該タイミングベルト115の他部は、上記水平機構取付け体113にそれぞれ固定される。そして上記タイミングベルト115は、上下フレーム107に対する上下可動体109の昇降に伴って走行し、該上下可動体109に対して水平機構取付け体113を昇降させる。即ち、水平機構取付け体113は、上下可動体109に対し、ほぼ2倍の速度及び距離(昇降量)で昇降される。
【0029】
水平機構取付け体113の上端部には、上記水平機構部105が設けられる。該水平機構部105の水平フレーム117は、ワーク支持装置3に保持されたワーク5に対して非干渉となる長さで水平方向へ延出し、水平可動体119の図示する後端部が水平方向へ移動可能に支持される。該水平可動体119は、水平方向に軸線を有して端部が上記水平フレーム117に回転可能に軸支され、サーボモータ等の数値制御可能な第13電動モータ121に連結された水平送りねじ(図示せず)が噛合され、第13電動モータ121の駆動に伴って回転する送りねじにより水平可動体119が所定のストロークが水平移動される。
【0030】
上記水平可動体119には、該水平可動体119と同程度の水平長さで、図示する左右方向に所定の間隔をおき、水平可動体119と同程度の水平長さからなる2本の持上げアーム123aが固定されたアーム取付け可動体123が水平方向へ移動可能に支持される。上記2本の持上げアーム123aの相互間隔は、ワーク支持装置3に設けられた第5上下フレーム95の両側において非干渉になる間隔に設定される。また、持上げアーム123aの上面には、ワーク5に対する摩擦係数を高めて位置ずれを防止すると共にワーク5に対する傷付きを防止する弾性体123bが取り付けられている。
【0031】
水平可動体119の前後端部には回転体(図示せず)がそれぞれ回転可能に軸支され、回転体間には、ベルト部材としてのタイミングベルト125が掛渡されている。該タイミングベルト125の一部は、上記水平フレーム117に、また該タイミングベルト125の他部は、上記持上げアーム123にそれぞれ固定される。
【0032】
そして上記タイミングベルト125は、水平フレーム117に対する水平可動体119の移動に伴って走行し、水平可動体119に対して持上げアーム123を水平方向へ移動させる。即ち、持上げアーム123は、水平可動体119に対し、ほぼ2倍の速度及び距離(昇降量)で移動される。
【0033】
次に、上記のように構成されたワーク加工システム1によりワーク加工作用及び方法を説明する。なお、ワーク支持装置3によるワーク支持作用及び方法に付いては、特許第5766156号公報に開示された説明を援用し、省略する。
【0034】
先ず、ワーク支持装置3に保持されたワーク5を産業ロボット7による加工時においては、持上げ装置9は、上下フレーム107に対して上下可動体109を下方位置に、また水平フレーム117に対して水平可動体119を図示する後退位置へそれぞれ移動してアーム取付け可動体123を待機位置へ移動させる。このとき、持上げアーム123aは、ワーク支持装置3に保持されたワーク5最下端の高さ位置より若干下方の高さで、かつワーク5と非干渉の後退位置に移動され。(
図7参照)
【0035】
上記状態にてワーク支持装置3に保持されたワーク5に対する産業ロボット7による加工が終了して産業ロボット7から加工完了信号がワーク加工システム1の制御手段(図示せず)に出力されると、持上げ装置9は、第13電動モータ121を駆動し、送りねじの回転に伴って水平フレーム117に対して水平可動体119を図示する前方向へ移動させる。
【0036】
このとき、水平可動体119に図示する前後方向に掛渡され、一部が水平フレーム117に固定されたタイミングベルト125が水平可動体119の移動に伴って走行し、該タイミングベルト125の他部が固定されたアーム取付け可動体123を水平可動体119の移動距離及び速度の2倍で前方向へ移動して持上げアーム123aをワーク支持装置3に保持された加工済みのワーク5の裏面側へ進入させる。(
図8参照)
【0037】
次に、上記状態にて第12電動モータ111を駆動し、送りねじの回転に伴って上下フレーム107に対して上下可動体109を上方向へ移動させる。このとき、上下可動体109に図示する上下方向に掛渡され、一部が上下フレーム107に固定されたタイミングベルト115が上下可動体109の上昇に伴って走行し、該タイミングベルト115の他部が固定された水平機構取付け体113を上下可動体109の移動距離及び速度の2倍で上方へ移動させる。(
図9参照)
【0038】
ワーク支持装置3に保持された加工済みのワーク5は、裏面側に進入した持上げアーム123aにより上方へ持ち上げられた後に、第13電動モータ121を逆転駆動し、水平フレーム117に対して水平可動体119が図示する後方位置へ移動されると、水平可動体119の移動に伴ってアーム取付け可動体123を後方位置へ移動し、持上げアーム123aに支持された加工済みのワーク5を後方へ移動させる。これによりワーク支持装置3の上方には、次に加工されるワーク5を搬入してセットするための空間が形成される。(
図10参照)
【0039】
なお、作業者は、後方位置へ移動された加工済みのワーク5を持上げ装置9から取り外した後に、第12電動モータ111を逆転駆動し、上下フレーム107に対して上下可動体109を下方向へ移動して待機させる。また、作業者は、持上げ装置9が待機状態へ遷移したタイミングで産業ロボット7を駆動制御してワーク支持装置3にセットされたワーク5に対する加工を開始させる。
【0040】
本実施例は、ワーク5に所定の加工が施された後においては、ワーク支持装置3から加工済みワークを上方へ持ち上げて次に加工されるワーク5をワーク支持装置3へ搬入してセットする空間を形成してワーク支持装置3に次のワークをセット可能にすることができ、加工済みワーク5の取出し、次のワークセットを順に行う従来のシステムに比べてワーク5のセット時間を短縮することによりワーク加工作業を効率的に行うことができる。
【0041】
上記説明の持ち上げ装置9は、その昇降機構部103及び水平機構部105をそれぞれ倍速機構とすることにより装置を小型化しているが、実施例に示す倍速機構とせずに上下方向に対して水平機構取付け体113を、また水平方向に対して持上げアーム123aをそれぞれ所定のストロークで移動する機構としてもよい。
【0042】
また、上記説明のワーク支持装置3は、ワーク5の長手直交方向の一方側に配置される保持部材53・55を長手方向、長手直交方向及び上下方向へ、またワーク5の長手直交方向の他方側に配置される保持部材85・87を長手方向及び上下方向へ、更に中央部に配置される保持部材97を長手直交方向へそれぞれ移動可能にして大きさや形状が異なる各種ワークを支持(保持)可能にする構成としたが、本発明のワーク支持装置は本実施例に限定されるものではなく、例えば単一種類ワークを加工する際のワーク支持装置にあっては、予め設定された所定位置に少なくとも3個の保持部材を固定的に設けてワーク位置決め状態で支持(保持)する構成であってもよい。
【0043】
更に、本実施例のワーク支持装置3に、特許第5943490号公報に示す把持部材を設け、ワーク5の長手直交方向両側にて長手方向両側を支持(保持)すると共にワーク5の長手方向両端部を固定して加工時に振動等によるワークの位置ずれを抑制可能にしたワーク支持装置であってもよい。