特開2019-93892(P2019-93892A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2019-93892レール波状摩耗検出装置、及びレール波状摩耗検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2019-93892(P2019-93892A)
(43)【公開日】2019年6月20日
(54)【発明の名称】レール波状摩耗検出装置、及びレール波状摩耗検出方法
(51)【国際特許分類】
   B61K 9/08 20060101AFI20190530BHJP
   G01H 3/00 20060101ALI20190530BHJP
   E01B 35/06 20060101ALI20190530BHJP
【FI】
   B61K9/08
   G01H3/00 A
   E01B35/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-224804(P2017-224804)
(22)【出願日】2017年11月22日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡田 信之
(72)【発明者】
【氏名】笹内 崇宏
(72)【発明者】
【氏名】大庭 拓也
【テーマコード(参考)】
2D057
2G064
【Fターム(参考)】
2D057AA03
2D057AB02
2D057AB06
2G064AA14
2G064AB01
2G064AB15
2G064CC03
2G064CC21
(57)【要約】
【課題】検出精度を高めたレール波状摩耗検出装置の提供。
【解決手段】レール25上を走行する鉄道車両10の走行時間に対して振動加速度または騒音の少なくとも一方を測定して時間軸データD1を取得する測定装置である加速度センサ11と、時間軸データD1をハイパスフィルタ処理し、絶対値処理し、ローパスフィルタ処理して高周波振動データD2とし、高周波振動データD2を空間軸データD3に変換する演算装置であるCPU13aと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール上を走行する鉄道車両の走行時間に対して振動加速度または騒音の少なくとも一方を測定して時間軸データを取得する測定装置と、
前記時間軸データをハイパスフィルタ処理し、絶対値処理し、ローパスフィルタ処理して高周波振動データとし、前記高周波振動データを空間軸データに変換する演算装置と、を備えること、
を特徴とするレール波状摩耗検出装置。
【請求項2】
レール上を走行する鉄道車両の走行時間に対して振動加速度または騒音の少なくとも一方を測定装置によって測定することで時間軸データを取得し、
演算装置によって、
前記時間軸データをハイパスフィルタ処理し、絶対値処理し、ローパスフィルタ処理して高周波振動データとし、
前記高周波振動データを空間軸データに変換し、
前記空間軸データに基づいてレールの波状摩耗の発生区間を決定すること、
を特徴とするレール波状摩耗検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レール波状摩耗検出装置において、波状摩耗の発生の検知精度を高める技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両を運行するにあたって、レールの摩耗によって車両に振動が発生してしまうような問題があった。この一因としてレール波状摩耗と呼ばれる摩耗状態があり、このレール波状摩耗が生じたレールの上を車両が通過すると、大きな騒音や振動を発生することになる。特に都市部の鉄道や地下鉄などでは大きな騒音や振動が問題となるため、その適切な管理が求められている。また、レール波状摩耗は車輪からレールに伝わる荷重変動の増加にも繋がるため、早期に発見し対策することが求められている。
【0003】
こうしたことから、近年、レール波状摩耗の検出方法について様々な検討がなされてきた。しかしその対策の多くは、時間周波数軸上でフィルタ処理などの信号処理を行うものであった。また、レール上を走行する鉄道車両の騒音からレールの波状摩耗を検出する試みも行われている。しかしながら、実際の鉄道車両の運行時には、様々な周波数成分が含まれているため、検出精度の点で問題があった。
【0004】
特許文献1には、レール波状摩耗検出方法、及びレール波状摩耗検出システムに関する技術が開示されている。レール上を走行する鉄道車両上で鉄道車両の走行時間に対して振動加速度及び騒音の少なくとも一方を測定して時間軸データを生成する。そして、時間軸データを鉄道車両の走行距離に関連づけられた空間軸データに変換し、空間軸データを空間周波数軸上でバンドパスフィルタ処理をしてフィルタ処理データを生成する。そして、フィルタ処理データに基づいてレールの波状摩耗の発生区間を決定する。こうすることで、レール波状摩耗の検出精度の向上を図ることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−21790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術であってもレール波状摩耗の波高値が低い場合、振動加速度を用いた方法では検出精度を高める事が困難である。レール波状摩耗はなるべく早期に発見し、対策を講じることが必要とされるが、レール波状摩耗の波高値が低い場合には、他の振動などに紛れ易く発見が遅れるケースがある。
【0007】
そこで、本発明はこの様な課題を解決する為に、検出精度を高めたレール波状摩耗検出装置、及びレール波状摩耗検出方法の提供を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の一態様によるレール波状摩耗検出装置は、以下のような特徴を有する。
【0009】
(1)レール上を走行する鉄道車両の走行時間に対して振動加速度または騒音の少なくとも一方を測定して時間軸データを取得する測定装置と、前記時間軸データをハイパスフィルタ処理し、絶対値処理し、ローパスフィルタ処理して高周波振動データとし、前記高周波振動データを空間軸データに変換する演算装置と、を備えること、を特徴とする。
【0010】
上記(1)に記載の態様により、レール波状摩耗の検出精度を高める事ができる。これは、測定装置によって取得した時間軸データに対してハイパスフィルタ処理、絶対値処理、ローパスフィルタ処理を順に行うことで、時間軸データに含まれる高周波成分を抽出することが可能となり、波状摩耗の波高値が低い場合であってもレール波状摩耗の周期成分を検出しやすくなる。その結果、波状摩耗の検出性能を向上することに貢献出来る。
【0011】
また、前記課題を解決するために、本発明の別の態様によるレール波状摩耗検出方法は、以下のような特徴を有する。
【0012】
(2)レール上を走行する鉄道車両の走行時間に対して振動加速度または騒音の少なくとも一方を測定装置によって測定することで時間軸データを取得し、演算装置によって、前記時間軸データをハイパスフィルタ処理し、絶対値処理し、ローパスフィルタ処理して高周波振動データとし、前記高周波振動データを空間軸データに変換し、前記空間軸データに基づいてレールの波状摩耗の発生区間を決定すること、を特徴とする。
【0013】
上記(2)に記載の態様により、(1)に記載のレール波状摩耗検出装置と同様に、レール波状摩耗の検出精度を高める事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態の、鉄道車両の模式断面図である。
図2】本実施形態の、レール波状摩耗検出装置の電気的構成を説明するブロック図である。
図3】本実施形態の、データ処理の手順についてのフロー図である。
図4】本実施形態の、データ処理手順を示すブロック図である。
図5】本実施形態の、データ処理された信号のイメージを示すグラフである。
図6】従来技術の、バンドパスフィルタ処理をした信号のデータを示すグラフである。
図7】本実施形態の、信号処理したデータを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
まず、本発明の実施形態について図面を用いて説明を行う。図1に、本実施形態の、鉄道車両の模式断面図を示す。図2に、レール波状摩耗検出装置100の電気的構成についてブロック図を示す。鉄道車両10は、図1に示すように、乗客などを乗せるための車体20と、空気バネ21を介して車体20を支える台車23と、台車23に軸バネ24を介して設けられレール25上を走るための車輪22とを有する。
【0016】
レール波状摩耗検出装置100は、図2に示すように、加速度センサ11と、マイク12と、処理装置13と、出力装置14と、入出力ポート15を有する。加速度センサ11は、車体20に設置されて振動加速度を測定するものである。マイク12は、騒音計などを用いたレール25と車輪22の接触に起因する車内騒音を集音するものである。出力装置14は、画像出力装置などを用いた乗務員に情報を伝達するためのものである。ただし、液晶パネルなどの画像出力装置に限定される必要は無く、例えばプリンタなどを用いて紙面に印刷するような出力装置でも良い。
【0017】
処理装置13は、プログラムを実行するためのCPU13a、プログラムを記憶するためのROM13b、各種データを一時的に記憶するRAM13cを備えている。そして、データを中継する入出力ポート15を介して、処理装置13と、加速度センサ11、マイク12、出力装置14が接続されている。
【0018】
図3に、データ処理の手順についてフロー図に示す。図4に、データ処理手順を表すブロック図を示す。車両から計測するデータは、加速度センサ11から取得する振動加速度データだけでなく、マイク12から取得する車内騒音データを用いても良い。両方のデータを用いるとより精度を上げられるので好ましいが、ここでは加速度センサ11からのデータを用いる例を説明している。マイク12からのデータであっても流れは同じである。
【0019】
S11では、サンプリングデータ取得を行う。車体20に設けられた加速度センサ11から、車体20に発生する振動加速度を取得する。データは処理装置13に備えられたRAM13cに保存される。得られたサンプリングデータは、鉄道車両10の走行時間に対して発生する振動加速度を示した時間軸データD1となる。S12では、ハイパスフィルタ処理を行う。取得した時間軸データD1は、処理装置13のCPU13aによってハイパスフィルタ処理が行われ、ハイパスフィルタ処理データが得られる。
【0020】
S13では、絶対値処理を行う。処理装置13のCPU13aにて、ハイパスフィルタ処理されたハイパスフィルタ処理データに対して絶対値処理が行われ、絶対値処理データが得られる。S14では、ローパスフィルタ処理を行う。処理装置13のCPU13aにて、絶対値処理された絶対値処理データに対してローパスフィルタ処理が行われ、ローパスフィルタ処理データが得られる。この一連の処理が行われた結果、高周波振動データD2が得られる。
【0021】
S15では、空間軸データD3に変換を行う。上記処理が施されてRAM13cに格納された高周波振動データD2を、処理装置13のCPU13aにて空間軸データに変換する。S16では、波状摩耗周期成分を抽出する。空間軸データD3を用いて波状摩耗周期を抽出することで、レール25の波状摩耗の検出を行うことができる。そして処理を終了する。
【0022】
なお、検出された波状摩耗周期は、車体20内に備えられた出力装置14に表示されて、時間軸データやGPS等を用いた位置データを参照してレール25に発生した波状摩耗の位置を特定する。或いは、鉄道車両10から外部にデータを転送して図示しない外部のデータセンターにて波状摩耗を特定しても良い。図3のフローに従って得られるデータに関してブロック図として説明したのが図4であり、時間軸データD1をハイパスフィルタF1で処理した後、ハイパスフィルタ処理データを得る。
【0023】
そして、ハイパスフィルタ処理データを絶対値フィルタF2で処理した後、絶対値処理データを得る。そして、絶対値処理データをローパスフィルタF3で処理した後、ローパスフィルタ処理データを得る。ハイパスフィルタF1乃至ローパスフィルタF3の一連の処理により、高周波振動データD2が得られる。これを、空間軸データD3に変換する。これらの図4で示された処理はすべてCPU13aの内部で計算処理される。
【0024】
本実施形態のレール波状摩耗検出装置100は上記構成であるので、以下に説明するような作用及び効果を奏する。
【0025】
まず、本実施形態のレール波状摩耗検出装置100によって波状摩耗の検出精度の向上を図ることができる。これは、本実施形態のレール波状摩耗検出装置100が、レール25上を走行する鉄道車両10の走行時間に対して振動加速度または騒音の少なくとも一方を測定して時間軸データD1を取得する測定装置である加速度センサ11またはマイク12と、時間軸データD1をハイパスフィルタF1+絶対値フィルタF2+ローパスフィルタF3で処理して高周波振動データD2を得て、高周波振動データD2を空間軸データD3に変換する演算装置であるCPU13aと、を備えているためである。
【0026】
また、レール25上を走行する鉄道車両10の走行時間に対して振動加速度を加速度センサ11によって、または騒音をマイク12によって測定することで時間軸データD1を取得し、CPU13aによって、時間軸データD1をハイパスフィルタF1+絶対値フィルタF2+ローパスフィルタF3で処理して高周波振動データD2を得て、高周波振動データD2より空間軸データD3に変換し、前記空間軸データに基づいてレールの波状摩耗の発生区間を決定するレール波状摩耗検出方法を用いるためである。
【0027】
図5に、データ処理された信号のイメージをグラフに示す。上から生データである時間軸データD1の信号と、ハイパスフィルタF1及び絶対値フィルタF2で処理された信号と、ローパスフィルタF3で処理された信号と、空間軸データを示す信号をそれぞれグラフに示している。このような高周波成分の繰り返し周期抽出処理が行われることで、波状摩耗周期が視覚的に把握し易くなる。図6に、従来の方法で処理した実際の信号をグラフに示す。図7に、本実施形態の信号処理した信号をグラフに示す。縦軸が信号の振幅を示す正規化値を示し、横軸に走行距離を示している。この様に、実際に計測したデータにおいても、図6に示すような従来の振動加速度のデータをバンドパスフィルタ処理する方法と比べ、図7に示すように本実施形態の信号処理をしたものの方がハッキリとした波状摩耗区間を決定することができる。
【0028】
この様に、鉄道車両10に本実施形態のレール波状摩耗検出装置100を備えることで、レール25の点検を日常的に行うことができ、レール波状摩耗の波高値が低い場合であっても波状摩耗の検出精度を向上させることが期待できるため、波状摩耗の早期発見に貢献することが可能である。このことは鉄道車両10が生じる騒音や振動を低減する他、レール25の劣化を抑制する効果も見込める。レール25のメンテナンスの手間も波状摩耗を早期に発見できることで、低減することが可能となる。
【0029】
以上、本発明に係るレール波状摩耗検出装置100の実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
10 鉄道車両
11 加速度センサ
12 マイク
13 処理装置
13a CPU
13b ROM
13c RAM
14 出力装置
15 入出力ポート
20 車体
21 空気バネ
22 車輪
23 台車
24 軸バネ
25 レール
100 レール波状摩耗検出装置
D1 時間軸データ
D2 高周波振動データ
D3 空間軸データ
F1 ハイパスフィルタ
F2 絶対値フィルタ
F3 ローパスフィルタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7